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【シェアード】仁科学園校舎裏【スクールライフ】

628 ◆n2NZhSPBXU:2015/02/15(日) 17:51:16 ID:7o6bAq7w0
    , - 、
  ヽ/ 'A` )ノ ダレモ イナイ・・・
   {  /   トウカ スルナラ イマノウチ・・・
   ヽj

『記憶の中の茶道部』の最終回になります。
この板にご迷惑をかけますが、不都合等がございませんでしたら、お目汚しにどうぞ。

ちなみに、書いたら2回分の量になってしまったので、前編・後編と分けさせていただきます。
再びご迷惑、すみません。

629記憶の中の茶道部(最終回:前編) ◆n2NZhSPBXU:2015/02/15(日) 17:55:05 ID:7o6bAq7w0
「……そう。」
夕陽から放たれる太陽光線により橙色へと染まりつつある仁科学園の体育館。
その片隅に設置された茶室には、自ら入れた抹茶を口にする緒地憑イッサの姿があり、対面には剣道の道着に身を包んだ天江ルナ、
そしてその側には見届け人のようにこの場を見守る『格闘茶道部員五名』の姿もあった。
「ルナちゃん……何で格闘茶道部辞めるとよ?」
粟手ヒビキが問いかける。
だが、ルナは黙ったままであった。
「そうよ、こんなに楽しい部活動は無いじゃない!」
「俺もそう思うな……名前は変だが、十分楽しいぜ?」
粟手トリスと天月音菜……いや、天月オトナも声をかける。
「……天月ルナさん、あなたがこの部活を辞めると言うならば……それだけの代償を払える覚悟はおありなのですね?」
問いかけるイッサ。
「……部長、『賭け』をしませんか?」
「賭け?」
「ええ……かつて、あなたが私を入部させた時のように……私とあなたが剣道で勝負する。
 私が勝ったら、退部を許可する……私が負けたら、私を永久副部長として如何様にでも……。」
「あなたにしては、随分と大胆かつ無謀な提案ね。じゃあ、さっそく……。」
「ただし!」
「……うん?」
立ち上がろうとするイッサを止めるルナ。
「今回は三本勝負とし、先に二回勝った方が勝者……というルールはいかがです?」
「三本勝負……あなた、完璧超人にでもなったつもりなの?まあ……いいわ、そのルールであなたを完膚なきまでに倒してあげる……
 あなたの母親の肉体を存分に使ってね……。」

剣道用の防具を着け、体育館の中央で互いに竹刀を構えるルナとイッサ。
その光景を見て、格闘茶道部の部員たちはイッサを応援する。
「部長!頑張って!!」
「ファイト!部長!!」
一人として聞こえてこない、ルナを応援する声。
そんな孤独な空間の中で、ルナの戦いが始まろうとしていた。
「いざ……勝負!」
声と共に、体当たりせん勢いでイッサへと突っ込むルナ。
しかし、次の瞬間に彼女の質量はルナの前から失せ、その存在はかつての戦い同様にルナの後ろへと瞬間移動していた。

630記憶の中の茶道部(最終回:前編) ◆n2NZhSPBXU:2015/02/15(日) 18:00:19 ID:7o6bAq7w0
「この間から強くなったかと思いきや……またしても10秒で片がつきそうね。それじゃあ……スタートアップっ!」
体育館内に響き渡るイッサの声。
その瞬間、低レベルながらも時空間を司る魔族としての能力が発揮され、彼女の体は今の時間概念を超えた超高速移動を実現させるのだった。
「ふふっ……スリー!」
イッサの一撃によって宙に飛ぶルナの竹刀。
「ツー!!」
間髪入れず、彼女の防具へと叩きこまれる『胴』の一閃。
その一撃に、ルナは思わず膝を立てて体勢を崩す。
「ワン!!!」
トドメの一撃と言わんばかりに炸裂する、頭部への『面』の一撃……のはずだった。
「……何?」
完全にルナの頭頂部へと振り下ろされていた竹刀。
だが、その竹刀から彼女の頭を守る存在があった……それは、宙に吹き飛ばされたはずの竹刀であった。
「何て運の良い……でも、胴での一本でまずは私の勝ち。もう一本取れば……。」
「フフフ……くっくっくっ……はぁっハッハッハ!!」
突如、防具越しに大笑いしだすルナ。
この光景にイッサだけでなく、他の部員たちも困惑するのみであった。
「……ど……どういうつもり?!」
「……。」
今まで見せたことのない、焦りの声をあげるイッサ。
だが、ルナは無言のまま第二試合へと突入する構えを見せる。
「……くっ、スタートアップっ!」
再び高速移動でルナの懐へと飛び込むイッサ。
そして、間髪入れずに彼女の持つ竹刀をまたしても吹き飛ばそうとする……が、常人の目には見ることのできない程のスピードで動いているイッサの
目の前からルナの姿はすでに消えていた……いや、その姿はイッサを上回るスピードで彼女の背後へとすでに移動していたのだった。
「何?!……!そこかっ!!」
背後の気配にようやく気づき、竹刀を振るイッサ。
だが、その一撃もルナにブロックされ、先ほどの戦いとは逆にイッサのほうが追い込まれていた。
「そんな……人間ごときが……。」
「十秒過ぎたようね。さあ……ショータイムだっ!」

631記憶の中の茶道部(最終回:前編) ◆n2NZhSPBXU:2015/02/15(日) 18:07:42 ID:7o6bAq7w0
叫び声と共に、今度はイッサの懐へと飛び込むルナ。
一方のイッサは竹刀を構えるが、超高速移動を失った今ではただの人間でしかなく、ルナの気迫のこもった力押しにただただ押し込まれるのみであった。
「うぉおおおおっ!!」
「くっ……う……うわっ?!」
力比べに負け、バランスを崩すイッサ。
その瞬間、彼女の『胴』は無防備と化していた。
「胴っ!」
時空をも斬らん勢いでイッサの防具へと炸裂するルナの一撃。

その力は、一撃の強さを物語るほどの亀裂を防具に与えるほどであり、ルナがイッサに初めて勝利したことを証明するには十分すぎる物証となっていた。

「部長が……負けた……。」
「これで……互いにイーブン!」
ざわめきだす部員たち。
一方のイッサも、予想していなかった『自らの敗北』に冷静さを失っていた。
「こんなこと……受け入れられない!私は負けない……私は負けない!!」
「……どうやら、その表情を見ると……『現実を受け入れられない!』とか言ってる感じね?」
そう言って、面を外すルナ。
「ひとつ言っておくわ……私、体育館に入る前からこれを付けてたの。」
そう言うと、ルナは両耳に指を置き、何かを取り出すのであった。

それは、耳栓であった。

「部長……いや、緒地憑イッサ……私はある実験のためにこんな戦いを挑んだの。」
「実験……だと?」
「ひとつ……かつて、私はあなたに負けた。その原因は、あなたのその超高速移動能力もあるけど……一番の要素は、
 あなたの軽口に乗っかったことで冷静さを失ってしまった私。だから、あなたの口車に乗らないために、こんなお芝居じみたことをわざわざした訳。
 それともうひとつ……私なりに、今居る『偽りの未来』とあるべき『本当の未来の姿』を再確認したかったの。」
「……偽り?……本当の……姿?」
「あなたは言ったはず……私は、あなたが一年しか存在しない世界に『未来の記憶を持つ者』を呼び込むことで、未来の記憶を世界の意志のひとつとさせ、
 未来の時間を持った世界に変える……と。」
「……それがどうしたって言うの?!」
「そのためにお父さんは、あなたにとっての『都合の良い未来の記憶』を植えられ、その記憶から私はこの世界に誕生させられた……でもね?
 私、思ったの……人の記憶って結構曖昧な存在なの。だから……もし、自分にとって都合の良い記憶……
 つまり、自分の『想像』が世界の意志のひとつとして時間の中に取り入れられた時、 その意志が結果……
 つまり『未来』へと変化するんじゃないか……ってね?」

632記憶の中の茶道部(最終回:前編) ◆n2NZhSPBXU:2015/02/15(日) 18:15:25 ID:7o6bAq7w0
「……まさか!では、私の攻撃を全て受け止められたのは……あなたの『想像』がこの世界の未来へとなった結果だとでも言うの?!」
「そうね……一回目に関しては耳栓をしていたから『面へ強烈な攻撃が来たら困る』と思ったの。その結果、吹き飛ばされた竹刀が狙い澄ましたように背面に落下し、
 偶然にもあなたの攻撃を阻止した。そして、二回目……無音の中で、空気の動きを感じつつ『敵に背後から攻撃を仕掛けられる前に、こちらが背後へと回るには?』
 『このあたりから攻撃が来るかも?』という想像を働かせながら戦った結果……私はあなたを上回る移動能力を一時的に得られ、
 そしてあなたからの攻撃も面白いように私の意図通りとなった……ってこと。アンダースタン?」
「嘘だ……嘘だ……嘘だぁああああっ!私は……この世界の支配者……こんな女の手の平に転がされるような……存在ではないっ!!」
大声をあげるイッサ。
だが、その言葉にルナは耳を貸さなかった……いや、貸す気など毛頭無かった。
「ようやく理解してくれたようね、自分の行ってきたことが人に及ぼす悪魔のような影響力を……だから、私はもう想像の力を使わない……これ以上、
 偽りの未来には留まらない!そう……ここからは私の……いや、『私たち』のステージだぁああああっ!!」
竹刀を構え、再びイッサの懐へと飛び込もうとするルナ。
一方のイッサも、冷静さを失いながらもルナの攻撃に答えようと突撃を試みる。
体育館の中央で激突せんとする二人の剣士。
だが、その二人の間を割り入るように乱入しようとする存在があった……それは、一匹のスズメバチであった。
「……!あ……危ない!!」
スズメバチの存在に気づき、声を荒らげるトリス。
しかし、ルナとイッサのスピードは一切減速する事無く、ついにはスズメバチを挟み込む形で体育館の中央で激突するのだった。

無音の体育館内に響き渡った、竹刀が防具を弾く音。
その瞬間、ルナとイッサの戦いに終止符がついた……が、外野からはどちらが勝者か判別できずにいた。
「どっちが勝った?!」
「……!」
何かに気づき、何かを指さす者。
その指先に示されていたのは……真っ二つとなったスズメバチの死骸、そしてその一閃が放たれたと推測される方向の延長戦にあったのは……。
「……何故……私が……。」
「……かつて、私のお父さんとお母さんが剣道勝負した際、今みたいにスズメバチが乱入してきたそうなの。
 その時、お母さんはスズメバチを撃退し、そこからお父さんへ攻撃しようとしたけど……残念ながら負けてしまった。」
語りだすルナ。
それと同時に、ルナから放たれた一閃を二度も喰らい、強度を失ったイッサの防具は崩壊を始めていた。
「もし、お母さんの敗北が『過去』とするなら……今の戦いが、自分なりの『未来』……『諦めない精神』……
 『どんな暗闇な未来が待ち構えていようとも受け入れ、それを希望へと導く』……そして、『強くなる』……それが私の未来だ!!
 想像の力で作られた曖昧な時間の流れではない、強硬たる真の未来の姿がこれだ!!!」

スズメバチを挟む形で二人が激突した瞬間、ルナは胴への一閃をする形でスズメバチを引き裂いた……だが、
彼女の攻撃はこれで終わりでは無かった。
彼女は一閃の勢いそのままに己の体を回転させ、胴への再攻撃……その結果、
ルナは新たな『未来』を手に入れたのであった。

633記憶の中の茶道部(最終回:前編) ◆n2NZhSPBXU:2015/02/15(日) 18:20:09 ID:7o6bAq7w0
「……私の……せ……か……。」
バラバラとなるイッサの防具……いや、防具だけでなく彼女の体自体も崩壊を始め、
粉々となったイッサの体からは一人の『女性』が倒れこむように出現するのだった。
竹刀を放り投げ、女性を抱え込むルナ……彼女には女性の正体が既に分かっていた。
「……お母さん……おかえり……。」
「……ルナ……あなたが……未来の娘なのね……。」
涙をこぼす天江夕子。
そして、ルナも母親にようやく会えたことへの嬉しさから泣きそうになっていた……が、彼女らの背後に突如現れた、
只ならぬ気配に表情を変えるのであった。
「……そんな……まさか!」
母親を抱えたまま竹刀を右手で構えるルナ。
その竹刀の先に居たのは……先ほどまで応援団と化していたトリスやヒビキたちであった……いや、違う……
姿形は彼女らであったが、そこから発せられるマイナスエネルギーは完全に緒地憑イッサと酷似していた。
「『まだ、勝負は終わってないわ……天江ルナ。』」
「『この世界は私の物……無論、この者たちも私の物……。』」
「『例え、天江夕子の体を失おうとも……私の代わりはいくらでも存在する!』」
「……さあて……どうする?」
「このまま、軍門へと下るか?」
天江親子を囲む五人の格闘茶道部員たち。
その光景に、夕子も竹刀を手に構えようとするが、意識を取り戻したばかりの体には戦う力などほとんど残っていなかった。
「ルナ……あなたは逃げて……。」
か細い声で娘を守ろうとする夕子。
「お母さん!そんな体じゃ無理よ!!」
「『諦めない精神』……それが、雑津くん……いや、あなたのお父さんのポリシーであり……あなたのポリシーでもあるはず……
 そして……私のポリシーでもあるの……。」
「……でも……でも!」
「緒地憑イッサに体を奪われながらも……私はあなたの戦いを見てた……そして……あなたは自分なりの未来を掴んだ……
 それを確認できれば……それだけでお母さんは……この人生に感謝よ……。」
「!!!」
「『何をごちゃごちゃと……念仏なら、私に囚われた後にでも唱えていろ!!』」
一斉に襲い掛かる格闘茶道部員たち。
一方の夕子も娘を守るために竹刀を構えるが、手の力が入らず、そのまま己の体を盾のようにしてルナの前に立ち尽くすのだった。

振り下ろされる五本の竹刀。
全ての攻撃は標的を天江夕子に捕え、躊躇なく振り下ろされた。

……だが、彼女らの攻撃は夕子の体に当たる直前で止まっていた……いや、止められていた。

634記憶の中の茶道部(最終回:前編) ◆n2NZhSPBXU:2015/02/15(日) 18:25:01 ID:7o6bAq7w0
「……!ルナ!!」
右手の感覚に気づく夕子。
その手は後ろに構えるルナによって夕子の手ごと竹刀が構えられ、またルナ自身も左手に竹刀を構え直すことで親子共同による二刀流を作り出し、
5本の竹刀から天江親子の体を守っていたのだった。
「お母さんも知ってるはずよ……私のポリシーは……『強くなる』こと!!」

響き渡る、ルナの魂の叫び。
その瞬間、彼女の声を合図としていたかのように、一曲の歌が体育館のスピーカーから流れだす。

それは、ルナがMP3プレイヤーで聞いているあの曲……そして……。

「これは……『英雄の詩』?」
「……!ルナ……あれ!!」
指さす夕子。
その目線の先では、音楽を聴いて苦しみだす格闘茶道部員たちの姿があった。
「『な……何だ……この歌は?!』」
「『私が……私で……無くなる……。』」
「『た……助け……て……。』」

「ルナ!夕子!!」
スピーカーから聞こえてくる男の声……それはルナの父である天江ライト……いや、本来の姿、そして本当の記憶を取り戻した雑津来人であった。
「お父さん?!どうしてここに……?」
「お前の残してくれたMP3プレイヤーだ!あれに、この『英雄の詩』が入っていただろう?」
「うん……でも、それが……?」
「あの曲は柚鈴天神社に古くから伝わる神事の曲であると同時に、偶然にも全く同じコードで発表された未来の曲でもあるんだ!
 『過去』と『未来』の両面を持つあの曲……それを偶然聞いたことで、自分自身の過去と未来を取り戻したんだ!!」
「あの曲に……そんな意味が……。」
「そんなことより!早く、緒地憑イッサに止めを!!」
「でも……どうやって?!」
「『あれが……苦しみの元凶か……。』」
割って入るトリス……いや、緒地憑イッサ。
「『ならば、あいつを……。』」
「『私の世界から……消す!』」
「……そうされちゃあ困るんだけどなぁ。」
「『……何?!』」
体を反転させ、粟手姉妹と天月オトナの体を抑え込む二人の影……それは、格闘茶道部員にされた神柚スズエと横嶋菜ココロ……
いや、神袖鈴江と魔王=横嶋菜心であった。
「『?!何故だ……貴様は私に消滅させられたはず!それに……どうして、お前は私の物とならない?!?!』」
「Исса……あなたに良いこと教えてあげる。」
「『……?』」
「『魔族と巫女さんは一日にしてならず』……ってね?」
「よーちゃん!何適当なこと言ってるのよ、『精神を支配されてたフリして、反撃の機会を待ってた』ってだけじゃない!!それよりも早く三人を!!!」
珍しく、鈴絵がツッコミを入れる。

635記憶の中の茶道部(最終回:前編) ◆n2NZhSPBXU:2015/02/15(日) 18:30:48 ID:7o6bAq7w0
「リフレエクトゥ!レディ……オゥケェエイ!!リフレェエック!!!」
人の運命(さだめ)を勝手に決めそうな勢いのハイテンションで、三人の体へとエネルギーを送る魔王。
その瞬間、三人の体からは黒い結晶のような物が飛び出し、彼女らを元の姿である粟手トリス、粟手響、天月音菜へと戻すのだった。
「……あれ?私は何を……??」
「……!おい、何だありゃ?!」
「……!ルナちゃん!!」
叫ぶ三人……その目線の先には、人の形となった黒い結晶がルナと夕子に襲い掛かる光景が展開されていた。
「あれが……緒地憑イッサの正体……。」
つぶやく鈴江。
「くそっ……俺たちも天江を助けに行くぞ!」
「でも……どうやって?!」
「え……あ……えぇっと……とにかく、どうにかすんだよっ!」
「方法はあるわ。」
魔王が言う。
「どうやって?!」
問いかけるトリス。
その言葉に、今度は鈴絵が答える。
「粟手さん、天月さん……私たちが竜神祭に向けて練習してきた『英雄の詩』は、
 天江さんのお父様が言ったように『過去』と『未来』の音楽……その曲をあの悪魔にぶつければ、
 奴の中で固定化された時間は失われ、その存在は崩壊するはず!」
「な……何だって?!」
「でも……太鼓もギターもここには……。」
不安そうに話す響。
だが、魔王には秘策があった。
「チチンプイのぉ〜パッ!……ってね?」
指先で魔力を解放させ、何かを空間から呼び出す魔王。
それはサックス、エレキギター、和太鼓……まさに彼女らの『武器』であった。
「これは……あんたは何者なんだ?!」
「その説明は後!早く演奏準備、演奏準備っ!!」
「お……おう。」

-------------------------------------------------------------------------------------------

前編はここまでです。
後編は時間をおいてUPします。

636記憶の中の茶道部(最終回:後編) ◆n2NZhSPBXU:2015/02/15(日) 20:31:51 ID:7o6bAq7w0
    , - 、
  ヽ/ 'A` )ノ スベテ ノ フクセン ハ
   {  /   カイシュウ デキタ デショウカ・・・?
   ヽj

----------------------------------------------------------------

一方、ルナ親子の立ち回りは今だ続いていた。
『体……世界……私の……。』
スピーカーから流れていた音楽が終わり、体育館内に響き渡る怨念のような声。
その声の主である、悪霊と化した緒地憑イッサが襲い掛かってくるのに対し、ルナと夕子も竹刀を手に攻防を続けるが、
いくら相手が体を失ったことで弱まっているとは言え、彼女らの耐久力は限界に近づいていた。
「何て……タフネスなの……。」
「よーちゃんさんが……言ってたわ……お母さん……魔族は……タフなんだって……。」
「……だからと言って……私たちが……諦める理由には……。」
「ええ……ならないわ……。」
「ルナ!夕子!!」
彼女らに助太刀するように飛び込む影……それは来人であった。
「お前たちはいったん退け!ここはお父さんに任せろ!!」
「そんなこと言われても……。」
「……!もしかして……雑津くん、『アレ』の場所が分かったの?!」
驚きの声をあげる夕子。
だが、来人の表情は少し曇っていた。
「いや……まだなんだ。だけど、『アレ』を探すタイミングは今しかない!俺があの悪霊を抑えてる間に……
 彼女らが演奏を終えるまでに!」
そう言って、後ろを指さす来人。
その先には、エレキギターを構える音菜、サックスを構える鈴江、そして和太鼓のバチを構える響の姿があった。
「よっしゃ!行くぜぇ!!」
エレキギターのサウンドを合図に展開される『英雄の詩』の生演奏。
その音を受け、再び悪霊は苦悶の声を発しながら狂ったように宙を舞いだす。
「お父さん、『アレ』って何なの?!」
叫ぶルナ。
その言葉に、代わりに夕子が答える。
「緒地憑イッサ……奴は自分の世界からこの世界へ移動する際、『時空転移装置』のような物を使ったらしいの。
 今、奴が別の世界で自分の存在を維持できているのはその装置があるからこそ……それを破壊できれば、
 あの悪霊を完全に倒せるはずなの。」

『水玉パンツは「繊細」』

突然、ルナの脳裏に響く緒地憑イッサの言葉。
「……まさか!?」

637記憶の中の茶道部(最終回:後編) ◆n2NZhSPBXU:2015/02/15(日) 20:35:14 ID:7o6bAq7w0
「よし、これでフィニッシュだ!」
『英雄の詩』の演奏を完了させようとする音菜たち。
だが、曲の終盤に入ろうとした瞬間、それまで調和を保っていた音から和太鼓の音が消える。
「……!天月さん、ストップ!!」
「どうしたんです?!」
「……ダメです……どうしてもダメなんです!いつもここで間違える……どうしても演奏出来ない!!」
「粟手!しっかりしろ!!天江の親父さんが耐えてる間に、もう一回だ!!!」
「でも……でも……。」
臆病になる響。
だが、そんな彼女に割って入る存在があった。
「響ちゃん!」
「……お姉ちゃん?」
「私に任せて!あなたの練習を差し入れでサポートしてきた分、どこでどう間違えるか熟知してるつもり……
 だから、あなたの苦手な個所を太鼓の反対側からサポートしてあげる!!」
「なるほど!そいつは良い考えだ!!」
「でも……でも……。」
「ルナちゃんとルナちゃんのお母さんがコンビネーションを見せたなら……私たち姉妹もそれ以上のコンビネーションを見せるのがお返しってもの!
 やろう、響ちゃん!!」
「……分かった!私だって……強くなれる!!」
「おい!演奏はどうしたんだ?!」
聞こえてくる、来人の焦り声。
「……時間が無いわ。これがラストチャンスよ。」
「「「はいっ!」」」
号令をかける鈴江。
こうして、『英雄の詩』の演奏が再開された。

638記憶の中の茶道部(最終回:後編) ◆n2NZhSPBXU:2015/02/15(日) 20:40:22 ID:7o6bAq7w0
「……あった!」
夕子、魔王と共に、茶室内にて『時空転移装置』を捜索するルナ。
捜索開始から数十秒ほどして、ルナの思い当たる『物』が彼女の目の前に姿を現した。
「ルナちゃん……本当に信用して良いの?」
母親とは言え、ルナの今回の提案に対して若干の不安を感じ、心配な声をあげる夕子。
だが、一方の魔王は真面目な表情を見せていた。
「確かに……もう時空を転移するほどのエネルギーは残ってないけど、この世界には存在しない波動を感じる……
 でも、どうして『これ』がそうだと?」
「『水玉パンツは「繊細」』……あの言葉が奴の妄言で無ければ……。」
「なるほど……よぉ〜し!魔王、こいつを暴走させちゃうぞぉ〜!!」
「「……え?」」
困惑する二人を余所に、『時空転移装置』にエネルギーを込める魔王。
その瞬間、『時空転移装置』に散りばめられた水玉模様は毒々しい光を発しながら、今にも爆発しそうな様相を呈していた。
「あとは……よし!竹刀に巻きつけて……完成!!頼んだわよ、ルナちゃん!!!」
「……ちょっと不安だけど……私、行ってきます!」

「もうすぐ演奏の前半が終了だ!ルナの親父さん、大丈夫か?!」
音菜が演奏しながら叫ぶ。
「ぐっ……まだ……何とか……。」
「しかし……まずいわ。天江さんのご両親が言う『時空転移装置』が破壊できなければ、あの悪霊はまだ倒せない……
 この歌はあくまでも封印のためであって、完全破壊するには……!天江さん!!」
ギターソロパート中に休憩していた鈴江が、竹刀に何かを括り付けたルナの姿に気づく。
「ルナ!……って、何だ?!そのパンツ括り付けた竹刀は?!」
『パンツを括り付けた竹刀』というRPGでも見たことが無いような『武器』を手に持つルナを見て、ギターを演奏しながらツッコミを入れる音菜。

だが、その『パンツ』……いや、『水玉パンツ』こそ『時空転移装置』であった。

「お父さん!今から、その悪霊ごと装置を破壊する!!スリー、ツー、ワンで悪霊を空中に放り投げて!!!」
「分かった!頼むぞ、ルナ!!」

「私たちももうすぐフィニッシュだ!響!!あと、響の姉ぇちゃん!!!準備は良いか?!」
「「ハイッ!」」

639記憶の中の茶道部(最終回:後編) ◆n2NZhSPBXU:2015/02/15(日) 20:45:16 ID:7o6bAq7w0
「「スリー!」」
これまで悪霊を抑えていた力を抜き、わざと相手の体勢を崩させる来人。

「「ツー!」」
その直後、垂直に立てた竹刀を悪霊の下に潜り込ませ、来人は勢いまかせに竹刀を上へと突き上げる。

「「ワン!」」
突き上げた竹刀を再び床へ垂直に立てる来人。
それと同時にルナは走りだし、竹刀を足場に天高く跳ぶ。

「これで最期だっ!!!」

悪霊へと突き刺さる竹刀。
その体内へは暴走した『時空転移装置』が乱暴にねじ込まれ、悪霊の体内で火花を散らすのであった。

「お姉ちゃん!」
「響ちゃん!!」
響の失敗箇所をトリスがカバーしながら続けられる『英雄の詩』の演奏。
一方の音菜によるギター演奏、鈴江によるサックス演奏も終わりを迎えようとしていた。
「これで……フィニッシュ!!!」
ついに完成する、完璧な『英雄の詩』の演奏。
その瞬間、演奏完成への充実感に浸る間も無く、自分たちの居る地面の下から『何か』が飛び出そうとしている気配に鈴江は気づく。
「これは……まさか、この世界の……意志?」
演奏を終えると同時に、黄金のような光に包まれる4人の学生たち。
その光は一つの塊となり、そして空中で火花を散らしていた悪霊を包み込む。
『やめろ……やめ……ろ……や……め……。』
光に包まれ、その力を失う悪霊。
また、聞こえていた怨念のような音も次第に弱まり始め、そしてついには現れた光と共にその存在を失せるのだった。

こうして、緒地憑イッサと名乗る悪霊はこの世界から消えた。
それが、天江ルナの知る『格闘茶道部』の記憶であった……。

640記憶の中の茶道部(最終回:後編) ◆n2NZhSPBXU:2015/02/15(日) 20:50:08 ID:7o6bAq7w0
「……さぁ、着いたわ。」
それから十数年後の世界……仁科学園の剣道部顧問となったルナは、老朽化した体育館が壊されるのをきっかけに、
一人の教え子へ『格闘茶道部』の思い出を自宅へ送るついでに話していた。
「先生……それって、本当の話なんですか?申し訳ないんですが……何だか創作っぽいなぁと……。」
教え子である仁科学園の生徒が答える。
「……『残念ながら本当の話よ、雑津ルナ……いえ、「天江ルナ」さん?』」
「……え?」
「『あのね、確かに「私」は……あの時、水玉パンツの暴走エネルギーで体の維持機能を失い、
 さらに変な歌に呼び寄せられた力で存在を失った。でもね……バックアップはちゃんと用意してたのよ、
 「天江ルナ」という存在を使ってね?』」
「先せ……!」
声をかけようとする雑津ルナ。
だが、彼女は気づいた……目の前に居る天江ルナ先生の姿に混じって、何者かの影が存在していることに……。
「『私は、雑津来人に未来の記憶を埋め込んだ際、自分の記憶も埋め込んだ……そして、天江ルナであり、
 緒地憑イッサでもある存在としてこの体を作り上げた。』」
今置かれている状況に恐怖し、車のドアを開けようとするルナ。
だが、ドアにはロックがかかっており、車は閉鎖空間と化していた。
「『そして、私は決めたの……もう、1年だけの世界で良い……もう未来なんて要らない……再び、あの世界を取り戻す……
 だから……未来の存在であるあなたを……消す!!!』」

「……はぁ〜い、それまでよ。」
突然、車内に響き渡る金属をノックするような音。
ルナ……いや、緒地憑イッサが音の方向を振り向くと、そこには二人の婦人警官の姿があった。
「そこの女教師さん、車に押し込んで子供をいじめるのは犯罪ですよぉ〜。」
「……ちょっとぉ〜、聞いてますかぁ〜?」
「『……フン。』」
車の窓ガラス越しに聞こえてくる、気の抜けた声。
しかし、イッサは無視し、ルナへと襲い掛かろうとする。
「……あのさぁ、『人の話はちゃんと聞く』って学校で習わなかったの?……って、魔族と妖怪には学校が無いっけ。こりゃ、うっかり。」
再び聞こえてくる声……だが、それは窓ガラス越しではなく、だれも居ないはずの後部座席からであった。
「『……!』」
声の方向を再び見るイッサ。
その方向には、先ほどまで外で気の抜けた声で話していた婦人警官の一人がくつろぐかのように後部座席に座る光景が展開されていた。

641記憶の中の茶道部(最終回:後編) ◆n2NZhSPBXU:2015/02/15(日) 20:55:16 ID:7o6bAq7w0
「『ど……どうして?……まさか、お前は!』」
「ふっふっふ……ある時は美人用務員!また、ある時は美人警官!!その実態は……。」
「『くそっ!』」
「ちょ……まだ、名乗り終わってないわよ!!」
謎の婦人警官の口上を半ばに、車から逃げ出すイッサ。
だが、その逃走をもう一人の婦人警官が、竹刀片手に引き留める。
「待ちなさい!『娘』の体を奪った窃盗容疑で逮捕よ!!」
「『何だと……貴様らは?!』」
「その前に……ルナちゃん!」
「『何……?』……待ち続けて早十数年……待ってましたよ、この瞬間を!『……!そ……その声は……。』」
意図しない言葉を放ち、慌て出すイッサ。
だが、『体の持ち主』である天江ルナが全身に力を込めると、
彼女の体からはまるで蒸気が噴き出すかのように緒地憑イッサの正体である悪霊の生き残りが現れるのだった。
「夕子ちゃん!お願い!!」
車の窓から顔を出し、大声をあげる婦人警官=魔王。
その言葉を受け、もう一人の婦人警官に扮していた天江夕子は一枚の『紙』を取りだし、悪霊に向けて放り投げる。
『な……何だ?!……!わ……私の……か……ら……。』
水を吸い込むかのように、紙に吸い込まれる悪霊。
そして、紙に全てのエネルギーが吸い込まれたのを確認すると、魔王はその紙を拾い上げるのであった。
「ふぅ……さすが、柚鈴天神社の悪霊退散のお札ね。グンバツの効果だわ。」
ポツリとつぶやく魔王。
その後、何が起こったのか理解できない表情をした雑津ルナが車の外へと現れ、彼女らへと問いかける。
「……お母さん……その恰好……何?」
「ちょっとね……まあ……コスプレ?でも、ちょっとカッコいいでしょ?逮捕しちゃうぞ!……ってね。」
「……。」
年甲斐も無くポーズを決める天江夕子……いや、雑津夕子。
しかし、ルナは特に返答することなく、今度は天江ルナへと問いかける。

642記憶の中の茶道部(最終回:後編) ◆n2NZhSPBXU:2015/02/15(日) 21:00:23 ID:7o6bAq7w0
「先生……あなたは本当に……天江先生ですよね?」
「ええ、今はね。外見も中身も天江ルナ……確かに奴の言うとおり、私の体には『緒地憑イッサ』としての因子が残っていることが後になって分かった。
 そして、奴は未来を奪うため、本来の『未来の私』であるあなたを消そうと画策していた。」
「でもね……そこを私が裏で手助けしてたって訳!」
魔王が話に割って入る。
「奴を倒した後、わずかながらルナちゃんの体から奴の波動が感じられたんだけど、状態としては冬眠に近かったから、あえて泳がし、
 なおかつルナちゃんの意識が支配されないよう、私のエネルギーを少なからずルナちゃんに送ってた。そして……今に至ると。」
「先生……私は……本当に『天江先生の未来』なんですか?」
「いいえ……確かに、あなたは母である天江夕子、父である雑津来人の娘として生まれた……ただし、私の知っている世界と違って、
 お父さんは婿養子にはならなかったみたいだけど。だから……あなたはあなた。『パラレルワールドの私』ってな言い方もできるけど……
 教え子に難しい説明をするのは野暮よね。だから、あなたはあなた!それで良いじゃない?」
「先生……。」
「来月、あなたは仁科学園の中等部に進学し、その過程で部活動を探すはず……でも、もうあの時のように『格闘茶道部』は存在しない……
 昔の私のように剣道部を探すも良し、別の部活動を探すも良し、あえて帰宅部になって勉強に専念するも良し……
 何にせよ、自分流の道を探しなさい。」
語りかける天江ルナ。
そして、自分の伝えたかったことを雑津ルナに伝え終えると、魔王と共に車へと乗り込むのだった。
「先生……どちらへ?」
「さぁね……一応は、自分なりの世界を探してくるわ。でも、その前に……ね?」
「ええ、この悪霊を封印したお札を時空間の奥底にでも押し込めてくるわ……もう二度と、こんな面倒な事件が起きないためにもね。」
そう言いながら、助手席のシートベルトに手をかける魔王。
「ルナちゃん……。」
「……お母さん、本当の私を……お願い。」
母と言うべき存在であった雑津夕子の言葉を聞き、車のエンジンをかけながら答えるルナ。
「じゃあね!」
夜の闇の中で、ルナの精一杯な明るい声が響く。
「さて、行きますかね?」
「そうね……あ!その前に明治時代の柚鈴天神社に行かなくちゃ!!今に至るまでの歴史を作るために、
 この『英雄の詩』を鈴絵ちゃんの曾お爺さんに伝えてこないと!!!」
そう言って、手元に握られたルナのMP3プレイヤーを振りながら見せる魔王。
「そうね……了解ぃ!それにしても、未来の記憶の中に存在してた曲が過去の曲でもあった理由が私とよーちゃんのせいだったとはね……。」
闇夜に大きく響く車のアクセル音。
しかし、その音もすぐに消え、車の姿もあっという間に暗闇の中へと消えるのだった。

643記憶の中の茶道部(最終回:後編) ◆n2NZhSPBXU:2015/02/15(日) 21:05:55 ID:7o6bAq7w0
「私の……本当の……未来。」
「……行こう、ルナちゃん。お父さんも、お腹を空かせて待ってるから。」
「……うん!……でも、その前に良い?」
「何?」
「……あんまり、人前でコスプレとかしないでね。何と言うか……娘として、恥ずかしい。」
「え〜、いーじゃない〜……アヌビス星人ドギー・クルーガー!ジャッジメント!!でぇ〜でぇえええん!!!
 ……なんてね?」
「……。」

それから一か月後、雑津ルナは仁科学園に新たに設置された仮設体育館の前に居た。
「……ここ……だよな?」
左手には竹刀、右手にチラシ、そして右肩には道着と防具が入った袋をかけた出で立ちで、体育館の前に立つルナ。
「『剣道部員求む』……か。村の剣道大会で優勝経験のある私にとっては願ったり叶ったりの部員募集ね!
 ……とは言うものの?」
部員募集のチラシを再確認した後、チラシを左手に持ち替えて、体育館の戸をゆっくりと開ける……が、
時間的にはどこも部活動を行っている時間にもかかわらず、体育館の中は静寂を保っていた。
「『剣道部 水曜夕方と土曜午後より体育館で絶賛練習中』……って、全く人の気配が無いんですけど。」
チラシにツッコミを入れるルナ。
『とりあえずは教職員に確認を取ろう』と考え、体育館を後にしようとした…その時であった。
「……!」
いきなりの出来事に対し、彼女は『気配』をまるで『殺気』のように感じ取ってしまい、
おもわずルナはチラシを投げ捨てて竹刀を構える。
「誰?!」
誰も居ないはずの体育館に響き渡る彼女の大声。
しかし、その『気配』は彼女の問いかけに一切答えることは無かった……が、
自身がどこに存在しているかについては強いプレッシャーで彼女に伝えていた。
「……!あそこか。」
プレッシャーが発せられている方向を見るルナ。
その目線の先には……。

おわり

--------------------------------------------------------------

以上で『記憶の中の茶道部』としての物語は終了です。
wikiのほうへは、後日人物設定等も含めてUPさせていただきますので、よろしくお願いします。

駄文失礼しました。

644 ◆n2NZhSPBXU:2015/02/16(月) 23:22:29 ID:2CpqsyvE0
一応、wikiのほうをいじってみました(人物関係)。
文章は量が多いので、後でにします。

ところで、wiki見て気になったことについて。
「桐谷 広海(きりや ひろみ):他校の中学三年生」となっているのですが、仁科学園の学生の項ではなく、
『???』のカテゴリーに入れるべきでは?と思ったのですが、どうなんでしょうか?

645名無しさん@避難中:2015/02/19(木) 22:11:00 ID:pGsCTwRE0
>>624
ニシトちゃんをください!
仁科のなかで一番女子高生してる…と、個人的感想だっ

>>644
完走乙だじぇ!
で、桐谷 広海(きりや ひろみ)ちゃんは…そのままでもいいんじゃね?
ってか、書いてみたいんだけど?

646 ◆n2NZhSPBXU:2015/02/21(土) 01:11:00 ID:LxqGAcOI0
>>645
読んでいただき、ありがとうございます。
とりあえず、wikiのほうも修正しました(桐谷広海についてはそのままです)。

>ってか、書いてみたいんだけど?
私の場合、雑談スレでの戯言が本作に繋がっていたりするので、思いついたらとりあえず書いてみるのはいかがでしょうか?

647わんこ ◆TC02kfS2Q2:2015/03/15(日) 19:26:52 ID:CA/aW7Kg0
>>624
ニシトちゃんにケモ耳つけたい。
尻尾もつけたい。
そして、はたか(ry

ちょっとすぎたけど、季節ネタ。

 今日は13日の金曜日だから不穏な空気が流れるとクラスの男子はざわついているが、都合のよいことは起こらない。と、信じている。
 女子中学生も板に付いたし、そろそろ大人の螺旋階段を踏み出す歳なのに、そんなやつらに付き合うほど幼くないし。
 学校へと向かう際、お兄ちゃんも同じようなことを騒いでいたが、振り切って家を出たわたしはちょっと賢いかも。

 「亜子も背後には気を付けろよ」
 「はぁ?」
 「でも、ジェイソンが爪を伸ばしてきても、俺が助けてやるから安心しろよ。マイシスター」

 わざとお兄ちゃんの声を背中にして、雲ひとつない弥生の空を駆ける。
 わたしたちの学び舎が青空に光り輝くように聳え立つ。
 一瞬の青春を過ごす、わたしのステージは教室。
 今朝のシーンを振り返りながら、わたしは椅子に深く腰掛けていた。

 恐怖の大王が降ってこようとも、終末論を並べようとも、ホラー映画のような戦慄の展開が起きようとも、
わたしたちには素敵な明日がある。馬鹿兄貴の戯言を拭い去るつもりでわたしは図書館の本をスクバから取り出した。
 席に座って文学少女を気取って、ちょっと無理して分厚い本を捲っていると、クラスメイトの鼎ちゃんが目を丸くして
わたしの本をかっさらった。

 鷲ヶ谷鼎ちゃん。『わしがやかなえ』ちゃんだ。
 難しい字が並ぶ仰々しい名前とは裏腹に、ショートカットな藍色の髪と大きな瞳が印象的な女子中学生だ。

 「どうしよう。いよいよだよ」

 健康的な声を張り上げて、鼎ちゃんはくるくると指を回していた。
 何にあわてふためいて、誰に救いを求めて、ジェイソンの襲来に戦く男子にも匹敵する動揺ぶりだ。

 「そうね……。でもさー、本当の恐怖ってのは結局人間なんだよね」
 「え?」
 「だって。全ては人間が作ったものじゃない」

 鼎ちゃんは大きな瞳を丸くさせて人差し指を立てたままかたまった。なにかおかしいことを言ったのだろうかと不安だ。

648わんこ ◆TC02kfS2Q2:2015/03/15(日) 19:27:13 ID:CA/aW7Kg0
 「でも、鼎ちゃん。それって、素晴らしい発明だと思うよ」

 再び少女の煌めきを取り戻し、ぴょんと羽上がった鼎ちゃん。

 「男子から何もらえるかなぁ。ほら、明日」

 わたしは机に腰掛けて最強議論を重ねている男子をちらと一瞥した。期待するだけ無断だけど、明日はホワイトデーだし。

 「結城凱みたいなワイルドな人から……だなんて、無理かなぁ」
 「誰?どこのクラスの子」
 「ちっちっち。ブラックコンドルだよ。伝説となった『鳥人戦隊ジェットマン』だね」

 ちらほら聞こえてくる男子の会話に胸ときめかせて、鼎ちゃんはちょっと昔の戦隊物に想いを寄せていたのだった。

 「でさあ、鼎ちゃん。ブラックコンドルとジェイソン、どっちが強いの?」
 「亜子ちゃんって、男子みたいなこと言うね」

 少年のような瞳で鼎ちゃんはけらけら笑っていた。


   おしまい。

鷲ヶ谷鼎ちゃん、お借りしました。亜子ちゃんも!
http://www15.atwiki.jp/nisina/pages/132.html

いもうとキャラ。
http://download1.getuploader.com/g/sousaku_2/929/ako_kanae.jpg

649名無しさん@避難中:2015/03/23(月) 04:41:04 ID:8KDkuq7k0
>>644
完結!乙でしたあー。キャラ豊かで見てて楽しかったです!
自分も書いてみたいなあ…
>>647
乙!!!!
うおおついに明らかになった鷲ヶ谷妹。あの姉してこの妹アリって漢字だ。
そして亜子ちゃんは相変わらずかわいいなあ…絵もいい…素晴らしいです。

650名無しさん@避難中:2015/03/23(月) 04:44:31 ID:8KDkuq7k0
ところでここの先生方or大人たちはどうして右も左も変な人ばかりなのだろう…
一番まともなのは誰かな。白壁せんせー、真田せんせーあたりかなあ

651名無しさん@避難中:2015/03/24(火) 07:56:21 ID:iFB84EH60
真田もあの美人姉妹がいるだけでへ(ry

652名無しさん@避難中:2015/03/24(火) 12:33:22 ID:Aeq9ZLsc0
やもりたんも相当際どいぞw

653名無しさん@避難中:2015/03/24(火) 22:33:43 ID:TMD9k8lw0
残るは茶々森堂の給仕さんですよ。
猫目かわいいし

654名無しさん@避難中:2015/03/27(金) 12:32:05 ID:G0KU9sqA0
黒髪多いね。鈴絵先輩とか

655名無しさん@避難中:2015/04/29(水) 10:01:45 ID:PQXe7UHs0
例の紐

http://download1.getuploader.com/g/sousaku_2/939/a+string+in+question+ako.jpg

656名無しさん@避難中:2015/04/29(水) 10:58:43 ID:G39.0eYo0
……ふぅ

657名無しさん@避難中:2015/04/30(木) 03:03:39 ID:fq8UkTR.0
ぴたごらすいっちw

658名無しさん@避難中:2015/05/04(月) 17:11:47 ID:UmJ1Crv60
ちこくするー!
わお?わ、わおおおおおおん!

http://download4.getuploader.com/g/sousaku_2/944/shinobu_wanwan.jpg

659:2015/05/15(金) 11:25:16 ID:6NFKM1D.0
ぬこぽ

660名無しさん@避難中:2015/05/15(金) 12:49:43 ID:VZIow.Ls0
にゃ

661名無しさん@避難中:2015/05/16(土) 06:42:01 ID:rOit8wLk0
後輩「ぬこぽ」

662名無しさん@避難中:2015/05/17(日) 22:48:18 ID:zZB0mHfI0
あかね「ぬこっぽ?」

663名無しさん@避難中:2015/05/18(月) 00:03:11 ID:f9nHwNx60
亜子「に……にゃー……?」

664名無しさん@避難中:2015/05/19(火) 07:59:16 ID:CJtgDXaE0
こんこん

665名無しさん@避難中:2015/05/19(火) 11:10:35 ID:tmCZ4m2k0
【急募】狐キャラ

666名無しさん@避難中:2015/05/19(火) 12:11:34 ID:x7ZQ0ezs0
キツネと言えば…

667名無しさん@避難中:2015/05/19(火) 22:24:26 ID:KcMe3xpE0
狐キャラ>神秘的、近付きがたい、そしておっぱ…

668名無しさん@避難中:2015/05/21(木) 10:02:11 ID:x5r/blvk0
隠れ巨乳は多そうだけど巨乳がウリのキャラが居なかった

669名無しさん@避難中:2015/05/21(木) 20:31:36 ID:38Q6zTz.0
>>665
http://download4.getuploader.com/g/sousaku_2/954/suzue_fox.jpg

人口比は隠れ巨乳<<ロリ体型なのが学園スレです。はは

670名無しさん@避難中:2015/05/25(月) 01:35:50 ID:3zOonr1I0
おっぱい!! おっぱい!!!!!

671わんこ ◆TC02kfS2Q2:2015/05/30(土) 10:31:04 ID:qUpb/Q7k0
本スレのお題「教師」から。


 『さなだけ』

 
 台所で忙しそうにしている妹のアリスの目を盗んで、ちょっくらタコさんウインナーを失敬してみる。
 思った通りに目を丸くしてお冠なアリスの気持ちとは裏腹に姉のウェルチが破顔した。

 「一匹ぐらいいいじゃん」
 「お姉ちゃん!」
 「もう一匹いい?」

 いやいや、アリスは本気。

 ウェルチはタコさんウインナーを胃の腑に収めると、重そうなリュックを肩にくるりと踵を返していた。
 これからお出掛けだ。部活の朝練に向かうのだ。体を動かすには丁度いい季節になってきたねと、ウェルチは光を浴びた。

 朝の光はすこぶる気持ちが良い。この恩恵に文句をつけるとならば、どんなヤツだ。
 たとえば……真田アリスだ。

 いくらゆすぶっても起きない姉に愛想を尽かし、朝食とお弁当を準備していたアリスだ。
 だからせっかくのタコさんウインナーをちょろまかされたならば、歯軋りしてさわやかな朝を台無しにしなくてはならないだろう。
 フランス人形のように整った顔だちもこれではもったいない。

 呆れるアリスを尻目に、春眠暁を覚えずの故事そのままに、朝寝坊をしたウェルチはいつもよりの倍速で靴下を履いていた。
 アッシュブロンドの髪をポニーテールに結んでいるウェルチが台所で跳ねると、春の草原かのような風が吹いた。

 朝の光はすこぶる気持ちが良い。この恩恵に感謝しているのは、どんなヤツだ。
 たとえば……真田ウェルチだ。

 体育会系を絵にしたウェルチに『細かいこと』という文字は存在しない。
 木漏れ日も目を覆いたくなるぐらいの日光に変えてしまう魅力を持っている。

 「アリスは朝から励むね」
 「お父さんの分も作ってるんだから」

 同じくアッシュブロンドの髪を持つアリスは炒り卵を掻き回す手を止めて、壁の時計を一瞥するとそろそろ出掛ける時間だと言う。
 日曜日の朝だというのに何かとくるくる目が回る。

 重そうなリュックを背にウェルチはスカートを叩きながら今朝の出来事を思い出した。

 「お父さん、もう出掛けたんだけど……アリス、知らなかったの?」
 「え?これ、お父さんの分も作ってるのに」
 「ザンネンね」

 ウェルチとアリスは姉妹だ。明暗別れた表情が左右非対称に並んだ。
 出来上がった炒り卵を二つの弁当箱にきれいに詰めるアリスは貰い手のない我が子の行く末を案じていた。

672わんこ ◆TC02kfS2Q2:2015/05/30(土) 10:31:31 ID:qUpb/Q7k0
 「アリス。そろそろ出るね。朝ご飯は……いいや!遅刻遅刻!」

 真っ白なブラウスに空色のリボンとスカートがさわやかに。制服姿のウェルチがアリスを急かして玄関へと向かった。
 日曜日だけど、部活の自主練習へ行くと言うのだ。ちょっと!とコンロの火を止めて、慌てて仕上げたお弁当を手に
アリスが後を追うと、ウェルチは玄関でスニーカーの靴紐を結んでいるところだった。

 「聞いてなかった?『明日、美術部に顔を出さなければ』って、お父さんが言ってたの」
 「そうだっけ?多分、本を読んでたからかしら。丁度、ダイイングメッセージの解読するシーンだったし」
 「何か、お父さん。すごく張り切ってわよ。ってか、いってきまーす!!」

 ひょいとアリスから弁当箱をひったくると、ウェルチはグーサインを突き出してポニーテールを揺らした。自信に満ちた
ウェルチのすまし顔が朝からやけに目に焼きつく。とにかく前向き、ポジティブに。たかが、靴の紐を結ぶことでさえも
見るものに明るい未来を与えてくれるのだ。寝間着のアリスは読みかけの推理小説の粗筋を思い出しながら姉を見送っていた。

 「お父さんの仕事に対する情熱は自慢でもあるし……」

 二人の父親は教師だ。
 二人が通う高校の美術教師を勤めている。故に、美術部の顧問も同じく勤めているのだ。
 自宅には父親の作品が狭しと飾られている。繊細で、色鮮やかな筆遣い。細かく描かれた木葉に背景が良い例だ。
アリスは父親の描いたセキセイインコの絵を眺めつつ、弁当箱を抱えていた。勿論、父親の分だ。アリスは複雑な気分だった。

 こうも少女的なタッチを描くのに、クラスのみんなは父親……つまり、美術教師・真田基次郎のことをゴリラと呼ぶのだろう。
 さらに口の悪いヤツは画廊原人とも呼ぶ。そんな父のあだ名をBGMにして学園生活を送っているのはアリスには心苦しいことだ。
 でも、ウェルチに言わせれば「これだけ慕われていることよ」と。姉のフォローに納得しつつ、父の口を喜ばせることに全力を注ぐ。

 「さてと……あと一品作ってみるかな」

 台所のアリスは鍋で塩水を沸騰させると刻んだアスパラガスを投入した。

 にぎやかで、騒々しいクラスだけど、読書の静の時間とクラスでの動の時間がアリスには世界を感じるのだ。
 もちろん、姉のおかげ。そして、父のおかげ。

 そう言えば、クラスメイトに迫という男子がいた。
 演劇部の部長を勤めている。彼の後輩たちが迫を囲んでわんわん騒いでいるところを目撃したことがある。

 「だから言っただろ。言霊はその分自分に返ってくるんだ」
 「わおっ。迫先輩はオトナですっ」

673わんこ ◆TC02kfS2Q2:2015/05/30(土) 10:32:01 ID:qUpb/Q7k0
 アリスは一緒にいたウェルチと共に「まだまだ子供みたいだよね」と一歩引いていた。

 オトナっていうのは……。
 お父さんみたいに包容力があって。
 お父さんみたいに行動力があって。
 お父さんみたいに逞しくって。
 お父さんみたいに……繊細で。

 一言で言えばゴリラだ。

 聞くところによると、ゴリラは家族を大切にする生き物らしい。
 迫にはまだ、ゴリラの風格など備わっていないと、アリスとウェルチは口を揃えた。

 茹で上がったアスパラガスを湯から摘み、ベーコンを巻いて炒める。簡単だけど豚肉と野菜の食感を同時に味わえる
春の一品がバターの香ばしいにおいとともに出来上がった。

 「さてと」

 家に残った弁当箱に詰め込んで、台所で一人制服に着替え始める。
 こっそり覗いているのはセキセイインコだけ。但し、絵だけど。


     #


 お日様が眩しいぐらいな角度で上がってきた頃、アーチェリー部の射場ではウェルチが額に汗をかいていた。

 上手くいかない日は原因は他にあるはずだ。近距離なのに点数の伸びが芳しくない。
 五点、六点をさ迷って金的になかなか命中しないもどかしさ。
 フォームが悪いのか、クリッカーの音が良くないまま打ってしまうのか。チェストガードがいつもよりきつく感じる。
 食べ損なった朝御飯はアリスが作ってくれた弁当で済ませたからか、お昼への希望が途絶えたのが原因か。
ラストの一射を構えるとサイトの先が滲んで見えた。

 集中力が途切れそうなのを堪えていると、不思議な声が聞こえる。
 意識がどこかに行ってしまったのか。
 いや。違う。

 「お姉ちゃん。来ちゃったんだけど」

674わんこ ◆TC02kfS2Q2:2015/05/30(土) 10:32:26 ID:qUpb/Q7k0
 射場で妹の声を聞くとは思わなかった。
 ピンクのスクールベストで清潔感溢れる制服姿のアリスが弁当箱を持った救世主。
 無言でフォームを保つウェルチはカチッとクリッカーを鳴らすと、そのまま矢をリリースした。
 吸い込まれるように金的に突き刺さった結末に、ウェルチは久方ぶりの安堵を覚えた。

 「お姉ちゃん !」
 「アリス?よく来たね」

 弁当箱を掲げたアリスは朝のウェルチのようにグーサインを突き上げていた。
 今、ウェルチには弁当箱が財宝が詰め込まれた箱にも見えた。手を伸ばせばあり付くことが出来るお昼ご飯を自分の手で
逃してしまったウェルチにはウン億の価値にも見えるのであろう。
 しかし、これは……。

 「お父さんの分、持ってきたんだけど」
 「わざわざ?そっかー。わたしのお昼ご飯かと思ったのになー」
 「お姉ちゃん、お弁当渡したでしょ?」

 先に食べてしまった……という告白をアリスへ。
 イエス様の像の前で跪く迷える子羊。
 天のお許しを。
 愚かなわたしに裁きを。
 
 「お父さんも姉ちゃんも、部のことになると夢中になるから」

 さすが、我が妹。
 感極まったウェルチはアリスのことを尊敬の眼差しで見上げると細い手首を握り締めた。
 双子だから、自分と同じものを持っていると分かっているのに、触ってはいけないか弱い古美術のような感触がするではないか。

 「お姉ちゃん……」
 「アリス。

 初めて来るアーチェリー部の射場に飲み込まれそうなアリスだ。
 強引でもいい。こういうタイプはちょっと押しが強い方が効き目がある。ウサギのような勢いで姉は妹の手首を引っ張った。

 「よし。お父さんのところへ持って行こう!そして、何かごちそうしてもらおうかな」

 ウェルチは弓具を仕舞うと、片手でタオルで汗を拭った。
 アリスは王子様との夢を見ているようだった。

 美術室への廊下が朝の光よりも眩しい。

675わんこ ◆TC02kfS2Q2:2015/05/30(土) 10:35:19 ID:qUpb/Q7k0
      #


 「よく見て感覚を掴むのだ。この肉体美」

 真田基次郎は美術教室で自慢のバリトンボイスを響かせた。
 言うならば、動物園の檻をやぶってのこのこと現れてたゴリラがマンティングを披露しているかのようだった。

 デッサンは基本のキ、コンテと食パンを手にカンバスに命を吹き込め。真田基次郎の美術論は『動を静で表せ』だ。
 真田基次郎は今日に限って男子ばかり集めてみた。いわゆる実験かもしれない。男同士がぶつかりあうことで
ちょっとした化学反応を狙ったものだ。

 「台、ポーズの要望はないか」
 「せんせー。臀部を見せてくんねーかな。臀部」
 「おお。大事だな。臀部」

 机の上でくるりと回った真田基次郎は、まるでゴリラのように野性の構えを部員たちに見せつけた。
 ビキニパンツ一丁で余すとこなく部員たちに肉体を提供する男気。隆々とした腕っぷし、均整の取れた胸板、締まりのよい尻。
 ダビデの生き写しか、はたまた生まれ変わりか。

 真田基次郎は午前の光の中、まるでゴリラと化していた。
 ゴリラは優しき生き物だ。
 生徒たちの要望を聞き入れることはゴリラの使命だ。
 恥ずかしいことなど、一切無い。ゴリラは勇敢だから。

 「せんせー。あのー……正面のデッサンしたいんすが」

 手を伸ばしている男子生徒の願いは聞き入れなければならぬ。
 少年は宝なり。

 「おお。大切だな」
 「パンツ脱いでくれねーかな」

 真田基次郎がパンツのゴムに指を掛け、ゆっくりと太ももへとずりおろすカウントダウンを頭の中で始める。
 いいか。これは芸術だ。
 芸術は素直でなければならない。
 目の前のものを受け入れなければ、愚直にはなれない。
 いくら芸術を愛する詩人が「手術台の上でミシンとこうもり傘が不意に出会った美しさ」を語ろうとも、全ての根源を知らなければ
その美しさを感じることが出来ないのだ。

 だから、裸を恥じることは無い。
 なぜなら、自分はゴリラだからだ。
 ゴリラが自然に帰るだけだ。
 すっとビキニパンツと太ももの間に空気が流れる。
 覚悟のまま腕を下ろそうと心臓を爆発させたと同時に、教室の扉が全開し聞き慣れた声がユニゾンで響いた。

 「お父さ……」


おしまい。


アリス・ウェルチ「おとうさんと!」
http://download5.getuploader.com/g/sousaku_2/956/sanada_ke.jpg

676名無しさん@避難中:2015/07/11(土) 18:22:11 ID:rUkvh49k0
黒鉄亜子「ふう…静かだなぁ」

677名無しさん@避難中:2015/07/24(金) 18:22:29 ID:MiwpXE/A0
ぬこぬこぽっぽ

678名無しさん@避難中:2016/02/11(木) 21:34:37 ID:oVkR80C60
ぬこんぽ

679名無しさん@避難中:2016/02/12(金) 01:37:06 ID:pr1cQH5Y0
にゃぁ

680名無しさん@避難中:2016/02/13(土) 07:39:56 ID:IQf2.In60
ぬこわんっ

681名無しさん@避難中:2016/02/25(木) 22:17:56 ID:LPYEHd560
>>675
部活って・・・いいよな。青春している感じがする
ゴリラのような人間なのか、人間のようなゴリラなのか
それを判断するには僕たちはまだ幼すぎる

682先輩、スパゲッティプログラムです!:2016/02/27(土) 00:06:23 ID:jxyxOJPU0
投下・・・するんじゃない?

683先輩、スパゲッティプログラムです!:2016/02/27(土) 00:07:20 ID:jxyxOJPU0

「先輩!! ……別に呼んでみただけです」
「返事してからバラせよ」

 アホの後輩が今日もアホで安心する。
 俺と後輩が繁華街の洋食屋で席を同じくしているのはデートでも何でもなく、たまたま
の偶然だった。少なくとも俺の認識ではそうだ。

「このお店スパゲッティが美味しいんですよ」

 ずいずいと断りもなく相席する彼女には閉口するが、まあ四人掛けのテーブルを一人で
占領するのは心苦しいので、ちょうど良かったといえば良かった。

「先輩はスパゲッティのことをスパゲッティって呼ぶ派ですか? パスタって呼ぶ派?」
「基本的には、スパゲティ、かな」

 スパゲティはパスタの一種にすぎない。

「……」
「……」
「お前は?って訊き返してくれないんですか?」
「さっきごく自然にスパゲティって言ってたじゃないか」
「あれは……口からついです。ふ、普段はパスタって呼んでますよ? いかにもオシャレ
で、女子力ありそうじゃないですか? 結婚したくならないですか?」
「そうかな……」

 どっちでもいいと思う。

「でも、たらこスパはやっぱりたらこスパじゃないとですよね。たらこパスタなんて呼ん
でたら百年の恋も冷めます」
「たらこパスタ」
「あっ、店員さんすみませーん! たらこスパ一丁ぉ!」
「かしこまりぱすたー!」

 百年の恋が早く冷めて欲しい俺は間髪入れずに言ったのだが、オリーブオイルまみれの
スパゲッティのように後輩の右耳から入って左耳に抜けていった。
 ……地味に店員もおかしかったが、ツッコむのはよそう。どうせただの変な語尾を操る
程度なら、後輩のおかしさのほうが絶対おかしい。

「先輩は何を頼んだんですか。交換しましょうよ。唾液ごと交換しましょう」
「食欲が失せるから。ピラフだよ。えびの」
「焼き飯ですか」

 すごい女子力低そうな言葉出た!

「いや、ピラフは焼き飯じゃないだろう。ピラフとチャーハンと焼き飯は全部作り方が違
うはずだ」
「……そ、そうなんですか? 精進します。今日から武者修行です」

 花嫁修業じゃないのか?と言い掛けたが、藪を突いて蛇を出す行為と思い留まる。
 怪しい話題の取っ掛かりを察知して潰しておく、このへんの判断がこの子と先輩後輩付
き合いしていくコツだ。

684先輩、スパゲッティプログラムです!:2016/02/27(土) 00:08:26 ID:jxyxOJPU0
「はーいピラフ、お待たせしぱすた!」
「あ、どうもです」

 会話が途切れたちょうどいいタイミングでウェイターが料理を運んで来る。
 とたんに、後輩が目から嘘っぱちの涙を飛ばしながら叫んだ。

「そんな先輩! ここは私に構わず、どうか先に召し上がっててください!」
「……待ってるつもりだったけど、なんかムカついたからもう食べるわ……」
「そんな先輩!」
 
 どっちだよ。

「すじこスパゲティのお客様ー」

 俺の記憶が確かならこの席にはいなかったと思うが、魚卵がアホほど盛られたスパゲテ
ィが後輩の前にデンと置かれる。
 「わぁ美味しそう!」などと手の平を合わせて感激している後輩に、「お前の注文はた
らこだっただろ」と俺はものすごく言いたかったのだが、それを言ってどうなると思い直
して我慢した。
 ウェイターがそっと耳打ちしてきた。

「旦那、タイミング、合わせておきぱすた……ぜ!」

 自分の仕事によほど自信ありげに去っていくウェイターを、俺はじっとりとした半眼で見送った。
 ……オーダー間違えたくせに。

「ね、ね、ピラフ! 先輩を一口ください。代わりに閑花ちゃんあげます」
「黙って食えすじこ」

 ピラフは大変美味しかったのだが、何だかひじょうに疲れてしまった俺は、自分は二度
とこの愉快な店の暖簾をくぐることはないだろうなと思ったのだった。



 おわり

685先輩、スパゲッティプログラムです!:2016/02/27(土) 00:10:33 ID:jxyxOJPU0
おわり。リハビリがてら
学園でも何でもないけどな!

もう自分のトリを忘れてしまったですよ

686名無しさん@避難中:2016/02/27(土) 01:11:30 ID:TiE3xva60
きたー

687名無しさん@避難中:2016/03/01(火) 01:21:40 ID:OI5hyDBM0
仁科周りの飲食店はなぜ妙なところが多いのかw

688わんこ ◆TC02kfS2Q2:2016/03/19(土) 06:31:50 ID:Udj/fLyA0
 『たらこに☆スパに☆つなわたり』

  唄・後鬼閑花

 おまたせしました あっつあつ! 
 当店自慢のたらこスパ!
 ちょっぴり塩味アクセント! ほかほかつるつる星三つ!

 四六時中いつも考えている
 この一品をお届けするとき もしかしてもしかして
 もっともっともっともっと好きになっちゃうかも

 ただでさえ夢中なのに
 あの人と指が触れ合ったとき もしかしてもしてして
 もっともっともっともっとラヴになっちゃうかも

 たらこスパのつなわたりだよね 対岸に渡り終えたとき
 きらきら輝く豊饒の海へと ダイブしちゃってもいいですか?

 たらこスパのつなわたりだよね 対岸に辿り着けなくても
 きっときっとあの人がきっと ぴりゃーっと包み込んでくれますよね?

 おまたせしました あっつあつ! 
 当店自慢のたらこスパ!
 麺は絶妙アルデンテ! コナオトシなんかつまんない!

 四六時中いつも考えている
 この一品を口にしてくれたとき もしかしてもしかして
 もっともっともっともっとぎゅっとしてくれるかも

 塩味お留守のスパなんて
 恋愛が奪われた人生みたいだし もしかしてもしてして
 もっともっともっともっともっともっともっともっと
 もっともっともっともっともっともっともっともっと


 たらこマシマシしますか?


 たらこスパのつなわたりだよね ずっと応援していてね
 数多に広がる星空の元 翼広げてちゃってもいいですか?

 たらこスパのつなわたりだよね たとえフォークを投げちゃっても
 ぜったいぜったいわたしは 匙なんか投げないからね?

 だってこの一言が聞きたいから ゆらゆら揺れるたらこスパの綱辿って
 

 『ごちそうさま』


 まいどありがとうございました! 
 いかがでしたかたらこスパ!
 ちょっぴり塩味アクセント! ごめんね海苔を乗せ忘れ!
 
http://download1.getuploader.com/g/sousaku_2/1020/247_cd_shizuka.jpg

689わんこ ◆TC02kfS2Q2:2016/03/19(土) 06:36:23 ID:Udj/fLyA0
>>682
やったー!後輩ちゃんはやっぱりかわいい!ごちそうになりぱすたー!
この掛け合いたまらんちん!

ジャケ写
http://download1.getuploader.com/g/sousaku_2/1021/247_cd01.jpg

690名無しさん@避難中:2016/03/19(土) 08:14:54 ID:qMf7TCmc0
言い値で買おう

691名無しさん@避難中:2016/03/21(月) 03:21:41 ID:wywvZ72U0
すげえ!すげぇよアンタ!
この電波ソングは完全に調子に乗ってる時の後輩ですわ
もっと連発のそこはかとない狂気

なんかイラストどんどん芸が細かくなってるw
うちの子可愛い
ありがとうございぱすた!

692先輩とダモクレスの犬 ◆46YdzwwxxU:2016/03/26(土) 15:48:43 ID:adnK4mC60
投下します
ネタがない時の名前ネタ

デリケートな話題のわりに特に配慮とかナシなのでごめんち

693先輩とダモクレスの犬 ◆46YdzwwxxU:2016/03/26(土) 15:50:29 ID:adnK4mC60

 いつもの後輩後鬼閑花となし崩しに帰ることになった日、玄関でいつもの後輩の友達で
俺にとってはそんなにいつものじゃない後輩の久遠荵と出くわした。

「荵ちゃんのくさかんむりって、やっぱりわんわん王だからなんですかね」

 二、三、何ということもない会話を交わしたところで、後輩が脈絡もなくそんなことを
言い出した。

「そだよ」
「いや、もともとわんわんおーの“おー”は王様の“王”じゃないから。……えっ!?」
「わはー! びっくりした? バウリンガルジョークでした!」
「ただのジョークとの違いはよく分からんが」

 正直めっちゃびっくりした……。後輩は明らかに笑いを取りに来ている時と素で間違え
てる時が分かりやすいが、久遠はなんか難しい。演劇部だから?(関係ない)

「ちなみに私の名前も、有閑マダムの閑にお花の花ですから、くさかんむりあります」
「もっといい単語なかったかな?」
「土佐犬みたいにブレイブなんだね!」

 ネギちゃんそれ違う。
 おさらいしておくが、久遠の下の名前は荵(しのぶ)ちゃんである。見ての通り、忍に
くさかんむりが付いた漢字で、みんなおなじみの野菜より二本だけ画数が少ない。

「私みたいな見た目神秘的で賢そうな女の子には月桂冠なんて似合うと思いません?」
「自覚はあったようで、思っていたより賢かった」

 ふと気になって後輩に聞いてみる。

「ところでお前、荵がどんな植物か知ってるのか?」
「私これでもお料理には自信があるんですよ」

 うっわ!
 荵を知らないどころか、ネタじゃなくて本気で葱と間違えてたのこの子!?

「……シノブ科夏緑性シダ植物。夏にしのぶ玉とか吊りしのぶって言って、根っこの部分
を丸めて軒先に吊るしたりしてるアレだ。ネギじゃないんだぞ」
「きゃうん!? 私吊るされちゃうよ!」
「博覧強記も結構ですけど、堅っ苦しい生物学的分類なんて、先輩ったら情緒ってものが
ありませんよ。花のJAの名前の話題ですよ?」
「私たちじぇいけーだよ?」
「JAは農協だぞ」

 こいつの名前のくさかんむりは、やっぱりおバカの王様だからなんだろうか。

694先輩とダモクレスの犬 ◆46YdzwwxxU:2016/03/26(土) 15:51:34 ID:adnK4mC60

「……そんなことより!!」

 誤魔化す気マンマンだが、武士の情けだ。しつこくは追及すまい。

「ちょうど夏なことですし! これって園芸部に行って、そのしのぶ玉だか忍たま●太郎
だかを見せてもらう流れじゃないですか? 荵ちゃんも行くよね?」
「へむへむへむ」

 意外と乗り気なのか久遠。……何かよく分からん返事だが乗り気でいいんだよな?
 まあ何についても実物を見るのが一番いい勉強である。

「わんわん中だけど、お供しまっす!」
「謎の活動!!」
「今思ったんですけど、園芸部と演劇部ってなんかちょっとカブってません?」
「うん、たまに木の役依頼したりしてるよ?」

 それって園芸かなぁ。
 ともかく三人揃って園芸部のエリアに出向く。傍目には謎の三人組だろうが、俺にとっ
ても彼女たちと放課後こうしてうろついているのは不思議だった。
 園芸部は、いわゆる学園農場寄り、ビニールハウスの並ぶ土地の一角に部室を持つ。最
大勢力である無印の園芸部の他に、園芸部(和)とガーデニング部(洋)と、園芸テロリ
スト集団として恐れられる裏・園芸部まであるが、たまたま(和)の次期部長と目される
普通科二年女子春野英知(はるの えいち)さんがいたので断りを入れておく。快いオー
ケーの後、ちょっと恥ずかしそうに「みんなも運命の一輪と……エンゲイジだよ!」とか
ポーズ付きで決め台詞のようなことを言っていた。部員獲得のためになりふり構わない、
次期部長の気迫がそこにはあった。

「運命の一輪とエンゲイジ(和)」
「許してやれ」

 実際のところ、春野さんはパッと見、いたずら好きな花の妖精というか、華やかで香り
の強い“洋”のイメージの女の子だ。無印の園芸部の重鎮金本と水が合わず、一度は裏・
園芸部に堕ちてスコップ片手に部員たちを闇討ちしていた時期もあったらしいが、園芸部
(和)部長壇ソノカ先輩を運命の一輪と見初めて表の世界に返り咲いたという噂だ。
 波乱万丈というか何というか、仁科学園の園芸部員どもは本当にちゃんと鉢の世話をし
ているのだろうか、変な抗争の話ばかり聞こえてくる。

「あのへんかな?」

 鼻を利かせていち早く駆けていく久遠の背中を追う。ビニールハウスに併設された屋根
付きの空間に、所狭しと花びらが咲き乱れていた。

「私、花とかそこまで好きじゃないけど、ここは乙女的なアピールポイントに違いない」
(わぁきれいなお花ですねぇ先輩!)
「……たぶん、本音と建前、逆だからな」
「私の方が綺麗だよ」
「……何だ!? 何が起こっている!?」

 たぶん後輩の中では、自分が「きれいなお花……」と感嘆したところで、俺が「きみの
方が綺麗だよ」と歯の浮くようなことを言ったのだろうが、何もかもぜんぶ間違えている。

695先輩とダモクレスの犬 ◆46YdzwwxxU:2016/03/26(土) 15:52:11 ID:adnK4mC60

「しのぶ玉どこかなー?」

 そんな中、自分の名前にまつわることだからか、久遠は真面目だった。匂いを嗅がんば
かりにあっちこっちの鉢植えに顔を近づけている。

「今更ですが、しのぶ玉ってネーミングがもう、忍者が敵を爆殺するために使う火薬玉の
類にしか聞こえません」
「言うなよ。あー、久遠それだ、それ」
「わう?」

 俺の指先を追って、久遠が視線を上げていく。棚というよりその支柱に、黒褐色の球体
が針金で固定されていた。
 しのぶ玉だ。
 球状に纏められた根茎は遠目に土塊のようだが、そこから飛び出して三角形を描く櫛状
の葉の緑は、強靭な生命力を感じさせた。
 みずみずしいとは印象が違う。吸い上げて我が物とした水を握り締め、苛酷な環境を生
き抜こうとする、無駄のなさ、強かさ。

「これが荵ちゃんなんですねー」
「その言いようやめろ」
「バイオスフィアって感じです。地球型惑星をテーマにした芸術品みたいな」

 後輩の感性は雄大だった。

「どうです? ん? わんわん玉になった気分は」

 ……人格は小物というかただの屑だったが。
 にやにやしながら久遠を肘でつつく後輩。悪意があるのかナチュラルに性格が悪いのか、
ただ親密な間柄だから冗談で言えるのか。
 ……どれでもいいか。

「殴っていいぞ。俺が許す」

 しかし久遠は温厚なレトリバーのように無邪気に笑っていた。

「とっても感動しました! 連れてきてくれてありがとう」

 別に久遠の方から頼んだわけでもないのに、この素直さ、この可愛らしさ、そしてこの
感受性。意地悪市松人形とどこでこうも差が付いてしまったのか。俺の後輩にしたい。今
も後輩だけど。

「ところで先輩、しのぶ玉ってどうやって遊ぶんですか?」

 後輩に与えると何だか人に投げつけたりしそうだが、しのぶ玉は観賞用であってそうい
うものではない。

「見てると涼しげじゃないか」
「ダモクレスの剣だね!」
「そうね」
「……」
「……」

 ――久遠荵という少女が何故ここで突然ダモクレスの剣なんて単語を口走ったのか――
 ――本気でしのぶ玉というものを勘違いしていたのか――
 ――それともバウリンガルジョークとやらの新作だったのか――
 ――それすら、俺の理解の及ぶところではなかった――
 ――しかし、俺はそれでいいと思うのだ――
 ――しのぶ玉が軒下で風に揺れる季節は、まだ始まったばかりなのだから――



 おわり

696先輩とダモクレスの犬 ◆46YdzwwxxU:2016/03/26(土) 15:54:49 ID:adnK4mC60
投下終わり
思ったけどこの二人にもう一人混ぜるのって難しいね・・・

697名無しさん@避難中:2016/03/27(日) 23:10:13 ID:CL68xyFM0
>>696
投下乙です!

>この二人にもう一人混ぜるのって難しいね・・・

そうなんだよねー
あまりにも二人のやり取りが完成されすぎていて。
後輩にツッコむのも、的確さ・冷静さで先輩の右に出るものはいないし
ボケるにしても後輩より面白くボケられても被るだけだし

結局、二人のやり取りを面白いねーって眺める傍観者になるしかないのかなぁ
でもそうすると絡ませる意味ないしなー

>>496-500 みたいな、わいわいした状況ならまた違うんだろーけど

698名無しさん@避難中:2016/03/29(火) 22:53:41 ID:70JoX/V60
改めて読み返すとこの話はいかんですな
余裕ができたらウィキでちゃんと書き直すです

スイカは夏にならないと書く気しないからまたね(二年越し)

699わんこ ◆TC02kfS2Q2:2016/04/02(土) 10:36:30 ID:4MDoSrWE0
>>696
後輩ちゃんかわいい!
先輩いつも突っ込みさえてるな!
ネギ…あいかわらずや!

先輩×後輩+αの絡みの方程式、どうやって解こうか…

「久遠、遅いよっ」
http://download1.getuploader.com/g/sousaku_2/1026/akane_shinobu03.jpg

700名無しさん@避難中:2016/04/03(日) 11:04:50 ID:yy9e.0aQ0
演劇部もランニングするんだね
葱ちゃんは瞬発力ありそうだけど持久力あんまりなさそう

701名無しさん@避難中:2016/04/08(金) 21:15:48 ID:P3xJQda.0
久しぶりになんか書きたいにゃ。
お題下さい。

702名無しさん@避難中:2016/04/08(金) 21:21:47 ID:QmzsYghQ0
昔のゲームで盛り上がる

703名無しさん@避難中:2016/04/15(金) 20:46:23 ID:Icy00c/w0
ゲーム・・・ゲームか・・・
フリーダムイーグルちゃんあたりそんなの好きそう

704わんこ ◆TC02kfS2Q2:2016/05/01(日) 11:37:44 ID:WTAvAC5Q0

 長崎のおばあちゃんちにあったからと、黒咲あかねがスーファミを演劇部の部室に持ってきた。
 久遠荵が理由を聞くと「現実逃避」と間髪いれずに返答した。

 『スーパー』と名乗るもの、『64』よりも古典的、『DS』よりも原始的。今の時代からすれば「いい仕事」した骨董品。
カセットなんて笑っちゃうぐらい分厚くて、それでもその頃のみんなはコイツに夢中になっていた伝説の名機だ。
 ビールジョッキを手にしたことないドイツ人と同じく、ゲームコントローラーを手にしたことない日本人はいないとも言われているほど。
 五本の指で世界を救える……と、アラサー世代はしこたま教育され、夢あふれる時代からやってきた往年のゲーム機が机に据えられる。

 部室の隅っこで燻っていたブラウン管のテレビの端子にケーブルを繋ぎ、ぱちんと電源が入ると、ブラウン管の奥から電気の音が聞こえる。
 さぁ。
 老兵の出陣。

 じわりと映し出された起動画面に心躍る。

 「わたし、ピーチ姫になりたかったの。わたしのために全力で走ってくれる誰かがいること」

 『ディスクシステム』のディすら知らない世代に生まれたあかねは乙女心を吐露した。

 「誰っ?『桃太郎』じゃなくって『桃姫』だっ?」
 「おばあちゃんちで、これやりながら思い描いていたわけでっ」
 「わうっ」
 「おばあちゃんちの側通る路面電車の音がリフレインしますっ」

 ブラウン管の正面に座してドット絵の画面と向き合うと、21世紀の何でもない世の中が未来の世界に見えてきた。
恐らくある程度の世代以降ならば、涙ちょちょ切らしながら誰もがそらんじることが出来る電子音のBGMが部室一杯に広がった。

 一人の男がうら若き姫を救いに走る。

 何というド定番。

 このゲームを臆面なく説明してみた。間違ってはなかろう。
 いい歳こいた、ヒゲの男を誰もが夢中になって一国を救うヒーローへと仕立てあげるという、単純かつ痛快なテレビゲーム。

 あかねは細い指で、無骨にごついコントローラーを握りしめていた。

705わんこ ◆TC02kfS2Q2:2016/05/01(日) 11:45:01 ID:WTAvAC5Q0
 十字のボタンを軽く押すと、軽快なメロディに乗せてドット絵の男が画面右へと駆け出す。

 真っ直ぐに伸びた道をひたすら進む。ただ、それを阻む者も存在する。敵は多い。

 気持ちのよいぐらいの青空の下、コイン拾い放題、キノコ食べ放題、カメ蹴飛ばし放題。身の丈以上の跳躍力を持つ身体能力で谷を越え、
目的地まで突っ走る。ここまで無我夢中に走る男はイニシャル『M』のアイツ以来だ。

 「あっ。うわっ。カメにかみつけっ」

 努々油断することなかれ。僅かの判断ミスが命取りに繋がるのだ。
 自動車のクラッシュテストさながら、カメとの正面衝突だった。

 墓標にこう記せ。

 『死因。カメに激突』

 心臓が止まったように萎縮した男は、これまた軽快なメロディで美しく死に体を晒すのだった。

 「あーあ。おばあちゃんだったら絶対ノーミスでクリアするのにな」
 「面白そうだなっ。わたしにもやらせろいっ」
 「だめですっ」

 ぐいっとコントローラーごと荵から遠ざけたあかねは有無を言わずに再チャレンジ。
 再び電子音が鳴り響きくなか、荵は両腕で抱きつく体勢であかねの背後にくっついて、頬をあかねの黒髪にくっつけていた。

 「あ。そういえば、迫先輩が」
 「……いけないっ」

 荵があかねの動きを制限するのだ。
 思うようにコントローラーを操作できず、画面の男も何となしに動きがぎこちない。

 「この間、あかねちゃんの書いた脚本読んでね……」
 「その話……」

706わんこ ◆TC02kfS2Q2:2016/05/01(日) 11:47:52 ID:WTAvAC5Q0
 本日二人目の殉職。
 闇よりも深い谷底に転落しようとも、耳を塞ぎたくなる断末魔さえあげることはなかった。
 もしかして、彼は走ることと同時に死を覚悟していたのかもしれない。死ぬ為に走る。武士道に通じる、命の散り際。
 潔いといえば潔い、リアルといえばリアルな最期。男気溢れる彼に弔いの花を。彼の名は永遠に語り継がれるだろう。

 そして、不死鳥の如く『テテッ、テッ、テレッテ!』と、甦る。
 輪廻という。

 しばらく口を閉ざしてコントローラーを握りつつ、俯いていたあかねが、城に閉じ込められた姫の姿と重なる。

 「わたしにもやらせろいっ」と、荵はあかねの黒髪に甘噛みすると、あかねが小さく声を漏らした。

 「あかねちゃん、頭ん中ぐるぐるだなっ」
 「んもっ」
 「髪の毛をくんくんすれば、大抵のこと分かるっ。迫先輩のことで動揺したねっ。水曜だけどっ」

 迫は演劇部の部長だ。
 以前、あかねは迫から演劇について「光るものがある」と評されていた。
 だからかあかねは渾身の力で脚本を書き上げた。

 「あかねちゃんもベタな話し書いたね。お姫さまを勇者が救うって」
 「基本のキだし。でも、うまく書けた覚えないし」

 好きなことなのに、上手くいかないことで苦しめられる理不尽に対してとったあかねの選択は「現実逃避」だった。

 「迫先輩が『おれのところへ来い』って。『一人で煮詰めると話が画一化される』って」
 
 荵の言葉にあかねの手が止まる……つまり、ヒゲの男は動かない。ダッシュさえ出来ない男に世界なんか救えるか。
 スーファミからカセットをいきなり抜いて、本体との接続部分の金属端子に強く息を吹き掛けた。
 
 ならば、わたしが。

 「ピーチ姫は彼が救いにやって来るのを待ってるの。でも、ピーチ姫だって、走らなきゃいけないってときもあるし」
 「わうっ」

 スカート翻して、あかねは演劇部部室を飛び出して、迫のもとへと馳せ参じた。
 荵はあかねが投げ飛ばしたコントローラーを握り締め、意味もわからずBボタンと十字ボタンを親指で強く押していた。

おしまい。

707わんこ ◆TC02kfS2Q2:2016/05/01(日) 11:49:02 ID:WTAvAC5Q0
三匹いればわんわんわん!三羽いたならちゅんちゅんちゅん!

>>703

荵 「でたな!ツインバード!」
和穂「え……、荵ちゃん。これ『ツインビー』だよ。縦スクロールシューティングの名作として名を馳せる……」
荵 「ほらっ!たかなっしー!ダブルプレーだ!」
小鳥遊「おれ、苦手なんだよな。シューティング」
荵 「じゃあ、よりツインビー感出すために……たかなっしー!和穂ちゃんを両手で抱えあげて!」
小鳥遊「えっ。こうか……?」
和穂「う、雄一郎!やめろ!」
荵 「両腕で天高く!空からくもじい見ながら、雲海を超えろっ」
和穂「うわぁ!お、落ちるーーーー!」
荵 「わおおおっ!ヴァーでチャルなリアリティだっ」


http://download1.getuploader.com/g/sousaku_2/1030/kazuho02.jpg

708名無しさん@避難中:2016/05/10(火) 23:21:42 ID:.BEWW5AY0
小気味のいい文章は健在のようだな・・・
俺そのゲームやったことないけど友達がやってるのを横で見ながら邪魔したことはある

>接続部分の金属端子に強く息を吹き掛けた
これはやる

709名無しさん@避難中:2016/05/31(火) 22:26:07 ID:5zTXb2dg0
メガネっ娘が…欲しい…
うう、めメガネ…

710名無しさん@避難中:2016/06/01(水) 01:30:35 ID:TLvh0vkk0
逆転の発想で自分のとこの子に眼鏡かけさせればいいんじゃね!?

711名無しさん@避難中:2016/06/07(火) 22:29:20 ID:yc6OycN20
お、お題ぷりいず

712名無しさん@避難中:2016/06/07(火) 23:40:53 ID:RWL0pUYY0
やもり先生(アラサー女子)

713名無しさん@避難中:2016/06/10(金) 20:53:08 ID:5SzHXW1w0
やもりんこそ仁科で一番かわいい女子かもしれない。

714名無しさん@避難中:2016/06/10(金) 21:12:54 ID:dEcpnAms0
わからんでもない

715名無しさん@避難中:2016/06/11(土) 00:34:49 ID:BPQ.2d5g0
やもり先生が眼鏡をかけるって!?

716名無しさん@避難中:2016/06/17(金) 20:46:55 ID:gN9IG8aQ0
やもりん、メガネをかける。

http://download1.getuploader.com/g/sousaku_2/1044/yamori_001.jpg

717名無しさん@避難中:2016/06/18(土) 01:32:05 ID:3W8diago0
やったー!

718名無しさん@避難中:2016/06/22(水) 22:26:36 ID:dGiMvVKA0
お題、どんどんいきまっしょい。ぷりーず

719名無しさん@避難中:2016/06/25(土) 01:13:26 ID:dADJFdb20
アラサー女子やもりたんプールに行く

720名無しさん@避難中:2016/06/27(月) 15:02:10 ID:GoC74qpw0
あれ

721名無しさん@避難中:2016/07/07(木) 23:14:31 ID:wiKM2T0c0
やもり「ハウスキーパー☆やもり!」
あかね「え?白壁先生…」
荵「わお!家を守るのなら、わたしも番犬になるぞっ」
やもり(どうしよう…。このコスチューム、コスプレ部の京ちゃんに作ってもらったんだけど。やっぱ、めっちゃ恥ずかしいし…)

つづく…かもしれない。

722名無しさん@避難中:2016/07/08(金) 00:06:21 ID:PUtKHnPY0
続きなさいよっ!!

723名無しさん@避難中:2016/07/08(金) 21:55:23 ID:eKibRVR60
京「ふふっ。かわいい男の子は、みんな男の娘になぁーれ」
迫「秋月?ちょっと頼みごとが…って。何か言ったか?」
京「ん?…ふふっ。なんでもないの。演劇部の迫部長、どうしました?」
迫「いや。今度の公演で衣装をコスプレ部に担当してもらいたいんだが」
京「まかせて!この秋月京に不可能はありません!」
迫「そっか。なら、詳しくはまた伝えるぞ」
京「あの。迫さん…。演劇部ですよね、だったら…」
迫「ん?」
京「いや。なんでもありません!(黒髪、色白、程よい身長。そして、メガネ。絶好の餌食だわ。じゅるり…)」


そのころ。


荵「やもりん!おなかすいたっ」


いったいどうなる?

724名無しさん@避難中:2016/07/09(土) 07:57:32 ID:lhKHZrRs0
やもり「じゃあ、軽いものでも作ってあげよっか」
荵「わわうっ。ハウスキーパー★やもりの本領発揮だねっ」
やもり「え…まだその設定?」
あかね「白壁先生もまんざらではないんじゃないですか?」
やもり「いや…でも、この格好は、やっぱ無理かな〜」
荵「翔べ!!ハウスキーパー★やもり!!」
あかね「夜食で空腹を制圧するのだっ」
やもり(夜じゃないけどなぁ)

725名無しさん@避難中:2016/07/10(日) 19:30:22 ID:V8QsrQ820
やもり「生きとし生けるもの、命を分け与え、そして命を継ぐ。大地の恵に敬意をおおおお!!」
あかね「出たっ。ハウスキーパー★やもり、フライングライスの術っ」
荵「フライパンの中でお米が舞ってるぞっ」
やもり「秘伝!!サンダーポーク!!」
あかね「角切りポークが稲光を放った?」
やもり「ファイナルレイン!!!!!」
荵「にんにく醤油の雨っ」

726名無しさん@避難中:2016/07/10(日) 19:40:47 ID:V8QsrQ820
やもり「今、空腹は滅んだ」
あかね「白壁先生特製チャーハンですっ」
荵「わおっ。お腹が鳴るぞっ」
迫「卵スープです…」
あかね「あれ、迫先輩。ウェイトレスですかっ」
迫「聞くな」
荵「似合いすぎてくやしいぞっ。黒ニーソが反則だっ」
迫「やめろ。秋月に…おい!!噛むなあ」



台詞系むずい…
おわりおわり。

727名無しさん@避難中:2016/07/10(日) 21:15:16 ID:qhClbzKQ0
噛むなw


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