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なんでも投下スレin避難所2
588
:
名無しさん@避難中
:2018/01/24(水) 12:32:03 ID:f.rIB7Z20
「なぜ山に……」と言いかけた途端、電子音がわたしの言葉を遮った。
ピンポンというチャイムの音がけたたましく、そして小さなLEDのランプが灯る。
「ジョージ・マロニー!!」
初めて耳にする名前を聞いて、わたしが言うべき言葉は「正解です」だった。
ガッツポーズで目を細める目の前の少女がなんとも憎たらしい。だって、彼女は私のセリフを止めたのだから。
だけども彼女から言わせれば、わたしのセリフが短くなればなるほど尊敬の眼差しを向けてもらえるので、
もっとわたしのセリフを削ってやると目を輝かせていた。
「ドイツ語で『年……』」
「バウムクーヘン!」
「アマゾン川で……」
「ポロロッカ!」
「『働いたら負け』はニート。では、『動いたらま…』」
「だるまさんが転んだ!」
悔しい。
最後まで言わせろ。
「『動いたら負け』でお馴染みな子供の遊びは?」と。
「やっぱ、聞きやすいっす!黒咲ちゃん!」
「誰もいないの?ここ」
「それを言わないで!」
「問題。どうしてこの部には人がいないのでしょう!」
ボタンを手にかていた彼女はすっと手を引いた。
「出題者になってくれない?だって、演劇部だし、セリフとか上手いでしょ?」
そんな理由で、わたしが召還されたのだ。使い主は「クイズ研究会」の藤居ちゃん。
早押しクイズの練習の為に、わたしがクイ研の部室まで呼び出されたのだ。
声を褒めてくれるのは嬉しいけど、与えられたセリフをまっとう出来ないのは、役を演じる者として不満だ。
演劇に身を投じるものは、役柄が重要、重要でないに関わらず出番が多い方が良いと決まってる。
しかし、一秒でも早く、誰よりも正確に答ることに拘る藤居ちゃんだ。
「さ。早く次の問題!」と、わたしを急かす。
大学ノートに藤居ちゃんの文字でびっしりと書き込まれた『ベタ問集』を捲る。彼女が独自に作成し
早押しクイズの練習に使用している問題集だ。何度も何度も繰り返して問題文を暗記し即答を目指す。
そうはさせじ。わたしだって出題者の意地がある。
演劇部の者って必ずしもではないが、少なからず支配欲があるのではないのかと思う。舞台の上に立つと
全ての観客の視線を集めたいし、上演後だって自分自身の演技の賞賛を誰かから期待するからだ。
だから、クイズの出題者となるのは良いが注目が回答者に注がれることが忸怩たる思いなのだ。
出題者は司会者だ。会を司る者だ。次の問題こそ、わたしに光を。
「問題です」
589
:
名無しさん@避難中
:2018/01/24(水) 12:32:41 ID:f.rIB7Z20
藤居ちゃんが軽くボタンを握る。センサーが反応するぎりぎりまでボタンを押し込む。
コンマのタイムロスを軽減させるためだ。
「アニメ『イナズマイレブン、ゴ……』」
「千宮路大和!!」
ボタンを片手で弾く彼女の叫びにも似た回答。早押しブザーの音さえも遠慮気味にわたしの耳に届かない。
果たして、その答えは。
「正解……です」
問題文は「アニメ『イナズマイレブンGO』に登場するサッカーチーム『ドラゴンリンク』のメンバーで
『ご』と読める漢字が付かないのは誰?」だ。
藤居ちゃんの守備範囲は広い。どこでこういう情報を仕入れ、研究をしているのだろうかと尋ねてみたい。
「いやー、良問だね!」と、藤居さんは手を叩くが、わたしにはさっぱりだ。
「どうして分かったんですか?」と、バカな振りをして聞いてみる。
「まず一つ、出題のアクセントがね、『イナズマイレブン』に無かったから。二つ目、無印でなく『GO』を
問う問題だと分かったから。さらに三つ目、『GO』と言えば『ドラゴンリンク』、さらにさらに
その中で最も特徴的なものといえば「『ご』と読める漢字が付かないのは誰?」だし」
わたしは思わず「分かりませんっ」と音をあげる。
さらに藤居ちゃんは続ける。
「一つ目のね、『イナズマイレブンGO』にアクセントがあるのなら、『ドラゴンリンク』が正解と予測
出来るんだけど、黒咲さんはそこにアクセントをつけなかった。ならば、その先を問う問題だと感じてね」
藤居ちゃんの高笑いが響くクイ研部室。二人っきりの部屋は薄寒かった。
帰り際、わたしは演劇部部室に寄ってみた。なんとなく落ち着くからだ。
部室には部長の迫先輩は一人で本を読んでいた。いつもは隙が無い迫先輩なのだが、このときばかりは
何もかも神経を堕落させ、好きな本に没頭していることが分かる。
迫先輩は演劇部の部長を務めるだけあって、冷静沈着でクレバーなメガネ男子だ。
だからこそ、そんな男子がイジクリコンニャクにされてしまうような脚本があってもいいじゃないか。
最終問題で「得点は三倍になります!」「聞いてないよ!」のでんぐり返し。
わたしはちょっと舌を出してみる。
「迫先輩!」
声をかけても返答なし。本物だ。
そして、わたしの中に潜在する支配欲が覚醒した。
「迫先輩!問題です!」
「は?」
「アニメ『イナズマイレブンGO』に登場するサッカーチーム『ドラゴンリンク』のメンバーで
『ご』と読める漢字が付かないのは誰?」
制限時間十秒。三、二、いち。
「正解は『千宮路大和』でした!」
ハトマメの顔をした迫先輩は、非常に愉快に感じる。
「なんだ?いきなり」
そうです。クイズとはいきなりやってくる。人生はクイズの連続だ。
「問題です。ドイツ語で『年輪』という意味の名を持つお菓子は?」
「うっ」
「三、ニ、いち。ブー。正解は『バウムクーヘン』です」
「問題です。アマゾン川で年に一度、河口から流れが逆流する現象は?」
「えっと……聞いたことあるぞ。ポ」
「ブー。タイムアップ。ポロロッカです」
気持ちがいい。
博打の胴元になって、全員掛け金没収!そんな展開のようだ。
立場は逆かもしれないが、クイ研の藤居ちゃんの気持ちがほんのちょっと分かった気がする。
さて、メガネを白黒させている迫先輩にファイナルアタック。
「問題です。『なぜ山に登るのか』の問いに『そこに山があるからだ』と答えたイギリスの登山家は?」
「……は?さっぱり」
どうだ。ふふっ。わたしは人差し指を突き出して「ジョージ・マロニー」と正解を告げた。
迫先輩、敗者の弁を。
「イギリス人が日本語使うか」
おしまい。
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