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工廠裏の壁　3枚目

1： ◆MBT.TesLo2：2015/04/27(月) 22:30:12 ID:NLWQ.3bU

　　　　　　　　　　　　　　　　 　 描きたいけどいきなりスレを立てる勇気が無い
　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 試してみたいけど何処かでひっそりと行いたい
　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 そんなときに！


　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 工　廠　裏　の　壁


　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ・ 短編、試作、とりあえずなんでも良し
　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ・ やる前には一応宣言して被らないようにする
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ・ ハートフルに
　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ・ 埋まりそうだったら次建ててね　　　 　 　 　 　 ＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　/　ｊｊｊｊ　　 　　　＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／　タ　　　 　 　{!!! _ ヽ､
　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ／}¨ﾆ=-　 _　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ,/　　ﾉ　　　　＿　　~ `､　 ＼
　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ／　｜　　　　　¨ﾆ=-　 _　　　　　　　　　　 　 　 `､ 　`ヽ　 _{_[＿]＿} ,. ‐'` 　ﾉ
　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ／ 　 　 |　　　　　　 _　 ﾆ=- ｌ|]ﾆ=-　 _　　 　 　 　 　 ＼　　`ヽ(´･ω･｀)"　.ノ／
　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ／　　　 　 ｣　 ﾆ=-　¨　　　|| 　 ||| 　 　 ｌ　 ¨ﾆ=-　 _　　 　 ｀､ヽ.　　｀`Y"　 　r '
　　　　　　　　　　l　 　　／_]　 ﾆ=-　¨　　　　　　　　　 || 　 ||| 　 　 | 　 　 |　 　 l¨ﾆ=-　 _ｉ. ､ 　　￥　 　ﾉ
　　　　　 _　. 　-‐}‐-　［|　 ||　　　　　　　　　　　　　_　 |｢=ﾆ|||=- 　 | 　 　 |　 　 |　 　 |　　 ¨ﾆ=-　 _ー ｲ
　　¨￣　 　 　 　 |　 　 ||　 ||　　　　　 _　 -=ﾆ　 ¨　　　|| 　 ||| 　 　 | 　 　 |　 　 |　 　 | 　 ｜ 　 | 　 ｌ ¨ﾆ=-　 _
　　　　　　　　　　|　 　 ||=‐||-=ﾆr_‐￢冖ニ〔}　　　　　 || 　 ||| 　 　_|＿＿_|＿＿|＿　 | 　 ｜ 　 | 　 | 　 |　 |　 |
　 ―‐---　　 　 ｣　＿_||　 ||　=　|｢ : : l/|: : :|　 　 　 　 || 　 |||　/´-―‐.ｧ/ -‐,．=＝＝ァァュ　　| 　 | 　 |　 |　 |‐
　 圭℡rｮ 　 　 　 　 　 ||　 ||　-　||: : : l/|: : :| 　 　 _　　|| 　 |||//　　／///　〃　　　　///´||　 　 　 | 　 |　 |　 |
　 圭圭}l℡ _∠７ｴヽ_　||　 || |[Τ||: : : l/|: : :|　 晶品嵒晶t℡| {__／＿{ | L[ｆ―――‐' {］―|l＿＿＿＿_ |　 |　 |
　 圭}圭圭‘＝“０-０┘||＿||_|_｜||;_;_;_l/|;_;_;Ｌ晶晶品嵒亟亟lｪｪ―_‐ｪｪ|ｭ　|ｭ ￣ r=ｭ Γ二ｌ|＿＿＿＿_||＿|[]⊥
　 “““¨¨´　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ｀¨¨¨¨“““““““ｆ=======fｮ_/:{zzzzzｭｪｭ┴7ffT]三三7ffT{
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ｀￣V::}:リ￣V::{iリV::}:7￣V::{i:ﾉ￣￣V::{i:ﾉ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ｀¨´　　 ｀¨´　｀¨´　　｀¨´　　 　 ｀¨´

6650： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:08:54 ID:xap8EYXQ




────────────────────────────────────────────

　だけど、常日頃からそんな事を覚悟して生きていける様な人なんて、そう多くは無い。
　だから実際にそういった危機に襲われた時に、冷静なまま適切な対応を取ったり
　自分を失わずに居られる人間なんてものは、きっとそう多くはない。
　そうして、理不尽に失った物を取り返すため、更に多くの物を失うことになる。

　結局の所、それがこの世界に於ける現実って奴だった。

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　　　　　　　　　　　　　　　　　＞ｧr ＜、
　　　　　　＿_　　　　　　　／´7ｲ i｀ヽ〉ヾｰr ､
.　　 　 ___{'//∧rf千ゞ.,__/　>―r-i-r―　､乂ﾊ
　　 　 {/∧／⌒ヽ､　r=={ /　　 } :|人　　　〉　 i
　　　ri{/＞{:　 　 }　ヾ　 ∧ーr<　:|　　 7　' iゝ'､ﾌ　　 　 　 　 　 ＞/
.　 Yi{/ｲ　　ヽ __,ﾉ‐ ､ ∨　 i｀ヾ　 :|　　/⌒,､i )　)　　　　　,,＞''´　/
　　{/ｲ人＿,人　　　 ヽi　　i　　}__:|＿_{ __{__ヽ＜ﾌ´￣｀ヾ｀ ､ 　 ./
　　Y人__,ﾉ､ 　 ＼　　　ヾｰ{ー‐{___＞''´　／⌒>　　　　 　＼＼/
. 　 乂_ﾉ､　 ＼　　＼　 丿/Γ}__´,.ィ´ ,.ｨ{_{ゝ '　　　　　r‐ミ, ＼}
　　　 人 ＼.　 ＼＿厂＞‐< {i⌒＞ ∠／/⌒i　　　　 八　(｀ ､ ヽ
. 　 　 　 ＼ ＞=彳 Y´　　　i i}　　　 　 ￣￣￣｀　､　　　＼＼ ∨
　　　r‐＜　￣￣辷r≧==彡'　　　　　　　　　　　　 ＼三ミ､＼ゞ)
　　(三≧ ＞(｀ヽr ､人￣　　　r==ミ､.　　　　　　 　 　 ヽ／￣∨{
　　ゞ--＜ミ､{｀ｰ､　｀"'｀ マ　 乂┼ﾉ'.　　　　　 　 　 　 ∧,/⌒∨ヽ
　　｀¨ ''＜ミ､,)‐〈 ＞　イ{___＼　 ｀´ 　 　 　 　 　 　 　 　 }! !　　}／
　　　　　　　乂__}　　　 {ｉ　 |　 ＼　　　　　　　　　　 　　 ﾉｉ ｉ 　.ﾉ
　　　　　　　 　｀ｰ----人　!､_,ｨ7,＼ 　 　 　 　 　 　 r＜{人_r '
　　　　　　　　　　　　　　「Τ{￣　　 ＞.　　　　　 　 ﾉ／／} }
　　　　　　　　　　　　　　{ ∧ﾏ　　　　　　 ＞―‐=彡 ''´／ノ　　　　　　※覚悟出来てる少数の、更に特殊な一例

6651： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:09:20 ID:xap8EYXQ




──────────────────────────────

　――と、如何にももったいつけた言い回しを用いた所で
　実際にその時の俺が失った物は、仕事くらいのものだった……。

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　　　　　　　　´　　　　　　　　 ｀
　　　 ／　　　　　　　　　　　　　　 　 ＼
　　 ,　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　'
. 　 ,　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　'
　 　 　 　 「　　　　　　　　　　 　ヘ、
　　i 　　　i 　 　 　 　 　 　 　 "　　　ヽ　 　i
　　i　　 , -＝- ､　　　　　　　, -＝- ､.　　 i
　　| 　/ i:::::::::::::i ヽ　　　　　/ i:::::::::::::i ヽ　 |
　　| 　 ､ヾ:::::::ノ /　　 i 　 　 ､ヾ:::::::ノ / 　 |
　　|　　 　 ￣ 　 　 　 |　　 　　　￣ 　 　 . |
　　i　 　 　 　 　 　 　 |　　 　 　 　 　 　 　 !
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　　 i　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 i

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　　　　　i＼　　　　　　　　　　　　　　／　i
　　　　　i 　 ＼　　　　 　 　 　 　 ／　 　 i
　　　 ／i　　　　　　　＿＿　 　　 　 　 　 i＼

6652： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:09:37 ID:xap8EYXQ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,.イ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（＿二二 ￣７,イ人　　　　　 　 　　 ,ィ　ﾄ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/／（_ノし' ,ィ　ﾄ､ 　　 　　（ :し'　しイ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,.イ　　　 ／/　　　 　 （ :し'　しイ　 　　 ￣7 |￣　 　:ト､j7__,ｨ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　'ー―'´ / 　 　 　 　　￣7 |￣　　　　／,ｲ :!　　 　 ＞ｨr―'　　 l7l7rｧ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　∠,. -―― '　 　 　 　 　 ／,ｲ |　 　　 ＜／ﾉノ　　　＜_ノ:|」　　　　　/'´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .::... .　. ∠／ﾉノ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 人ノ从:.ｿ）ノ　）:.: .;,.'
　　　　　　　　　　　　ｎ-,-,-,-,-,-,-,-,-,-,-,-,-,-,-,-,-,-,-,-,-,-,-,-,-,-,-,-,-,-,ｎ　　ィ'　　(ソﾍ （::.:.:'.,; :. .
　　　　　　　　　　 ／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_　人　　　　　　て:;;':.
　　　　　　　　　／　　　　　　　　　　　　　　,'　　　　　　　　　　　　　　　　人)ヾ;　从　　　　　　（::..
　　　　　　 　／　　　　　　　　　　　　　　　(:';:;:;:;:　　　　　　　　　　　　_ノ　　_人　 (,＿ ｿﾊ　　　,ゞ.:.
　　　　　　／＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿',;:;:;:;:)）;:;:;:;:＿＿＿＿＿＿＿_从　(⌒　　　　ﾞ /⌒　　　 （: :.
　　　　　　`―┬―――――――――};:;:;:/(;:;:;:;:――――――_ ゝ　　　　　.　　　　火:.::ﾉ　　　　）:::...
　　　　　　　　｜　　　　　　　　　　　,'　ﾉし': :ヽ;:;:;:　　　　　　　　 人　　　　　.,;,.,　　　　｀ﾍ/
　　　　　　　　｜　　　　┌───（(,ｲ: :　　:: :V）;:　　　　　　_,ノ　　　　　.,.,; 　　;,,.,　　 　（ 　＿
　　　　　　　　｜　　　　│　　　　､ゝ: :　　　: :(ﾉ};:　　　　 ｀ﾍ(　　 从;:　 .;　　 　 　　;,　　　∨(
　　　　　　　　｜　　　　│　　　　｜ヽ: :: :　 : :: :/;:;:;:;:;:　　　_）　　　　,;　　　　　　　　;,　　　从
　　　　　　　　｜　　　　│　　　　｜ ゝ;:;;::;从;ノ;:;:;:;:;:　　　⌒ヽ　　　.;:　　　　　 　　　　:;,　　 ﾉ_イ
　　　　　　　　｜　　　　└───┴;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:　　　　　　_人ﾉ,　　 ;:　　　　　　　　 　　;;　 　/
　　　　　　　　｜　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ　　　;　　　　　　　　.,ﾉｌ火)　 　'ﾍ,
　　　　　　　　｜　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,火_)i_从　　 ;:　　　　　　　　　 　;;　 　火/(_
　　　　　　　　｜　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ._ﾉLノｌ　　　 ;　　　　　　 l(　　　　;　　　ヾ.,_从
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_火｀　　　　　､从_　　　　　　　　　　　　　　　　　ゞ_人_
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,,'`"ﾞ"''`ー;､从_ノ（_.,;:.)ﾍ　　　　）L从_;:,火,.;:ー'"ﾞ⌒


　　　　　 ／￣￣＼
　　　　／　「　　へ ＼
　　　　|　 （●）（●）　|
.　　　　|　　　 ｜　　　|　　　出勤したら職場がキャンプファイヤーになってる件について
　　　　 |　　 __´___　　ﾉ
　　　　 |　　 `ー'´　　}
　　　　 ヽ　　　　　　 }
　　　　　 ヽ　　　 　ノ
　　　　　　/　　　 く
　　　　　　|　　　　 |
　　　　　　|　　　 　|


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　より正確に言うならば、職場そのものを俺は失った。
　三ヶ月ちょい務めた小さな商社が、火災によってこんがりと焼けてしまったのだ。
　ちなみにここが、俺の人生における初職場である。笑うしかない。

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6653：名無しの工員さん：2015/05/10(日) 22:09:55 ID:tbBbzzBA
建物が燃えてる！

6654： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:10:24 ID:xap8EYXQ




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　聞けば、火元はタコ足配線になった延長コード。
　負荷が掛かって高熱が発生した所に、運悪く綿ぼこりが積っていたというなんとも有りがちで下らない理由だ。
　「注意一秒火事の元」……千年前から伝わるとされる格言は、まったくもって正しかったという訳である。
　……俺、何度もデスクの下掃除しましょうって言ってたんだけどなあ。

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　　　　　 ＿＿＿＿＿
　　　　（;;,,,(＿(;;;; ;,,,()＿＿＿＿ ＿＿_
　　　,/――――//―┬─┤| ||＿＿|┌┬┬┐
　　 / 　 　 　　 /,/　　 |　 　 ||[]:::::::::::::::□::::::::::::|
　 [/＿＿＿＿/（|＿＿|＿＿||:::擬古::消防署::::|
　 ,||;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|_|:::::::::::||:::::::::::|::::: γ ヽ::::::::::::::::::|
　 l,0lliｉ――iill0||:::::::;;;;;;;||;;;;;;;;;;;|;;;;;;;;;||;;;,;/￣ヽ;;;;;;;|
　 |;;;━口━;;;;;;;;l;;;;;;ﾌ.l O |ｌ | |コ□((/l´O`ソ　　　　　　　　　　　　　 　　 ∠⌒0ヽ
　　￣￣`ー'￣ 　　`ー'￣ ` ー'　 ）） `ー'　　　　　　　　　　　　　　　　　√/,,ﾟД)　　ｹｶﾞﾆﾝﾊｲﾈｪﾅｺﾞﾙｧ!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ノノ　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　　 r―Ｕ―∩┬┐
　　　　　　　　　　　　　　　　　　くく　　　　　　　　　　 　　　　　 　　　 　ﾉﾉ7￣~~〉ﾉ￣~
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ二ニニニ二二二二二二二二二ノノし⌒ﾉノ


　　　　　　 ,r'ﾆﾆヽ、　ノ三｀ヽ.
.　　　　　 //,.三ﾆ｀ﾆ´ ﾆ三 ﾐ }
.　　　　　｛〃 r;三ミ､ 〃彡ミ（_
　　　　 　 ）リﾉ,ｨ,ｲr';ﾘ"`〈ぃヽミﾞヽ
　　　　r,=' 彡〈でｻく::v:::::`r}ﾋ7 ﾐ（
.　　 　 ｌ〃r;=:､} r;==ﾐ ij~,〃=､ﾞﾐヾ.)
　　　　ﾉ,ﾘﾊY^i|:{{　 e l:v i e　j}|.|:(
　　　（.(（(. {に|! `ﾐ＝'|::　ド＝''|.| )）　　　　　　　　は、早く火を消し止めるざんす!!
　　　　) ））｀フl ,コ_⊂、u,⊃,[ K(（
　 _,∠-‐'Ｔ´|　l.|[ﾞT'ﾃ=三=ﾃ']l|_ﾘ）)　　　　　　　　金庫が、金庫がまだ中に……!!
　: : : : : :│: l　:l.|l.`' ┴┴‐'´l|| :｀¨''ｰ-　.._
　.:　: : : :.|: : ﾄ､::l.|ｌエエエｴｴl|.!: : : : : : : : : lヽ.
　 : : : : : |: : :|::::ヾ.二二三二ﾝ:| : : : : : : : : | : :l
　: : : :　ｎ , ‐_''ﾆつ＼　／::|: : :|: : : : : : : : | : : ﾄ､
　: : :　/.ﾉ' r´',二ﾆ⊃＾＼::::|: :⊂ニ'_‐.、∩: : /: :}
　 : : _ﾚ′'　"_二ﾆ⊃__/::ヽ|:⊂ﾆ二_`;:.＼l: : : : :ﾊ
　／｢l　　 '´　,.ﾆﾆ⊃!　|:::::::|⊂ﾆ二_｀ ヽ　ﾄ､: :/: :;〉
　: : ヽ＼_-r ´l::::::::::::|.　|:::::::l:⊂ﾆﾆ_` ｀　 ﾉi:}＼: :"ﾍ.
　: : : : ｀フ′: |:::::::::::|　 |:::::::| : : | : :｀ト- 'ノﾉ : : ＼ : ＼

6655： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:10:49 ID:xap8EYXQ



　　 　　　　　 /'⌒ﾐヽ
　　　/⌒ﾞﾐ - '::::::::ミﾐﾞ'=- 、
　　　i:::::::ミﾐ:::::::::::::::::ミ::::::ﾐ,!
　 ,,.-':::::::::::::::::::::::;へﾍ、_;:::ﾞ=- 、　　　　　/"'' ー ''"￣
. （:::::::::::;;. !i⌒ヾ.ﾒ.ﾞ>-=、i.|⌒i::::i　　　　　ヽ,
　ヾ、::::/.{!ヾ、 ,/ /　　 ii.||;;ｺ|ミヽ、　　 　 (　　がぎぐっ・・・・・・！
　　 ):::::il⌒＼ﾞ " !　 ◎》.||_」|:::::::::ﾞミi　 　 ﾉ
　 く:::::::{i ◎　ヽu i,,__,,ノ'/ヾ.ﾉ:::::::::::::::i　　〈 　　げっ・・・！
　　 ）:::::《_　　_(　 し┐ !, =、!ﾞi:::::::::ミﾐヽ、）　　げっ・・・！
　　/:::::::::!.ﾐ''" ゝu ,-',ノi' iｺi | ﾞ'=;;:::::::::::＜ 　 　げっ・・・！
　　'-=,,_::ﾞ'i ! ﾞ''ﾆ=' イ レ" || |　　/!=-r''"〉
　　　 　 !;:ヽ（(_|__!-'"~＿,ri.|.|　 /::| 　|　,.( 　 　ごごごっ・・・・！
　　　　　ﾞ''-ゝヾ、 ,r<>┴┘!.|　/::::|　.| 7　）
　　　　　　 　 ヽ.i<>ｿﾆ￣ ﾞ"ﾉ ./:::::|　.| i　 ￣ヽ、
　　　　　　　　 ヽﾞ''"　,,.／"＼/::::::::|　| ヽ、 ./　 ﾞ'',⌒￣
　　　　　　　　　ヽ-''"　　　 　!ヽ;:::::|　| 　 ﾞ〈　　 /


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　幸い社員に怪我人は無し。社長が命と同じ位大事にしていた金庫も無事だった。
　……金庫自体は、だが。中に入っていた皇国紙幣は全滅だった。

　そして彼にとっては尚悪い事に、焼け跡から大量の不正行為を示す書類の山が見つかってしまった。
　偽造証券、偽造土地権利書、多数の脱税の証拠に、賄賂リスト（なんでそんなもん作った）。
　その他諸々の証拠品が詰まった頑丈な保存容器が、現場検証の際に地下から掘り出されてしまったらしい。
　念入りな隠匿が、却って首を絞める結果となってしまったようだ。

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6656： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:11:22 ID:xap8EYXQ




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　後から聞いた話だが、そもそも商社という看板自体が偽物だったらしい。
　その実態は地元のマフィアや、汚職軍人のマネーロンダリングを行う為の会社であったようで
　元社長の逮捕を切っ掛けとして芋蔓式に逮捕者が発生したらしい。

　さっきから、らしいらしい、と伝聞系ばかりを使っているのは、俺がその事実を知ったのは取り調べ室だったからだ。
　数ヶ月勤めていたとは言え、俺はそう言った「裏の仕事」については一切聞かされていなかったのだ。
　そういう「裏の仕事」をさせるには信用が無かったのだろうが、もしかすれば「使い易い奴」として
　知らない内に色々とヤバい事の片棒を担がされていた可能性は、……まあ、否定できない。

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　　　とりあえず洗いざらい吐いてくれる？
　　　　　　　　　　　 ＿＿_ 　 　 　 　 　 , -―― 、
　　 　 　 　 　 　 ｒ":::::::::::::::ヽ、　 　 　 /　村岡 .:::ヽ
　　　　　　　　　 ｆ::::::::::::::::::::::ﾔ　　　　 |　、　　、 ::::|　　あっ…ｴｯﾄ
　　　　　　　　　 !::::::::::::::::::::rｲ　　　 　 ヽ　 A　 .::::/　　ｱﾉ…そのｻﾞﾝｽね
　　　　　　 　 　 ヽ::::::::::::::::/ｿ　　 　 　 　 ＞ 　 ＜
　　　　　　 ＿_ ｲ二二二ﾆト、＿　　　　/　　　　　＼
　　　　　 /　　　 　 　 　 　 　 　 /ヽ、　|　|　　　 |　::|
　　　　 ./ !　　　　　 　 　 　 　 /　　ﾊ、|　|　 　 / .::/
　　　　/　|　　　　　　 　 　 　 〈_　　　ﾊ ￣￣￣￣￣￣￣￣￣／
　　　 〈　 .!　　　　　　　　　　　/＼_　　＼ 　 　 　 　 　 　 　 ／
　 　 　 ヽ/ ￣￣￣￣￣ ヽ　Y　　 ヽ＿_ノ　 　 　 　 　 　 ／
　―――| 　 　 　 　 　 　 |　 |――──────――
　　 　 　 | 　 　 　 　 　 　 |　 |

6657： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:11:57 ID:xap8EYXQ




　　　　　　　　　　 　 ／￣￣＼
　　　 　 　 　 　 　 ／　「　　へ ＼
　　　　　　　　　　 |　 （●）（●）　|
　　　 　 　 　 　 　 |　　　 ｜　　　|　　　　　　　俺なんも知らないんですけど。
　　　 　 　 　 　 　 |　　 __´___　　ﾉ
　　　 　 　 　 　 　 |　　 `ー'´　　}　　　　　.γ ￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣ヽ
　　　 　 　 　 　 　 ヽ　　　　　　 }　　　　　 ｜　だろうね、まあとりあえず分かる範囲で答えてくれれば良いから　.|
　　　　　　　　 　__,_,,.ヽ＿　　　ノｰ- ､　　　 乂＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿__,ノ
　　　　　　　　 ハ　　/ 　Ｖ又ｲ ::::〉::::::i:　
　　　　　　　　 }　ヽ 〈　　 l |;;|ﾉ　/::::::::::i 　-,,_　ああ、はい。
　　　　　 r iY'ﾉ.;;　 }::ヽ　　l|;;|　/::::i::::::::}‐　|　||
　　　　　.|| | ﾉ:::: 　 }:::::::＼|;;;ﾚ'ｰ'' ⌒.:::: ヽ |　||
　　　　　.|| | {,,;;;; .:::: ヽｰ---ｹﾄ､, へ､:::: 　 |　||
　　　　―──.::::::::::::ノ.:::/　/　　　彡}――─────
　　　　　　　　 "￣｀ﾞﾞ ''ｰ-､'ー----'


────────────────────────────────────────────

　なので正直な所、投獄くらいは覚悟していたが、実際には幾つか質問をされただけであっさり解放された。
　とはいえ流石に数日間は取り調べの為に拘束されたのだが、むしろその程度で済んだのは幸運だろう。

　憲兵隊、それも本領のそれと聞けばおっかないイメージがあったのだが、俺を担当した人は物腰も柔らかく
　色々と質問をされたり、書類のハンコやらの確認を取ったりするのにも、特に乱暴な事はされなかった。
　大体の取り調べが終わった後は世間話すらもしたくらいだ。

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6658： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:12:43 ID:xap8EYXQ




　　　 　 ヽｲf￣} 　 　 ヽ__／　　　　　∨ ﾑヽ
　 　 　 　 | 'ーｲ　　　　 ー　　　 r ´　 　 ヽ} i
　 　 　 　 {　 ´|　_,.ﾆ 　　　 　 　 !　　 　 r/ /
　　　　　　',　　｀ｰ　｀　　　　　　　　　　 _´,/　　　　いやいやごめんね、関係者全員に話聴かないと行けないからさ。
　　　　　　 i　　＿ ,.　-―=ﾔ　 ’　　　　i |
　　 　 　 　 !　｀ー　´_￣　　　 　 　 　 ｲ |　　　　　何も知らなくても、一応きっちり確認とらないとね。
　　　　　　　ヽ 　 ￣　 　 　 　 　 　 ／,ﾘ !
　　　　　　　　',　 　 　 　 　 　 　 ／　　! |　　　　　 （　思ったよりこの事件、根が深い事がわかっちゃったからなぁ。
　 　 　 　 　 　 !､　 !　　　　 ,. ≦　　　ﾉ .i　　　　　　　 言い方悪いけど何も知らないヤツまで絞ってる暇が無い、というか。
　　　　　　　　　 ≧ｰ ´￣三 彡　＿＿__ﾔi　　　　　 　 本領軍の上層部にまで逮捕者出るし、政治も軍部も大混乱。
　　　　　　　　 |￣二｀7@ヽ　 　 /-＼　r‐,ﾄ､　　　　　　揚句こんなロートルまで引っ張り出して来ちゃって、世も末だな　　）
　　　　r==r‐f´|　ヽ,//　　 ヽ,　/　 　 ＼ヽﾊ ｀ｰf＝ヽ


────────────────────────────────────────────

　……尤も、俺を担当したその憲兵（？）さんは物腰と言葉こそ柔らかかったものの
　質問をする時の眼光は、今思い出しても震えが来るほど鋭かったのだが。

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6659： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:13:42 ID:xap8EYXQ




──────────────────────────────

　ともかく、そんな流れで俺は晴れて自由の身となった。
　そして、ついでに言えば労働という義務からも解放された。
　……今月の給料振り込まれる前だったので、割と洒落になっていないが。

　加えて時刻は既に８時を回り、俺の胃袋も空腹を訴えてきている。

──────────────────────────────


　　　　　　　　　　　　　　　　／￣￣＼
　　　　　　　　　　　 　 　 　「　　 ｀ヽ　 ＼
　　　　　　　　　　　 　 　 （≡）（≡ ）　　 |
　　　　　　　　 　 　 　 　　| 　|　　　　u.　|
　　　　　　　　　　　　　　 ｜､｀__ ,　　　　|　　　　　　　　　　スーツ買ったの無駄になっちゃったな。
　　　　　　 　 　 　 　 　 　 |　　　　　　 .｜
　　　　　　　　　　　　　　　 l 　 　 　 ／_.{　　　　　　　　　　てか、どうしよ。俺、多分生活費足りないぞこれ。
　　　　　　　　　　　　　　　　ｱﾆﾆ＜／／〉、＿_　__
　　　　　　　　　　　　　　 ,./ /＼　 ／ : : : : : : ＞ : :＼　 　……最悪あれか、三食落花生バーか、ＩＡＩの。
　　　　　　　　　　　　_／ /|ｲ:::::/∨. : : :l: : : : : : : : : : :.丶
　　　　　　　　　　／. : : : :| ./｀Y / : : : 」: : : /: : : : : : : : }
　　　　　　　　　,´ : :/: : : :| ｉ::::::|/ : :／: : : ／: : : : : : : : :|
　　　　　　　 　 { : :/. : : : :|/:::::/ : : : : : : : | : : : : : : : : : ,'
　　　　　　　　/ : :,' : : : : : |::::/ : : : : : r---く´ニ＼: ヽ:ﾉ
　　　　　　　､'ｰr,_| : : : : : :|:/ : : : : :_/二ヽ　V: : : : ｀ :´
　　　　　 ／ :.／￣＞＜ :./ : : : : :/ 二 ヽ_」┘: : : ∨}
　　　　 / : : :ム　/ : : : :￣￣￣￣~ﾞ''-ゝ.」: : : : : ∨ :}
　　　　{ : : : : : :＼､ : : : : : : : : : : : : : : : :＼. : : :∨ : :l
　　　　ヽ: : : : : : : :￣"＼ : : : : : : : : : : : : : : : ／ : : :{

6660： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:14:16 ID:xap8EYXQ




─────────────────────────────────―――────

　ただまあ、それでもよっぽど切羽詰まってた訳じゃない。
　今頃、元社長や、ちょっと妙な雰囲気を醸し出していた元同僚諸君はエライ目に遭ってるだろうが、
　俺はと言えば、明日の食事の「内容」を心配する程度には余裕がある。

　……一日三食、あの栄養価全振りで口の中の水分をえげつない位に奪い取る
　ゲテモノ食物を口にしなければならない可能性には正直戦慄こそするが、飢え死には恐らくしない。
　それは『皇国』という世界に住んでいる者として、恵まれてるとすら言って良い事なのだろう。

────────────────────────────────────────


　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 /　　　　/　/.　　　 　 　 　 　∨/ 　 // ∧
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　　　/　/　　　　　　　　　　 ∨/ ′// ∧
　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 /　　　　/　/　　　　　　　 　 　 　 ∨ /　 // ∧
　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 /　　　　/　/　　　　 　 　 　 　 　 　 ∨// ′/ ∧　　　　　なんなんだろうな、アレ。
　　　　　　　　　　　　 　 　 　 /　　　　/　/　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ∨ ′' , / ∧
　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 /　　　　/　/　　　　　　　　　　　　　　 　 ∨ / ,′/ ∧　　　　「ラッカセイバー：おるたなてぃぶ」
　　　　　　　　　　　　 　 　 /　　　　/　/　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ∨ / ′//∧
　　　　 　 　 　 　 　 　 　 /　　　　/　/　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ∨// ′/ ∧　　　ブリテン王も吃驚悪堕ち！
　　　　 　 　 　 　 　 　 ／￣ヽ 　/　/　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　∨ /　/ 　∧　　 　　　　　　　　　　戦慄のブラックver！
　 　 　 　 rｒ‐ ､__＿＿_!Ｌ.　　　 /　/　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ∨/　/ / ,∧
　　　　 　 ＼､ ｀￣￣ヽ＼　`　/　/　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ゝ=- .／　/＼　センスがなぁ、こう、なぁ……。
　　　　　　　 ＼､＿＿___　＼,/ ∨　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 |　 ＿＿＿_,ｲ
　　　　　　　　　 ￣￣ ７ ＼_l!／　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 `７ﾆ= ￣ ／>
　　　　　　　　　　 　 　 ＼／　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ∠￣ ` 〃｀'´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 f二´＿＿,／´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ｀￣￣￣´




　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ／￣￣ ＼
　　　　　　　　 　 -｀ 　⌒　 ヽ､_　 　 ヽ
　　　　 　 　 　 　 ´ 　 ●） (● ）　　　|
　　　　 　 　 　 　 　 　 l /　　　　　 　｜
　　　　　　　　　　 　 　 lヽ　　 　 　 　｜　　　　　　　　……っと。
　　　　　　　　　 　 　 　 . ー- ､　　 　 |
　　　　　　　　　　　　 　 |　　　 　 　 ｨﾊ､_
　　　　　　　　　　　　 　 ≧ｭ─ｰ ´　／.......ヽ
　　　　　　　　　　　　／/Y:::ﾊ､￣／...:::::::::::...＞、
　　　　　 　 　 　 ,.＜..::/:r〉:::li　`y .::::::::/:::::::::::::::::..ヽ、
　　　　　　　　　/.::::::::/:::｛,'::::|i　 / .:::::::/::::::::::::::::::::::::::∧
　　　　　　　 　 j ::::::::::> :.{::::::l　/ .:::＜:::::::::::::/..::::::::::::::Λ
　　　　　　　　　i :::、:::〈 :::i::::::ﾚ .:::::::／::::::::::i:::::::::::::::::::::::::}
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　　　　 　 　 　 | :::::Λ:::::', :i::/ .::::::::::::::::::::::V..:::::::::::::::::::::ﾊ:i

6661： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:14:58 ID:xap8EYXQ




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　少なくともここ、本領はチバにだって明日の命すら知れないような人々は居るのだ。
　治安が良く、属領と比べれば政治や軍の警察機構も遥かにまともに機能していても
　……否、機能しているからこそ、貧富の差がはっきりと分かれるのだろうか。

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6662： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:15:13 ID:xap8EYXQ




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　……俺が暮らす、このチバの小都市は率直に言えば「平和な都市」だ。
　特産物は落花生、そして人参。
　無論、それらは生産プラントからの発生物だが、それ専門のプラントがやたらと見つかったのだからしょうがない。
　特に落花生に関しては何故か溢れ返るほどの量が見つかった為、本領軍も持てあます事になり
　結果としてチバ全体に行き渡る様にプラントが配給されたので、それを利用した加工品が大量に流通している。
　正直、過剰供給の域に達していると思うのはきっと俺だけじゃない筈だ。
　……子どもの頃からそう言った物ばかり食べていたものだから、すっかり苦手になってしまった。

　落花生と言えば、噂では品種改良されたそれらがミュータント化し、一部の未開拓地域で脅威になっているとか。
　……蔓を伸ばし人間を巻き上げる巨大落花生。悪夢でしかない。

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『恐怖の巨大落花生モンスター』

　　　　　　　　　　　／^ｰ--‐'´⌒ヽ、
　　　　　　　　 r'‐/ _, -‐ｙ'二. ‐-､.　ヽ
　　　　　　 　 {_j'/ , -‐K＿　 ｀ヽへ　 ﾍ､
　　　　　　　 く. ソ . :/ｆ⌒ヽ ヽ: .　V ﾊ_,- >
　　　　　　　_/{ {　: :{ {（Wｿ}） }: : /:　 }　 {
　　 　　　　 {　ゝゝ : ゝニﾆｿノ: :/: : :/　,ﾉ　　ｷﾞｼｬｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱ!!!
　　　　　　　ト {⌒ゝ_＞ ¨´: :／: : :ム k1
　　　　　　　｀} ｀＞　_: :二二∠: イ ' _r'
　　　　 　　　 戈 ｀r-、__,._r､__ 　 _r'´ 　 　,ｲ
　　 ‐＝=､､∠　 -‐' ｀ｰ-‐--‐‐'´└---‐',ﾉ
　　　　 　 ヾ ､ 　 　 /　 ,! |心j下ヽ--‐‐'´
　　　　　　　ヾ ､__,/ !　.,lﾞ .i｝ l'ﾞ:i_`1rf_二.ｰ-､
　　　　　 　　 ｀ｰr',lﾞ　/!　.ﾉ ,i',心ﾍ}.!{ ｀ヽ.｀ヽ＼
　　　　　　 ,.ィフ´ ,r,イ│ .|!.,,iﾐ卞 ｀ｰ- ヽ._＼ヽヽ
　　　　 ,ィ´／/ ／ 'hノ|　.||. ﾔ .　 'i、　　　￣｀ヽ}
　 　 ∠.ノノ -‐' 　 メリ|　.|!、|'　ﾞi　:Y7
　　　　　　　　 　 /　/|.　|　| `y' ﾞi　:i′ 　 ,.ｒ ー ‐- 、
　　　　　 　!ヽ　,ｲ　/ .! : :}i　|　ﾋ' ﾞi　ｷ､,　 iｖﾊｖﾊｖﾊ　ヽ
　　　　　　 ヽ〉Y′/　 |::: :',l ﾍ !、ｷ'ﾞi　:i　　` ー‐ - -､ ｀ヽ
　　　　　　　　,i'　 ｛〆!　! !ハ　|　l' ﾞi　ﾔ　　　　　　　　ヾ、ヽ
　　　　　　　　,!　　 | {{_j　 {r　〈 　l' ﾞi　:i　　　　　　　　　,ｲ　ｊ
　　　　　　　冫　 _,.ﾉ､_ﾌ 　 {　 |　 ﾋ' ﾞi　ﾔ　　　 　　　　 Y　/
　　　　　　　〉　　 く　_j　　 {r 〈 　l ' ﾞi　 :i　　　　　　　　,l　j
　　　　　　 ,i'　　 ｛　　!　　! !　Y′l' ﾞi　 Y7　　　　　　 ﾉ　 ﾔ
　　　　　　冫　 _,.ﾉ､_ﾌ　　 {　 ｲ　 ﾋ' ﾞi　 ﾔ　　　　,.ｒｰ'′　ﾉ

6663：投下間隔早すぎますかね？ ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:16:17 ID:xap8EYXQ




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　都市としての特徴を上げれば、まず、表立っての戦闘行為が殆ど存在しない。
　道端で銃を構えただけで、即座に憲兵が飛んでくる位だ。
　スカヴェンジャー達は非常に肩身の狭い思いをしながら、懐に拳銃やＰＤＷを隠し持っているらしい。

　街中には「ドラム缶」のあだ名で市民から親しまれる警備兼清掃ロボが動いており
　通路に落ちているゴミは即座に回収、処分され、不審人物や危険行為に対しては警報が入る。
　そうすれば直に憲兵が飛んでくるので、基本的に治安は非常に良く保たれている。

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　　　　　　　　　　_,..--------..._
　　　　　　　　　;(　　　　　　　　　);
　　　　　　　　　| ｀` ------- '´´.|
　　　　　　　　　|⊂⊃　　⊂⊃　　|　　＜市民皆さま方の協力で街を綺麗に保ちましょう
　　　　((__))　　,|､__　　　　　_,...--'7
　　　　　||　 ／ `--`-v--'´--''´~＼
　　　　　``=|,,,,,;;　　　　　　　;;;;;;;;;　;;; >　ｶﾞｼｮﾝｶﾞｼｮﾝ
　　　　　　 └'´|;;;;　　O　　　;;;;;;;;;;;|`'||
　　　　　　　　　|;;;;　　O　　　;;;;;;;;;;;|　||
　　　　　　　　　| ;;;; 　∧　 　;;;;;;;;;;;;|((~))
　　　　　　　　　't--､_ハ__,... ----┤
　　　　　　　　　 ｀｀||~```~~~~||~￣
　　　　　　　　　　 .||､　　　　 .||､
　　　　　　　　　／　 >　　　 <　 ＼
　　　　　　　　 <__／　　　　　 ＼__ >

6664：名無しの工員さん：2015/05/10(日) 22:16:33 ID:u.l65tV.
実家の近所くさいｗ＞特産品

6665：名無しの工員さん：2015/05/10(日) 22:16:58 ID:k5Y.HhU6
これはもはや落花生と言えるのだろうかｗ

6666： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:16:59 ID:xap8EYXQ




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　次に、これはチバの都市殆ど（開拓済みで人口の多い場所）に言えることだが、至る所に
　食糧や飲料が２４時間販売されているストアやマーケットが設立されている。
　「コンビニ」とか「スーパー」とか、千年前はそういう名前が付いていたそれらは通産省直轄。
　縮退炉からの電力供給によって夜間でも明りが灯され、行けば棚にはプラント産の食料品がきっちり並んでいる。
　他の地方からやってきた人々がまず一番驚くのが、水道水が飲める事と並んでこのストアの存在だそうだ。
　何せ、金さえ持っているなら何時だって熱々の合成コーヒーや合成肉まんが食べられるのだ……。
　因みに、売れ残った商品は回収して、またプラントにブチ込んで再利用しているとの事。

　余談だが、そう言ったストアの看板の模様。
　「帽子を被り、足が生えていて、胴体部には大きく『７』と描かれた牛乳瓶が青と緑のマーブル模様地に描かれている」
　というけったいなイラストは、かなり市民受けが悪い。
　噂では、デザインを決める際にＩＡＩという企業の画像編集ソフトを使ったらそうなったとか、言われている。

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二二二二二=l|三三三三三|l=二二二二二二|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ＼
ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ]＼￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
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6667：名無しの工員さん：2015/05/10(日) 22:17:11 ID:O4I3yHyw
酸程度で対単分子コートがハゲるならみんなやってるとは思わないか？
ドアのロック部のコートが剥がせるなら単分子ナイフで開かずの扉なんて
ありえないことになる

いちぶ最高級品の単分子刀にはコート剥離剤付のがあるけどね

6668：名無しの工員さん：2015/05/10(日) 22:17:31 ID:WMPKdQc6
落花生の品種改良でミュータント化ってどういうことなの…

6669：某所の雑談より一部設定をお借りしております ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:17:43 ID:xap8EYXQ






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　また、道路も殆どが舗装整備されている為交通量も多い。
　これはチバ全域の遺跡から、何故かバイオエタノール燃料を生産するプラントが良く発掘された事も原因らしい。
　その為、物品の流通に関してもトウキョウやオオサカ程ではないが、チバは関東圏の重要拠点とされている。
　深夜や早朝、かつて国道と呼ばれた主要道路の脇に立っていれば、多くの武装輸送トラックが走っているのを見られるだろう。
　それらはスカヴェンジャーやマーセナリーの護衛を受けながら、ミュータントや無人機械の蔓延る荒野を突っ切って行き
　そして関東圏の各所に物品を流通させるのだ。

　車が多過ぎて、偶に交通事故が彼方此方で起きている事についてはまあ、置いておこう。
　都市部の外れには、自動操縦機能を敢えて切って、法定速度超過の運転をする集団も居るという噂だ。

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三三三三三三三三三三三] ] 　 []　　[]　　[]　　[]　　[]　　|　ﾛ = = = = = = = = | || | | || |┴┐―┐
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　――|ｪ＿＿＿＿_ｪ|_| l |_|_|_|_,|.l |_l　 　 └ヽﾟﾉﾉ┴宀┴乍{ヽﾟﾉﾉｰ┴――┘　 _ ...．-‐　''"´ | 　 　 　 　 　 | |
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6670：名無しの工員さん：2015/05/10(日) 22:18:18 ID:u.l65tV.
ごちゃ混ぜになっとるｗ＞コンビニの看板

6671： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:18:31 ID:xap8EYXQ




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　交通に関しては、他にも『鉄道』がある。
　これは戦前から存在していた路線と車両が発見され、国費を投じて修復された物だという。
　現在はトウキョウからナゴヤまでを繋ぐ本線が開通しており、チバの辺りでは幾つかの駅に枝分かれする小さな路線が走っていたりする。
　これらは物資運搬や人員輸送に非常に重要な役割を持つが、同時に荒野を突っ切って走るという事から危険も多い。
　時速数十キロで走る鉄の塊にちょっかいをかけられるミュータントは流石に居ないが、線路や送電線はそうではない。
　最悪荒野のど真ん中で立ち往生、と言う事もあるのだ。
　乗車用切符が割高である事も相まって、これを利用するのは富裕層から中流層に限られている。

　最近では車両自体に緊急時のエネルギー装置を積んでいたり、或いは銃火器が積まれていたりと言う事もあるとか。
　鉄道の生命線とも言える駅を守る特殊な人員として『鉄道警察』なる人々も居るらしい……。

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6672： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:18:47 ID:xap8EYXQ




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　そう、そんな経済事情ならば、富裕層と呼ばれる人々が比較的多くなるのだ。
　多くは子どもを私塾や公立学校に通わせているし、職場の休日（あるのだ、恐ろしい事に）には
　家族連れ立って歓楽街に繰り出している光景が、良くローカルニュースなどで放映される。
　偶に、某所にある巨大な競馬場跡地では娯楽としてバイオ・サラブレッドのレースが扱われていたりもする。
　これらの「賭博」もこの都市の重要な財源になっているらしい……。しかも戦前からだそうだ。

　その分というか汚職や横領といった後ろ暗い取引もまた多く行われている様だ。
　これに関しては実体験がある為、否定出来ないのが悲しい所である。

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6673： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:19:10 ID:xap8EYXQ




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　その他、元ショッピングモールだったり、或いはなんらかの娯楽施設であった遺跡が
　幾つか完全に解放され、調査の上で問題無し（そして価値のある物も無し）と判断されれば再稼働する事もある。
　俺も何度か、整備された元遺跡を再利用した、大型のマーケットを利用したことがある。

　もう十年近く前になるが、初めて足を踏み入れた時には人込みの多さに圧倒されたものだ。
　当時はまだ今ほど遺跡の解放や流通は盛んではなかったが、それでも凄まじい活気があったと覚えている。

　遥か昔に活躍していたという、良く分からないマスコットキャラクターのグッズは流石に買わなかったが……。

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　　　　　　　　　 `iﾄ--彡　　　　　　　　　 　 | ,　―l" |　　∧ | ! :
　　　　　　　　　　　≧メ､　　　　　　　　　　 乂＿_ﾉ /　／　| ! :
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　　　　　　　　 _iﾊ　　　　　　　l　　　≧┤i-|　l| |"　　　　 　 i′
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　　　　　　　l| !　　　　　　〕、　　　　　　　　l＿い　Li_/　　l|
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6674：名無しの工員さん：2015/05/10(日) 22:19:17 ID:k5Y.HhU6
そらＩＡＩのソフト使ったらそうなるわｗｗ

6675： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:19:59 ID:xap8EYXQ




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　遺跡についても同様の事が言える。
　一部の高等級遺跡を除き、都市部に近い遺跡はその殆どが完全に狩り尽くされ「枯れて」いるそうだ。
　チバ全域を見ればまだまだ手付かずの遺跡は多いのだろうが、少なくともこの周辺はそうではない。
　その為、「金を持って暮らすには良いが、スカヴェンジャーとしては魅力を感じない場所」と言われているらしい……。

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『あるスカヴェンジャーの談』

　　　　 》　f77ﾊ　 ∨/≧==彡//ノ 　 《ニニニl|　　　　　　ﾄ
　　　 　｀7 V//}　　∨////厶イ==ﾐ 　 iニニニ|　　　　　　|∧
　　 　 　 ⌒i￣ ＿＿￣￣´ 　 》//∧　lヽﾆﾆﾆl|　　　　　　|/∧
　　 ﾄ　　 　 ∨ .//|　ﾄ.　{7∧ ∨///i|　∨＼ニゝ ＿＿ 　 |　 ∧　　　　 実際治安は良いし、住み易い所ではあるよなー。
　　 |∧　　　 ∨//|　|∧ ∨∧ ∨//l|　 ｉ}///777{厂三{　 |　 /∧
　　 |/∧　　　 }ヽ/|　|/∧ ∨∧ ∨/l|　 ﾘ　 }////|∧三≧|　 　 ∧.=　　ただ、俺らみたいなスカヴェンジャーにはなんというか
　　 |　 ∧　　､|__i/|　|//∧ 》/∧仆ー=彡'　'/// l|/∧三 i|　　　　三
　　 |　 /∧　　≧彡. 》====≦///　　　l　i　'//三|　 ∧三|　　　　三　　刺激が足りないってのか、……居る意味が無いって言うのか。
＼　|　 　 ∧イ三／三》 ∨////　　　　j　ｌ //三 i|　 /∧ .乂＿_ノ三
/∧.|　 　 /∧.／三 ィ/∧∨///　　　 /　'//三三|　 //∧三三三三




　　　　　　　　　　　　　　　{ﾐﾚ'"´.　,..　¨¨｀,ｨ;;彡.
　　　　　　　　　　　　　　　{ﾐ!. i i::i l.:::! l:l .l:! l;;彡
　　　　　　　　　　　　　　　 iﾄ､i i:::iﾉ:::l/::l/::!ﾉ:::|
　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ入　　　　　｀VⅥ 　 　 　 　 　 /l　/l　　　　 開拓時代にはそれこそ大量にスカが出入りしたらしいけど
　　　　　　　　　　　 ﾄ､　　　　`1 ﾐヽﾆﾆ彡'´　L､､､,,_　　　_./　ﾚ' ..!
　　　　　　　　　ﾄ､.　!　Vl ,..ィ´.:j! ',::,,,,,/ ,::′ ,' `ヽ`ヽ`Y´.:./l　 ｀`ヽ　　　 それももう大分昔の話だって聞くからなー……。
　　　　　　　　　|　ヽ|　〃／.:.:.:.j!...',;,,/ ,::′,,,,,........ﾘ ﾉ.:::l　/ .l.:.:.:.:.／ﾄ､
　　　　　　　,.ィ´ヽ ﾉ／ /　　;;;'''ﾞﾞﾞﾞ｀,.''''ﾞﾞﾞ´　　　　{: :i i!.::! ゝ '　／.ィ´ `ヽ　落ち穂拾いすら出来ない遺跡って、それはもう遺跡って言わないし。
　　 　 　ﾄ､/　ﾄ､, ´/　./:::''　 .人 ..:;;′　.人　　　.:i: :.! i!:::!.:.;.ィ彡'´ ;;　　 .ﾞ､
　　　　　l ﾊ　 V.:.:.i　 / ,:: 　 ｀Y´.;;;′　｀Y´　　　.!,..ィ"´`ヽ〃;;;:;:;:;:;:;;:;ﾞﾞﾞ´: .
..　 　 　 l/.::',.:./.:.:.:j. /''"´　　 ....;;;;;　　 人　　　　(,,､､`Y.. ):::V´　　　　　: : :
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6676： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:21:19 ID:xap8EYXQ




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　なので多くのスカヴェンジャーは遺跡を求め、近隣の都市へと移って行ってしまうことが多い。
　一応、ナラシノには旧軍が使っていたという広大な駐屯地が遺跡化していると聞くし、
　他にも、カモガワの方にはミュータント化した水棲生物が多数生き残っている施設や
　フッツには陸棲ミュータントが跋扈する広大な牧場跡も存在しているらしい……。

　個人的に知る限りで一番「ヤバイ」と聞くのは、ウラヤスにあるある巨大テーマパーク跡地の遺跡らしいが。
　……あそこはむしろオカルトじみた噂ばっかりを聞くので、正直半信半疑だ。

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灸灸灸灸灸灸""""|¨灸灸-― '''""~´　 ヾ灸灸爻爻爻爻爻x

6677：名無しの工員さん：2015/05/10(日) 22:21:36 ID:k5Y.HhU6
ふなっしーｗｗ

6678： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:22:02 ID:xap8EYXQ




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　ともかく、長々と前置きをしたが、結局の所この都市は「安全」で「平和」である。
　……必要最低限の金銭と、住む場所と、仕事さえ持っていれば、だが。

　それを得る事が出来なかった人々は、皆裏路地で肩を寄せ合い細々と暮らしている。
　一番残酷なのは、平和故に「スカヴェンジャーになる」という選択肢すら取り辛い事だろう。
　なにせここら一帯にはまともな遺跡がなく、移動には車や鉄道が必要なので金がかかる。
　そしてそんな金があったらまともに仕事をすれば良いだけの話で……、と延々と続くのだ。

　この地を徹底的に叩いて均した事が、結果的に「こぼれ落ちた人々」を作り上げてしまっていた。

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6679： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:22:16 ID:xap8EYXQ




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　故に、俺は恵まれているのだ。
　職を失って尚、明日の食べ物の「内容」に悩む位の余裕がある。
　その事だけは自覚しておくべきだし、そうである事に感謝するべきだろう。

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6680：名無しの工員さん：2015/05/10(日) 22:22:19 ID:lErouhQ6
>>6669
千年経っても滅びてないのか珍走団ｗ

6681：名無しの工員さん：2015/05/10(日) 22:22:22 ID:64umWhVE
夢の国でスカベンジとか想像するだに恐ろしい

6682：名無しの工員さん：2015/05/10(日) 22:22:37 ID:k5Y.HhU6
ウラヤスにある遺跡ってまさか某夢の国・・・

確かにあそこならオカルトめいたものが存在していても可笑しくないからなぁ

6683： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:23:02 ID:xap8EYXQ




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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ─-ミ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　､＿ 　 ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ｰ)　 （ー）
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　　　　 　 　 　 r‐ぅ__　　　 　 l　　￣　｀
.　　　　　 　 （⌒　厂　 　 　 八　　　　　　 ｲ　　　　　　　――やめよう。
　　　　　　 　 ｀　´　 　 　 　 　 ｱﾆ＜／／　〉、＿_ __
　　　　　　　　　　　　　　　 ,./ /＼　 ／_ ＜ : : : ＞ : :＼
　　　　　　　　　　　　　_／ /|ｲ:::::/∨. : : :l: : : : : : : : : : :.丶
　　　　　　　　　　　／. : : : :| ./｀Y / : : : 」: : : /: : : : : : : : }
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　　　　　　 ／ :.／￣＞＜ :./ : : : : :/ 二 ヽ_」┘: : : ∨}
　　　　　 / : : :ム　/ : : : :￣￣￣￣~ﾞ''-ゝ.」: : : : : ∨ :}
　　　　　{ : : : : : :＼､ : : : : : : : : : : : : : : : :＼. : : :∨ : :l
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6684： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:23:40 ID:xap8EYXQ




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　その人の人生は、その人だけの物だ。
　どれだけ苦しくても、どれだけ地獄の様に救いが無くても。

　だから俺が、失職のショックや同情心で「実際に苦しい人々」と自分を重ねる、なんて事はしちゃいけない。
　そこから「比較」まで行ってしまえば、それはもう最低だ。
　そもそも、どれだけ慈悲めいた物を心に浮かべた所で、結局の所、俺は何もしてやれない。
　金も無ければ力も無い。数日前に職を失った、何の価値もない男には人一人ですら救えない。
　もしも「共感」が許される人が居るのだとすれば、それは心からの行動で彼らを救おうと動く人だけだ。

　少なくとも俺は、そうじゃない。
　だからこそ、俺と彼らは違うのだと、俺はあの日から線引きをしたのだ。

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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 八从人从八__}
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　　　 　 　 　 　 　 r-‐‐-　、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ　　　 /.|/
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　　　::: : {¨', 　 　 ({.:::::::::::::::::}　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 ／::::::::::|／￣｀‐---‐´￣＼:::::::::}
　　　::: : }_'ﾉ　　　　ヽ:::::::::::/　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |::::::::::::::　|.　　　　 　 　 　 /ヽ:::::|
.　　　=r'〉　＼⌒　___r==┐　　　　　　　　　　　　　 ,-‐‐、　　ゝ::::::::/ヽ|　　　　　 　 　 /　　∨
　　　　|¨￣＼ v ￣　　￣￣＼/⌒ヽ/⌒ヽ/⌒ヽ . {:: : / }⌒'.__r=={ 　 |　　 　 　 　 　 |　 　 |ニ､
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　　　　　　　7￣|　　　　　　|____｝::::::::::::::::::::::::: : ∧　　　 　 |￣ |　}. | 　|　　　　　　　　　|　　|
. 　 　 　 　 /＿_|　　　　　　| |　|:::::::::::::::::::::::::::::::| |　　　　　{　　|　}. | 　|　　　　　　　　　|　　|＝＝
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　　　　======={.　 　 　 　 |/ /.:::::::::::::::::::::::::::::: : |　　　 〔二二}i:｣|. |　 |　　　　　　　　　|　　|二二

6685： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:24:48 ID:xap8EYXQ




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　――そう。
　あの日本当の善意と行動によって闇の中から救い出された時から、その線引きを俺は守ろうとしている。

　……かつて孤児だった俺は、その線引きを持って「日の当たる世界に生きる資格」としているのだ。
　そうでなければ、俺を救ってくれた人にも、俺がそうやって生きている事も、申し訳が立たない。
　そんな事を考えてしまうのだ。

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6686： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:25:40 ID:xap8EYXQ




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　……なのに、ふとした事でその線引きをあっさり越えてしまいそうになる。
　自分はとことんまでさもしく、女女しい男なのだと再認識する事になってしまった。

　俺は視線を逸らすと、思考を切り替える事に努めた。

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.　　　　　　 　 　 ── ､
　　 　 　 　 ／　 　 　 　 ヽ
. 　 　 　 　 i.「　　 へ　　　 i
　　　　　　（ー） （ー ）　　..|
　　　　　　 |　　|　　　　　　i
　　　　　　　　 _｀__　　　　.λ　　　　　　　　　　いいさ、ゲテモノ落花生バーだろうが、ピーナッツバターパン（無糖）だろうが
　　　　　　　ヽ　　　 　 ／/ハ
　　　　　　　_...｀.,ー　´.／./: : i:｀: ､ ＿　　　　　超ファットケーキだろうが、食えるだけでも有り難いっての。
　　　　 r ':´: : :./:.! .><　 ,' : : i: : : : : : : :>=､
　　　　 |: : : : :/: :i/iiiii!＼i: : : i: : : : : : /: : : :.ヽ　……マーケットに行って、適当に買って、明日はそれが朝食だ。
　　　　∥: :i､/: : i　iiiii　 i: : : l: : : : : :/: : : : : : ’,
.　　　　|:! : i:ヽノi.　iiiiii　iヽ=:'´:i : : : i: : : : : : : : :’,
　　　　 !ヽ: !: : :i;　.iiiiii　l: : : : /: :__=====三三三ﾆ==-
　　　　 i: :i i: : :!;　.iiiiiii　l: : ___!三三三=＝＝ - ''´:ヽ
　 　 　 `i :i:i: :.!;;.　iii!!!!-=三=-: ':´l: :ヽ: : : : : : : : : :'λ
　　　 　 |: i:i: :i;;;;, .ｰ- =三=´ : : : : : : ｀:ﾊ: : : : : : : : : : '.,
　　　　　|: :i!: i;;;;;; 　 |　 ',: : i: : : : : : : :.リ:ヽ: : : : : : : : : :.’,
　　　　　|: i: /;;;;;;;.　 i　　',: i: : : : : : : : :i: : : i＼: : : : : : : : :.v:─:─: ､
　　　 r ´｀i ﾘ;;;;;;;;;;　 i　　 v: : : :､: : : : :l::ヽ::ヽ_.i: r: : : : : : : ∨: : : : : :＼
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　　　/: (;;;;;　／　 ヽﾘ　、　ヽ: : : ヽ: : : : : : : /: : : : : : : : : :／: : : : : : : : : λ
　　　￣|´: ｀ヽ_　　 ｛ ヽ 　 　 ＼: : : : : : :.／: : : : : : : : :／_: : : : : : : : : : : : :
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　　 　 i;r '´ ノ: :`:i-ﾐ三三三三=-;': ´: : : : : : : : : ／　　　　　　　　 ｀ 'ヽ :_:
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　　 ノ: : : ∧: : /: :i: : : : : :|: : : : : : : `iヽ ´

6687： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:25:56 ID:xap8EYXQ




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6688：名無しの工員さん：2015/05/10(日) 22:26:23 ID:.86H9A1A
線引きか

6689：名無しの工員さん：2015/05/10(日) 22:26:36 ID:k5Y.HhU6
ピーナッツバターなのに無糖なのか

6690： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:26:46 ID:xap8EYXQ




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6691： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:26:59 ID:xap8EYXQ




























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6692：名無しの工員さん：2015/05/10(日) 22:27:05 ID:u.l65tV.
>>6689
海外はむしろ無糖が多い

6693：名無しの工員さん：2015/05/10(日) 22:27:09 ID:wi2mvMno
あっ

6694： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:27:49 ID:xap8EYXQ




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　　　　　　 ',　　　　　　　　　　　　　　 ,'　　i.　 　 　 　 /.:.:.:.:.:.. . . .
　　　　　　 丶　　　　　　　　　　　　　/　　j　　　　　　{.:.:.:.:.:.:.. . . :　　　　　――え、……あ、何？
　　　　　　　ヽ　　　　　　　　　　　 ,.'　 　 ﾊ　　　　 　 i.:.:.:.:.:.. . . .
　　　　　　　　 ｀'-､_　　　　　　_,.-'´　　ノ　　　　　 　 .i.:.:.:.:.:.:.:. . .　　　　　 なんで、……えっ？
　　　　　　　 　 　 　｀ﾞ''ｰ-‐'''"´　　　イ　　　　　　　　　V.:.:.:.:.:. . .
　　 　 　 　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ゝ.:.:.. . .
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　　　　　　　 　 　 U 　 　 　 　 　 　 　 /:.:.:.. . .
　　　　　 　　　　　　　　　　　　　　　　ゝ .:


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　血。
　血だ、血が、さっき覗きこんだ裏路地にたっぷりとぶちまけられている。
　そして、その代わりに確かに居た筈の数人のホームレス達が、消えている。

────────────────────────────────

6695： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:28:16 ID:xap8EYXQ




────────────────────────────────

　否、違う。
　彼らは居なくなった訳じゃない、ただ姿形を変えてしまっただけだ。
　ほら、そこにあるじゃないか、手が、……手だけが！

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　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 心　　∴;．゛;．:.　　 　 　 　 /
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ㍉(　 炸　　/k 　 仏.../
　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ㍉ ﾏﾑ,ｲ7 　　リ 　 紗′
　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ∴ﾐ　 )圭抄　　〃　　/′
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 寸圭|{:゛∴;．: 　〃
　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 以{　 ﾏﾑ心、∴ﾊ/淤{　　　　　 ＿_　　会ｭ｡
　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ㍉ﾑ　 )圭圭才´)圭ｱ.　　　　　 `寸ﾐ､　∴;．゛;．　心.ﾞ／
　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 _　　　＿.　Ⅵ　 Ⅵ圭ﾘ´　 }ソ　 　 　 　 　 　 ㍉ｭ 　　r劣}
　　　　　　　　　　　　　　　　ゝ-､＼ゝ-.､.ﾞリ　 :以Ⅳ:゛;．゛;. 　 　 　 　 ∴;．゛）圭㍉　￣　::゛;．゛
　　　　　　　　　　　　　　　＿　　＼＼__.〉 .ゝ'..ﾞⅥ7　　　　　　 　 　 心､ 　　 ⌒炸ム 　　守ﾄ､
　　　　　　　　　　 　 　 　 ゝ . ｀ヽ　.).　 　 　 　 〃.　　　　　　 　 　 寸圭≧ｭ≦圭圭掛,　弋代
　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＼ ´.　　　 　 ＿_　　会ｭ｡.　　　＜....⌒`寸圭才㍉⌒¨㍉ﾄ､ ⌒㍉
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼ 　 　 　 `寸ﾐ､　∴;．゛;．　心　　　　　￣⌒`　 　　　㍉､
　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ヽ　　 　 　 ㍉ｭ 　　r劣}
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 }　　∴;．゛）圭㍉　￣　::゛;．゛
　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 _.／.....心､ 　　 ⌒炸ム 　　守ﾄ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ゝ--=　寸圭≧ｭ≦圭圭掛,　弋代
　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ⌒`寸圭才㍉⌒¨㍉ﾄ､ ⌒㍉
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ￣⌒`　 　　　㍉､

6696： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:29:03 ID:xap8EYXQ




　　　　　　　　 　 　 　 │　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 / : : : : l
　　　　　　 　 　 　 　　 { 　 　 　　　　　　　　　　　　　/: : : : : :.|
　　　　　　　　　　　 　 ﾉ　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 /: : :＼､: ::|
　　　　　　　　　　 　 /　　　　　　　　　　　　　　 　 /:u: i{＼li|: :l
.　　　　　　 　 　 　 /　　　 　 　 .: : ∧. 　 　 　 ｕ / : : :. ､○ﾍ j
　　　　　　 .----- '- 、　　　 　: : /: :}　　 　 　 . : : : : : ::｀^: r'´
.　　　　　 /:: :: :: :: :: :: :＼　 　 　:/: :/ 　 　 　 /: : : : : : :ij : :｜　　　　し、死んでるのか……？
　　　　　/::_::_::_:: :: :: :: :: ::＼ 　 /: : {　　　u　/: :_:_.:.:.: : : : : ::.､
　　　 ／:: :: :: :: ＼:: :: :: :: :: ::＼{: : :∧:　　　/: :{(⌒ ､ : : : ､::./　　　　 皆、こ、こんな、バラバラになって……！
　　∠::__:: :: :: :: ::　＼: : : : : |:.:.:＼//∧: 　/: : : :＼ヽ＼_/｀´
　 /:: :: : 二ﾆ=-:: :: :: :: :: :: ::.|::.:.:.:.:.＼/∧/: : : : : ､: }⌒´
／:::∠二二二ﾆ=- ､:: :: :: :: |:.:.:.:.:.:. : Χ∧: :u: : : /´
:::／::／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:＼:: : : |:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.＼:.､ : : /
:: :::/::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. : ＼:::| .:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:Χ￣


────────────────────────────────────

　前に一度だけ、深夜放送で流れていたのを見てしまった、スプラッター映画よりも性質の悪い光景。
　あまりにも現実離れしたそれを、最初俺の脳味噌は現実だと認識できなかった。

────────────────────────────────────

6697： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:29:32 ID:xap8EYXQ




────────────────────────────────────

　だから、俺は鼻腔に生々しい、温度すら含んでいる程の濃厚な血液の匂いを感じた時
　ようやくの事で、それを現実に起きている事だと、受け止めた。
　――一瞬にして、複数名の命が永遠に奪われたのだという事を。
　……こぼれ落ちた人々は、ついぞその命を誰にも救ってもらえなかったのだ。

────────────────────────────────────


　　　　　　　　　　　　　　　　　　,　-‐―　‐- 、
　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ／　　　　u　　　ヽ
　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ＿'　　u　　　　　　　　i
　　　　　　　　 　 　 　 < ＿　＼　　　　　　　　　 i
　　　　　 　 　 　 　 <＿＿　＼　＼　　　　　u　 i
　　　　 　 　 　 　 <＿＿　＼　＼　ﾍ /⌒/　　./
　　　　　　　　　　 └--ﾐ ヽ、＼　-　＼　|　　./
　　　　　　　　 　 　 /　　 丶　　- 　 　 　 〉／　　　　　　　！！！！
　　　　　　　　 ,.-／| 　 　 ( ＼　　　u　　!
　　　　　　 ／ |　＼ヽ 　　 ＼_ヽ　　　　　{　　　　　　　　　 ――う、っぷ
　　　　￣<　　 !　　`＼　　　、ﾍ　　　u　..> 、
　　　　＿ ＼ 　 !　　　 > ー-- イ＼　　.∠／ヽヘ　　　　　（……いや、待て！　吐くな！）
　　　　!　￣￣　ヽ　／{　　)＼　|　..＼(⌒)　　 ﾉ　＼
　　　　　　　　　　 ＼　/⌒＼　〉　　　ヾ、　／　 　 　＼
　　　　　　　　　　 　 ＼　い　/　　　　＼／ ＼(

6698：名無しの工員さん：2015/05/10(日) 22:29:33 ID:dbbjZV0s
>>6692
ほんとにバターなんだな
そりゃ甘くしたいなら上から砂糖降れば済むわけで、そう考えると理解できるわ

6699： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:29:56 ID:xap8EYXQ




────────────────────────────────

　途端に腹の中から競り上がってくる物をなんとか堪え切れたのは、
　無残な姿になった彼らに対する遠慮とかそんな綺麗なもんじゃない。
　彼らに対する悲しみは一瞬で消えている。
　それは極自己中心的な、防衛本能に基づく判断だった。

　どれだけ現実離れした現象でも、起きた事には必ず原因がある。

　――つまり、これをやった奴、或いは何かが存在していて、
　そしてそれは今俺の傍に居る可能性が非常に高い！

　そう自覚した瞬間、俺の脚は走り出していた。

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＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 __　　 .へ
.:.:.:＼　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 {_. イ:i: ＼/　　ヾ:
.:.:.:.:.:.:ヽ　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 /^{:i:i:i:i:i:i:i:i:i:＼　　 vﾍ
.:.:.:.:.:.:.:.:.:., 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ／.i:i:i:i:i:i:i:i:i:､:i:i:i:i:i＼　 V:ﾍ
.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.＼　　　　 　 　 　 {　／:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i＼:i:ヽ:∧｀∨∧
.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.＼　　　　　　 /{/:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i: ／^ヾ＼ﾊ^ヾ　V:ハ
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.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. .:. . : .:i:i:i ／;
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6700： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:30:27 ID:xap8EYXQ




　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /＼
. ／　　　　　　　　　　 　　　　　 　 /　　 ＼
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　　　　　　　　　　　　　_,,,,..,,_
　　　　　　　　　 ,. -''"´　 　 ｀ﾞ''-､　　　　　　　U
　　　　　　　　,."　　　　　　　　　 ｀ヽ.　 ヽ＼
　　　　　　　/　　　　　　　　　　　 　 ｀、 　Y､
　　　　　　 ,'　　　　　　　 　 　 　 　 　 i.　　| 〉
　　　　　　 !　　　　　　　◎　　 　　　　l　　i　　 　 　 　 ／.:.:.:.:. . . . .　（　逃げる！？　どこに、どう逃げればいい！？　）
　　　　　　 ',　　　　　　　　　　　　　　 ,'　　i.　 　 　 　 /.:.:.:.:.:.. . . .
　　　　　　 丶　　　　　　　　　　　　　/　　j　　　　　　{.:.:.:.:.:.:.. . . :　　 .（　そもそも何に追われるのかすらも分からない　）
　　　　　　　ヽ　　　　　　　　　　　 ,.'　 　 ﾊ　　　　 　 i.:.:.:.:.:.. . . .
　　　　　　　　 ｀'-､_　　　　　　_,.-'´　　ノ　　　　　 　 .i.:.:.:.:.:.:.:. . .　　　（　起こった事をどう説明する？　どこに説明すればいい？　）
　　　　　　　 　 　 　｀ﾞ''ｰ-‐'''"´　　　イ　　　　　　　　　V.:.:.:.:.:. . .
　　 　 　 　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ゝ.:.:.. . .　　　 （　――知るもんか、今はとにかく足を動かせ！！　）
.　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/
　　　　　 　 　　　　　　　　　　　　　　　　 /,
　　　 　 　 　 　 　 l　 　 　 　 　 　 　 　 /.:.:.:. .
　　　　　　　 　 　 U 　 　 　 　 　 　 　 /:.:.:.. . .
　　　　　 　　　　　　　　　　　　　　　　ゝ .:


─────────────────────────────────────

　その時の俺の行動は、半ば反射的なものだった。
　今まで考えていた事なんて全部すっとんでいたし、今後の事を思考する余裕なんてない。
　だから冷静な判断なんて出来やしなかったし、正しい対応なんて一切分からなかった。
　俺はただ一重に恐怖に駆られ、その場から逃げだそうとしただけなのだ。

─────────────────────────────────────

6701： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:30:49 ID:xap8EYXQ





　　　　　　　γ ￣￣￣￣￣￣￣￣ヽ
　　　　　　　｜　……オヤオヤ　　 　|
　　　　　　　 乂＿＿＿＿＿＿＿＿ノ




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　だから、そいつが目の前に現れた時。
　俺は、身じろぎ一つ出来なくなってしまった。

──────────────────




　　　　　 　 　 　 　 　 　 V/////　 　 ∨'///';;;　 ヾ/ゝ､
　　　　　　　 　 　 　 　 　 V//'"::..　 　 }///! ,;;;;,　　 ）//　　　　　　　 /l　　 　 　 .,ｲ
　　　　　　　　　　　　　 　 ﾉ//ゝ:::::::..　ﾉ'//∧;;::::;,　　,;'′　　　　　　 //　 　　 　/ム-―７
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　　　　　　　　　　　　 　 　 ヾ⌒''"　､ .l//ゝ;:　　　:::;;'　　　　　　　 //　　　　　/'-‐ '7/. ,ｲ,ｲ ,ｲ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ヽﾘ'　'';,.　　　 ',　　　　　　　 ､二二フ　　　　// 　ﾚﾚ //
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 く/ﾊ 　 '';,　　　 ,　　　　　　　　　　　　　　　 /'　　　　/'　 /l　　 　 　 .,ｲ
　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　.)'∧ｲ　'';　　　,　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　//　 　　 　/ム-―７
　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 "ヾ'､　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　 / ﾆﾆフ　　/∠ニ７/
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　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ,ヽ::.　 ::::::::::::::{　　｜　随分ト怯エキッタ顔ダ…… 　　 .|
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6702： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:31:10 ID:xap8EYXQ



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.　　　∨ 　 :|/≠ミ:、/⌒ヽ///／　 　 .......＿..∨//////
　　　　ヽ 　　x 斗=八.／´＼_ ﾆ=＜¨￣{:　　|:￣ミメ///
.　　　 　{乂/{/ヽ.}///＼／　　　 二ﾆ≠|: 　 |:i―-＜＼
.　　　　 乂//ー='/////　　 　 ＿＿ 　 乂_丿|: 　 　 ＼
.　　　 　 　 ヽ'/////// 　 r‐く/¨¨¨＾ -―――-　 ..／>　　《……ソンナニ、今ニモゲロ吐キソウナ位怖ガラナクテモ良イダロウ》
.　　　　 　 　 ∨/// /　/　}厂 -=ｧ　　　 　 　 　 ／／
　　　　　 　 　 ∨/Y＼/　　 └＜　 ..　 -――‐/〃　　　　 《マア、落チ着キタマエ……》
　　　 　 　 　 　 ＼:{＼）　 /　　　／　　............. ﾉ {{≠⌒
　　　 　 　 　 　 　 ｀＼　 /　　／　　. : : : : :／:∨j-‐=ﾆ　　 《ソシテ、出来ル事ナラ二ツ、質問ニ答エテクレルト嬉シインダガ……》
　　　　　　　　　　　　　＼.　 / 　 /: : : : :／: : : :{::{
　　　　　　 　 　 　 　 　 ﾉヽ _　　{ﾆ=‐: : : : : :／:}:jﾆ=-‐
　　　　　　　　　　　　／////∧ﾆ=--=ﾆ二彡..:::lﾘ　＿_
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'////////////////////////ﾊ＜＞＜⌒Y/{　／￣

6703： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:31:29 ID:xap8EYXQ




────────────────────────────────

　『そいつ』は、随分と落ち着きはらっていて、そして穏やかな声で言った。
　まるで長年の友人に語りかけるように、ゆっくりと……。

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　　　 /::ヽ. 　 ｢::::l /}　　／:::/ /´::::/　　　　　/´::::> ,.-.､_　 　 　 　 __,,..、
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　　　　 V:::::l　／::::}. 　 l:::::!ヽ一'　l／ 　 /::::::<　└-' 〈_:/　　/:::::／/:::::::/,.ﾍ.　 ／:::::/
　　　　　Ｖ:::ﾚ::::::::ｒ'　　.l:::::l　　　　　　　/:::;へ::::＼　　　　　 /:::::<　 ー-'<::／／:::::::/／:ヽ
　　　　　 .';:::::::::／　　 ;:::::└‐:::ｧ　　　　∨　　丶;::::>.　　　 ,'::::;ヘ::丶、　 ´ /::::::::／':::::::／
　　　　　　.';::::〈　　 　 !::::;_:::::::/　　　　　　　　　　｀　　　　 レ'　　 ｀¨　　　/:::::::< ヽ;;／::::>
　　　　　　 ヽ::::〉　 　 |::/　￣　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/::::;::::::::＼　ヽ'
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　　　　　|: ∨ヽ 　 　 　 　 　 V∧___V/////＼V/∧
　　　　　|:　∨∧ 　 　 | 　 　 |/∧　:}ｘヘ.///∧//∧
　　　　.　 　 ∨∧　 ／}＼　　＼/ノ´　iヽ∨//∧}ミメ
　　　　.　∨{　ヽ∧/|　:|/ノ　　　　　 　 Vﾊ＼///＞ミ ＼
　　　　{ヽ ヽ＼（///＞く　 　 　 　 　 　 ∨＼∨/////＞x
　　　　.Vﾊ　∨} ￣　　　　　　 　 　 　 　 ＼///////////＼
　　　　. ∨＼}x　　 ∧　　　　　　　　　＿_彡X:＼////////∧
　　　　　 ∨＼j 　 /,∧＿＿_　／Ｌ,.斗￢=ミ､ ＼∨///////∧　　《一ツ、君ハ『引力』ト言ウ物ヲ信ジルカネ？》
　　　　　　∨ﾊ　　{///////　//Y/　 しＪ .ﾉ/　.ハ∨////////
　　　　.　　 ∨}〉　.Ｖ////:」　 ＼{ ｀ニニ,彡'　ノ/∧∨///////　　《今、ココデ君ト私ガ出会ッタ事ニ意味ガアルト……》
　　　　.　　　∨ 　 :|/≠ミ:、/⌒ヽ///／　 　 .......＿..∨//////
　　　　　　　　ヽ 　　x 斗=八.／´＼_ ﾆ=＜¨￣{:　　|:￣ミメ///　　《ソシテ、モウ一ツ》
　　　　.　　　 　{乂/{/ヽ.}///＼／　　　 二ﾆ≠|: 　 |:i―-＜＼
　　　　.　　　　 乂//ー='/////　　 　 ＿＿ 　 乂_丿|: 　 　 ＼　　《……先程ノ光景、アレヲ『観タ』カ？》
　　　　.　　　 　 　 ヽ'/////// 　 r‐く/¨¨¨＾ -―――-　 ..／>
　　　　.　　　　 　 　 ∨/// /　/　}厂 -=ｧ　　　 　 　 　 ／／
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6704：名無しの工員さん：2015/05/10(日) 22:31:58 ID:k5Y.HhU6
>>6692
そうなのか。知らんかったわ・・・

6705： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:32:08 ID:xap8EYXQ




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　　　 i＿」 　 　 　 　 'L_」 　　　　　　　　　　 i＿」　　　　　　'L_」
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　　「`L_　'ー-' く_/　　　 '!　　Lニ＿｀''　　「`L_　'ー-'　　`ー'
　 　i　　｀`゛''ー、　　　　 .'!　　,、＿＿7　　i　　｀`゛''ー、
　　 |　 l｀￣｀'' 　　　　　 　1　 |　　 　 　 　 |　 l｀￣｀''
　　 'L_」　　　　　　　　　　 i＿」　　 　 　 　 'L_」

　　　　　　　u　　　　　　　　　　　 　 　 ',
　　￣ﾞ`ｰ-.､　　　　　u　　;,,;　　　j　　　 !
　　　J　　　ﾞ`ｰ､　　　"　;, u 　 　 ﾞ 　 u l
　　　　　_,,.. -─.ゝ､　　　;, "　;;　　　_,,..._l
j　　　／　　 ,.- ､　 ヾヽ、　;; ;;　_,-＜　　|
　　　:　　　　､・丿　　￣≠乂ｲ´,-､　ヽ　l
　　　 ＼_　　　 _,,......::　　　´ﾞ;､　`¨　/　 .!　　　　　な、なにを、言って……！？
　u　　　　￣￣　　彡"　　　 i 　￣｀　　 l
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　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 i 　 　 　 i
　　　　　　　　　　　　u 　 　 　 i　　　 . i




　　　　　　　　 　 　 　 ,.､　／:〉
　　　　　　　　　 　 ／::;ﾉ'´／　　,. -ｧ
　　　　　　　　　／::::／／::/　／:／
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　　　　　／ヽ-‐:':::::/＼ﾞ／:::;.' ／/7／::/,.、
　　 　 ノ:::::::::::::::::::::i_.／:::::::/ヽ:::/::/::::://::/
.　　／:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/‐‐ノ::/:::::/:::::/.
　イ:::／７¨丶､::::::::::::::::::::::レ:'::::ヽ::::/:::::/
¨＼'‐-く　 丶、＼:::::::::::::::::::::::::::::::/:::::/
∧ 入､　丶、　＼ヽ;:::::::::::::::::::::／::::::ｆ　　　　　　　《……フム、一ツ目ノ質問ニ対スル答エハナシ、カ》
｀::（_,ハ丶、 ＼ﾚ' ヽ.Ｖ::::::::::::/､::::::::/
:::::::::ｒ‐ｧ!　 Ｘ ./ ＼./　V:::::ｒﾊ::';:::/　　　　　　　　 《少々寂シイガ、マア『ソウイウ事』ナノダロウ……》
:::::::::｀::::::i＼ /　＼/　ヽｉ::::::jソ::i/
:::::::::::(＞l.　 i丶､/　＼. l::::::::;／　　　　　　　　　　《ダガ、有難ウ。二ツ目ノ質問ニ対シテハ分カリ易イ》
::::::::::::ｒ-､!ｉ　 ',.　丶.i ヽ_｀フ¨
::::::::::::｀ﾆ-､　.ﾊ、　 Lノ¨´　　　　　　　　　　　　　《「目ハ口ホドニ物ヲ言ウ」「時トシテ沈黙コソ雄弁」……ッ》
::＼::::::〉‐'´. ＼.i__ゝ'
ヽﾄ':ｒ-h　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　《ハッキリト、手ニ取ル様ニ分カルヨ……》
￣¨＼:::｀)
--‐ ¨ｌ::::ﾊ
__,,..ィ !:::l、ｊ

6706： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:32:31 ID:xap8EYXQ




　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 |　| |　|　 f´│ ト､
　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 |　| |　|─|　 ﾄ､|　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 |　| |　|￣|　 lG|　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |　| |　|Ａ |　 |ｰ|　|＼
　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ／ |　Ｕ　|／|　 ﾄ-{　|ｰ∧
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 / 　│　　人_ﾉ　 　 　 ∨__}
　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ／{　 / ﾄ､　 |　　　　　　 ,ｨ{__ﾉ
　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ／ ／ ＜）乂}　{　 　 '⌒}jﾚｆﾜ{ (　　　　　《貴様、『観タ』ナッ！！》
　　 　 　 　 　 　 　 　 -‐…　 ¨¨￣￣{　ﾄ､{　　 ｨ代ｵ’　 　 }　＼
　　　　　　　 　 　 /'´￣￣￣＼　　　 / )＼＼ 〈￣　 /三∨　⌒}　　　《ナラバ『死デモラウ』ゾッ！　アノフロウシャドモと同ジク！》
.　　　 　 　 　 　 ｲ　--―――　＼　 ￣＼ｌ７　＼＿/{王{ﾉ＿_ ノ＼
　　　　 　 　 ／　{　　--──人 　 ＼　　 l/＼　　＼／　}ﾉ　 ＼ 　 ＼
. 　 　 　 　 /∧　|/　　　　／　　＼{　 ＼＿＿,rｆ´「 |　 }ノ　　 　 ｀ﾄ---＼
..　　　　　ｲ　{　 人＿__／＿　￣￣＼　 A G T l__|-{｀Y⌒ヽ_____,ノ　　 |　 ＼
.　　　／　 }　|　 　 ＼　　　　｀ヽ￣￣ﾊ￣￣￣ ト-＼ｿ ＼＿,ﾉ　　 　 /　　　}
　　　{　 　 l │　　/　／￣　　　} ＿___|---― /　　　　　　　 ＼　 ／　　　ハ
.　 　 　 　 　 l　　 {　(　　／￣￣＼＿_＼=--┴一'　　　　 　 　 ＼＿＿,ノ一'　　　　　　　　　/三三/　　　 　 　 　 　 　 　 　 /三〉
. 　 　 ＼　　人 　 ＼}　　　　　　／　　　￣￣＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/三三/￣　　　 　 　 　 　 　 　 　 /三/
.　　 　 |-＼　　≧=-|　　　　 ／　　　　　　--―‐＼　　　　　　　　　　　　　　{三三三三三il/￣　 　 　 /三}　 　 　 　 　 　 /三/
　 　 　 ＼　　ｰ-===|　 　 ／　　　 　 ／　　 　 　 　 丶　　　　　　　　　　　　 .￣￣￣/三/　　　|三三三三三三i}　　　　 /三/
　　　　　　＼___／￣|　／　　　　 　 /　　　　　　　　-‐　＼　　　　　　　　　　　　　　/三/　　　 i|三/￣￣｀ヾ三il!.　　　 /三/
　　　　　 　 　 ＼／ |　　　　　　　　　　　　　　 ／　　 　 　 ＼　　　　　　　＿＿＿_/三/　　　　 レ'　　　 　 ﾉ三/.　　　/三/
　　　　　　　　　　＼,|　　　　　　　　i　　　　　　　　　　　　-───――.ヾ三三三三il/　　　　　　　　 　 ／ﾆ／ 　 　 /il／
　　　　 　 　 　 　 　 |　　　　　　　　|　　 　 　 　 　 ／　　　 　--―　　　___　　　＼　　　　　　　　　 _ｨ≦il＞’　 　 .／三〉
　　　　　　　 　 　 　 ∨　　　　　 　 |　 　 　/　 / /　 　 ／　　 ／　　, ´ 　 ｀ヽー‐ﾍ　　　　　　　　　　　　　　　　　ヾ三/
　　　　　　　　 　 　 　 ＼　　　　　　|　　　/　　' /　　／　　 ／　　　　　　　 　 ﾄ､＿ '，
　　　　　　　　　　　　　　 ｀　ー----＼　　　　 /　　/　　 ／　 　__／i　　 　 　 }　ﾄ､
　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 ＼　　　 　 /　　　 　 　 ´　｀ヽ　 ＿__,ノ　,　|　|
　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ヽ　{　　′　/　　 {　　　　　}＼　　__,ノ　 |ノ
　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ∨　/　　/　　　　　　　　ﾉ　 l＼　　 　 ,|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ∨　　　　　 ´　｀ヽ‐一'　　/　 ‘,　__／}
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ∨　　 　 　 　 　 }＼ 　 /　　 ∧　 ／
　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ∨　　　乂＿_,ノ　　＼ 　 ／　 ∨
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ⌒ヽ　 　 }　＼＿__,ノ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ＼　　 ′　　 }＼ノ 　 /　 }
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼人＿__ノ　 }＼＿＿,ﾉ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ＼＿＿__ノ　 ﾉ ノ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ￣￣

6707： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:32:49 ID:xap8EYXQ




────────────────────────────────

　唸りを上げて、迫りくる異形の拳。
　酷くゆっくりと迫って来るように見えるそれを前に、俺は……

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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /＼
. ／　　　　　　　　　　 　　　　　 　 /　　 ＼
/　　　　 　　 　 U　　　　 　 　 　 /
　　　　　　　　　　　　　_,,,,..,,_
　　　　　　　　　 ,. -''"´　 　 ｀ﾞ''-､　　　　　　　U
　　　　　　　　,."　　　　　　　　　 ｀ヽ.　 ヽ＼
　　　　　　　/　　　　　　　　　　　 　 ｀、 　Y､
　　　　　　 ,'　　　　　　　 　 　 　 　 　 i.　　| 〉
　　　　　　 !　　　　　　　◎　　 　　　　l　　i　　 　 　 　 ／.:.:.:.:. . . . .
　　　　　　 ',　　　　　　　　　　　　　　 ,'　　i.　 　 　 　 /.:.:.:.:.:.. . . .
　　　　　　 丶　　　　　　　　　　　　　/　　j　　　　　　{.:.:.:.:.:.:.. . . :
　　　　　　　ヽ　　　　　　　　　　　 ,.'　 　 ﾊ　　　　 　 i.:.:.:.:.:.. . . .　　　う、うぁああああああああああああああああッ！！！
　　　　　　　　 ｀'-､_　　　　　　_,.-'´　　ノ　　　　　 　 .i.:.:.:.:.:.:.:. . .
　　　　　　　 　 　 　｀ﾞ''ｰ-‐'''"´　　　イ　　　　　　　　　V.:.:.:.:.:. . .
　　 　 　 　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ゝ.:.:.. . .
.　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/
　　　　　 　 　　　　　　　　　　　　　　　　 /,
　　　 　 　 　 　 　 l　 　 　 　 　 　 　 　 /.:.:.:. .
　　　　　　　 　 　 U 　 　 　 　 　 　 　 /:.:.:.. . .
　　　　　 　　　　　　　　　　　　　　　　ゝ .:


────────────────────────────────

　ただ、悲鳴を上げる事しかできなかった。
　徹底的なまでに、その時の俺は「奪われる」事に対して、あまりにも無力だった。

────────────────────────────────

6708： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:33:00 ID:xap8EYXQ





───────────────

　そして――

───────────────





　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 └‐ｫ |UU　 `
　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 くノ　　　　　＼ ,,_人､ノヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　)ヽ　　　　（　　＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ -　＜　　　　　　 ＞━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣　　　)　　　　　て
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／^⌒`Y´^＼　　　　 ._ _
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ＵＵ/7
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 くノ








.

6709： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:33:21 ID:xap8EYXQ




　　 　□
　　　┌──┐
　　　└──┘
　　　┌──────┐
　　　└──────┘
　　　┌───────────────────┐
　　　│　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 │
　　　└───────────────────┘
　　　┌──────────────────────────────────────┐
　　　│　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 │
　　　│　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 │
　　　└──────────────────────────────────────┘

6710：名無しの工員さん：2015/05/10(日) 22:33:24 ID:f834Meb6
ふなっしーにネズミーランドキタw

6711：名無しの工員さん：2015/05/10(日) 22:33:41 ID:NE0BfsXY
( 0M0)<ダリナンダアンダイッタイ

6712： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:34:08 ID:xap8EYXQ




　　　　　　　　 　 　 ∧　　 　 　 　 　 　 ／|
　　　　 ト　　＿「ﾆV　 V丶_ノ「＼ｰﾍ ／， |
.　　 　 」　　　　lﾆ=|　　　　．　ﾏニ-　　　　ー―ｧ
　　 　 } ｀　‘　_」ﾆ└='二ヽ　・’ マﾆﾆﾆ=-､　　/
　　　 fﾆｰ=ﾆﾆﾆﾆﾆｒ‐，￢′ﾄ､　　｀7ﾆ=ﾐノ ，｛___
　　r―`マア´　〕ニ|＿＿_　 |ﾆヽf（_,.　-―-　　（
　＿｝　° 　 ∠ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆVニノﾏﾆニ==ﾆﾆﾆヽ ＼
　＼‘　　・∠アΤﾆ｢￣ 〉ニ厂　　 ￣　　　}ﾆニ,　　 >
　　 }　　　｀マ＼!ニ|　 /ニ/ 　 　, ’ 　 　 /ﾆﾆ/　／
　＜　°　．　`マﾆ｣∠ニ/　　　　　，　∠ﾆア 　｛
　　　｝ ヽー ､　　∠二ア　・ 　‘　　 ∠ﾆア　‘　； ＼
　　ヽ　　 ﾏ斗‐=ﾆﾆﾆヽ　　°　　∠ﾆア｢ヽ　　 ° /
　　 〈＿∠ﾆニr―　￢′ ト ﾟ ∠‐ア 　 |ﾆ]　，　　{
　　 /`マア^ﾏﾆ=ﾆﾆニヽ　}ニVア＿　.斗=ﾆﾆニヽ ＼
　／　 ， 　 /ﾆﾆ '⌒ﾏニVﾆﾆﾉ｀ﾏﾆ=-‐Tﾆ｢＿￣ 卜｛
'⌒　 　 ． /ﾆ∧ﾆ　　｝ニ厂　，　　　∠ﾆﾆﾆニ｀ヽjニ〉
　　}　　　/ﾆ厶-ﾏ 〉 /ﾆｱ ﾄ　　 　 ∠アTﾆ「　 }ニﾊｱ
　 ム　．´￣￣￣　/アr ｫ}ﾆ｝「 ヽ`マ＼!ﾆ]　/ﾆ/ /
　 　 }　　。　　．　／　 }ﾆ{し'/ﾆ/　． `マz」/=ｱ _」
　　 ﾑ　“　　 　／　　　ゝ'　/ﾆ/　　‘　 　 /ア　{
　　　 Ｖ⌒ヽ∧　　 　ノ⌒ヾﾆ/　-‐-　　 ／f⌒ヽ
　　　　　 　 　 V´　　 　 　 V　　　　　　ヽ｢

6713： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:34:22 ID:xap8EYXQ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/７　　 ｒ､ [l[l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｌ二　二ヽ | |
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 〈_/　<_/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｒ､　[l [l
　　　　　　　　 　 　 　 │　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 / : : : : l　　　　　　/７　ｌ二 .ｺ
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　　　　　/::_::_::_:: :: :: :: :: ::＼ 　 /: : {　　　u　/: :_:_.:.:.: : : : : ::.､
　　　 ／:: :: :: :: ＼:: :: :: :: :: ::＼{: : :∧:　　　/: :{(⌒ ､ : : : ､::./　　おおおおおおおぉぉぉぉぉぉッ……
　　∠::__:: :: :: :: ::　＼: : : : : |:.:.:＼//∧: 　/: : : :＼ヽ＼_/｀´
　 /:: :: : 二ﾆ=-:: :: :: :: :: :: ::.|::.:.:.:.:.＼/∧/: : : : : ､: }⌒´
／:::∠二二二ﾆ=- ､:: :: :: :: |:.:.:.:.:.:. : Χ∧: :u: : : /´
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　γ ￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｜　　……あ、あれ？　　　　　　　　　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 乂＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿ノ
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　 ,,l.|＿_|,,／ ,,l| ||／~　　　　　　　／　　　　　　　　　　／／ll
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／ ￣￣

6714： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:35:02 ID:xap8EYXQ




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　まず目に入ったのは、ようやく見慣れてきた自分の部屋。
　集合住宅値に居を構える安アパートの一室だ。
　そう、俺はつい三ヵ月程前から、ここに住んでいる……。
　元々住んでいた場所から引っ越してきたのだ。今はもう無い職場勤めの為に。

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　　　　　　　ヽ
　　　　　　　　丶　　　　　　　　　　 　 　 　(⌒)
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　　　｡ 　 　 　　　　|　　　　　　　||　 ／　 　 |　 ／　 　 ||.　　 　 　　　|
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　　　　　!.　　 　 　 |＿＿_. 　 　 || :::;: ;:; :／:;| :;:::: ::; ／:;||.　　 　　 　　|
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　∀｀6j！　.,.r''"　,.r''"// |　　 　 　 　　　　　　 　 　 　　 　 　　 　 　 |
　　(`z- |. 　|￣￣|/./..,.イ| ,,,__＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿ ＿ ,....... 　,,,_|　,..,.
　 　 _..-'"　 !　...　|,.イ´..／　　　 　 　　　　　　　　　　　　 ,ｨﾃ＿,.｀ヽ　＼ﾐl|
　 :''"　　　　| 　　 |...」／ 　 　 　 　　 　 　　　　　　　　　（,,._..　_..:;）ｰ'　　＼
　　　　　 ／二二ｽ　 　 　 　　　　　 　　　　　　 　 　　 　 　 　 　 　　　 　 ＼
　　　　　 |_ﾚ'　 |_ﾚ' 　 　 　 　.／￣￣￣￣￣￣￣ .ｩ＼
　　　　／　　　　　　　　 　 ／:　区l圜!　　　　　 　(,,::.;). ＼
　　 ／　　　　　　　　　　／::::::::............　　　　　　 　　 　　　＼
　／　　　　　　　　 　 　 |￣|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣|￣|
　　　　　　　　　　　　　　￣　　　　　　　　　　　　　　　　　￣

6715： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:35:17 ID:xap8EYXQ




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　そこまで考え、ふと何故自分はこれほどまでに怯えているのか疑問に思った。
　心臓は早鐘を打ち、体中が冷えた汗でびっしょりだ。
　まるで、なにかとても恐ろしい夢を見て飛び起きた後の様な、そんな心持ち……。
　ふと、何故か気になって自分の手を眺めてみた。
　別にどうって事ない、普段から見慣れた自分の手の平だった。

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　　　　　　　　　　　　　　 ,.-､
　　　　　　　　　　　　　／ 　.l　　／｀ヽ
　　　　　　　　　　　 ／　　 ./ ／　　 /　.,..-､
　 　 　 　 　 　 /ヽ/　 　 ／ /　　 ／　./　　l
　　　　　　　　/ 　 l　　　l　./　　 ,'　　/　　/
　　　　　　　 /　　 |　　　|　l　 　 l　../　　/.,..-､
　　　　　　　 l　　 ｲ　　　l　j　　 .|　/　　/./　 /
　　　　 　 　 .|　 　 ',　　 ｀´　　　ヽ'　　/./　 /
　　　 　 　 　 l　　　.l　 ＼　　　　　　 〈./　 /
　　　 　 　 　 |　　　　｀ヽ .＼　　　　 　 　 ,'
　　　　　　　　l　　　　　　＼ ｀''-..,,__　 　 .|
　　　　　　 　 .',　 　 u 　 　 .'.,　　　　　　 |
　　　　　 　 　 .',　　　　　　　 l　　　　　　 |
　　　 　 　 　 　.ヽ　　　　　　　　　 　し　/
　　　　　　　 　 /　　　　　　　l　 　 　 ／
　　　　　　 　 ./　　　　　　　/　　　／
　　　　　　　 /　　　　　　　/　　　/
　　　　　　 ./　　　　　　 　 　 　 /
　　　　　　/　　　　　　　　　 　 /
　　　 　 ./　　　　　　　　　　　/

6716： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:35:42 ID:xap8EYXQ




─────────────────────────────────────

　そう、夢……。
　俺は何か、とても恐ろしい夢のようななにかを見ていた気がする。
　しかし、それが何かは思い出せない。まるで「その部分だけ抜き取られた」ように……。

　見れば、枕元に置いてある安っぽい目覚まし時計は、午前８時を指している。
　一瞬「遅刻だ」と思ったが、直に自分は仕事を失っているのだと思いだす。
　……少なくとも、これに関しては夢でもなんでもない現実だというのが妙に悲しかった。

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　　　　　　　　_,.　　-‐　_,.二二二二二二二二二二二二.,_　 ‐-　　..,,_
　　　　　　　〔 -‐　　´　＿_　　　　　　　 ＿_　　　　　　　　　　｀　　‐- _〕
　　　　　　　　｀　ｰ-xkー､-､＼ ＿_　／x‐-､＼　　　　 ｢￣i!　　ｰ=ﾆ´〕
　　　　　　　　　　　il:し::::::}　}　〉―‐〈 ilし'::::::}　li ￣￣´|＿_|´￣￣ ´
　　　　　　　　　 　 {丶-‐'　ﾉ　　　　　､ヽ-‐'　 ﾉ　 ,　 ┴―┴　 、
　　 　 　 　 　 　 　 >--‐　'　　　　　　 丶--‐く ／　,　-―‐-　、 ＼
　　　　　　　　　　 /　　　　　　　　　　　　　　　∨／　　　l|　　　＼　ヽ
　　　　　　　　　　,　/　　　　　　　　　　　　ヽ 　 ' 　 　 　 l|　　　　 ヽ　',
　　　　　　　　　　{ '＾ ｰ-　　 ＿＿＿　　 -‐'＾　 }━　　　・　　　 ━ l　 ',
　　　　　　　　　　 ＼　　　　　　 　 　 　 　 　 ／',　。ｒ≦’　　　 　 ./ 　 !
　　　　　　　　　　, -/` ｰ-　　＿＿_　　 -‐く　　 ＼.　 　┃　　　／　　 |
　　　　　　　　　 /　|　 |　　　 l　　 l　　　|　 |　　　　丶------ ´　　　　|
　　　　　　　　　 〉　ゝ. ヽ　 　 ',　 /　　／　/　　　　　　　　　　　　　　 /
　　　　　 I二三'ー-―≦-‐--‐'^'ｰ-‐≧ー' 二二二二二二二二二二三三二I
　　　　　　　 　 ￣¨¨　　 ―=======================―　　¨¨￣

6717：なんか回線が安定しないなぁ ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:39:02 ID:xap8EYXQ




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　……そうだ、確か昨日はようやく憲兵による事情徴収から解放され家に帰るところだったんだ。
　今日の飯はどうしようかなんて事を考えて、そして詰まらない持論なんかを反芻して……。

　そこからの記憶がぷっつりと途切れている。
　別に酒を飲んだ訳でもないだろうし、ドラッグに手を出した覚えも無い。

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　　 　／￣￣＼
　　／　　 ─' 　 ＼
　　|　 　 （ ●）（●）
　　|　　　　 　 ｜　|
　　|　Ｕ　　　__´___ﾉ　　　……あれ、てか俺、寝巻に着替えてるな。
　　|　　　　　`ー'´}
　　ヽ　　　　　 　 }　　　　じゃあ、やっぱり普通に部屋に帰り着いただけなのか？
　　　ヽ　　　　　ノ
　　　　/　　　 く
　　　　|　　　　 |


.　　　 　 　 　 ／￣￣￣￣￣￣￣￣￣＼
.　　　 　 　 ／ ;'::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::';.＼
.　　　 　 ／ ..;'::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::';.. ＼
.　　　 ／ 　 ;:::: ＼:::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ／::::::::; 　 ＼　　　　　　　　　
　 　 │　　 ;::::::::::::＼:::::::::::::::::::::::::::::／::::::::::::::;　　　|　　　　　　─┐¨ .｜ !
　 　 │ ＿＿＿＿＿::::::::::::::::::::::::＿＿＿＿＿　　 !　　　　　　　ノ 　 .丿 レ ッ　・　・　・
　 　 │　│::::::::::::::::│ ;:;:;:;:;:;:;:;:;:;: │::::::::::::::::│　　|
　 　 │　│::::::::::::::::│ ;:;:;:;:;:;:;:;:;:;: │::::::::::::::::│　　|　　　　うぉっ、てか寒ッ！　冷たッ！
　 　 │　 ヽ::::::::::::::::ﾉ :;:;:;::;:;:;:;:;:;:;:;:;:ヽ::::::::::::::::ﾉ　　│
　 　 │　　;:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::;　　|　　　　とりあえず着替えないと……
　 　 │　　;::::::::::::::::::::::::::::::｜::::::::::::::::::::::::::::::::::::; 　 |
　 　 │　　;::::::::::::::::::::＿＿＿＿＿::::::::::::::::::::: U 　 !
　 　 │　　;::::::::::::::::::::|　　　　　 　 |:::::::::::::::::::::::;　　|
　 　 │　　;::::::::::::::::::::|　　　　　 　 |:::::::::::::::::::::::;　　|
　 　 │　　.;:::::::::::::::::: ￣￣￣￣￣::::::::::::::::::::::::; 　 |

6718：お、行けた ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:39:28 ID:xap8EYXQ




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　俺は慌てて寝巻を脱ぐと、着替え始めた。
　暦の上ではもう初夏に差し掛かった頃だが、まだ肌寒い日が続いている。
　そもそも、今の世界でまともな四季感なんてものは有ってない様なものだろうが……。

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　　　　　　　　　　　　　__　__
　　　　　　　　　　 ／　　　 　ヽ
　　　　　　　　　 /　 　 　 　 　 ヽ
　　　　　　　　　 !　　　 　 　 　 ::|
　　　　　　　　 _ ! 　 _.ﾉ 　ヽ,_ 　::i -､
　　　　　　 ／ ..:丶（ー）　（ー）　| :::　｀‐､_　　　　　　　　（こりゃ、後でコインランドリーに持ってかないとな）
　　　　, -'´ ..　　 ﾍ 　　｜　　　/　　　　,､｀‐､
　　　/　　　 ｀‐､　　.､.. ‐｀- 　ｲ 　 ,､-'´　　　＼
　　 i　　　.....:::::::...｀‐-｀　一:､-‐''´ 　...:::::::..　　｀ヽ
　　 l　 ..:::::::::　　　　　 ~-,:::::::::　　 　 　 ::::::::::::::.　.',
　　 ｀､::::::::　ト､　　　::::::::::::::::::　　　　 ,､ 7l　 ::::::　.:ヽ
　　　| :　　　.l ::｀‐､.____,､:::::::｀‐､.__, -'/　厶　　 :　 　.:､
　　　l　:　　　|　ヽ:::::::: : : : : : : :::::::::ノ　　 l ヽ　　:　　　ヽ
　　　l　　　　 l｀､丶:::::::::::::::::::::::::::::::::.ノ　 j　　 ＼ 　 　　l
　　　.l　　　..::l　 l　　....::::::::::::::::...... '"　　j　　　 ／　　　,l
　　　 l　 .::::::::l　　l　　 ::::::...:.....:::::::　　　 l　　 /　 / 　 /　)）
　　 　l　-‐ｰヽ.　 | 　　 :::::: :　::::::　　　 l　　/　 ／ ／
　　　 ヽ　　　 ｀､.l　　　:::::....:.....:::::　　　|l　/　　 ／
　　　（( ヽ::..　　 ｀‐､._　::::::::::::::: / ￣｀`‐'　　／
　　　　　　｀‐､　　　 ｀‐､‐--‐ '´ ﾉ　　　　／
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6719： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:39:52 ID:xap8EYXQ




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　引越しの時に使った大型のケースの内一つを開け、そこから着替えを出して着替える。
　……因みにあと３つ同じケースがあり、それら全てに別の日用品が入っている。
　クローゼットや箪笥なんて物の用意は無いが、これと言って不便を覚えた事は無い。
　体面も気にしなくて良い以上、男一人というのは実に気楽なものだ。

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6720： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:40:24 ID:xap8EYXQ




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　何を着るか迷ったが、結局安物のスーツにした。
　引越しの時、職場用に安売りされていた物を数着買ったのだが
　案外着心地が良くて普段着代わりにもしている。

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　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿__
　　　　　　　　　　＿　　　 ／　　　　　｀丶、
　　 　 　 　 　 ／/l ｢l＿∠ __　 ／〉　 　 　 ヽ
.　　　　　 __／　/,ィ´　-‐　､.__＼/　　　　　　}
　　　　／ /____ /|　　　　　ヽ､＼ ）　 ＼,　　/
　　　　　l |､.__ 〈/　　　-‐　ト､　 ） 　､::::ｊ　７
　　　　　ｌ |､ ￣入 　 　 　 ､＿｀ｊ　　　　　ｒ'
. 　 　 　 ヽ＼_〈::::::＼＿＿､__ノ　　　　　,┘
.　　　＼　　￣/＼::::::/ ｌ |　　 　 　　｀)'　　　　　　そもそも俺、私服あんまり持ってないんだよなぁ……
　　　　　￣￣ｌ　　￣　// 　 　 ＿_／
　　　　 　 　 /　　 　 //　 ヽ　 {ヘ、
　 　 ､＿__／　　 ＿／　　　　｀ヽ　＼　　　 ＿＿_／ヽ
　　　　／ 　 ￣　／|　　 　 　 　 　 ｀¨＼￣￣￣〈_／,､ ＼
.　　　　　　 　 ／ ／　　　　　 　 　 　 　 ＼.　　 （__,. ‐-　 l、
　　　　　 　 , ' ／､.: :｀ヽ..,____..　 -‐::::::i:‐:..､ ヽ 　 （___,. 　　|ﾊ
.　　　　 　 / l/￣ ＼:::::::::::::＞ "´ 　 ￣　 ｀ヾ:､Y　‘ｰ┬r‐'　|
　　　　　 /l /: :　　　｀ 匸´＿__/__,..-　　｀ .､___ |　　/│|__,ノl
.　　　　 ∧/: : :　　　　 ／　 }／､　　　 　 　 |　 }　││|＿_ﾉ
.　 　 　 |　|: : : :　　　　{　　 /　　）　　 ,　 '"＾ﾄ-〈　│ | |__/
.　　　　 |　|＼:_:_　　　ﾉヽ._/ｰ一^ ｰ‐´　　　│　 V l　| |、
　　　 　 |　|　　　￣｀ヽ: :　i　　　　　,　　 　 ,ﾉ､__,ﾉ　　ｌ |/|
　　　　　|　|　　　 　 　 ∨ ｀　　 　 〈　　_／　| 　| 　　| l　!
.　　　 　 !　|　　|　　　　 ∨　　　　　 ￣ ﾞ,　　,!､__＼　| |　|
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.　　　　　|　|　　l　　 l　　/　　　 ｀　､　　　　　　　　　 ｊﾊ:::::://
　　　　　 !　!　　　　 |　 ,'　　　　　　　｀ ｰ ､　　　　　___　∨/l
　　　　　 |　ｌ　　　　 l　 i　　　　　　　　　　　　　　／ｏ |　 |' ｌ|
　　　　　│ |　 　 　 l／|　　　　　　 　 　 　 　 ／ ／ /|_　|､ｌ|
.　　 　 　 |　|　　　 /l:::八　 　 　 　 　 　 　 イ　 　 ／ / ヽ|::ヽ




　　　　　 　 .／￣￣＼
　　 　 　 .／ 　　　 _ノ ⊂_ ‐-' ＜
　　 　 　 |　 　　　（ ―）　 λ　　 ヽ
　　　 ＿_|_　　　u 　　　 」　　 ヽ　　',　　　　　　　あれ、てか一着足りない様な……。
　 __,/　　　｀ ＞　_ 　 ‐-,　　　ｒ'-‐￢
／---‐――--.､　＼　 l　　　 」-‐＞ヽ　　　　　　……一度病院行って診てもらうかなぁ。
:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.／⌒ヽ. ゝ′　　/　 ´　　 l
:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:／　／´ ｀ヽ　　　　 ヽ.　　,　, .!　　　　　脳の障害とかだったらおっかないし。
.:.:.:.:.:.:.:.:／　／　　　　 ヽ　　　　 l｀ / / /!
:.:.:.:.:.／　 ./　　　　＿ __ヽ-､　　 !/. ,'　l　!　　　　 ……問題は金が無いって事だが。
.:.:.:.:.:l　＿十''''''''""　　　　　＼ ＜　　　'　l

6721： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:40:39 ID:xap8EYXQ




───────────────────────────────────────────

　と、着替え終わった所でタイミング良く玄関のチャイムが鳴った。

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　　　 　 ｎ＿_ o. 　 ＿　　　　　__ｎ__　o　　　　　　　 . ＿
　　　 　 | ｒ‐┘ 　 └┘/7　　└ｫ r┘　　＿＿＿　　└┘/7
　　　　 .∟ﾆｺ　　　　＜ノ　　 <八八>　　゛―――'　 　＜ノ


　　　　　　　　　 　 　 　 ／￣￣＼　　 〃／
　　　　　　　　　　　 　 /　　　`ー　＼　　　⌒
　　　　　　　　　　　　 .（ ●）（ ●）　　|
　　　　　　　　 　 　 　 |　　|　　　　 　 |
　　　　　　　　　　　　　| ___｀___　　 　 |　　　　　　　……？　誰だ、こんな朝っぱらから。
　 　 　 　 　 　 　 　 　 | 　　　 　　　 |
　　　　　　　　　　 　 　 ヽ　　　　　 /
　　　　　　　　　　　　　　ヽ　　　　　＼
　　　　　　　　　　　 　 　 ∠ニ二ニ二L._
　　　　　　　　　　　　　 　 ｧ'´⌒ヽ; : : : ヽ＼
　　　　　　 　 　 　 　 　 / ;;; : : : : i: : : : : ｉ: :ヽ
　　　　　　　　　　　　　/ : : : : : : : | : : : : :ｌ : : i
　　　　　　　　　 　 　 /''"´￣: ;;; :,' ;;; : : : :l : :;;l


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　元の職場には親しくしている人間なんて居なかったし、数少ない知り合いは離れた場所に住んでいる。
　まさかショットガン構えた暴漢が待ち構えてる、なんて事は……
　まあ、ここいらの治安上、流石に無いだろうが、そうなると誰だろうか。
　開けたら憲兵が立ってて、実は取り調べで聞き忘れた事があった、とかは勘弁して欲しい。

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6722： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:41:42 ID:xap8EYXQ




　　　　　',　　　　 lllllllllli　　　　 　!､ __,r‐‐-､　　　｀、
　　　　　 ',　 　 　 illllllllli　　　　／~ 　 ￣｀''､　　　　i
　　　　 　 i,.　　 　 illllllllli 　 .／　　　　 　 　 ｀ ､,,_ ｒ-､　 ｒ- ー､
.　　　　　　i,　　　　illllllllli ／　　 　 　 　 　 　 　 /ヽ　｀ヽ-.､　 ヽ _
. 　 　 　 　 i,　　　　illlllllr'‐'''""~~"''‐,,.　　　　　/::::::::ヽ　 ヽヽ 　 ヽ｀ヽ､　　　　　　　　はいはい、今開けますｙ
　　　　　 　 i,　　　　illll!'　　　　 (| i　 ｀ 、　　./;;;;;;;;;;;;;;;',　　`''　　　｀ﾞ　 ｀ ー､　　　　　　　　 γ ￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣ヽ
　 　 　 　 　 i,　　　　illｌ　　　　　 ""　　　、 ./;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;}　　　　 　 　 　 　 　 ',　　　　　　　 ｜　……あれ？　か、鍵が開いてる！.|
.　　　　 　 　 i,　　　　illi､　　　　　　　　 　i,.';;;;,- 、　　｜　　　　 　 　 　 　 　 ',　ｽｯ…　　　 乂＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿ノ
　　　　　　 　 i,　　　　illllllli､　 　 　 　 　 /',;;;;;;',　 ',_　　ｌ　　　　　 　 　 　 　 　 ',
.　　　　　　 　 i,　　　　illllllll| ~"'=‐--‐''´　 ヽ､;{　　 ` -'　　　　　　　 ,.-‐――┴- ､　　　　　　　……へ？
　　　　　　　　 i,　　　　illllllll|　　 　 　 　 　 　 ｀｀ヽ.　　　　　　　　 ／　　　　　　　　 ＼
　 　 　 　 　 　 i,　　　　illllllll|　　　　　　　　　　　　ヽ　　　　 　 ／　　　　　　　　　　　 ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼　　　/　　　　　　　　　　　　　　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｀ヽ､/　　　 　 　 　 　 　　 　 　　　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　　　　　　　 _,.-‐ '''''''ヽ　　　　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　{　　　　　　　 , '　　　　　　 ＼　　　　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ　 　 　 　 /　　　　　　　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼.　 　 /　　　　　　　　　　　 ﾞー―-


───────────────────────────────────────────

　聞き覚えのある声がする。
　そう思った瞬間、向こうから扉が押し開けられた。
　で、当然扉が開く位置には、今ドアノブに手を伸ばしていた俺が居る訳で。

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6723： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:41:56 ID:xap8EYXQ




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　　　　　_,∠-‐¨￣￣｀ヽ､└三彡＾　　人　　　　　　　　　　　　　＼: :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.
　　　／　　　　　　　　　　　｀ヽ　　　／　　'ヽ､　　　　　　　　　　 　 ｀ヽ.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:
　 ／　　　　　　　　　　　　　　 ＞≦=‐､　　{ 　>､　　　　　　　　　　　　丶.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:
. /　　　　　　　_　=ﾆ二ﾆ=￢''´　　　-―｀ー光─ゝ､_　　　　　　　　　　　',.:.:.:.:.:.:__, -‐'´.:.:.:.
/　　　　　　〃　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀＞‐-　.._　　 　 　 }.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.　※比喩表現

6724： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:42:30 ID:xap8EYXQ




───────────────────────────────────────────

　鈍い衝撃が全身を叩く。頭の隅に残ってた眠気が吹っ飛んだ。
　ついでに俺自身の身体も吹っ飛ばされた。てか痛ってぇ。
　この時ばかりは、アパートの外通路を塞がないよう、内開きになっている扉を恨んだ。

───────────────────────────────────────────


　　　　　　 　 ,ｨｰ――‐‐､
　　　 　 　 ／ 　 　 ＞‐-､＼
　　　　　./ ／~ヾ,　j|　 ｡　 ｝ ヽ　　　　　　　おぅふ……。
　　　　　ｉ 《 　ﾟ .,.》 .ゞー≠　　 ヽ
　　　 　 ヽヾミ彡'　 ＼　 　 　 　 ヽ　　　　　|＼　　　　 /＼　　　　　/ |　　　／/　 /
￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣＿|　 ＼/＼/　　 ＼／＼/　|∧／　/／/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　∠　あっ！　ご、ごめんなさい！　 　 ＞
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／＿　　　　　　　　　　　　　　　　　＿ ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　￣　/　／∨|　/Ｗ＼　　/＼|＼　 .|　￣
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/／　　　|/　　 　 ＼/　　 　 ＼|


───────────────────────────────────────────

　そして、悶絶する俺を認めたのかドアを開けた人物が、慌ててそう叫んだ。
　その人物は慌ただしく靴を脱ぐと、俺の傍へと駆け寄ってくる。
　……俺は、その人を良く知っていた。

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6725： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:42:51 ID:xap8EYXQ




　　　　　　　　／: : : :,: : /:./: : : : :/:/: : : : /: }: : : : : : : : : : :＼
　　　　　　 ／: : : : :/: :/:./: : : :.:./:/: : : : /:./: : : : : :|: : : : : : : :ヽ
　　　　　 ,:': : : : : :./:／': |: : : : :/:/: : : :./:./|: : : : : : |: : : : : : : : : :.
　　　 　 ': /: : : : :/:/　':,ｲ: : : :/:/: : : :./:.,'　|: : : : : : |: }: : : : : : : : ::.
　　　　/:./: : : : : :./　,|:| |: : :./ｲ: : : ∨:./ 　|: : : /: : |/: : : : : : : : : ::.
　　 　 ':/: : : : : : /_ノ |:! {: :./: :|: : :／＼ 　 |: : /: : ;/: : : : : : : : : : : |
　 　 /: ':/: :--＜:l　　 {　∨: : :!:／ / 　｀ ｰ|: /: : :/: : : : : : : : : : : : |　　　ご、ごめんね！　ごめんね！
　　 ;: /:,|: : : : :/{/,.==ミ　∧: : |　　　ィ≠ミ､/ |: : ': : : : : : : : : : ;: : ,
　　 |/ l |: : : :/ｲ'ん::示　´　＼{　 　 ん示::ミヽ､:/: : : : : : : : : :./: :/　　　 か、鍵が開いてたから何かあったのかなって……
　　 {　{:.|: : :/{/ {:l::::::刈,==､　　 ,ｨ　{:::l:::::::刈　ﾏ': : : : : : : : : :/: :/
　　 　 | {:｢）､　とつzソr '　 ＼､{/　弋 ｰ'　/　/: : : : : : : : : :/: :/　　　　　それよりでき君！！
　　 　 |八乂}:.:.:.:＿__ｲ':.:.:.:.:.:.:.:.乂:.:.:.:.｀ とつ:/:r､_: :／: : : :/: ,:'
　　 　 |: /: :.T¨´:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:｀ ー==≠=イ:.／: : : : :/: /　　　　　　　貴方、汚職して捕まったって本当なの！？
　　　 /ｲ: : : :.　 l　　　　　　　　　　　　／: : : :イ : : : : : /: /
　　　'　{: : : 人　し 　/,.ｨ￣｀ヽ､　　　 ´¨¨´/: : : : : : : /: :,
　 　 　 |: : : : : ﾄ､　　{　 　 　 　 ヽ　 　 　 /: : : : : :,: /: :./
　 　 　 |: : : : : |:/＼ 乂　　　　 　 }　　,..:/: : : : : :/:/: : :{
　 　 　 |: : : : :/{: ／＼ ｀ ー---　' ＜: /: : : : :／:ｲ: : : :|
　 　 ／|: : : :/｀|/＼∧:＞-- 　´　　　/: : : :／:／´￣￣￣｀ヽ


────────────────────────────────────────────

　ちょっと待って姉さん、それどこで聞いたんですか。
　てか俺が捕まった訳じゃないんですが。

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6726： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:43:39 ID:xap8EYXQ




──────────────────────────────────

　この、如何にも「うっかり」と「わたわた」が似合う感じの女性は山田真耶。
　……俺の姉である。血縁上の繋がりは無いが。

　現在はナラシノで高校教師をしており、本来ならこんな所に居る筈の無い人物だ。
　そんな彼女が今ここに居る事上に、のっけから突然の爆弾発言。
　ドアで殴られた痛みも忘れ、俺は立ちあがった。

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　　　　　　　　　　　,　 --　、
.　　　　　 　 　 　 / 　 　 　 ヽ
　　　　　　　　　　| 　 ― 　―
　　　　　　　　　　l 　 --　 --|
　　　　　　　　　　|　u.　　| 　 !　　　　　　姉さん……、別に俺が汚職した訳じゃないし
　　　　　　　　　　|　　＿´__
　 　 　 　 　 　 rｰ} ヽ　ー´ /　　　　　　 逮捕されてたら今頃こんな所には居ないって。
　　 　 　 　 　 ﾉ...　＼ﾞ ￣｢ｰ.､
　 　 　 　 ,ｨ´　＼　 ,ｲヽ 弋　,ﾍ　　　　　 てか、急にどうしたのよ。
　　 　 ,,イ　　　　 V　　〈:::::〉　Vｰ､
　 　 /　　　　　　　　 　 l::::!　　 　 l
. 　 / 　 　 　 　 　 　 　 ｌ::::l　　　　!
　 /　　　　　　　　　　　.!:::::ｌ　　　 .|


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿
　　　　　　　　　　　　　　　　＞　´: : : : :.｀ ＜
　　　　　　　　　　　　　＞ ´: : : : : : : : : : : : : :.｀ ＜
　　　　　　　　　　　 ／,': : /.: : : : :. :.! }: ', : : ヽ　　 ', ，
.　　　　　 　 　 　 , ': :/: : /.: : :. :. :. :.i/: : ',: : : :',: : : :', ‘，
　　　　　　　　　 /: : ,': : :.|ﾄ､.: : : :. :./.: : :.}!: i!: : l: : : :',: : ',
　 　 　 　 　 　 /: : :.i: : : :|l .ﾏ: : : :ノ: :/! ハ iﾏ: :l: : : : ',: : :.
　　　　　　　　/,ｲ: : :!.: : :.ﾘ　 X: : : :∨ ﾚ‐-ﾘ_∨.!: : : : !: : i
　　　　　　　 ,'/ i: : :.| : : {_ ノ 　ヽ: : ﾍ 　 ,ｨ＝ミ ト: : :.,' : : |
　　　　　　　 !{　| : : ',￣ !,ｲ芹ミ.}xヘゝ 　匕沙ｱ: : : ,': : : :|
　　　　 　 　 |i　.!.: : :.ﾏ: :|{ rz斗ヽ 　 {　　　　　,': : :/.: : : :.|　　　　　え？　だ、だからでき君が逮捕されたって聞いて
　　　　 　 　 |! . !: ! : : ﾏ.{　　　　 i ⌒ゝ､ ＿　,': ／.: : : :./.|
.　　　　　　　 　 |: i.: : : :.ヽ __　／　　　　　　ノイ: : : : : :∧ i　　　　　急いで有給申請して、そのまま皇国鉄道の始発でここに……。
　　　　 　 　 　 ,'./i: : : : :.ハ.　　 γ´￣｀ヽ 　 ム: : : : /　ヽ
.　　　 　 　 　 /ｲ　}.: : : :.,' 个 ､　ゝ_　　_ ｲ　 ｲ.: : : :. :.{
　　　　　　　　　　 {: : : :/} ／ﾏ ＞ ､　 　 イ! ,': : :.,' /i |
　　　　　　　　　　 |: : :/_.ヽ__　ﾏ:._|　 ｀´　　| {: : /ﾚ　リ
.　　　　 　 　 　 -‐ﾏ /　　　　r '　i　 　 　 　 |: ∧ __ ニ --　..,,_
　　　　　　　　/　　 ヽ　／ 　 i　‐- ､　 　, -‐V ﾏヽ　　 　 　 　 ∨
　 　 　 　 　 /　',　　　　　　　l　　　　　　　　　　 l　　　　　　　　 ∨
. 　 　 　 　 / 　 .',　　　 　 ',　l　　　　　　 　 　 　 l　　　　 　 　 　 ∨
　 　 　 　 /　　　 ',　　 　 　', l　　　　　　　　　　　} 　 　 　 　 　 　 ∨
. 　 　 　 /　 ヽ 　 .',　i　 　 ∧!　　　　 i!　　 　r'~/　　　 　 　 /　　　∨
　　　　 /　　　　ヽ､　l　　 　 ∧｀ヽ_ 　 i!　 r='　/　　　 　 　 /　　　　 ヽ

6727：名無しの工員さん：2015/05/10(日) 22:43:45 ID:tbBbzzBA
これは痛い

6728： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:44:27 ID:xap8EYXQ




　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　 　∩∩
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　| |.| | ＿
　　　　　　　　 　　　●　　　●　　　●　　　●　　　●　　　●　　　●　　　⊂ニニ三三|―|
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.　　　　　 　 　 　 ， ‘: : : : i: }.: : : : : :. :. :.ヽ
.　　 　 　 　 　 ／ : : l.: : : :.l /: ::|: : ヽ.: : : :. :.ヽ
.　 　 　 　 　 ,.': : : : :.|.: : : :./: : :.|: : : :ヽ.: : : : : :.∨
　　 　 　 　 ,' /: : :/: l: : : :,': : : :∧: : : : ',: : : : : : :∨
.　　　　 　 : :,'.,': :ｲ: : ﾏ.: : : : : :.T T|‐-､ }: : : : :.| : :
　　　　　　: :{ i: : :! 斗|ﾏ ', : : /ﾘ ,ｨ=ミxゝ: : : : :.|: : !
　　　　　　|,ｲ !| イ ,ｨ=ミ､へ〈　　.r　ﾊヾ.| : : : : l: : i
　　　　　　ll ! l.!ⅵ {{ r ハ　　　　匕汐ｱl: : : : :.,'ヽ.|
　　　　　　|! | ﾘ ⅵヽ乂ソ　}⌒{ , , , , . ,' :／: :,'ノ: :!　　　　　　　　　　……え？
　　　　 　 　 ', : : ゝハ , , , ﾉ　 ｀＝=　,'イ: : :.,': :|ヽ{
　　　　　　 　 ',.: : : :.八=‐´　r =-､　 　.,' : : ,': : |　　　　　　　　　　　 逮捕、されてないの？
.　　　　　　 　 j/|: :.|: :个ト ､ ゝ-‐　 イ,': : :/Vヽ{
　　　 　 　 　 　 ﾘﾏ|: : :.∧从≧ イ 　,' ;ｲ/＿
　　　　　　　　　 　_|: :, '￣￣_}　　　/ｲ .}　　　‘ ，
　　　　 　 　 　 　/ !/　　 ／ 　　　／　 　 　 ＞ .',
.　　　　 　 　 　 /　　 　 / ヽ　,-‐/　　　＞ ´　 　.∨
　　　　　　　　 ,'　　　　/　 　 　 /　　 ｲ　　　　　　 ∨
.　　　 　 　 　 { 　 , ' ノ　 ,ｲ 　, '　　i ,'　　　　 .／　　}
　　　　　　　 / .／ ,ｲヽ, '_ _.イ　　　{　　　　／　　　/
　　 　 　 　 ,'／　,ｲ　/／　　　　　 ,'　　　　　　　　 i

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　されてません。数日かけて事情徴収されただけです。
　……普通に考えればその時点で投獄一直線モンだが、なんで自由の身なんだろうね俺。

──────────────────────────────────

6729： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:44:46 ID:xap8EYXQ




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　　 　 ':/: : : : : : /_ノ |:! {: :./: :|: : :／＼ 　 |: : /: : ;/: : : : : : : : : : : |
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　　 ;: /:,|: : : : :/{/,.==ミ　∧: : |　　　ィ≠ミ､/ |: : ': : : : : : : : : : ;: : ,
　　 |/ l |: : : :/ｲ'ん::示　´　＼{　 　 ん示::ミヽ､:/: : : : : : : : : :./: :/
　　 {　{:.|: : :/{/ {:l::::::刈,==､　　 ,ｨ　{:::l:::::::刈　ﾏ': : : : : : : : : :/: :/
　　 　 | {:｢）､　　汽zソr '　 ＼､{/　弋 ｰ'　/　/: : : : : : : : : :/: :/
　　 　 |八乂}:.:.:.:＿__ｲ':.:.:.:.:.:.:.:.乂:.:.:.:.｀ ｰ:':.::/:r､_: :／: : : :/: ,:'　　　　　　　　　え、えぇッ！？
　　 　 |: /: :.T¨´:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:｀ ー==≠=イ:.／: : : : :/: /
　　　 /ｲ: : : :.　 l　　　　　　　　　　　　／: : : :イ : : : : : /: /　　　　　　　　　　 で、でも私確かにそう聞いて……
　　　'　{: : : 人　し 　/,.ｨ￣｀ヽ､　　　 ´¨¨´/: : : : : : : /: :,
　 　 　 |: : : : : ﾄ､　　{　 　 　 　 ヽ　 　 　 /: : : : : :,: /: :./　　　　　　　　 γ ￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣ヽ
　 　 　 |: : : : : |:/＼ 乂　　　　 　 }　　,..:/: : : : : :/:/: : :{　　　　　　　　　｜　因みに誰から？　ついでにどう？ .|
　 　 　 |: : : : :/{: ／＼ ｀ ー---　' ＜: /: : : : :／:ｲ: : : :|　　　　　　　　　 乂＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿ノ
　 　 ／|: : : :/｀|/＼∧:＞-- 　´　　　/: : : :／:／´￣￣￣｀ヽ




　　　　　　 　 　 　 ,ｲ.: : : : : : : : : :. :. :.ﾄ､∨: : ',: : : : : :',: :ﾊ
　　　　　　　　　　/: :.,': : :|: : : : : :ー}-ム} iヽ､: l.: : : :. :.i: : :.',
　　　　　　　　　 ,': : ,'.: : :.| ,ｲ.: : :. :./ﾘｨ行ミx ヽl: : : : : :|: : : :',
　　　 　 　 　 　 . : : { 斗イ{∨: : :./　　r'. ﾊ ヽ　!: : :,'　.|.: : : :.',
.　　　　 　 　 　 i ﾄ､ ',: :|: :!,ｨミへ〈.　　 ∨z} ﾉ　,': :/ : : !: : : : :.',
.　　　　 　 　 　 | ! ∨', ',ﾏ{∨}　　fi 　 　 　 }} / , ': : : :.!: : : :ゝ ∨　　　　　　　お、織斑君……。
　　　　　 　 　 八{　∨Ⅵﾊ ¨´}⌒ゞ､ _　-‐´./イ.: : : : :.|: : :.∧ヽi
　　　　　 　 　 　 ヽ　ヽ}｀ ﾊ イ　　　　　　 　 u.| : : : : : : : : !ヽ}　　　　　　　　　えっと、でき君も知ってるでしょ？
　 　 　 　 　 　 　 　 　 i: : 八　　　,　‐-　　　　|.: : : :.i!　,ｲﾘ､
　 　 　 　 　 　 　 　 　 l: : : :个　　　　　　　／.|: : : /从乂　 ￣￣￣　≧x　　 織斑先輩の弟さん、今は私の生徒なんだけど……。
　 　 　 　 　 　 　 　 　 |: :!: : : : :.｀＞ ､_, イ　　|: : /　 　 |　　　　　　　　　 ヽ
　　　　 　 　 　 　 　 　 !ノ∨: : :}ﾏヽ从/ ,' ＼ ,': :/　　　 |　　　　　　　　 /　 ヽ
　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 |: : :/　ヾ　　,'　　 ,: :/　　　　 | 　 　 　 　 　 /　　　 ∨
　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 |: :/　 　 　 ,'　　ノイ.　　　 　 |　　　　　　　/　　　　　∨
　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 |ノ∨　　　,'　　　　　　　　　　|　　　　　　 ,'　　　　　　 ∨


─────────────────────────

　……ああ、彼か。

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6730：造兵廠の方角に土下座 ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:45:09 ID:xap8EYXQ




　 　 　 　 　 　 j:.:人:.ﾊ　´　 〈　　　｀　　 '´　　 /:.:.:.:.:.:.:.:ヽ
　　 　 　 　 　 ,':/　iゝ:.ゝ､　　　　　　　　　　r‐':.:.ﾘ:./:.:.:.:i:.:ﾊ
　　　　　　　 ノ'　　 ﾚ:.:.:ヽｰ　　-‐ ‐　　　／i:.:.:.:/:ﾉ:.:.:.:.ﾉ:.:/
　　　　　　 　 　 　 j/:.:.:.:.:.:＼ 　 ｀　　 ／　 Lｫ:／:.:.:,イ:.:/
　　　　　　　　　　イ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:＞ ､_ ／_,. ＜　/:.:.／:.:.:.:./_＿,.､
　　　　　　　　　　 i:.:.:.:.:.:.,イ:.:.:.:.:.v‐K　　 　 /:.:/＞777/／//,ﾊ
　　　　　　　　　　 !:.:.:.∨　!:.:.:.:./rXvﾊ　　　ﾚ//////／//////!
　　　　　　　　　　 ＞-.,｀:.vr:.:/イ:.:/　 ヽ／//////f////////ﾘ
　　　 　 　 　 　 ,ｨr777／///／:.:.i ／///////////////////
　　　　　　　　 //!////／'／:.:.:.:.イ////////////////////
.　　　　　　　 /,.イ´///:／:.:.:.／//////////r7´/////////
　　　　　　／////////!:.:.／///////////, ﾍ//////////
　　　　 ／//////////∨/////////////｀ヽ∨///////
　　　　 !///////////////////////／｀＼ ｀∨/////
　　　　 ∨/////////////////////ー‐-､ ヽ__）////


────────────────────────────────────────────

　織斑……。織斑千冬。
　姉さんとは公立学校時代の先輩後輩の仲で、今はバリバリ叩き上げの軍人をやってるらしい。
　詳しい事は知らないが、姉さんが根っからの「ファン」らしく、昔から武勇伝めいた事は良く聞かされていた。
　単分子刀一本でミュータントの群れを撃退したとか、十代の頃、絡んできたチンピラ軍人を逆に叩きのめしたとか。
　何かモノ凄い技術力を持った科学者の親友で、独自にコネクションを持ってるとかなんとか……。
　何度か実際に会った事があるが、なんというか威圧感のある美人さんだった。

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6731： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:45:22 ID:xap8EYXQ




　　　　　　 /／ / } :ｨ:丶 ヾ　　}　　　　 　 　 　 〉　 //圦: { }|
　　　　　　　 ／ ,／_}: : :｀ト、 　 　　　　　　 　 ′,//: :.:Ⅹ{
　　　　　　　　／ /＾＼: Ｎ八　　　　 /￣￣ﾏ　　.八: : /　i{
　　　　＿＿_____/: : ＼＼　　＼.　　 {　 　 ./　／: ｲ :/
.　.／／￣>< ＼:｀＼ : ＼＼＿_＼　 ｀ 一' ／}／　}/
／／　.／ 　 >‐ ヽ: : ＼: : ー― ７ト　_　∠__
／　.／　 ／　 ﾍ⌒ ､: : ＼: : : : /＼: : : : : ／
　／　 ／　／　 ‘,　 }: : : : ヽ: :/ ／ }: : ∠_
:"　.／　／　　 　 }　:}: : : : : :｀ﾄ､{ 　 !: : : ＼≧ト
. ／　／　　 　 　 　 :}: : : : : : :∨ ）､}: : : : : :ヽ― ≧､
"　／　　　　　　　／: : : : : : : :.Ｋ　/: : : : : : :∧　　　 ヽ_
／　　　　　　　／＼: : : : : : : : : :∨: : : : : : /: ∧　　　　 }
　　　　　　　　 ＼　 ＼: : : : : : :／: : : : : : : : /: ∧　　/ 〈
　　　　　　　　　　＼　 ＞―≦: : : -―　　￣＿__〉 ./　/}
　　　　　　　　　　 ｒ＜＿＿＿＿＿　 -―＜　　 ／ ／ :}
　　　　　　　　　　 }　　　　　　　　　　　 　 /　　　　　 　 }


────────────────────────────────────────────

　そしてその弟の織斑一夏君。
　昔、彼が千冬さんにくっついて姉さんに会いに来た時に知りあった。
　わりかし歳が近い所為もあって昔は偶に遊んだりもしたが、成程、彼が原因か。
　大方、千冬さんがふと漏らした今回の一件を小耳に挟み、それを勘違い挟んで姉さんに話したんだろうな。
　……悪い子じゃないんだが、まあ、今度会ったらとりあえず一回殴っとこう。

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6732： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:46:04 ID:xap8EYXQ




　　　　　　　　　　　　　　　　／￣￣＼
　　　　　　　　　　　 　 　 　「　　 ｀ヽ　 ＼
　　　　　　　　　　　 　 　 （≡）（≡ ）　　 |）
　　　　　　　　 　 　 　 　　| 　|　　　　u.　|　　　　　　　　　（てか、今姉さんのクラスの生徒なんか）
　　　　　　　　　　　　　　 ｜､｀__ ,　　　　|
　　　　　　 　 　 　 　 　 　 |　　　　　　 .｜　　　　　　　　 （当然だけどつまりは高校生、早いなぁ……）
　　　　　　　　　　　　　　　 l 　 　 　 ／_.{
　　　　　　　　　　　　　　　　ｱﾆﾆ＜／／〉、＿_　__　　　　あー、まあ、うん。とりあえずそれは勘違いだから。
　　　　　　　　　　　　　　 ,./ /＼　 ／ : : : : : : ＞ : :＼
　　　　　　　　　　　　_／ /|ｲ:::::/∨. : : :l: : : : : : : : : : :.丶　俺は別になんもしてないし、特に変な事も起きてないから。
　　　　　　　　　　／. : : : :| ./｀Y / : : : 」: : : /: : : : : : : : }
　　　　　　　　　,´ : :/: : : :| ｉ::::::|/ : :／: : : ／: : : : : : : : :|
　　　　　　　 　 { : :/. : : : :|/:::::/ : : : : : : : | : : : : : : : : : ,'
　　　　　　　　/ : :,' : : : : : |::::/ : : : : : r---く´ニ＼: ヽ:ﾉ
　　　　　　　､'ｰr,_| : : : : : :|:/ : : : : :_/二ヽ　V: : : : ｀ :´
　　　　　 ／ :.／￣＞＜ :./ : : : : :/ 二 ヽ_」┘: : : ∨}
　　　　 / : : :ム　/ : : : :￣￣￣￣~ﾞ''-ゝ.」: : : : : ∨ :}
　　　　{ : : : : : :＼､ : : : : : : : : : : : : : : : :＼. : : :∨ : :l
　　　　ヽ: : : : : : : :￣"＼ : : : : : : : : : : : : : : : ／ : : :{


　　　　　　 　 　 　 ,ｲ.: : : : : : : : : :. :. :.ﾄ､∨: : ',: : : : : :',: :ﾊ
　　　　　　　　　　/: :.,': : :|: : : : : :ー}-ム} iヽ､: l.: : : :. :.i: : :.',
　　　　　　　　　 ,': : ,'.: : :.| ,ｲ.: : :. :./ﾘｨ行ミx ヽl: : : : : :|: : : :',
　　　 　 　 　 　 . : : { 斗イ{∨: : :./　　r'. ﾊ ヽ　!: : :,'　.|.: : : :.',　　　本当？　本当なのね？
.　　　　 　 　 　 i ﾄ､ ',: :|: :!,ｨミへ〈.　　 ∨z} ﾉ　,': :/ : : !: : : : :.',　
.　　　　 　 　 　 | ! ∨', ',ﾏ{∨}　　fi 　 　 　 }} / , ': : : :.!: : : :ゝ ∨　γ ￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣ヽ
　　　　　 　 　 八{　∨Ⅵﾊ ¨´}⌒ゞ､ _　-‐´./イ.: : : : :.|: : :.∧ヽi　 ｜　　嘘ついてもしょうがないだろ　　 . |
　　　　　 　 　 　 ヽ　ヽ}｀ ﾊ イ　　　　　　 　 u.| : : : : : : : : !ヽ}　　　乂＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿ノ
　 　 　 　 　 　 　 　 　 i: : 八　　　,　‐-　　　　|.: : : :.i!　,ｲﾘ､
　 　 　 　 　 　 　 　 　 l: : : :个　　　　　　　／.|: : : /从乂　 ￣￣￣　≧x　　そ、そっかぁ……。
　 　 　 　 　 　 　 　 　 |: :!: : : : :.｀＞ ､_, イ　　|: : /　 　 |　　　　　　　　　 ヽ
　　　　 　 　 　 　 　 　 !ノ∨: : :}ﾏヽ从/ ,' ＼ ,': :/　　　 |　　　　　　　　 /　 ヽ
　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 |: : :/　ヾ　　,'　　 ,: :/　　　　 | 　 　 　 　 　 /　　　 ∨
　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 |: :/　 　 　 ,'　　ノイ.　　　 　 |　　　　　　　/　　　　　∨
　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 |ノ∨　　　,'　　　　　　　　　　|　　　　　　 ,'　　　　　　 ∨


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　実は今朝から記憶に障害が……、なんて冗談は言わないでおいた。
　言えば間違いなく本気にするだろうし、俺としてはこれ以上心配もさせたくない。

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6733： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:46:29 ID:xap8EYXQ




　　　　　　　　　　　　　　　　　_　．．．　_
　　　　　　　　　　　　　＞　´ ,　'.: : : :. :. :. :.‘　，
　　　　　　　　　　　 ／.: : : :./: : : : : : : : : : : : : : ‘ .，
　　　　　　　　 　 ／: : : : : :/.: : : : : :. :. :. :./／: : : : ‘.，
　　　　 　 　 　 ,ｲ: : : : : : :/.: : : :. :.,': : : : /: : : :/: : : : ',∨
　　 　 　 　 　 ,': : : : : : : :.i.: : : :. :.,'.: : : :.,' : : , ': : : : : : 〉∨
.　　　 　 　 　 : : : : : : : : :.l: : : : : :i: : : : :;: ／ |.: : : :. :./: : i
　　　　　　　　i.: : : : : : :. :.|: : : : : :!: : -‐|/― lト: : : :/: : : :}
　　　　　　　　l.: : : :. :.γ .|.: : : :. :.l: : : :.|　 　 ||ﾏ ／: :/: : |
.　　　　　　　 ハ}: : : : { 　.!.: : : :. :.l: : : :|､　　 ﾘ ﾏ/: :ヽ: : :!
　　　　　 　 /イ !: : : : i　 .!: : : : : ::l: : : |ヾ弌　 ノ}: :/: :,' :.|
.　　　　　　　 　 |.: : : :.ゝ､.!: : : : : : ',: :|ﾘゝ_　/¨{ｨﾐノ: :,': : |　　　よ、よかったぁ〜……！
.　　　　　　　 　 | ./!: : : :/!.: : : : : :.|Ⅵ　 　 　 　 >: : ハ: .!
.　　　　　　　 　 |/ { : : / .|.ﾊ : : : : |　　　r　v ／: : ,'　 ゝ|
.　　　　　　　 　 i　从 /　 ﾘ. ',.: :. .:.ﾄ､　　 ´,イ: : : :.,'
　　　 　 　 　 　 　, xへ　　 　',.: : :.|::::::＞ｲ/i: : : :.,'　　 γＹ⌒ヽ
　　　　 　 　 　 ／ 　 　 ＼　　',: : :|::;:' ﾉイ　! : : ｲ 　 乂　　　　 ）
.　 　 　 　 　 ,ｲ　　　　 ,'　 ＼　',: :.ﾄ､＼__ 　| : : ,'　　　 ゝ、＿ノ
　 　 　 　 　 i　./¨¨`丶!　　　＼ゝ {. ヽ 　 .｀i: :./
　 　 　 　 　 | / 　 　 　 　 　 　 ' , ヽ　 ヽ　ﾉイヽ
　 　 　 　 　 |,'　　 　 　 　 　 　 　 ヽ　　 ヽ　　　',
　　　　　　　 }　　 　 　 　 ＼　　　　 ＼ .ヽ ヽ‘， ',
　　　　　　　 i　　　　　　　　 ＼　 i!.　　＼ ヽ　ﾏゝヽ､
　　　　　　　 |　　　　　　　　　　ヽ i! 　 　 .＞x 　 ヘ､ ト､
　　　　　　　 |　　　　　　　　　　　 ｀ヽ　　　　　 ＞x .ヘ　ヽ


────────────────────────────────────────────

　なんせ、俺が無事だというだけで心底からほっとするような人なのだ。

　多少ぽやぽやしていてそそっかしい所はあるが、伝聞だけで数駅分の距離を訪ねてくる様な、そんな人。
　切符代だって安くは無いだろうし、今の時期に仕事に穴を開ければ後々大変だろう。
　有体に言って善人。お人好しで心配性な、俺の大事な姉さんである。

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6734： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:46:43 ID:xap8EYXQ




　　　　　　 　 　 　 ,ｲ.: : : : : : : : : :. :. :.ﾄ､∨: : ',: : : : : :',: :ﾊ
　　　　　　　　　　/: :.,': : :|: : : : : :ー}-ム} iヽ､: l.: : : :. :.i: : :.',　　　　 って、あ！
　　　　　　　　　 ,': : ,'.: : :.| ,ｲ.: : :. :./ﾘｨ行ミx ヽl: : : : : :|: : : :',
　　　 　 　 　 　 . : : { 斗イ{∨: : :./　　r'. ﾊ ヽ　!: : :,'　.|.: : : :.',　 　　どうしよ、慌ててたから財布しか持たずに来ちゃった……。
.　　　　 　 　 　 i ﾄ､ ',: :|: :!,ｨミへ〈.　　 ∨z} ﾉ　,': :/ : : !: : : : :.',
.　　　　 　 　 　 | ! ∨', ',ﾏ{∨}　　fi 　 　 　 }} / , ': : : :.!: : : :ゝ ∨　 そういえば部屋の電気消してきたっけ……？　洗濯物も……。
　　　　　 　 　 八{　∨Ⅵﾊ ¨´}⌒ゞ､ _　-‐´./イ.: : : : :.|: : :.∧ヽi
　　　　　 　 　 　 ヽ　ヽ}｀ ﾊ イ　　　　　　 　 u.| : : : : : : : : !ヽ}　　　 あぁ〜、帰ったら確認しないと……。
　 　 　 　 　 　 　 　 　 i: : 八　　　,　‐-　　　　|.: : : :.i!　,ｲﾘ､
　 　 　 　 　 　 　 　 　 l: : : :个　　　　　　　／.|: : : /从乂　 ￣￣￣　≧x　
　 　 　 　 　 　 　 　 　 |: :!: : : : :.｀＞ ､_, イ　　|: : /　 　 |　　　　　　　　　 ヽ
　　　　 　 　 　 　 　 　 !ノ∨: : :}ﾏヽ从/ ,' ＼ ,': :/　　　 |　　　　　　　　 /　 ヽ
　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 |: : :/　ヾ　　,'　　 ,: :/　　　　 | 　 　 　 　 　 /　　　 ∨
　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 |: :/　 　 　 ,'　　ノイ.　　　 　 |　　　　　　　/　　　　　∨
　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 |ノ∨　　　,'　　　　　　　　　　|　　　　　　 ,'　　　　　　 ∨


────────────────────────────────────────────

　……こんなんでも一応、高等教育を教える側に立っているので頭は良いのだ。それもかなり。
　実際、俺の知識の殆どはこの人の勉強や授業の練習に付き合った為、身に付いた様なものである。
　チバに関する情報や知識なども、殆どがこの人の受け売りだ。
　風の噂では、教え方が丁寧な上、物腰も柔らかいので人気があるとか。
　――主に男子に。

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6735：名無しの工員さん：2015/05/10(日) 22:46:47 ID:.86H9A1A
ふむ

6736： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:47:05 ID:xap8EYXQ




.　　 　 　 /: : : : : i.: : : : : : :.i }: : : :.i: : : : :.',: : : : :.‘，
　　　　　/: : : : : : l : : : : : : ,'.,': : : :.|: : : : : :',: : : : : :‘，
　 　 　 ,'.: : : :. :. :.|.: : : :. :.//: : :./ lﾏ: : : : :.:l: : : : : : :.',
　　 　 ,: :/: : i: : ! |_ﾄ､-‐/ｲ: : :./} ﾅ弋=-､: :!.: : : :. :. :.i
　　 　 :.,ｲ: : :.| ,イ:| | ヽ: : :,': : / ﾚ 　　ヽ: : :.ト: : : : : :l.l
　　 　 l.|.i.: : :.|ﾏ ! l ! 　ヽ.,' ／{　　　　　乂:.l.: : : : : :.l l
　　　　!| ', : : !.Ⅵ ﾘ　　 ﾉｲヽ ゝ　ｨ=＝=ミ l.: : : : : :.l l　　　　 ――普段から電気点けっぱなしだし、良いですよねもう！
　　 　 .i|　',: :ﾑﾊ.!,ｨ=＝=ミ､ 　f　　　　　　,': : :.／: :lﾉ
　　　　　　 マﾑﾊ　　　　　ｨ⌒ゝ ＿＿　 ,': :／: : : :　　　　　　……でも本当、心配したのよ？
　 　 　 　 }: :ヽゝゝ-‐ ¨ ´ 　 ‐- ､　　／.イi : : : : !
　 　 　 　 | :!: : : :八　　　{　　 　 !　　　 ｲ :|: : ∧{　　　　　　 最近全然連絡をくれないし、何してるかも教えてくれなかったから。
　　 　 　.//|: : : :/: :＞ ､ ゝ　　ノ　　イ : : ,': :/
　 　 　 /ｲ .',: : :.| ﾏ: :ﾄ､ ＞､　　イ 　.|／.,' :/　　　　　　γ ￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣ヽ
　　　　　　　　',: : |.　ヽi　／}　 　 　 　.|ヽ/, '　　　　　　 |　　仕事が忙しかったからなぁ……　　　　　　　　　...|
　 　 　 　 ＿ ',: :l_　ゝ´ｲ　;　 　 　 　 ∨ｲヽ　　　　　　　|　　あの社長、碌に休みも取らせてくれなかったし　|
　　　 γ´ 　 　 ゝ{　　/‐- ､　　　　＿　i　　　ゝ､ _　 ＿乂＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿__ノ
　　　,'i　　　　　　　 /　　　　　γ 　 　 |　　　　　　　　
　　 ,' l　　 ,ｲ　　　,ｲ　　　　　　　　　　 |　　　　　　/ 　 　 ',
　　 i　l　 ｲ　　　, '　　　　　　　 　 　 　 |　　 　 　 /　　　　 i
　　 |　 x≦´　／　　　　　ﾉ　　　　　　　|　　 i! 　/　　　 　 ﾉ}


────────────────────────────────────────────

　落ち込んでいた姉さんは、数秒もすると逆に開き直ったようだ。
　そしてさっきまでの不安そうな顔はどこへやら、すっかり安心しきってにこにこ笑いながら話しかけてくる。

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6737： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:47:32 ID:xap8EYXQ




　　　　　　　　　　　　　　　　_　　 -…-　　_
　　　　　　　　　　　　　,　'.: : : : : : : : : : : : : : :.＜
　　　　　　　　　　　 ／: : : : : :.,'.: : : : : :.∨: : : : : :‘ ，
　　　　　 　 　 　 ／: : , ': : : :.,': : : : : : : :!} ',: :',: : : :ヽ.＼
　　　　　　　　　/: : : :/.: : : :.,': : : : : : : : /: :i: : ',.: : : :.',: :∨
　　 　 　 　 　 /./: : / : : : : ,i.: : : : : :. :./: : :|: : : ',: : : :.',: :∨
.　 　 　 　 　 /,ｲ: : ,': : : : :/ |.: : : : : :.ノ : : ,'i: : : : ',: : : :',: : .
　　　　　　　,'/.;: : : :,': : : ,'ｨ十|ﾏ丶: : : : :.7 T ‐- _',: : : :',: :i
　　　　　 　 !i　|: : i | ／,'　　V　ﾏ/: :／ﾚ' ./ｲﾘ∨ :ト: : :.',:,'
　　　　　 　 |!　!: : !.!: : ,'　,ｨ=＝ﾐ/イ {　　,ｨ=＝ﾐ∨:}: : ∧i
.　　 　 　 　 　 |　 | !ﾏ !,ｲ r' 　:|　　ヽ!　　 r' 　:}㍉,': :,': :.}!　　　　　そうなんだ……。
　 　 　 　 　 　 i: 八! ﾏ!ヽ弋.少 　fi　 fi　　マソ /,': /: : :.{
　 　 　 　 　 　 l: : : :Ⅵﾍ　　　　_ ｲ.⌒ゞ､　　　　ﾉイ :∧ .i　　　　　……じゃあ、今日は色々聴かせてもらおうかな。
.　　　　　　 　 /ｲ: : :.ゝ{∧　￣　　　　　　　￣ /}: :／　.;ヽ!
　　　　　　　　　i{ iﾏ: :.i : : ゝ　 　 ｀　　 ´　 　,ｲ ,': : : : :,'　　　　　　三日お休み貰っちゃったから、今から帰っても暇なだけだし。
　 　 　 　 　 　 八! ﾏ ﾑ: : {ヽ ＞ ､　　 　 イ: : :,': : :,'! ,'
　　　　　　　　　 　　∨ﾑ{ヽ: :从|　　｀´　　|/{ /　,ｲ i/　　　　　　 γ ￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣ヽ
.　　　　　　 　 　 　 　＼ ',: : :.r‐|　　　　　 |_ / , '　ノ´　　　　　　 ｜　……もしかして泊るつもりだった？　|
　　　　　　　　　　　 　　_ヽ／i ¨　　　　　 ／イヽ‐-　　　　　　 　 乂＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿ノ
　　　　　 　 　 　 ＞ ´　／　 l　　　　　　　 　 ',　ゝ､　｀ﾞ＜
　　　　　　　γ´_,x＜　　 　 .l ￣ ヽ　　γ ￣ l　　　　＞ｭ､ ` ､　　本当に逮捕されてたらそうなるかな、って……
　　　　　 　 ,'　',　　　　　　　l　　 　 　 　 　 　 l　　　　　　　　 ',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 γ ￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｜　ごめん、ちょっと笑えないそれ　　　 .|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .乂＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿ノ

　　　　　　　　　 　　_................_
　　 　 　 　 　 _...::'´: : : : : : : : : :｀:.ヽ
. 　 　 　 　 ／: : :/ : : : :／ : : ／ : : : ＼
　 　 　 　 /: : : :/ : : : / : : :／: : :/ : : : : ＼
. 　 　 　 /: : : : !: : : :: : : : /: : : ノ:/: : : : : : :ヽ
　　　 　 j: : : : :|: : : :ｌ : : :/ : ／/;ﾊ: : : : /:/j:.:',
.　 　 　 ﾉ: : : :/| : : : : : -|‐/￣|:ト |、: :/:/:/ }:.i
　　　　/! : : /:.:|: : :|: : : /!/　　{:|ヽ! : /:/:/:./:.:.!
　 　 ノｨ:.:.､:.|: /!: : :! : : lz=＝ﾐ从　レ':,.ｨメ/:.:.:.|
　　 　 |:.:.:.:j;|:.{ |: : :|:. : :|7　　 　 ∠／ノ1/:.:.ﾉ:j
　　　　!:.:|:.:.:.:.｀| : : |､: :.|＼､＿人:7｀ﾞヽ /ｨ:./:./　　　　　　　　……まぁ、どっちみち着替え忘れちゃったから
　　　　ｊ;八ﾊ:.:.:.!:i : |:i＼!　/￣ヽ {ｌ　 ／:.:.j:.{ノ
　　　　 　_..-Ｖ=!|: : :|､ 　 {　　 ﾉ　>=ｲ:.:./:ﾊ!　　　　　　　　　 今日の午後には帰る事になるんだけどね！
　　　　／　/　　､: :｜ ＼ ｀二 イ .,ｨ´:.:/:/
　　　 / /　￣｀ ヽ＼! /／j;／Ｖ{_ {ﾊ:ノ:.:ｊ ミ､ヽ　ﾀﾊﾊ……
.　　　{ /　　　　　 ＼＼＼.ｒ┼-- ｀!ヽ:./　 　 ☆
.　 　 i/　　　　＼　　ヽ ヽ ＼!ー-　Ｖノ
.　 　 |　　　 　 　 ＼　 i　i 　 ＼ヽ　 ＼

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　姉さん、俺は割と笑えません。逆に貴方の方が心配になってきました。

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6738： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:48:03 ID:xap8EYXQ




　　　　　　　　 　 　 ／￣￣＼
　　　　　 　 　 　 ／　｀ー　 　 ＼
.　　　　　　　　 （≡）（≡ ） 　u.　|
　　　　　　　　　 | 　|　　　　u　　|　　　　　　　　てか、俺一応男なんだけど。
　　　　　　　　　 ｌ___｀___　　　　　|
　　 　 　 　 　 　 { 　 　　　　　　|　　　　　　 　　流石に女性が同じ部屋に泊るってどうよ。
　　　　　　　　　　{ 　 　　　u.　/
　 　 　 　 　　＿＿＼　　　　 /ﾘ 厂`'‐- .._
　　　　　　／ :　　: :介ｰz＜__｣// |: : : : : : :ヽ
　　　　 　 | : : : : ::〈　｢｀乂/ 　/ 丿: : : : : : : |
　　　　　　| : : : : : /: |　{::::}　/ `7: : : : : : : :│
　　　　　　| : : :　〈: :│ {::::l /. :/. : : : : : : : : |


　　　　　　　　　　　 　 ＞ ﾞ ´: : : : :.`ﾞ＜
.　　　　　 　 　 　 ， ‘: : : : i: }.: : : : : :. :. :.ヽ
.　　 　 　 　 　 ／ : : l.: : : :.l /: ::|: : ヽ.: : : :. :.ヽ
.　 　 　 　 　 ,.': : : : :.|.: : : :./: : :.|: : : :ヽ.: : : : : :.∨
　　 　 　 　 ,' /: : :/: l: : : :,': : : :∧: : : : ',: : : : : : :∨
.　　　　 　 : :,'.,': :ｲ: : ﾏ.: : : : : :.T T|‐-､ }: : : : :.| : :
　　　　　　: :{ i: : :! 斗|ﾏ ', : : /ﾘ ,ｨ=ミxゝ: : : : :.|: : !
　　　　　　|,ｲ !| イ ,ｨ=ミ､へ〈　　.r　ﾊヾ.| : : : : l: : i　　　　？
　　　　　　ll ! l.!ⅵ {{ r ハ　　　　匕汐ｱl: : : : :.,'ヽ.|
　　　　　　|! | ﾘ ⅵヽ乂ソ　}⌒{ , , , , . ,' :／: :,'ノ: :!　　　　でもでき君だし、平気じゃないかなぁって。
　　　　 　 　 ', : : ゝハ , , , ﾉ　 ｀＝=　,'イ: : :.,': :|ヽ{
　　　　　　 　 ',.: : : :.八=‐´　r =-､　 　.,' : : ,': : |
.　　　　　　 　 j/|: :.|: :个ト ､ ゝ-‐　 イ,': : :/Vヽ{
　　　 　 　 　 　 ﾘﾏ|: : :.∧从≧ イ 　,' ;ｲ/＿
　　　　　　　　　 　_|: :, '￣￣_}　　　/ｲ .}　　　‘ ，
　　　　 　 　 　 　/ !/　　 ／ 　　　／　 　 　 ＞ .',
.　　　　 　 　 　 /　　 　 / ヽ　,-‐/　　　＞ ´　 　.∨
　　　　　　　　 ,'　　　　/　 　 　 /　　 ｲ　　　　　　 ∨
.　　　 　 　 　 { 　 , ' ノ　 ,ｲ 　, '　　i ,'　　　　 .／　　}
　　　　　　　 / .／ ,ｲヽ, '_ _.イ　　　{　　　　／　　　/
　　 　 　 　 ,'／　,ｲ　/／　　　　　 ,'　　　　　　　　 i

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　マジで泊るつもりだったのか。しかもこの部屋に！
　薄々ホテルとか取って無いんだろうな、とは思ってたけどさ。

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6739： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:48:20 ID:xap8EYXQ




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　　　 　 　 　 　 . : : { 斗イ{∨: : :./　　r'. ﾊ ヽ　!: : :,'　.|.: : : :.',
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　　　　　 　 　 八{　∨Ⅵﾊ ¨´}⌒ゞ､ _　-‐´./イ.: : : : :.|: : :.∧ヽi　　　　　　そ、それとも迷惑だったかな？
　　　　　 　 　 　 ヽ　ヽ}｀ ﾊ イ　　　　　　 　 u.| : : : : : : : : !ヽ}
　 　 　 　 　 　 　 　 　 i: : 八　　　,　‐-　　　　|.: : : :.i!　,ｲﾘ､　　　　　　　　　　　γ ￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣ヽ
　 　 　 　 　 　 　 　 　 l: : : :个　　　　　　　／.|: : : /从乂　 ￣￣￣　≧x　　　 ｜　いや、別にそんな事は……　　　　　 .|
　 　 　 　 　 　 　 　 　 |: :!: : : : :.｀＞ ､_, イ　　|: : /　 　 |　　　　　　　　　 ヽ　　 .乂＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿ノ
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: : : : : :|: : /!　 Ⅵノ: : : : |: : :､/ }/ |: :|: : :.l: :.
: : : : : :|: / {￣￣　∨: : :|: : :/｀ー-!: ;: : : ||:.|
: : : : : :Ⅵ r≧ｫ=､　 ＼: {:／--}'　 l/: : : :八|　　　　……あっ！　も、もしかして「平気じゃない」理由があるとか？
,: : : : : : ﾑ込zソ 　r､{:/＼}ｨﾃ示ヽ/|: : :,: | |:;
},: : : : : {､:＼:.:.:.:_,.ﾉﾉr==ミ{ゞﾟ-'　 , :|r,:/:/ j/　　　　 ――そ、そうだよね！
∧: : : : : :､: T¨¨´:.:.:.:.:.:.:.:' ー==≠=ｲ/: { /
' |:∨: : : :∧:}　　　　　　　　　 ,.: : : ∧: :|　　　　　　 男の子一人暮らしだし、色々隠しとかないと行けない物とかあるよね！
./:ｲ∨: : : :∧、　〜〜　　　イ: : : :∧:{＼
__　ｲ∨: : : : } ＞　__,.. r=≦､|: : : :,　 ｀　　　　　　　　お、お姉ちゃん気が利かないでごめんね……！
　　 ＼＼: : :|　 　 {^ヽ.　　 八: : :.|　　ｶｧｧ……
- 、 　 　 ＼{､　　　 _∧ 　 　 }: :/
　　＼. 　 　 ＼ヽ　　 　 ＼ 　 ∨'，
　　　　　､ }　　'，　　 　 　 ヽ　 }　:.
{. 　 　 　 Ⅵ　　 ､　 ; 　 　 　 ＼　 }

6740： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:48:53 ID:xap8EYXQ




　　　　　　　u　　　　　　　　　　　 　 　 ',
　　￣ﾞ`ｰ-.､　　　　　u　　;,,;　　　j　　　 !
　　　J　　　ﾞ`ｰ､　　　"　;, u 　 　 ﾞ 　 u l
　　　　　_,,.. -─.ゝ､　　　;, "　;;　　　_,,..._l　　　　　　 ,i'`‐､　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 r'~ヽ
j　　　／　　 ,.- ､　 ヾヽ、　;; ;;　_,-＜　　|　　　　　 ,/　　ト, -'`‐-､　　 .,'￣ !　　　　 --、　　　　　　 ┐　 !　__, ､
　　　:　　　　､・丿　　￣≠乂ｲ´,-､　ヽ　l　　　,r'‐" 　 　._ノ ､_　　｜　.l　　j　　　　.|　 . ヽ　　　　　　 ', 　.'　　 ._ﾉ
　　　 ＼_　　　 _,,......::　　　´ﾞ;､　`¨　/　 .!　　　ヽ-､　 /　　l、　丁'´　　|　　|　　　　 ＼　 ＼　　　　　　!　　/'"
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　　　 　　 　 　 ＿＿ 　 　 　 ／　　 　 '
　ﾞ　　　u　,.／ 　 "　 ｀`- ､_ 　 　 　 ./　　　　そんなもん持ってないっての！
　　　　　 ./＿_　　　　　　　　ｰ７　 ./
　　　　　/;;;''"　￣￣ ───/　 ﾞ/　　　　　　見てみろよこの殺風景な部屋！　生活用品すら碌にないってのに！
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　　　　　 　 　 　 ﾘ}: :{.f´ {　　　 .i　 /: :,'.: : : : : :.,'.: : : : : : : :. :.|　　　　……え？
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　　　　　　　　　　　　　　 ヽ ノイ , ｲ　／＞ ´　ゝ､　　 ∨
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　渾身の力で否定を飛ばすと、姉さんはそこでようやく気が付いたように周囲を見回した。
　ベッドの他には数個の大型ケースと、元々あったテーブルと小さな棚。
　そして恐らく前の住人が置いて行ったと思しき、まともに映らない旧型テレビ。

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6741： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:49:53 ID:xap8EYXQ




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　　　 　 　 　 　 . : : { 斗イ{∨: : :./　　r'. ﾊ ヽ　!: : :,'　.|.: : : :.',
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.　　　　 　 　 　 | ! ∨', ',ﾏ{∨}　　fi 　 　 　 }} / , ': : : :.!: : : :ゝ ∨
　　　　　 　 　 八{　∨Ⅵﾊ ¨´}⌒ゞ､ _　-‐´./イ.: : : : :.|: : :.∧ヽi　　　　　……えっと、……辛くなかった？
　　　　　 　 　 　 ヽ　ヽ}｀ ﾊ イ　　　　　　 　 u.| : : : : : : : : !ヽ}
　 　 　 　 　 　 　 　 　 i: : 八　　　,　‐-　　　　|.: : : :.i!　,ｲﾘ､
　 　 　 　 　 　 　 　 　 l: : : :个　　　　　　　／.|: : : /从乂　 ￣￣￣　≧x
　 　 　 　 　 　 　 　 　 |: :!: : : : :.｀＞ ､_, イ　　|: : /　 　 |　　　　　　　　　 ヽ
　　　　 　 　 　 　 　 　 !ノ∨: : :}ﾏヽ从/ ,' ＼ ,': :/　　　 |　　　　　　　　 /　 ヽ
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　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 |: :/　 　 　 ,'　　ノイ.　　　 　 |　　　　　　　/　　　　　∨
　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 |ノ∨　　　,'　　　　　　　　　　|　　　　　　 ,'　　　　　　 ∨


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　辛くは無かったよ、帰って寝るだけだったから。
　ついでに金も無かったけど。
　……だから遠慮がちに言わないでくれ、虚しくなる。
　あと、なんで妙な方向に気を回すのに男女の云々は鈍いのかなこの人は。

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　　　　　　　　　　　　　　　 ＞ ': :´ ､.: : : :. :.｀ﾞ: : . .
.　　　　　　 　 　 　 　 ＞ ´.／.: : : :.ム.: : : :. :. :.ヽ: :‘ .，
　　　　　　　　　　　／: : ,' ﾉ: : : : ,': : :.l.: : : :. :. :. :.l : : : : ヽ
.　　　　　　　　　 , ' /: : ,'.: : : :. :./: : : :.!: : : : : : : : l.: : : : : :.ヽ
.　　　　 　 　 　 / ./: : ,'.: : : : :.≠ ､: : :|.: : : :. :. :. :.l.: : : : : :. :.',
　　　　　　　　 / ,ｲ.! :,' {: :! ／/人 ヽ i: : : : : : : : :.l.: : : :. :. :. :.i
　　　　　　 　 ,'./ i. { .!: :Ⅵ´ノ,ｨミxマ,': : : : : 人: : l : : : : : : : : l　　　　　　　わぁ……。
　　　　　　　 ,'ｲ　|| ⅵ ハ{ 　　r'::::}ヾ｀}: :i.: :（__）: i.: : : : : :. :. :.l
　　　　　 　 　 　 |l: :ヽ.ﾋﾑ　　 匕ｿ }}.,': :,'.: : : : : :.;.: : : : : : : : :.l　　　　　　　よ、良く見たら冷蔵庫も無い……。
　　　　　 　 　 　 ﾘ}: :{.f´ {　　　 .i　 /: :,'.: : : : : :.,'.: : : : : : : :. :.|
　　　　　　　　　　} |: : {　 ゝ _　ノ ./ ／: : : : : : ,' |.: : : : : : : : :.|　　　　　　　で、でき君、今まで何食べてたの？
　　　　　　　　 　 } .| :∧ r　､　　ノイ: : : : :.!: : ,'_/: : : : : : i! : : |
.　　　　　　 　 　 ,'　| : ∧ヽ _}　 　 .i.: : :. :.,'l: :,': : :.i: : : : :.∧: : {
.　　　　 　 　 　 ,'.　ﾊ: : :∧＿＿ 　,': : : :.,' .!.,' {: : :|: : /}ｲ　 ヽ､ゝ
.　　　　　　 　 ノイ　 ∨.: : : :.|ﾏ:::`;: : : : ,'　　　∨ﾏ／/
　　　　　　　　　　　　 ∨　!Ⅵ .ﾏ,'.: : :., '　 　 　 〉‐-､
　 　 　 　 　 　 　 　 　 ∨.| ヽ　,': : ／　　　,　' 　 　 ',
　　　　　　　　　　　　 　 Ⅵ 　./ ／ } 　 .／　 ＞ ´　.ヽ
　　　　　　　　　　　　　　 ヽ ノイ , ｲ　／＞ ´　ゝ､　　 ∨
　　　　　　　　　　　　　　　 　 /./　／　／　¨¨ ￣　 ｀ヽ∨

6742： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:50:07 ID:xap8EYXQ




　　　　　　　　γ　￣　｀ヽ
　　　　　　　　,　　　　　　 l
　　　　　　　　|　三　　三 |
　　　　　　　　|　　　　　|l| !
　　　　　　　　| |　　　　　｜　　　　　えっと、出来合いの弁当（プラント合成品のみ）とか
　　　　　　　　| U r　- 、 ,
　　　　　　　　|　　｀ - '　 !　　　　　　インスタント品（プラント製）とか、ＩＡＩの安いゲテモノとか
　　　　　　　　ゝ 、＿＿ノ
　　　　　　 /￣ ﾌ　γ -┐
　　　　　　入_／ト-┴,,,く|
　　 　 　 /　　 /::::| |:::::|　,
　　 　 　 |　　 '::＿! !＿　 ,
　　 　 　 |　　':└┐┌┘　,
　　 　 　 |　ｲ::::::::└┘::|　　,



　　　　//:.:.:.:./:.:.:.:.:.:.:ﾊ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.//:.:.:.:,A==|-!､:.|:.:i.:.:.:.:.:.:.:.:|:.:|
　　 　 {:i:.:.:.:.:i:.:.:.:.:.:.:/　|:.|_.::.:.:.:.:.://:.:.:.j:.|　|::.:|　ヽ:!:.:i.:.:.:.:.:.|.:.|:.:|
　　　　|ﾊ:.:.:.:|:.:.:.:.:.:.:{ ,.ｲ:.|ヽ:.:.:.:.//!:.:.:/|:|⌒!:.:|　　 i:.:|:.:.:.:.:.!.:.|:.:|
　　　 ｜.|:.:.:.|:.:.:.:.:.:.:/　|:.:!- ＼ﾉ':.:!:.:/ jﾉ 　j:;ﾉ　　 川:.:.:.:./|:.:!:.:.!
.　　　　　|:.:.:.|:.|:.:.|:/:|　 V　　　＼jノ＼　'"z=≡==-､j:.:.:/:.:j/:.:.|:i
　　　　　 }:.:.:.!:ﾊ:.:!:.:.|　　 ／＿｀　｀ ー‐　　　 　 　 /:.:/:.:.:.:.|:.:i､:＼　　　　　　　　　今日はお姉ちゃんがごはんを作ります。
　　　　　 |:.:.:jﾉ:.:i:.i:.:.:!　　〃⌒ﾞ｀ヽrt＿rt　　" " " ｊ;ノ.:.:.:.:.:.|:.:| ＞'"⌒＼
　　　　　 |:.:.i:.|:.:.＼＼:、/′,, ,, ,,　};厂｀ｰ＝======|:.:.:.:.:.:.:.|:.:!　　　　 　 ヽ　　　　　良いですね？
　　 　 　 j:.:.j:.|:.:.:.:.:.＼:!ヽ"　 　 ／　　i　 　 　 　 　 j:.:.:.:.:.:./ノ　　　　　 　　i
.　　　　 /イ:.:ﾊ:.:.:.:.:.:.:ｉヾ==＝'"　　　　　 _ ノ 　 　 /!:.:.:.:.:/ 　 　 、i　　　 　 !
..　　 　/／!/　|:.:.:.:.:.:.|:.:.:.:＼　　　　 ￣ 　 　 　 ／/:.:.:.:./　　　　 i｜　 　 　 i
　　　 '" 　 |＿.!:.:.:.:.:.:.|＼i｀ヽ:＞-　_　　　 　 ／　/:.:.:.:.∧　　 　 ､｜　 　　　|
　 　 　 　 /　　､:.:.:.:.:.:|　　　　　 |　＼｀￣￣　　/:.:.:.／ ∧　　　　 ＼　　　　|
　　　　　/ ＿_　＼:.:.: V 　 　 　 ト､　 ＼　　 ∠..／　／　i　　　　　　＼　　 |
　　　　 /　　　＼　＼:.:.v　　 　 ﾉ　＼　　　　　 　 ／　　　i　 　 　 　 　 ヽ　|
.　　 　 i　　 　 　 ＼　iヾ!　　　/ 　 　 ￣｀ヽ　 　 / ／　　/＼　　　　　　　}/


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　有無を言わせぬ妙な迫力に、俺は黙って頷く事しか出来なかった。

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6743： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:50:37 ID:xap8EYXQ




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　　　　 　 　 　 　 　 　 {: :l :| i : : !,ｲ　|.l ∨.: : : : : :.} | ﾚ'∨､ } .| } :!
　　　　　　　　　　　　　 }: :l | !／:| {　 ﾘ　 ヽ}: : : : ｲﾘ　 　}: :/: :|ﾉリ
　　　　　　　　　　　　　 |: :l |.!ﾏ: :{ﾘ　,ｨ＝ﾐ ﾑイヽ{ ｨ＝ﾐ､! /: : :|
.　　　　　　　 　 　 　 　 l: :l ﾘ: :ﾏﾑ 〃　　　 fi　 fi　　　 /ｲ.: : :.|　　　　　　　　よろしい。
　　　　　　　　　 　 　 　 | :|: : : :{ヽゝ　 　 　 ﾉ⌒ゞ ＿＿l |: : : :|
　　　　　　　　　 　 　 　 | :|: : : :ﾄ.ヽゝ=＝ ´　-‐-､　 　 ,' !: : : :|　　　　　　　　そうと決まれば、材料を買いに行こっか。
　　　　　　　　　　 　 　 ,': :|∧: ﾑ: : ＼　 　 ヽ　　ﾉ 　 ｲ: :i: :.∧{
　　 　 　 　 　 　 　 　 /イ.jﾏ ',: :ﾑ: : : :ヽ　　　　　 イ ／/ :/　　　　　　　　　　お姉ちゃんこの辺詳しくないから、案内してね？
　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ∨' , ﾑ乂ヽ |｀ ≧ｭイ i ﾚ　/イ
　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ヽゝ　_ .|　　　　　ﾄ､､
　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 イ r'　　　　　　　', ゝ､
　　　　　　　　　　　　　　 ,　-‐　　　　.|　　　　　　＿ | 　　 ￣ ‐- ､
　　　　　　　　　 　 　 　 /　　　　 ,' 　 |￣　ヽ　 '´ 　 .|　　　　　　　',
　　　　　　　　　　　　　 ハ　　　,ｲ　　 |　　　　　 　 　 |　　　.',. 　 / }
　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 ',　 ./ 　 　 |ヽ　　 　 　 　 r'ﾏ 　　 ',　/　{
　　　　　 　 　 　 　 　 ,'　　 ', /　　　　|ﾟ ｀ヽ 　 {　 γ　ﾟl 　 　 ∨ 　ﾑ


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　　　　　　 　 　 　 　 　 　　　　.／　　　ノ　　＼ 7　　　　7 } : : : :＼__
　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　　　（ ─)（─)/｀ ‐　　/ /: : : : : : : : : :｀ '' ‐-､__
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　 　 　 　 　　|　　　　　　　　　｀ヽ.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: : : : : : : }
　　　　　　　　　　　　　　　　　　}　､　　　　　 /　　　　　　　 _,. -＜｀丶､.:.:.:.:.:.:.:.:.: : : : :/
　　　　　　　　　　　　　　　　　 ハ､　`　 ─ ィ--─一⌒V : : : : : : : : : : : : : : .:.:.:.:.:.:.:.:ｒ´
　　　　　　　　　　　 　 _ ,.-=〈:.:'､`ヽ、___ 　ﾍヽ:.＼: : : : : ､: : i:: : : : : : : : : : :.:.:.:.:.:.:.:／
　　　　　　　　　　 _＜ : : : : ∧ :ヽ　　 /:::ヽ 　Vヽ:ﾊ : : : : :ヽ: : : : : : : : : :.:.:.:.:.:.:.／　　わかったわかった。
　　　　　　 , -‐ '´: : : : : : : : : : :∧､　∧::::::∧ l: : ＜:_: : : : :i: : : : : : .:.:.:.:.:.:.:.:_ｒ'´
　 　 　 　 /: : : : : : : : : : : : : ／: : l Ｖ　 !::::{　｀!: : : : : : l: : : i:: : : .:.:.:_､-‐''ﾞ´　　　　　　ここからだと駅前に商店があるから、そこかな。
　　　　　 ｆ : : ヽ : : : : : : : ／ : : : : l　　 l::::::i　 l: : : : : /. : : :!／ ￣
　　　　　 ゝ: : : i: : : : : : :〈: : : : : : : l　　｛::::::i　!: : : : /: : : : :l
　　 　 　 ｊ : : : : i: : : : : : : ヽ: : : : : : ﾞ､　!:::::::ｉ l: : : :./ : : : : :!

6744： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:51:00 ID:xap8EYXQ




　　　　　　　　 　 　 　 　 　 /: : : : : i.: : : : : : :.i }: : : :.i: : : : :.',: : : : :.‘，
　　　　　　　　　　　　　　　/: : : : : : l : : : : : : ,'.,': : : :.|: : : : : :',: : : : : :‘，
　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ,'.: : : :. :. :.|.: : : :. :.//: : :./ lﾏ: : : : :.:l: : : : : : :.',
　　 　 　 　 　 　 　 　 　 ,: :/: : i: : ! |_ﾄ､-‐/ｲ: : :./} ﾅ弋=-､: :!.: : : :. :. :.i
　　　　　　　　　　　　 　 :.,ｲ: : :.| ,イ:| | ヽ: : :,': : / ﾚ 　　ヽ: : :.ト: : : : : :l.l
　　　　　　　　　 　 　 　 l.|.i.: : :.|ﾏ ! l ! 　ヽ.,' ／{　　　　　乂:.l.: : : : : :.l l
　　　　　　　　　　　　　　!| ', : : !.Ⅵ ﾘ　　 ﾉｲヽ ゝ　ｨ=＝=ミ l.: : : : : :.l l
　　 　 　 　 　 　 　 　 　 i|　',: :ﾑﾊ.!,ｨ=＝=ミ､ 　f　　　　　　,': : :.／: :lﾉ　　　　　　　ふふ、二人でお出かけなんて久しぶり。
　　　　　　　　　　　　　　　　 マﾑﾊ　　　　　ｨ⌒ゝ ＿＿　 ,': :／: : : :
　　　　　　　　　　 　 　 　 　 }: :ヽゝゝ-‐ ¨ ´ 　 ‐- ､　　／.イi : : : : !
　　　　　　　　　　 　 　 　 　 | :!: : : :八　　　{　　 　 !　　　 ｲ :|: : ∧{
　　　　　　　　　　　 　 　 　 //|: : : :/: :＞ ､ ゝ　　ノ　　イ : : ,': :/
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　',: : |.　ヽi　／}　 　 　 　.|ヽ/, '
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　　　　　　　　　　　　　 γ´ 　 　 ゝ{　　/‐- ､　　　　＿　i　　　ゝ､ _　 ＿
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　ただ俺と買い物に行くだけだというのに、姉さんは本当に嬉しそうに笑っている。
　その事にどこか嬉しさを感じつつも、一方で俺は、この期に及んでも強く実感する。
　俺は、恵まれているのだと。分不相応なまでに。

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6745： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:51:46 ID:xap8EYXQ




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　　　ヽ::::::::::::/:::;:::::::::::::::::::::::::::::::ヽ.ヽ::::::::::::::ﾉ
　　　　i､:::::ノ／::::::::::::::::::::::::::::::::､/　｀ ｰ-イ
　　　　| ヽィ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::',


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　この人の前では絶対に出せない、そんな本音を。
　俺を救ってくれたこの人にだけは晒せないエゴに、俺は線を引いて内に押し込めた。
　そして、何時ものように笑顔を作る。そうしなければ、きっとこの人は泣いてしまうだろう。

　――だから俺は、それだけが出来ているなら、それで良い。

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6746： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:52:50 ID:xap8EYXQ




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6747： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:53:06 ID:xap8EYXQ



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　　　　　　　　　　　　,､‐"　　　　　　　　　　 ,..､-‐ -　､..,,;;;;;;;;;;;;;;;;　　　 |　|　町内の皆さま、おはようございます |　|
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　　 　 ,,,.　　　　　`､. |　　　　　　　　　　　　　　　　 ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;　　　　|　|　毎度お馴染み清掃ロボットです　　　|　|
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. ｲ　　ヽヽ ヽ.　　　　 | 　　　　　,.. ､､ - ‐　''""二二 --‐‐‐‐‐‐‐‐　　　 ／／==================||=========＼＼
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　 　 　 　 い　',　　 ,､|　　　　　　 /´:::::::::::::::::::::::::::;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
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6748： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:53:43 ID:xap8EYXQ




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　　|　|　皆様も町内を綺麗に保ちましょ―― .|　|
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.　　　　　　　　　　 　 　 　 |　ﾋﾟﾋﾟｯ
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:ｰ-　-‐.′　　　 　 ﾞ ｰ-　イ　　　　　 |　|　進路上に物体を発見、サーチします　|　|
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三三三三ｉ　　　　 {三三三|
三三三三|　　　　 |三三三|
三三三三|　　　　 |三三三ﾄ､






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　　　　　　 ヽ　;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; ;;;;; ;;;　 ヽヽ
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　　　　　　　　 ヽ　　　　 ｀ヽ　　　　 　 ﾉ　　　／／　　　　　　　　　 　 　　　　　　　　 　 .＼＼
　　　　　　　 r-‐'''' - ､　　 l}　;;;;;;;;;;　 }　　　　|　|　材質：科学繊維布地　状態：破片 　 .|　 |　
　　　　　　　　｀''ー- ､_｀''　∧ ;;;;;;;;;;;;;;{　　　　 ＼＼　　　　　　　　　　　　　　　 　　 　　 ／／
　　　　　　　　　　　　　｀'ｰ{　 ヽ　 　 ﾉ　　　　 ／／==================||=========＼＼
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　　　　　　　　　　　　_,/''７'''ー'ﾞ　　　　　　　　　　　　　　　　　|　|　照合：一般的なビジネススーツの残骸　｜　|　
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　　　　　　　 ｀ー―‐'ﾞ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／／==================||============＼＼

6749： ◆u35dj8a9KI：2015/05/10(日) 22:53:56 ID:xap8EYXQ





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　　　　　　　　|　|　備考：人間の血液が微量に付着　　 .|　|　
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　-―　　''''''''　- ､　　　　　 ｜　　　　　　　　　　.|　|　……それ以外に異常を検知せず　　 |　|　
￣　　　　　　　　 ヽ　 　 　 ,..|,　　　　　　　　　　　＼＼　　　　　　　　　　　　　　　 　　 　　 ／／
ﾆ　　　　　　　　 　.|　　　 /::　 ヽ　　　　　　　　　　／／==================||========＼＼
三ﾆ　　　　　　　　 |　　　i::::　　 i　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼＼====||======/===================／／
三ﾆ;;＿＿　　　　ノ　　　 !:::　　　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／／　　　　　　　　　 　 　　　　　　　　 　 　　＼＼
　　　　　　　￣　　　　　　 ::;:　　.,　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |　|　 ――ゴミと判断して回収、処分します　 .|　.|
　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ_ノ　　　　 　 ／>　　 .<＼　　　　　　　＼＼　　　　　　　　　　　　　　　 　　 　　 　　／／
　　　　　　　　　　　　　　　　|　　　 　 　 ／／　　　　 ＼＼　　　　　　／／==================||===========＼＼
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二'' --　,,.　 .　 　 　 　 ﾞﾞ　'' |　　　 　 　 |　|　　　　　　　|　|
三二:::::::::::::ﾞ '':::-....,_　　　　.,,| 　 　 　 　 |　|　　　　　　　|　|
三二;;;;;;;;;;;;;;;;::::::::::::'':.､:::''::::::::|　　　　　　 ＼＼__　　 .__／／
三二:::::::::::::::::::::::::￣:::::::￣::::-|､　　　　　　　'-,__工工__,-'
三二::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|::ヽ　　　　　　　　｜｜
三二::::::::::::::::::::::::::::::( ⌒):::::::: |::::::＼　　　　　　 ノ,ｼ
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