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1398尋常な名無しさん@台風地域の方々はお気を付けください:2019/10/22(火) 19:59:59 ID:gjBiHN1k0
そうだ、金閣寺、読もう

そう思い立った理由は何だろうか
後から思えば偶然の積み重ね
読書感想文の自由課題を何にしようかと考えていたこと
家の朝のテレビで鉄道会社が昔からあるキャッチコピーと共に金閣寺が映っていたこと
通学の電車でまたも金閣寺のポスターを目にしたこと
よくある話の積み重ねで、何とはなしにそのタイトルへと行き着いた
まぁ図書室ならあるかな、という思いのままに昼食の菓子パンを早々にほうばり学校の図書室へ向かう

「……無いかぁ」

三島由紀夫の小説がいくつか置いてある棚に、ただ一つ金閣寺が無かった。
読めない、となると不思議と読みたくなるのが人の性だ
まぁ帰りに本屋でも寄ってみるか、と思いながらため息一つ図書室を出ようとする。

「あ、ごめん」
「いえ、すみません」

ドアを開けたところで一人の女子生徒と鉢合わせる。
一年生だ、ウチの学校はリボンで学年が分けられている

「あ」
「?」

思わず一年生の胸元へ視線が吸い込まれる。
彼女の胸が学生離れした豊満であったから、ではない、むしろ年相応に平坦だ。
そのペタンとした胸板に抱かれた本のタイトルがちょうど求めていたものだったのだ。

「それ丁度読みたくてさ、棚になかったから」
「そうなんですか、今返却しますので」

本屋に行かなくて済んだ、と思いながら少女が図書委員へ本を渡すのをぼんやりと眺める。
ちんまりとした子だ、背がかなり高い自分からすると小学生へ向ける視線の角度だ。

「……あの、三島由紀夫がお好きなんですか?」
「え? あーごめん、正直初めて読む、二年は読書感想文で自由課題で何読んでもいいって、
んで、何か金閣寺のポスター見かけたら読んでみるかって」
「そうですか、そうなるとあらすじもご存知ないんですよね?」
「うん、金閣寺ってんだから京都の話なんだよね、行ったことないし、気になって」
「あー、うん、その……それでしたら金閣寺は辞めておいた方が……実際の放火事件をベースにした話ですので」
「え!?」
「京都を題材にしたお話は色々出てますし、正直いって三島由紀夫という作家に耐性の無い方が初の京都小説として読むのは……ちょっと」
「そ、そんなに」

どんな劇物なんだこれ、
小説というものに思い入れはなかったが、逆にそれで興味が湧いた。

「他に、気を付けることは?」
「へ?」

ぱちくり、とあどけない意表を突かれた様子の少女は、それでもえー、と頭の中をまとめながら言葉を紡ぐ

「多分、よく分からない話にになるかと思います。でも、そうですね、それで結論を急がないで下さい。
色んな人が、後々になって読んでみると違った感じ方をする、そんな……適当な例えかは判りませんがドン・キホーテのような小説です」

ドン・キホーテも読んでみよう、彼女の朗らかな笑顔を見ながらそうこっそりと決意した


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