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【シェアード】仁科学園校舎裏【スクールライフ】

128後輩とトラソルテオトルと焔のチョコ ◆46YdzwwxxU:2012/03/31(土) 02:33:34 ID:O22R8Gt60
終わらなかったけどモチベのために投下するっすー

129後輩とトラソルテオトルと焔のチョコ ◆46YdzwwxxU:2012/03/31(土) 02:37:55 ID:O22R8Gt60




 ※


 誰だっけ?
 見覚えはあるんだけど。
 後鬼閑花は表情をぴくりともさせずに考えた。
 部活動見学の折に見た顔だった。確か“創作部”とかいう仲良し四人組の一員。ひとりひとりと自己紹介を交
わした記憶もなく、当然、名前など知らない。もっとも、もしその時に名前を聴いていたとしても、後鬼閑花は
覚えていないだろう。根本的に他人に興味が薄い人間とはそういうものだ。

「……誰やったっけ?」

 こちらは単純にその時に話を聞いていなかったために思い出しようもない浅野士乃。知らないものは当然知る
わけないと胸を張る。

「その節はどうも、先輩」
「ん? あ、どーもどーも」

 自分の名前を忌避してさらりと問い掛けをスルーする閑花と、まあいいかと生来の大雑把さを発揮する士乃。
結果、その場しのぎのテキトーな挨拶が飛び交う。

「そろそろいいですか?」

 班員同士の交流がひと段落したタイミングを見計らって、白壁やもり教諭が声を上げる。

「では、まずは、必要なものが机の上に揃っているか確認してください」

 そのまま手元のメモを読み上げていく。
 鍋、温度計、包丁、まな板、ボウル(大)、ボウル(中)、ボウル(小)、ゴムベラ、チョコレート型、板チ
ョコ、デコレーションのための食品……。もちろんこれは最低限のもので、世界にひとつだけのバレンタインチ
ョコを作るためにと、あれこれと家庭から持参している者も多い。

「OK。これもある、OK。OK……っと。温度計とか使うんだね」
「お菓子作りは分量と温度が大事なんですよー」
「まさか理科室からってことはないよね、やもり先生」
「ちゃんと調理用ですぅー」

 白壁やもり教諭は粗忽なことで有名だ。準備に何らかの手落ちがあってもおかしくはない。
 配布資料に首っぴきで指差し確認する者から、「そもそもやもり先生のメモからして完璧かどうか分かんなく
ね?」と一から手順をシミュレートする者まで、少女たちは本気と書いて真剣だった。

「全部ありますか?」
「あるがやない?」

 そのへんの事情をまだいまいち分かっていないエロス班のふたりは、はたから聞く者を不安にさせる会話を交
わし合っていた。
 
「大丈夫です!」
「やもりん先生にしては珍しく揃っています!」

130後輩とトラソルテオトルと焔のチョコ ◆46YdzwwxxU:2012/03/31(土) 02:39:18 ID:O22R8Gt60
「さすが先生!」
「先生!」
「先生ッ」

 不備なしとのめでたい報告が続々と上がっていき、可愛い教え子たちのまばゆい笑顔が、白壁やもり教諭(教
師歴四年目)を取り巻く。誰からともなく拍手が沸き起こった。
 謎の感動に包まれる調理実習室。
 
「ま、まーね……」

 教師冥利に尽きるような光景だったが、当の白壁やもり教諭は口の端を引き攣らせていた。
 実は今朝になって慌てて“先輩”に調理器具のチェックを手伝ってもらったなどと、真実を口にできる雰囲気
ではなかった。
 それでも、生徒はいっしょうけんめいに手をたたいた。白壁やもり教諭がどうしてもこれまで完璧にできなか
ったことを、みんなが知っていたので。

「こほん。ではさっそくお料理を始めましょう」

 わざとらしくも咳払いをひとつ。
 彼女とて社会人の端くれ、気を引き締めるにはそれで充分。

「まず、包丁とまな板がよく乾いていることを確かめてから、板チョコを細かく刻みます。キャベツの千切りの
ようなイメージでしょうか。刻んだチョコはボウル(小)へ」

 これはチョコレートをお湯の熱さで手早く溶かすために小さく砕いておくのですだらだらと熱に晒していると
チョコレートの味が変わってしまいますからね云々と続く長ったらしい説明をざっと聞き流し、浅野士乃と後鬼
閑花、ふたりの魔女は刃物をぎらつかせてチョコレートの塊に跳び掛かった。その形相はちょっと、エンカウン
トしたら死ぬ系のモンスターっぽかった。

「だりゃあああっ!! 悪は滅びや!!」
「原子の塵に変えてやる……!」

 まな板の中でみるみるココアパウダーと化していくチョコレート。これ一番ちっこくしたヤツが優勝な!的な
ものでもあるまいし、何もそこまでせんでもという気もするが、この時他人に構っている余裕は誰にも(教諭に
も)なかった。

「お鍋でお湯を沸かしましょう。二人分ってことを忘れないでくださいね。
 湯煎で使うお湯の温度はだいたい五〇度から六〇度、温度計で計ってください。ちなみに摂氏温度です。お菓
子だけど、摂氏なのです」

 摂氏温度にして二度は体感気温の下がる発言だったが、視線を向ける者すらここにはいなかった。

131後輩とトラソルテオトルと焔のチョコ ◆46YdzwwxxU:2012/03/31(土) 02:40:03 ID:O22R8Gt60

「……いかん、刻みゆうときに前もってお湯の用意しちょったら早かったに」
「すぐに沸きますよ」

 それなりに料理を経験した者ならば、そういう同時進行も可能だろうが。ややこしい手順にテンパっては、テ
ンパリング(チョコを溶かして固める時にする調温やら何やら)などできっこないという講師の深い考えあって
のことだった。

「ボウル(大)にお湯、ボウル(中)に氷水を入れましたね? ボウル(大)のお湯に、チョコの入ったボウル
(小)のお船を浮かべます。ボウル越しにお湯の熱が伝わってチョコが溶けだすので、ゴムベラで滑らかになる
まで混ぜましょう。
 間違っても、ボウル(大)にボウル(小)の中身をぶちまけてはいけませんよ」

 熱湯と氷水を駆使するテンパリングの温度管理は複雑だった。
 ふたりで悪戦苦闘しながらダマのない状態に持っていくエロスの戦士。

「うう……。ただ溶かして固めればいいってものではないのですね……。甘く見ていました」
「よっしゃ! ジャスト32度ッ!」

 温度計と睨めっこしていた士乃から、勝鬨にも似た歓声。

「やりましたね。型、使いますか――」

 リトライのためにチョコの温度を氷水で28度まで下げている最中の閑花が視線だけで促すと、士乃はふるふ
ると首を振って否定。
 カッ!!と目を見開き、自らが持ってきた手提げ袋に手を伸ばす。
 その中から、何か。
 巨大なものが――
 現れる――
 
「すまんけんど、あたしのチョコは、型に嵌るようなもんやないがやきッ!!」

 創作部の嵐を呼ぶ女、浅野士乃が、ついに牙を剥く!!

132後輩とトラソルテオトルと焔のチョコ ◆46YdzwwxxU:2012/03/31(土) 02:40:50 ID:O22R8Gt60


 ※


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 コラム 『料理部が選んだ“チョコレートと相性のよいもの”!』


 「持ってくる物(必須):チョコレートと相性のよい食品って言われてもぉ、○○○(←あなたの名前を入れ
てね!)困っちゃぁう!」と、チラシを前にカマトトぶってるそこのあなた! そう、あなた! ご安心くださ
い! 我々料理部が厳選した、オススメの食べ物をこっそりばっちり教えてあげちゃいます! まさに至れり尽
くせりなずな御形はこべら仏の座ッ!


【フルーツ】
 オススメ度★★★★★
「定番中の定番ですね。バナナ、イチゴ、ミカンなど。風味が強く、あまり水っぽくならないものがよいでしょ
う。カンヅメも◎」

【ナッツ】
 オススメ度★★★★★
「ナッツに限りませんが、お菓子屋さんもやっている組み合わせなら大概はイケます」

【どんぐり】
 オススメ度★☆☆☆☆
「ナッツといっても、原則、どんぐりは止めておきましょう。野性味や縄文人っぽさをアピールするのは、何も
今でなくたってよいハズ! ゾウムシさんの幼虫とかもいるかも!」

【スナック菓子】
 オススメ度★★★★☆
「美味しさ、チョコレートとの相性、バリエーションの豊富さ、いずれも最強ランク。ただしあまりにも特徴的
な味のものと組み合わせてしまうと、恋する乙女としてのキラキラ感や、手作りのありがたみが薄れてしまう諸
刃の剣。……砕いて使うなど、うまく工夫して!」

【キャラメル、マショマロ、ジェリー等の砂糖菓子】
 オススメ度★★★★★
「既製品でありながら、スナック菓子ほどはそれを感じさせない優れモノ。もっとも、アメちゃんなど単体で口
の中に残るものは避けたほうが無難です。変に海苔だけ堅いお寿司みたいになってしまいますよ!」

【酢昆布】
 オススメ度★☆☆☆☆
「合いません」


 いかがでしたでしょうか? みんなもこれを参考に、女子力にいっそう磨きを掛けてくださいね!
 最後に、白壁やもり先生から、ありがたいお言葉をいただいています!

「これは闇鍋でも、魔女のサバトでも、陶芸でも、ましてや化学テロの下準備でもありません! 貴重なタンパ
ク源や危険物、その他わけのわからない物を持ちこまないでください。食べられない雑草や小石、ガンプラ、素
焼きの陶器、自分のハダカなどをウケ狙いでチョイスするのも絶対にやめましょう!(過去いました)。食べら
れる雑草ならギリOK!」


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133後輩とトラソルテオトルと焔のチョコ ◆46YdzwwxxU:2012/03/31(土) 02:42:16 ID:O22R8Gt60
今回はここまで。

こうやって細切れにするの、よくないとは思ってるんだけどね。
ごめんち☆

134名無しさん@避難中:2012/03/31(土) 05:45:55 ID:W48Y32vQ0
最後の小ネタの集合はなんなんだよw

135わんこ ◆TC02kfS2Q2:2012/05/19(土) 22:19:14 ID:XS6f9qE60
こっちに投下したりー。

136犬と鷲 ◆TC02kfS2Q2:2012/05/19(土) 22:19:46 ID:XS6f9qE60

 売店最後の一個の牛乳。それが目の前で他人の物になっていく様子は鷲ヶ谷和穂の脳裏でスロー再生されていた。

 毎日、必ず買っているパック牛乳。一日でも欠かすと、落ち着かない。

 カルシウム?そんなものは他でも補える。ただ、鷲ヶ谷和穂にとっては「牛乳を飲むこと」自体が出来ないことが悔しいのだ。
仕方が無いのでテレビでお馴染みの乳酸飲料を代わりに買って、学園の中庭で小さなランチを開きましょ。だが、腑に落ちない。
 小さなことだけど、思い返すとなんだか腹立たしい。そんなこと忘れてしまえ、小さなヤツだと思われるぞ。と、自分自身を
省みるものの、和穂にとっては『小さな』という言葉が非常に頭に残って仕方が無い。

 「小さくないもん!ぼくは……ちょっと、普通より」

 小さいだけの女の子だ。

 「鷲ヶ谷」という苗字に相対しているかのような和穂は、見た目小学生だ。高等部の制服を身にまとっていても何故か違和感がある。
ただ、神は和穂を見捨てたわけではない。その小さい体が与えた恩恵は大きい。
 体で補えと言わんばかりに和穂は小学生男子に負けず劣らずの元気を持ち合わせ、小学生の中に紛れても自然に過ごせるという。

 それが、和穂には面白くない。
 スカートというより、半ズボン。
 携帯というより、糸電話。
 パスタというより、スパゲッティ。
 ぼくだって、箸が転がっても笑っちゃう……女子高生だよ!

 神様、何すんの!

 それに比べて、妹は……。

 和穂は神に出会ったら、ぱちんこでまつぽっくりをぶつけてやりたいと思っていた。

137犬と鷲 ◆TC02kfS2Q2:2012/05/19(土) 22:20:11 ID:XS6f9qE60

    #

 「雄一郎ーっ」
 
 いつも隣にいるはずの、小鳥遊雄一郎が見当たらない。恋人というわけでもなく、だからといって友達でくくるにはもったいない
くらいの仲を保つ和穂と雄一郎。お昼ごはんを一緒にと思い、中庭で待ち合わせしていたのだが姿が見えぬ。
 二人とも高等部の一年だ。雄一郎は学年の割にはがたいがよい。おそらく、初見で私服の二人を見たならば、間違いなく
雄一郎の方を怪しんでしまうかもしれない。よくて『歩行者専用』の道路標識か。やはり、神の悪ふざけなのか……。

 「雄一郎がいないなら、ぼくだけで食べようっと」

 きょうのお昼はピザパンと乳製品の飲み物。がさがさっと袋を開けると、音に誘われたのかハトが和穂の足元に集まる。
ベンチに腰掛けて、振り子のように脚をぶらつかせる和穂はそのスピードを速め、ハトを追い返していた。
 なんだか……、一人っきりなのかなあ。と、ピザパンを口にするとトッピングのコーンがスカートに落ちた。
 春うららかな風が藍色のセミロングを揺らし、和穂も同じようにコーンと雄一郎の行方で気持ちを揺らしていた。

「牛乳が飲めないなんて、ぼく、どうしたらいいの?」

 同じ乳製品とはいえ、和穂が欠かさず飲んでいるものとは、似て非なるもの。
 ストローづたいに舌の上でじんわり広がる舐めざわり感。後を引く喉越しに、命の息吹を思いおこさせる、なぞの白い液体。

 和穂はベンチに腰掛けて、同じようにランチをとる学友たちを眺めていた。
 きゃっきゃっと歓談しながらサンドイッチを摘む高等部の女子たち。一人が何気なく太ももを上げて足を組む。
白い脚が折り重なる質感、はだけるスカート、そして大人にひとつ背伸び。和穂も彼女の真似をしようと心に思ってみたが、
自分には似合わないと諦めた。ピザパンを平らげると、自宅から持ってきたデザートで口休め。
 きょうのデザートはいりこだ。牛乳と一緒なら、格別な味に。そして……今は、多くは語らず。

 ぼりぼりと袋に詰めたいりこを食べつづけると喉が渇く。頭の先を甘噛みし、大洋の恵を口に含む。そして徐々に噛みながら
一匹一匹口にすることで、咀嚼する回数を出来るだけ多くしようとした。牛乳もいりこもよく噛んで!が和穂の正義だった。
 いりことは合わないから乳製品の飲料は先に飲み終えた。口の中が乾燥するので、途中でいりこを食べるのをやめて水呑場へ。

 何もかもが小さく見える世界って、楽しいのだろうか。
 羽根を持たずに誰かを眺めることが出来るなんて。

 天を仰ぐと、小鳥たちが空を気兼ねなく飛んでいるのが見えた。小鳥でさえも、ぼくを見下ろすことが出来るというのに……。

 ふと。視線を和穂が立つ地上へと降ろす。

138犬と鷲 ◆TC02kfS2Q2:2012/05/19(土) 22:20:37 ID:XS6f9qE60

 中庭では和穂が買うはずだった牛乳をかっさらっていった少女がスカートの裾を持ち上げてしょんぼりと立っているのが見えた。
売店でのあの動きをしていたとは思えないほど、彼女は酷く落ち込んでいるように見えた。見間違えは無い。
 悲しそうな顔をしたあと、まだまだ早い夏の雲の切れ目を覗かせたように彼女は白い歯を見せて沈んだ気持ちから立ち直ってみせた。
制服についた砂埃を払うと、パンに群がるハトが二、三羽飛び上がる。しかし、肝心な牛乳に塗れた足元を拭おうとしないことに、
やるせない気持ちを抑えつつ和穂は不思議に思い、子犬のような彼女に近寄った。
 身の丈は和穂よりか、僅かに高いくらい。どんぐりの背くらべと言っても過言ではない。年上か、年下か。判断に困る。

 「もしかして、ハンカチとか忘れたとかですか?」
 「え?そう!そう!そう!全部部室に忘れちゃったんだよねー。どうしよっかなあ」

 どうするも、こうするも、このままでは靴にも彼女にもよろしくない。
 彼女の足元にはパック牛乳が地面にひしゃげ、ぴかぴかに磨かれたローファーも、午前中を共に過ごした紺ハイソも、
牛乳によって白く汚されていた。その傍らには食べかけのコッペパンが転がり、ハトが群がっていた。
ティッシュを探すが生憎持ち合わせがない。焦って探す姿を見かねた和穂は少女に自分のティッシュを貸してあげた。

 「ありがとう。コケちゃったのねー」
 「え……」

 和穂があげた淡い水色のティッシュで、丁寧に靴と靴下を拭いている少女はあっけらかんと答えた。

 「パンも牛乳も台無しだよ。校庭にミニチュアダックスが迷い込んできてね、追いかけたんだよ。お昼食べてる途中だけどね。
  そしたらパンの神様のバチが当たっちゃったのか、コケちゃった。パンも落っことして、すねで牛乳パック潰しちゃった」 

 和穂が飲むはずであろう牛乳が迎えた悲しい末路だった。二人を囲むハトたちはそんな事情などお構い無しにパンを奪い合う。

 「いつか、ティッシュのお礼しなきゃね。わたしは久遠荵だよ。高等部の一年だからねっ」
 「同じ学年……なんだ」
 「奇遇だねっ」
 「あのっ」

 同い年で、自分のようにちみっちゃい。
 きっと、同じ悩みを抱えているんだろうな。と、和穂は勝手な想像を繰り広げ、思いつくままの質問をぶつけたくなった。
どんな結果が戻ってくるかはわからないけど、なんとなく和穂は荵を放っとけなくなっていた。

 「久遠さんも、牛乳好きなんですか?」

 『さん』付けされようが、何もかも知った昔からの友人と話すように、荵はにこにこと頷いた。

 「牛乳は小さい頃から欠かさず飲んでるだよね」
 「えっ?毎日?」
 「そう。毎日。大好きだよ」

139犬と鷲 ◆TC02kfS2Q2:2012/05/19(土) 22:20:59 ID:XS6f9qE60

 和穂は解せなかった。
 荵も毎日牛乳を飲んでいるというのに、物理的に同じ目線で話し合えることに。

 「にぼしは……」
 「にぼしも好きだよっ」
 「チーズとか」
 「それも!」

 食べ物に裏切られることほど生きていてショックなことはない。
 牛乳ばかり追い求めていた和穂は牛乳にであったら目を合わすことができないのだろか、とさえ思った。 

 「なんか、理不尽だよね。雄一郎がこの牛乳が好きって言っていたから、ぼくも飲んでるのに」
 「雄一郎?」

 和穂がジト目で視線を横にそらした先は、がたいの良い男子が子犬に追い回されていたところだった。
 そっと和穂は雄一郎を荵のために指差した。
 雄一郎を追い回していた子犬は、荵の方へと駆け寄って来ると、一度は牛乳に塗れた荵の足元に子犬は鼻先を近付けた。
突然な獣の襲来に驚いたハトたちが一斉に飛び立つ。きゃんきゃん吠えていた子犬も荵のに近寄ると大人しくなり、
元気よく尻尾を振りながら舌を出してぺろっと荵の紺ハイソをひとなめ。
 嫌がることなく荵は子犬の乱行を許し、和穂に秘密を打ち明けるように呟いた。

 「それから……」

 とめどなく話のループを繋げる荵。和穂は荵の世界に引きずりこまれそうになっていた。
 だって、パン落としたんだよ。牛乳、落としたんだよ。お昼抜きみたいなものだよ。悲しくないの?

 「ん?ごめんなさいねっ。クセになっちゃってるみたい。迫先輩やあかねちゃんからいつも言われてるんだよねー。
  大人びてるから説得力あるし、それに『何でもいいから、会話を途切れさせないこと』ってね。あっ!ハト!飛べ!飛べー!!」

 和穂の疑問を見透かしているような、それともただ和穂と関わることだけが楽しくて、というような。
小学生的で無邪気なその場しのぎで、自分の不幸でさえも遊び道具に使っていることに荵は気付いていなかった。

 「どういうこと?久遠さん」
 「即興の練習かな。わたし、演劇部だよっ。そうだ。ティッシュのお礼に今度さ、あかねちゃんを紹介してあげよう。わおーん」
 「同じ学年?」
 「そうだよ。背が高くて、髪が長くて……なのに」

 わざと荵は話すことを止めて、和穂をじらしてみた。
 
 「あかねちゃん。牛乳とかダメなんだって」


    おしまい。

140わんこ ◆TC02kfS2Q2:2012/05/19(土) 22:22:15 ID:XS6f9qE60
鷲ヶ谷さん、お借りしました。

わおーん!投下、おしまい。

141名無しさん@避難中:2012/05/23(水) 07:09:26 ID:ewdczsAg0
あーちゃんは牛乳がダメ把握。

142名無しさん@避難中:2012/05/25(金) 11:21:28 ID:QAacuu860
牛乳好きは背が小さいは定説にして良いと思う

143名無しさん@避難中:2012/06/17(日) 21:11:46 ID:iLq5NehkO
>>140
このふたりってそういや結構似てるところあるかも。

「ちっちゃくないよ!」
謎の白い液体(後を引く喉越し・命の息吹ときたら、それはもう)、まつぼっくり、いりこ……
……これはもはや18禁。まったく合法ロリは最高だぜ!

どんぐりもいいが、まつぼっくりも、いいね。

144名無しさん@避難中:2012/08/04(土) 06:12:08 ID:gCyjpnwI0
後輩があのバカをどう思ってるかは前に答えを頂いたので、そろそろあのバカから後輩がどう見えてるか書きたいものだ。
しかしどう考えてもソリが合わんなこの二人w

145名無しさん@避難中:2012/08/08(水) 07:18:04 ID:jvc8/OTwO
まじっすか……!

ソリが合わないのが逆に面白そうではある。
変な化学反応起こして大爆発!みたいな。

146名無しさん@避難中:2012/08/08(水) 16:33:31 ID:5U/V68VE0
でもわんこさんみたいな楽しいのは無理っぽいw
懐から見ても後輩は苦手な人物なのだw

147名無しさん@避難中:2012/08/08(水) 20:57:15 ID:SJX1g/Ns0
懐と後輩の間に仲介役を入れればいいじゃーん。とかね。

148名無しさん@避難中:2012/08/08(水) 21:03:55 ID:5U/V68VE0
また先輩の仕事が増えるw

149先輩と桃太郎 ◆46YdzwwxxU:2012/11/25(日) 18:33:30 ID:kVp89hJ20
投下します

150先輩と桃太郎 ◆46YdzwwxxU:2012/11/25(日) 18:34:21 ID:kVp89hJ20

『ごめんしゅんくんおねぎかってきておねぎ』
『何に使うネギ?』
『ひみつおんぷ』
『青ネギと白ネギ、どっちを買えばいい?』
『みどりっぽいほうがすてき』
『了解』
『あとにゅうぎゅうもかってきてくれるとおかあさんうれしいなって』
「乳牛はスーパーで売ってねえよ!?」

 母さんとのメールのやり取りに思わず口頭でツッコんでしまった。
 帰りのホームルームが終わって数分後というタイミング。ほとんどのクラスメイトは既に教室から捌(は)け
ていたとはいえ、これはかなり恥ずかしい。我ながらもう既にだいぶ病んだ人みたいだが、せめて以後は気をつ
けなくては。

『こっちはしろいほうでおねがい』

 ……ごく素直に牛乳のことだと解釈していたが、変な指定のせいでちょっと疑わしくなる……。もう面倒くさ
いから牛乳を買って帰るけど。
 母さんとの会話は、後輩とは別の意味で疲れる。天然ぼけっぽい振る舞いのためよく可愛らしい人と評される
が、実は狙ってやっているんじゃないかと思う。生まれてこのかた、一度としてボロを出したところを見たこと
がないので断定はできないが。
 ……どうでもいいか。

「ありがとうございました――」

 俺はスーパーに立ち寄り、青ネギと牛乳と確か切れていたマヨネーズをレジに通し、帰路についた。唐突なお
遣いのためにマイバッグの持ち合わせはなく、ビニール袋を買うことになった。教科書やノートでいっぱいの学
生鞄に一リットルの牛乳パックはさすがに入らないし、ネギは臭いがつきそうで嫌だ。
 ビニール袋をガサつかせながら、通学路にしている川沿いの堤防上を歩く。陽が落ちるのが日に日に早くなる
季節ではあるが、今日の空はまだ紅く色づいてはいない。水面が反射するのは明朗な青だ。
 頬に秋の風。日課のジョギングを楽しむ仲睦まじい老夫婦や、補助輪が外れたばかりと思しき自転車が、鮮や
かに俺を追い抜いて行く。
 子どもがサッカーできる程度に広い河川敷の広場は手入れが行き届いており、そこら中にゴミが散乱している
ようなこともない。汗を流しているのがどこの誰なのかまでは知らないが、ほんとうに頭が下がる。たまには、
うちの美化委員もボランティアで清掃活動などしていたはずで、俺も少し手伝ったことはあるが。
 もちろん、ポイ捨てをする不心得者など何をどうしたところで必ず一定数は出てくるもので、空き缶ひとつな
いということもない。
 ――人間の善意には限界がある。

「怪物だらけ、か」

 いつかの後輩の叫びを思い出す。
 傲慢だ何だといわれても、あちらもどうにかしなくてはいけないのかもしれない。それなりに深刻にそう思っ
ているのだが、完全に行き詰ってしまっている。
 現状を打開するために意を決して“本棚の魔女”なんて呼ばれる怪しげな文芸部部長にも相談してみたが、い
まいちピンと来る助言は返ってこなかった。どうも彼女は、『後輩は今のままでもそれはそれでよい』というス
タンスでいるらしく、今後もあまり当てにはなりそうもない。
 思わず封印したはずの溜め息を吐きそうになって、それではいかんと時間を掛けて鼻から抜く。喉の奥の唸る
ような声とともに、弱気に取り憑かれそうな身体に力が入った気がする。

151先輩と桃太郎 ◆46YdzwwxxU:2012/11/25(日) 18:35:20 ID:kVp89hJ20
 そんな時だった。

「あえいうえおあおわんわんおーっ!!」 

 大きな声がした。俺たちが普段出さないような種類の、腹の底からの発声だ。河川の対岸にまで届き、跳ね返
って来る。背後からの大声は、先週毛先を整えたばかりの俺の頭をちりちりさせた。
 何事かと振り返った俺の至近距離に、人影!?

「うわびっくりしたぁ!?」
「鬼さん役見っけた、見っけたよ!! いきなりでごめんなさいだけど手伝ってもらうーっ!!」
「……はい? え、ちょっ、んな、なに、何だって!? てかきみ誰!?」

 声の主は問答無用とばかりに俺の手首を掴み、そのまま強引に引きずっていく。ナリはちっこいくせに、すご
い力。ずるずる。 
 それは、よく見なくても女の子だった。スカート。仁科学園の制服?
 通り掛かった散歩中の大型犬と飼い主の女性が、揃って目を丸くしていた。思えば、この状況はああいう感じ
に見えなくもないかもしれない。
 なかなか歩こうとしないぐうたらな犬(俺)を飼い主(彼女)が引っ張っているのか、興味を惹かれて駆け出
した犬(彼女)を飼い主(俺)が抑えようとして力負けしているのか――
 どっちに見えるかで、そのひとの心の清らかさが分かるんじゃないかな?
 どっちもアウトだろ!!
 自分自身にツッコミを入れる虚しさを味わう。それはそうと。

 ――犬で思い出した。この子のこと。
 
 演劇部の一年生だ。仔犬のように生き生きした子。
 名前は確か、荵といったはずだ。苗字は覚えていない。どうして中途半端に下のほうだけ知っているのかとい
うと、演劇部の公演のチラシを眺めていた時に一瞬“葱(ネギ)”と読んでしまい、確認してああ何だ“荵(し
のぶ)”かそりゃそうだよなぁと安堵したのが印象に残っていたからだと思われる。

「なあ、きみ、演劇部だろう? ……演劇の手伝いがいるのか?」
「おおお? さっすが話が早いねっ!」
「何がさすがか」

 まあいい。取り敢えず、話を聴いてみよう。
 何だかよく分からないが、切羽詰まっているのは確かなようだ。

「演目は、桃から生まれた――す桃太郎!」
「ちょっと待てそいつ生まれたの本当に桃から?」
「わんわんっ! 冗談! ふつうに桃太郎だよ!」

 ……俺にとって話していると疲れる人というのは、母さんと後輩の他にまだもうひとりいたらしい。

「先輩には、鬼ヶ島の鬼さん役をやって欲しいんだ! 観客は一〇人ばかりのちびっ子たち! 大道具も小道具
も練習もなしの即興青空演劇! ……これはキミにしかできない重要な任務なのだっ! 分かるねっ!?」

 だんだん状況が把握できてきた。

152先輩と桃太郎 ◆46YdzwwxxU:2012/11/25(日) 18:36:32 ID:kVp89hJ20
 この小さな演劇部員さんが自主トレ的にやっているちょっとした芝居に付き合って欲しいということだろう。
 正直なところアドリブなんてまったく自信がないが、桃太郎ならまだ何とかなりそうではある。

「あんまり多くを望まれても困るが――引き受けた」
「ありがとうっ!!」

 ちびっ子を出されては、俺の答えはもちろん決まっている。
 そして、“引き受けた”からには、全力でやろう。やる。
 大雑把な説明が終わるころには、舞台らしき場所が見えてきた。といっても、目印は駆け回って遊んでいる子
どもたちと、出演者らしい数人の影だけだったが。
 ステージは芝生の植わった高水敷。照明は太陽。袖はないので役者は出番あるまで座っとけ。そういわんばか
りの潔さだ。

「待たせたな皆の衆っ!!」

 仔犬のような演劇部員さんが、意気揚々と堤防の斜面を滑り降りる。足元から青臭い香り。
 引っ張られて俺もその背中を追う。捕獲されているのとは逆のほうの腕で、提げたビニール袋がリズミカルに
踊った。どうでもいいが、女の子に手首を掴まれるのが、これほどときめかないものだとは思わなかった。お相
手がこの子だからなのか、それとも、手を握るのとはまた違うのだろうか。

「あー! 戻ってきた! 鬼さん探してくるって飛び出してった時はどうなることかと……」

 俺と同じような境遇らしい男女。いずれも仁科学園の制服を着ていた。

「あれー“先輩さん”じゃないですか。お久です」
「やあ、上原さん。――上原さんも?」
「そうなんですよー。いきなりでびっくりしたけど、楽しそうだったから、いいかなって」

 見覚えのある明るい薄茶色の頭、その左右で軽やかに跳ね回るしっぽ。笑顔のほうもそんな感じ。
 上原梢さん。一年生。俺の“後輩”後鬼閑花の、友達のひとり。

「デキそうな人で良かったー。ナイスお葱!」
「葱ってゆーな! “お”を付けたって、許しません!」

 じゃれ合う二人から視線を外し、他の共演者を確認する。
 ……視界の端っこで金髪のロン毛が陽光に輝いてすこぶるウザい。まずはそいつから。

「うす。初めまして、俺が臼です。猿のやつめには俺が止めを刺してやります」
「勝手に演目をサルカニ合戦に変えてやるなよ、黒鉄」

 黒鉄懐? こいつかよ!
 俺と同じ二年生で、初めましてを言い合うような関係ではまったくない。親しいとまでは行かないが、まあそ
れなりの知り合いである。

153先輩と桃太郎 ◆46YdzwwxxU:2012/11/25(日) 18:39:42 ID:kVp89hJ20
 俺個人の印象を語らせてもらえば、鹿苑寺金閣のような男だ。……自分でもよく分からないが、見た目の派手
さやバカっぽさ以上のしっかりしたものを持っているというような意味だと思ってくれていい。……何かそこは
かとなくムカツクから意地でも本人を前にしては言わないけど。
 何でもできるイメージの強い器用な男で、そういえば演劇部がしつこく勧誘するほどの才能だとか小耳に挟ん
だことがあった。

「いやー葱すけにキビ団子やるからって言われてさー」
「わんわんっ! 言ってないよそんなこと? あと次葱すけ言ったら噛む」
「まさか、もう役に入り始めてる!? あれ、でも確か黒鉄先輩って桃太郎役じゃ……」
「黒鉄なのか。……彼女が主役だと思っていた」

 彼女だの、演劇部員の子だの。女の子を下の名前で呼ぶのを避ける以上、いい加減に演劇部員の子の苗字を聞
き出さないと面倒臭いな……。
 誰に当てたものでもない先ほどの俺の言葉を、上原さんが拾って配役を紹介してくれる。

「えーっと。鬼が先輩さん、桃太郎が黒鉄先輩、おじいさんと犬は荵で、おばあさんと猿はあたし」
「――そして、雉はボクだよ!」

 太陽を背に凛々しく立つ影がある。
 ……だが悲しい哉、皆を圧倒するに充分な迫力を出すにはやや背が低すぎた。
 上原さんの意志を継いで、そいつは堂々宣言する。
 ぱっちりとした大きな瞳。セミロングの髪の色は光の具合で綺麗な藍にも見えた。袖の余り気味な両腕を広げ
て怪鳥のようなポーズをキメる。

「イヌ! キジ! サル! ……これって何コンボになるのかな? とにかくボク、参上っ!!」

 何だかよく分からないが特撮番組のヒーローのようなノリで現れた彼女は、鷲ヶ谷和穂だったろうか。彼女も
一年生。いつもいっしょにいる小鳥遊雄一郎が隣で比較対象になっていなくても小さい。
 ……なんか、奇しくも仁科学園一年生のエネルギッシュなちびっ娘たちがここに勢揃いしているような気がし
たが、口には出さない。これはこれでお供に統一感が出ていいのか?

「これで全員だね! ちょびっとだけ打ち合わせして、始めよっか!」

 首謀者の演劇部員の子が、勇んで拳を突き上げ、俺たちもまばらにそれに倣う。
 そうして数分後――
 飴玉を餌に集めた子ども達を前に、即席劇団の幕は下ろされた。

『むかーしむかし。あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。おじいさんは山に鬼退治に、お
ばあさんは川に桃退治に出かけました』
「ちょ、ナレーターがいきなりアドリブかよ!? 鬼ヶ島消滅してるし!」

 演劇部員が初っ端からハードルを上げてきた。

(あの人って自分ちでテレビとか見てる時もああやってツッコミ入れてるのかな?)
(もちろんさ。超一流のツッコマーになるためには、そういう弛まぬ努力が必要だからね。あいつもあれで苦労
してるんだよ)

 ひそひそ話傷つくっ!! 鷲ヶ谷さんはまだともかく、黒鉄は何を言っている?

154先輩と桃太郎 ◆46YdzwwxxU:2012/11/25(日) 18:41:00 ID:kVp89hJ20

『しかし、おじいさんは鬼に返り討ちに遭い、手ひどくやられて帰って来ました』
「くっ……儂にもっと力があれば……」
「あらあらおじいさん、おいたわしや……。そうだ、川から流れてきた桃の最後の一切れを食べて、元気を出し
てくださいな」

 ……桃から生まれるべき主役はどうなったんだろう?
 その後、物語は破綻しつつも、子ども達の興奮に支えられながらどうにか勢い任せにイベントを拾っていき、
クライマックスを迎えた。

(――俺の出番だ)

 武者震いする。
 分かっているな、先崎俊輔。お前に演技力などない。
 学童保育だのの出し物で、節分の鬼だのサンタクロースだのに扮することはある。一般の生徒よりは機会に恵
まれているだろう。
 しかし、だからこそ分かっているはずだ。“演劇”の才能はないことに。……演技じたいは目も当てられない
レベルだ。
 だが、それでも、“引き受けた”からには、やれ。

 ――やる。

 さいわい、俺が経験を通して身に染みていることがひとつだけある。それは、“どんな稚拙な演技でも、真剣
にやればその想いは子どもたちにも伝わる”ということだ。
 思い出せ、その時の本気を。あの感覚を。

「わんわんおーっ!! 鬼ヶ島に着いたぞっ!!」
「ここに鬼たちの王、サキザ鬼大王がいるんだね……!?」
「いっちょ、鬼退治といくかー!!」
「みんなの力を合わせれば、きっと勝てるさ!!」

 桃太郎たちが来る。おじいさんとおばあさんの想いを受け継ぎ、頼もしい仲間たちとともに。悪い鬼をやっつ
けて、きっと世の中を平和にするために。

 ――何だろう。

 どうということはない演劇ではあるが。
 何か大切なことを思い出せそうな気がした。

(鬼が改心してみんなが友達になるエンディングなんてどうだろう)

 後のアドリブの台詞を考えながら、俺はよくぞ来たと声を張った。




 おわり

155先輩と桃太郎 ◆46YdzwwxxU:2012/11/25(日) 18:42:20 ID:kVp89hJ20
以上。
いろいろお借りしました。
お借りしたわりにあんまり出てこないのがアレだけど。

156名無しさん@避難中:2012/11/25(日) 20:05:58 ID:DZkjE4Uk0
おかあさんwwwww

157名無しさん@避難中:2012/11/26(月) 13:02:50 ID:ioeUCP8UO
先輩が保父さんに見えてくる不思議

158名無しさん@避難中:2012/11/29(木) 04:29:15 ID:H08tgJK.0
あー分かった。なんでバカと後輩で書きにくいかっていえば水と油もいいとこの二人が絡んだ話だとどちらかの心情の変化ってのがどうしても出てきちゃうからだ。

159名無しさん@避難中:2012/11/29(木) 10:03:04 ID:mZDWRCnAO
懐がどういうスタンスでどういうことを言うのか断定できなかったけど、
なんか分かり合えないイメージはある。本音ぶつけ合うだけぶつけ合って結局ケンカ別れみたいな。
変化は会話の内容次第だろうけど、懐は変わるべきじゃないと(個人的に)思うし、後輩を会話だけで劇的に変えるのは無理かなとも思う。

160名無しさん@避難中:2012/11/29(木) 15:47:35 ID:H08tgJK.0
そうなんだよ。変わりそうもないけどそれだと何も起こらず終っちまうんだw
つまりSSにならないw

161先輩、先輩には眼鏡が似合うと思うのです ◆46YdzwwxxU:2012/11/29(木) 21:22:24 ID:fZXKwbsM0
難しいね。


メモ帳いじってたらいつのまにか書けていたので投下します。

162先輩、先輩には眼鏡が似合うと思うのです ◆46YdzwwxxU:2012/11/29(木) 21:24:23 ID:fZXKwbsM0


 昼食は、たまの贅沢で学食の焼肉定食にした。
 休み時間も半ばを過ぎて食堂の人口密度はだいぶ下がってはいたが、まだまだ食後の飲み物を手に仲間と談笑
する生徒たちで賑わっている。
 透き通った玉葱の甘味に舌鼓を打っていると、いつもの後輩が市松人形みたいな髪をさらさら靡かせながらや
って来た。

「……」

 いつもは“閑花”という名前が悲しくなるほどにうるさい彼女が、今日に限って珍しくひと言も発しない。何
だろう。にこにこ微笑んでいるだけだ。

「……」

 俺のほうから声を掛けてもよかったのだが、何となく別にそうしなくてもいい気がして止めた。訊くまでもな
い。どうせ、押してダメならとかそっち系の作戦に決まっている。
 向かいの席に座った後輩は、テーブルに肘を突いて組んだ両手の上に細い顎を乗せ、しばらく俺がご飯を掻き
こむようすを満ち足りたような貌で見ていたが、ふと思い出したように妙なことを言い始めた。

「先輩。……先輩って、コンタクトレンズも似合いそうですよね」
「コンタクトレンズに似合うも似合わないもねーだろ」

 あ。いつもの後輩だ。
 ……何だったんだよ!? 心の中だけで襟を掴んで問い詰めておく。奇行には慣れたつもりだが、稀にしおら
しく振る舞ってみたり、こういう変化球を投げたりして来るから怖い。

「……間違えました。眼鏡です。白状しますと、先輩の眼鏡を掛けたお姿を妄想して●●してました!」
「ここ学食ー!!」

 もういっそずっと喋らなければ可愛いのに……。
 疲労感でいっぱいになった俺は大胆に話題を軌道修正。

「そも、俺の視力は矯正が必要なほど低くないぞ」
「知ってます。どちらのお目目も視力は一.三でしたよね。裸眼で。全裸で」

 何言ってんだこいつ。
 ……いや、そんなことより、何か俺の個人情報がものすごい勢いで流出しているんだが……。
 いったいどこから? いや、だいたいは自分の欲望のためには手段を選ばないこの後輩が悪いのだ、どこであ
ってもただ責めるのは酷というものだろう。

163先輩、先輩には眼鏡が似合うと思うのです ◆46YdzwwxxU:2012/11/29(木) 21:25:34 ID:fZXKwbsM0
 けど特にこういうの、意外と犯人はおかんだったりするんだよな。この世にゃ夢も希望もないのか。

「あっ、でも、最近はカラーコンタクトとかもありますし? もちろん眼鏡ほどではないですが、想像してみた
らこれはこれでなかなかかっこいいかも」
「興味ないな」
「ね、ね、どうです? 片目、片目だけでも!」
「片目だけとか余計恥ずかしいわ!」

 鼻息荒く迫る後輩を押し退ける。
 これでも、そういうのは中学一年生の夏に卒業したんだ、俺は。ときどき発言が怪しいけど。

「でも左右で瞳の色が違う美少女キャラとか、男の子の憧れのはずでしょう? 実際に、閑花ちゃんが赤と緑の
カラーコンタクト入れて誘惑したら、先輩は人類の可聴域を半歩逸脱したような奇声を発しつつ跳びはね、怪し
げな手つきで襲い掛かって来ると思いますね」
「でもで繋がる話なのかそれは。……思うんだが、まんがやライトノベルならともかく、現実で他人の虹彩が何
色かなんて、そんなに注意して見てるものかな」
「うは、メタ発言」
「……ごめん俺ちょっと今日のお前がマジで分からないんだけど教室戻っていい?」

 言い放ち、定食を平らげた後のトレーを片づけに中座する。態度がきつすぎるかもしれないが、これくらいで
めげるような後輩なら後輩をやっていない。
 コーヒーを二パック自動販売機で買って帰ると、かなり分かりやすい嘘泣きをしながらごめんなさい。……怒
る気にもならない。
 ふたりしてコーヒーを一口。

「あっ、そうだ。先輩。今日の放課後ですが」
「何だ」
「私も眼鏡店にごいっしょしてもいいですか?」
「何で俺が率先して眼鏡買いに行くことが前提になってんだ!?」

 あ、危ない危ない……。今、俺、「別に構わないが」とか言い掛けていたぞ……?

「でっ、でもでも、先輩には眼鏡が似合うと思うのです。“眼鏡なんてものは単に目が悪いひとが掛けるだけの
もの”、事実その通りではあるのですが、知的で聡明な印象を強調できるのもまた確かかと」
「興味ないな」
「ね、ね、どうです? 片目、片目だけでも!」
「片方だけだったらいいかって妥協できるようなもんじゃねーんだよ!」

 なんかデジャブーが……と思ったらこれつい数分前にやってたわ。

164先輩、先輩には眼鏡が似合うと思うのです ◆46YdzwwxxU:2012/11/29(木) 21:26:22 ID:fZXKwbsM0

「まったく我が儘さんですね。そう仰ると思って、がさごそ、はい、後輩は買ってまいりました」

 会話の流れをさらりと無視して、後輩はどこからともなく薄茶色の紙袋を俺に差し出す。
 膨らみの具合から中に何か入っていると分かる。

「……何だこれ」
「眼鏡のサンプルです。これを掛けてみれば、先輩もきっと眼鏡も悪くないって思えるようになるはず! 閑花
ちゃんとしましても、先輩にならきっとよくお似合いになると自信を持って選びました」
「そこまでするかね」

 俺はまったく期待せずに袋を開き、淡々と中身を改めた。……我ながらつくづく付き合いがいい。
 手にしてみれば、それは異様に柔らかいフレームの眼鏡だった。奇妙なことに、あるべきところにレンズが嵌
っておらず、並んだふたつの輪っかの間に挟まれて何やら肌色の付属物が――

「って鼻眼鏡じゃねーか!」

 出てきたパーティーグッズを力いっぱい床に叩きつける。
 あわれびよんびよんと跳ねて転がる鼻眼鏡。

「痴的さアップです」
「サンプルが鼻眼鏡じゃ説得力ゼロなんだが。……お前今“やまいだれ”付けてなかっただろうな」

 後輩の得意気な顔の腹立つことと言ったら。
 俺は教会の神父のように恭しく、そこに拾い上げた鼻眼鏡を乗せてやった。変な縁と面白い鼻とバカっぽい髭
が、後輩の見た目を性格に違わぬお調子者に変身させる。

「……意外と似合っているんじゃないか?」

 ――にゃあああああ!?

 あざとい悲鳴に被って、折よく昼休みの終わりを告げる予鈴が鳴り響いた。
 俺はすっかりおめでたい感じになった後輩を尻目に、午後に待ち受ける試練に臨むべく自分たちの教室へと歩
き始めたのだった。




 おわり

165先輩、先輩には眼鏡が似合うと思うのです ◆46YdzwwxxU:2012/11/29(木) 21:28:14 ID:fZXKwbsM0
以上。
たまにはふつうのコメディっぽくできないかとやってみたけど難しかった。

166名無しさん@避難中:2012/11/30(金) 01:57:00 ID:eG.DQbnQ0
乙。
これくらいで
めげるような後輩なら後輩をやっていない。が如実に後輩のなんたるかを表しているw

167名無しさん@避難中:2012/12/07(金) 02:04:22 ID:NTIH0S7M0
投下する

168先輩、お勉強中ですか? ◆46YdzwwxxU:2012/12/07(金) 02:05:23 ID:NTIH0S7M0


「あれあれ先輩、お勉強中ですか? 私のステディはスタディ中、なーんて」
「使い古されすぎたネタに失望すら覚える」

 出来る限り冷たく聞こえるように言い捨ててから、俺は教本を閉じた。後輩が背後から手元を覗きながら俺の
肩に顎を乗せようとしていたので、手で追い払う。ステディ(彼氏)という部分を否定する台詞を付け加えるこ
とも忘れない。
 今日も後輩は、俺の休み時間の邪魔をする。

「うわぁ、世界史ですかぁ」

 目ざとく表紙を確かめた後輩は、いかにもイヤがっているように眉を寄せた。ただし口元は笑っている。

「あまり得意じゃないんだ、世界史は」
「意外ですね?」
「そうか?」

 もちろん試験ともなれば、それなりの点は採ってみせる。
 別に歴史が嫌いなわけでもない、むしろ大変に興味深いのだが、暗記科目はとにかく俺の時間を食う。それは
困る、というだけだ。

「先輩は歴史上の人物で誰が一番好きです?」

 ほとんど間を置かず、後輩から質問が飛んでくる。
 ……こいつのこういう質疑応答、絶対に話が変な方向に行くからイヤなんだけどな。前回の“究極の選択”も
そうだったし(※『先輩、/犬派ですか/猫派ですか/閑花ちゃん派ですか?』参照)。

「あ。リンゴジャンキーだからってニュートンさんとかナシですよ、真面目にお願いします。あ、ちなみに今の
は林檎と梨を引っ掛けた洒落です。面白いこと言いよってからにーこいつめー、って褒めてくださってもいいん
ですよ?」
「その前に誰がジャンキーだ……」
「……ええのんよ?」

 断固拒否する。
 しかし褒めて褒めて光線はひと睨みていどでは散らない。

「ちなみに私の尊敬する歴史上の人物は、先崎俊輔です! あとの海千山千はわりとどーでもいいです!」
「海千山千ってそれ有象無象か何かと間違えてねーか?」

 それから下手したら俺死んでないか? “歴史上”って言い回し。
 ……。

169先輩、お勉強中ですか? ◆46YdzwwxxU:2012/12/07(金) 02:06:22 ID:NTIH0S7M0
 深くは踏みこまず、話を進めることにする。俺も小学生のころには、図書室に通って伝記などを読み漁ってい
たものだ。その中から何人か。
 ……と思ったが、これが意外と難しいことに気づく。
 多すぎるのだ。

「大抵の偉人はそれなりに尊敬しているが、今パッと名前が出るのは、伊能忠敬とか、関孝和?」
「ふんふん」

 何故にこのふたりが真っ先に浮かんだのか不明だが、過去に何らかの強烈な印象があったのだろう。

「あとは、マリア・スクウォドフスカ・キュリー、キュリー婦人とか」
「まさかの人妻……!?」
「フローレンス・ナイチンゲールとか」
「まさかのナース……!?」
「ジャン・アンリ・カジミール・ファーブルとか」
「まさかの蟲プレイ……!?」
「グレゴール・ヨハン・メンデルとか」
「まさかのメンデレ……!?」

 何それ。
 後輩がいちいち仰け反る理由が今ひとつ分からない。取り敢えず、偉大な先人たちをダシに何か良からぬ妄
想をしていたということだけは確かっぽい。もうこいつに構うの止めようかな……。

「他にもたくさんいるが、もういいだろう」
「ま、まあ、卑弥呼とか言わなかっただけ今回はよしとしましょう」

 後輩は謎の上から目線で物を言い、偉そうに腕を組んでみせた。

「卑弥呼」

 何でそこで卑弥呼が? 史料があまりないぶん、正直なところ、影が濃いようで薄い。まして“尊敬”とい
う感情を抱くのは難しいように思うのだが。

「巫女フェチは罪です。見るだにおめでたい紅白に彩られた、まさに邪教の出で立ち」
「お前何教徒だよ」
「紙の飾りのついた棍棒をめったやたらにふりまわし、悪霊を撲殺する」
「幣な」
「それに、奴ら竹箒に股がってマッハでヒャッハー空を飛びますしね!」
「飛ばねーよ」

 ああ、とそこで思い出す。まだ嫌ってたんだな、神柚鈴絵先輩のこと。
 ……嫌っているのとは違うか。

「ところで先輩、尊敬する人物の中に、後輩キャラはいないのですか?」
「よく知らない」
「それはつまり、先輩にとっての後輩のイメージは、ほぼ私が独占ということ……!? や、やだー」
「何だかおかしい理屈だが……その図々しさはある意味尊敬に値するかもな」

 はしゃぐ後輩を適当にあしらいながら、俺はまた世界史の教科書に目を落とした。




 おわり

170先輩、お勉強中ですか? ◆46YdzwwxxU:2012/12/07(金) 02:07:37 ID:NTIH0S7M0
以上です。みじかっ。
USBの奥底から発掘した書きかけに手を加えてみた。いつもに比べてすごく簡素な感じ。
連続ネタだけ珍しい?

171名無しさん@避難中:2012/12/07(金) 05:43:42 ID:y2X6ZDgE0
躱し方が匠の域に入りつつあるw

172わんこ ◆TC02kfS2Q2:2012/12/10(月) 00:05:38 ID:3EHGEXFE0
後輩ターンの流れに乗じます。

173「先輩!イヌ耳です!尻尾です!」 ◆TC02kfS2Q2:2012/12/10(月) 00:07:11 ID:3EHGEXFE0

 「先輩!イヌ耳ですよ!尻尾ですよ!わおーん!」

 跳び上がる小犬と見紛うが如く後鬼閑花は白い歯を見せて吠えた。密閉されたタイル張りの空間はオペラハウスよろしく良く響く。
放課後の女子トイレは秘密の花園とはよく言ったもの、だからこそ秘密を分かち合う仲間との絆は鎖よりも固い。

 「閑花ちゃんはイヌ耳が似合うね」
 「わんわん言ってるだけのどこかのわんわんじゃないですよ!遠賀先輩!」

 鏡に映ったイヌ耳姿にはしゃぐ閑花を実の妹のように、メガネ文系女子大生・遠賀希見は頬を緩めた。

 「先輩!尻尾ですよ!触って下さい!先っちょを包み込むもよし、根元から優しく握るもよし!」
 「閑花ちゃん、その調子!」
 「耳ですよ!今日だけはアマガミしても許しちゃいます!」

 イヌ耳を勧めたのは遠賀だ。遠賀は仁科大学の女子大生、閑花たちの先輩にあたる。学園近所の喫茶店で閑花が先輩こと
先崎俊輔への異常な程の求愛行動をとり、呆れ果てた先崎が閑花を置いて帰ってしまったことからお話は始まる。
 対角線の位置にて遠賀が一人寂しくお茶をしていたが、あまりの常軌を逸した閑花の行動に心引かれるものがあったからだ。


     #

 吐息淡く落ち込む閑花に遠賀が近付き、にっと白い歯を見せて囁いた。
 敬愛する先崎先輩から振り切られ意気消沈の閑花は遠賀からコーヒー代を奢ってもうらことで意気を吹き返した。
 始まりは全てここからだった。

 「茶々森堂はよく来るんですか?」
 「隠れ家みたいなものかな」
 
 茶々森堂を背に銀杏の葉が舞い散る学園都市の歩道、三冬始まる時期は空気が澄み切って二人揃って歩く女子の姿は無駄に絵になる。
 遠賀の黒タイツとは対照的に閑花は白い生脚だ。反抗的に紺のハイソックスでアクセントを付けるもの、所詮はJK、女子高生。
まだまだ伸び盛りの閑花は黙って背伸びするしかなかった。街の匂いを楽しんで歩いているうちに遠賀がとある提案を示した。

 「あ……。ねえ」
 「どうしました?」
 「ちょっと、大学生気分を感じてみる?」

 閑花はある意味、体を震わせていた。
 初めての体験。初めての初体験。そして、初めてで最初の初体験。
 遠賀も閑花と同じくある意味、体を震わせていた。

 そう。お互い尿意を不意に感じたから、大学の女子トイレに閑花を誘ったのだった。ご不浄の後、遠賀はショルダーバッグから
イヌ耳とイヌ尻尾を自慢げに見せた。思いのほか閑花は『わんわんぷれい』に興味を抱き、遠賀は勧めた者として得意げになった。
 新しいものにチャレンジすれば、自ずと未知なる世界への扉が開く。例え、それがイヌ耳だとしても。

 誘われた。
 イヌ耳ついた。
 嬉しかった。

 それでいいじゃないか。
 新しいことに足踏み入れるって、わくわくする。

 遠賀の目の前で閑花は小さな胸を押さえていた。

174「先輩!イヌ耳です!尻尾です!」 ◆TC02kfS2Q2:2012/12/10(月) 00:08:33 ID:3EHGEXFE0


 「新しいことするのに誰かから怒られるって、いいよね」
 「え?遠賀先輩、怒られるってなんですか?新しいことガンガン始める子って魅力的なのに!それに怒られるっていいよねって?」

 メガネの淵を指でなぞることで自分を落ち着かせていた遠賀は冷静に閑花の疑問を受け止めた。

 「閑花ちゃんのそういうところ、好きだな」

 革新の始発列車に乗り遅れた者たちの叫び。耳を塞げばいいのだが、いつまでも塞いでいるつもりなのか。
 ホームに取り残された、いや乗車を拒否した者たちが拒否した理由を受け止めろ。

 「高校時代、演劇かじっててね。あるとき『シンデレラ』をやることになって、シンデレラをイヌ耳にしてみたの」

 閑花にはイヌ耳生やして尻尾を壊れたメトロノームよろしく振り回す久遠荵の姿が嫌でも浮かんだ。
 わんわんの国からやって来た、わんわんするために生まれてきた子犬系女子高生……、と言っても過言ではない閑花の同級生だ。
 そして、また遠賀の後輩でもある演劇部員・荵は……。いや、荵の話はここまでにしておこう。行数の無駄だ。

 閑話休止。話はシンデレラ。

 煤けた服に身を包み、継母や姉たちに蔑まられても尻尾を振って素手で便器を洗う灰被り姫。あまりにも有名過ぎる童話だ。

 「王子主催の舞踏会のあと、ガラスの靴の合う娘を妃に迎えるまでは一緒。でもね」
 「女子憧れのシーンですね!わたしも先崎先輩のシンデレラになる!」
 「シンデレラが靴を履く番になって、シンデレラはガラスの靴を地面に投げつけて壊してしまうの」

 イヌ耳を付けたままの閑花が無言で遠賀の話に耳澄ます姿は奇妙かつ童話的だった。ゆっくり話の続きをしたいから
遠賀は閑花と共に大学の女子トイレをあとにして、校舎から冬空のキャンパスに出た。

 イヌ耳を生やした少女が大学のキャンパスを歩く。文化祭でもないのに不思議な光景だった。すれ違う人の群れはみな
閑花のイヌ耳に尻尾に目を奪われて、面白いように振り返り改めて目を疑う。普通、イヌ耳なんか生やさないし、尻尾なんか生やさない。
学生諸君のリアクションは決して間違っていないことは特筆事項である。
 遠賀と閑花はキャンパス内の池にやって来た。このあたりは昔からの溜池が多い。キャンパス内でも憩いの場として池を残しているのだ。

 「ここから高等部の建物が見えるんですね」と、閑花の初々しい喚起の声がキャンパスに響く。
 「そんなに時間がたってないのに、遠くに見えるなんて不思議だね」と、遠賀は高校時代を忘却の彼方から思い出す。

 風が寒くて気持ちよい。きらきらと眼鏡にみなもの光反射させ、遠賀は水切り遊びに興じ『イヌ耳シンデレラ』の結末を話した。
 閑花はじっと水面に写る自分の姿を見つめていた。

175「先輩!イヌ耳です!尻尾です!」 ◆TC02kfS2Q2:2012/12/10(月) 00:08:56 ID:3EHGEXFE0

 「『イヌ耳娘なんてこの街でわたしぐらいなのに、わざわざガラスの靴で試すんですか?』って。
  『顔は忘れても、イヌ耳と尻尾は忘れられないはず』って」
 「ガラスの靴は他の誰かに王子が一目惚れした娘だと認めさせる為ですか?」
 「そうね。シンデレラはガラスの靴なんかなくても自分を認めてくれるのか試したの……ね!」

 語尾を力んで石を水面に投げつけたので、遠賀の失速した石は溺れ、池の底へ沈み、みなもに写る閑花の影を崩した。

 「そんなストーリー提案したら、みんなから怒られた。『ふざけるな。真面目にやれ』って。真面目ですよ、こちらは」

 全力で飛んだ石ころが池に消え、光り当たる場所から遠ざかる。遠賀は儚い石の顛末と自分を重ね合わせていた。

 「多分。これからもわたしはいろんな人から怒られてゆくんだろうな。全力でぶつかった結果で怒られるから後悔ないけどね」
 「わたしも先崎先輩から怒られてばっかりです!」
 「よしっ。叱られろ!!わたしが魔法をかけてあげる」

 イヌ耳と尻尾を風に靡かせてキャンパスを走る一匹のイヌ。大好きなご主人様に一秒でも早く辿り着きたい。
 「走れシンデレラ」。王子の元へと駆けてゆけ。でなければ、王子はウソツキ者となってしまうぞ。妃に迎えたい少女がいたってことが
王子の大々的な妄想として捨て去られてもいいのか、と。途中、裏切りの休息を得ても構わないが、忠誠だけは尻尾の名において忘れるな。
 恋に全力、変に全力な閑花を見送った遠賀は小石を水平に池に向かって投げた。白いしぶきを点々と残し跳ねる小石は恋模様に花咲く
草原の一輪の花、後鬼閑花のようだった。

 「ごめんね荵ちゃん。わたしの魔法は一度しか使えないの。閑花ちゃんにかけちゃったから」

 ショルダーバッグから取り出した『イヌ耳シンデレラ』の台本をゴミ箱に捨て、後輩たちに叱られに行くかと遠賀は
キャンパスを後にして高等部の校舎の方へと足音を鳴らした。


     #
 

 「先輩!!」

 先崎俊輔は銀杏の葉が散る歩道でパック牛乳を飲んでいた。一面に黄色い枯葉が絨毯のように敷き詰められたステージなんて、
どんな舞台美術の第一人者でも再現できないワンシーン。それを考えると後鬼閑花は果報者だ。イヌ耳カチューシャを整えた閑花は
肩で息を切らしていた。天幕が灰色の空だけじゃ寂しいので細く裸になった銀杏の木の枝が申し訳なさそうに彩っていた。

 「先輩!イヌ耳ですよ!尻尾ですよ!わおーん!」
 「わんわん言ってるだけのどこかのわんわんの真似しても仕方ないぞ」

 早速怒られた閑花は嬉しそうに尻尾を丸めた。


  おしまい。

176わんこ ◆TC02kfS2Q2:2012/12/10(月) 00:10:09 ID:3EHGEXFE0
後輩ちゃんは果報者。
投下おしまいです。

177名無しさん@避難中:2012/12/10(月) 00:31:55 ID:NmLQCSVU0
恐ろしいほど吠える犬になるであろうw

178名無しさん@避難中:2012/12/10(月) 07:18:13 ID:G9htJA9MO
ついに耳が! 尻尾が! まったく……いつかやるんじゃないかと思ってたんだよ!
「まじめですよ、こちらは」って台詞がなんかいいなと思った。

わんこ氏の後輩には独特の朗らかさというかほんわかした癒しの雰囲気があるよね。
……自分の書いたのではそんなまともな可愛さ感じたことがないというのに。
一体どこで差がついているのか。慢心、環境の違い。

179わんこ ◆TC02kfS2Q2:2012/12/21(金) 00:56:32 ID:bochQFO20
いきます。

180バカとコーヒーとおツンデレ ◆TC02kfS2Q2:2012/12/21(金) 00:57:11 ID:bochQFO20

 「先輩!コーヒー飲みますか?熱々な舌の焼けるようなドリップコーヒーですよ!」
 「どうみてもただのカップ自販機のヤツだけどな」
 「今なら閑花ちゃんがふーふーしてあげちゃいます」
 「そんなことされるぐらいならミルク入れるから」
 「ならば閑花ちゃんが特製ミルクを入れてあげましょう!」
 「それに、さっき飲んだばかりだから」
 「報われないコーヒーの為にわたしが頂きましょう。先輩、ミルクを下さい!」

 『先輩』こと先崎俊輔が口を真一文字に結んで、そそくさとその場を去ることは初めてではなかった。
 たった一杯のコーヒーを健全なる少年ならば赤面を禁じ得ない『後輩』こと後鬼閑花の一言でなきものにするのは実に惜しい。
後ろ指刺されて慰み者として切り捨てられるよりかはマシかと先崎は校舎の中へと消えた。

 「わたしは今、このコーヒーのようにほろ苦い思いをしました。また、ひとつオトナに近付けたのでしょうか」

 温かいコーヒーカップで手は温もるのに、何故か胸にすき間風が走る。ため息の数だけ幸せが逃げる。
 でも、逃げるのは幸せだけ。先輩が逃げるんじゃないから、わたし大丈夫と、閑花はため息を躊躇うことなく、はぁ……とついた。

 「あはははは!」

 笑われた。
 何が悔しいかって、よりによって黒鉄懐と久遠荵だ。ライオンと子犬だ。乙女の夢破れ、指差されて笑われる子になってしまった
哀れな哀れな後鬼閑花。街がそわそわと肩を揺らしだすクリスマス近い冬の昼下がりだった。

 「ってか、黒鉄先輩。カッターだけで寒くないんですか?」
 「暑いぜ!見ろ、後輩!この黄金比率!」

 見ているだけでもこちらが凍えそうな薄着姿の懐はボタンを撒き散らしてカッターシャツを脱いだ。路上で行えば即通報だが、
残念ながらここは学園内。むしろ約一名による喝采の声が懐の背後から聞こえてくる。

 「きゃー!どーべるまん!」
 「はは!ネギは相変わらずだな!」

 花道のファッションモデルよろしくターンを決め、彫刻のような胸筋と隆々とした上腕筋を荵にこれでもかと見せつけた。
 玄界灘よりも広く荒々しい懐の背中を見上げながら、閑花は眉を吊り上げて声を絞り出した。

 「やせ我慢して風邪ひいてもわたしにうつさないでくださいね!久遠さんにうつして下さい!」
 「OK!!でも、おれが風邪をひいたらバカじゃなくなるな!」
 「わんわん!犬風邪はお断りです!」

 これ以上、懐と絡むことは身を切る思いしかしない。冷たい風に晒されるよりも痛い思いなどお断りだ。
 少し冷えかけたコーヒーで温まろうと、静かに口を付けた閑花は背中をネコのように丸めた。

 「ちょっと寒くなったな。後鬼、そのコーヒーをくれないか?」と、再びターンを決めた懐の臑に閑花の上靴が突き刺さった。
 嬉しそうに痛みを堪える懐を一族の恥かの如く、木の陰から覗いている金髪少女に子犬が吠えた。
 番犬としては難ありだが、連れているだけで人を呼ぶ。

 「あ!黒鉄先輩!おツンデレだ!」

 一度は姿を引っ込めたもの、ものの数秒で再びオコジョっぽく顔を見せ、ウサギのように荵へと駆け寄ってきた。
何か包みを携えているが、武器のようなものではなし。かと思いきや、荵を摺り抜けた金髪少女は金髪野郎の背中目掛けてハイジャンプ!
金髪野郎は野生の本能に目覚め、我が身を半回転させたのち、小さな金髪少女を片腕で受け止めた。

 「マイ・シスター。修業が足らぬ」
 「うざっ……」
 「聞いてるか?何故か俺には力が沸いてこない。何故か俺にはふつふつと漲る大地のパワーが……、
  残量の表示がエンプティを示しているんだ。エマンジェーシーだぜ!亜子よ、妹よ!俺に力を分けてくれ!」

181バカとコーヒーとおツンデレ ◆TC02kfS2Q2:2012/12/21(金) 00:57:37 ID:bochQFO20
 亜子と呼ばれた金髪少女は自らの脚力を利用して、懐の腹筋に足を突き刺して鋼の腕(かいな)からの生還を果たし、
片手に持っていた包みをダンクシュートよろしく投げつけた。ザッツ、それはお弁当箱。

 「お弁当いらないよね!?わたし、食べちゃうから」
 「きゃー!おツンデレ!」

 兄の忘れ物を届けた金髪少女は吠える子犬を無視するのに必死だった。一方、一部始終を目の当たりにした後鬼閑花はごくりと
喉を鳴らし、コーヒーを飲み干した紙コップを握り潰した。

 「ネギ!大地の恵も手に入れたし、残り二ヶ月だし、ラストスパートかけるぜ!」
 「わおー!」

 ライオンと子犬。そんな比喩さえちっぽけに見える二人、上半身裸の懐と尻尾さえ見えてきそうな荵は校舎の奥に消えた。

 「ったく、バカ兄貴」

 ケダモノを見るような目で実兄の背中を見ていた亜子に興味を示したのは閑花だった。お互いミクロ系女子だし、妹系だし……、
はたから見れば似た者同士ながらも静と動、光と陰、月と太陽のような二人だからこそ閑花は亜子のキャラをつまみ食いしたくなったのだ。

 放課後、閑花は学園のパソコンルームにいた。あまたに広がる情報の波、そして飲み込まれるほどの渦。IT社会の恩恵を受けて
閑花はアンサンブルを奏でる小学生のようにキーボードを叩く。静けさとキーの音が一定のテンポで繰り返されていた。
 画面にはとあるポータルサイトのトップページ。ここさえ来れば何でも知った気になれるという都市伝説。ならば、それを
使いこなしてあげましょうと目に焔(ほむら)立てながら閑花は調べ物に身をやつしていた。

 「なるほどー。ツンデレは愛情の裏返しね」

 基本的情報を手に入れさえすればよい。閑花はにまにまと先輩との甘い時間の妄想に浸りながらネットの海を彷徨っていた。

 別の日の放課後。

 「先輩!」「先輩!」「先輩!」と何度も口の中で「先輩!」と繰り返しつつ、片手にリボンの付いた小箱を持って
先輩の教室を目指す閑花の姿があった。一直線の目が閑花を凜と際立たせ、吹きすさぶ嵐の前兆に似た静寂を呼んでいた。
 手にしているのはこの界隈ご用達の喫茶店・茶々森堂謹製のちょっとした贈り物。白いレースのささやかな気遣いが品格を上げる。

 あの教室の前を通るまでは……。

 「お、お兄ちゃんの為じゃないからね!」
 「くくく……。おれの邪気眼にはお前のこざかしい邪意が読み取れるわ!」
 「ほ、ほら!いやなら受け取らなくていいんだし!」
 「うっ!くくく……、くそっ!おれの右手が!右手が疼く!鎮まれ!右手!受け取るな!」

 金髪野郎と子犬が午後の日差し込む教室で、芝居がかったやり取りをしているのを目撃した閑花の足は立ち尽くすしかなかった。
 金髪野郎・懐の右手にはリボンの付いた紙袋がすっぽりと収まり、仰々しい台詞を並べながら断崖が崩れるようにひざまづいた。

 「……ふっ。どうだ?おれのヘンゼル」
 「台本を越えたね!」

 話の節々を聞いていると、どうやら『ヘンゼルとグレーテル』の一場面を演じているらしい。ヘンゼルも厨二全開、グレーテルも
ツンツンしてるしデレてるし、あまりにも思い切った演出だった。その中で、お菓子の家の場面だというのは何となく閑花は理解した。
 しかし、懐の持つ小箱だ。いくら聞いても「あと二ヶ月だからな!」と相手にしない。

182バカとコーヒーとおツンデレ ◆TC02kfS2Q2:2012/12/21(金) 00:58:00 ID:bochQFO20
 「ぐ、ぐ、ぐああああ!!受け取ってしまった!魑魅魍魎なる魔族が支配する、忌まわしきパンドラの箱がおれの手をおぉ!」
 「お兄ちゃん、ばーかばーか!あーあ、お兄ちゃんのお陰でのど渇いちゃったから……べ、別に奢ってねってわけじゃないから!」
 「やめろ!!神の憤りと裁きをネメシスから受ける身に堕ちてしまったのか!」

 大柄な黒鉄懐のスイングで小箱は宙を舞って、一直線に弾丸となる。そして閑花の持った小箱へとジャストにミート。
 腕の良いライフルの撃ち手さえも諸手を挙げるほどの出来事に閑花は固まった。目は月のように丸く、閑花の髪のように黒々と。

 (こんなバカに時間を取られている暇はないんだ!早く先輩の元へ!)

 閑花は廊下に転がった小箱を拾い上げ、そそくさとその場を去っていき、入れ替わりに懐が小箱を拾いに慌てふためいてやって来た。

 「わうー!黒鉄先輩!やりすぎ!!」
 「ネギ、ちょっと待ってくれ。おれの小箱はどこに行ったんだ?」
 「もう!わたしが茶々森堂さんに特別製でお願いした……先輩のばかっ」

 廊下には閑花が持っていた小箱が転がっていた。
 白いレースが薄汚れていた。

 閑花はついに先輩こと、先崎俊輔を発見した。猪突猛進、閑花の足は思考よりも速かった。両足揃えて先輩との鼻の先前で止まり、
眉を吊り上げる表情を作る。膨れっ面の味付けも閑花のおかっぱヘアーにお誂え。満を持した閑花の開口一番が先輩につかみ掛かった。

 「せ、先輩のために持ってきたんじゃないですからね!」
 「じゃあ来るなよ」
 「ほ、ほら!クリスマスプレゼントじゃないんだから、勘違いしないで下さいね!」

 渡したリボンの付いた小箱を閑花から受け取った先輩は中身を見て膝を打った。

 「ああ。そうだな。それにしても気がはえーよ」と。

 紙袋の中には『セント・バレンタインデー』と書かれた肉球チョコが入っていたのだから。


     #


 後日。

 荵は懐から一通の手紙を受け取った。極太のマジックで書かれたロケンロールな息遣い感じる文字だった。
 内容はこの間の件、荵はコーヒー片手、口にして手紙を読んだ。

 『葱へ。バレンタインデーの公演まで近付いてきました。今回も客演させて頂くことになりまして感謝しております。
  さて、今回の公演で使用致します小道具の「グレーテルからヘンゼルへのバレンタイン・チョコ」ですが、なんとか
  手前が交渉した末に茶々森堂さんの理解を得て作って頂けることになりまして、ほっと胸を撫で下ろしています。
  では、二月の公演、いっしょに頑張りましょう。
  
  師走の月に於いて。久遠葱へ。

                                 黒鉄壊 』



   おしまい。

183わんこ ◆TC02kfS2Q2:2012/12/21(金) 00:58:58 ID:bochQFO20
おしまいですわん。
投下終了です。

184名無しさん@避難中:2012/12/21(金) 01:14:37 ID:HZ9tdARc0
ツッコミどころ多いww気が早すぎる上に手紙が割とマジメwww後輩も盗みはすなwww

185名無しさん@避難中:2012/12/23(日) 07:17:54 ID:jcpBp.dUO
わんこ氏の後輩が可愛くて生きるのが辛い。うちのと交換しようぜ(?)
「また、ひとつオトナに近付けたのでしょうか」って台詞がいかにもな感じする。
バレンタインとかほんと気が早ぇよ。たぶんツンデレも微妙に誤解してるしw

葱の犬っぽい語彙とか、黒鉄一族とか、キャラがはじけててすごく楽しかった。

186名無しさん@避難中:2012/12/28(金) 23:50:44 ID:.PGw9D5EO
本スレ落ちた?

187名無しさん@避難中:2012/12/29(土) 02:10:11 ID:DG32ANBo0
みたいw 今みたら容量がけっこういっぱいいっぱいだった。
特にテンプレ変更なければ立ててこようか?

188名無しさん@避難中:2012/12/29(土) 02:20:18 ID:4gSptBgE0
あれ立てた瞬間落ちた件

189名無しさん@避難中:2012/12/29(土) 02:20:59 ID:DG32ANBo0
あ、大丈夫だった。なんだったんだろ

190名無しさん@避難中:2012/12/29(土) 02:22:56 ID:DG32ANBo0
と言う訳で新スレです

【シェアード】学園を創りませんか? 5時限目
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1356715113/

191名無しさん@避難中:2012/12/29(土) 18:32:56 ID:CeAzDw/YO
乙!

しかし今投下できそうな手持ちがないw

192名無しさん@避難中:2013/01/01(火) 18:02:56 ID:CWhCdKB20
あけたな……

193名無しさん@避難中:2013/01/01(火) 23:38:01 ID:ym25Dv4c0
本スレ>>9
何気ないワンシーンだけどほっこり。
乙です。

194名無しさん@避難中:2013/01/15(火) 07:08:27 ID:8HW9cz.kO
あ゚あ゚あ゚あ゚
あと1ヶ月しかない!やばい

195名無しさん@避難中:2013/01/15(火) 15:44:20 ID:NOVcRSgE0
書いたのもう二年前か―。成長してない……

196 ◆wHsYL8cZCc:2013/02/14(木) 16:01:02 ID:YfPv2eWA0
ええとこで連投喰らってもうた。

なんとなく霧崎様お借りしましたごめんなさい。

197名無しさん@避難中:2013/02/14(木) 22:20:08 ID:Co0mWq6EO
投下乙!
何を謝ることがある!……といいつつ厳密には俺のキャラってわけでもないんだけど。本当は。

この二人も結構相性いいよね。
「ヘイトを重ねたらヤバいの」って台詞がいい味出してる。
てか懐は誰相手にどんな(おかしな)言動をしても違和感がない。
おちゃらけながら自然体で自分を出していける人なのかなと思った。

ハッピーバレンタイン!俺はハッピーじゃないけど!

198 ◆wHsYL8cZCc:2013/02/15(金) 03:23:16 ID:Xy1w/TwU0
横に並んでるのも嫌だったから避難所転載しようと思ったけどあぼんしたらどうでもよくなった。
しばらく避難所推奨ですねぇ。age投下がイケなかったか。

199後輩とトラソルテオトルと焔のチョコ ◆46YdzwwxxU:2013/02/15(金) 07:17:19 ID:UbkfaWwk0
投下します

>>132からの続き

200後輩とトラソルテオトルと焔のチョコ ◆46YdzwwxxU:2013/02/15(金) 07:18:11 ID:UbkfaWwk0


 ※


 浅野士乃が取り出した物。
 それは、

「ろ、ろくろ……?」

 轆轤(ろくろ)であった。
 すなわち、回転可能な円型の台。主に陶芸などに利用されるものであるが。
 浅野士乃という女ときたら一切の躊躇なく、そのド真ん中にいい感じに粘性の上がったチョコレート塊をでん
と乗せた。

(えええええええええええー?)

 閑花困惑。
 それも当然である。この場にいる誰かひとりでも、この展開、果たして予想できたか。

「フンンンンンンンン……!!」

 呼吸によって充実していく気力。
 少女の細指が、軟体生物の触手のように蠢いて――
 創造が始まる。
 創作が始まる。
 最初の人間を轆轤の上でかたち作ったという、エジプト神話のクヌム神を後鬼閑花は想う。

(チョ……チョコで陶芸してる――!?)

 回転台の上で、チョコレートは黒い竜巻となって伸び上がり、大きく歪んで、やがて滑らかにその姿を変えて
いった。
 唇を引き結んで一心に土を捏ねる人間国宝の陶工のようなツラで、浅野士乃は思うがままにカカオ菓子を成形
していく。作品に命を吹きこむひとりの創作者として、また未来への限界に挑むひとりの女子として、どこまで
も真摯に、しかしどこまでも自由に!

(ふざけているのかと思ったけど……)

 我が事の合い間、歳に似合わぬ職人芸をちらと横目で窺いながら、後鬼閑花は感嘆を禁じ得なかった。

(すっごい真剣……!)

 そして、およそ数分という時間が経過し、

「凝ッ固ッ!!」

 今、浅野士乃の熱い想いがかたちとなる。

201後輩とトラソルテオトルと焔のチョコ ◆46YdzwwxxU:2013/02/15(金) 07:19:13 ID:UbkfaWwk0
 見るがいい。
 それは、“湯呑み”だ。黒々としたチョコレートでできた、湯呑み。素っ気ない味わいの、ジャパニーズ・ワ
ビ・サビの体現といえるか。

「いつもごくろーさまの気持ちをこめて、あったかいものをあげるが! どう? このチョコ、熱湯を注げば内
側が溶け出してココアになるがでっ!!」
(かちかち山の泥舟みたいになりそう……)

 と白壁やもり教諭は思ったが、口には出さない。

「あっ。チョコがいい塩梅になったらぁ、型に流しこんで、固めましょうっ! 固まりきる前にアラザンやスラ
イスナッツなどをトッピングすれば、手作りらしい素朴さを演出しながら味も手堅く仕上げることができます。
……とはいえ、飾りつけの工夫は無限大! 今こそみんなの愛とセンスを見せつける時かも!?」

 何と言葉を掛けたものか少し悩み、取り敢えず全体指導に戻っていく。
 殊更に大声を発するのは、心の痛みを鈍らせるためだ。

「そ、それから、ひとくちサイズの果物やお菓子を持って来ている人もいるかと思います。爪楊枝や箸を使って
チョコにつけてみましょう。くるくる回してみると、きっといい感じにくるまれるはず!」
 
 ――白壁やもり、教師として苦い敗北であった。
 ビターチョコレートのように苦い敗北であった。

「その相手の男性を思いやる気持ち! 閑花ちゃん感激です!」

 教諭(もうすぐ三十歳)がヘタレている一方で、戦友の狂気が感染したように、もうひとりの魔女、後鬼閑花
は両の拳をぐっと握り締めていた。

「私だって――」

 巾着から取り出しましたるは、事前に厳選に厳選を重ねて準備していた食品。
 黄金色に輝く、“飴玉”であった。

「アメ? あんまりオススメせんって言いよったで?」

 浅野士乃はチラシのコラムを思い出していた。

「飴は飴でも、これ、中は空洞で脆いので」
「あー、吹いて膨らませたやつ?」

 何でそんなものを?

202後輩とトラソルテオトルと焔のチョコ ◆46YdzwwxxU:2013/02/15(金) 07:19:41 ID:UbkfaWwk0
 そういう疑問形のニュアンスを感じ取ったのか、後鬼閑花は憂いを帯びた表情で語り出した。

「……以前、私の■の■や■■をエッセンスにしたお菓子は、気持ち悪がられて食べてもらえませんでした」
「お、おう……」
「――でも、“吐息”なら?」

 !?

「一見ただの食感重視の儚い口どけ! しかし、実は知らず吐息を舌で味わっているというエロティックでロマ
ンチックな甘い罠! お口の中が閑花ちゃん!」
(……何言いゆうが? この子)

 士乃困惑。
それも当然である。この場にいる誰かひとりでも、この変態、果たして予想できたか。

「はああああああああ……!!」

 呼吸によって充実していく気力。
 悪質な工作が始まる。
 極めて悪質な工作が始まる。

「あれが女子力なんだ……! わ、わたしも見習わないと……!」
「やめときなさい」

 遠く、河内静奈が何やら悪影響を受けそうになっていたが、そちらは上原梢がしっかり止めた。「閑花ちゃん
のほうは止めなくていいの?」 ひそひそと尋ねた知人に、上原は気の毒げに目を伏せて答えたという。「もう
手遅れっぽい」

「――完ッ成ッ!!」

 ――明日はバレンタイン・デイ。
 恋する少女たちの愛と勇気と何かいろいろな物がどこへゆくのか。
 それは、神のみぞ知るっちゅうこっちゃ。



 おわり

203後輩とトラソルテオトルと焔のチョコ ◆46YdzwwxxU:2013/02/15(金) 07:20:46 ID:UbkfaWwk0
以上。
何度か書き直したけどなんだかうまくいきませんでした。
ごめんなさい。

204名無しさん@避難中:2013/02/15(金) 15:57:00 ID:SMMMXygA0
何をつくっとるだw

205名無しさん@避難中:2013/04/12(金) 01:18:20 ID:jb.ij/XY0
http://dl1.getuploader.com/g/sousaku_2/342/z%E3%81%82%E3%81%93.png

206名無しさん@避難中:2013/04/12(金) 02:13:10 ID:bSX70WwM0
四枚ずつ保存した

207名無しさん@避難中:2013/04/12(金) 23:39:36 ID:4GDKsVGYO
華やかなのに澄ました表情がかーわいい。
亜子は人気あるな。

208名無しさん@避難中:2013/04/13(土) 03:41:34 ID:2YGxB3JA0
兄貴涙目

209名無しさん@避難中:2013/04/22(月) 22:37:20 ID:X.8LAjuw0
「……お前には……心というものが無いのか?!」
「こ・こ・ろ……?」
「そうだ、心だ……愛しさとか!切なさとか!!Yシャツとか!!!大五郎とか!!!!」
「……何、その昇龍拳が出そうで出ない感じの羅列。」

某・アニメを見て思いついたは良いものの、相変わらずどこにも使えそうにない台詞なのでココに投棄。

210209:2013/04/22(月) 22:39:17 ID:X.8LAjuw0
ごめん、誤爆スレと間違えてリアル誤爆した
失礼しました・・・

211名無しさん@避難中:2013/05/10(金) 19:25:47 ID:jlpdNoM.0
真田アリス・ウェルチ姉妹と修&千鶴、お借りしました。
もっと前に出ようぜ!

『アリスと檸檬』
ttp://dl6.getuploader.com/g/sousaku_2/411/alice_and_lemon.jpg

212名無しさん@避難中:2013/05/10(金) 19:31:07 ID:Pwwc53Qc0
BBAだ!wwwww

213名無しさん@避難中:2013/05/23(木) 20:17:44 ID:yXiHFKKo0
age

214名無しさん@避難中:2013/05/23(木) 21:25:35 ID:pFdefjCE0
亜子、後輩、ネギがいればご飯三杯いける。

215名無しさん@避難中:2013/05/26(日) 06:42:44 ID:NCSU0Wi20
懐、台 ゴリラが居ればコーヒー三杯噴く

216名無しさん@避難中:2013/06/04(火) 11:49:39 ID:H9lCy5QI0
懐、迫先輩、那賀のホストクラブがあればお酒三杯頼む。
……那賀?

>>211
何だそのゲームはw
真田……あれ? ……梶井……基次郎……

>本スレ43
俺はあかねちゃんが好き、あかねちゃんも俺が好き!(錯乱)
エロタイツは知っていたが、クローバーの髪留めなんて付けてたのか。ここテストに出すか。
ところで、サンプルボイスを100回ぽちぽちクリックしたけど何もないんですが……?

217名無しさん@避難中:2013/06/04(火) 15:22:09 ID:ITKSQgM60
なんてやかましそうなホストだw

218先輩とファンタスティック・テクニック ◆46YdzwwxxU:2013/06/07(金) 06:43:03 ID:RjnUHle20
投下しますかね

219先輩とファンタスティック・テクニック ◆46YdzwwxxU:2013/06/07(金) 06:44:34 ID:RjnUHle20


「先輩! お勉強で分からないところがあるので教えてください!」
(えー……イヤだなぁ……)
「ありがとうございます! やったぁ! 先輩大好きっ!」

 ……俺はまだ了承などしていない。
 俺が下唇を裏返してみせたのを、いったい誰が責められるだろう? というか責めたやつ、頼むから俺と大至
急代わってくれ!

「最近のお前ってほんとうに俺の話聴かないよな」
「必要ありませんもの。相思相愛、以心伝心。先輩のお心は丸裸です!」

 ちょっと照れたのか得意気な顔に朱の散った後輩はそれは可愛らしかったが、俺たちは相思相愛の仲ではない
し、彼女が分かると嘯く“俺の心”などまずもって独り善がりの妄想にすぎない。俺のほうも後輩の考えている
ことなんて知らないし、というか知りたくない。こわい。

「勉強で分からないというのは四字熟語の意味か。それとも人物の心情の読解のほうか」
「えー? 違いますよ?」

 後輩は不意打ちで俺の耳元に唇を寄せて囁いた。

「保健です。……先輩お得意の保健のお勉強です。先輩のファンタスティック・テクニック、また閑花ちゃんに
味わわせてください……」

 もしも、これと同じことを手のひらでもメガホンにして大声で教室中に言いふらすようなマネをしていたら、
さしもの俺も真剣にこの後輩との絶交を考えているところだった。俺を怒らせないぎりぎりの線で引くそのあた
りの手管には少し感心する。
 “保健”とか“テクニック”とか、中学生あたりなら水とアルカリ金属のように激しく反応するかもしれない
言い回しに関しては当然無視だ。後輩にしてはオリジナリティがない。……そんなことはどうでもいいか。

「調べ学習と暗記の科目に、得意不得意もテクニックもないだろう」
「ご存じないですか? ――保健にも実技ってあるんですよ?」

 面白みゼロの返答で話をぶち壊しにしようと思ったら、向こうが踏みこんできた。湿り気を帯びた吐息にぞっ
とし、俺は露骨に嫌そうな表情を作って顔を背ける。

「よそは知らんがうちの学園にはないんだよ、一年生」
「今年度からできたかも」

 後輩がさらに身を乗り出す。

「どのみち、今の二年はその授業を受けていないから俺に教えられることは何もないな」
「じゃ、私が手取り足取り教えてあげます」
「お前は何しにここに来たんだ」
「さあ? 何でしたっけ。……忘れてしまいました」

 ……なんだか、らしくないと思った。
 俺たちのやり取りにはもっと、こう、何と言ったらいいのか、関係の進展について暗黙の了解があったように
思う。いや、後輩にとってはこれもまだそのちょっとした延長なのかもしれないが、“後輩が攻め、俺が躱し、
後輩がほどほどのところで退く”、そんな俺たちの関係がひどく危ういバランスの下に成り立っていたのだと、
思い知らされた気分だった。
 彼女が少し退かずに粘っただけで、俺はひどく動揺していたのだ。
 後輩が本気になったら、俺も本気にならざる得ない。恐らく俺か後輩かその両方が不幸になる形で破綻してし
まうだろう。

220先輩とファンタスティック・テクニック ◆46YdzwwxxU:2013/06/07(金) 06:46:04 ID:RjnUHle20
 後輩は俺に対して一見やりたい放題しているように見えて、実はあれでもかなり言動に気を遣っている。
 たとえば、後輩は料理ができる。
 実に要領よく並行作業をこなし、家庭料理としては誰に出しても恥ずかしくないレベルの三品四品を鼻歌混じ
りに作ってみせる、それくらいの調理技能を持っている。家庭科の白壁教諭はおろか、俺やうちの母よりたぶん
うまい。
 そんな具合だから、いつかの事件が落着を見てしばらく、彼女は俺に毎日の手作り弁当を作らせて欲しいとし
きりに言ってきた。

『ねー先輩ー。いいでしょ? 愛妻弁当です! 愛後輩弁当! 実は先輩のお母様のお許しももら……え? い
らない? ……そう……』
『閑花ちゃんは先輩に自分をアッピールするチャンスもいただけないのですか……?』
『っよし! 分かりました! もう結婚しましょう! それが先輩にとっても一番いいと思います! 閑花ちゃ
んあったまいー!』

 全て固辞した。
 そして俺が拒否する限り、彼女が不意打ち気味に“実際に弁当を作ってくる”ことはなかった。一度もだ。
 もしそういうことをされていたら、受け取るべきかどうか、どういう対価を払うべきか、そんなことで俺は本
気で困惑したに違いない。
 それが分かっていたから、後輩は自ら退いたのだ。まんざらただのお馬鹿さんではない。
 もっともその分、調理実習の菓子類やバレンタインチョコでは箍が外れがちで、とんでもないものが繰り出さ
れることもしばしばだったが、まあそれはこの際いいだろう。

「思い出しました」

 ようやく――
 ようやく、だと思った。

 ――ごめんなさい、悪ふざけがすぎました? でもどきどきしたでしょ?

 気まぐれな黒猫のように、後輩がさっと俺から離れた。掛かる吐息が消えたことに密かに安堵しながら、俺は
彼女の表情を窺う。
 可憐な口元に満足げな笑み、しかし俺を捉えるその眼差しにはこちらの内心を見透かすような、どこか悪魔的
なものがあった。俺はせめてもの抵抗に、顎を引いてやる気のない半眼で圧し返す。その時にはもう、彼女はに
っこり笑って、瞼で瞳を覆い隠していた。

「保健の勉強で教えて欲しいところがあったんですが」

 ――もう分かりました。私がその気になれば、すぐにでも先輩を私の物に出来るんだって

 それは幻聴だったのか、どうか。
 後輩がその気になったら、俺もその気になるしかない。そうすれば、俺か後輩かその両方が不幸になる形で破
綻してしまうだろう。
 そうは言ったが、不幸せを予言したとしても、彼女の戒めにはならない。それはそうだ。後鬼閑花の考える彼
女の幸福と、俺の考える後鬼閑花の幸福はずいぶん違っているのだから。

「ここです。“防衛機制について”」

 目の前に該当ページの開かれた保健の教科書が差し出される。かっこうつけた専門用語が見出しになった、俺
の大嫌いな単元だった。やりたくないことを催促されているような気になってくるのだ。嫌がらせのようなタイ
ミングである。

「私も早く防衛機制を華麗に使いこなせる女になりたいです!」
「そういうもんじゃないから」

 ふたりしていつもの調子に戻っても、俺の頭の中には“これからのこと”がずっとこびりついたままだった。



 
 おわり

221先輩とファンタスティック・テクニック ◆46YdzwwxxU:2013/06/07(金) 06:48:41 ID:RjnUHle20
以上。
謎のシリアス回。
予定ではもっと明るかったはずなのにどうしてこんなんなったんだろうね?
次はコメディ寄りにしたいなぁ。

222名無しさん@避難中:2013/06/07(金) 12:18:29 ID:Jrl.ggDY0
そこはかとなく切ない

223名無しさん@避難中:2013/06/21(金) 18:59:21 ID:FDUb24mA0
かきたいから、何かお題ぷりーず

224名無しさん@避難中:2013/06/21(金) 19:10:11 ID:LBlXa4QM0
私服の仁科の連中

225名無しさん@避難中:2013/06/21(金) 22:49:41 ID:FDUb24mA0
にゃ!

226名無しさん@避難中:2013/07/13(土) 23:33:12 ID:dqdtpXLw0
>>224

後輩ちゃんの私服姿で先輩のハートを鷲掴みんぐ!!
ttp://dl1.getuploader.com/g/sousaku_2/508/kouhai.jpg

227名無しさん@避難中:2013/07/14(日) 00:01:29 ID:pNLgSExs0
わぁい!


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