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【臨時レス置き場】異能者達の奇妙な冒険【荒らし対策】

29130 :佐藤ひとみ ◇tGLUbl280s:2011/01/21(金) 22:37:53
舞台の上でスポットライト浴びる『あのネズミ』。
ネズミは腰に手を当て、片足に体重をかけた…所謂「休め」の体勢で、ゆったりと座席の面々を見下ろしている。

ひとみはネズミが仄めかしたよねの行動―――裏切り行為が、にわかに信じられなかった。
佐藤ひとみは、性格的に他人に信頼を置くことのできない出来ない人間である。
それでも幾多の戦いを共有してきた経験から、よねにはある程度の信用(信頼ではない)を持っていた。
第一裏切り行為など、自信家の癖に何処か抜けた所のある、この青年には似合わない。

「よね君……あのネズミ何言ってんの?オトモダチ…?クズネズミめ…何かの心理作戦のつもり?」

ひとみの問いかけに、よねは答えなかった。
壇上のネズミに視線を定め、ネズミが仄めかす裏切りを否定するでもなく、只立ち尽くしている。

よねを見据えるひとみの右手で、携帯電話が震えた。
ひとみは反射的に通話ボタンを押して携帯を耳元に寄せる。


>「もしもしひとみん?わたしです。有葵です。これから私は調理室とライブラリーにいきます。
>あの時、誰かがそこに行ってネズミが消えたのなら、私が行ったらもしかしたらまたネズミが消えるかもしれません。
>これってありの作戦でしょ〜?」

聞こえるのは有葵の声。
天然の割に抜け目なく勘の鋭い有葵は、危機をいち早く察してホールから脱出していたようだ。
さすがは感覚が行動に直結する単細胞。行動力を如何なく発揮して
脱出に続き、吉野きららの提案―――"ネズミ消失時の再現"を実行に移すつもりらしい。

吉野提案の実験は、状況を再現する間、ネズミの行動を監視し続ける人間が必要である。
無敵の霧であるネズミ相手に、時に逃げ、時に攻防を繰りひろげつつ、だ。
複数人でネズミに対処できる、このタイミングは再現にうってつけだ――――ただネックは様子のおかしい、よねの挙動。

「……了解……通話を切らずに作戦を続けて。経過を随時報告すること。こっちも取り込み中なのよ。一旦話を止め……」

小声で有葵に伝えた瞬間――――

>Sum41 Re・Birthッ!!この床は水に変化するッッ!」

ひとみは足元に違和感を感じて視線を落とした。
自分の周囲だけ、床が軟化し、石を投じた水の如く波紋を刻み揺らいでいる。
脱出のいとまも与えず、床はずぶずぶとぬかるみ、ひとみの足を呑み込む。
足首が沈み、脹脛が……忽ち底なし沼と化した床に膝頭のあたりまで沈み込んだ。

>「Sum41ッ!この水はチタンになるッ!」

二度目のかけ声と共に、沈降が止まる。
かわりに感じる脚の圧迫感。床はひとみの脚を呑み込んだまま、再び硬化していた。
絨毯敷きの床から一変し、灰白色の光沢を放って―――ひとみは金属製の床に埋め込まれてしまった。

「よね君、これ何かの冗談……?」ひとみは顔に引きつった笑いを浮かべて、よねに尋ねる。

「何の真似よッッ?こんな事して、あんたに何の得があるって言うのッ?!」

無言の応酬は疑惑を深める。ひとみの口調は次第に非難の色を帯びていく。


>「出来る限り早く佐藤の始末をよろしくお願いします。私は他のスタンド使い達を……」

よねの口から吐き出された言葉は、裏切りを決定付けるものであった。

29231 :佐藤ひとみ ◇tGLUbl280s:2011/01/21(金) 22:38:51
一方――――壇上のネズミは、
よねの依頼を受けて尚、一向に動く気配すらない。相変わらずニタニタ笑いを続けている。

『ひひひっ♪そういう事なんだよぉ〜〜♪僕達なかよしの契約を結んだのさぁ〜♪
 何の得があるの…?だって?wwww
 メガネ君は、君達を犠牲にして自分だけ助かりたいんだってさあ〜www♪賢明な選択だよ♪
 友情の格言に≪天気のいい日は二人乗りだが、悪い日は一人乗り。そんな程度の船≫なんてのがあるけどさあ〜
 キヒヒッ♪友情なんて、命の危機に瀕したらモロいモンだよね〜全くwwwwwww♪
 
 だけどメガネ君の友人達!裏切られたからって、そんなに悲しまないで♪
 メガネ君だって内心忸怩たる想いを抱えているんだよぉ〜♪
 "いまの自分は【潜在意識の顕在】で前の自分とは別人格だ"…なんて言い訳しちゃってさぁ♪
 そーやって自分をゴマ化さなきゃ、恥ずかしくてやってらんないんだろーねwww♪案外小心者だね♪キヒヒヒヒッ!!』

ネズミは話し続ける。

『絶望の例えにパンドラの箱を持ち出すなんてシャレてるね♪メガネ君は♪…だけどねぇ〜一つだけ間違いがあるよ〜♪』

ネズミはますます口角を吊り上げて微笑む。

『"希望すら失うことが絶望"なんかじゃあない♪"人は希望を持つが故に絶望する"んだよぉ〜〜♪
 希望と絶望は直線上に繋がっているもんさ♪
 希望なんか持たなければ、絶望することだって無いんだからねぇ〜〜……』

そこで一旦言葉を切り、ネズミは掌を天に向けて高く差し伸べた。まるで万雷の拍手に応えるマジシャンのように。
次の瞬間―――ネズミは息を吹きかけられた煙の如く霧散して、かき消えた。


誰もが、無人となった舞台に目を奪われる中、
よねは気づくだろう。自分の背後に何者かがいる……と。

『君だってそうさ・・・・・・♪
 "自分だけは助かるんじゃないか"なんて儚い希望を抱かなければ、絶望せずに済んだのにねぇ〜』

よねの背後に現れたのは他でもない『あのネズミ』。
ネズミの胸から下は、大蛇のそれに変化していた。
ネズミオロチは一瞬の内によねの身体に巻きつき、万力のような力で締め付ける。

『あっれぇ〜♪メガネ君♪意外そうな顔してどうしたの?
 僕は一人でもゲームに勝てるんだよ♪
 君の力なんて借りなくても、時間さえかければ造作なく全員を始末できるんだ。そう、メガネ君、君も含めてね。
 平たく言うと、君と協力関係を結ぶメリットが無いんだよ♪♪
 でも面白い出し物が見れて楽しかったよぉ〜♪"友情崩壊の瞬間"…それに今の君の顔ったら……www!!』

そう、よねの裏切りを明かし、他の鬼ごっこ参加者がたじろく様を楽しむことこそが、
よねと手を結んだザ・ファンタジアの目的であった。
たとえ参加者の間に元々友情など無くとも、一人の裏切りは疑心暗鬼を呼ぶ。
参加者が混乱すればするほど、ザ・ファンタジアの愉悦は深まるのだ。

『それにしてもメガネ君は面白い能力を持っているねぇ♪君が鬼になったら面白いだろうなァ〜〜♪
 中途半端な協力と言わずに、鬼になって誠心誠意、僕に仕えてよぉ〜〜♪♪』

ザ・ファンタジアは真っ黒な掌を差し伸べ、よねの身体に触れた。


【ザ・ファンタジア:よねが裏よねと入れ替わっていることを明かす】
【ザ・ファンタジア:佐藤や他メンバーをほったらかして、よね君を鬼化しようとする】
【天野さんの行動のリアクションは次に取る予定です】
【生天目さんの選択肢は②を選択します。調理室に着くタイミングはいつでもいいよ
ライブラリに着くタイミングは指示するからちょっと待って〜〜】

29333 :吉野 ◇HQs.P3ZAvn.F:2011/01/21(金) 22:39:30
>「悪く思わないでくださいね……Sum41 Re・Birthッ!!この床は水に変化するッッ!」
>「Sum41ッ!この水はチタンになるッ!」

>『それにしてもメガネ君は面白い能力を持っているねぇ♪君が鬼になったら面白いだろうなァ〜〜♪
 中途半端な協力と言わずに、鬼になって誠心誠意、僕に仕えてよぉ〜〜♪♪』

吉野の初動は無言の舌打ち、直後にポケットからナイフが抜かれる。
よねの能力は強力無比で凶悪だ。敵に回すくらいなら――いや、既に敵対しているのだ。
どうあっても殺さなくてはならない。

「佐藤さん、そのスタンド……触手を体内に潜り込ませられるのなら、
 足へと血の下る血管を一度塞いでしまったらどうですか?
 血が抜けると人間の手足ってのは、案外細るものです」

手短に告げて、吉野は力強くも軽やかに床を蹴った。
よねが捕まってから、鬼になるまでの三秒間。
喉を掻き切って、或いは目玉を貫いて脳を損傷させて、
死に至らしめても離脱の形でお釣りが来る。

「まさか、止めませんよね?裏切りは、さっきの攻撃で明白ですもの」

背中越しに佐藤に釘を刺して、吉野はナイフを鋭く突き出した。

【足を細らせて、あとフリーシーズンの効果でどうにかならないかなーとか
 よねを殺害に掛かります。止めるなってのは、まあ「押すなよ!絶対に押すなよ!」みたいな。どうしようと自由であります】

29434 :アンドレ ◇n.pJPZU7Yk:2011/01/21(金) 22:40:16
>『それにしてもメガネ君は面白い能力を持っているねぇ♪君が鬼になったら面白いだろうなァ〜〜♪
>中途半端な協力と言わずに、鬼になって誠心誠意、僕に仕えてよぉ〜〜♪♪』

>ザ・ファンタジアは真っ黒な掌を差し伸べ、よねの身体に触れた。


自分の完全勝利を確信し酔心していたネズミは何の躊躇もなくよねの身体に触れようとした。
――その刹那、自らの耳半分が帽子ごと切り裂かれようとは。切り口から血飛沫のように霧が止めどなく
噴出している。

間違いなく今、自分を攻撃できる存在などいない。たとえ生天目とか言う小娘の仕業か!?いや、たとい到着したとしても
これほどの威力を持つスタンドではなかったはず……では、一体“どいつがこの僕を攻撃した”?
突然の強襲のためかしだいに困惑が襲ってきた。もう、茶目っ気のある愛らしいキャラクターの風貌も薄れてきている。
勝ち誇ったとその瞬間、事態は逆転したのだ。
もはやファンタジアはただ次にい何が起こるのかと臆しながらじっとしているしかなかった…
「やれ…決まったようだな」

!!
「驚くのも無理は無い。ついさっき来たばかりだし、キサマやそこの女が探知できるはずがないからなこの俺を。
 バッチシ、計画通りだった」
猛然とした態度で言い放ったのは、入口付近で気怠そうにテーブルの上で足を組んでいるのは栗色の髪の男だった。
ラテン系のハンサムな顔立ちで、仕立てたばかりアルマーニのグレイスーツをしっかりと着こなし、お澄まし顔で
見下ろしている。

「くく…そろそろ最終ラウンドと行こうじゃないか。しかしキサマは既に詰みの状態なんだがね」

【乱入、奇襲なんでもござれ。去年の暮れ頃に参加宣言していた者です】
【名前とスタンドの紹介は次レスまで持ち越しということで…実は定まってないだけなんですけどw】
【状況としてはよねの全体攻撃より後から忍びこんできたことになりますかね
 少なくともスタンド能力で会館に侵入しました】

29536 :よね ◇0jgpnDC/HQ:2011/01/21(金) 22:40:54
そこは原始、海だった。精神の、穏やかな波音がする海。
あらゆる意識と思考が混ざり合い、複雑で、それでいて美しい海だった。

だが、今は違う。深く深く、どす黒く、どこまでも闇が続く世界。
その世界には闇の中をゆっくり浮き上がる一人の青年。

そして青年は気付く。
そこは今でも海だと。美しくも恐ろしい、二面性を持った海。

どれだけ美しい海であろうと、深く潜れば潜るほど光は届かなくなる。
――もしも目隠しをされたまま深い海の底に沈められたなら。
恐らく人は、上に広がる神秘の海を知らぬまま、溺れるだろう。

―――

よねは窮地に立っていた。

/『あっれぇ〜♪メガネ君♪意外そうな顔してどうしたの?

ザ・ファンタジアの裏切り。耐え難い精神的苦痛がよねを襲った。

(な……?ど、どういうことだ?契約のハズだろう?……騙された…のか…?)

すでによねの体は霧の大蛇と化したザ・ファンタジアに拘束されていた。
普通の人間ならばここで諦めるだろう。
だが、"今のよね"の異常なまでの自我に対する執着が挫折を許さなかった。

「今の私の顔……?君には私の顔がどのように見える?あまりの恐怖に萎縮している顔か?それとも君の裏切りに奮い立っている顔か?」

よねの問い掛けを気にすることも無く、ザ・ファンタジアはよねに掌を延ばしてくる。

だが、今度はハッタリや即興で作った嘘ではない。
"今のよね"は"本来のよね"から精神力のみで自我を奪い返した。
凄まじい精神力――即ち"鋼鉄の精神"の持ち主だったのだ。

「それとも……罠にかかった哀れなネズミに勝ち誇っている顔かッッ!?
 お前の下僕になるつもりはないねッ!!私は私だッ!この身体は私自身のモノだッ!!
 騙されていたのはお前だッ!周りを見てみろッ!私には仲間がいるッ!決して裏切ってはならない仲間だッ!

 …ネズミ野郎、お前は今、"私の身体"に巻きついているのかッ!?それとも"私の着ている服"に巻きついているのかッ!?」

よねがニヤリと笑う。と同時に、Sum41の能力のルール―能力の解除―を利用して佐藤の足元のチタンをただのコンクリに戻す。

「答えは聞いていないッ!!Sum41 Re・Birthッ!!私の服は水を弾く!つまりレインコートとなるッ!」

霧とは本来"水"である。たとえ実体化していてもザ・ファンタジアの主成分は"水"だ。そして霧の大蛇となったザ・ファンタジアはよねの衣服に密着していた。
よねはザ・ファンタジアが衣服に弾かれよねからほんの少し離れた隙を突いて拘束を解除する。

「形成逆転だとは思わないか?お前は次に、"僕は霧だからダメージは与えられないよ〜〜♪"と言うッ!
 無駄だァッ!周りを良く見ろと言ったハズだッ!お前の周りに立っているスタンド使いは全員、布で出来た服を纏っているッ!意味がわかるか?
 "スタンド能力によって吸水力を上げてやればお前の攻撃はことごとく無効化できる"ということだよッッ!!」

【ザ・ファンタジアとの契約破棄。佐藤の足元を元に戻し、自身は拘束を逃れ、ザ・ファンタジアと対峙】

29637 :よね ◇0jgpnDC/HQ:2011/01/21(金) 22:41:28
だが、拘束を逃れたよねは不意に後ろに立つ人影を感じる。
吉野だった。ナイフを手に持っている。

「冷静に考えるんだ。思考しろ、吉野きらら。今の敵は目の前に立つ全ての元凶か、それとも副次的に生み出される可能性のある敵未満の人間か?」

ナイフは依然、掲げられたままだ。

「好きにするといい。だが、これだけは宣言させてもらうよ。私は私の身体を守る為ならば、いくら仲間とはいえ――殺すつもりでいる」

そう宣言し、再びザ・ファンタジアの方を見る…何かがおかしい。
ザ・ファンタジアの耳が断絶されている。

「なんだッ!?どういうんだ!?」

/「くく…そろそろ最終ラウンドと行こうじゃないか。しかしキサマは既に詰みの状態なんだがね」

声のするほうを見ると、一人のハンサムな男。
言葉使いは違うものの、どこか徳井を彷彿とさせる要素が、その謎の男にはあった。

【辻褄あわせ。】

29739 :アンドレ ◇n.pJPZU7Yk:2011/01/21(金) 22:42:18
>「なんだッ!?どういうんだ!?」

「見ての通り、悪霊とか催眠術のようなオカルトではない、事実さ。
生命エネルギーの像(ヴィジョン)、その名も幽波紋(スタンド)!
 そして俺のスタンドの名は『カーマイン・アピス』だ」

そう高らかに宣言する男の裾は傷ひとつ見当たらないのにぐっしょりと赤く濡れていた。


【本体】
名前:アンブロジオ・ドラード (本名はもっと長いためアンドレと略)
性別:男
年齢:34
身長/体重:187cm/85kg
容姿の特徴:栗毛のラテン系オジサン。アルマーニなどやたら高級なものを身につけるが特にこだわりはない
人物概要:SPW財団直属のスタンド使い。元はインターポールでスタンドによる犯罪を捜査していたが
     疲労困憊のため倒れてしまい、29歳の若さで一線を退く。その後、故郷の片田舎でほぼ隠居していたところを
     能力を高く評価したSPW財団にヘッドハンティングされた。
     ジョジョ本編で言う承太郎のような立場で各国のスタンド使いたちを調査している。
     今回、日本に訪れたのは北条市でのスタンド事件について依頼があったため。

【スタンド】
名前:カーマイン・アピス
タイプ/特徴: 一体化型/本体の血液
能力詳細:本体の血液にスタンドエネルギーを加えてスタンド化させる。
     そしてスタンドとなった血を皮下組織から滴らせ銃弾や刃物に変形させて
     直接放つことで攻撃できる。
     その威力・スピード・射程距離は使用する血液の量によって変動し
     より生命への危機が高いほど力を増す。当然のことながら短時間に連続で
     使用すればそれだけ負担も大きく寿命を縮める危険性がある。
例:銃弾の場合
〃10cc以下→プラスチック弾〜小口径弾数発(亜音速)、射程距離10m
〃 20cc  →大口径数発(超音速)、射程距離10m
〃 50cc  →ライフル弾2発(超音速)、射程距離20m
〃 80cc →機関銃クラス(超音速)、射程距離20m
〃100cc →重機関銃(超音速)、射程距離30m
〃200cc →機関砲(超音速)、射程距離40m
〃400cc →高速徹甲弾に匹敵(極超音速)、射程距離50m

ちなみに刃物に加工したときの射程距離は銃弾の3/1以下で
威力もやや劣る

破壊力-(量によって変動)スピード-(量によって変動)射程距離- (量によって変動)
持続力-E 精密動作性-C 成長性-B

>>35スイマセン…元来せっかちなものでつい…。でもまあ、これだけ余裕ぶっこいているんで
 “ツケ”があります。そういうスタンドです】
【よねさん:物語の整合ありがとうございます。
      僕のせいで混乱させてしまってスイマセン
      TRPGって難しいですね。身が重たいです】
【佐藤さん:初めまして。実は吉野さんより少し先に投下したつもりでしたが…ズレてたみたいです
      申し訳ないです】

29841 :生天目有葵 ◇BhCiwB2SCaJ5:2011/01/21(金) 22:43:02
ホールから抜け出した生天目有葵はリノリウムの冷たい廊下を調理室に向かって直走っていた。
どことなく張り詰めたような静寂が廊下の底辺に停滞し先ほどまでの騒がしさはまるで嘘のよう…。

耳にあてた携帯電話の向こうでは佐藤ひとみが別の誰かと会話を交わす声が遠く聞こえている。

「今回はちっこいホウキのやつとか追いかけて来ないね」

追っ手に警戒しながらも調理室前に到着した生天目は静かにドアを開け調理室に侵入。
周囲を見まわしながら一つ息を吸って吐き、携帯電話の向こうの佐藤に問いかける。

「はーい。調理室につきました!ネズミは消えた?」

ここでもしもネズミが消えれば、消える理由の一つとして考えられることは調理室にエイドリアンが潜んでいるということ。
たとえホールの全員を鬼に変えたとしても本体であるエイドリアンが見つかってしまっては元も子もない。
あの時、鬼に変えることが出来たはずの佐藤ひとみを鬼に変えれなかった理由も
本体であるエイドリアンにゲーム終了の危機が訪れたと考えることが妥当なのかも知れない。

「ハズレ?でも室内は調べとくね。あの大きな冷蔵庫の中とかぜったい怪しい!」
冷蔵庫の扉を開ければそこには箱に入ったショートケーキ。よく見れば箱の側面にマジックで名前が記入されている。

「かげぬきのけーき?なにこれ…せこ…。この人のケーキなの?でもお腹がすいたから食べちゃお」

生天目はケーキを頬張りながら再び携帯で佐藤に話しかける。

「ねー。ネズミ消えてないでしょ?それぢゃあこれから私、ライブラリにむかっちゃうけど、
たしかライブラリではイケメンさんとよねさんがスタンドバトルしたんだよね?
やっぱ怪しいのはそこ?バトルに驚いたエイドリアン君が本体を守るために、
ひとみんの鬼化も放り投げてネズミを本体の守りに戻したって考えが妥当…?
うーん。それはそれでなんだか単純な気もする…。まあ、とりあえずライブラリにむかうから。ぢゃ…」

唇についた生クリームをぺろりとなめると生天目は調理室をあとにした。

299ザ・ファンタジア ◆tGLUbl280s:2011/01/23(日) 00:11:22
>「答えは聞いていないッ!!Sum41 Re・Birthッ!!私の服は水を弾く!つまりレインコートとなるッ!」

勝ち誇った表情のよねにしがみついている内に、ネズミの心にちょっとした悪戯心が湧き上がった。
――――この青年の勘違いに乗ってやるのも面白い―――と。

よねはザ・ファンタジアを見た目通り『霧』として扱ったが、それは間違いである。
『霧』は空気中に微細な水滴が浮遊し乱反射を起こすことで白濁して見える。一見気体のように見えるが液体の粒子の集合体である。
霧化状態のザ・ファンタジアを『液体の水』=水滴の集合とするならば
実体化したザ・ファンタジアは『固体の水』=氷という理屈が成り立ってもおかしくは無い。
では、煙となって消失したザ・ファンタジアは無色透明な気体である『水蒸気』に姿を変えていたのか?
読みとしては悪くないが、この説ではザ・ファンタジアの行動に説明のつかない部分がある。

よねの前にザ・ファンタジアが現れた時、スポーツジムの扉は全て施錠されていた。
よねは目にしていた筈だ。まず天井付近に霧が渦を巻き、地上に降りて実体化する様を。
ザ・ファンタジアは天井をすり抜けて現れたのだ。
分子の大きい『水蒸気』では壁や天井を通り抜けるのは困難である。
ならば、ザ・ファンタジアはどうやってコンクリートをすり抜けたのか――――?

ザ・ファンタジアの特殊能力は、身体を分解し粒子化すること。
身体を原子――素粒子レベルまで分解することで、不可視化、物体透過、肉体の再構成を可能にする。
可視化できるレベルまでしか分解が進んでいない粒子の荒い状態が、見た目として『霧』のように見えていただけなのだ。

よねは読みを誤った。しかしその誤りに敢えて乗ってやろう。
反撃の手段を思いつき、一転攻勢に出て青年は、いわば絶頂の状態にいる。
希望を膨らますだけ膨らませた挙句に、絶望の淵に叩き込んでやったら青年はどんな顔をするだろうか。
想像するだけで愉悦の余り震えが走る。天狗の鼻は高ければ高いほど折り甲斐がある。
悪趣味なネズミはそう思い、心の裡でほくそ笑んだ。


ザ・ファンタジアは、それとなくよねに巻きつけていた大蛇の胴体を緩め、大袈裟に声を上げた。

『アレッアレレレ〜〜〜♪身体が、手が滑るよぉ〜〜体が弾かれるゥーーーーーー♪どういうことだなんだァーーー??』

ネズミは悪知恵こそ回るものの、演技は大根そのものだった。
少し気の利いた者ならばそれと見破るのは容易いだろう。

ネズミが締め付けを緩めた拍子に、よねは速やかに大蛇の縛めを脱した。
青年は高らかに勝利を謳い上げる。

>「形成逆転だとは思わないか?お前は次に、"僕は霧だからダメージは与えられないよ〜〜♪"と言うッ!
>無駄だァッ!周りを良く見ろと言ったハズだッ!お前の周りに立っているスタンド使いは全員、布で出来た服を纏っているッ!意味がわかるか?
>"スタンド能力によって吸水力を上げてやればお前の攻撃はことごとく無効化できる"ということだよッッ!!」


『……僕は霧だからダメージは与えられないよ〜〜♪……ハッ???吸水力??なっナンダッテぇ〜〜〜???!!!』

同じ台詞を被せ、"しまった"とばかりに両手で口を塞ぐ。もちろん演技だ。
ネズミは思惑通りに事が進んでいることに満足していた。

300ザ・ファンタジア ◆tGLUbl280s:2011/01/23(日) 00:13:12

『ちっちっくしょおぉぉぉ〜〜〜♪完全に手詰まりだァーーーーーッ!!もう逃げるしかねぇ〜〜〜♪』

情けない後ずさりの仕草を見せつつ、ネズミは再度よねに襲い掛かるチャンスを伺う。
襲われたよねは、服の吸水率を書き換えるだろう。
しかし、その行動の無意味さを知る頃にはもう遅いのだ。今度こそ鬼化は避けられない。

ザ・ファンタジアが、よねとの間合いを測っていた、その時――――

ズバン!!!

凄まじい風圧が、ネズミの顔を掠めて通り過ぎた。
何かがヒラヒラと宙を漂う―――輪切りの三角錐と、ウチワのような丸いモノが……。
ネズミは自らの右耳にゆっくりと手を当て、そして叫んだ。

『ギャッアァァァアアアアアアアアーーーーーーーッッ!!痛てえ!!痛てえよぉぉぉ♪♪みっ耳がああああ!!!』

傷口から溢れ出す霧を丸っこい手で押さえ、ネズミは背後を振り返る。
座席の一つに陣取る見慣れぬ顔―――そこには今まで"居なかった筈の男"が、足を高々と組み上げて座っている。


>「なんだッ!?どういうんだ!?」

男は、よね達の仲間ではなかったのか。よねさえ驚きの声を上げている。

>「やれ…決まったようだな」
>「驚くのも無理は無い。ついさっき来たばかりだし、キサマやそこの女が探知できるはずがないからなこの俺を。
>バッチシ、計画通りだった」

座席に座っていた男―――くっきりとした顔立ちの外国人は、澄ました顔で云った。

301ザ・ファンタジア ◆tGLUbl280s:2011/01/23(日) 00:16:52

「ちょっと……!誰か早く引っ張り上げてよ!私の細い足を更に細くしたって、自力では出られないんだから!」

闖入者出現を余所に、佐藤ひとみは一人、床から足が抜けずに、もがいていた。
よねは床を元に戻したが、素材が金属からコンクリートに変わっただけで、ひとみが床に埋め込まれている状況は変わらない。

『いっ痛えぉよ〜!!ちっくしょおぉおおおぉぉ♪こうなったら、是が非にでも鬼を増やしてヤルゥ〜〜〜♪
 まずは手近な所からダァ!据え膳食わぬは男の恥じィ〜〜♪
 化粧がヒビ割れそうな年増ババァでも、この際仕方ねェ〜〜!!』

耳を押さえ床を転がりまわっていたネズミが、突如起き上がり、駆け出した。
ネズミの下半身は既に霧化し始めている。
林立する座席を物ともせずに通り抜け、一直線に向かう先は、動きを封じられ、孤立した佐藤ひとみ。
誰よりも早く、コンクリ詰めとなった女の側に到達し、その腕をむんずと掴んだ。


「ひいっ……!ヤダっ…何なのよこれ……ッ!!」

ひとみは悲鳴を上げた。
掴まれた腕が白い煙を上げて崩れ、同じく霧となったネズミに混じり込んでいく。
その様を注視するものは気づくだろう。ひとみの腕を掴む手、その掌が常の黒色を欠い白く変色していることを。
3秒ほどで、ひとみの身体は完全に霧と化し、ネズミと共に霧散し消え失せた。
床に脚型のついた二つの穴を残して――――


しばらく後、ホールの二階席から声が響く。

『ひひひっ♪大年増はもらったよぉ〜〜♪……あと1秒〜〜〜♪ハイ♪鬼ババァの完成〜〜〜♪♪』

二階席を見上げれば、そこには
背後からネズミの黒い掌に両腕をしっかりと掴まれ、茫然自失で立つ、佐藤ひとみの姿。

『ヘイ♪そこのクソッたれラテン人♪オマエだよオマエ♪気障ったらしい顔しやがってぇ〜♪
 さっきはよくも僕のチャームポイントを吹っ飛ばしてくれたねぇ〜〜♪
 オマエは鬼にはしないよ♪今すぐブッ殺してやるゥ〜〜〜♪』

ネズミは自らの身体を、へらの様な平たい形状に変化させた。
そして、金属並みの硬度を付加した身体を高速で回転させ、錐揉みしながら二階席から飛び降りる。

回転するへら状の身体はヘリコプターの羽、兼、ミキサーの刃。
空中を自在に飛び回り、ネズミミキサーはラテン系の男に体当たりを目論む。
高速回転の刃は生半可な銃弾など弾き飛ばす威力だ。もし仮に身体に触れたならばズタズタに切り裂かれるだろう。

302ザ・ファンタジア ◆tGLUbl280s:2011/01/23(日) 00:24:13

一方―――虚ろな目つきで棒立ちになっていた、二階席の佐藤ひとみに変化が起こる。
眼に暗い光が宿り、口の端が少しずつ吊り上がる。
佐藤ひとみは下を向いたまま呟く。

「………すご〜くハイな感じで、それでいて腹立たしいような…変な気分……何だかイライラするわ…」

ヴィトンの皮製トートバッグから、アルミ製のハンドドライヤーのような物を取り出し、
階下の面々に見せ付けるように掲げた。

「これ、何だと思う?護身用になるかと思って…フルムーンに3Fの工房から持ってこさせてたのよ。
 答えは『ネイルガン』……釘を打ち出す道具よ。
 便利なのよ〜コレ…このボタンを押せば非力な女でも簡単に釘打ちが出来るんだから……
 ちょっと押してみようかしら?」

銃に似た無骨な工具のグリップを握り、引き金代わりのボタンに人差し指を添えて―――押す。
鋭利な先端を持つ鉄の棒が、銃口から弾き出され―――天野の直ぐ足元の床に突き刺さる。

けたたましい笑い声を上げながら、
佐藤ひとみは、階下の面子―――天野、よね、吉野を狙い、手当たり次第に釘の弾丸を撃ち出し続ける。


>「はーい。調理室につきました!ネズミは消えた?」

場違いに能天気な有葵の声が、床に落ちた携帯電話から漏れ出している。
吉野きららの足元には、佐藤ひとみが投げ出した携帯電話が転がっていた。



【1レス目:ザ・ファンタジア、よねの勘違いに乗って、霧(水)の振りをする】
【2レス目:アンドレさんが現れて、ネズミの耳をちょん切る】
【3レス目:ブチキレたネズミ、佐藤を鬼化し、アンドレさんにミキサー攻撃】
【4レス目:鬼化した佐藤、天野さん、よねさん、吉野さんにネイルガン(釘打ち機)で攻撃】
【ザ・ファンタジアは触れた物体を、自分の体と一緒に粒子化する能力を持っています。
 この能力を使う時や、体が一部でも粒子化(霧化)している時は、触れた相手を鬼化する能力を失ないます】
【吉野さんに携帯電話を誰かに拾ってほしいなぁ〜なんて…】

303アンドレ ◇n.pJPZU7Yk:2011/01/23(日) 23:45:51
>『ヘイ♪そこのクソッたれラテン人♪オマエだよオマエ♪気障ったらしい顔しやがってぇ〜♪
>さっきはよくも僕のチャームポイントを吹っ飛ばしてくれたねぇ〜〜♪
>オマエは鬼にはしないよ♪今すぐブッ殺してやるゥ〜〜〜♪』

ふんと軽く鼻を鳴らすアンドレ。もはや彼はファンタジアただのよく喋る小動物としか捉えていない。
「こいよミ●キー。霧になんかならないで全力でかかってこい」
挑発しているにも関わらず、特に身構えもせずにただ涼しい顔で見据えるこの男の目には
確かな勝利の色がギラギラと輝いていた。

>回転するへら状の身体はヘリコプターの羽、兼、ミキサーの刃。
>空中を自在に飛び回り、ネズミミキサーはラテン系の男に体当たりを目論む。
>高速回転の刃は生半可な銃弾など弾き飛ばす威力だ。もし仮に身体に触れたならばズタズタに切り裂かれるだろう。

報告通りだ、とだけ彼は思った。ザ・ファンタジアは不定形でありながら自動操縦タイプのスタンド。
単体だけで自由自在に姿形を変えこのようにドリルに化けて襲いかかることくらい造作も無いのだろう。
予測はしていたし、手はもう打ってあった。

バキンッ

ネズミのドリルの先端部分がいきなり断裂した。その断面には淡い赤色の液体…
そう!血がベットリこびり付いていた。

「“お前は詰んでいる”と言ったはずなんだがな。
頭に血を上らせて必死こいて反撃する前にまず、俺のスタンドについて少しでも考察したほうが良かったんじゃないか」

目の前から飛び込んでくるドリルを腕で受け止める。先がなくなり鋭利ではなくなったとはいえ
激しい勢いで回転する刃は彼の肉を引き千切って血飛沫を噴き上げ鈍い音が響いた。
…だが、不思議なことにこの猛烈な攻撃は骨にまでは達しなかった。
何かが回転刃の進行を阻害しているかのように…

「『流血バリア』…流れ出る血でつくる結界だ。砲弾だって受け止められる
このままじゃあまりにも可哀想だからチョットだけ教えてやるが、
俺のスタンド『カーマイン・アピス』は俺自身の血液だ。よってあらゆるスタンドに付着させることができる。
スタンドでさえあれば雲だろうと―ナンであろうと。
そして俺の腕に食い込んでなかなかお前が抜けないのはこの能力が流れる血の硬度や形状すら
変えられるから…おかげで腕がぐちゃぐちゃで感覚も麻痺してきているな」

【身を呈して攻撃を受けきったアンドレ。余裕ぶっこいていますが血がかなり抜けて
 若干意識が朦朧としてきています…大技は後一回できるかどうか…】
【ちなみに血で受け止めていますが霧化(粒子化?)で抜け出すことは可能です
 そのまま追撃されるとさすがに不味いですね】

304尋深 業 ◆36nLoxn7a2:2011/01/24(月) 00:46:35
「大掃除なんてするもんじゃないな」
重い足取りで市民会館へ向かう1人の少年
その手には、そこで半年以上も前に借りた本が握られている
「なかなか見つからないから返したんだとばかり思っていたが…まさか、あんな有り得ない場所に隠れてたとはな
 やれやれ、せっかくの午前授業もこれじゃ台無しだな」
そう愚痴りながら少年は市民会館のドアに手をかけた
とその時、少年の背中に霊感じみた寒気が走る
「!?」
一瞬戸惑い、少年はドアノブから手を離し、辺りを見回す
「…気のせいか」
そう自分に言い聞かせ、再度ドアノブに手をかけ、今度こそ市民会館内部へと侵入してしまった
後々、いや、直後少年は「借りた本のことなど忘れるべきだった」と後悔する

市民会館に入った少年がまず始めに目撃したのは、何故か自身に向かってくる『釘』の存在だった。
「ッ…ゴールドフィンガー99!これを弾き溶かせェッ!」
少年が自身の異能の名を叫ぶと、背後から獅子の兜をつけた狂戦士があらわれ、黄金に輝く両拳で飛来する釘を叩き落とす。
叩き落とされた釘は煌々と赤く染まり、まるで飴細工のようにぐにゃりと曲がっている
「誰だ。こんなものを飛ばしてきたのは」
淡々とそうしゃべり、半狂乱気味に釘銃を乱射する佐藤に視線を向ける。
【本を返すつもりで市民会館に侵入と同時に佐藤の流れ弾が迫るのを確認、それをスタンドで叩き落とす】

305吉野:2011/01/25(火) 02:59:59
状況は目紛るしく反転、流動を繰り返していた。
よねが裏切り、傍若無人の闖入者が現れ――佐藤ひとみが鬼にされた。
薄暗い邪悪な笑みと共に、佐藤が釘打ち機を取り出す。
直後、凶悪な響きの笑い声に後押しされて降り注ぐ釘の雨を、吉野は再び床に身を投げて回避する。
御前等の歯車同様、並べられた椅子の塹壕に隠れてしまえば、二階から吉野を射線に捉える事は出来ない。
とは言え安心は出来ない。浮遊、長射程、複数の触手、視覚能力を併せ持つ佐藤のスタンドならば、
釘打ち機をスタンドに委ねて直上からの射撃が可能なのだ。
姿勢を低く保ちながらも、早急に離脱を図らなければならない。吉野は左手を庇いつつ這い始めて、

>「はーい。調理室につきました!ネズミは消えた?」

しかし不意に背後から聞こえた声に、動きを止めた。
肉声とは言い難い薄っぺらで雑な音声は、床に放り捨てされた携帯から漏れている。
そう言えば先程、ネズミの消失を再現するべくホールから出て行った少女がいた。
思い出して、吉野は左手を伸ばして携帯を掴んだ。
まだ違和感の残る左手だが、携帯を掴むくらいならば十分可能だ。

「……ネズミの代わりに、あの女の幾許も無い理性が消えましたわ」

呑気な質問に、吉野は皮肉を返す。
生天目にも携帯越しに聞こえているだろう。
釘打ち機を乱射する佐藤の、けたたましい笑い声が。

「ですが……貴女はこのまま、図書室に向かって下さいな。
 もう時間もあまりありません。一歩退いて体勢を立て直すより、転んででも前に進むべきですわ。
 予定通り、ネズミの消失条件に参加者の場所が関係しているのかを調べて下さい」

静かに手短に生天目に告げた吉野は、視線をネズミの方へと向けた。
正確にはネズミと対峙している、外国人風の男にだ。
吉野が注意しているのは、男のスタンド攻撃と同時に漂い出した臭気。

「あと……今調理室でしたよね。だったら水と、自然塩を出来るだけ持ち出して下さい。
 自然塩がないのなら、まあ普通の塩でも構いませんわ。どうせ私が使う訳じゃありませんし」

最後の一言は小さく呟いて、彼女は更に続ける。

 もう一つ、通話はこのままで。仮にネズミが消失したとしたら、そのタイミングは正確に知りたい。
 電源に関しては……一応、アテがあります。どうあれ、今は惜しむべきではない」

306吉野:2011/01/25(火) 03:00:16
左手を添えたまま、吉野はほんの僅かにだけ椅子の塹壕から頭を覗かせた。
御前等のスタンドならば佐藤の釘打ち機をどうにか出来るかも知れない。
だが御前等は、この状況の急変に付いて行けず精神的に右往左往しているようだった。

「折角役に立つ時が来たと思えば……あのゲス男……!」

しかし恨み言を零していても仕方がない。
頼りの綱は御前等だけではない。
一度は浅慮の末に妄言と共に裏切ったよね意外にもう一人、協力を仰げる人間がいる。

>「誰だ。こんなものを飛ばしてきたのは」

「あの女を許してあげて下さいな。彼女は今、在り来たりな言い方をするなら操られているのです。
 あちらのネズミ……貴方も持っている不思議な力、『スタンド能力』によって。
 そう、貴方のソレ……私にも見えていますわ。そこのゲスにも、あの女にも」

椅子の陰にしゃがみ込んで体を隠したまま、吉野は尋深に話し掛ける。
彼女の視線は尋深と同時に、彼の傍に立つスタンドをも捉えていた。

「詳しい説明をしている時間はありませんが……一時間後に爆発する時限爆弾と目の前の殺人狂なら、
 当然殺人狂の相手をすべきだと思いますよね?と言う訳で、あの女の気を引いて欲しいのです。
 断ってくれても構いませんが……お互いに死ぬ可能性が上がるだけなので悪しからず、ですわね」

一方的に淡々と告げると、吉野は再び身を隠して移動を始める。
向かう先は二階ホールへの階段だ。
スタンド能力を殆ど失っている彼女は今、佐藤のスタンド探知に補足されない。
医務室前での微かな反応も、蕾を使った後でしか感知されなかった。
今の半狂乱の佐藤ならば、密かに近付いて尻尾を切り落とせる。
吉野はそう判断したのだ。
逆にここから佐藤を逃してしまっては、非常に不味い事になる。
何せ相手からはこちらの位置が筒抜けである上に、透明化が可能なのだ。
一網打尽にされてしまうのは、眼に見えているのだから。

【尋深さん→佐藤の気を引いてくれたらなと。もうちょい気の利いた事言えたら良かったんですけど、
      状況が状況だしあんまり長話もなぁと……すいません
 佐藤さん→椅子の合間に身を隠しつつ接近。こっそり尻尾を切るつもりです
      鬼ババアタイムがどれくらい続けたいかによって仕掛けるタイミングとか考えようと思いまする
生天目さん→水と自然塩のデリバリー注文しました。あと図書室に向かうように頼んでみたり。使い走りみたいですいません】

3078 :天野晴季 ◇TpIugDHRLQ:2011/01/26(水) 21:14:35
>「答えは聞いていないッ!!Sum41 Re・Birthッ!!私の服は水を弾く!つまりレインコートとなるッ!」
>「形成逆転だとは思わないか?お前は次に、"僕は霧だからダメージは与えられないよ〜〜♪"と言うッ!
 無駄だァッ!周りを良く見ろと言ったハズだッ!お前の周りに立っているスタンド使いは全員、布で出来た服を纏っているッ!意味がわかるか?
 "スタンド能力によって吸水力を上げてやればお前の攻撃はことごとく無効化できる"ということだよッッ!!」
「…あの。ザ・ファンタジアからは水のにおいがしません。もしかしたら霧じゃないのかも…」
>『アレッアレレレ〜〜〜♪身体が、手が滑るよぉ〜〜体が弾かれるゥーーーーーー♪どういうことだなんだァーーー??』
(え…こいつ本当にアニメーターのスタンドなのか…? それともこのわざとらしい演技も作戦の内なのか…?)

>「ひいっ……!ヤダっ…何なのよこれ……ッ!!」
>『ひひひっ♪大年増はもらったよぉ〜〜♪……あと1秒〜〜〜♪ハイ♪鬼ババァの完成〜〜〜♪♪』
「佐藤さんッ!? …ダメだ、間に合わない…」
佐藤がザ・ファンタジアと共に霧化して、二階席へ移動した。そしてネズミの言葉通り…
>「………すご〜くハイな感じで、それでいて腹立たしいような…変な気分……何だかイライラするわ…」
鬼化していた
>「これ、何だと思う?護身用になるかと思って…フルムーンに3Fの工房から持ってこさせてたのよ。
 答えは『ネイルガン』……釘を打ち出す道具よ。
 便利なのよ〜コレ…このボタンを押せば非力な女でも簡単に釘打ちが出来るんだから……
 ちょっと押してみようかしら?」
佐藤がネイルガンから打ち出した釘が、天野の足元に刺さる
「うわぁあああ!!!!」
後ずさる天野
「落ち着け…落ち着くんだ…。フリーシーズン。佐藤さんの右手部分の気温を下げるよ…手の感覚が無くなる位に」
フリーシーズンの能力を、佐藤の右手部分のみに集中させて発動する天野。フリーシーズンの気温・湿度操作は、範囲が狭いほどそのスピードを上げるのだ
狙いは佐藤の手を悴ませて、ネイルガンの操作を封じることだ
(さっきあのネズミの手…白かった。真っ白だった。その時明らかに3秒以上触っていたのに、佐藤さんは鬼じゃなく霧になった
…これもあいつの能力か…?
だとするとあいつは自分と触ったものの形を変えられ、その間は鬼化能力が使えない、という仮説が立つわけだけど…
…後で実証してみよう。今は佐藤さんの鬼化を解くのが先だ…)
フリーシーズンの能力使用中、天野は考えた。自らの取り得、『観察力』をフルに使って。

30810生天目有葵 ◆gX9qkq7FNo:2011/01/27(木) 15:14:11
>「……ネズミの代わりに、あの女の幾許も無い理性が消えましたわ」
携帯からは吉野きららの舌鋒。それにまじり佐藤ひとみの哄笑も聞こえる。

(……)
生天目有葵は想像した。
没表情な白目となって、酔い痴れたような目付きの佐藤ひとみが口を大きく開き
呆けた高笑いを喉の奥から吐き出している様を。赤い舌が御前等の顔面に蛇のように巻きついている様を。

(地獄絵図ね…)

>「ですが……貴女はこのまま、図書室に向かって下さいな。
 もう時間もあまりありません。一歩退いて体勢を立て直すより、転んででも前に進むべきですわ。
 予定通り、ネズミの消失条件に参加者の場所が関係しているのかを調べて下さい」

地獄でも冷静な吉野は手短に静かに言葉を紡ぐ。

>「あと……今調理室でしたよね。だったら水と、自然塩を出来るだけ持ち出して下さい。
 自然塩がないのなら、まあ普通の塩でも構いませんわ。どうせ私が使う訳じゃありませんし」
最後の一言は小さく呟いて、吉野は更に続ける。
>「もう一つ、通話はこのままで。仮にネズミが消失したとしたら、そのタイミングは正確に知りたい。
 電源に関しては……一応、アテがあります。どうあれ、今は惜しむべきではない」

「えっと…。自然塩と水を持って、私はそのままライブラリにむかってもいいってこと?
よくわからないけどわかったわ。通話はそのままにしとく…。あなたもがんばってね」

生天目は自然塩と水を探すために調理室を物色し始める。
水はケーキが保存されていた家庭用の冷蔵庫にペットボトル入りの天然水が数本あったため容易に見つけることが出来た。
でも問題は自然塩。

「ここの調理室ってよく見ると本格的な感じ。レストランの厨房みたい。
バジルとかあるし、あっちの奥にはもっと大っきい冷蔵庫があるし」

調理室の奥には人が数人入れるほどの業務用の冷蔵庫。
生天目がゆっくりと扉を開けてみると幸運なことに大き目のタッパーに自然塩が入っていた。
ステレオポニーは部屋の隅にあったレストランなどで料理を運ぶ車輪のついたテーブルにペットボトルや自然塩を積みはじめる。
おまけに鍋や調理器具なども入手し積む。

「…ここってレストランじゃないよね?元市民会館って思ってたんだけど…。
貴族でも住んでるみたい。それにこれを見てよ。ソーセージにワイン」

生天目は業務用の冷蔵庫の中のソーセージを見つめていた。
ソーセージはあり得ないほど冷蔵庫中に溢れかえっており、よく見ればわかるだろう。なんと人の生首の切断面から生えている。
このソーセージの正体はブローノ・レンツィのクッキング・テンパラスの犠牲者たち。
哀れな犠牲者たちは自分の内臓で自分の肉を包みこみワーストたちの集会時には美味しい料理としてその身を捧げていたのだ。

生天目はそんなことも露知らず車輪付き猫足テーブルを押しつつ調理室をあとにするのであった。

30914 :ザ・ファンタジア ◇tGLUbl280s:2011/01/31(月) 21:52:51
身体を螺旋状の刃に変形させてホールの上空を飛び回るザ・ファンタジア。
高速回転する切刃を目標に向け、その肉体を貫かんと、ラテン系の男に飛び掛る。

>バキンッ

鈍い金属音。何か硬質の物が回転刃に当たり、弾かれて飛んだ。
直後、ピシリ、と身体の内側から亀裂音が走る。ネズミは回転速度を落とし視線を下に向けた。
視界に捉えたものは先端部分の欠けた自らの体と、断面にこびり付いた赤い液体。
ネズミ自身のものではない赤い液体が、何者かの攻撃の痕跡を示している。

『ギャッアァァァーーーーッッ!!なんじゃあ♪♪こりゃぁあああ♪!!』

足先をもがれるような激痛に、ネズミは顔を歪め叫び声を上げた。
折れた先端の断面から、絶え間なく白い粒子が流れ出している。
一度粒子化し身体を再構成すれば、あらゆる負傷、欠損が完治してしまう無敵のスタンド…ザ・ファンタジア、
しかし、実体化時の負傷は痛覚を伴うのだ。

『やりやがったなァ♪♪この腐れラテン野郎!!
 このまま削り取ってやるゥゥゥーーー!!背骨まで砕いてカルシウムたっぷりのミンチ肉にしてやるゥ♪ーーー!!!』

激高したネズミはラテン男に体当たりを目論む。
先端部分が欠けたとはいえ、金属をも穿つ高速回転の切刃は、生身の肉体を砕くに充分な威力を持つ。
相手が、能力―――スタンドを盾に防御の構えを取れば、スタンドごと肉を裂き、骨を砕いてやるまでだ。
自らの肉体を再構成するよりも、相手に止めを刺すことが先決…ネズミはそう判断した。
切刃を外側に立てて殺傷力を上げた身体を激しく回転させ、男にぶち当てる。
男は咄嗟に片腕を上げて回転刃を受け止めた。
切り裂かれた肉片が飛び散り、血が噴水のように吹き出す。

(勝った……ざまぁwww♪♪♪)ネズミは、ほくそ笑んだ。

肉体で刃を受けきるなど下の下策…策のない証拠だ。
このまま腕を粉砕しながら進み、死に至るまで胴体を削り取るまで――――!

―――しかし、吹き出す血を前に、ネズミドリルは前に進めない。
それどころか自在に形を変える血の幕は螺旋形の刃の間に入り込み、ドリルの回転をも阻害する。
いつしかネズミは金属並みの強度で凝固した血液に捕えられ、進むことも引くことも出来なくなっていた。

>頭に血を上らせて必死こいて反撃する前にまず、俺のスタンドについて少しでも考察したほうが良かったんじゃないか」
>「『流血バリア』…流れ出る血でつくる結界だ。砲弾だって受け止められる

ズタズタに負傷した腕にまるで無頓着な様子で、男は能力の解説すらしてのける。

31015:ザ・ファンタジア ◇tGLUbl280s:2011/01/31(月) 21:53:26
ネズミは歯噛みして悔しがるものの、血の幕を破ることが出来ない。
ならば……、とネズミは策を転じた。
脱出と負傷の回復、新たな攻撃に備えての肉体の再構成。
一挙両得ならぬ一挙三得を狙い、ネズミはドリルの形状を捨てて粒子化し、血液バリアから逃れる。

しばらく後……、アンドレの頭上2m程の位置にモヤモヤとした霧が集い、形を取り始めた。
まずは丸い耳二つ備えた頭部が現れ、次には背中に生える大きな薄い羽が形作られた。
手足はいやに細く、体の下にだらりと垂らしている。
特筆すべきはその口元。細く長く伸びたその口の先端は、注射針のように鋭く尖って……
その姿を表すならば、ネズミの顔を持つ巨大な蚊―――!

『ラテン男〜〜♪♪お前アホかあ〜〜♪自分の能力をペラペラ喋っちゃってさあ〜〜♪
 後悔させてやるぜぇ〜〜〜♪その余裕綽々の態度を〜〜♪』


ネズミ蚊は耳障りな羽音を響かせてホール上空に舞い上がる。羽音が小さくなるほど高く。
天井付近の闇に溶け込むほど高く舞い上がると、ネズミは一転急降下し、
落下の勢いそのままに、尖った口先をアンドレの首筋を狙って突き立てる。

『血液を変形させる能力だってぇ〜〜♪なら材料を全部吸い取ってやるまでだァ〜〜
 カラッカラに干からびやがれ〜〜♪このスカシ野郎!!!』


【ザ・ファンタジア:蚊に変身しアンドレさんの血を吸い取ろうとしています】
【アンドレさんは負傷の程度も軽くないですし、求む!援軍】

31116 :アンドレ ◇n.pJPZU7Yk:2011/01/31(月) 21:54:42
>『ラテン男〜〜♪♪お前アホかあ〜〜♪自分の能力をペラペラ喋っちゃってさあ〜〜♪
>後悔させてやるぜぇ〜〜〜♪その余裕綽々の態度を〜〜♪』

(やれやれ言ってくれるな…素人なら昏睡状態になるぐらい血を流したんだぜ
 既にボロボロだ…だが、それこそ俺の真骨頂…フフフ、まんまと喰いついてくれた
 傷ついたことによって研ぎ澄まされた『カーマイン・アピス』の真髄を拝ませてやる)

>落下の勢いそのままに、尖った口先をアンドレの首筋を狙って突き立てる。
>『血液を変形させる能力だってぇ〜〜♪なら材料を全部吸い取ってやるまでだァ〜〜
> カラッカラに干からびやがれ〜〜♪このスカシ野郎!!!』

落ちてくる鋭い針を一重で避け、腕で払いのけて距離を空ける。
「無駄無駄。蚊に変身したくせして随分動きが単調じゃないか。」

すかさず僅かな血を後方の壁ににぶつけた。
威力をわざと弱めたため音も小さくファンタジアの死角のため気づかれないはずだろう。
さっきのバリアでかなりの血が壁や床に飛び散っているのだから。

それは血文字だった。本来カーマイン・アピスはそれほど精密に操れるスタンドではないのだが
彼の手先が器用な事もあり指先で微妙な調整ができ、血を字形の弾丸に変化して放つこともできなくはなかった。
ただしこれは戦闘よりももっぱら別の事に使われており、それはメモノートに日程を記している際ペンのインクが切れたのが発端だった。
幾度の試行錯誤の上、彼がようやく習得したちょっとした小技だ(そのため彼はいままでに練習用のメモ帳を軽く3桁は突き破っている)。

彼は日本語にやや疎いこともあり血文字の内容はひらがなとカナ混じりの雑な字。

“おレだケデハしトメキれなイ、だレカてをカしテほシイ”(俺だけでは仕留め切れない、誰か手を貸して欲しい)

充分にあのネズミ野郎に対する勝算はあったが、血をいつもより流したし、保険替わりになる。悪くない賭けだ。
(さて…あとは奴の鼻を明かすだけ)

「ところでファンタジア。もしかしたらお前はもうすぐ再起不能になるかもしれないんだが
 本体――エイドリアンの場所を教える気はないか?」
掲示板や照明具などに飛び散った血が床に滴り、しだいに血の池を形成していた。


【ちをすうだなんてとんでもない!殺られる前におおおおおっ、刻むぞ血液のビート!】
【血の池といっても比喩です。500ccぐらいです(まあ一度に池ができるくらい血が噴きだしたらやばいですから…)】
【援軍してくれる親切な方はおられませんか。自分も可能なかぎり単身で挑むつもりですが】

31263 :佐藤ひとみ ◇tGLUbl280s:2011/02/02(水) 21:11:32
佐藤ひとみは二階席の手摺から身を乗り出し、右手に構えた釘打ち機から釘の弾丸を乱射し続ける。
ホールに響き渡る女の高笑い、降り注ぐ釘の雨!

まずは天野を狙い、次は吉野を…よねを……
気の向くままに標的を変え、悪ふざけのように外して撃ち外しては撃ちを繰り返す。
そうこうしている内に、いつの間にか天野と吉野の姿が視界から消えていた。
ずらりと並ぶ観客席…その何処かに身を隠し、釘を避けているらしい。

小さく舌打ちして、ひとみは手元にスタンドシートを出現させる。
シートには、座席の見取り図と数個の光点―――"ホール1Fのスタンド使いの位置情報"が映し出されている。
透視を使えば障害物の向こう側の相手をつぶさに視認できるが、透視対象に意識を集中する分、視野が著しく狭まる。
固体認識できずとも、ホール全体をカバー出来る能力者探知の方が効率的、と判断したのだ。

案の定、座席の下に二つの反応が在る。
ひとみはその反応を『天野晴季』と『吉野きらら』のものだと判断した。

ザ・ファンタジアに精神干渉を受けた人間は、欲望のままにゲーム参加者を攻撃する鬼と化す。
鬼の体内ではアドレナリンが過剰分泌し、闘争心が増し気分が高揚する。
しかし副作用もあった。異常な興奮は冷静さを削ぎ判断力を狂わせる。
ひとみは吉野きららの能力喪失を……"能力者探知"に反応が出ないことを、完全に失念していた。
そして、釘を乱射している間にホールに侵入した青年――――尋深業の存在に気づくことも無かった。

そう、座席下の二つの反応は『天野』と『尋深』。
佐藤ひとみは吉野きららの行動を―――自らに接近する者の動きを、察知していない。


シートに向けていた視線を上げ、ひとみは憎々しげに呟く。

「ゴキブリって追いかけるとす〜ぐ家具の下に隠れちゃうのよねえ。コソコソ這い回って汚らわしいったらないわ!」

バッグに手を突っ込み、白いビニール袋に入った小さな容器を取り出す。
虫の絵がプリントされた短筒状のその容器は、いわゆる『燻蒸式殺虫剤』。
市民会館までの道すがら、立ち寄ったドラッグストアで購入していたものだ。
季節は真夏。意外に生活のだらしない佐藤ひとみの部屋は、それが必要な状態にあったのだ。

31364 :佐藤ひとみ ◇tGLUbl280s:2011/02/02(水) 21:11:56
「コソコソ隠れる害虫は駆除しなきゃねえ〜……」

黄色い帯の巻かれた容器の蓋を開け、内蓋のアルミを一気に剥がす。
既に細く煙を上げ始めた容器を掲げ、1F座席に向かって放り投げた。
白い煙が放物線を描き、天野と尋深の潜む場所の丁度中間地点に落下していく。

カランと軽い音を立てて床に落ちた容器から、もうもうと白煙が吹き出す。
害虫駆除の煙幕は空気よりも重く、下に溜まり安い。姿勢を低くしている者は、じきに呼吸すら困難になるだろう。

「ムカデや南京虫もイチコロな強力バ○サンよ。さっさと出てこないと窒息しちゃうわよ〜!」


ひとしきり獲物を燻り出す煙幕を眺めた後、ひとみは視線の矛先を変えた。
一人だけ椅子の下に身を隠すこともせず、白煙の海から突き出すように立ち尽くしている青年に。

「ふふっ……よね君は隠れたりしないのね。さすが男の子、立派だわ……
 でも、私をチタン漬けにしてくれた事に関してはオシオキが必要ねえ〜…
 安心して!鬼になってくれたら怪我は治してあげるから!」

言うが早いか、よねの肩に狙いを絞り、釘打ち機の引き金を引く――――
断続的に発射された三発の釘がよねに迫る!


興奮剤であるアドレナリンは痛覚を麻痺させる。
ひとみは気づいていなかった。
自らの手が最早狙いを定められない程に冷え、悴んでいることに。


【1F座席にバ○サンを投げて、隠れている人を燻り出すそうとしています】
【尋深さんは吉野さんのかわりに座席下に隠れてることにしちゃってす。すいません】
【よね君を釘打ち機で攻撃。天野君のおかげで手が冷えてるので狙いはかなりぺっぽこです。簡単に避けられるかも】

314御前等 ◆Gm4fd8gwE.:2011/02/13(日) 04:35:02
気配を限界まで薄め空気になりきることで存在感を秘匿する自宅警備スキル『影絶ち』。
よねが裏切りネズミが現れ佐藤が鬼と化したその瞬間から、御前等は隠密の如く息を潜め事態の経過を見守っていた。
理由はたったひとつ。ヘタレ故である。

(怖かったーーーッ!一体何がどうなってこーなってるんだ!?)

鬼化していた間の記憶がすっぽ抜けている御前等は現状の把握に人二倍の時間をかけねばならず、
しからば目まぐるしく変動する戦況に対応しきれていないのもまた道理であった。
吉野も天野も生天目も佐藤やネズミに対応するためどこそこへ散り、御前等はまたしても一人になった。
そんな彼が実況を見分すべく適当に歩いていると、壁に刻まれた飛沫血痕に不自然な歪さを発見した。
目を凝らさねば判別のつかない形であるが、そこに込められたスタンドエネルギーは感覚の目で読み取れる。

>“おレだケデハしトメキれなイ、だレカてをカしテほシイ”(俺だけでは仕留め切れない、誰か手を貸して欲しい)

確かにそう書いてあった。
まだ新しい、ついさっき刻まれたばかりと言わんばかりの、それはSOS信号だった。

(スタンドエネルギーが残っているということは、『これ』を刻んだ人間はまだ生きてる……)

助けられる、ということ。
その観念を御前等の価値観に照らし合わせ、言葉を修正するならば。

「まだ!俺にも『世界の中心』へ歩み寄る道が残されていたか――!」

叫び、決意し、覚悟して、御前等は踵を返した。

* * * * *

>『血液を変形させる能力だってぇ〜〜♪なら材料を全部吸い取ってやるまでだァ〜〜
> カラッカラに干からびやがれ〜〜♪このスカシ野郎!!!』
>「ところでファンタジア。もしかしたらお前はもうすぐ再起不能になるかもしれないんだが
  本体――エイドリアンの場所を教える気はないか?」

「その話、俺も興味あるな」

例のアメリカねずみと謎のラテン系男が拳を交えるその場所は、すぐに発見できた。
ご丁寧に壁や床へぶちまけられたおびただしい血液が、さながら軌跡の如く彼らの存在をガイドしてくれたのだから。
御前等がスタンドを発現させながら、ゆっくりと血糊を踏みしめるようにして闇の中から歩み出てきた。

「お久しブリーフ&トランクスだなアメリカねずみ。相変わらず著作権に弓引く見た目をしているなあお前は!
 なんだそれは蚊のつもりか!?その格好はアナーキー過ぎるというか、本国の人間からしてみりゃ冒涜だぞ!
 そして俺を呼んだのはアンタかラテン系のイイ男!あっ、ちょっと待ってリテイク。――我を喚んだのは貴様か!」

魔王っぽく演出しながら御前等は更に一歩。
一同に会した三者の、その誰もが己の殺傷圏内に相対する二人を入れて。

「よござんしょ、契約成立だ。今日の俺は召喚獣的なノリで誰かに手を貸そうと今決めた。感謝して敬え。
 そしてアメリカねずみ!ビジュアルの出ない文章媒体だからって貴様はやり過ぎた!」

アンバーワールドの両腕一杯に歯車を出現させ、

「かくなる上はこの俺が――著作権に抵触しないオリジナルなお前に造形し直してやる!」

その全てを回転させた――丸鋸のように切断力を持った拳となってアメリカねずみを刻まんと繰り出した。
腕いっぱいに張り付いて回転する歯車は、触れただけで色々と切り飛ばすだろう。


【アンドレとの間に割って入り、ファンタジアさんに向けてラッシュ】

3159 :よね ◇0jgpnDC/HQ:2011/02/14(月) 20:33:22
/ 安心して!鬼になってくれたら怪我は治してあげるから!」

プシュンプシュンプシュンとよねに釘が三連発で飛来する。
だが、その弾道はバラけていて、軽く身を動かせば用意にかわす事が出来た。

(あのクソアマが〜ッ!煙たいわ、釘が飛んでくるわで……)

佐藤の動きに気を配りながら、佐藤の死角になりそうな所を探す。

(釘か……そういや、役立たずの野郎がPhase2とか言ってたなァ。今使えればどれだけ便利か…)

もともと、よねが使っていたSum41 Phase2は"裏のよね"、即ち「好戦」という精神を司る潜在意識が発動を可能にしていたのだ。
今となってはそれが逆転している。フェイズ2はおろか、通常のSum41の能力ですらも十分に出し切れていないのが現状だ。

(だが、ヤツは釘を撃って回収はしていない…いつか釘は尽きるはず。本当に"いつか"だけどね…)

もはや神頼みだった。
佐藤の照準は正確ではない。このまま避け続けることも不可能ではないだろう。

だが、あまりにも非効率すぎる。何km走ればいいのかわからないマラソンほど心理的に辛いものは無い。
それに、どういう訳か部屋の室温が下がってきている。よねの体力が持つかどうかすらも怪しい。

そんな事を考えている時だった。
プツリと何かがよねの左足に刺さった。

佐藤の放った一本の鋭く尖った釘。それがよねの太もものあたりに深く突き刺さっていた。
あまりに突然の出来事に初めは痛みすらも感じなかった。

「えっ…は…?あ…ッ!あ、ああああ足ィーッ!!このドグサレがァァッ!!チ、チクショウ!!」

不運。当たり所が悪かったのか、足が思うように動かない。ピリピリと痺れているのだ。
次は確実に殺られる。

よねは後悔した。この煙の中なら、声さえ上げなければ被弾したことを佐藤に悟られなかっただろう。

(こ、殺されるッ!せっかくこの身体を自由に扱えるようになったってのに……ッ!!)

ずるずると自由の利かない左足を引きずってなんとか物陰に隠れようとする。
その間も容赦なく飛んでくる釘。物陰は未だ遠い。殺されるのも時間の問題だ。

31610 :よね ◇0jgpnDC/HQ:2011/02/14(月) 20:33:47
このまま逃げれば確実に殺される。

――よねは覚悟を決めた。
死ぬ覚悟ではない。生き抜く覚悟だ。

「……流石だ。流石。凄いなあ、佐藤さんよぉ〜。ほんとスゲェよ。私をここまで追い詰めるんだ。釘一本で。表の私が認めてるだけありますね。
 でも、それもこれで終わりです。釘は鉄だよなァ?ってことは、磁石にくっつくよなあ……?
 この米コウタのアホ野郎の記憶が戻ってくるんだよ。脳の使い方っていうかね。覚えてるかい、佐藤さん?」

プツリ。鋭い釘が一本。今度は右腕だった。
痛いが我慢する。

「私、前に一度あなたにSum41の力で磁力の強い磁石を渡したんですよ。居場所がどうのこうので。このアホはもう能力を解除しちゃってるみたいだけどね……
 で、考えたんだ。今ここでもう一度それを作れば釘は全部それにいっちまうよなぁ〜って」

そしてよねはかけていたメガネを取り、

「わかったか、このドアホッ!?よくも私の身体に傷を付けてくれたなァァッ!許さん!
 Sum41、Re・Birthッ!このメガネは強い磁力を帯びるッ!」

そしてそのメガネを佐藤のいる方向に投げた。ちょうど佐藤の後ろに落ちるように。

「お前がバラまいた釘でくたばりやがれェェッ!!
 いくら味方とは言え、この身体を傷つけたのは極刑に値するッッ!!」

そして地面に散らばっている、佐藤自身が放った釘が、佐藤の後ろにあるメガネへと強い磁力でひきつけられる。

その光景はまるで地面から無数の釘が佐藤に向かって放たれている様であった。

【散らばっている釘を利用して反撃】

31711 :天野晴季 ◇TpIugDHRLQ:2011/02/14(月) 20:34:23
>「ムカデや南京虫もイチコロな強力バ○サンよ。さっさと出てこないと窒息しちゃうわよ〜!」
佐藤が強力バ○サンを焚き、天野達を炙り出そうとしているようだ
(ゲホ…これは…確かに…キツイですね…でも…)
「フリー…シーズン…」
フリーシーズンの気流操作で、バ○サンの煙の流れを変え、窒息を免れる天野。勿論、尋深も避けるように操作している
「ゲホ…僕に、気体の攻撃は無意味だって…知っているはずですよね…佐藤さん…」
佐藤に向かって言っているのだろうか、だが声が小さい
「さて…。僕もしっかりしないと…逃げちゃ駄目だ」
リュックからコートとマフラー、手袋を取り出す天野。そして、それらを全て身に付けた。夏なのに
「よし、準備完了! …後は陰からこっそり…。準備して、フリーシーズン」
フリーシーズンに気温操作の準備をさせ、臨戦態勢をとる天野。(隠れながら)
(さて…狙いは佐藤さんの尻尾。湿度は十分。時間はかかるけど…気温を下げて即興の棘を作る…!)
心でそう呟き、佐藤の尻尾の上辺りの気温を下げ始めた

31812 :吉野 ◇H7TeP6yEkU:2011/02/16(水) 23:23:43
>「ムカデや南京虫もイチコロな強力バ○サンよ。さっさと出てこないと窒息しちゃうわよ〜!」

(こちらには気付いていない……。この分なら問題なく尻尾は切れそうですね……)

二階に上がり、果物ナイフを片手に、吉野は座席の谷間を進んでいた。
佐藤は相変わらず半狂乱の状態で、吉野の接近には全く気付いていない。

>「わかったか、このドアホッ!?よくも私の身体に傷を付けてくれたなァァッ!許さん!
  Sum41、Re・Birthッ!このメガネは強い磁力を帯びるッ!」

が、不意に吉野が握るナイフが、彼女の意図に反して揺れた。
よねの作り出した、超磁力を帯びたメガネに引き寄せられているのだ。
吉野は強く握り締めてナイフを保持し続けようとするが、叶わない。磁力が強すぎる。

(自信家で激情家……最も厄介な人種ですわね。それが自分を優秀だと思い込んでいるのなら、尚更に)

同時に、かつて自分もそうであったと思い出して、吉野は状況にそぐわない自嘲の笑みを零す。
だが、その表情は長く続かない。磁力に負けて、彼女の手からナイフが滑り抜けた。
横合いからのナイフが佐藤に刺さる事は無いが、間違いなく接近を悟られる。
故に――吉野は即座に立ち上がり、駆け出した。
予備のナイフはもう無い。無手のまま、それを隠さず、さらけ出して床を蹴る。

「貴女は、私を嘲笑うでしょうね。武器もスタンドも持たず何をするつもりだと。ですが……」

言葉と同時に彼女は身を屈めた。
疾駆の勢いは殺さぬまま、床を滑り、佐藤の背後に回る。
両手を伸ばした。左手は佐藤に生えた尻尾へ。
そして右手は――もう一本、メガネに引き寄せられたナイフへ。
先ほど御前等へと投擲した、ナイフへと。

「ナイフは二本あった。平時の貴女なら、気付いたでしょうに」

小さな蕾の兆したナイフが、白線となって一閃する。
しかし佐藤の尻尾は、完全には切断出来なかった。
磁力に引き寄せられたナイフを、吉野が御しきれなかったのだ。

「……失敗、ですか。これでもう、打つ手なしですわ」

苦々しく吐き捨てた吉野が、ナイフを手放した。
磁力に誘われたナイフは床へと直下せず、メガネに吸い寄せられる。

「ところで、最後の一つ教えてもらえませんか?今のその状態、頭の中はどうなってますの?
 自分の現状はサッパリ忘れている?その方が、これからなる身としては幸せですけど」

吉野が尋ねた。
最後のと銘打った問いは、けれども自暴自棄から来る物では、ない。
佐藤の尻尾を掴んだ時、吉野は手の平に異様な冷たさを覚えた。
間違いなく、スタンド能力によるものだ。
誰かが何かをしようとしていると理解して、故に吉野は時間稼ぎを図った。


【ナイフが磁力で手元から離れる、間違いなく気付かれる、フルムーンでマジに警戒されたら接近なんて無理
 だからいっそ一気に距離を詰めた、スライディングで背後に回って(磁力に引き寄せられてくる)御前等に投げたナイフ回収
 尻尾を斬りつける、完全に切り離せず失敗、だけど誰か(天野)が何か(棘を作ろうと)してると察して時間稼ぎ】

31914 :佐藤ひとみ ◇tGLUbl280s:2011/02/19(土) 19:59:27
>9-11
>13
狩りの興奮に酔いしれる佐藤ひとみは、急激な冷却による右手の痺れを全く感知していない。
1階に立ち込める白煙の海を見下ろし、ひとみは小さく笑い声を零した。

「ふふっ…ここからが狩りの本番よ…!」

宙に浮くスタンドシートには、1階の赤外線量を色域で表示したサーモグラフィ(熱分布画像)と、
加えて釘打ち機の照準が記されている。
人体から発せられる熱量を現すオレンジ色が、気温の下がったホール全域の青と鮮やかな対比を見せていた。

「よね君…相変わらず、どっか抜けてるわねぇ…煙幕の中に身を隠しているつもり?
 私の能力を忘れたの?あんたの動きは筒抜けよ…。
 ゴキブリみたいに椅子の下に這い蹲らなきゃ釘は避けなれないわよ。
 あんたより少しは利口な天野君のようにね!」

シート上の照準がよねを現すオレンジ色の人型に重なる。ひとみは釘打ち機のボタンに添えた指に力を込めた。
発射された釘は狙いの軌道を僅かに逸れたが、それでも的を射抜いた。
白煙の下から悲鳴が響く。

>「えっ…は…?あ…ッ!あ、ああああ足ィーッ!!このドグサレがァァッ!!チ、チクショウ!!」

「ビンゴ!…でも残念!
 頭を狙ったつもりだったけど足に当たっちゃったみたいねぇ〜…。
 フルムーンの照準は正確な筈なのに……発射の反動で手が痺れてきたのかしら?
 このクソ重い工具に私の華奢な手が耐えられないのも無理はないわね。」

ひとみは釘打ち機を自らのスタンド、フルムーンに委ねた。
フルムーンは絡ませた触手で器用に釘打ち機を支え、ホール上空に飛んだ。
よねの斜め上―――頭上2.5mの位置で滞空し、釘打ち機の照準を再びよねに合わせる。
よねの位置をシートで感知できるひとみに対し、煙幕内の彼の視界は閉ざされたに等しい。
頭上に浮遊するフルムーンの存在を察知しているはずがない。

「よね君!あんたの負けね!痛い目を見て反省することね!
 "もう一人のボク"と入れ替わった…なんて邪気眼病の中学生みたいなこと言ってないで、さっさと鬼になれば良かったのよ!」

まずは一発…牽制の為に右腕を打つ。
そしてもう一発、今度はこめかみに狙いを定めたその時、煙の下からよねの声が響いた。

>Sum41、Re・Birthッ!このメガネは落下運動を終えると、強い磁力を帯びるッ!」

白煙の海を突き破り、何かが宙を舞った。それは、よね愛用のメガネ―――
緩いカーブを描き、ひとみの頭を越えて背後の床に落ちる。

32015 :佐藤ひとみ ◇tGLUbl280s:2011/02/19(土) 20:01:30
刹那――――
フルムーンの構える釘打ち機が、目に見えぬ力を受け、大きく傾いだ。
釘打ち機の素材はアルミだが、中にセットした鉄釘がメガネの発する磁力に引き寄せられたのだ。
同時に1階の床に散らばっていた釘が、一斉にひとみに向かって飛来する。

ひとみの立つ2階の縁は、バルコニーのように1階座席の上にせり出し、落下防止の手摺が設置されている。
2階の床に落ちたメガネに引き寄せられる釘の軌道は、ひとみの腰より上に至ることはない。
よって、殆どの釘がバルコニーの床と手摺によって堰き止められた。
しかし全ては防げない。
手摺の隙間から飛び込む釘を避けて、ひとみは横に飛んだ。そのまま床に伏し飛来する釘をやり過ごす。
避け損なった釘が、右足の太ももと脛にグサリと突き刺さっていた。
白いスカートが滲み出す血に赤く染まっていく。


「あんのクソガキッッ!!よくもやってくれたわね!!」
ひとみは金切り声を上げた。

鬼化の副作用、アドレナリンの過剰分泌により、あまり痛みは感じない。
直ぐさま立ち上がり、よねへの反撃を開始しようとするも、それは叶わなかった。
背後に何者かの気配を感じたからだ。
振り返ったひとみの目に映る、吉野きらら――――ひとみの斜め後ろ、1mほど離れた位置に立っている。
右手を半開きのまま構えたその姿から察するに、メガネの磁力に負けてナイフを取り落としたらしい。

ひとみはニヤリと笑った。
釘打ち機を捨てたフルムーンが、ひとみの側に飛来する。
磁力を持つメガネは吸着した釘に覆われ、ソフトボール大の鉄塊を成していた。
フルムーンは触手を伸ばし、釘山の表面に張り付くナイフを引き剥がす。

「惜しかったわね。これがあんたの切り札?
 虫も殺せないような澄ました顔して、こ〜んな物持ち歩いて…清廉なお嬢様を気取る女ほど本性は悪どいのよねぇ〜…
 正直驚いたわ…こんなに近くまで来ていたなんて。
 さすがは泥棒猫…猫みたいに気配を消すのはお手の物ってわけ?」

皮肉を投げかけ、更に唇を吊り上げて意地悪く嗤う。
吉野きららは応えず、突如駆け出した。

>「貴女は、私を嘲笑うでしょうね。武器もスタンドも持たず何をするつもりだと。ですが……」

女は身を屈め、床を滑る。
次の瞬間、ひとみは既に背後を取られていた。
吉野きららの手には鈍く光るナイフが―――ひとみが奪った筈のナイフが握られている。

>「ナイフは二本あった。平時の貴女なら、気付いたでしょうに」

彼女はひとみの位置から死角になっていた釘山のナイフを―――もう一本のナイフを拾ったのだ。
真後ろに迫る女に、ひとみは咄嗟に対処出来ない。
捕まれた尻尾に、刃が当てられる。しかし完全な切断には至らなかった。
尻尾の切れ目から、血ではなく白い霧が漏れ出す。

32116 :佐藤ひとみ ◇tGLUbl280s:2011/02/19(土) 20:03:46
>「……失敗、ですか。これでもう、打つ手なしですわ」

女の手から離れたナイフが、再び釘の山に落ちた。

>「ところで、最後の一つ教えてもらえませんか?今のその状態、頭の中はどうなってますの?
>自分の現状はサッパリ忘れている?その方が、これからなる身としては幸せですけど」

「忘れた方が幸せなこともある…ってこと?残念ながら、そう都合よく何でも忘れられる訳じゃないわ…
 いけ好かない泥棒猫の顔なんかは、特に……!」

吉野きららを見つめるひとみの顔は、憎悪に歪んでいた。

鬼化の副作用は精神にも及び、心の裡に仕舞い込んだ欲望やコンプレックスが増幅する。
鬼化した御前等が欝状態に陥ったのも、普段の自分に心のどこかで嫌気が差していたからかも知れない。

佐藤ひとみは心の奥底で、吉野きららに敗北感を抱いていた。
自身では存在すら認めたくない感情であったが、それは意識の底でいつも燻っていた。
九頭龍一は死を齎したひとみに感謝を捧げたが、決してそれ以上では無かった。
ひとみが吉野に抱く憎悪は、九頭に賛辞された女への嫉妬だけでは説明の付かない何かがあった。

「あんたは鬼になんかしない……!あんただけは、生かしておけない……!」

目にどす黒い狂気を宿し、ひとみは呪いの言葉を吐くように呟く。
フルムーンから伸びる幾本もの触手が、吉野きららの首に巻きつき、ゆっくりと締め付け始める。


【横っ飛びで釘を避けるも足を負傷】
【吉野さんにやられた尻尾は半分切れてプランプランです】
【吉野さんが首絞められて危ないよー天野さん決行は今だ!w】

32217 :ザ・ファンタジア ◇tGLUbl280s:2011/02/22(火) 23:03:22
>8
蚊に変身し、アンドレの首筋めがけて急降下するザ・ファンタジア。
しかし、直線的な攻撃は軌道を読まれ、紙一重で避けられる。
腕からおびただしい血を噴出させながらも泰然自若として、アンドレはネズミの頭を持つ巨大な蚊に問いかけた。

>「ところでファンタジア。もしかしたらお前はもうすぐ再起不能になるかもしれないんだが
>本体――エイドリアンの場所を教える気はないか?」

『ハァ〜?♪おまえ素で馬鹿だろ?♪♪
 頭沸いてんのォ〜〜?♪♪ハッタリが使える状況か考えてからモノ言えよぉ〜〜♪
 グチャグチャの右手から血噴き出させて何言ってんの?出血多量で意識不明寸前の癖によぉおお〜♪
 もうすぐ再起不能になるのはお前だろッ?どう見てもよォオオ〜〜〜♪
 100人に聞いたら100人がそう言うぜぇええ〜♪
 馬鹿相手に手加減しても面白くないから、今度は本気スピードで行かせてもらうよ♪』

再び首筋を狙い、上空に飛び上がろうとした、その時

>「その話、俺も興味あるな」

ホールの暗がりから発せられた何者かの声。
薄闇の中から歩み寄る御前等祐介の姿を認めて、ネズミは呆れ顔で溜息をついた。

『ま〜た君かぁ〜〜♪♪ウザキングに戻ってるってことは、誰かに尻尾を切られたみたいだね?
 相変わらずウザイ言動してんね〜〜♪鬼の時はまだマシだったのにナーーー♪』

ウザキングこと御前等は、ザ・ファンタジアの言葉など、まるで耳に入っていない様子。
"契約"だの"召還獣"だのと―――独特の言い回しでアンドレへの協力を宣言している。

>「かくなる上はこの俺が――著作権に抵触しないオリジナルなお前に造形し直してやる!」

御前等の前に立ちはだかるスタンド―――アンバーワールドが歯車を帯びた拳を繰り出す。
自らの正中線に向けて叩き込まれる拳と、その腕一杯に張り付く丸鋸のような歯車を避けて、
ザ・ファンタジアは急旋回し、上空に舞い上がった。
御前等の頭上3m、スタンドの拳が及ばぬ位置に滞空し、嘲る様にその姿を見下ろす。


『トロい…トロいよ♪君のスタンドは〜♪そんなんじゃ蚊一匹殺せやしないよぉ〜〜だ♪
 >――我を喚んだのは貴様か!………だって……ダサwww♪
 それだってアニメかゲームのパクリみたいなもんでショ〜〜?
 オリジナリティに言及するなら、君もそーいうの控えたらどうさ?
 アニメやゲームはクールジャパンかもしれないけどさぁ〜…それが大好きな大きいお友達は全然クールじゃないよね♪
 むしろフリーク!!♪そーいうのジャパ〜ンでは"キモヲタ"って言うんだろぉ〜♪
 繰り返すけど、ダッサwwww♪ついでにそのバンダナもwwダサッ♪』

腹を抱えて笑い転げつつ御前等を指差す、空中のザ・ファンタジア。
輪郭をモヤつかせたその体が、風に吹かれた雲のように、少しずつ千切れだす。
千切れた雲の一つ一つから、手のひらサイズのネズミ蚊が生まれ、やがてその数は数十体に及んだ。

32318 :ザ・ファンタジア ◇tGLUbl280s:2011/02/22(火) 23:04:14

『君たちの下品なスタンドに近づかなくても、ダメージを負わせる術はあるんだよぉ〜〜♪
 単細胞な君たちとは違って、僕の能力は応用が効くんだ♪』

同じ台詞をハモる数十体のネズミ蚊。それぞれが耳障りな羽音を響かせてホールを飛び回る。
次第に羽音は甲高く―――まるで黒板のひっかき音を大音量で再生したが如き不快な音に変じた。

『鼓膜に直接ダメージを与える超音波だァーーーー!!♪
 (人に聞こえない周波数が超音波なんで正確には超音波じゃないけど♪)
 ここにいる連中全員!耳から血を噴出させて悶絶しやがれぇぇぇーーーー♪♪』

蚊達は全て上空に逃れ、闇の中で羽音を鳴らし続けている。
遠距離攻撃が可能なアンドレの血液弾や御前等の歯車を以ってしても、
集中力を裂く激痛の中、視認できぬ相手の狙撃は困難を極めるであろう。

ホールにいる者全員が、鼓膜を針で差すような激しい痛みに苦しむ最中、
突然――――本当に何の前触れもなく、耳をつんざく羽音がピタリと止んだ。
一転して静寂に満たされるホール。


ネズミが攻撃方法を変えて、いつ襲ってくるかと身構える者もいたが、
ネズミ蚊は…いつまで待っても、上空から降りてこない。

*******************************************

一方その頃、
丁度ライブラリに到着した生天目有葵。
扉を開けた有葵は、部屋の中をバタバタと、慌てて走る足音を耳にするだろう。
直後、ガチャンと金属質の音が響く。

室内は、本をびっしりと詰めた書棚が整然と並び、御前等とよねの戦闘による痕跡は見当たらない。
天井の焦げ跡も破壊された書棚も、まるで戦いなど無かったかのように元通りに修復されている。

DVDコーナーに設置された白いテレビは、モノクロの古いディ○ニーアニメを再生中だ。
部屋の奥に、書庫に続く金属の扉がある。金属質の音はこの扉が開閉音なのだろうか?
扉に鍵はかかっていない。
しかし、もし書庫に入り詳細に調べたとしても、中には誰もいない。
ライブラリにも、書庫にも、何者かが潜む痕跡を見つけることはできないであろう。


【ザ・ファンタジア、数十体の蚊に分身。天井付近の闇に紛れて、
 羽から生じる特殊な衝撃波で、ホールにいる全員の鼓膜を攻撃→なぜか突然消滅】
【生天目さんお待たせしました!ライブラリに到着しちゃって下さい!】

32419 :生天目有葵 ◇BhCiwB2SCaJ5:2011/02/22(火) 23:05:21
ライブラリの扉を開けた生天目有葵は部屋の中をバタバタと慌てて走る足音を耳にした。
扉を開ける寸前まで、携帯電話から聞こえていた怪音は今はピタリと止んでいる。

「ライブラリに着きました。どぉ〜?ねずみは消えた?
なぁんて聞くまでもない?だって誰かがいるみたいなんだもん」

生天目は携帯電話の向こうにいるであろう吉野きららにひとこと言うと
天然水と一緒に持ってきたフライパンを片手にライブラリに進入する。

DVDコーナーに設置された白いテレビは、モノクロの古いディズ○ーアニメを再生中で
部屋の奥には書庫に続く金属の扉。

「えっと。足音がして金属の音がしたってことは…。たぶんあの扉があやしいわ…。
ふふふ。私、おおあたりぢゃん!本体が隠れているんだとしたらサッサとやっつけちゃうわよ〜」

書庫の扉に鍵はかかっていない。
生天目は扉をあけると書庫内にスタンドを飛ばして中を調べた。

しかしなかはもぬけのから。

「……ぇ。…そんな、誰もいないなんて。そんなバカなことって…」

生天目は目眩がした。
まるでテスト終了間近にマークシートがずれているのに気がついた学生のように…。
こみ上げてくる焦りと緊張もすでに隠すことは出来ない。
底の暗い不安が蠢動し自分の心臓を薄黒く覆いつくすような感覚が生天目有葵を支配してゆく。

【ライブラリに到着。調べたけど蛻の殻でした】

32520 :天野晴季 ◇TpIugDHRLQ:2011/02/22(火) 23:06:07
(よし…氷は出来た…! 後はこれを風で…)
佐藤の尻尾の上部分で氷を生成することに成功した天野。今は気流操作で支えている
そして、さらに気流操作で氷の塊を削る
(……………もう少し……よしッ!)
遂に完成。氷の塊が鋭い刃の形になる
(行け! 狙いは尻尾…佐藤さんが米さんに気を取られてるうちに…一気に切断するッ!)
佐藤の尻尾に狙いをつけ、支えていた気流を外し、尻尾目掛けて氷の刃を落とす天野。さらに気流による補助でスピードも上げている

>『鼓膜に直接ダメージを与える超音波だァーーーー!!♪
 (人に聞こえない周波数が超音波なんで正確には超音波じゃないけど♪)
 ここにいる連中全員!耳から血を噴出させて悶絶しやがれぇぇぇーーーー♪♪』
(…っ!!! 正確には超音波じゃな…ってそんなことどうでもいい! 耳が壊れ…!
…あれ? 音が止んだ…。何か仕掛けて…来る様子はない、かな…?)
【佐藤さんの尻尾に氷の刃を落としました】

326御前等 ◆Gm4fd8gwE.:2011/02/26(土) 19:47:02
>『トロい…トロいよ♪君のスタンドは〜♪そんなんじゃ蚊一匹殺せやしないよぉ〜〜だ♪』

風に舞う木の葉の如く御前等の拳をひらりと回避したアメリカねずみは宙を行く。
こちらの攻撃の届かない範囲を浮遊。逃げを打たないのはその必要がないから。
ザ・ファンタジアの防御性能は御前等の攻撃力を軽く凌駕していて、例え拳を当てたとしてものれんに腕押し、糠に釘。

>『♪そーいうのジャパ〜ンでは"キモヲタ"って言うんだろぉ〜♪
  繰り返すけど、ダッサwwww♪ついでにそのバンダナもwwダサッ♪』

その発言で御前等の心に赫怒の炎が灯った。

「貴っ様ァァァァァァァァァッ!!大きなお友達が社会通念的に言ってキモいのはまあ認める!
 認めるが!――この俺を!そのセンスを!侮辱するのだけは絶対に許さんぞおおおおおおおおおおお!!」

精神の炉に甚大な薪がくべられ、彼の内燃機関は渦動する。
大地を踏み締め咆哮の如き唸り。魂を鼓舞し、スタンドに鬼神の迫力を宿す。

「この俺のファッションセンスをディスるってことは貴様は相応のお洒落さんなんだろうなッ!
 そのデザインで!貴様なんかが…『お洒落』だと…?勝負しろアメリカねずみ!!!今ここで!!貴様を倒す!!!
 シャツinズボンにバンダナが『最強』だって!!!俺が証明してやる!!!」

かくして勃発したオシャレ論争にしかしザ・ファッションセンスは取り合わない。
空中で形状を変える。細胞分裂の如く細切れになり始めた。その数、やがて数十匹。

>『君たちの下品なスタンドに近づかなくても、ダメージを負わせる術はあるんだよぉ〜〜♪
  単細胞な君たちとは違って、僕の能力は応用が効くんだ♪』

「っは!何をやり出すかと思えば細切れになっただけじゃあないか!そんなちっぽけな蚊柱で何をするって――」

>『鼓膜に直接ダメージを与える超音波だァーーーー!!♪
  ここにいる連中全員!耳から血を噴出させて悶絶しやがれぇぇぇーーーー♪♪』

始まったのは鳴動。空気を微細に揺らす振動。ぽつりぽつりと聞こえ始めたそれらは次第に数を増やす。
ねずみ算に増え続け、やがてホールを埋め尽くすそれは羽音だった。

「ぐあああああああああああああああ!!!!!!!!」

御前等は耳を抑えて蹲った。
耳元で蚊にぶんぶんやられたら相当イラッと来る。それが幾重にも連なり、更に指向性を持って御前等を攻め立てる!
あまりのストレスに御前等は耳から血が出そうになった。直接鼓膜をドンドコ殴られてる気分だった。

「ぐげげげげげごごごごごがががががが……っ!」

のた打ち回る御前等!しかし音の責め苦は止むことはない!ラテンさんのことなど視界に入ってないかのように!
御前等はホールの床をごろごろと転げまわる!水もないのにバタ足を始める!頭が割れそうだった。
そして。

「……――――お?」

音が、消えた。
スピーカーの電源をブツ切りにしたかの如き静寂。
先生がマジギレしたときの教室内のような居心地の悪い静謐は、いつ追撃がくるかわからないからだ。
果たして追撃はなかった。アメリカねずみはまるきり、うんともすんとも言わなくなったどころか――姿を消してしまったのである。

「どこへ――まあ良い。ラテンさんの止血が先だ。天野クーン氷をくれ!血がヤバいことになってる!」

ホールのどこかにいるであろう天野。彼へ向けての救援要請を御前等はどこへともなく張り上げた。


【アメリカねずみの攻撃がストップ。どっかにいるであろう天野くんに氷を要求】

32731 :天野晴季 ◇TpIugDHRLQ:2011/02/27(日) 23:34:52
>「どこへ――まあ良い。ラテンさんの止血が先だ。天野クーン氷をくれ!血がヤバいことになってる!」
「了解です! 血まみれのラテン系な人の血を凍らせれば良いんですね? フリーシーズン、気温低下…!」
ピンポイントで傷の周りの気温を下げる…が、これでいいのだろうか。たぶんいいと思う。恐らく。
「ああ、あと御前等さん。貴方、『シャツシャツinズボンにバンダナが『最強』』って言ってたじゃないですか。
『※あくまで御前等氏の個人的な見解です』←これ忘れてますよ?」
意外に毒舌な天野であった

32835 :吉野 ◇H7TeP6yEkU:2011/03/01(火) 22:05:26
>「忘れた方が幸せなこともある…ってこと?残念ながら、そう都合よく何でも忘れられる訳じゃないわ…
  いけ好かない泥棒猫の顔なんかは、特に……!」
>「あんたは鬼になんかしない……!あんただけは、生かしておけない……!」

フルムーンの触手が吉野の首を締める。
スタンドを持たない吉野に抵抗の術はない。
冷気のスタンド使いの一手は、未だに訪れない。
このままでは死ぬ。目的を見失った生だが、弄ばれるように死ぬのは御免だった。
ならば佐藤になら、どうだろうか。佐藤には吉野を殺すに足るだけの熱量がある。
理由はどうあれ、彼女は本気で自分を憎んでいると、吉野は佐藤の眼光から悟った。

「けれど……今の貴女に殺されるのは癪……ですわ」

吉野が詰まる息を振り絞る。
頭上から降り注ぐ超音波に揺れる脳裏で、『ザ・ファンタジア』の笑い声が反響した。
ここで死んでしまったら、『ザ・ファンタジア』はそれを大いに嘲笑うだろう。
顔も知らぬ相手に、死んだ後で一方的に侮辱される。それは耐え難い恥辱だった。

ふと、超音波が途絶えた。頭上を仰ぎ見る。
蚊の群体となっていた『ザ・ファンタジア』は、一匹残らず消え失せていた。

>「ライブラリに着きました。どぉ〜?ねずみは消えた?
 なぁんて聞くまでもない?だって誰かがいるみたいなんだもん」

磁力のせいか酷く雑音の混じった声が携帯から聞こえた。
もしかしたら、脱出まではあと一歩なのかもしれない。

「……やっぱり、まだ死ねませんわね」

呟いて、吉野が佐藤の足を――釘によって負った傷を蹴り抜いた。
頭上を見上げた時、吉野は『ザ・ファンタジア』の代わりに、氷の刃を見ていた。
気を逸らして、隙を作る事が出来れば、氷の刃が今度こそ佐藤の尻尾を切り落とすと踏んだのだ。

32936 :佐藤ひとみ ◇tGLUbl280s:2011/03/02(水) 18:20:47
>35
佐藤ひとみは、触手に首を絞められる吉野きららを、怨嗟の篭った目で見つめていた。
九頭との最後の戦い―――その記憶の一つ一つがモザイクのように繋ぎ合わされて、ひとみの脳裏に押し寄せる。

死にゆく九頭は、『"魔"に対抗しうる者――力を高みに上らせた者の存在を目にして、ようやく安らかな眠りにつける』と語った。
ならば、百年にわたる長き時を国守に捧げた九頭の心を安んじる"特別な存在"は、自分ではない。
ひとみの能力は"視る"ことだけであり、あの戦いに於いて、強大な存在に抗う力など何一つ得てはいないのだから。
寧ろ『階段を昇り到達した者―――次代に残すべき特別な存在』と、九頭に賞賛された吉野きららこそ、
それに値する者ではないのか?

九頭が最期に口にした、ひとみへの言葉は、自らの中に迷い込んだ女への哀れみであり、
逝く者が遺される者に手向けた優しさに過ぎなかったのかもしれない。
燻り続けてきた不安が精神の変調によって堰を切って溢れた。氾濫した黒い情念がひとみの心を占拠する。
ひとみは憎悪を込めた言葉を吐き続ける。

「何故あんたなの……?何故あんたが選ばれて……私が…私は……一体何だったの…?
 力を得たからってそれが何なのよ?結局その力さえ失って!あんたみたいな女……死ねばいいのよ…!!」

耳障りな蚊の羽音が、痛みを伴う振動となって鼓膜を襲う。
しかし、その痛みすら情念を煽り、怒りに火を注いだ。
ひとみの眼光は狂気を増し、フルムーンは攻撃の手を緩めない。


突然、蚊の羽音がピタリと止み、ホールに静寂が訪れた。

足に鈍い衝撃が走り、ひとみの体が大きく傾く。
吉野きららが窒息を堪え、ひとみの足を強く蹴り上げていたのだ。
限界まで昂まった憎悪が痛覚を制し、痛みは感じない。しかし負傷した足で体重を支えてはいられなかった。

バランスを崩し、後ろに倒れるひとみの尻尾めがけて、天野が作り上げた氷片が落とされる。
氷のギロチンは既に切れ目の入っていた尻尾を正確に切り落とした。
ひとみの意識が一瞬途切れ、フルムーンは触手に込める力を失う。

>22無駄!
ひとみの頭の中を、稲妻のように一つの言葉が貫く。

――――無駄……?そうよ…本当は解ってる……
想いも恨みも憎しみも、今となっては全て無駄なのだ。

……だって、あの男はもう――――……


タールのような闇が渦巻くひとみの精神に、一条の光が差し込む。
光の中に、キリスト教の聖人が身につけるような白い被衣を頭から被った男が、背を向けて立っていた。
ゆっくりと振り返る背の高い男。
しかし、ひとみはその顔を見ることが出来ない。
男の顔がこちらを向いた途端、視界が急速にホワイトアウトし、ひとみの精神は現実に戻されていた。

意識を取り戻したひとみの視線の先に、床に落ちた携帯電話に手を伸ばす、吉野きららの姿があった。
毒気を抜かれたひとみは、床にへたり込んだまま、その姿をただ眺めていた。


【尻尾を切られた佐藤、正気に戻るが暫し呆然自失】
【吉野さん、良かったらもう少し有葵ちゃんと電話で話してもらっていいでしょうか?】

330御前等 ◆Gm4fd8gwE.:2011/03/03(木) 05:31:59
>「了解です! 血まみれのラテン系な人の血を凍らせれば良いんですね? フリーシーズン、気温低下…!」

御前等の指示に迅速に対応する天野。ラテンさんの傷表面を凍結させ、止血を施す。
一度血管を収縮させてしまえば切り口が窄み、激しい運動でもしない限り再出血はないだろう。
圧力や重力とは無縁に影響力を発揮できるスタンド能力ならではの治療法だ。

>「ああ、あと御前等さん。貴方、『シャツシャツinズボンにバンダナが『最強』』って言ってたじゃないですか。
  『※あくまで御前等氏の個人的な見解です』←これ忘れてますよ?」

ガシャアアア ガクッ  
御前等の背後に展開されていた背景がガラスのように割れ(心象風景)、膝から崩れ落ちる。

「連載終了してしまった――――!」

天 才 !!
しかし天野くん、なかなかにデキる男である。
御前等の発言から正確に意図を汲み取り、要求されたリアクションを完遂する――至極のスキルだ。
例えそれが打ち切り漫画のパロディネタであっても!

「天野くん…そんな戯言二秒で切り返してくださいよ」

さておき、状況は進んだ。
天野くんがここに戻ってきたということは、佐藤の尻尾切り作戦は成功を収めたのだろう。

「ここまでは予想に織り込み済み……問題はここからだ。未曾有の電撃作戦となる――!」

嘘である。特に御前等が関与したわけでもなく、そもそも殆ど状況に参加していない。
なんとなくおいてきぼりを食うのが寂しかったのでそれっぽい言葉を並べているだけだった。

「そんで今どういう状況なの天野くん。俺たちこんなとこでネタ問答してて良い系なの?
 駄目ならば・・・ ここで 本筋を突き付けてやるのが仲間としての優しさだ!!」


【天野くんに現在の状況を質問】

33139 :よね ◇0jgpnDC/HQ:2011/03/04(金) 00:17:43
激しい耳鳴りの余韻が残っている耳を押えつつ、なおも上空を警戒する。
ホールの天井は高く、上層部は暗くてよく見えない。姿を隠すには絶好のポイントだろう。
だが、ザ・ファンタジアが姿を隠す意図が分からない。
天野や御前等の能力をもってしても、本体にダメージを与えることが出来ないからだ。
故に自らを隠す必要もないし、同様に逃げる必要も無い。

(だとすれば、考えられるのは戦略的撤退……)

様々な弊害を引き起こす可能性のある、Sum41の能力を全て解除する。
メガネは磁力を帯びなくなり、よねの衣服は水を弾かなくなる。

「どういうことだろうな……攻撃をしなくなった…?」

ボソリと呟く。それからスッと立ち上がり、「天野クーン」と叫んでいる御前等にゆらゆらと近づく。
まだ耳が痛い。その上、意識も朦朧としている。

「御前等さん、一体どういう事でしょうね。ザ・ファンタジア……あのまま攻撃を続けていれば、再起不能かあるいは…
 何か、特別な理由でもあるんでしょうか?自分には見当もつきませんが…」

御前等はしばらく考えた後、『とにかく』と、ホールのどこかにいるであろう天野に現状を問うた。

「…時間も限られています。全員で手分けをして素早く本体を探すのはどうでしょう?自分はそのほうが……」

そしてその時、よねは気づいた。
自身の一人称が変化していることに。"裏のよね"の一人称は「私」だったのだ。
だが、今は…そう、まるで"表のよね"の様な一人称、「自分」へと変化していたのだ。

 ◇◆◇◆◇◆◇

「もうちょっと……あと少しッ!!」

深い精神の闇の海の底から、凄まじいスピードで―落下してきた時の速度よりも早く―浮き上がっていくよね。
そのあまりのスピードに、逆に落下しているかのような錯覚を覚えた。

よねの眼には精神の海の海面がすぐそこに見えていた。

 ◇◆◇◆◇◆◇

――とある日の北条市立病院

『ハマ君、ところで…』

綾和は手に持った本―多重人格者の真実という題名―を見つめながら言う。

『人格統合、という言葉を知っているかな?複数の人格を一つの人格に纏め上げるという治療法さ。心理学者ではないからよく分からないけど……

 では、もしも、多重人格者がスタンドを持っていた場合、その人格一つ一つに別々のスタンドが宿ることになる。スタンドとは、いわば人格の具現だからだ。
 もっとも、保守的な人間は保守的なスタンドしか持たないというわけではないだろうがね。 

 その場合、人格統合を行うとどうなると思う?お互いが打ち消しあってしまうのかもしれないし、スタンドも融合し更に強力に進化するかもしれない。
 まだまだ仮定の域だがね。フフッ…ついついSF好きが干渉してしまうな。どうであれ調べる方法もない、空想科学だ』

隣で話しを聞いていたハマが時計を見る。しばらくの間、静寂が続き、ハマは【それでは】と会釈をして席を立つ。

『精神の融和、か。果たして……』

時計は既に夜の8時にさしかかっていた。

【エイドリアン捜索を提案】

33240 :吉野 ◇H7TeP6yEkU:2011/03/05(土) 00:28:57
佐藤ひとみの尻尾は切れた。
吉野の首を絞めていた触手が緩んで、吉野は床に打ち捨てられる。
何度も咳き込み、体を大きく上下させて、吉野が息を整えた。
触手の痕が残る首を、一度撫でる。

>「何故あんたなの……?何故あんたが選ばれて……私が…私は……一体何だったの…?
 力を得たからってそれが何なのよ?結局その力さえ失って!あんたみたいな女……死ねばいいのよ…!!」

佐藤の言葉を思い出して、吉野は彼女を一瞥した。

「……殺したければ、どうぞ殺してみて下さいな。どうせもう、私の人生に、幸せに至る為の道は残っていないのですから。
 ただし……この下らないゲームを仕組んだ者の手のひらから、降りた後で。死んで尚、嘲笑されるなんて、御免ですから」

そう告げて、今度は床に落とした携帯を拾い上げた。

>「……ぇ。…そんな、誰もいないなんて。そんなバカなことって…」

「……落ち着いて下さい。いいですか、貴女がライブラリに着いた時、確かにこちらのネズミは消えました。
 そこには間違いなく何かがある。……相手がミスリードを狙っているのでなければ、ですが」

もしもそうであった場合、つまりライブラリとネズミの消失が本来無関係で、
あたかも関連性があると思わせ、時間を浪費させる為に事が仕組まれていたのなら、
今度こそ手がかりはなくなってしまう。
だが確実に仕留められる状況でわざわざそうする必要があったとは思えない。
まず大丈夫だろうと、吉野は踏んでいた。

「何かと言うのは、つまり目的と必要性です。参加者を鬼にして、
 または殺害すると言う目的よりも優先して、スタンドを消失させなくてはならない理由がある筈です。
 例えば……ルールに嘘がないのなら動く事の出来ない本体を隠す為、とか」

そうでなくても、ルールに『特定の行動によるネズミの消失』が記されていない以上、
そこには何らかの意図がある筈だ。

「ライブラリを隈なく探しましょう。それ以外に当てがあるのなら、別ですが」

33341 :生天目有葵 ◇BhCiwB2SCaJ5:2011/03/05(土) 00:29:41
>「……落ち着いて下さい。いいですか、貴女がライブラリに着いた時、確かにこちらのネズミは消えました。
 そこには間違いなく何かがある。……相手がミスリードを狙っているのでなければ、ですが」
>「何かと言うのは、つまり目的と必要性です。参加者を鬼にして、
 または殺害すると言う目的よりも優先して、スタンドを消失させなくてはならない理由がある筈です。
 例えば……ルールに嘘がないのなら動く事の出来ない本体を隠す為、とか」
>「ライブラリを隈なく探しましょう。それ以外に当てがあるのなら、別ですが」

携帯電話越しに若干割れた吉野きららの声。

「…そうね。わかったわ、よく探してみる」
生天目は絶望を蹴飛ばすかのように答えると、書庫のドアを開けてライブラリに戻った。
(あのこが言ったみたいに、ここまでやってきたことに間違いはないのかも。
…動く事の出来ない本体を隠す為…。なるほどね。だってあいつのスタンドって霧みたいになって
ホウキにも変化できるんだし、この部屋にはたぶん何かあるんだわ。いいえ、たぶんじゃなくって絶対!)

確信した生天目はライブラリの出口の扉に向かって走る。

「ステレオポニーッ!!」叫んだ体からはスタンドが躍り出て天井に飛ぶ。

「ソノルミネッセンスよ!!」
ステレオポニーは天井に反射するとライブラリ中央の床を踏みつけるように着地した。

と同時にスピーカーを彷彿させる両足の蹄から超音波が放射され、湖面に広がる波紋のように床一面に伝わっていく。
続けてパンッと破裂音。音の正体は生天目が持ってきた自然水の入ったペットボトル。
スタンドの着地点に近い場所に投げ捨てられ転がっていたペットボトルが発光後に破裂して水蒸気をあげたのだ。

「隠れているのなら出てきなさい!そのペットボトルみたいに血のなかの酸素が爆発しちゃってもいいの!?」
と扉の向こうの廊下、安全圏から生天目の声。

ライブラリ全体に、ステレオポニーを中心とした超音波の渦が広がりつつあった。
しかしこれは一つの賭け。スタンドエネルギーの消耗も激しく、使用後の足にかかる負担も尋常ではない。
生天目自慢の逃げ足も封じられてしまうのだ。

ソノルミネッセンス (sonoluminescence, SL) は、液体中の気泡が超音波によって圧壊したときに起こる発光である。
発光機構については見解が統一されておらず、未解明な部分が多い現象である。
液体に超音波を照射すると、キャビテーション現象によって無数の気泡が発生する。
気泡は超音波が負圧になったときは膨張し、正圧になったときは収縮する。
特に、超音波の共振径付近のサイズの気泡は音速に近い速度で急激に収縮するため、
断熱圧縮の効果によって瞬間的に数千度以上の高温状態となる

33452 :天野晴季 ◇TpIugDHRLQ:2011/03/06(日) 03:34:14
>「連載終了してしまった――――!」
「残念ですよね本当。面白かったのに。アンケート出しとけばよかった…」
今更悔やんでもどうしようもないが。というか今は関係ないが。
>「ここまでは予想に織り込み済み……問題はここからだ。未曾有の電撃作戦となる――!」
「――と思っていたが 違った 御前等さん絶対何も考えてないでしょう。見れば分かります」
やはり毒舌だった。そして、こんなくだらないところで観察力を使う天野
>「そんで今どういう状況なの天野くん。俺たちこんなとこでネタ問答してて良い系なの?
 駄目ならば・・・ ここで 本筋を突き付けてやるのが仲間としての優しさだ!!」
                        . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
「今の状況ですか…今の状況ねぇ…。…………………刹那で忘れちゃった まぁいいかこんなバトル
……………と、まぁ冗談はさておき。まず、佐藤さんと吉野さんが戦ってて、僕が佐藤さんの尻尾を氷で切り、佐藤さんは元に戻りました。少しボーっとしてますが。
で、生天目さんは別のところで探索中です。米さんは貴方に近づき、問いかけてます。一人称が『私』になってます。他は良く分かりません。…こんな説明でいいですか?」
御前等に現在の状況を説明する天野。かなり端折っているが。というか米さんの件は必要だったのだろうか? 説明というより実況である

33573 :ザ・ファンタジア ◇tGLUbl280s:2011/03/07(月) 00:57:15
>「ソノルミネッセンスよ!!」
体から剥離したスタンドに命じる有葵。

ソノルミノセンスは液体に超音波を照射した際、発生する気泡(ギャビティ)が破裂時に起こる化学発光のことを言う。
発光はごく微弱であり、通常は暗室内でなければ視認されない。、
ソノルミノセンスを伴う超音波利用のギャビテーションは、何も特殊な技術ではなく、
超音波洗浄機、超音波歯ブラシなど、身近なものにも応用されている。
物体に纏わり付く気泡が破裂する時の衝撃を、汚れを落とす力として利用したのが超音波洗浄機である。
その気泡は、瞬間的に数千度に達することもあるが、サイズがごく微細であるため、
一般的な超音波洗浄機ならば、3リットルの水を20度上昇させる為に1時間以上の時間を要する。
あくまで、超音波洗浄機に利用する程度の超音波ならば…である。

ステレオポニーの足から放射される超音波は、圧倒的な音圧を伴っていた。
それは、人の耳には聞こえぬ大音量の高周波。
強力な超音波振動を受けたペットボトルの水は、通常は有り得ぬ威力のギャビテーション効果を発揮し、
忽ち沸点を超えて膨張、破裂した。


>「隠れているのなら出てきなさい!そのペットボトルみたいに血のなかの酸素が爆発しちゃってもいいの!?」

ステレオポニーを中心に、ライブラリ全域に広がる超音波。
開いたままの扉から奥の書庫にも超音波が伝播している。
けれどもライブラリの中は静まり返り、扉の外の有葵は、音一つ耳にすることはない。
ステレオポニーが超音波の放射を終えて、1分、いや、2分も経っただろうか?
有葵の警告通り、部屋の中に潜む者がいれば、とっくに血液が沸騰し死亡している筈である。


突然、有葵の首に嵌った首輪から、騒々しいメロディーが流れ出した。
ほぼ同時に、有葵は背後から何者かに体を拘束され、口を塞がれる。
白いゴムバンドの如き平らなモノが、まるで大きな包帯のように巻きつき、有葵の膝から口元まですっぽり覆っていた。
手足をミイラのように固定され、口さえ塞がれた有葵は、電話の応答すらままならない。

『やってくれるね♪小ババァ♪
 あと30秒足りなければ、かーなりヤバいことになっていたよー♪』

背後から聞こえる声は、紛れもなく『あのネズミ』のものだ。

33674 :ザ・ファンタジア ◇tGLUbl280s:2011/03/07(月) 00:57:40
『人体を沸騰させよう♪なんて、顔に似合わず残ッ酷で凶悪な攻撃持ってんねー♪
 どうやって感づいたか知らないけど、この場所に気づいたからには、君はもう無事ではいられないヨ〜〜♪
 何もせず殺っちゃうのも勿体ないから、鬼になってもらった後、セクハラしてポイするコトに決めたッ♪
 言っておくけど医務室の時みたいに、超音波の共振で僕の体を破壊しようとしても無駄だからね♪
 体組成をゴム構造に変えたから♪ゴムみたいに弾力のあるものは超音波の振動を吸収しちゃかうからねェ〜〜♪』

ネズミは、体同様アイロンをかけてペシャンコにしたような顔に、嫌らしい笑みを浮かべて有葵の体を締め付けている。


ザ・ファンタジアの出現は、当然、本体の無事を意味している。
有葵や吉野の推理通り、本体がライブラリ内に居たのならば、
生身の人間である本体は、いかにしてソノルミノセンスを防いだのだろうか?

ソノルミノセンスは、『液体に超音波を照射』した際に起こる反応である。
"液体"でなければ反応は起こらない。
ならば気体は…?あるいは、気体のように拡散した粒子に効果はあるだろうか?
ザ・ファンタジアは自らの体を粒子化する能力持っている。その効果が本体にも及ぶとしたら……?
佐藤が鬼化したときの状況を目にしていた者ならば、その可能性に気づけるかも知れない。


ザ・ファンタジアの平たい体から、これまた平たい腕がひょろひょろと伸び、真っ黒な掌が有葵の両目を覆う。

『これから三秒後ーーーーー♪鬼になった君の見る世界は輝いているはずサ♪
 鬼化した君で、いろいろと楽しませてもらうよぉ〜〜♪お楽しみにネ♪』

パワーを使い果たして消耗したスタンドで、有葵はこの危機を脱することができるだろうか?
それともネズミの思惑通り、鬼と化してしまうのだろうか?


【ザ・ファンタジア、体をゴム化して有葵ちゃんを拘束、鬼化しようとしています】
【生天目さんは防ぐもよし、鬼化してみるもよし、お任せです】

33775 :佐藤ひとみ ◇tGLUbl280s:2011/03/07(月) 01:04:10
尻尾を切断された佐藤ひとみは、ぼんやりと床に座り込んでいた。
鬼化で変容した精神は緩やかに回復しつつあった。
しかし、目に写る光景は未だひどく頼りなく、白昼夢のように現実感が無い。

>「……殺したければ、どうぞ殺してみて下さいな。どうせもう、私の人生に、幸せに至る為の道は残っていないのですから。
>ただし……この下らないゲームを仕組んだ者の手のひらから、降りた後で。死んで尚、嘲笑されるなんて、御免ですから」

吉野きららの問いかけが、未覚醒の精神にこだまする。

……この女は、かつて抱いていた信条の無意味さを理解している。
少なくとも自身が何かを失った事だけは知っている。
果たして自分はどうだろうか…?
あの男に関わって、何を得て、何を失ったのか……?
ひとみは敢えて考えないようにしていた。いや、考える事すら怖れている……――――――?

靄のかかる精神は急速に収束し、現実に引き戻されていく。

「やだッ!痛いッ!」

ひとみは大腿部と脛に鋭い痛みを感じて悲鳴を上げた。意識の覚醒と共に痛覚が甦っていた。

「何よこれッ?酷い!ランバンのスカートが台無しじゃないのッ!」

血に染まった白いスカートを視線を落とし、ひとみは更に声を張り上げた。
鬼化していた間の記憶は曖昧だったが、断片的に覚えていることもあった。現状を全く把握できないほどではない。
前後の記憶も材料にして思考を組み立て、自身が鬼になり回復したのだと理解した。

ひとみは吉野と有葵の通話に耳を傾けながら、足に刺さった釘を引き抜き、触手で治療を行っていた。
傷痕を残さぬよう入念に自身に治療を施した後、漸くフルムーンをよねの治療に向かわせる。
一度はザファンタジアに寝返り、自分達を攻撃したよねだが、足に負傷を負わせたまま放置する訳にはいかなかった。
逃げ遅れたよねが鬼化されるような事になれば、より面倒なことになる。

「よね君!あのネズミがあんたを特別扱いする気が無い以上、ネズミは私達共通の敵よ。
 あんたが何を考えてるのか、本っ当にワケわかんないけど、
 せめてここから出るまでの間、私達に協力する方が利口だってこと、それくらいは分かるわよね?」

治療を受けるよねに二階から言葉をかけ、念を押す。


その頃、携帯電話の向こうで事態は急転していた。
吉野きららの手の中の携帯電話から、甲高い声が漏れ聞こえる。

>『やってくれるね♪小ババァ♪
>あと30秒足りなければ、かーなりヤバいことになっていたよー♪』

「ちょっと!それクズネズミの声じゃない?!どうなってんのよ?あの子今一人じゃない!マズいんじゃないの?!」

ネズミが有葵の前に現れたのならば、単独行動中の彼女は危機的状況にいる。
ひとみは吉野きららを問い詰めた。

【佐藤とよねさんの負傷治療済み】
【電話の向こうで何が起こってるのか、吉野さんに確認】

338御前等 ◆Gm4fd8gwE.:2011/03/07(月) 03:49:36
>「今の状況ですか…今の状況ねぇ…。…………………刹那で忘れちゃった まぁいいかこんなバトル」

(天野くんが忘れてから……話の空気が変わった……!!)

ともあれ、天野くんは必要な情報を全てもってきてくれた。仕事の早い男である。
ほぼ実況だったので御前等は目の前の光景を自分の目で見る必要すらなかった。

(しかしいやいや百聞は一見にしかずとも言う……ここから先は、己の目で見据えるべきだ……!)

見た。

>「御前等さん、一体どういう事でしょうね。ザ・ファンタジア……あのまま攻撃を続けていれば、再起不能かあるいは…
  何か、特別な理由でもあるんでしょうか?自分には見当もつきませんが…」

さんざん裏切りに裏切りを重ねた(そうでもないけど)よねが、のうのうと喋くりながら接近してきていた。
天野くん曰く一人称すら変わっている。憑き物の落ちたような顔で、ふらふらと歩いている。

「よねっちゃん――まさか  ス タ ミ ナ 切 れ !?」

スタミナというか、燃料というか。
ほとんど気絶していた御前等にとってよねはソッコー裏切ってソッコーバテたようにしか見えていないのだった。

>「…時間も限られています。全員で手分けをして素早く本体を探すのはどうでしょう?自分はそのほうが……」

「えっ、ちょっと待って、ちょっと待て、おいィ?何フツーに仲間みたいなツラして話しかけてんのこの人。
 どの面下げてしゃべっとんじゃいワレーーッ!誰のせいでこんな状況(佐藤鬼化)になってると思ってやがる!」

自分以下のゲスを見つけたと判断した御前等はここぞとばかりに非難モードに入る。
もちろん自分のことは棚上げである。

「手分けして!捜すとか!完ッ全に孤立させて後ろから刺すフラグだろーが!なんか治療されてるしィー!
 まったくこのパーティはホントに甘ちゃんばっかだな!佐藤さん…敵は身内にいるんDeathよ?外ばっかり見てたらケガします」

聞こえてないだろうとタカをくくってついでに佐藤もディスる。
吹けば飛ぶような自尊心を虚飾の瓦礫で積み上げて、御前等というパーソナリティは完成していた。

「一体どういうこともクソもあるかッ!よね君、おい、アンタ、ふざけたこと言ってんじゃ……」

と、そろそろ話進んでないことに気づいた御前等は空気を読んだ。生まれてきて初めて空気読んだ。

「――刹那で許しちゃった。まあいいかこんな裏切り。アメリカねずみ捜すったってなあ。どこを探せというんだ?
 さっきどっか行ったあの娘……ナマテンメちゃんだっけ?苗字の字しか知らんけど。あの子のとこにでもいくか?
 俺の自宅警備員としての本能がそこへ行くなと言っている。ということは、そこへ行けば何かあるということだろう」

本筋の方では緊迫したシーンが続いているというのに、呑気に提案するその姿は、3バカ的な扱いを彷彿とさせた。


【ファンタジア捜索について会議】

339生天目有葵 ◆gX9qkq7FNo:2011/03/07(月) 15:18:56
ライブラリの中央。生天目のスタンド、ステレオポニーが発動させたソノルミノセンス。
スタンドの真上のスプリンクラー(書物を火災から守るための)からは水蒸気がシューシューと噴出している。

(どうして出てこないのよ。まさかのハズレ?それとも死んだの?悲鳴もなにも出さないできもちわるい)

いわゆる手ごたえらしきものはなかった。場を支配する騒々しい沈黙。
焦りとともに早くなる鼓動。たしかに超音波はライブラリ全体に伝播されているはず。
その証拠にステレオポニーはソノルミノセンスがライブラリ全体に行き渡ったと実感している。

「まだ、まだもう少し時間がかかるのかも…。続けなさいステレオポニー!」
『了ー解ッ!サッサト、アノ世へ逝キヤガレーッ!!』
スタンドパワー全開。ライブラリ全体が高周波で震える。次の瞬間だった。
何かが溶けて消えたような感覚が微弱な振動を通じスタンドと本体に伝わる。
「やったわ!手ごたえあり!!」
ライブラリの一部で抵抗を失った高周波の反響。そこだけ突然抜けた感じ。
生天目とステレオポニーの共通した主観ではそんな感じの手ごたえがあった。

「あいつ。あんなところに隠れていたなんてね…。でももうおわり。大人しく出てこないからしんじゃったのよ。
ワーストかなんか知らないけどはっきりいって邪魔なの。ま、怒るだけムダかしら。
なんとかぎりぎり、ランチの時間には間に合うみたいだし。もう、さよなら…」
へろへろになった生天目は扉の柱に手を添えて寄りかかり、力尽きたスタンドはガクリと膝まつく。
「え!!?」
突然、生天目の首に嵌った首輪から騒々しいメロディー。同時に拘束される体。
「むぅ〜ぎゅぅう〜!!」
>『やってくれるね♪小ババァ♪
 あと30秒足りなければ、かーなりヤバいことになっていたよー♪』
ザ・ファンタジアは生きていた。鼓膜を震わす嫌らしくて耳障りな声。
ぺらぺらと話しかけてくるが口から膝まで拘束された生天目に言葉を返すことは不可能だった。
>『これから三秒後ーーーーー♪鬼になった君の見る世界は輝いているはずサ♪
 鬼化した君で、いろいろと楽しませてもらうよぉ〜〜♪お楽しみにネ♪』

三秒後。生天目有葵は鬼になった。柔らかいザ・ファンタジアの体はダイヤモンドよりも壊れない。
脱出は不可能だった。

「あ〜あ〜…。鬼になっちゃったのね私…。今の私が鬼になっても役に立たないと思うんだけどねぇ。
それはそうと、さっきのお楽しみってなによ?崖っぷちの最終ラウンドの始まりってこと?
君の本体の居場所も多分バレちゃってるしタイムリミットも迫ってるみたいだし、
きっと、あいつら死に物狂いでここに来るわよ。きゃはははははー!まぢうけるwww」

鬼化した生天目はお腹を抱えケタケタと笑っている。

【生天目が鬼化しました】

340148 :ザ・ファンタジア ◇tGLUbl280s:2011/03/08(火) 03:00:43
>「あ〜あ〜…。鬼になっちゃったのね私…。今の私が鬼になっても役に立たないと思うんだけどねぇ。
>それはそうと、さっきのお楽しみってなによ?崖っぷちの最終ラウンドの始まりってこと?
>君の本体の居場所も多分バレちゃってるしタイムリミットも迫ってるみたいだし、
>きっと、あいつら死に物狂いでここに来るわよ。きゃはははははー!まぢうけるwww」

ロードローラーでプレスされたような平たい体が、ポンッと音を立てて厚みを取り戻した。
元の体型に戻ったザ・ファンタジアは、鬼化した生天目有葵の身体を、ねっとりとした目つきで眺めている。

(お楽しみぃ〜?そんなもんエロ関係に決まってんだろ♪
 今日びの女子高生なんざ、ウリなんかやってるクソビッチばっかだろォ〜?…オボコぶってんじゃねぇよォ〜♪
 年のワリに幼児体型だから殺さず鬼化してやったが、やっぱ女は12歳越えたらゴミだナ♪
 さっさとヤッて始末しちまおう♪)

鬼化した人間は精神に干渉を受け、ザ・ファンタジアから受けた命令に背く事ができない。
ネズミはそれを利用して、有葵に猥褻行為を働く魂胆であった。
最低なロリペド野郎、筋金入りの性犯罪者の精神から発露したスタンドである。
ぼくらのたのしいクラブハウスのリーダーのそのものの外見をしていながら、本体の下衆な嗜好をそのまま受け継いでいた。
早速、お楽しみにとりかかろう…とばかりに、有葵に『意のままになる』命令を下そうとしたが、
急に何か引っかかる物を感じて、ネズミは口を噤んだ。
にやけ顔を凍りつかせて、有葵の台詞を反芻する。

>君の本体の居場所も多分バレちゃってるし………>あいつら死に物狂いでここに来るわよ。

(―――――本体の居場所がバレちゃってる――――……だと…???♪♪
 
 この女、タマタマあのバカ(エイドリアン)が立てた物音を聞きつけて、この部屋に勘付いた訳じゃないのかぁ〜〜?
 まさか他のメンツと示し合わせて、ここに来ていたのかあぁぁ〜〜〜???♪♪)

床に転がった携帯電話に目を留めて、ザ・ファンタジアは顔を引きつらせた。
ライブラリが本体の隠れ場所……と目星をつけて来たのなら、
まず確実に、この女(有葵)に入れ知恵した人物―――司令塔がいる。
とすれば、通話の途切れに異変を感じたその人物がライブラリに駆けつけるのは時間の問題だ。

(マズイ――!マズイぞぉ〜〜♪…部屋だけバレたところで、どーってことないが、
 長時間あの部屋の中を探し回られるようなことになれば厄介だぞぉ〜〜♪)

ザ・ファンタジアは、冷や汗がわりの白い汁を垂らしながら思考を巡らせる。
………しかし、その司令塔とやらも『本体の隠れ場所がライブラリである』ことに確信を抱いてはいない筈だ。
確信があるなら、この女が単独で偵察のような行動を取っている理由がつかない。
参加者連中がよねの裏切りに撹乱されず、協力体制を維持しているとすれば、
連絡を取り合いながら、当たりをつけた複数の場所を手分けして捜索している……と考える方が自然だ。
ならば、生天目有葵の口さえ塞いでしまえば、ライブラリ内の捜索をやり過ごせるかも知れない。
何しろ、あの能力を使っている間は、物体としての本体の身体は無くなったも同然なのだから。

ザ・ファンタジアは有葵の目を覗き込んで命令を伝える。
ネズミに両肩を捕まれた有葵は、渦を巻く白い瞳孔を見るだろう。

『いいかい?今から僕の言う通〜〜〜りに、君の記憶は上書きされるッ♪
 ライブラリには誰もいなかったんだぁ〜〜♪
 部屋中に超音波を照射したけれどナぁンーニも起こらなかった♪従って本体はライブラリにはいないッ♪
 君は、偶然廊下に現れた僕に鬼化されたんだヨ♪
 絶対に僕の本体の居場所について口を割ることはないッ!OK?♪
 後は自由にしてヨシッ!君のかつての仲間がここに来たら、存分に遊んであげるんだネ♪』

【ザ・ファンタジア、催眠術的なものを使って有葵ちゃんに本体の居場所を忘れるように命令】
【あとは自由に攻撃しちゃってOKです♪悪役の有葵ちゃんを楽しんでもらえると嬉しいな】
【ザ・ファンタジアは自分の声が携帯から漏れていたことには気づいてないです】

341吉野:2011/03/26(土) 00:51:06
生天目の携帯からザ・ファンタジアの声が届いた。
続けざまに、生天目のけたたましい笑い声が響く。
それは彼女の鬼化をこれ以上なく明確に示唆していた。

「……往生際の悪いネズミですね。これで、奴は自らライブラリに何かがあると
明かしたようなものです。
 あの子も、鬼になる直前、何か手応えを感じていたようですし」

高笑いを最後に一切音を届ける機能を放棄した携帯を睨んだまま、吉野が言う。

「本体がライブラリにいて、何らかの方法で姿を隠しているのだとしたら……佐
藤ひとみ。
 貴女のスタンドならば、それを探り出せる筈です」

もちろん、『フルムーン』のスタンド探知能力は使えない。
そんな事は吉野も分かっている。

「貴女のスタンドの触手、結構な射程を持っていますよね。
 それで文字通り、手探りでライブラリを探索すればいい。
 どんな手段で身を隠してるにせよ、スタンドなら通常の物体は透過出来る。
 にも関わらずその触手に触れる物があったのなら……それは奴の終わりを掴ん
だと言って間違いない」

立て板に水を流すように澱みなく、吉野は説明する。

「今更、鬼が一人増えた所で焼け石に水、貴女がライブラリに着けば決着です。
 今、一番厄介なのは……あのネズミがそれを見越して、
 ライブラリ到着前にもう一度仕掛けてくる事ですね」

破壊も捕縛も出来ない相手が本気で妨害を仕掛けてきたとしたら。
対処は困難を窮めるに違いないのだ。

「……急ぎましょう。もうあまり、時間はありません」

携帯の画面に表示された時間を見て、吉野が歩き出した。

「あと、そこの三人。いざと言う時はもう一度、あのネズミと戦ってもらいます
から。
 佐藤ひとみがライブラリに辿り着けるようにね」

と、吉野は足を止めないまま振り返って、延々と漫談を繰り広げている三馬鹿を
薮睨みにした。

【ライブラリに向かいました。現状がどんなもんか、一応くっちゃべらせてもら
いました。
 間違ってたら佐藤さんの方でこっそり訂正しちゃってください】

342佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s:2011/03/27(日) 03:55:04
吉野きららが握る携帯電話から、有葵の狂気じみた笑い声が漏れ聞こえる。
考えられる事象は―――生天目有葵の鬼化だ。
新たに持ち上がった問題に、ひとみは眉を寄せて溜め息をついた。

とはいえ、状況は一つの方向を差し示している。
『ザ・ファンタジアの消滅』と『ライブラリへの侵入』この2つの関連性を調査しに行った有葵が、
ライブラリに到着直後にネズミは消え、さらに有葵は鬼化された―――
ホールから消えたネズミがライブラリ付近に現れたのだ。
吉野きららが説く通り、本体の隠れ場所がライブラリである蓋然性は高い。

>「……急ぎましょう。もうあまり、時間はありません」
>「あと、そこの三人。いざと言う時はもう一度、あのネズミと戦ってもらいますから。
>佐藤ひとみがライブラリに辿り着けるようにね」

背中を向けて歩き始めた吉野きららに続き、ひとみもホールの階段を下りる。

「聞いたでしょ?美女二人のエスコート兼ボディガードがあんた達の仕事!
 下らないネタトークに花咲かせてた口閉じて、さっさとライブラリに向かうわよ。」

すれ違い様に皮肉を投げかけ、三人を促してホールを出た。
この三人は有葵がライブラリに出向いた目的を知らない。
ライブラリに向かう途中、ひとみは掻い摘んで事情を説明した。


・医務室でひとみを捕えておきながら、突如姿を消したザ・ファンタジア。
 消失は、丁度よねと御前等がライブラリで戦闘を始めた時刻と重なる。
・有葵はその関連を再現する実験の為にライブラリに向かった。
・有葵のライブラリ到着直後、ホールを飛び回っていた蚊―――ネズミの化身である蚊の羽音が途切れた。
・ネズミはライブラリに人が近づくのを怖れている?ライブラリに何か秘密を抱えているから?……その秘密とは―――


意外にもライブラリへの経路で、ネズミの妨害は無かった。
一行はエレベーター横の階段を上がり4階へ向かう。
3階と4階を結ぶ階段の踊り場で、ひとみは足を止め一行の歩みを制した。
ひとみの視線はスタンドシートの赤い点―――
シートに表示された建物見取り図の4階、階段とライブラリを繋ぐ短い廊下を動き回るマーカーに向けられていた。


「このマーカー…有葵よ。獲物を探すゾンビみたいに廊下を行ったり来たりしてる。
 あの子のスタンドは"音"のスタンド…恐らく音波振動で私達の接近を感知して待ち構えているわ。
 パワーは無いけど、応用性の高いスタンドよ…どんな攻撃方法で仕掛けてくるかわからないし、
 スピードで翻弄されたらやっかいよ。
 あんた達があの子と応戦している隙に、私はライブラリに辿り着いて室内を探索する。
 誰か一人、私のボディーガードとしてライブラリに付いてきて。」

潜めた声で語り終えたあと、ひとみは視線の弧を描いて一行の顔を見回した。


【調整と状況確認のレスのため、あまり動きがありません。すいません】
【御前等さん、よねさん、天野さんに、ネズミとライブラリの関係を話しながら、ライブラリに向かう】
【有葵ちゃんの居場所は4階ライブラリ付近の廊下としてますが、よかったかな?
 鬼化すると体力をセーブする大脳のリミッターが外れて疲れを感じなくなる…ことにしてw
 疲労は気にせず存分に攻撃をしかけてもらえるとうれしいです】
【佐藤について来てくれる人の人選はお任せします。避難所で名乗り出てくださっても可ですw】

343生天目有葵 ◆gX9qkq7FNo:2011/03/27(日) 16:20:11
スタンドシートに映し出されている生天目有葵のマーカーはゆっくりと佐藤たちに近づいていく。
こつこつとミュールの鳴らす足音が佐藤たちの耳には、すでに届いているはず。
階段の踊り場からは四階を見上げる形となるため、最初に見えたのは生天目の栗色の頭。次に目。肩。
両腕は胸の前で閉じていた。生天目は何かを両手で引きずって来ているようだった。

ゴゴゴゴゴゴ

と音が鳴る。ステレオポニーが効果音を発しているのだろう。

「えっと…敵ってこういうとき何て言うのかしら?何にも言葉が出て来ないものね。
ただ思っていることを口にするのなら、ひとみん必死すぎ。鬼みたいな顔してる。
私とひとみん、どっちが鬼かわからなくない?
ねー?昔の優しいひとみんはどこ行っちゃったの?私にはわかるんだよ。
私みたいな多感な時期の人には、人の心の奥がさ、透けて見えるんだよ。
ひとみんは今も病みたいなものを抱えてる。その原因は九頭龍一。そうでしょ?」

生天目は引き摺っていたものから手を放し身体を起こす。足下には赤いポリタンク。

「ふぅー。重かった。倉庫にあったんだよ〜これ。ガソリンだよねぇ?」
赤いポリタンクのフタをひねるとフタを投げ捨て、ポリタンクを傾ける生天目。
中からはガソリンが流れ階段を濡らしていく。終いにはポリタンクを足で蹴る。
ポリタンクはガタガタと階段を落ちて佐藤たちのいる踊り場で止まった。

「佐藤ひとみは、ここでダメ男たちと一緒に焼死します。
こんなことなら九頭龍一と一緒に死んでいればよかったね?
かなしいね。では、さようなら…。ひとみんと愉快な仲間たち」

生天目はマッチの炎を投げ捨てた。ガソリンで濡れた階段に…。

344天野晴季 ◆TpIugDHRLQ:2011/04/07(木) 16:26:54
>「聞いたでしょ?美女二人のエスコート兼ボディガードがあんた達の仕事!
 下らないネタトークに花咲かせてた口閉じて、さっさとライブラリに向かうわよ。」
「了解です。あと下らないは酷いですよー」

>「このマーカー…有葵よ。獲物を探すゾンビみたいに廊下を行ったり来たりしてる。
 あの子のスタンドは"音"のスタンド…恐らく音波振動で私達の接近を感知して待ち構えているわ。
 パワーは無いけど、応用性の高いスタンドよ…どんな攻撃方法で仕掛けてくるかわからないし、
 スピードで翻弄されたらやっかいよ。
 あんた達があの子と応戦している隙に、私はライブラリに辿り着いて室内を探索する。
 誰か一人、私のボディーガードとしてライブラリに付いてきて。」
佐藤がスタンドシートを手に説明する
「音のスタンドですか…つまり反響定位(エコーロケーション)とかが得意なわけですね
…余談ですけど、シャチって指向性の高い反響定位の音波を獲物に当てて麻痺させることがあるって噂ですよ。…生天目さんも出来るんですか?
音速で移動するのは厄介ですね…」

「…?」
生天目の接近に気づき、上を向く天野
(何か引きずってる…。身体の向きと歩くスピードからして恐らく重い物…)
次に天野は耳を澄ます。
こつ、こつ、こつ、こつ
生天目の足音が聞こえる
更に耳を澄ます。すると…
ちゃぷん
液体が揺れるような音が聞こえる
(僕じゃあ有るまいし、水を態々運ぶ意味なんか無い。液体で、攻撃に使うのに有利な物…可燃物…
…もしかして灯油かガソリン!?)
「フリーシーズン!」
咄嗟にフリーシーズンを使い、気温を下げ湿度を上げ始める天野

>「ふぅー。重かった。倉庫にあったんだよ〜これ。ガソリンだよねぇ?」
天野の推測どおり、生天目が引きずっていたのはガソリンだった。生天目はガソリンを廊下にばら撒く
(間に合え、間に合えッ! ガソリンの引火点はマイナス40℃以下…生半可な気温低下じゃ皆仲良く消し炭だ!)
ただいまの気温、-20度
(駄目だこれじゃあ…間に合わない…! どうする? 確実に生天目さんは火を起こす手段を持ってる。何か手は…)
ただいまの気温、-30度

>「佐藤ひとみは、ここでダメ男たちと一緒に焼死します。
こんなことなら九頭龍一と一緒に死んでいればよかったね?
かなしいね。では、さようなら…。ひとみんと愉快な仲間たち」

遂に生天目がマッチを取り出す。
(まずい、まずいまずいまずい…! どうする、ガソリンに引火した時点で死亡確定だぞ…
ん? 引火した時点で?)
湿気でマッチに火がつかないことを願った天野だったが、結局マッチは火を点した
(だったら…マッチがガソリンに触れるまでに火を消せば良いんだ…!)
「フリーシーズン、気流操作!」
咄嗟にひらめき、フリーシーズンの3つ目の能力を発動する天野。気流操作により、空中にあるマッチを一旦上に飛ばして時間稼ぎをし、
更に気流操作でマッチの周囲の気圧を下げる。…そして、マッチの周りは真空になった
真空になったことで燃焼の条件、可燃物、温度、酸素のうち酸素を失ったマッチの火は、ガソリンに触れる前に消えた
「は、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。…生天目さん。火遊びは駄目って…小学校で習わなかったんですか?」
かなり集中力を使った様子の天野。既に息が切れ掛かっている
【天野晴季:取り合えず焼死は防ぐことが出来たが、スタミナが限界に近い】

345御前等 ◆Gm4fd8gwE.:2011/04/12(火) 00:09:07
>「あと、そこの三人。いざと言う時はもう一度、あのネズミと戦ってもらいますから。
 佐藤ひとみがライブラリに辿り着けるようにね」
>「聞いたでしょ?美女二人のエスコート兼ボディガードがあんた達の仕事!
 下らないネタトークに花咲かせてた口閉じて、さっさとライブラリに向かうわよ。」

「ふふふようやく本音が出始めたな佐藤さん……わかっているとも、この俺の圧倒的紳士力にほだされ
 エスコートされたくてしゃあないんだろう!って、どっかでこのセリフを使った覚えがあるな。デジャビュか?」

さてさて、ホールを後にした佐藤with三羽烏はずんずこずんずこ上を目指す。
向かう先にはライブラリ。御前等本人は知らぬことだが、鬼化した際に一度訪れた場所でもある。
どうやらこの場所に、このイベントの核心を迫るキーが隠れているそうな。佐藤の言である。
三階とライブラリのある四階とをつなぐ階段の踊り場にて、佐藤隊長から行軍中断のハンドサインが出た。

>「このマーカー…有葵よ。獲物を探すゾンビみたいに廊下を行ったり来たりしてる。
 あの子のスタンドは"音"のスタンド…恐らく音波振動で私達の接近を感知して待ち構えているわ」
>「音のスタンドですか…つまり反響定位(エコーロケーション)とかが得意なわけですね
 …余談ですけど、シャチって指向性の高い反響定位の音波を獲物に当てて麻痺させることがあるって噂ですよ」

「なんだ、その程度なら俺にもできるぞ。こう、水面近くの岩にでかい岩を投げつけてだな……」

ガチンコ漁法であった。現在では禁止されているが、昔は手榴弾とかでやっていたらしい。

>「あんた達があの子と応戦している隙に、私はライブラリに辿り着いて室内を探索する。
  誰か一人、私のボディーガードとしてライブラリに付いてきて。」

佐藤が同行者を募る。ライブラリを家探しし、いざというときには彼女の盾となる肉の壁要員だ。

「俺が行こう。俺は詮索されるのは大嫌いだが、誰かの秘密を探るのはチョコレートパフェより好きなんだ」

その為に自分の命を危険に晒してもいいと思えるぐらいには。
ちなみに御前等に詮索されるような秘密は一つもない。特筆すべき事項もなければ、本当にただのキモオタであった。

>「フリーシーズン!」

「ん、どうした天野くん」

突如スタンドを出した天野くんの挙動に御前等は疑問で返す。
圧倒的にニブチンなこの男は、>ゴゴゴゴゴゴ ←これにも気付かず未だのほほんとしていた。

>「佐藤ひとみは、ここでダメ男たちと一緒に焼死します。こんなことなら九頭龍一と一緒に死んでいればよかったね?
  かなしいね。では、さようなら…。ひとみんと愉快な仲間たち」

いつの間にか接近していた生天目がガソリン入りのポリタンクを転がし、点火済みマッチを放るところだった!

「ぬわーーっ!何さらそうとしてんだこの女ッ!?」

>「フリーシーズン、気流操作!」

マッチが飛ぶ!天野くんが叫ぶ!マッチガソリンの上へ!……直前で、火は消えた。
天野くんがスタンドで消したと思しき状況に、御前等はただひたすら冷や汗を拭うばかりだ。

「いいぞ天野くん!君は本当に欲しいところに欲しい仕事をするな!」

>「は、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。…生天目さん。火遊びは駄目って…小学校で習わなかったんですか?」

「その女の相手は任せたっ!行くぞ佐藤さん!!――――と見せかけてキィーック!!」

天野へ向けて親指を立て、佐藤の背を押して生天目をかわすようにしてライブラリにまろび込む。
そのついでと言わんばかりに、生天目の尻へ回し蹴りを入れておいた。階段の上だったから、運が良ければ落ちるだろう。


【佐藤の同行を申し入れ、をライブラリへ押し込む。生天目ちゃんのケツへ蹴りを入れ天野くんの方へ押し出す】

346佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s:2011/04/14(木) 21:58:39
鬼化した有葵は4階にいる。
階段の踊り場で有葵の能力について説明するひとみに天野が質問を入れた。

>「音のスタンドですか…つまり反響定位(エコーロケーション)とかが得意なわけですね
>…余談ですけど、シャチって指向性の高い反響定位の音波を獲物に当てて麻痺させることがあるって噂ですよ。…生天目さんも出来るんですか?
>音速で移動するのは厄介ですね…」

御前等も口を挟み質問をまぜっ返す。

>「なんだ、その程度なら俺にもできるぞ。こう、水面近くの岩にでかい岩を投げつけてだな……」

ひとみは二人の話を受けて、考えを口にした。

「『音波』って言い方あるでしょう。『音』の正体は空気や液体を振動させる『波』よ。
 超音波、低周波といった人の耳には聞こえない音も存在するわ。
 どんな使い方をしようと『音』が『波』であり『振動』であることは変わらない。
 反響定位は音波の反射を感知して標的の位置捕捉に使い、シャチは音波を衝撃波として相手にぶつけているだけ。
 ステレオポニーが音に特化したスタンドである以上、あらゆる使用法が可能だと考えていた方がいいわね。
 ただ、あの子がその使い方に気づいているかだけど…」

いい終わらぬうちに言葉は途切れた。


>ゴゴゴゴゴゴ
地響きのような効果音と共に、有葵が階上に姿を現したからだ。

階段の上に立つ生天目有葵は、意地の悪そうな含み笑いを浮かべていた。普段の有葵には見られない表情である。
それでも口調は何処かあっけらかんとしていて、いつも通りの開けっぴろげな雰囲気を残していた。
やはり鬼化の向精神作用は個人差が大きいのだろうか。
鬼化したひとみやザ・ファンタジアに見られるようなドス黒い空気感がないのだ。
歯止めの利かぬ子供の好奇心のような悪。だからこそ余計にそら恐しい。

>ねー?昔の優しいひとみんはどこ行っちゃったの?私にはわかるんだよ。
>私みたいな多感な時期の人には、人の心の奥がさ、透けて見えるんだよ。
>ひとみんは今も病みたいなものを抱えてる。その原因は九頭龍一。そうでしょ?


有葵は引き摺って来たポリタンクの蓋を開けて容器を倒す。
容器の口から溢れた液体が階段を伝って流れ落ちた。液体の放つ独特の臭気が周囲に立ち込める。

>「佐藤ひとみは、ここでダメ男たちと一緒に焼死します。
>こんなことなら九頭龍一と一緒に死んでいればよかったね?
>かなしいね。では、さようなら…。ひとみんと愉快な仲間たち」


有葵の指先からオレンジ色の閃光が弾かれて飛んだ。それはマッチ棒に灯された炎。
足を濡らす液体の不快感も、階段を転がり落ちるポリタンクの騒音も、ひとみの意識の外にあった。

347佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s:2011/04/14(木) 21:59:37
ひとみは弓なりの軌跡を描いて落下する小さな炎を、棒立ちになってただ眺めていた。
『九頭龍一』―――――
頭の中で何度も繰り返した名であるに関わらず、
いざ音として外部から耳に入ると無意識のうちに一瞬、体が硬直してしまうのだった。
視線で追う炎の動きはまるでスローモーションだ。ひとみは炎の中に九頭との闘いの記憶を見た。

―――― 抱えている?…私が……?九頭の何を抱えているっていうの――――?

記憶はあまりにも鮮烈であったが、九頭と関わった時間は正味数日に過ぎない。
想いを自覚してからはたったの数時間……数時間であの男は消えてしまった。
あの戦いの後だって、何も変わってはいない。
時折スタンド使いと接触する以外は、いつもの日常が延々と続いているだけだ。
だから、自分は何も失っていない。九頭は通り過ぎただけの男。
そもそも何も得てはいないのだから、失ったものなど何もない
そう思い込むことだってできる筈だ―――それなのに――…?!


突然、滞空中の炎が音も無く消えた。天野が能力を使って鎮火させたのだ。
網膜に映る光の刺激が途切れて、ひとみはハッと我に返った。

一度唇を噛んで感情を振り払い、ひとみはライブラリへ同行の意思を示した御前等と共に、階段を駆け上った。
有葵の脇をすり抜ける拍子に、御前等は行きがけの駄賃とばかりに彼女の尻に蹴りを入れる。

>「その女の相手は任せたっ!行くぞ佐藤さん!!――――と見せかけてキィーック!!」

御前等に背中を押し出されるようにして、バランスを崩した有葵の横を通り抜け、ライブラリに通じる廊下に至った。


御前等は廊下を走り、突き当たりにあるライブラリの扉を勢いよく開けて室内に入った。
数十秒時間を空けて、ひとみは開いたドアから室内を覗き込む。
陽動の御前等に異変がないことを確認し、室内に足を踏み入れた。

ライブラリの中はシンと静まり返っている。
ひとみはフルムーンをライブラリのほぼ中央あたりに浮遊させた。
宙に浮くフルムーンから触手が伸び、ひとみと御前等を避けて細かく枝分かれしながら更に伸びていく。
開いたままの奥の扉から、書庫の中にも触手は侵入し成長を続ける。
やがて3分経過する頃には、ライブラリ中に触手の網が張り巡らされた。
しかし、手ごたえがない。書棚や建具以外に触手に触れるものがないのだ。

「いない―――…誰もいないわ……!」
ひとみは思わず声を上げた。

予めスタンドシートで確認していたライブラリの配置図は、奥の書庫も含めスチール製の書棚が立ち並ぶばかりで
人が隠れられる大きさの棚やロッカーは無かった。
何かが室内に潜んでいるならば―――それこそ人間一人が隠れているのならば
ネットのように張り巡らされた触手を避けて潜み続けられるとは思えない。

何かがおかしい―――この部屋に本体がいるのならば、何故ザ・ファンタジアは妨害してこない?
何故姿すら現さない?ライブラリを探る自分たちの行動は間違っているのではないか?
寧ろザ・ファンタジアの罠に嵌りかけているのではないか―――?
ひとみの頭に様々な疑念が過ぎった。


【ライブラリの中に触手を張り巡らせて探索するも、何も見つけられず】

348よね ◆0jgpnDC/HQ:2011/04/17(日) 21:09:53

(天野さんはもう戦えない…生天目さんと戦えるのは…自分だけ…ッ)

疲労しきった天野には任せられない、よねはそう判断した。

だが、かくいうよねも決して万全な状態ではなかった。
ずっと意識に違和感を感じるのだ。
なにか、時たま思考にノイズが入るような、そんな感覚が続いていた。

「天野さん!下がっていてください!」

(あの液体はガソリン、あるいは灯油…これを利用しない手はないッ!)

液体は少ない量で広い面積をカバーできる。
同じ物質であれば、Sum41の能力で一気に操作できるのだ。

よねは床いっぱいに広がっているガソリンに手を浸し、

「Sum41ッ!このガソリンは潤滑油になるッ!」

生天目は階段の上で、御前等に蹴りを入れられよろめいている。
そのまま転がり落ちるのは無いにしろ、反動で階段を一段くらいは降りらざるを得ないだろう。
階段には生天目自身が撒いたガソリンが満たされている。
そして今、そのガソリンは、まるでローションの様に滑りやすい液体に変化しているのだ。

生天目が階段を下りれば、潤滑油に転び階段から転げ落ちるに違いない。

「すいません、今の自分に出来ることは、こんな事しか…」

よねの能力は現在Sum41のみに限定されている。
最高で孤高の思考空間である、Sum For Oneもどういうわけか使えない。
故にリアルタイムで作戦を練る必要があるのだ。

その上、思考のノイズによって頭も回らない。
結果、思いついた『生天目が階段を一段下りて、潤滑油に足を踏み入れるだろう』という、
あまりにも不確実な方法を取らざるを得なかったのだ。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

海面が近い。
本来のよねが人格の主導権を握る時が近づいていた。

対して潜在意識の顕在であるよねも主人格の座を譲ろうともしていない。

(必ず奪い取って見せる。米コウタは自分だ…)

"表のよね"が人格の海の海面に到達する時は、近かった。

349生天目有葵 ◆gX9qkq7FNo:2011/04/18(月) 02:08:35
生天目が投げたマッチの火は、階段に垂れ流された謎の引火性液体を燃やすことはなく
天野のスタンドフリーシーズンの能力によって消された。

>「は、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。…生天目さん。火遊びは駄目って…小学校で習わなかったんですか?」

「大人がダメって言うことは大抵の子どもが面白いって思うことなのよね。私は子どもじゃないけど」

そう言っておきながら生天目は満面の笑みで、再びマッチ箱からマッチを取り出そうとしていたが…

>「その女の相手は任せたっ!行くぞ佐藤さん!!――――と見せかけてキィーック!!」

跳んで来た御前等のまわし蹴りでつんのめり、バランスを崩した本体を階段側へ落としかける。

「あわわわ!待ちなさい!」
手をぶんぶんさせて叫ぶ生天目をよそに佐藤と御前等はライブラリに姿を消していた。

「行かないで…ひとみん…。九頭の所には私が行かせてあげたのに…」

少女の瞳からは悲しみが溢れた。

>「Sum41ッ!このガソリンは潤滑油になるッ!」

Sum41を発動させるよね。

彼には蹴られてよろめいているかのように見えた生天目だったが
実は、お尻から生えている尻尾をステレオポニーがしっかりと握り締め
つんのめっている本体を廊下側へと引っ張り、懸命に階段への落下を阻止しようとしている。
それでもミュールの踵が階段の縁に辛うじて引っかかって、命綱は尻尾一本という危ない体勢なのだが。

「この弓なりの体勢ってやばくない!?」

予想通り、プチンと尻尾は切れて階段に一歩足を踏み入れた生天目は
滑って転んで階段を滑り落ち、頭をアホほど打って気を失った。

「…ここはどこ?」
無意識の海のなか。生天目はよねの姿をみたような気がしたが目を開ければ
やっぱり市民会館の階段。体は生まれたての小鹿ようにヌルヌル。

「そうそう。私ライブラリに行こうって思ってたんだー。みんなも行くの?」
一時的に記憶を失くした少女はザ・ファンタジアの居場所も覚えていない。
生天目はぬるぬるおばけのように階段をのぼりライブラリの入り口へとむかった。

350御前等 ◆Gm4fd8gwE.:2011/04/18(月) 02:43:43
御前等のヤクザキックを受けた生天目が階段側へとつんのめる隙に、御前等と佐藤はライブラリへと踏み込んだ。
水を打ったように(実際そうだったが)静まり返り、物音ひとつ立たぬライブラリ。
林立する本棚の一つ一つに敵の潜伏を留意しながら、御前等はひとまず回遊魚のようにふらふらと歩く。

「さあ!続け佐藤さん!カムヒア!ゴーアヘッド!!――あれ?おーい、佐藤さーん……?」

佐藤は御前等の呼びかけには応じず、まるで囮に齎される危難の予兆を見分するようにして数十秒沈黙。
御前等の身に何も起こらないと判断したのかようやくライブラリへ足を踏み入れた。

(こ、この女〜〜〜ッ!この俺を弾除けにしやがったな!?レディーファーストの本来の意味を教えてやろうかッ!)

>「いない―――…誰もいないわ……!」

ドラクエの雑魚敵のような外見をしたスタンドから触手を伸ばしていた佐藤は、それで精査が完了したのか小さく零した。

「何ィ!?佐藤さん、あれだけ勿体ぶってここまで来てっ!何もありませんでしたじゃあ下のモンに示しがつかんぞ!
 あ、でもナマテンメちゃんには会えたから収穫はあったと言えなくもないな!よかったな佐藤さん!!」

ライブラリに備え付けられた、閲覧用のキャスター付き椅子に腰掛けてグルグル回る。
鬼化の反動か、ここへ来てこの男、完全に呆けていた。


【ライブラリ到達】

351佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s:2011/04/20(水) 20:39:44
>>349
ライブラリ内。ひとみは部屋中にフルムーンの触手を張り巡らせた。
しかし、触手は室内に潜む者の存在を捉えることができない。

御前等はラチもないことを喋くりながら、車輪つきの椅子を回してハシャいでいる。
緊張を和らげる為というより、事の重大さを全く認識していないとしか思えない能天気さだ。
ひとみは大いに苛立った。
御前等の座っている椅子を引き倒してやりたかったが、全ての触手を室内の探査に回している状況ではそれも叶わない。
爆発寸前の怒りを飲み込んで、ひとみは思いつくかぎりの皮肉を吐き出した。


「随分と余裕綽々ねぇ〜大物だわ!あんたって!
 時間切れまでにあのネズミを倒せなかったら自分の身がどうなるか、考えたことないの?
 それ位の想像力すら持ち合わせてないのかしらぁ?それとも、あんたの想像力は現実逃避の妄想専用で
 アニメの女の子との恋愛は妄想できても、現実の危機には非対応ってワケ?
 じゃなかったら自殺願望でもあるの?クソつまんない日常に戻るよりここで消滅した方がマシなのかしらッ?!」

押さえかねる苛立ちで、こめかみの血管が浮き出し数回脈打ったのが自分でも分かった。
数日前知り合ったばかりの御前等のプライベートなど全く知らない。
服装と見た目の先入観だけでオタクと決め付けて罵った。
彼を罵倒した所で状況が好転するわけもないのに。完全な八つ当たりである。しかも罵っても全くスッキリしない。
どうにも冷静さを保っていられなかった。
焦りと苛立ちは、本人も預かり知らぬうちにジワジワと入り込み、精神を侵食しているのかもしれない。



御前等からプイと視線を逸らし、再びライブラリの探索に意識を向け直す。
本体の居場所について、何か手がかりは無いか―――?

ひとみはホールで聞いた有葵と吉野きららの通話を思い出していた。
有葵の『ソノルミネッセンス!』という叫び声。
ひとみは九頭の追っ手と戦った際に、一度その技を目にしたことがある。


ソノルミネッセンスは超音波照射による液体の発泡現象である。ただの発泡とはいえ侮れない。
出力が高ければ人間の血液を沸騰させかねない大技だ。
ライブラリを本体の隠れ場所と疑った有葵は、ソノルミネッセンスを敵のいぶり出しに使ったに違いない。
本体がこの部屋に潜んでいたのなら、いかにしてソノルミネッセンスを凌いだのだろうか?
血液が液体である限り避けようのないあの技を―――?

352佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s:2011/04/20(水) 20:44:11
ソノルミネッセンスは液体中に発泡現象を引き起こす。
逆に考えると、液体でなければ反応は起こらない。液体でなければ―――

ザ・ファンタジアは、霧のように体を粒子化し姿を消すことができる。
その効果は粒子化開始時に手を触れた相手にも適用される。
現に、よねの能力によって床に埋め込まれたひとみは、ザ・ファンタジアに一時的に粒子化された。

ザ・ファンタジアが本体の隠匿にその能力を利用していたとしたら―――?
空中に拡散した粒子の状態ならば、液体にしか効かないソノルミネッセンスを無効化できるのではないか。


仮にその推理が的中しているとすれば、最早ひとみ達には手の打ちようがない。
ネズミがひとみ達を殺すことだけを目的にするのならば、
ゲームの『場』である会館が消滅するタイムリミットまで、本体と共に粒子化したまま、ただ待てば良いのだから。
ザ・ファンタジアが能力を解除しない限り、目に見えず、触れることもできない本体を捕える術はない。
そうなれば、この『鬼ごっこ』は所謂『詰みゲー』だ。理不尽すぎる。


ひとみは、もう一度、有葵と吉野の通話を順を追って思い返してみた。
あの時、有葵が『ソノルミネッセンス』と発声した数分後に、携帯からネズミの声が漏れ聞こえた。

―――『やってくれるね♪小ババァ♪
――― あと30秒足りなければ、かーなりヤバいことになっていたよー♪』

ネズミは確かにそう言っていた。
『あと30秒足りなければ』―――とは何を意味するのだろう。30秒時間が足りなければ何が起こっていたのか?
ネズミが本体の体を粒子化してソノルミネッセンスをやり過ごしていたと仮定し、ネズミの台詞に言葉を継ぎ足してみる。

『あと30秒、粒子化していられる時間が足りなければ、ソノルミネッセンスを食らっていた』―――
こう解釈するならどうだろう。

つまり……粒子化していられる時間には限界がある―――?
この仮説は単純なやり方で確認できる。このまま根気よく触手の網を張り続けていればいい。

353佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s:2011/04/20(水) 20:52:13
程なくして、その瞬間は訪れた。
張り巡らせた触手の網を押しのけるようにして、突如出現した人型の存在を、フルムーンは感じ取った。
ライブラリの更に奥の小部屋―――書庫の中にいる!
ひとみは、書庫の中に張り巡らせていた触手を、人型に向けて収束し、拘束した。
触手で捕縛した人型は、成人男性にしては小柄だが小太りだった。


「やっぱりね!見つからないはずだわ!本体と一緒に粒子化して隠れていたなんて!
 本体は捕獲したわ!あんたもすぐ書庫に行って!!」


御前等に向かって、声を張り上げた刹那だった。
フルムーン発動中の、空になった右目に激しい衝撃が走った。ひとみは自分の体が宙に浮き、後ろに弾け飛ぶのを感じた。
滞空中の一秒にも満たぬ時間の中で、書庫に視線を向けたひとみは見た。
書庫の扉の裏側から、剥がれるように現れ出た、紙のように平たく、白い物体を。
『あのネズミ』だった。
扉に貼り付けていた体を半分剥がして、戸口にその姿を見せている。
平たい体の中で、唯一厚みを取り戻している右腕は、狙撃銃のような形状に変化し、その銃口は細く煙を上げていた。
銃口の先は、宙に浮くフルムーンに向けられていた。
眼球を丸いケースの内側に収めた機械の如きスタンドは、表面に幾つもの亀裂が走りヒビ割れている。


床に仰向けに倒れたひとみは唇を噛んだ。生暖い液体が右目から流れ落ちている。

―――粒子化に時間制限があるのなら、本体と共にネズミも実体に戻っている筈だった。
本体を拘束する前に、ネズミの不在について、もっと深く不審を抱くべきであった。
粒子化の時間切れを迎えたネズミは、書庫の扉の真後ろを実体化の場所に選んだ。
そして本体と分離し、実体に戻った瞬間に体を平らにして扉の裏に張り付き、触手の探査を逃れた。
追い詰められたネズミは本体を囮にして、ひとみの意識を逸らしたのだ。

ひとみの意識と共に、フルムーンは触手ごと色を薄め、消えはじめていた。


書庫の扉の開口部に立つネズミは、狂気じみた笑顔を浮かべていた。
その表情に以前の余裕はなく、明確な焦りが見て取れる。
ネズミは御前等に照準を合わせ、立て続けに5発、銃と化した腕から白い弾丸を発射した。



【何回か前のレスから匂わせてきた通り、ネズミは本体と一緒に粒子化してライブラリに入る人をやり過ごしてました】
【佐藤、実体化した本体を捕えるも、ネズミにフルムーンを狙撃されて負傷】
【フルムーンが消えてしまったことで捕縛に使った触手は無くなっちゃいましたが、本体は書庫の中にいます】
【書庫の扉の前に立ちふさがるネズミ。御前等さんに向かってライフル5発連射】

354御前等 ◆Gm4fd8gwE.:2011/04/27(水) 03:22:46
>「やっぱりね!見つからないはずだわ!本体と一緒に粒子化して隠れていたなんて!
 本体は捕獲したわ!あんたもすぐ書庫に行って!!」

佐藤は回答を得たようだった。出された指示に了解し、踏み出そうとした御前等。
しかしてその目の前で、佐藤が不可視の自動車にでも跳ねられたように吹っ飛んだ。

「佐藤さん!」

右目から滂沱と血が流れている。確か彼女のスタンドは『そこ』にあった。
ダメージフィードバック。スタンドを攻撃されたのだ。

(一体どこから……!?)

首筋を駆ける悪寒。続けて風切音。飛来する白い弾丸。
信じられないことに――発砲音どころか、銃の動作音すらなく、書庫から射撃されたのだ。
弾丸は5発。防ぎきれない数ではない。スタンドに4発弾かせ、最後の一発を掴みどらせた。

「やはりな……こいつはアメリカねずみの『煙』!弾丸に変えて飛ばしてきたかッ!!」

視線が目指すは書庫の扉。ここであったが百年目、むくつけきアメリカねずみが出現していた。
佐藤は負傷したが御前等にそれを治療する術はない。ならば彼にできるのは、一撃でも多くの拳を叩き込むこと。
跳躍一つでアメリカねずみまで接近し、アンバーワールドの歯車付きラッシュを繰り出した。
着弾する拳の群れはねずみの胴体から頭部を中心に打撃の杭で穿ちまくる。砕けるように爆ぜるねずみの身体。
が、駄目……っ!

「のれんに腕押しとはよく言ったものだな……!便利な身体してやがるぜッ!」

ねずみの身体は素粒子となって分解され、離れた場所に再び実体化した。
確かに穿ったはずの孔も、抉り抜いた傷痕も、痕跡なく消失し、新調したかのようにまっさらだ。
再び指先に銃口を出現。撃ってくる。アンバーワールドで弾きながら御前等はサイドステップ。書架の影へ飛び込む。

(厄介な能力だ……どれだけ殴っても!一度素粒子化されてしまえば元の木阿弥!全回復呪文使うボスの如き理不尽さだ!)

しかし相手の能力の厄介さが明確に把握できているということは、それ自体が光明ともなる。
逆説的に言えば、『厄介さを封じる』方向にだけ努力の熱量を絞れば良いということなのだから。
暗中に闇雲と矢を放つよりかは、一点光の照らす場所を的とするように。

(攻撃するとき、奴は必ず実体化している……すなわち!『素粒子のまま無力化する』か『そもそも素粒子化させない』
 ……このどちらかを達成すれば良いッ!)

いずれにせよねずみに対する情報が出揃ってない。要検証。
御前等は意を決して書架から飛び出した。ねずみのライフルが照準を合わせるより早く、スタンドを発現。
下から突き上げるようにアッパーカットの連打を浴びせる。近距離パワー型がここまで接近したのだ。ねずみは粉々。

「ここだッ!」

再び修復のため素粒子するタイミングを狙って、御前等はポケットからジャスコのビニール袋を取り出した。
市民会館編の冒頭で買ったジュースやアイスを入れてきたものである。空気を孕ませるように、ねずみへ向けて振り抜く。
素粒子状態のねずみは、全部とまではいかなくとも大半をビニール袋にもっていかれた。

「獲ったどーーーっ!」

袋の口をきつく縛って、ライブラリの床に転がした。


【検証その1。素粒子化したねずみをビニール袋に閉じ込めて出方を伺う】

355ザ・ファンタジア ◆tGLUbl280s:2011/04/30(土) 18:11:45
―――人間の目で捉えられる物体の大きさは限界がある。
視力の良い者が目を凝らせば1mmの1/10ほどの大きさのダニが蠢いている姿を見ることはできるだろう。
しかし、それ以下のサイズのもの、例えば0.3〜10μm(μマイクロ:1mmの1/1000)の
カビの胞子や細菌を肉眼で捉えることはできない。
細菌よりさらに微細なウイルスは、電子顕微鏡が登場するまで、ついに人類がその形状を知ることは無かった。
ハウスダスト、花粉、カビ、細菌、ウイルス……
目に見えぬが確かにそこに存在するモノに囲まれて、人は生活している。

霧か煙のように姿を消し、壁や床を通り抜ける、捉え所のないスタンド――ザ・ファンタジア。
だが、その消失のトリックは単純だ。ザ・ファンタジアは体を粒子化する能力を持っている。
体をウイルスレベルのナノサイズ(1mmの100万分の1)にまで細かく分解し、
目視不可なサイズになることで、その場に居ながらにして"見えない"状態になっていたのだ。
ウイルスが、その微細さゆえ、素焼きの陶器のような肌理の荒い物体を通過することは、20世紀初頭に実証されている。
意思を持つウイルスサイズ微粒子の集合体と化したザ・ファンタジアにとって、
経年劣化したコンクリートのヒビ割れや気孔を縫って壁を通り抜けることなど容易いことであった。


吉野きららと生天目有葵の読み通り、本体はライブラリの中にいた。
よねと御前等が戦闘を繰り広げている間も、生天目有葵が超音波を照射し続けている間も
ザ・ファンタジアと本体は、ずっとライブラリの中に潜んでいたのである。
ゲームのルールに縛られ、移動を制限されている本体を侵入者の目から隠すために
本体と共に粒子となって室内を漂いながら、その動向を窺い、危機が去るのを待っていたのだ。

*            *           *

356ザ・ファンタジア ◆tGLUbl280s:2011/04/30(土) 18:12:14
(年増ババァ〜♪……しつけぇ〜んだよォ…男の浮気でも探るみたいにネチッこく疑ってんじゃねぇェ〜…♪
 ここには誰もいねえんだよォ〜…♪さっさと他をあたりやがれッ!!)

ライブラリの奥、書庫の中で―――ザ・ファンタジアは焦り始めていた。
何百年も扉を閉じたままの屋根裏部屋の蜘蛛の巣のように、グロテスクに枝分かれした触手が部屋中に張り巡らされていたが、
空中に拡散した粒子の状態のでいさえすれば、自らの存在を触手に悟られる心配はなかった。
問題は触手の網がいつまでも解除されないことだ。

ザ・ファンタジアの焦り、それは粒子化していられる時間の制限にあった。
粒子化状態で、個体としての意識を維持するには一定以上の密度が必要なのだ。
空気中の粒子は、密度の高いところから低いところに移動し、次第に拡散し薄まっていく
限界密度を越える前に実体に戻らなければ、粒子は拡散し続け、ザ・ファンタジアという意識体は消滅してしまう。


限られた時間内で何かを探さねばならぬ時、通常、人は一度探し終えた場所を次の捜索候補から外す。
"ない"と分かっている場所を何度も探るより、他の場所を当たった方が効率的だからだ。
不運な偶然が重なり、ゲーム参加者にこの部屋に対する疑念を抱かれてしまったようだが、いや疑念を抱かれているからこそ
今回の捜索をやり過ごしてしまえば、これ以上の安全な隠れ場所ない。
しかし、既に潜伏者の不在を確認するには充分な時間が経過しているのに、
何故、触手の主である女は、徒労としか思えぬ探索を諦めようとしないのだ―――?


(なんだかピンチ臭ぇじゃね〜か…♪
 このクズ野郎め…お前が物音なんぞ立てるからバレそうになってんだろうがぁ〜…♪
 何の役にも立たないウスノロの分際で足引っ張りやがって〜ッ…♪)

粒子状態のネズミは自らに中に混じり込んだ異物に向かって心の中で毒づく。
いや、異物…という表現は正しくない。それは光を受けると必ず現れ出る影のように自らと不可分の存在なのだから。
実体がなければ影は存在しえず、しかも、どちらが"影"かといえば、やはり自分の方と言わざるを得ない。
ザ・ファンタジアはそれが堪らなく腹立たしかった。


御前等と佐藤がライブラリに足を踏み入れた直後に粒子化を開始したのだから、既に10分が経過しようとしている。
もはや粒子の拡散は限界点に達しようとしていた。
ザ・ファンタジアは覚悟を決めた。
散らばった粒子を収束させ、霧状態を経て実体を取り戻し、銃口を模した指をいまいましい触手の主に向ける。
猫が捕えたネズミを弄ぶような、おちょくり半分の攻撃はもう止めだ。
白い弾丸が音もなく空を切る。

――――殲滅戦の開始だ。

*            *           *

357ザ・ファンタジア ◆tGLUbl280s:2011/04/30(土) 18:12:41
殴打され体を粉砕されては、粒子化して再生―――そんな応酬を二回ほど繰り返した。

ザ・ファンタジアが御前等祐介のスタンド、アンバーワールドと対峙するのは三度目だ。
御前等のスタンドは近距離パワー型。短い射程の反面、直接攻撃のパワーは圧倒的である。
一般的に攻撃力のあるスタンドほど、スタンドパワーの源である精神力の消耗も大きい。
大振りな攻撃の繰り返しは、疲労を生み、疲労は隙を生む。
スピードの劣るアンバーワールドの攻撃を回避せず、敢えて拳を受け続けたのは、
御前等の集中力の途切れる隙を狙っているからでもあった。


書棚の影から飛び出したアンバーワールドの拳が、ザ・ファンタジアの顎めがけて迫る。
強烈なアッパーカットの連打を浴びたネズミは、弾かれたように吹っ飛び、背後の壁にぶち当たった。
白い石膏像の如きその体に無数のヒビが入り、音を立てて粉々に砕け散る。
破片の一つ一つが煙を上げて、白い霧に変化していく。

>「ここだッ!」
絶好の機を得たとばかりに、御前等は粒子の霧の中に飛び込み、ジャ○コのビニール袋を振り回す。
今まさに空中に拡散しはじめた粒子の群れは、約半分ほどがビニール袋の中にすくい取られてしまった。

>「獲ったどーーーっ!」
雄たけびを上げる御前等。
空気と微粒子で膨らんだビニール袋が、床に放り投げられて転がった。


御前等の前方…1mほど離れた位置に、ぼんやりと白い霧が現れた。
霧は逡巡するかのように渦を巻き、数秒の時間を置いて、ようやく『あのネズミ』の形をとり始める。
姿こそかって知ったる『あのネズミ』であるものの、
大きさは某ランドで土産物として売られる大き目の縫いぐるみ程度に縮小されている。

『やってくれたね♪ウザキング君……♪』

実体化したネズミは、自らの体や手足を眺めて呟いた。
体が小さくなったせいか、元々の高い声が、さらに甲高くいびつな音に変質している。

『君にしてはイイ読みだったねぇ〜〜…ウザキング君♪
 材料を取り上げられたら僕だって完全な形で再生できないんだねぇ〜♪この体じゃパワーもガタ減りだ♪
 だけどねぇえぇ〜♪』

御前等の背後で、床に投げ出されたビニール袋がカサリと音を立てた。
固く結ばれたビニール袋の結び目から白い粒子が漏れ出している。

358ザ・ファンタジア ◆tGLUbl280s:2011/04/30(土) 18:13:15
ネズミは袋から漏れ出す粒子を一気に吸い込み、一度飲み込んでから、尖らせた唇から鋭く息を吐いた。
吐き出された粒子の群れは、空中に白い残像を残し、
繰り出されるアンバーワールドの拳も及ばぬスピードで、御前等の体に到達した。右腕から鮮血がほとばしる。
御前等の腕に食らいついたモノ…それは大きく口の裂けた犬の頭部だった。
ワニのように巨大な口吻が、前腕全体に牙を食い込ませている。
鋭い牙が皮膚を食い破り、肉を貫き、御前等の体内で骨の軋む音を奏でた。


『発想はワルくなかったけどツメが甘過ぎたネ〜♪
 君、犬を飼ったことあるかい?こーいうビニール袋を犬のウ○コ袋として使う奴いるけどサ♪
 あれいくら固く結んでも、やっぱウ○コ臭さが漏れるんだよね〜
 匂いって粒子なんだよ?
 つまりウ○コの粒子が漏れてるってことさ♪
 匂い分子と同程度に分解しちまえば脱出なんて朝飯前♪ぎゃっはー♪』

得意満面の笑顔で滔々と言葉を紡ぎだすネズミ。黙して止めの動作に移ることを肥大した自我が許さなかった。
高分子樹脂であるビニールは、ウイルスサイズの物質も透過させない。
しかしどれ程固く結んでも、所詮は人力の結び目。
ナノサイズの粒子からすれば、結び目は曲がりくねった巨大なトンネルに過ぎず、簡単に漏れ出してしまう。


『僕の犬に噛まれるの二度目だっけ?ゴメンネ♪甘噛みじゃなくて♪
 さぁて♪利き腕をやられて防げるかなァ〜?』

ネズミは再び大きく息を吸い込む。
御前等の腕に食らい付く犬は、忽ち霧と化しネズミの口に吸収された。
元の大きさを取り戻したザ・ファンタジアは、腕を機関銃に変化させ、白い銃弾の雨を浴びせかけんと構える。
照準を合わせる必要はない。圧倒的な連射速度と体から作り出される無尽蔵の弾丸が、必ずや敵を殲滅するのだから。


―――その時、廊下に面したライブラリの扉が細く開いた。
扉の向こうに3つの人影…
勝ちに乗じて興奮するザ・ファンタジアは開かれた扉に気づいていない。



【体を構成する粒子が全て揃わない状態で実体化した場合、ネズミは変身能力や再生能力を失います。
 ぬいぐるみサイズのネズミは、変身や再生が使えなかったんですね。
 今はビニールの中の粒子を取り戻したので、体の一部を犬にしたり、銃に変化させたりが使えるようになりました】

【ライブラリの扉を開けたのは、有葵ちゃん、天野君、よね君の三人組…ということでいいかな?
 できたらライブラリに突入してほしい〜】

359生天目有葵 ◆gX9qkq7FNo:2011/04/30(土) 22:51:39
―――その時、廊下に面したライブラリの扉が細く開いた。
扉の向こうに3つの人影…

意表をついてアンドレだったら笑えるかもしれないけどご心配無用。
否、ご心配あれ!アホの生天目が助けに来た!
隙間からのぞきながら生天目は小声で後ろの二人に話しかける。

「天野さんよねさん。よねさん天野さん。あれを見て!
みんながピンチよ。私たちのスタンドパワーはスッカラカンだけど
何とか助けよー!恩返ししよー!
万人が忌み嫌うカオスのチカラを今こそ発揮する時がきたのよ!」

とカオスの権化である生天目は言ってみたけれど、まーウソっぱち。
ぬるりと細い扉の隙間からライブラリに進入した生天目は、
仰向けに倒れている佐藤ひとみの側に座りステレオポニーを出現させる。

「死んじゃだめ…。ひとみん…」といきなり項垂れ泣いた。
ステレオポニーはわずかに残ったスタンドエネルギーで
佐藤ひとみにヒーリングソニックを放射し傷の治療を始めた。

360よね ◆Cj3ysYNKG2:2011/05/01(日) 11:36:34

/みんながピンチよ。私たちのスタンドパワーはスッカラカンだけど

生天目が不意に発した言葉によねはハッとした。
"スタンドパワーはスッカラカン"。

本来ならばよねのスタンドパワーもとっくに底をついているハズである。
だが、よねのスタンドパワーはまるで巨大なスタンドパワーの倉庫から取り出してきているかのように、無尽蔵に湧き出てきていた。

(どういうことだか知りませんがこれは好機!)

「Sum41ッ!この床は自分と反発しあうッ!!」

よねは足元の床に手をつけて、Sum41を発動させた。
ビシュッと音を立ててよねの体が宙を舞う。
ライブラリの扉から御前等の位置までの距離を一気に詰める。

「Sum41!この床は盛り上がり、ゲル状になる!」

滑り込むように床に着地すると、再びSum41を発動させた。
ライブラリの床はザ・ファンタジアの放った弾丸から御前等とよねを守るように盛り上がる。
さらにその床が老朽化したコンクリではなくゲルへと変化する。
ゲル化することで密度が均一になり、さらに衝撃吸収能力もアップするのだ。

「人体に傷を与えることが目的の弾丸なら、粒子の様に物質を透過して移動することは不可能なハズッ!
 このゲルの壁に阻まれろッ!!」

だが、ゲルの盾はあくまでその場しのぎに過ぎない。
ザ・ファンタジアが放つ弾丸は、銃弾ではないものの、実際のマシンガンとほぼ同等の威力を持っているはずなのだ。
ゲルの盾で白い銃弾を阻めるのはたった2秒ほど。
その間に御前等が何かアクションを起こすことに賭けて、よねはライブラリに飛び込んだのだ。

【御前等を白い銃弾から守るようにゲルの盾を展開、ただし長くは持ちません】

361天野晴季 ◆TpIugDHRLQ:2011/05/03(火) 14:55:09
「うわっ…何これ。ライブラリに入ってみればいきなり御前等さんがピンチって…」
ライブラリについてため息を吐きながら呟く天野
>「天野さんよねさん。よねさん天野さん。あれを見て!
みんながピンチよ。私たちのスタンドパワーはスッカラカンだけど
何とか助けよー!恩返ししよー!
万人が忌み嫌うカオスのチカラを今こそ発揮する時がきたのよ!」
「…そうですねぇ、さっき誰かさんがとんでもないことしてくれたお陰で多少パワーを消費しましたけど。
…まぁでもまだ0じゃありませんし、頑張るとしますか。フリーシーズン!」
雲型のスタンド、フリーシーズンを出現させる天野
「湿度上昇、気温低下、位置御前等裕介の周辺。…氷の壁で守れる量なんて高が知れてるけど、1秒でも時間が稼げるなら…
さらにそれに並行して、フリーシーズン気温低下。対象、僕の仲間の周囲以外。…全身全霊で温度を下げるよ」
(そもそも温度の上下は原子の振動、つまり熱振動で決まる。…僕のスタンドの場合、大きくする方の上限は摂氏100℃までだけど。
低くする方なら最低の。絶対零度まで下げられる。時間はかかるけど。あらゆる原子の振動が最低で最小になるこの温度なら…あいつの動きを遅くできるかも知れない
…これははっきり言って(言ってないけど)賭けだけど…買わない宝くじは当たらない!)
【御前等を守るため氷の壁を生成。さらにライブラリの温度をどんどん下げてます】

362佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s:2011/05/03(火) 21:28:31
薄汚れた天井の下、浮遊するひび割れたフルムーン。表面の破片が崩れるように剥がれ落ちている。
その光景を最後に視界が暗転し、周囲は暗闇に包まれた。


一条の光も射さぬ海底、タールのような闇。ひとみは闇の底に立っていた。
ある男の中で見た闇の海に似ている…と、思ったのも束の間、ひとみの体は錘を切られたように浮力を得て上昇を始める。
加速度を増して闇の海を浮上する。海底から海面へと。
海面付近で、青い帽子を被った青年が懸命に水面に顔を出そうと足掻いている姿を見た。

―――誰もが恐れる程の能力を持ちながら、何処か未熟な精神の持ち主……
不釣合いな力に呑み込まれることなく、無事に水面に上がれればいいのだけれど……彼は誰だったか―――?

ひとみは何となく青年の身を案じたが、ついに誰なのか思い出すことも出来ぬまま、
体は海面を抜けて、更に高く高く上昇していく。
そうしているうちに、次第に自分が何者かも分からなくなっていくようで
心細くもあったが、妙に静かな悪くない気分だった。


不意に、肩に重みを感じて、上昇が止まった。
間近に人の気配がして目を開ける。白い衣を纏った人間が、力強い掌でひとみの肩を押さえつけていた。
並外れて逞しい体躯の男だ。ひとみは反射的に、その者の顔を見上げる。
頭部を覆う白い被衣が顔に深い影を落として、口元しか見えない。
その固く引き結ばれた口元と意思的な顎の稜線を、本当はどこかで見知っている気がした。

男は片腕をひとみの肩から外して、ゆっくりと下を指差す。
男の指し示す方向に視線を移すと、そこには、仰向けの体勢で床に倒れている女と、側に跪く少女の姿があった。
全身の毛穴が総毛立った。闇に包まれる前に、何があったのかを思い出した。
あの女は自分だ―――
気づいて身震いした瞬間、男に強く肩を突き飛ばされて、ひとみは落下した。


右目にほんのりと暖かい力を感じて、視界にうっすらと光が満ちる。
視界の半分が赤く染まっていたが、自分を覗き込む少女の顔は判別できた。
涙で顔をぐしゃぐしゃに濡らした生天目有葵が、ひとみを見下ろしていた。

363佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s:2011/05/03(火) 21:44:03
視点が定まると、途端に激痛が走った。痛む右目を庇って掌を当てる。顔半分が液体で濡れていた。
ひとみは小さく呻き声を上げて半身を起こす。
部屋の反対側の壁際では、ザ・ファンタジアと御前等、よねを交えた三人が、攻防を繰り広げている。

「あのクズネズミ〜〜〜……よくもやってくれたわね……
 …冗談じゃないわ!!こんな所で、お喋りクソネズミの思惑通りに、死んでたまるかってのよ……!!」

咽から搾り出すような声で、ひとみは呟く。
立ち上がろうとしても足に力が入らず、身を捩ってネズミの死角になる一番近くの書棚の影に体を移動させる。

「有葵…私を起こして…手を貸して…
 ……書庫に行くわよ!まず間違いなく、奴の本体はそこにいる!
 私を粒子化した時と同じ能力で本体を守っているとしたら、ネズミは本体に手を触れない限り粒子化できない!
 ネズミに気づかれないように接近できれば、私達で本体を叩けるわ!」

意識をスタンドの発動に集中する。
ひび割れたフルムーンが二人の目前に発現した。時折砂嵐が混じるようにスタンドのヴィジョンが乱れる。
スタンド経由で得る視界は、右目の眼窩に溜まった血のせいか、赤く濁って何も見えなかった。
これではスタンドの遠隔操作は出来そうにない。

「フルムーンはもう迷彩程度にしか使えない…本体への攻撃はあんたがやるのよ…!」

爪が食い込むほどに強く有葵の手を握って、ひとみは訴える。
フルムーンの触手が皮膜状に薄く延びて二人の体を包み込む。
二人の姿は透明の皮膜の内側に溶け込んだ。


【有葵ちゃんに書庫行きを提案。
 生天目さん、佐藤さんはまともに動けませんので、よかったら書庫まで連れて行ってあげてね。
 ネズミとの決着にかかる時間次第では、書庫内でひと悶着入れるかもです】

364ザ・ファンタジア ◆tGLUbl280s:2011/05/03(火) 22:01:53
>>360 >>361
『ヒヒッ…おわりだぁ!!ウザキング君!!♪僕よりウザい人材は貴重だから残念だよ!♪』
機関銃を模した腕から、雨あられと吐き出される白い銃弾。

>「人体に傷を与えることが目的の弾丸なら、粒子の様に物質を透過して移動することは不可能なハズッ!
>このゲルの壁に阻まれろッ!!」

御前等に向かって放たれた銃弾は、室内に飛び込んだよねによって展開されたゲルの盾に着弾して止まった。
衝撃と共に銃弾を取り込んだゲルはドロドロと床に崩れ落ち始める。
再び連射した銃弾は、天野が張った氷の壁に食い込み、割れる氷と共に砕け散る。

『クソッ…うすらメガネまで登場しやがった♪裏人格に精神を乗っ取られた設定はどうなったんだよ!!♪』

ネズミは舌打ちして、銃口を上方に向ける。
標的は、天井擦れ擦れの高さまで設置された金属製の書棚。軌道を計算して3発を別々の書棚に発射する。
書棚に当てた弾丸の跳弾で、上部から御前等とよねへの着弾を狙ったのだ。

なぜ変幻自在なザ・ファンタジアが、跳弾という非効率的な攻撃を選んだのか?
ザ・ファンタジアの腕から発射された弾丸は体と同素材。言わば体から削り出して造った弾丸だ。
その弾丸が何十個も床に溜まったゲルの内側に閉じ込められている。
肉体の変化と再構成は、体の構成素材が全て揃わねば不可能。
ゲルが溶けて霧化させた弾丸を回収するまで、ネズミは変身能力を封じられていたのだ。


【よね君のゲルと天野君の氷の壁に弾丸を防がれたネズミ、跳弾で御前等君とよね君を狙う。
 書棚に反射させた弾丸が3発、上から御前等さんとよねさんに降ってきてます。
 弾丸の威力は半減してるから、当たっても死ぬことはないでしょうw】

365御前等 ◆Gm4fd8gwE.:2011/05/05(木) 23:34:03

束の間、拘束されたファンタジアを見下ろし勝ち誇る御前等。
身体を構成する粒子の殆どを奪われたアメリカねずみは所体なさげに漂うばかり。と、思いきや。
ねずみが口を窄め、何かを吹いた。瞬間、右腕に灼熱感。

>『発想はワルくなかったけどツメが甘過ぎたネ〜♪

「な……馬鹿な!こいつはッ!『煙のワニ』だとォォォ〜〜〜ッ!?」

確かに捕らえたはずの袋は平らになり、そしてその中に入っていた容積分だけのアギトが腕に食らいついていた。
激痛と共に迸る鮮血。血圧の急降下にブラックアウトしかける視界。暗くなりゆく眼前に、ねずみの醜悪な笑顔。

(ビニールすら透過するのかっ……?いや!『結び目』ッ!どんなにキツク締めても生まれてしまう絶対の猶予!)

>『僕の犬に噛まれるの二度目だっけ?ゴメンネ♪甘噛みじゃなくて♪さぁて♪利き腕をやられて防げるかなァ〜?』

舐めきっているのかまともに照準もつけていない煙の火線が、しかし連射速度ゆえに薙ぐようにして御前等へ迫る。
すわ被弾か――御前等は思わず目をつぶり、迎える痛みに身構えた。果たせるかな、弾は来ない。届かない。

>「Sum41!この床は盛り上がり、ゲル状になる!」

さながら壁のごとく隆起した床がネズミの煙を全て飲み込んだのだ。
駆けつけたるはよね。御前等の命を救ったのは奇しくもかつて対峙したスタンド『Sum41』。
そして。

>「フリーシーズン気温低下。対象、僕の仲間の周囲以外。…全身全霊で温度を下げるよ」

天野くんの『フリーシーズン』が、部屋の気温を提げ始める。
ネズミを含めた戦闘領域の『御前等達以外』が一気に氷点下を突破し、更に温度を下げんと力を放っていた。

「ク、ククク……はははははは!!墓穴を掘ったなアメリカねずみ!貴様が立てたのは『逆転フラグ』だッ!!」

御前等はあえてフリーシーズンの例外範囲から負傷した腕を出して氷点下に晒し、無理やり止血。
出血、裂傷に加えて凍傷まで上乗せされたが逆に痛みも麻痺してしまった。右腕はしばらく使い物にならないが、邪魔にもならない。

「殺るならさっさとやっとけばよかったものをッ!『勝ち誇るのは勝ってから』……常識だぞ、忘れたか!
 俺はこうして生き残り!そして『頼れる仲間が駆けつけた』……アンバーワールド、歯車を起動せよッ!!」

御前等は今より以前にライブラリを訪れたときがあった。鬼化している最中に、ここでよねと一戦交えた。
そのときに散乱させた『歯車』――機械を操るスタンドパワーの塊は、まだこの部屋に残っていた!
御前等は自分の知る由もなく散っていた歯車の存在を必然と決めた。ご都合主義の謗りを受けようとも、これが怒涛の伏線回収だ!
『歯車』が発動したのはライブラリの天井に設置されたエアコン。その機構を操り、送風機能を暴走させる。
結果、生まれるのはライブラリ内を吹き荒れる暴風。――氷点下の空気を攪拌する風。

「アメリカねずみよ、貴様は粒子が云々の説明にウンコの喩えを出したが……もう一つ常識を教えてやる。
 ――――『凍ったウンコは臭わない』ッ!!」

粒子状態が無敵ならば、別の方法で『粒子以外に変えれば良い』。
そう、粒子とて凍る。水を含まない素粒子はそのものが凍結することはなくても、空気中の水分ごと凍らせることはできる。

天野くんのフリーシーズンで氷点下となったこの部屋の空気は冬の風と違って湿気を多分に含んでいる。
ただでさえホールの湿度は天辺回っていたのだ。構造的に空気を共有するこのライブラリも然り。
保管するものがものだけに除湿機こそあれど、――その除湿機能を備えたエアコンは、御前等の支配下にあるッ!!

「今だよね君ッ!氷と『一つ』になった今なら、君の能力が通じるはずだっ!
 知的財産権の侵害という、エンターテイナーとして最も忌むべき所業をしくさったあいつに――外れぬ枷を嵌めてやれ!」


【エアコンを操って天野くんの能力で氷点下になった室内に暴風を吹かせる。湿度も相まって凍るはず……?】

366生天目有葵 ◆gX9qkq7FNo:2011/05/06(金) 16:37:00
意識を取り戻した佐藤に、生天目は胸を撫で下ろし破顔一笑。
>「あのクズネズミ〜〜〜……よくもやってくれたわね……
 …冗談じゃないわ!!こんな所で、お喋りクソネズミの思惑通りに、死んでたまるかってのよ……!!」
「そう、しんじゃダメ。みんなで生きよぅ」
二人はこっそりと書棚の影に移動する。
>「有葵…私を起こして…手を貸して…
 ……書庫に行くわよ!まず間違いなく、奴の本体はそこにいる!
 私を粒子化した時と同じ能力で本体を守っているとしたら、ネズミは本体に手を触れない限り粒子化できない!
 ネズミに気づかれないように接近できれば、私達で本体を叩けるわ!」
「よーし。じゃあ叩くよ。このフライパンで。…にしても粒子のスタンドだったなんてね。
粒子になっちゃったら、それ以上は砕けないんだもの。破壊するって感覚じゃ一生倒せなかったのね。
…柚木に聞いた秋名ってヤツと少し似てる…」
生天目が護身用のフライパンを持って小鼻を膨らませると、フルムーンの透明シートが体を包む。
幸い、ザ・ファンタジアは御前等たちとの戦いに夢中で佐藤たちの動きには気がついていないようだ。
あとは書庫に隠れているエイドリアンを懲らしめるだけ。
>「フルムーンはもう迷彩程度にしか使えない…本体への攻撃はあんたがやるのよ…!」
「任せて、ひとみん。うんこねずみにチューチュー天誅よ」
そう答え、佐藤の剣幕に微苦笑する。
いつも頼りっぱなしの佐藤に、逆に期待されたことが面映い。

―――生天目は寄り掛かる佐藤と一緒に忍び足で書庫に入った。
ライブラリとは打って変わって静まり返っている書庫。緊張で激しさを増す鼓動。
(どこ…?どこにいるの?)と佐藤に目で訴える。(階段から落ちたから記憶が抜けています)
「…!」
キャミワンピから染み出す潤滑油に気がついたのは書庫の中央付近だった。
服に染み込んでいた潤滑油が腕を伝わり握ったフライパンの柄に染み込む。
(やば!すべる!)
コーンッ!甲高い音が耳朶を打つ。
床に静かに置くもなにも、フライパンを持ち直そうとしておもいっきり投げてしまったのだ。

367よね ◆Cj3ysYNKG2:2011/05/07(土) 22:42:58

ザ・ファンタジアが放った銃弾はゲルの壁と、天野によって作り出された氷の壁に阻まれた。
また、銃弾を止めただけでなく、ザ・ファンタジアの構成素材をゲルの中に閉じ込め、
ザ・ファンタジアの厄介な変身・再構築能力を―よねが能力を解除するまでではあるが―封じるという副次的な効果も生まれた。

/『クソッ…うすらメガネまで登場しやがった♪裏人格に精神を乗っ取られた設定はどうなったんだよ!!♪』

「その設定はまだまだ健在ですよッ!このネズミ野郎ッ!」

よねは弾丸を防いだ勢いでザ・ファンタジアに接近しようとした。
だが、再びザ・ファンタジアが白い、粒子の弾丸を天井に向け発射したので、懐に飛び込むのを躊躇ってしまった。

(上に向けて撃った?一体どういうんだ?……まさか、跳弾を狙ったかッ!?)

本来ならば左右前後どこかに避けることも出来ただろう。
だが、一瞬の迷いがよねの反応を鈍らせた。まるで、テニスでスマッシュを打たれた時のようにその場を動くことが出来なかった。

「具現化しろ、Sum41!別々の所へ撃っても、着弾点は全弾同じッ!この身を呈して弾丸を受け止めるッ!」

よねは、『ザ・ファンタジアはこれ以上、身体を構成している粒子を無駄に削って弾を撃つことは出来ないから、出来る限り弾丸の威力を節約して発射してくるだろう』と踏んで、
Sum41を能力の発動の為ではなく、御前等とよね自身を守らせるために―よねにはダメージのフィードバックがあるのだが―出現させた。
つまり、よねはSum41を盾にしたということである。ザ・ファンタジアの精密な軌道計算を逆手に取ったのだ。

ドスドスドスッとSum41に3発の弾丸が撃ちこまれる。と同時によねの身体に激痛が走った。
それはあまりに強烈すぎる痛み。打たれ強いとはお世辞にも言えないよねにとっては尚更である。

だが、よねが身を呈すことによって弾丸が御前等へと着弾することは免れ、
その間に御前等はアンバーワールドの能力を発動し、チャンスを掴み取ったのだ。

/「今だよね君ッ!氷と『一つ』になった今なら、君の能力が通じるはずだっ!

(〜〜〜〜ッ!!しまったァーッ!)

御前等はあえて負傷した右腕を氷点下に晒すことで止血した。その代償として、右腕が使い物にならなくなってしまったが。
それと同様に今のよねが氷点下に飛び出せば、止血することは可能だとしても、その後満足に身体が動く保証は無い。

なぜこのような事をを考えなければならないか。

Sum41の能力を発動するには、能力の対象によねかSum41のどちらかが触れていなければならない。
そして、Sum41の射程は数あるスタンドの中でも最低ランクなのだ。
氷漬けのザ・ファンタジアに、よねが触れるにせよ、Sum41が触れるにせよ氷点下へ身を晒すのは必至だからである。

(だが…ッ!このチャンスを無駄にするワケにはいかない…ッ!)

意を決したよねが氷点下の中、ザ・ファンタジアに向けて走り出す。

例外範囲を出た瞬間に、銃弾に貫かれる痛みよりも凄まじい激痛がよねを襲った。
だが、その激痛は次第に和らいでいき、ついにはただの違和感へと変わった。

よねはよく動かない腕で、氷漬けのザ・ファンタジアを抱えるようにした。

「Sum41ッ!!!この氷塊は…可燃性となるッ!」

ただでさえ、傷を負い、度重なる能力の発動で疲労しているよねである。
Sum41の能力で直接燃やしたり、爆発させたりということは不可能に近かった。
可燃性にするだけならば、Sum41での書き換えが『不燃性→可燃性』という一度の書き換えで済む。

よねは賭けたのだ。
以前、ライブラリで御前等と戦った時に使われた、火炎放射スプリンクラーの存在に御前等が気付くことに。

氷塊まるごとが、まるで可燃性ガスになったようである。
当然、氷塊に包まれ、氷塊と同化していると言っても過言ではないザ・ファンタジアの身体を構成する粒子一つ一つも同様である。
ほんの少し火をつけてやれば、ザ・ファンタジアは燃焼してしまうだろう。

【跳弾を阻止。ザ・ファンタジアを可燃性にしました。
 因みによねはやや重傷です】

368ザ・ファンタジア ◆tGLUbl280s:2011/05/09(月) 23:16:22
>>365
弾丸を全て防ぎきった御前等が、一歩、また一歩とザ・ファンタジアに歩み寄る。
男の背後で拳を構える陽炎の如きオーラを纏う鋼の守護神に恐れをなしてか、
ネズミは、詰められた距離の分だけじりじりと後ずさる。
四歩下がったところで壁に背中が当たり、退路を塞がれてネズミはついに立ち止まった。
顔じゅうに白い冷や汗を垂らしてネズミは立ち尽くす。

>「ク、ククク……はははははは!!墓穴を掘ったなアメリカねずみ!貴様が立てたのは『逆転フラグ』だッ!!」

御前等が声を張り上げた瞬間、焦燥の表情から一転、ネズミの瞳が鈍い光を放った。

床に溜まっていたゲル―――その粘性の高さゆえ、ゆっくりと溶け落ちるゼリー状物質の中に
閉じ込められていた銃弾が、ようやく外気に触れるまでに顕わになったのだ。
空気に触れ、蒸発するかの如く、一瞬で粒子に変化する弾丸。
ザ・ファンタジアは、銃弾から立ち上る白い霧を一息に吸い込み、唇の端を曲げて不敵な笑みを浮かべた。
同時に、体表が湖面に立ち込める霧のように揺らめき始める。

『"逆転フラグ"かァ…♪
 君の脳内では現実より色鮮やかなオタクコンテンツ界の因果律のことかい?
 僕がスクリーンで活躍した古き良き時代には、心地良いマンネリと予定調和に
 そんな陳腐で記号的な名前を嵌め込んだりはしなかったなァ…♪
 最近のジャパニメーションは何もかも記号的でウンザリするよ♪その記号をありがたがる君みたいな人間もね!!…♪』

体をモヤつかせながら、ネズミは次第に語気を強めた。
膝を折り深く体を沈めたかと思うと、バネ仕掛けの人形のように、一気に天井付近まで跳躍する。

『君が思っているほど現実は甘くはないよぉ〜♪
 "逆転フラグ"なんざ、そうそう都合よく立ってたまるかッ!!……フリークめ♪思い知れッ♪現実をッッ!!』


空中でローブの袖を翻し、両腕を広げるザ・ファンタジアは、さながら頭ばかり大きい不恰好な鳥のようだ。
体の端々から、砂が零れるように粒子が散り始める。
ザ・ファンタジアは体を粒子化し、完全なる肉体の再構成を試みていた。
銃弾を全て回収し、体構成粒子を全て取り戻した今、機銃の乱射という非効率的な攻撃手段をとり続ける必要は無い。
すなわち、機動力と一撃必殺の攻撃を可能にする形態に……
背中に猛禽の翼を持ち、両腕に巨大な刃を宿した破壊天使の姿に変化し、
上空から三人の敵(御前等、よね、天野)の首を一閃―――刎ね落とさんと狙っていたのだ。


パワーで互角の御前等は利き腕を負傷、
さらにザ・ファンタジアにスピードで上回るスタンドの持ち主は、この場にいない。
―――"場"において無敵の支配者である自分が、捕えた獲物に負けるわけがない。
ネズミは数秒後には床に転がるであろう三人の生首を思い浮かべ、鼻に皺を寄せて嗤った。

369ザ・ファンタジア ◆tGLUbl280s:2011/05/09(月) 23:21:25
ザ・ファンタジアは体表の粒子化を加速し始めた。
その時だった――――

>「殺るならさっさとやっとけばよかったものをッ!『勝ち誇るのは勝ってから』……常識だぞ、忘れたか!
>俺はこうして生き残り!そして『頼れる仲間が駆けつけた』……アンバーワールド、歯車を起動せよッ!!」

御前等が上げたのは、恐怖の絶叫でも命乞いでもなく、起死回生の策を謳い上げる声。

――――室内に吹き荒れる暴風!急速に氷点下まで低下する室温!
まるで永久凍土に吹き荒れるブリザードだ。
風は唸りを上げ渦を巻いて、粒子化したザ・ファンタジアを攪拌する。
新しい形態に変化するまでの、ほんの束の間、ザ・ファンタジアのコントロールを離れた粒子の群れは、
拡散することもできずブリザードに呑み込まれ、冷気の渦の中、成すすべも無く回転するのみであった。

『こ…この風はエアコンッ…?ウザバカの能力ッ!にぎゃぁあああああああ〜〜〜♪
 こんなご都合主義にムザムザ引っ掛かるなんてぇ♪しっしかも体が凍るッッ!!!』


エアコンの空調口を通して御前等が引き寄せたホールの湿気、それをネズミの周囲に集約する天野の気流操作。
二人の共同作業によって、瞬く間にネズミの白い体表は、ほの青い氷片に覆われる。
体表が不安定な状態で氷に閉じ込められ、粒子化を封じられたザ・ファンタジアは身動きがとれない。

>>367
その瞬間、
被弾したよねが、負傷した体を押してザ・ファンタジアに向かって飛び掛り、抱きついた。

>「Sum41ッ!!!この氷塊は…可燃性となるッ!」

『なっナニぃ〜〜…♪ヤッやめろッウスラボケメガネッッ!!
 裏人格に乗っ取られたキミは、闘いの欲求が押さえきれずに仲間を全滅させたがってる設定だったろ?
 今更何でコイツらの味方してんだよ!!オイ止めろッッ!!
 手を触れて口に出しさえすれば、何でも叶う能力なんて反則だろぉ〜〜!!オイ♪!!』

ネズミは、懸命に身を捩って脱出を試みるが、
氷の結晶を透過するほどの微粒子に体を分解することも、実体化して内側から氷を砕くことも不可能で
ただ虚しく氷の中で喚き声を上げるのみであった。

『ちくしょぉおおおお〜!!!こうなったら最後の手段だ!!!♪』

ライブラリの床や壁の一部が液状化し、まるで泥水を煮詰めたようにボコンボコンと気泡が盛り上がる。
泥土の泡は、忽ち歪な人型を成して、御前等たちに襲い掛かった。
床と壁から生まれた二足歩行のアヒルとリス…各々つがいで2組、合計4匹!
それらの醜悪な傀儡は、表面が溶けかけたドロドロの腕で、3人(御前等、天野、よね)の手足を引っ張り
隙あらば首を絞めようと体に絡み付いていた。

ザ・ファンタジアはゲームフィールドである"場"を、自在に変質させる能力を持っていた。
しかしそれは、"場"の自己修復力と言った方が近い性質のもので、
ネズミ自身が意図的に発動する必要に駆られたことは、これまでに一度もなかった。
御前等とよねの戦闘中、火炎放射で焼かれたはずのライブラリが、僅かの間に修復されていたのもその能力によるものである。

動けぬネズミは今、まさに死力を尽くして、フィールド操作能力を発動させていた。
これはザ・ファンタジアにとってもリスクの大きい苦肉の策、
僅かでも集中力が途切れ"場"が暴走、崩壊してしまえば自身の消滅もありうるのだ。


【ドナル○&○イジー+チッ○&○ィールもどきの泥人形が、御前等さん、天野さん、よねさんにしがみ付いていますが
 決定ロールで蹴散らして、ラストアタックやっちゃってください】

370佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s:2011/05/09(月) 23:27:51
>>366
一方、フルムーンの迷彩に身を隠し、ひそかにライブラリ奥の別室―――書庫に侵入した生天目有葵と佐藤ひとみ。
ライブラリは極寒の冷気が吹き荒れていたが、
扉一枚を隔てた密室の書庫には、未だそれほど冷気は入り込んでいなかった。

>(どこ…?どこにいるの?)

フライパンを構え、視線で本体の居場所を尋ねる有葵に、ひとみは精神感応で応える。

「迷彩時は、シートの位置捕捉が使えないのよ。でも本体がこの部屋にいるのは間違いないわ。
 ステレオポニーのエコーロケーション(音波探知)で探せないの?」

仮に迷彩を解いたとしても、探知能力は使いものにならないだろう。
右目の負傷で眼窩に血が溜り、スタンドの視界も濁っている。
フルムーンは視覚のスタンド。視神経を痛めると能力の大半を失ってしまう。
ひとみは続けて有葵の精神に語りかける。

「それとね…一つ言っておくけど、
 『お仕置き』や『懲らしめ』程度の浮ついた気持ちでいたら、私達生きてここから出られないわよ。
 本体の危機に気付けば、ネズミは必ずここに来るわ。
 あのバカやよね君達が足止めしてくれてるけど、それだっていつ突破されるか……。
 確実に生きてここを出たかったら、ネズミが来る前に…できれば一撃で本体を仕留めなきゃならない。
 殺す覚悟で掛からなきゃ隙ができるわ。
 あんたの命とこれからの人生、あのクズネズミにくれてやっても惜しくないのなら別だけど、
 そうじゃないなら………"戦う覚悟"を決めなさい。」

無言のうちに心に言葉を伝えながら、二人は部屋の中央辺りまで歩を進めた。
ひとみは立ち止まって有葵の顔を見下ろし、その瞳をじっと見つめた。射るような視線が回答を求めている。

>コーンッ!

狭い書庫内に響き渡る金属の落下音―――!
階段で浴びた潤滑油に手を滑らせた有葵が、得物のフライパンを取り落としたのだ。

「うわああぁあああああぁぁぁあああぁぁぁぁぁああ!!!!!」

絶叫と共に、部屋の奥の備え付けの書架の影から、転がるように人影が飛び出す。
キャラクターがプリントされた黄色のトレーナーとピンクのスウェットパンツという、すさまじいファッションセンスの男だ。
右手に刃渡り20cmほどのバタフライナイフを握っている。
男は、二列に並ぶ書架を挟んだ細い通路に立ち、首を激しく振り回して周囲を見回していた。
状況を全く把握していない…といった風情で、目は泳ぎ、傍目に見ても分かるほどに激しく体を震わせている。


間の悪いことに、それまでノイズ交じりのヴィジョンでひとみ達の上に浮かんでいたフルムーンが
力尽きるように点滅して消えた。迷彩を失った二人の姿が顕わになる。

男は、部屋の中央に突然現れた二人の女に目を留め、
まさに死に物狂いといった表情で、ナイフを振りかざし襲い掛かった。
有葵に体重を預けていたひとみは、ナイフを避けた弾みでバランスを崩し、床に尻もちをついた。

「ひいいあぁああああああぁぁぁぁあああああ!!!!!」

男は攻撃を止めない。立っている有葵に標的を絞り、奇声を上げてナイフを振り回し続けた。

【佐藤さんの集中力切れでフルムーンが消えたので、透明じゃなくなっちゃいました】
【エイドリアーンは決定ロールで倒してもらっても大丈夫です】

371生天目有葵 ◆gX9qkq7FNo:2011/05/13(金) 17:20:15
ライブラリの書庫。冷んやりとした空気と張り詰めたような静寂が密室の床に停滞している正午。
佐藤ひとみと生天目有葵はフルムーンの迷彩に身を隠し、書庫に侵入していた。
(誰もいない……)
衣擦れの音。息づかい。周囲を見まわしながら一つ息を吸って吐く。
エイドリアンの姿はなかった。生天目が視線で佐藤に問えば、頭に直に流れこんでくる佐藤の声。

>「迷彩時は、シートの位置捕捉が使えないのよ。でも本体がこの部屋にいるのは間違いないわ。
 ステレオポニーのエコーロケーション(音波探知)で探せないの?」

「あ…忘れてたっ!」少女は、佐藤にうなずいてみせ、スタンドを放つ。
背後から亡霊のように現われたスタンド、ステレオポニーが床にぺったりとひっつき音波探知を始める。

佐藤は続けて、生天目の精神に語りかけてくる。

>「それとね…一つ言っておくけど、
 『お仕置き』や『懲らしめ』程度の浮ついた気持ちでいたら、私達生きてここから出られないわよ。
 本体の危機に気付けば、ネズミは必ずここに来るわ。
 あのバカやよね君達が足止めしてくれてるけど、それだっていつ突破されるか……。
 確実に生きてここを出たかったら、ネズミが来る前に…できれば一撃で本体を仕留めなきゃならない。
 殺す覚悟で掛からなきゃ隙ができるわ。
 あんたの命とこれからの人生、あのクズネズミにくれてやっても惜しくないのなら別だけど、
 そうじゃないなら………"戦う覚悟"を決めなさい。」

静かな世界で二人の視線がぶつかった。少女は眉根を寄せ困惑の表情をみせる。

しかし……

うなずく。

「わかったわ。ひとみん…」
奇妙な気持ちだった。世界には死が満ちている。
胸いっぱいに広がる、息を出来なくさせる甘酸っぱさは、いらだちは、足元の頼りなさはなんだろう。
自分はテレビゲームの世界の、神様に守られているようなヒロインなんかじゃない。
明日には死んでしまうかも知れない脆弱な存在。死は身近な友達。

372生天目有葵 ◆gX9qkq7FNo:2011/05/13(金) 17:20:51
だけど…。だから、力いっぱい生きるのだ。その一瞬を一瞬を。

生天目は強くフライパンの柄を握りしめる。潤滑油で滑るフライパン。
耳朶を打つ金属の落下音。

>「うわああぁあああああぁぁぁあああぁぁぁぁぁああ!!!!!」

静寂を埋める闇の声に空気がたわむ。
絶叫と共に書庫の影から現われたのは一人の男。恐らく彼がエイドリアンだろう。
右手にバタフライナイフを持ち激しく体を震わせている。

(とうとう会えたわね、ネズミの本体!!)
生天目は心の中で叫びエイドリアンをねめつけた。…と男とぱちりと目があう。
「はぇ?」
気付けば、フルムーンの迷彩が色を失っている。佐藤ひとみが力尽きたのだ。
死に物狂いで近づいてくるエイドリアン。その形相の凄まじさはまるで悪夢。

「くっ!!」
>「ひいいあぁああああああぁぁぁぁあああああ!!!!!」

「ばかね!スタンドもなしにかなうと思ってんの!?
今のあなたなんておしゃべりクソネズミじゃなくって、羽根をなくした蛾よッッ!!」

「オトトイキヤガレーーーーッ!!!!」
声だけが残る。スタンドは声を置き去りにしエイドリアンに回し蹴り。
彼の右手がヒズメにに弾かれ、バタフライナイフが喉元を薙ぐ。
噴出す鮮血に佐藤ひとみの視界が赤に染まる。次いで生天目も佐藤の横にぺったりと尻餅をつく。

「おわった?こんな狂ったノリスケみたいのに殺されたらたまらない。
スタンド使い同士って引き合うっていうけど、こんなキモヲタと一時間でも人生を交じあわせるなんて
金輪際真っ平ごめんよ…」

小さく肩を落とすと、生天目有葵は深くため息をついた。

373御前等 ◆Gm4fd8gwE.:2011/05/15(日) 01:00:27
>「Sum41ッ!!!この氷塊は…可燃性となるッ!」

御前等を庇って負傷し、それでもなお回ってきたパスに応えんとするよねの決死の突進。
物体の性質を書き換えるスタンドが発動し、アメリカねずみを内包した氷塊は可燃性を持つ。

「さすがの手際だなよね君ッ!俺は信じていたッ!きみならば、このクサレねずみに最も最も最も最も最も最も最もッ!!
 恐怖と苦痛を与えるやり方で俺のフィニッシュに繋いでくれると!!きみの中に宿る残虐性を信じていた!」

御前等は氷のフィールドから歩み出る。もはやものを言うだけの、身じろぎ一つ効かぬ氷塊を見下げる。
あれだけイラっとする挙動と笑顔に満ちていたアメリカねずみは、いまや凍りついたような絶望を文字通り凍りつかせている。

>『ちくしょぉおおおお〜!!!こうなったら最後の手段だ!!!♪』

突如床から盛り上がってきたのはアメリカねずみと同郷のアメリカアヒルとアメリカリス。
もはや形を留めきらぬ彼らは――驚いたことに、それは粒子ではなく実物の床材だったが、御前等の足を掴み、首を締めにかかった。
御前等は表情を変えず、喉の筋肉を強ばらせて気道を確保、窒息を防御。無事な左手でねずみを指さす。。

「フン、最後の手段、か……。清々しいほどに敗北フラグを立てるじゃあないかアメリカねずみ!
 貴様もわかっているのだろう?『創作幻想《ザ・ファンタジア》』。最古の創作物たる貴様は、創作世界の住人であるが故に――
 アニメーション黎明の時代から連綿と受け継がれてきた黄金の予定調和(フラグ)、『お約束』には逆らえないッ!!」

リスが脚を万力の如く締めようとも、アヒルに締められた首がうっ血して唇から色が失われても。
御前等とザ・ファンタジアの距離はすでに2メートル。――アンバーワールドの射程距離だった。

「――それで、アメリカねずみよ。この俺に現実を知れとか抜かしたな」

左腕にスタンドの拳を宿して。
息を吸い、精神の力を発現する。

「だがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだが
 だがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだが
 だがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだが
 だがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだが」

左拳だけのラッシュがアメリカねずみを蜂の巣に変える!
秒間80発はあろうかという拳の連打がたっぷり10秒ほど続き、フィニッシュブローで壁へと氷塊ごと突き刺さった!

「――――――だが断るッ!!(お断りだ)」

ただのラッシュではない。御前等のスタンドエネルギーの塊――歯車を付与した拳の嵐である。
無数の歯車達は着弾の瞬間に拳を離れ、氷塊へと付着し、ラッシュによって釘のように深く深く埋め込まれた。
御前等が指パッチンすると、氷塊内の歯車が一斉に回転し、歯車同士でこすれ合って火花を生じた。

『それは可燃性となった氷に着火する。』

ドバババババァァンッツッ!!
爆発、炎上。その勢いや凄まじかった。
通常ロウソクのロウやガソリンは、揮発した気体に引火して燃える。
気体になって密度が薄まった状態であれだけ燃えるのだ。凝固した個体のままスタンドによって引火性を付与されたものならば。
ダイナマイトにも匹敵するような轟音と爆炎を吐き出しながら、室内に生まれた極小の太陽は内包する全てを焼き尽くした。

「説教臭い作風は嫌われるぜアメリカねずみ。忘れるための現実に言及した時点で、お前は駄作なのさ」


【アメリカねずみにラッシュ後、氷を着火】

374天野晴季 ◆TpIugDHRLQ:2011/05/16(月) 18:52:50
>「Sum41ッ!!!この氷塊は…可燃性となるッ!」
「ナイスですよねさん!」
>『なっナニぃ〜〜…♪ヤッやめろッウスラボケメガネッッ!!
 裏人格に乗っ取られたキミは、闘いの欲求が押さえきれずに仲間を全滅させたがってる設定だったろ?
 今更何でコイツらの味方してんだよ!!オイ止めろッッ!!
 手を触れて口に出しさえすれば、何でも叶う能力なんて反則だろぉ〜〜!!オイ♪!!』
「…貴方に一つ教えてあげます。『分かるかいザ・ファンタジア。この市民会館では設定なって何の意味も持たないんだ。』
…それと君の能力も十分チートだよ。気温と湿度と気流を操るだけの僕なんか足元にも及ばないさ」
叫ぶファンタジアにそう言葉を投げかける天野

>『ちくしょぉおおおお〜!!!こうなったら最後の手段だ!!!♪』
「最後の手段? 違うね。最期の手段だよ。ところでトイレは済ませたかい? 神様にお祈りは? 部屋の隅でがたがた震えながら命乞いするも凍えて氷像なる心の準備はOK?
フリーシーズン。気流操作。タイプ:氷属性鎌鼬ッッ!!!!」
気流操作で超低温の鎌鼬を創り出し、泥人形を切り刻む天野
「…さ、これで終わりだよ。御前等さんが君を燃やすのを補助するために…
フリーシーズン! 気流操作! タイプ:旋風!!!」
ザ・ファンタジアの周りの空気をかき混ぜ、より効率よく燃えるようにした天野。これで御前等の炎は更によく燃えることだろう
「燃えてなくなれ。凍って砕けろ。切り刻んでズタズタになれ。吹き飛んで壊れろ。濡れて溺れろ。…そしてもう二度と。僕達の前に姿を現すな」
【泥人形達を切り刻み、御前等をアシスト】

375ザ・ファンタジア ◆tGLUbl280s:2011/05/22(日) 20:43:49
>>373 >>374
泥土の如き粘着性の腕で、御前等の大腿にしがみつくアヒル。
背中に負ぶさるように首にぶら下がる出っ歯剥き出しのリス。
身体に絡みつく二体の傀儡を引き摺りながらも、渾身の力で一歩―――御前等は足を踏み込む。
間合いを削る一足。
今やザ・ファンタジアと御前等の間隔は、近距離型スタンドの射程二メートルを切っていた。

『くぅうっ〜〜…♪!!!チッ○!ド○ルド!そのウザバカの動きを止めろぉおお!!!♪』

ザ・ファンタジアに命じられた傀儡どもは、万力のような力で御前等を締付け、動きを封じようとするが…

>フリーシーズン。気流操作。タイプ:氷属性鎌鼬ッッ!!!!」

天野の一声で、超低温の鎌鼬が泥土の如き傀儡の体を容易く切り裂く。
バラバラに解体された手足頭が床に転がった。ドロドロと溶け落ち、元の床材に戻る傀儡の残骸。


体の自由を取り戻した御前等が、また一歩、足を踏み出し、ネズミの眼前に立ち塞がる。

>「――それで、アメリカねずみよ。この俺に現実を知れとか抜かしたな」

御前等と対峙するネズミの脳裏に、警鐘のような"声"が鳴り響く。

――――ザ・ファンタジアァぁぁああ!何をしているッ!早く来いッ!
俺が死んじまったらお前だって消えちまうんだぞぉおッッ!!――――

"声"は危機が"双方に"迫っていることを示していた。
しかし、氷塊の中に囚われたネズミに許される唯一の行為は、身に降りかかる惨禍をただ眺めることのみ。

(うるせぇ♪この役立たずッッ!!♪自力でなんとかしろッ!!こっちのが断然ヤベェんだよッッッ!!♪)

頭の中の"声"に答え終えた時には、既にスタンドと二重になった御前等の拳が眼前に迫っていた。
限界まで見開かれたザ・ファンタジアの目が恐怖を反射して煌く。

『―――――ぶげッッ♪』

ネズミの顔面にめり込むアンバーワールドの拳。
刹那の間を置き、繰り出される左ストレートの連弾!

>「だがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだが
>だがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだが
>だがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだが
>だがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだがだが」

氷と一体化したザ・ファンタジアの身体に、容赦なく鋼の拳が叩き込まれる。
半ば粒子化した状態のまま凍りついたザ・ファンタジアの身体は、氷の破片を撒き散らしながら
受けた拳の形に陥没し、見る影も無く変形していく。
拳の穿つ無数の穴に埋め込まれるスタンドの歯車―――異能の小片!

>「――――――だが断るッ!!(お断りだ)」

376ザ・ファンタジア ◆tGLUbl280s:2011/05/22(日) 20:44:30
『ぷげらっっっ!!!♪』
吹っ飛ばされ、壁に激突するザ・ファンタジア。
氷塊と一体化したネズミの身体は、衝撃で砕けた壁の亀裂に突き刺さった。

>『それは可燃性となった氷に着火する。』

御前等がパチンと指を鳴らす。
ネズミの体内で擦れ合い着火する歯車。
ガソリンのような燃焼促進剤は、必然的に引火点以下の温度となる固体状態の時に火を近づけても、直ちに燃え移ることはない。
しかし、よねの能力によって設定を書き換えられた氷塊は、
常温の固体でありながら爆発的燃焼を引き起こす『火薬』に近い可燃性固体の性質を有していた。

>「燃えてなくなれ。凍って砕けろ。切り刻んでズタズタになれ。吹き飛んで壊れろ。濡れて溺れろ。
>…そしてもう二度と。僕達の前に姿を現すな」

加えて、天野の操作する気流が燃焼を促進させる。

>ドバババババァァンッツッ!!

建物を揺るがす轟音!立ち昇る爆炎!
ザ・ファンタジアの白い身体を紅蓮の炎が包み込む。

炎の衣を纏い、立ち上がったザ・ファンタジアは、どこかキョトンとした目をしていた。
あまりの出来事に状況を把握できずにいる者の目だ。
両手を広げて燃え上がる炎を見つめ、初めて身に起きた異変を察知したかのように、その瞳に戦慄が浮かぶ。
と、やにわに狂ったように頭を抱え絶叫しはじめた。


『ぎゃあぁああぁぁああああああぁあああああッッ――――ッ!!!!!!!!
 熱い!熱い!!熱いッッッーーーーーーーー!!
 嫌だッ!嫌だ!!嫌だぁあああああああッッッ――――――――!!!
 死にたくないぃいぃぃッッ!!消えるのは嫌だぁあぁああああああぁぁぁぁぁあああああ!!!』

叫び声を上げる口の中も炎が燃えている。
粒子同士を凍結させていた水分が可燃物化し、内部からネズミを焼き焦がしていた。
地獄の業火は悪行の報いに罪人を焼くという。
人ならぬ身の悪を裁く炎があるのなら、まさにこれを業火と呼ぶべきなのかもしれない。


『嫌だあぁぁぁぁーー!!!消えたくないぃいいいいいいいいぃ――――ッッ!!!!………』

断末魔が途切れ、最後の残渣を焼き尽くすかのように炎が一際輝く。
宙に散った炎が消えた時、ネズミの姿はそこになく、床に白っぽい灰が薄く散らばっているだけだった。

377ザ・ファンタジア ◆tGLUbl280s:2011/05/22(日) 20:46:19
    *       *        *

エイドリアン・リムは冴えない男だった。職業は時間給のアニメーター。
小太りで低身長の上、引っ込み思案、当然女にはモテない。大抵の女は虫ケラでも見るような視線を彼に浴びせかける。
だがそんな彼も、子供…ことに幼い少女と遊ぶことは好きだった。
ボランティアで身寄りのない子供たちの施設に慰問に行くこともあった。
子供たちは、キャラクターの絵を描いてやると、とても喜んだ。
ずっと自分は子供好きなんだと思っていた。

その影に潜む抑圧された欲望に決定的に気づかされたのは、
人気のない森の中で出合った少女を衝動的に手をかけ、殺してしまった後だった。
死体を見下ろし途方にくれる彼の前に、それは現れた。
―――ザ・ファンタジア…彼にとってのヒーローの姿をしたアイツが。


以来、"エイドリアン・リムの欲望から発露した"と語る白いネズミが、彼の欲望を解き放った。
どんな残酷な欲望も、奴がいれば叶えられた。何をしたって警察にバレる筈がなかった。
最高に刺激的な友達が出来た気分だった………が、それも最初のうちだけだった。
奴は次第にコントロールできる"場"を広げ、勝手に行動し始めた。
"場"が発動している時、本体である彼は、何が起こっているのか知ることすらできず、脇役以下の役割しか与えられない。
今やどちらが主体だか分からない。
それに、ネズミが時折彼に向ける、"ウンザリ"という文字が浮かんできそうな視線……
自身から生まれたものにすら蔑ろにされるのかと、酷く屈辱的で虚しかった。


彼は、ザ・ファンタジアを制御したいと願い、その為の力を欲した。
―――"アイン・ソフ"…"悪魔の手のひら"…あらゆる異能を思うままに発現し操ることが可能だという、その力を……
勿論、あの女の言葉を全て信じていた訳ではない。それでも、疑いつつも、欲せずにはいられなかった…

しかし、それももうどうでもいい事だ。
ザ・ファンタジアが作り上げた"場"が崩壊する気配を感じる。

――――所詮、アイツは俺から自由にはなれない。一緒に逝くしかないんだ。アイツ悔しがるだろうな…

薄れゆく意識の中でエイドリアン・リムは、ささやかな復讐心を満足させた。


    *       *        *

378佐藤ひとみ ◆tGLUbl280s:2011/05/22(日) 20:52:47
>>372
一文字に切り裂かれた咽元の切り疵を見せて、仰向けに床に転がる小男。
男は一度ゴボリと音を立てて血を吐き、そのまま動かなくなっていた。
今や何も映さぬ虚ろな目が天井に向かって見開かれている。

佐藤ひとみは、隣にぺたんと腰を下ろす生天目有葵に視線を向ける。
振り回された刃物を避け損なったのだろう。ワンピースは所々が切り裂かれ、頬に出来た傷に一筋の血が滲んでいた。
視線を交わして、少女は呟く。

>「おわった?こんな狂ったノリスケみたいのに殺されたらたまらない。
>スタンド使い同士って引き合うっていうけど、こんなキモヲタと一時間でも人生を交じあわせるなんて
>金輪際真っ平ごめんよ…」

ひとみは少女の問いに答える。

「おわったわ…多分ね……」

床の男は、どう見ても事切れている。が、ひとみは少女の前で"死"を口にすることを無意識に避けた。
返り血を点々とつけた少女の顔を、まじまじと見つめる。

人の生き死にとは無縁の、ごく普通の少女が、身を守るためとはいえ生身の人間を手にかけたのだ。
ひとみは有葵に"戦う覚悟を持て"と諭した。
覚悟なき殺人は、それがいかに正当な理由であろうとも、心に動揺と深い傷痕を残す。
覚悟は、不意に襲いくる動揺を、後悔を、良心の呵責を、跳ね返す強力な壁になる。
しかし、有葵のような恵まれた少女が、生来まっとうな生活を送りながら培ってきた素朴な良心は、
そう簡単に割り切れるものではないことも想像できた。

ひとみ自身も、あの時…あの男の命を奪うと決めた時…充分に"覚悟"を決めていた…筈だった。
それでも、時折押し寄せる後悔とも自責ともつかぬ感情に手を焼いていた。
もはや気の迷いと糊塗できぬまでに募り、処理のつかない感情は何なのだろう――――?

この出来事が……他者の命を――生きる価値のないクズといえど――自らの手で奪ったという事実が、
いつか少女の心に、染みのような黒い影を落としはしないか、抜くことのできぬ小さな棘となりはしないか、
ひとみは、有葵の小さな顔を見つめながら、同情に近い気持ちで、少しだけ彼女の行く末を案じた。



………ふと気づくと、並んで腰を下ろす二人の周囲の空間が、ぐにゃりと歪んでいた。
異変は部屋全体に及んでいる。床は波打ち、壁や書棚の輪郭がブレ始める。
触れると表面が小さく崩れ、粒子が宙に舞った。
その上、ライブラリから書庫に通じる扉の隙間から、焦げ臭い煙が入り込んでいる。

「あっちはあっちでカタがついたみたいね。
 ここから出ましょう。早いとここの建物から脱出しないとマズイことになりそうだわ。」

ひとみは有葵を促して立ち上がった。

379ザ・ファンタジア ◆tGLUbl280s:2011/05/22(日) 21:00:28

書庫と同様に、ライブラリも異変に見舞われていた。
壁も、床も、建具も、建物全ての輪郭が揺らぎ粒子が端々から零れている。
ネズミから飛び散った火の粉が書架の本に燃え移ったのだろう。書架から書架へ次々と火の手が広がり始めていた。
有葵の肩を借りて書庫から出たひとみは、ライブラリの面々の顔を見て叫んだ。

「あいつが死んで"場"が不安定になってる!今ならここから脱出できるかもしれない!
 …てゆうかここにいたら、どっちにしても焼け死ぬわ!!四階廊下の突き当たりに非常口がある!そこに向かうわよ!」

ひとみはライブラリの唯一の出入り口、廊下に通じる扉を指差す。
…と、その時……

『く……ひ…ひひひぃ♪』

本を焼く炎の弾ぜる音に紛れて、不気味な笑い声が耳に入った。
声のする扉の方に目を向ける。
風に吹き寄せられるように床の灰が集まり、扉の前で『あのネズミ』が実体化していた。

実体化したネズミは以前とは様相が違っていた。
色は灰色を帯び、粗い粒子が寄せ集まっただけの体は、所々背後が透けて見える。
空中に灰をばら撒いて固めたような粗放な姿。

『ヒヒヒッ…残念だったねぇ〜…♪この通り僕は不死身さぁ〜…♪
 ヒヒッ…あの役立たずめ…くたばりやがった…♪ヒヒヒッ…
 それでも僕は消えずに存在してる…!!♪こりゃどういうこったぁ〜ッッ?進化だよ♪進化ッッッ!!♪
 僕は今、自分の為だけに存在してる!スタンドを越えた存在ナンだぁ〜!!』

狂気に近いほどの饒舌で語るネズミの体表から、ボロボロと崩れるように灰の塊が剥がれ落ちる。

『オメーらは逃げられねえよォぉ〜!!♪タイムリミットは目前だァ〜♪
 場の支配権は、まだ僕の手にある…!!ヒヒッッ!!』

勢いに乗せて、バン――――!と、ネズミが背後の扉を叩いた途端……
消し炭になったまま辛うじて形を保っていた柱の支える廃墟が、僅かな衝撃で跡形も無く崩落するように
ネズミの体が膝からガクンと折れ、粉々に砕け散った。
砕けた灰塵は再び寄せ集まることもなく、次第に空気中に拡散していく。


『……ちくしょう…体を保てねえ…〜…♪ダメージを受けすぎたのか…それともアイツが死んだせいか…?
 ……僕は所詮アイツの"創作幻想"でしかいられなかったのかァ…?…』

ネズミは自嘲気味に呟き、御前等に視線を移しニタリと笑った。

『…ウザキング君……君にはヤラレたよ……ヒヒッ…
 僕と君は似た者同士だ…♪お互い創作物から借りたものでなきゃ自分を表現できないんだから…
 ……僕は姿を、君は創作物から派生した言葉をね…
 僕には君の心がよ〜く分かる…♪
 君は他人から嫌われるより、無視されることの方が余程怖いんだろ…?
 だから、ウザがられ、嫌われても声高に自己主張をし続ける…クヒヒッ…違うかい?』

380ザ・ファンタジア ◆tGLUbl280s:2011/05/22(日) 21:04:30
背後が透けて見えるほどに拡散した灰となりながら、ネズミは語り続ける。

『君はメガネ君のことを"頼れる仲間"なんて言ったけど、そうじゃないだろぉ〜♪
 タマタマ目的が同じだから協力しただけだろ?言わば僕が作ってやった臨時のお友達さ♪
 君には本物の仲間なんかいやしないんだ。ヒヒヒ…図星だろ…?
 
 ヒヒッ……"忘れるべき現実"だって?……忘れたって現実は無視しきれるもんじゃない…
 いつか必ず、忘れた筈の現実に足を掬われる時がくるぜ……ヒヒヒ…
 君みたいなカラッポな人間が、望み通り、注目を浴びて、人の中心にいたいなら…
 "力"を手にするしかないだろうね…

 無視しようったって出来ない程の強大な"力"を……
 じゃなきゃ、いつまでも耳元で羽音を立てる煩い虫ケラ扱いされて終わりさ…』


御前等を挑発する言葉に、ザ・ファンタジアは自らを重ねて語っていた。
忘れていたかった現実を突きつけられて愕然としているのも、
かつて、偽の現実を本物にするために、"力"を欲していたのも、紛れもなく自分自身のことだった。

ザ・ファンタジアは自我を肥大化させすぎたが故、
自身がエイドリアン・リムに従属する"能力"でしかない、という事実を受け入れ難くなっていた。
スタンドを越えた『個』としての存在を望んだ。
…ニューディバイドというあの骸骨男…あの生物ともスタンドともつかぬ存在は、
本体に束縛されることなく自由意志で行動している。スタンド自身が本体といえる存在なのだ。
…"アイン・ソフ"…"悪魔の手のひら"…全ての異能の根源ともいえる強大な力…
ニューディバイドが狙うその力を手にし、『個』としてあの骸骨以上に力を持つ存在になりたかった。


ネズミは天野に視線を移す。

『そこの少年…チートってのは"負けない"存在のことを言うんだ…♪負けちまったら結局は弱者の仲間入りさ…
 気をつけな…君も借り物の言葉ばかり使ってると、ウザキング君みたいになっちまうぜぇ……♪』

もはやネズミの形すらなく、空を漂うだけの灰であった。

『……弱者は"力"を手に入れなきゃゴミさ…"力"を……』

最後の言葉を吐いて、ネズミは空気中に散り、見えなくなった。

381ザ・ファンタジア ◆tGLUbl280s:2011/05/22(日) 21:11:56

ザ・ファンタジアが扉を塞いでいた間にも、"場"の崩壊は着々と進行していた。
粒子化し始めた床が、ぬかるみのように足を取り、今や歩行すら困難な状態だ。
スプリンクラーの放水が気休めにしかならない程、書棚の火災も広がっている。

佐藤ひとみは、ゲームの残り時間をセットしていた携帯電話に目を落とし、金切り声を上げた。
残り30秒のカウントダウンが始まっている。


「もう間に合わないッッ!!ここから飛び降りるわよ!!
 各自スタンドで何とかできるでしょ?下は芝生!上手く落ちれば骨折程度!死にゃしないわ!!」

南側に面した窓を大きく開け、ひとみは身を乗り出す。
体が外気に触れても、もう肌の表面が粒子に変化することはない。
根性で出現させたフルムーンの触手に両手を絡め、窓の外に飛び出した。


崩壊していく"場"にザ・ファンタジアの混濁した意識が流れ込む。
"場"から逃れようと足掻く面々は、ザ・ファンタジアの記憶の断片を見るだろう。

………黒衣の女が掲げる水晶の指輪から光が放たれ、ヴィジョンが浮かび上がる。
――――北条市の上空に10個の大きな実をつけた"逆さまの樹"が現れ、実を繋ぐ22本の直線が輝きを放つ。
――――地は巨大な爪に掻き回され街は廃墟と化し…――――そして生まれる強大なパワー!
――――禍々しく名状しがたき力なれど、異能の持ち主であれば気づくだろう。
――――その圧倒的な力が、自らの中にあるものと同種のものだということに……

意識が消滅する直前、ザ・ファンタジアは『あのウザい青年は僕のことを忘れられないだろうな』と思った。
……忘れてほしくない…と願った。
あれだけムカッ腹の立つことを言ってやったのだ。忘れようとしても、忘れられるものではないだろう……
最後の挑発の理由であった。誰かの記憶の中にあるうちは、完全な"消滅"は訪れないのだから。


      *        *         *

辛くも市民会館から、全員が脱出を果たした直後、四階の窓が一斉に割れ、爆炎が噴き出した。
ライブラリから出火した火の手が、物置に保管されていた灯油に引火したのだ。
かつて市民会館と呼ばれた建物は、空を焦がす猛火と黒煙に包まれて燃え盛っていた。


【ザ・ファンタジア、灰になって消滅】
【各自、飛び降りるなりスタンドを使うなりして、四階の窓から脱出してください】
【黒衣の女(影貫)が見せたヴィジョンは『このパワーはイメージです』みたいな感じので
 現実に起こったこと(起こること)とは限りません】

382よね ◆Cj3ysYNKG2:2011/05/23(月) 00:57:34
よねは満身創痍で、ライブラリの壁に座りながらもたれかかっていた。
意識は朦朧としている。辛うじて、声にもならないほどの小さな声を出せるくらいであった。

/『……弱者は"力"を手に入れなきゃゴミさ…"力"を……』

「やりましたね…勝ちましたよ…我々は……理不尽な状況から、激しい逆境から……ヤツのゲームに…勝ったんです…」

身体中の感覚が無い。よねは、床の、壁の感覚をも感じることすら出来なかった。
それでも、よねは何とか最後の力を振り絞り、立ち上がろうとする。
だが、ライブラリの床は既にぬかるんでおり、
よねは立ち上がれずに、再びその場に、ドタッと崩れる。

「勝ったのに…悔しいなぁ…………」

床に倒れたよねは、誰にも聞こえない様な声で小さく呟いた。

間接的に自分が放火したであろう、書棚の火。
その火の粉がよねの衣服や、愛用の帽子に降りかかる。

"地獄の業火は悪行の報いに罪人を焼くという。"
だが、果たして、よねに地獄の業火に焼かれるほどの大罪はあったのだろうか?


眠気に似た感覚に襲われていたよねの耳に、佐藤の声が聞こえてくる。

/「もう間に合わないッッ!!ここから飛び降りるわよ!!

(そうか……脱出する、というのが勝利の条件だったのか…ってことは、このゲーム、自分の負け…ですか…)

勝敗条件を勘違いしていた自分を、心の中で笑う。
よねの意識が遠のいてゆく。
人は死ぬ間際に走馬灯を見る、とよく聞く。だが、よねにはその様な類のものは見えなかった。
フッと、蝋燭が消えるように、よねの意識も消えた。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

よねの意識が無くなってから、何時間、いや何日、いや何ヶ月経っただろうか?
意識を失っていたよねが再び目を開く。
厳密には目を開いたわけではない、視界が回復したのだ。

視界には、だいぶ前に見た気がする、市民会館のライブラリ。
忌まわしき、狂った"ゲーム"があったライブラリ。

床はまるで泥沼のようで、書棚や床にはところどころ火がついている。
だが、それら全てが、まるで凍ったかのように、静止していた。
無音であった。物が燃焼する音も、生理的な耳鳴りの音も、無かった。

(ここは……Sum For Oneの空間…?まさか、ずっとこの世界で意識を失っていたのか…?)

383よね ◆Cj3ysYNKG2:2011/05/23(月) 00:57:52
Sum For Oneは、よねの潜在意識の顕在である、通称"裏のよね"が表の人格を奪ってから使えなくなっていたSum41の能力である。
そこは、あらゆる物理運動は停止し、時間でさえも静止する世界。唯一、動くことが許されるのはよねの思考、即ち意識のみ。

(…勝手にSum For Oneが発動したのだろうか?)

そんな事は有り得るはずも無い。何故ならば、スタンドとは人間の精神の具現化であり、本体の精神無しには存在しえないからである。
だが、エイドリアン・リムのスタンド、ザ・ファンタジアが最期にやって見せたように、
スタンドだけがほんの少しの間だけ、自我を持ち、存在することが可能なのだとすれば…?

よねがそんな事を考えていると、

「自分でも思うだろう?裏の人格、潜在意識の顕在だなんてつくづくフザけた設定だって」

よね自身の声がする。否、これはよねの声ではない。"裏のよね"の声だ。

「でもね、私は確かに存在するよ。君の潜在意識の顕在として。そして君の"表の人格"を奪ったんだ。
 けれど、君は"表の人格"を私から取り戻そうとした。おかげでこの有様だよ」

何物も動くことを許されないハズの世界で、よねの視界によねが現れる。
だが、そのよねは体の大半が黒く変色していた。

「一つの身体に、二つの人格が"表の人格"として存在し続けれるワケないだろう?だから、私と君の人格もとい精神は"融合"し始めているんだ。
 だから、使えなくなっていたSum For Oneの能力も復活した。そしてそれを朦朧とした意識の中で私が発動させたのさ。この私の体の変色も"融合"のせいだよ」

べらべらと、目の前のよねは一人で喋っていた。だが、その話はどこか性急に感じられた。

「精神が融合するってことはさ、私の精神と君の精神がそれぞれ一つずつ持っていたスタンドも一つになっちゃうってことだよね。
 半分になったスタンドとスタンドが融合…私はきっと元に戻るだけなんだろうなって思っていたのさ。
 けど、違った。私が君から人格を奪っている時に、私の精神が持っていたスタンド、つまり私のSum41が成長してしまったんだよ。
 本当なら、半分と半分で一つのスタンドに戻るハズだった。けれど、片方が大きくなったから本来のスタンドよりも大きくなってしまうんだ。

 本来の許容量を超えたスタンドはどうなるか…これは十人十色かもしれないけれど私たちの場合は――」

その話の突然、何かが弾けた様な音と共に、Sum For Oneが解除された。

動き出した世界。物が燃焼する音も、生理的な耳鳴りの音も、確かに存在していた。

(本来の許容量を超えたスタンドは……消滅する…ッ!?)

最後まで言葉を聞かなくとも、"裏のよね"が言わんとすることは理解できた。
これも精神と精神が融合しはじめている証拠である。

(大丈夫…まだSum41は使えるみたいだ…出来る限り早く脱出する…ッ!)

今のよねはゲームに負け、死を確信していたよねではない。
よねの精神は十分に休息を取り、復活していた。

「足は使えないッ…!けれどスタンドならッ!これが最期の"書き換え"だァァァッ!
 Sum41ッ!この床は自分と反発しあう!それもとびきりヤバいくらいにッ!!」

最後にSum41がよねに見せた姿。
よねの精神以上のスタンドとなったSum41は、以前の少年のようなスタンドから、大人びた風貌に成長していた。

ドビッシュゥゥッ!!

凄まじい勢いでよねが南側の窓から飛び出す。
その時、頭の中にとてつもなく禍々しいヴィジョンが流れ込んできた。
だが、よねはそれどころではなく、上手く着地するために姿勢を作るのに必死だった。

着地!すると同時に勢いを殺さずにゴロゴロと芝生の上を転がる。
身体中が痛む。視界も霞んでいる。しかし、よねが感じた外の世界は、普段と特に何も変わらず、爽やかだった。

――米コウタ、スタンド消滅、再起不能

【よねも脱出しました】

384生天目有葵 ◆gX9qkq7FNo:2011/05/26(木) 20:29:31
無惨なものが生天目有葵の目に映りこむ。
それは書庫の天井を見上げ転がっているエイドリアン・リムの死体。

>「おわったわ…多分ね……」と佐藤ひとみ。

「…そう……やっぱり死んじゃったのか」
少女の胸に小さな痛みが走った。
見つめ返す佐藤の瞳には影がちらついていた。体の芯が震え胸がざわめいた。
彼女の心に繋がろうと、ひたすらに言葉を探す自分が、生天目には不思議だった。
でもそうしないと、胸がなんだか痛い。痛いまま。

>「あっちはあっちでカタがついたみたいね。
 ここから出ましょう。早いとここの建物から脱出しないとマズイことになりそうだわ。」

「え…。うん。そうしよ…」

 ※ ※ ※

炎上する市民会館。崩壊する『場』。
最後の悪あがきで扉の前に立ちはだかるザ・ファンタジアをステレオポニーがなじる。

>『……弱者は"力"を手に入れなきゃゴミさ…"力"を……』

「ザカシイネズミダヨ〜!最後マデ人ヲ馬鹿二シテ!自分(エイドリアン)サエ「ゴミ」扱イカイ?
トットトサリヤガレ悪党!自分自身二、アノ世デ詫ビナッ!」

ザ・ファンタジアは霧散し道が開ける。ぐねぐねの床が怖いくらい気持ち悪い。
非力な生天目に、天野、御前等、よねを助ける余裕なんてなかった。

>「もう間に合わないッッ!!ここから飛び降りるわよ!!
 各自スタンドで何とかできるでしょ?下は芝生!上手く落ちれば骨折程度!死にゃしないわ!!」

「うそーっ!!ヒモなしバンジーなんて冗談じゃないぃいいっ!!」

意を決し飛び下りる。頭上で響く轟音。
流れる風景に混濁するヴィジョン。錯覚と言うにはあまりにもリアルなヴィジョンだ。
スタンドをクッションにして着地する。振り仰げば四階は炎に包まれている。

――眩しいくらいの夏の雲がゆるゆると蒼天を流れる。
光る風が渡る。さわさわと茂みが鳴りどこかで咲く花の香りが
生き残った者たちのあいだを流れさる。

風は佐藤ひとみの長い黒髪を大地から掬いあげ天へなびかせていた。

風の行方を目で追い雲間からこぼれた陽射しのまぶしさに生天目は目びさしをした。
見あげた北条市の空は悲しくなるほど青かった。

385天野晴季 ◆TpIugDHRLQ:2011/05/27(金) 19:02:28
>『そこの少年…チートってのは"負けない"存在のことを言うんだ…♪負けちまったら結局は弱者の仲間入りさ…
 気をつけな…君も借り物の言葉ばかり使ってると、ウザキング君みたいになっちまうぜぇ……♪』
「…そうでもしないとキャラが立たないんだよ…。君や御前等さんは良いよね、キャラが強くてさ。…取り合えず『非科学的だ』を口癖にしてみるか?
…でもスタンド使いって時点でそんなこと言える立場じゃないよね。伊達眼鏡でもかけてみるか? …眼鏡キャラはよねさんと被るな…
でも良く考えたら他作品ネタ多様も御前等さんと被るんだよな…
…『チートは“負けない”存在のことを言う』か…ま、確かにそうかもね。でもさ…
『負けることしかできない』ってのも、それはそれでチートなんじゃないかな…? …なんてね! ただの独り言だよ!
だから気にせずそのまま消えちゃって!」
ちょっとメタっぽいことを言う天野
>『……弱者は"力"を手に入れなきゃゴミさ…"力"を……』
「消える間際に全国の弱者を敵に回したね、君。全国の弱者様申し訳ございません。お気を悪くしたのであれば、
えーと…すみません。何も思いつきませんでした」
全国の弱者様ってなんだよ。
「…さて、これでザ・ファンタジアは消えて僕達の勝ち。ハッピーエンドですねっ!
じゃ、早くここから脱出しないと火達磨になっちゃうな…」
そう言って窓を開ける天野
「…うん。いい風だ。この風なら…フリーシーズン。気流操作! タイプ:エアクッション!」
無風状態で気流操作をするには、風を生み出してそれを操る必要があるのだが、既に風が吹いているのなら、
その向きを変えるだけで良い。足りない分の風力は生み出して補えば良い。
「よし、脱出!」
窓から飛び降り、風で自分の身体を支えてゆっくり地面に降りる天野
「ふわり。さて、皆は大丈夫かな…」
脱出に成功して、特に怪我もないので周りの様子を窺う天野
【脱出成功】

386御前等 ◆Gm4fd8gwE.:2011/06/08(水) 05:06:04
崩れゆくライブラリ、ひいては市民会館の中で、ザ・ファンタジアは末期の叫びを上げた。
終わっていく。ザ・ファンタジアというコンテンツが、終了していく。それは大団円などでは決して無い――強制終了。

>『……ちくしょう…体を保てねえ…〜…♪ダメージを受けすぎたのか…それともアイツが死んだせいか…?
  ……僕は所詮アイツの"創作幻想"でしかいられなかったのかァ…?…』

ザ・ファンタジアの、白濁して機能を失った眼球が、ぐるりと御前等を見た。
死神に首を触れられた死者が、生者を引きずり込もうと必死になる、そんな眼をしていた。

>『…ウザキング君……君にはヤラレたよ……ヒヒッ…
  僕と君は似た者同士だ…♪お互い創作物から借りたものでなきゃ自分を表現できないんだから…
  ……僕は姿を、君は創作物から派生した言葉をね…僕には君の心がよ〜く分かる…♪
  君は他人から嫌われるより、無視されることの方が余程怖いんだろ…?
  だから、ウザがられ、嫌われても声高に自己主張をし続ける…クヒヒッ…違うかい?』

「フハハ、知ったような口を聞くじゃないかアメリカねずみよ!オワコンの貴様と一緒にされちゃ――」

>『君はメガネ君のことを"頼れる仲間"なんて言ったけど、そうじゃないだろぉ〜♪
 タマタマ目的が同じだから協力しただけだろ?言わば僕が作ってやった臨時のお友達さ♪

御前等の、いつもの白々しい発言が。初めて他者の言葉で潰された。
類まれなる自己主張の強さを誇る御前等にとって、それは初めてに近い経験だった。
図星だったのである。

> ヒヒッ……"忘れるべき現実"だって?……忘れたって現実は無視しきれるもんじゃない…
 いつか必ず、忘れた筈の現実に足を掬われる時がくるぜ……ヒヒヒ…
 君みたいなカラッポな人間が、望み通り、注目を浴びて、人の中心にいたいなら…
 "力"を手にするしかないだろうね…

「フン……いいだろう。ここから先は俺も腹を割ろう」

御前等は、いつも顔面を装飾していた、狂気じみた笑みを消した。
今の彼はまったくの無表情で――それこそが、御前等祐介の本音の顔。偽らざる真実の意志。

「本当は、ずっと前から分かっていた……『俺には何も無い』。縋れる過去も!誇れる栄光も!忌むべき歴史すらない!
 ここに至る18年余の人生で!自分以外の誰からもモブキャラ以上の認識をされなかった!だから、だから俺は――」

ウザキャラを被ることにした。
場違いなテンションで騒ぎ立てていれば、誰からも忘れられずに済むから。御前等は、絶やすことなく誰かに構って欲しかった。

「空気を読んで!おとなしくしていて!得られたものなんてなかった!敵意だって関心なんだ!だから俺は戦えた!
 お前もそうなんだろザ・ファンタジア!どうしようもなくしょうもない、最後の自己表現として、俺たちは正しく間違えたんだ!」

きっと、彼はザ・ファンタジアのことを憎めずにいたのだ。同じ志を持つ、共感できる相手として。
敵味方の枠組みを超えて、自分に関心を向けてくれる最良の相手として。いつの間にか、友情めいたものを感じていた。

「根っこの部分以上に、同じなんだよ俺達は!似たもの同士が戦って、より自己主張の強い方が勝ち、負けたほうが死んだ。
 だからこの物語は、これでおしまいなんだ、ザ・ファンタジア。俺とお前の戦いは、『終わってしまった』……!」

>「もう間に合わないッッ!!ここから飛び降りるわよ!!
 各自スタンドで何とかできるでしょ?下は芝生!上手く落ちれば骨折程度!死にゃしないわ!!」

建物の維持が限界に達していた。
床が傾き、壁が崩れ、御前等は外に放り出される。消えていくザ・ファンタジアを、最後まで視界に捉えながら。

「俺はお前を忘れない。お前が俺を忘れないようにな。お前という存在にケリをつけたのは俺だ。
 最後の最後――お前という『世界』の『中心』は、間違いなく俺だったッ!俺が渇望したものは、お前の中にあったんだッ――!」

重力加速度が御前等から血圧を奪い、脳から血の気が引いて意識が遠のいていく。
体中がズタボロで、全身が疲労していて、なにより今日はスタンドを使い過ぎた。精神が瞼を落とすのに、逆らえるはずもなかった。
意識を手放す直前、御前等は唇を震わせて、確かに呟いた。

「――これが、たった一つの俺の勝ち方だ」


【脱出&気絶】

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