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大正冒険奇譚 臨時避難所

122鳥居 呪音 ◆h3gKOJ1Y72:2013/12/23(月) 02:54:35
>「そうなってから、『今』を恋しく思っても遅いんだよ。 今ならまだ、その人の手の温もりも、頭に残っているんじゃないかな。
僕なら、その温もりごと、君を凍らせてあげられるんだ」

それでも少年は鳥居に手をさしのべる。
彼は彼なりに他人の幸せを考えてくれている。
その行為に他人からの見返りはない。
少年は鳥居と似ているようで、まるっきり違う。
少年には他者に影響されない意志がある。
少年と倉橋の会話が終わり、鳥居はこう呟いた。

「ごめんよ。
僕に、手のぬくもりは、まだ足りないし
君の言うそんなことでも僕は繰り返していたいんだ。
だって、このまま自由のほうが……楽しいから」

鳥居は人に好かれたい。
だから他人の顔色をうかがう。
サーカスでは客の反応に敏感だ。
ゆえに皆が喜ぶことを正しいことと考えていた。
世間一般の総意。そのなかに正しいことを見つけ、すがる。
マリーやブルーの行動に正統性を見つけて、
少年の理念と天秤にかけたりしたのも自己が脆弱だからだ。
それはきっと吸血鬼に人間の心がわかるわけがないというほの暗い自己暗示。

でも今、鳥居は少年の考えを拒絶した。
拒絶の行動をとった。
神気の炎を気流の結界へと放出し、
死王の攻撃に応射する。
それは少年とは違う今を守るための行動だった。
鳥居は少年の理念を認めたうえで拒絶し
自分の存在を承認した。
それは万人の総意でもなく、一般的な正義や大義でもない自分自身。

(皆の笑顔をみたい)

できることなら笑顔に変えたいと断言したかった。
でもそれは実現不可能な望みであり烏滸がましいこと。
それならこの場にいる者たちの命を守る。
生きて帰れば、いつか笑顔を見ることができる。
そう胸に秘めて鳥居は倉橋の前に立つのだった。


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