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【能力ものシェア】チェンジリング・デイ 避難所2【厨二】

577 ◆peHdGWZYE.:2019/06/17(月) 18:16:25 ID:5j2hSxGs0

「くっ、大規模能力の援軍だと!?」

 カニからゴーレムが召喚されるという、予想外の事態にフォースリーは大いに焦り、
"青い"オーラを放出――力比べでは敵わないであろう、ゴーレムを即座に凍結させる。

 しかし――

「もらった……!」

 小柄な影が懐に飛び込んできた事に対して、反応が遅れた。
 陽太の師を務めている、時雨という名の少女だ。
 どこにでも居そうな普段着姿だが、その身のこなしは尋常ではない。

 体格ゆえにフォースリーは、動きが大振りなものになってしまう。
 その遅れを的確に突いて、時雨は膝関節にナイフを突き立てていた。

 フォースリーは咄嗟にグレイヴを振り抜くが、時雨は軌道の下に潜り込むように回避――
 同時に二本目のナイフを脇腹に突き立てる。
 中学生の体格に熟練の技量、双方があるからこその立ち回りだった。

 ナイフを回収することなく、時雨は距離を置くと、今度は三本目のナイフを取り出していた。
 狡猾な立ち回りだ。ナイフを刺されたまま動けば、フォースリーの傷が拡がる事になる。

「機関の者でも……国連の者でもないな? 何者だ!?」
「慎ましく暮らしてる一般人よ。火の粉さえ、降りかからなければ、ね」

 短いやりとりの間にも、次はシザーゴーレムが強引に氷を割って拘束から脱出した。
 二転三転した戦況だが今度こそ、完全に状況は逆転していた。

 単純な身体能力なら、せいぜい強力な改造人間程度のフォースリーでは、シザーゴーレムには敵わない。
 一方で、能力でシザーゴーレムに対処すれば、時雨に隙を見せる事になる。

 脱出を模索していた比留間博士たちだが、陽太が"保険"として呼んでいた二名と接触して、
方針を切り替えた。脱出から反撃へと。
 外部との接触手段として、東堂衛の昼間能力"不干渉"が有力候補として挙がったが、
内外の把握と連絡に形を変えて、この状況へと繋がった……という訳だった。

 いつの間にか――というよりも、安全圏だけに戦闘に参加した人間には
気付きようが無かったのだが、仕掛け人である比留間博士は壁の付近で、不敵に微笑んでいる。

578 ◆peHdGWZYE.:2019/06/17(月) 18:18:31 ID:5j2hSxGs0

「『クリフォト』がどんな大層な組織で、あんたがどんな力を持っていようと、
 世の中なんて、そうそう思い通りにはならねぇよ。今は能力者の世界だぜ?」

 視力を奪われ、反動による空腹も限界に近い陽太だが、堂々と宣言していた。
 ささやかだが、鮮烈な宣戦布告だった。

 チェンジリング・デイ以降、能力によって人間は最も貴重な資源となってしまった。
 それは人を時に奴隷に、時に暴君へと変えてしまう。
 だが、それを『仕方ない』と決め付けるような事は、そろそろ終わりにすべきだ。

 単身で魔窟へと乗り込んだ経歴を持つ、東堂衛は共感の頷きを返した。
 能力のままならない面に触れてきた鑑定局の二名は、苦笑しつつも否定はしなかった。
 ミルストは唖然と、状況を受け止めている。
 相応に現実を知る比留間博士は、ただ興味深げに眉を上げていた。

 フォースリーが時雨に気を取られているうちに、シザーゴーレムの攻撃が直撃していた。
 いかに人体改造していようと、根本的な体格差は覆せない。

 軽々と吹き飛ばされ、研究棟の壁へとフォースリーは叩きつけられていた。
 ぐしゃり、と異音と共に、真紅の怪物にも似た肉の鎧が剥がれ落ちていく。

 後に残ったのは、血に塗れた神経質そうな一人の男だった。

「やはり、この世界は度し難い……こんな強大な力が溢れかえっている。
 永遠にこの混乱は収まらないだろう。ただ、壊れていく社会を眺めているしかない。
 仮にそれを覆す物があるとすれば……」

 それはうわ言にも聞こえた。頭部を強打していたのなら、無理もないが。

 勝った、というよりも、フォースリーの勝ち目は消えた。
 歓喜より安堵の心持ちで、彼と対決した面々はその様子を眺めていた。
 だが、次の言葉に比留間博士、それに意外にもドウラクは驚愕していた。

579 ◆peHdGWZYE.:2019/06/17(月) 18:19:09 ID:5j2hSxGs0

「『一つは染まり、一つは乱し、一つは無慈悲に見殺した』
 セフィロト・ネットワーク接続――カオスエグザ起動ォ!」

 狂気に血走った双眸で、フォースリーは宣言する。

――カオスエグザ

 能力の運用技術に纏わる仮説の一つだった。能力には、事象の起因となる情報が存在しており、
それに一種の暗号化、変形を施す事で爆発的に強度を高める事ができるとされる。

 もちろん仮説に留まっている事には理由がある。現状では、実現性が乏しいのだ。
 これを実行するには、人間離れした能力制御技術が必要となる。
 人体改造で脳の外部に制御装置を増設するしかない、というレベルでだ。

 そうでなければ、超人的な頭脳か、気の遠くなる程の経験を以って可能とするか。
 しかし、絵空事は目前で実現しており――

・発生させる事象は色に対応している
・発生させる事象はオーラ量に比例する
・人間を直接、塗り潰すには本人の同意が必要となる
・観念的なものや生物は発生させる事ができない

 強化された影響により、フォースリーの能力から、あらゆる制限が取り払われていた。
 『現実を塗り潰す』能力の真価がここに現れる。

 ただ強大かつ無制限な"黒"が陽太たち、その周辺に存在する現実全てを飲み込んでいった。

580 ◆peHdGWZYE.:2019/06/17(月) 18:20:16 ID:5j2hSxGs0
空白期間が長くなってしまったのですが、続きです。このペースだと完結は難しい
2部は苦労しそうな所はだいたい終わったので後は大丈夫、大丈夫のはず

捕捉

カオスエグザ
複雑系エグザとも。
大元は、自作品の裏話を語るスレより。作中での初登場はリリィ編。
能力の出力を最大まで引き上げる技術であり、相互に干渉した際に優先される。
リリィ編に登場する改造人間などは、スフィアネットと呼ばれる装置と接続し、これを行使する。
実は、ある弱点が存在しており、暗号化という表現はそれに起因している。


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