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大正冒険奇譚 臨時避難所
145
:
鳥居 呪音
◆h3gKOJ1Y72
:2014/02/09(日) 19:59:11
死王はこの氷の迷宮の何処かにいる。
そんな緊迫感のなか、あかねはフーの脅しまがいの説得に、
人間の心を少しはもっていたいと切望している。
鳥居は二人の会話を聞いて、自分のやろうとしていることの
危険さに気がつき生唾を飲み込む。
なぜなら自分の不老の人生と少年のそれとは明らかにちがうのだ。
鳥居はそう感じていた。
他者がいないこの遺跡で彼はずっと独りでいた。
他人がいなければ自分の境界線というものは無に近くなる。
比較するものがないのだから永遠の広がりや深さをもつ。
その思考の底無し沼で、少年はたった一つの自身の思いを尊重し
しがみつき行動に起こしている。それは計り知れないことだろう。
その時だ。生還屋の叫び。
崩れゆく迷宮。闇の最奥に見える白い影。
鳥居は恐怖を感じると同時に、この時を待っていた。
>「……何か、希望を見つけたみたいだね」
「……うん」
頷き見据える。
少年は鳥居にとって最初で最後、最大の宿敵かもしれない。
>「いいね。その希望が打ち砕かれれば、君達は更に大きな希望を心に思い描く。試してみなよ」
少年の言葉を聞きながら、鳥居は炎の神気を練り上げている。
練り上げた神気を鞭として放出するのだ。
この危機から脱出するにはそれしかないと信じていた。
しかし――気流が凍結。フーの説明を聞き焦燥する鳥居。
慌てて手を振りかざし、神気の鞭を死王の体に巻き付ける。
が、フーの見立て通りそれに火炎が宿ることはなく
鳥居の脳裏には嫌な予感が過る。
そうだ。これでは防御ができないのだ。
>「最後はとびきりの絶望で終わらせてあげるよ。でも大丈夫。
僕が凍らせるのは、君達に残るのは、その裏にある希望だけだから」
微かに凍結音が聞こえる。
死王のすべての動きが鳥居に絶望を与えている。
――自分には誰も助けられない。
死王の言った通りに、不老不死
のこの手からは何度も命が零れ落ちていった。
今までそれは当たり前のことだった。
でも今はちがう。それは鳥居が自分を肯定し始めたからだ。
自分を尊く思い始めた鳥居は他人にも気持ちがあって
尊重するべきものと考えはじめていた。
――自分は玩具の人形でなければ
他人も玩具の人形ではない。
気持ちがある。命がある。
ゆえに悲しくなる。二つの目から涙がこぼれる。
「わぁあああああっ!!」
――絶望。
鳥居は絶望した。
「みんな、みんな死んでゆくんだよ。僕をおいて、独りぼっちにして。
それなら好きになる気持ちなんていらないのに……何にもいらないのに」
鳥居は最期に消えることを望んだ。
独りで闇のなかで望むものなんてありはしなかった。
誰かと繋がっていたい……。あるのはそんな思いだけだった。
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