狙って誤爆するスレin避難所12 - 1415054035

651：名無しさん＠避難中：2017/12/30(土) 01:04:50 ID:/oHEqkE60: ‪軍靴の音と共に、文句を形にしたものが現れる。‬
‪「全く……ここは臭くてたまらない。油と鉄と、酒とタバコに汗の匂いだ。汚物を鼻に詰める方がまだ臭くない」‬
｢噂をすりゃあ正規軍の童貞様じゃねぇか｣
｢酒の1本でも差し入れに来たのか坊や｣
赤シャツとゴーグルの嫌味に顔色ひとつ変えずに軍服が話を続ける。
「また連中が来ると分かった。四日後だ。一週間待つと言ったが三日で形にしてほしい」
「三日だぁ？おいおい聞いたか？三日で
エビルキャットを直せって言うのか。俺らの愛の結晶の世界でたった一つのラウフェンパンツァーを」
「ああ、聞いたぞ、確かに聞いた。値下げ交渉の次は納期の短縮だってんだな？｣
「そうだ、その通りだとも」
｢みんなすぐダメにちまうクセによくもそんな……！使えるラウフェンパンツァーみんなダメにしちまって最後の最後に俺らからぶんどったエビルキャットだって大破一歩手前で修理によこしやがって！大体テメェらのせいでパーツが何日間も税関で足止め食らってんだろうが！恥を知れ！｣
｢そうだ。そんなに早く直したいなら今すぐ持って帰りな。テメェらんとこのモグリどもなら組むだけで1年は掛かるだろうがな｣
赤シャツとゴーグルが怒りをあらわにしても、やはり軍服は臭そうな顔をするだけで、二人の文句を受け流す。
「他国との協定がある。いくら我が国に頻繁に連中がやって来るからと言って余分なラウフェンパンツァーの部品を市場に流すわけには行かぬのだ。それに、ラウフェンパンツァーが傷つくのは私たちのせいではない。連中が強すぎるためだ。……なに、タダでとは言わんさ」
「金の問題じゃねぇ！」
「ああ、金の問題じゃねぇ。駆動系の心臓部と電気系統が原形を留めていただけで、他は全部ダメだったんだ。大量のパーツと、あと人手がいる。俺らのチームだけじゃ不可能だ。せめて倍は欲しい」
二人の意見に、軍服がニヤリと笑う。
「そう言うと思ったから、パーツと人手を連れてきた」
その軍服の声をかき消すようにエンジン音が押し寄せて来る。見る見るうちにトレーラーが四台、店の前に止まる。全部が全部、正規軍のものである。
「な、なんだぁ？」
トレーラーの一台から運転手が降りて、軍服に話しかける。
「中尉、連れてきたよ。でも、いいの？ラウフェンパンツァーのパーツって、軍が全部がめておくものなんでしょ？シジョーのリューツーを安定させるために」
「部隊ごと移動させれば作戦行動の一環さ。あときちんと私には敬語を使いたまえ、レヴィ。君は正規の軍人でないとは言え、私の部隊に所属している今や唯一のパンツァーコアなのだから」
その運転手は年端もいかない少女だった。せいぜい十代の後半である。薄い茶髪を一つに結んで、勝気な顔をしている。
「……おい、待て童貞軍人。このガキのこと、テメェ今パンツァーコアだって言ったな」
「まさかとは思うが、このクソガキがエビルキャットに乗ってるんじゃねぇよな？」
「そのまさかだ。レベッカ=スティンググレイ。彼女が我が国を先の襲撃から救った英雄だ」