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個人スレ
406
:
「電子の瞳」 19/39
:2012/08/11(土) 00:08:23 ID:4w.gkcV.0
実際のところは私が眠いだけだった。狙った通りに伯母からお休みの言葉を引き出し、そして
喜久雄おじさんに一声掛ける。
「……うん。悪いけどそうさせてもらいます。……キクおじ。二階に布団出しておくから
適当にやってて。お母さんには悪いけど百姓は早寝早起きが基本だからそろそろ限界で」
「ああ悪いな。……藍子、明日の弔辞俺が一番先でいいんだな?」
「うん。キクおじ、恵子叔母さん、江藤さん。それでちょっと心配だけど沙織と翔太の順番」
「……わかった。……早いもんだな。兄貴死んだときなんて沙織やっと立てるぐらいで翔太
なんか影も形もなかったのにな」
「あたり前だっちゅうの。まだ翔太四歳だし。……うん、まあ、そういうことで申し訳ないけど
あとお願いします。じゃあおやすみなさい」
叔母達のおやすみという声を聞きながら二階に上がる。
物置兼子供の遊び部屋と化した二階のもうひと部屋に喜久雄おじさんの寝る布団を敷き、自分の
部屋のベッドに倒れ込む。
お風呂入らなきゃと思うも一度閉じたまぶたは開くことなく、しまったと飛び起きたときには、
すでに外は明るみをおび始めた朝だった――――――――
土曜日。朝五時前。
農家に嫁いで十年。染み付いた習慣で自然と目が覚める。
下に降りるとすでにみんな起きていて、二人の伯母は朝ごはんの準備をし、伯父は新聞を読み、
喜久雄おじさんは携帯電話で話し中だった。
特に手伝うこともなさそうだったのでざっとシャワーを浴びる。
髪を乾かしているところで、喜久雄おじさんから二人の息子がこれから来るからと聞かされる。
中学生と高校生。ともに野球に打ち込んでいて、学校はともかく部活は休めないという理由で
早朝の来訪だ。十年前、私の結婚式で花束贈呈役をやってくれた二人の従兄弟だが、その時に比べ
二人ともだいぶ口数が少なくなった。少し寂しくもあるがそれが普通のことだろう。
予定通りの時間に喜久雄おじさんの奥さんと従兄弟二人がやってきた。
一家四人で手を合わせたあと、父の葬式の時もいたはずだが改めて叔母達に紹介する。
朝早くからありがとう。野球頑張ってね。練習終わったらこれで何か食べて。
学生服が眩しいのか伯母達は目を細めながら小遣いを渡した。上の子は涙を滲ませ、下の子は
どういう顔をしたらいいか分らないようで、困り顔でありがとうございますと頭を下げた。
あわただしく従兄弟とおじさんの奥さんが去ったあと、簡単な朝食をとる。
景気付けだといきなり喜久雄おじさん、伯父、私の三人で缶ビールを煽る。そして十二時開始の葬式
までにどれくらいの人が来るのか大まかに確認する。
九時になれば嫁ぎ先の家族縁者が総出でやってくる。江藤さん内田さんもその頃だ。
十時頃、父母の中学時代の同級生が結構な数来るらしい。そして母や伯母達の親族関係が十一時頃から
葬式、火葬と参列する。
時間は六時半。喪服を着るにはまだ早い。
それでも突然の訪問者があってもいいようにそれぞれ身を整え、そして身を休める。
朝一番の弔問者は意表をついて私の中学校の同級生四人だった。
おくやみ欄見たらびっくりしちゃって。と切り出され、お決まりのパターンで会話が進んでいく。
二人は私の結婚式に呼んだが、もう二人は属するグループが違う人で正直意外だった。
四人のうち二人は結婚しているが、まだ子供はいないようで現れたダンナと子供二人が話のネタに
なり葬式直前とは思えない黄色い声が上がる。そして連名で頂いた御霊前の香典返しのつもりで
缶ビールやジュースをそれぞれに持たせた。
407
:
「電子の瞳」 20/39
:2012/08/11(土) 00:10:57 ID:4w.gkcV.0
「でも藍子元気そうでよかった。うちの田舎のばあさんの葬式のとき、そこの家の人心労で
倒れちゃって救急車呼んだからね。そりゃもう大騒ぎでさ。……だからたいへんだとは思うけど、
あんま無理しないでね。藍子変なところで生真面目だからさ」
優しい言葉に身がつまされ目頭が熱くなる。ぐっと堪え、偉そうに講釈をたれる。
「……あはは、泣かせること言うなよ。……まあ、頑丈だけが取り柄だからそれは大丈夫。
それに峠はもう越えちゃったしね。あとは時間かけてゆっくり下るだけっす。ちょっとつらいけどね。
……あんたらもさ、親孝行したいときには親は無し。ってならないように日頃から親のこと
気にかけておいたほうがいいよ。……うちの親父のときはがんで余命宣告されてたからいろいろ
準備できたけど、さすがに今回はまいってるから」
親が死んだというのに、まるで他人事のように言葉が出る。
もう場の雰囲気は完全に中学時代の教室になっていた。改めて友達のありがたさを痛感する。
「……親が死ぬなんて考えたことないなぁ。……なんていうか一緒に暮らしてて一緒に年食ってく
からさ、年とったなぁとか老けたなぁとか解んないんだよね。藍子には悪いけど、親はいつまでも親。
みたいな感じでいまんところ死ぬなんて想像できないよ」
「まあ、私んとこが早いだけだけどね。それでも親父のがんはしょうがないとしても五十そこらで
脳出血で死ぬなんて夢にも思わなかった。一寸先は闇ってゆうかホント何あるか解らないよね」
「うん。さすがにこの田舎じゃ通り魔はなさそうだけど交通事故は充分ありえるしね」
井戸端会議よろしく玄関先で喋っていたら小さくクラクションを鳴らされる。
見覚えのある顔が窓越しにぺこりと頭を下げた。父の葬式にも来てくれた父と母の同級生の一人だった。
また落ち着いたらと私の友達を送り出し、車を連ね団体でやってきた同級生達を出迎える。
背の小さい、随分可愛らしい女性が私の前に立った。
「……藍子ちゃん?」
「……はい」
返事とともに手を握られた。
そして、そうそうと言いながら大粒の涙をこぼした――――――――
男性六名、女性七名の母および父の同級生達。
ひと通りの涙のあと、伯母と喜久雄おじさんが中心となって場を仕切り始め、子供二人が活躍する。
四人が代表で葬式に参列し、残りの人は父の墓へお参りに行ったあと、地元で小規模な同窓会を
兼ねたさよなら会を開くと、父の友人代表から聞かされた。
「お母さんとは小中学校、お父さんとは中学校で一緒だったの」
朝十時。
形だけの葬式だが、始まるにはまだ時間に余裕もある。しめやかながらも母の思い出話が語られ、
和やかに時が過ぎ行く。そして玄関先で私の手を握ったとても五十歳には見えない杉下と名乗る
同級生の一人が私の前で話し始めた。
中卒で働く。
さほど珍しいことでもないが、それでも当時でさえだいぶ少数派だったらしい。工場で働くことに
なる母と修行しながら美容師資格取得を目指す杉下さんは、互いに共感意識みたいなものを持って
中学時代を過ごしていたようだ。
やがて母は父と結婚し、地元を離れた杉下さんは修行を続け、遠く離れた街で自らの店を持つ
までになる。
408
:
「電子の瞳」 21/39
:2012/08/11(土) 00:13:53 ID:4w.gkcV.0
「別に日本一の美容師になるとか大それたこと考えてた訳じゃない。でも、自分の腕で
食べて行くんだから当然自分の店を持ちたいとは思ってた。結婚とかも考えたけど、結局は
仕事を選んで実家にもほとんど帰らないでがむしゃらに仕事をした。中学卒業してから泉と
邦雄に会ったのは成人式と厄払い兼ねたクラス会の二回だけ」
そう言って杉下さんはどこか懐かしむように遠くを眺めた。
父と母は入籍届けを出しただけで式は挙げていない。目標を持ち仕事に打ち込んでいたのなら、
地元や友達のことを忘れ邁進するのも別に不思議ではない。
「四十二の時、念願かなってやっと自分の店を持つことが出来たの。借金もあるしやっとスタート
ラインに立っただけだったけど、でもオープンの時はやっぱり嬉しくて身体が震えたわ。
地元の友達にもオープンの案内は出していて、祝電とか開店祝いのお花たくさん贈ってもらった。
形だけのことかもしれないけど、地元を離れた者にとってはそれだけで頑張れる糧になるの。
嬉しかった。それで泉と邦雄からもわざわざ祝電と開店祝い送ってもらってね、鉢植えの
お金のなる木。育て方のパンフレットまでついてて泉っていうか邦雄らしいって大笑いした」
八年前。同級生なのですぐに経年の計算が出来て助かる。
嫁ぎ先で作る家庭菜園の野菜物に関しては知識がついてきている。だが、基本的に草花に興味が
ないので観葉植物と思いあたるぐらいで、お金のなる木がどんなものなのか、また開店祝いに
相応しいものなのかいまいち理解できなかった。
「お店オープンして三ヶ月ぐらいたった頃だったわ。スタッフが受付したんだけどご新規さんで
一週間前に私指名で予約が入ってね、ロングをばっさり切りたいって。それで当日待っていたの。
そしたらね、よう杉っち。いい店だなって、いきなりかすみ草の花束抱えた邦雄と薔薇の花束
持った泉が店に来たの。それこそ何の連絡も無しにね」
涙を浮かべながらも、杉下さんは楽しそうに話す。
父と母なら充分やりそうなことだった。バカな夫婦だと思わず私もにやけてしまう。
「偽名使って予約したこと泉は謝った。でも驚いたけどクラス会から十年ぶりぐらいに会えて
嬉しくてそんなことは関係なかった。開店祝いとか貰ったけど、地元の友達で実際に店に来て
くれたのは泉と邦雄が初めてだったの。なんか中学時代に戻ったみたいで楽しくてね。
そのあとで、お洒落で落ち着いてていい店ね、杉っち偉い偉い。ってお店褒めてくれて……。
仕事が嫌になったときもある。辞めようと思ったことも一度や二度じゃない。でも続けててよかった。
大袈裟だけど、報われる瞬間ってこんな時のことだと思ったわ。嬉しくて涙出てきちゃってね。
泉も邦雄も歯の浮くようなお世辞言うタイプじゃないから余計にね」
素直に褒められたら誰も悪い気はしないだろう。
そして杉下さんの場合、褒められる対象の次元が違う。苦労してやっと手にした自分の店を
お世辞抜きで認められたなら喜びもひとしおだろう。
ハンカチを眼にあてたあと、杉下さんは持っていたバッグからシンプルな写真立てを取り出し
私の前に置いた。一礼をしてそっと写真立てを手に取った。
心が震える。
滅多に見ることのなかった、色の付いたワイシャツにダークスーツを着た父。
白い襟を出し、同じくダークスーツでショートの髪と派手なオレンジの口紅に負けていない母。
杉下さんを中心に、花束を持ち立ち並ぶ三人は、まるで大きなコンサートを成功させた音楽家の
ように誇らしげな笑みを浮かべていた。
我が両親ながら、不覚にもカッコいいと思ってしまう。
されど、亡き父と母を懐かしむには、その写真はあまりにも鮮やかすぎた。
409
:
「電子の瞳」 22/39
:2012/08/11(土) 00:15:03 ID:4w.gkcV.0
「…………なんていうか、……若いっていうか、青春してますね」
「うふふ。楽しかった。お金は貰ったけど本当に楽しくて夢みたいな仕事だったわ。
娘に赤ちゃん生まれるから髪短くしようかなと思ったけど近くにいいところなくて、って泉が言えば、
邦雄は邦雄で、考えてみれば式も挙げてねーし写真もねーしジジババになる前にプロに頼んで写真
撮ってもらおうかと思ってよ。だからね。しかもね、いざスタイリングすんでカメラはって聞いたら
胸ポケットから写ルンです出したの。ふざけんなコラって大笑いしたわ」
良き思い出。
杉下さんの笑顔はそう語っていた。
八年前。
孫の誕生を心待ちにしていた父と母。やがて来る悲しみなど影すら見えなかった頃。
「……でもね。……泉、私に邦雄の病気のこと教えてくれなかったの。喪中のはがき来ただけで」
「…………」
「電話でどうして教えてくれなかったのよって責めた。泉はただごめんって言うだけだった。
確かに地元にもほとんど帰らなかったし、連絡も入れなかった。でも泉も邦雄もずっと友達だと思ってた。
なんだか仲間はずれにされたみたいで凄いショックでね。しばらく仕事手につかなくてお店休んだの。
スタッフも泉たちが来たときのこと憶えてるから気を遣ってくれてね、気づいたら太田の駅に立ってた。
でも連絡入れてタクシー乗ればいいだけなのに私はそこから動けなかった」
また杉下さんの瞳から大粒の涙がこぼれた始めた。
もしかして杉下さんは父のことが好きだったのだろうかと、げすなことを考える。
「結局、泉には会わずじまいで実家に帰ったわ。……でも、やっぱりどこか納得いかなくて夜、
邦雄と仲のよかった同級生のところ訪ねたの」
「…………」
「そうしたら、いろいろ頻繁に会う人は口止めされてて、仲のいい人たちにも病気のこと知らされて
なくて、亡くなる二ヶ月前くらいに一緒にお酒飲んだときも痩せたなって聞いても、おかげさまで仕事
忙しくて孫娘も出来て遊ぶのも忙しいって病気のことなんか一言も口にしないでって聞かされて……」
「……杉下さん」
「それなのに私一人で勝手に先走りして、泉責めて恨んで、電話でいいから一言ごめんって謝れば
すむのにそれさえもできなくて……。本当は会っていろいろ話したかったのに、年賀状にあの時は
ごめんって書いて、忙しいせいにしてそれで自分の気持ち誤魔化して……」
うつむき鼻をすする音だけが残った。
母は死んだ。
もう杉下さんの胸を締めつける想いが果たされることはない。
涙があふれた。
しかし、その悲しみに寄り添いながらも、どこか冷めている自分がいる。
「……母がばっさり髪切ったときはびっくりしましたよ。娘生まれる前ですけど実家帰ったら
いきなり髪短くなってて、最初、えっ、この人誰?って思いましたもん。
……杉下さん。父のことは気にしないでください。っていうか謝らないといけないのは
こっちのほうですよ。ホント、バカな親父で、病人なら病人らしく寝てりゃあいいのに元気な
振りして見栄張ってカッコつけて自分ばっかり綺麗な思い出溜め込んで残された人つらい
思いすんの判ってんのに全部母に押し付けていけしゃあしゃあと死んじゃいましたからね。
……ふざけんなコラって話ですよ」
「 …………。」
「……すいません。父のこと嫌いじゃないんですけど、思い出したら急に腹が立っちゃって」
何を話してるんだと我に返る。
だが湿っぽい涙を吹き飛ばすチャンスだと、ここぞとばかりに調子に乗る。
410
:
「電子の瞳」 23/39
:2012/08/11(土) 00:16:46 ID:4w.gkcV.0
「杉下さん。私と違ってべらべら喋るタイプじゃないんであれですけど、母は杉下さんに
髪切ってもらえて嬉しかったと思いますよ。八年前にばっさり切ってから、あれからずーっと
同じ髪型なんです。あのテレビの写真見てもらえば分ると思いますけど、花見の写真が今年の
春なんですけど髪型ほとんど変わってないですよね。それだけ気に入ってたと思いますよ。
だから、……えーっと。全然理由になってないですけど母のことは大丈夫です。さっきも
言いましたけど母もそういう役どころだと判ってたと思うし。あまり気にしないでください。
娘の私が保証しますよ」
「…………」
杉下さんから返事はなかった。
しまった喋りすぎたかと思ったところで、代わりにぐすっと大きく鼻をすする音がした。
「……藍子ちゃんはお母さん似?」
「顔はどちらかといえば母親似だと言われますけど、口数多いところは父親に似たなって
よく言われます。いやー、娘生まれたときなんですけどね、よっぽど嬉しかったのかそれこそ
新生児相手にマシンガントーク炸裂させてましたからね。……あのバカ親父に育てられたら
嫌でもこうなりますよ」
わずかに残った涙をごしごしと拭う。
そして浮かべる渾身の笑顔。
涙の影に隠れて、杉下さんにも小さな笑みがともった――――――――
正午。
軽い自社のPRのあと、葬儀担当の進行により葬式が始まる。
葬式のありかた、送りかた。
百戦錬磨の話術に身を任せ、皆うなずき、泣き、そして笑う。
そのままそれぞれの形で黙祷を捧げ、余韻を残したまま弔電が読まれる。
中学のときから有名だったが、兄の彼女として初めて会ったとき、地味な作業服姿なのに
あまりに綺麗で格好良くて目を合わせられなかった。
喜久雄おじさんの弔辞が始まる。
微笑ましい思春期妄想話で小さな笑いをとり、父との結婚や家を建てたことを振り返る。
私には記憶にないが、父やおじさんの母、私にとって父方の祖母を看病し見取ってくれた
ところで涙を流し、がんになってしまった父に最後までつらい顔も見せずに付き合って
くれたと、声を震わせた。
歳が離れているせいか姉妹という感覚は希薄だったかもしれません。
涙を誘いながらも面白おかしくまとめた喜久雄おじさんに続き、伯母が前に出る。
良くも悪くもいちずで頑固。しかしその頑なさは強さであり優しさでもありました。
うっすらと涙を浮かべながらも、若き日の母を朗々と語る。
歳が離れている。伯母はそう言ったがやっぱり姉妹だよなと感心する。
高校進学か否かで母と揉めて互いに譲らず大喧嘩になったというエピソードは、思わず
どっちもどっちだろっと心の中でツッコミを入れてしまう。
泉ちゃんが娘だったらよかったのにと何度思ったことか。
終始淡々としていた伯母とは対照的に、いきなり涙全開の江藤さん。
どんなお願い事でも、嫌な顔ひとつしないでいつも笑顔で接してくれて、終いには小間使い
みたいに何でも頼んじゃって、それなのに時間潰しにちょうどいいとか運動不足解消になる
とか言ってお礼もがんとして受け取らないで。
そう涙ながらに語る姿は、もはや弔辞というより懺悔に近い痛ましさがある。
411
:
「電子の瞳」 24/39
:2012/08/11(土) 00:19:22 ID:4w.gkcV.0
太田のおばあちゃんへ!
そして、思いのほかぼろぼろになってしまった江藤さんのあと、孫二人が桶の前に立つ。
とちるな、とちるなよと我が子に念力を送る。最初の一声だけ一緒。あとは娘が喋り、
それぞれ自分の名前を言って終わり。
そんなに難しいことではないはずだが喪主という立場も忘れ、親として初めて見る学芸会
のように、こっちのほうがドキドキしている。
おばあちゃん。急に死んじゃってびっくりしています!
いつもお菓子とか、おもちゃとか、いろいろ買ってくれてありがとお!
お菓子は食べちゃったけど、おもちゃとか、色鉛筆とか、クレヨンは、大事に使います!
寂しいけど、天国に行っても、太田のおじいちゃんと一緒に、沙織と翔太と、お父さんと
お母さんのことを、ずっと見守っててください!
関谷小学校、曽我沙織! せきやようちえん。そがしょうた!
悲しみの場で垣間見た子供達の成長に、万感の想いが込み上げる。
座敷に並んだ参列者から大きな拍手が沸いた。
お利口さん。頑張った。口々に上がる声を受け、娘と息子が少し恥ずかしそうに笑った。
誰の為かも判らずに、ただ、涙がとめどなく流れた。
そしてきらきらと瞳を輝かせながら戻ってくる二人を、人目もはばからず抱きしめた。
いずれ私の名も呼ばれ、最後の言葉を残して別れの式は終わる。
何度も何度も抱きしめ、頑張ったね、偉いねと子供の頭を撫でる。
涙を拭い、隣に立つダンナに子供達を託す。
変わらぬ人、成長した人、年老いた人。
見渡した景色が五年前と重なる。そして、もう隣に、母はいない。
わずかに瞳を濡らしている葬儀担当が小さくうなずく。
また涙を拭う。朝からビールも飲んだ。体調も顔色もよかった。化粧水と色付きリップだけで
化粧は済んだ。マスカラ塗らなくてよかったと思う。いまさら何考えてんだと自分自身にあきれ、
くすりと笑う。葬儀担当が襟を正す。あ、いや、合図のつもりじゃなくて、と少しだけ焦る。
うららかな日々。
都合で春彼岸を過ぎた月末に、子供を連れ私と母とで父の墓参り。
すでに充分綺麗にされていた画一的な墓の前で、みんな揃って手を合わせた。
嫁ぎ先付近ではあまり見ないファミリーレストランで、遅めの昼食を取る。
誰々ちゃんはあーでこーで誰々はあーでこーでと、母が知るはずもない名を出し得意げに喋り
続ける娘。先に出てきたフライドポテトを大事そうに一口一口噛み締めながら食べる息子。
ただにこやかに、娘の話を聞き息子の世話をする母。
家に戻り、ゆっくりと時を過ごす。
そして義母が準備する夕飯の時間に間に合うように、家を出る。
これからまた忙しくなるんでしょ? そう。なんだかんだで次これるのは五月の月末なるかな。
沙織。お墓参り楽しかった? うん。お墓きれいだった。あと、あのファミレスまたいきたい。
翔太は?フライドポテト美味しかった? ……おいしかった。
そう、よかった。じゃあ、また遊びに来てね。 うん、また来る。おばあちゃんバイバイ。……バイバイ。
ばいばい。また来てね――――
まぶたに映る母は、バックミラーの中で、いつまでも手を振り続けていた。
何度も何度も涙をふく。
しっかりしろと自らを奮い立たせ、今度こそと無理矢理笑顔を浮かべ大きくうなずく。
葬儀担当が姿勢を正した。小さな咳払いが静寂を呼ぶ。
母に別れを告げる時が、もうそこまで来ていた――――――――
412
:
「電子の瞳」 25/39
:2012/08/11(土) 00:23:59 ID:4w.gkcV.0
「……しかし、江藤さん見ていて気の毒だったよなあ」
時計の針は夜の十時。
出棺、火葬と滞りなく進められ、母を送る儀式はすべて終わった。
江藤さんや内田さんが切り盛りする家に戻ったのは夕方近い時間だった。
酒宴の最中、遺骨を前に皆で冥福を祈り、お墓をどうするかという話になる。
墓地公園の小さなものなので、父と同じ墓に納骨できるのか新たに区画を購入しないと
いけないのか確認が必要と皆に説明する。
母方の親戚は火葬が終わるとともに帰路に着き、嫁ぎ先の近親者も家族を除けば義父の
運転するレンタカーのマイクロバスで実家をあとにした。夜の八時を廻る頃には江藤さんや
内田さんはじめ近所の人たちもぽつぽつと帰り始め、そして九時には、少し静かな時間が
あったほうがいいとぐずる孫二人をミニバンに押し込み、空き缶の詰まったゴミ袋を抱え、
義母もダンナと一緒に帰っていった。
「……うん。へたすりゃ私よりお母さんと一緒にいた時間長いし、それこそ遠くの親類より
近くの他人状態だったから」
「……親より子が先に死ぬのがどんなにつらいことか、ひしひし伝わってきたわね」
しばらく騒がしかった家も、今日も泊まっていく伯母と喜久雄おじさんと私だけになる。
内田さんが差し入れしてくれたオードブルをつまみにして、三人で改めて冷えた缶ビールを開ける。
「江藤さんの旦那さんって死んでどのくらいなるんだ?」
「えーと、たしか私が高校二年のときだから十二、三年なるのかな」
「旦那さんだいぶ長い期間自治会会長やってて、すごい世話になったって泉から聞いてたけど?」
「うん。元々自治会の役員だったんだけど、定年退職したタイミングで会長の選考あって、
いい機会だからってそのまま押し付けられて十年ぐらいやったみたい。それで江藤さんも役員の
奥さんってこともあるけど、新しく越してきた人とか凄い親身になって面倒みてたから
内田さんもそうだけど、うちの親父なんか特に江藤さん夫婦には頭上がらなかったみたい」
「それじゃあ泉さんも世話したくなるよなあ。……兄貴のときもそうだったけど、死にたくて
死ぬんじゃないのは判ってるけど、やっぱ早すぎる死ってのは残されたものはつらいよな。
それも江藤さんぐらいの年になればなおさらに」
「喜久雄クンの年だとまだ早いけど、あたしぐらいの年代になるとぽつぽつ出てくるわよ。
高校の同級生で心筋梗塞というか突然死が二人とがんが一人。六十そこらでもやっぱり
早いと思うものね。子供が高校生とか大学生だと見ていて本当に可哀想になってくるわ」
同居はしていないが三人の孫がいる伯母。中高生の子を持つおじさん。そして私。
それぞれがそれぞれの想いで無言になる。
「……藍子。つらいことがあったら何でもいい、一人で悩まないで俺とか恵子姉さん頼れよ。
それと、ちょっとでも身体に違和感感じたらすぐ病院行けよ」
「は? ……突然どうしたのさ?」
いつになく真剣な顔つきで喜久雄おじさんが私に向かってくる。
喜久雄おじさんの言いたいことは充分判っている。しかしわざと煙たそうに返した。
「……怒ってもいい。そのかわりちゃんと憶えておいて欲しいんだ。兄貴も、泉さんも
頑張りすぎたんだよ。医者いらずでちょっとやそっとのことじゃびくともしなかった。でも、
そのせいで二人とも気づいたときにはもう遅かった。……いまさらな話だけど、ちょっとした
身体の異変に気づいたときすぐ医者に行ってれば二人ともまた違った道を歩めてたかもしれない」
「 …………。」
「親子だからしょうがねーけど、俺から見れば藍子もまんまその型なんだよ。だから身体のことに
限らずつらいことあったら何でもかんでも自分で背負い込まないで、俺じゃなくても周り頼れよ。
お互いいい年なって親にもなったけど、俺にとって藍子はたった一人の可愛い姪っ子であり、
可愛い娘であり兄弟みたいなもんだからよ」
413
:
「電子の瞳」 26/39
:2012/08/11(土) 00:25:28 ID:4w.gkcV.0
「……うざっ!」
「うざっ。じゃねーだろコラっ!」
ぷっ、と小さく伯母が吹き出した。
父の代わりを喜久雄おじさんが務めているようなものだ。伯母にとっても、もう見慣れた光景だ。
「邦雄クンに負けず劣らずあなたたちもホントいいコンビね」
「あはは。どっちもバカ親父の血筋だから」
私の返事に気を悪くしたのか、喜久雄おじさんはゲンコツを握り息をかける真似をする。
大袈裟に身を引いて、暴力反対とおどけてごまかす。
「まったく、昔から生意気で何回ブン殴ろうと思ったことか……。まぁ、冗談はさておき、
藍子。悔しい思いや、やりきれない思いしてんのはお前だけじゃない。みんなそうだ。だから
一人でくよくよしたり思いつめたりすんなよ」
冗談めかした仕草はすぐに姿を消す。喜久雄おじさんは真顔で話を続けた。
「……藍子も嫁いで親になって周りのみんなから頼りにされてるんだ。冗談抜きにして本当に
身体には気をつけてくれよ。あとさっきも言ったけど、何でもかんでも無理して一人で片付けよう
なんて思うな。やばいと思ったらすぐ周りに言え。みんなその気は無くても何かしら人に頼って
生きてるんだ、恥ずかしいことじゃないから遠慮なんかすんなよ」
言われなくても父のこともあり健康には留意している。
ただ、自分ではそんなつもりはなかったが、いろいろ痛々しく見えたところもあったのだろう。
無理しないでね。
江藤さんや友達に言われたことを、喜久雄おじさんにも力説される。
「……うん。気をつける。…………ありがとう。キクおじ」
素直に受け止める。そして感謝する。
「……きもっ!」
「――!?」
ぶーっと大きな音を立てて伯母が吹き出した。
顔が赤くなっていくのが自分でわかる。間違いなく頬は引き攣っているだろう。
「おいコラ。こっちがしおらしくしてんのにいい年こいたオッサンが、きもっ。じゃねーだろーがっ!」
「けっ! いまさらしおらしくしたところで熱でもあんのかって言われんのが関の山だろうが。
くくくっ、真面目に話してんのに茶化されたときの気恥ずかしさを、お前も思い知りやがれ!」
「ぬおー。痛いとこ突きやがって……」
照れ隠し。
お互いバカだよなと胸の中で笑う。
そしてむせてしまって大ごとになっている伯母を慌てて介抱し、やっと治まったと思ったら
二人揃って怒られる。
「……でも、よかったわね。天気もよくて、いい葬式になって」
小言をついて気が鎮まったのか、ビールで喉を潤したあと伯母が話を振ってくる。
「……人柄ですかね。穏やかで最高の葬式日和だった。あと、沙織の挨拶もよかったよな。
簡単だけど胸打つものがあった。……藍子、あれお前考えたのか?」
414
:
「電子の瞳」 27/39
:2012/08/11(土) 00:27:20 ID:4w.gkcV.0
「いや、ダンナがアドバイスというか、ほとんど考えたって感じ。昨日から三人で練習してたし。
……でも、葬儀屋さんにどうですかって言われたときは無理無理って思ったけど、いざ蓋を
開けたらビシッと決めちゃってさ。もうね。親バカは百も承知だけど、知らないうちに大人に
なってんだなって感動しちゃったわ。なんていうかテレビ出てる子役より百倍可愛いって思ったし。
葬儀屋さんもちょこっと泣いてたし」
「年寄りになるとね、テレビとかでああいうシーン見るだけでうるっときちゃうのよ。お約束事
だけど、葬儀屋さんもそれ見越してたんじゃない?」
「沙織頑張ったもんなあ。……それにひきかえお母さんときたら」
喜久雄おじさんから苦言が入る
身に覚えがありすぎるので控えめに確認する。
「……そんなダメだった?」
「いや、駄目じゃねーけどさ。でも、感無量で言葉にできません。ってしばらく絶句されてもな。
結婚式の感極まった新郎挨拶じゃあるまいし」
「いやいや申し訳ない。さっきも言ったけど沙織と翔太見てたら胸一杯になっちゃって、考えてた
こと全部飛んじゃってさ。なんとか取り繕ったつもりだったけどね、やっぱダメすか?」
「あたしは味があっていいと思ったわよ。なんていうかこの家の葬式らしいというかね。無言の
時間長かったけどそのあとはしっかりしてたし。……邦雄クンのときの泉に比べたら立派なものよ」
「……うん、まあ、その。……藍子なりに頑張ったし、急造喪主にしてはよかったんじゃないか?
まぁ、それでも俺的には沙織がMVPだけどな」
伯母から出た母の名に少しどきりとする。
喜久雄おじさんも何か思うところがあるのか言葉が濁る。
「MVPならやっぱり藍子ちゃんでしょ。……一番つらいはずなのに、泉のために頑張ってくれて。
…………本当に、感謝しきれないくらいに」
伯母の瞳から、ぽろぽろと涙がこぼれはじめた。
「伯母さん……」
いつのまにか喜久雄おじさんも眼を真っ赤にしている。
五年前の母の姿が蘇る。
だめだと思い、きつく眼を閉じる。でもやっぱりだめだった。
「……でもね、藍子ちゃん。……祭りが終わっただけ。……つらくなるのはこれからだからね。
喜久雄クンが言ったように、どんな些細なことでもいい。困ったことがあったら何でも言って。
泉の代わりにはなれないけど、出来る限りのことは協力するから」
「…………うん。……なんでもお願いするから」
祭りは終わった。
伯母の言葉が妙に胸に残った。
毎度のことながらごしごしと涙を拭う。
そして無理矢理笑顔を浮かべ、缶ビールを飲み干した――――――――
415
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「電子の瞳」 28/39
:2012/08/11(土) 00:29:13 ID:4w.gkcV.0
日曜日。やはりいつもの習慣で五時には眼が覚める。
下に降りたら、やはり伯母はすでに起きていて、朝食の準備に取り掛かっている。
喜久雄おじさんはのんびりと新聞を読んでいる。
「おはようございます。……二人とも早いね」
「おはよっす。……まあ、いつも起きるのこの時間だしな」
「田舎はみんな朝早いからね」
昨日の夜。
伯母の涙を皮切りに三人でしとしと泣いたあと、また葬式の反省会をしながらビールを飲み続けた。
日付が変わるころ限界を感じ、一番最初に風呂に入って自分のベッドに倒れこんだ。
伯母と喜久雄おじさんはまだまだ余裕な雰囲気だったが、それでも風呂上りの挨拶時、じゃあうちらも
そろそろと言っていたのでそんな遅くまでは起きていないはずだ。
ご飯、味噌汁、玉子焼き。義母お手製の漬物、ちょっと贅沢な厚さで切られたちくわとかまぼこ。
珍しいものは何もないが、うまいうまいと言いながら缶ビール片手に喜久雄おじさんは箸を進める。
結局私と伯母も喜久雄おじさんに誘われるように、生姜醤油でちくわとかまぼこをつつきながら
缶ビールを飲み始めた。
「藍子ちゃん。あたし明日の午後からまた来るから。なんだったらまた泊まっていってもいいわよ」
「俺も火曜日の夜からなら、しばらくここに寝泊りして会社通ってもいいぜ?」
メインの朝ごはんを食べ終え、ダラダラと缶ビールを飲み続ける。
見もしないテレビを見ながら今後のことがちらほらと話される。二人からの申し出に素直に乗ってみる。
「うん。伯母さんもそうだけどキクおじも、もし仕事の負担なんないならお願いしたいかな……。
家の事もそうだけど、手始めにちょっと早めに決めたいことあって」
「ん、何だ?重要なことか? それとも今話しても差し支えないことか?」
間髪いれず喜久雄おじさんが問い返してくる。
八時半前後に喜久雄おじさんの奥さんが迎えに来る。伯母もその車に同乗し、約二十キロ離れた家に
帰る段取りになっている。ちらりと時計を見る。車が来るまでまだ時間は充分ある。
「まあ、家に比べたら可愛いもんだけど、やっぱりお金の絡みもあるから早目の方がいいかな。
お母さんの車と親父のバイクのことなんだけどね。……どうしようかと思って」
「あー、兄貴の単車か……」
私の提案に喜久雄おじさんは少しばつが悪そうに頭をかいた。
「……藍子。実は泉さんに口止めされてて、今だから言えんだけどよ」
「なに?」
「……泉さん兄貴の単車結構乗ってて、うちにも何度か単車で遊びに来たことあるんだわ」
「マジで!?」
予想外の告白が返ってくる。
母がバイクの免許を持っていたのは知っている。ただ、父がいるときからいままで母がバイクに
乗っている姿は見たことが無い。父の死後、狭いガレージの中でノスタルジックなオブジェの
ようにピカピカにされているのは分っていたが、飾り物にしているだけで実際に母がバイクに
乗っているとは夢にも思っていなかった。
「ああ。ただ、綺麗に磨いて乗るのはいいんだけど中型でも泉さんが乗るにはでかい単車だから
見てて危なっかしくてな。それで、集合管とシート以外ノーマルで程度もいいからかなりの額で
売れるよってさりげなく処分促してみたら、もったいないから隠し財産でとっとくって耳貸さな
かったんだよ。そのうち藍子も乗るかもしれないからとも言ってたな。
……藍子。お前免許あんだろ?お前はどうしたいんだ?」
「うーん。親父死んだときは忘れ形見だって盛り上がってたけど、さすがに三十なって子供二人
いるとなると昔みたいに後先考えずに盗んだバイクで走り出すって訳にはいかないからね。
ゆくゆくは乗りたいと思うけど、そうなると今度は維持費のこととかも出てくるしさ。
でも売るとなるとやっぱりお母さんと同じでなんか抵抗あるし。……悩みどころだね。
いやー、でも免許あるのは知ってたけどお母さんバイク乗ってたって正直驚きだな。まめに磨いて
いるだけかと思ってた。それに私無免で乗ったときなんて思いっきり引っ叩かれたから」
416
:
「電子の瞳」 29/39
:2012/08/11(土) 00:31:10 ID:4w.gkcV.0
「若気の至りは分るけど、事故とか怪我とか人様に迷惑掛けるの怖いから普通の親なら
そりゃ当然怒るだろ。生意気で口だけは達者なバカだけど可愛い可愛い一人娘なんだからよ。
……まあそれはさておき、急いで決めることもないわな。別に俺の家で預かってもいいし。
一応免許あるし簡単な整備なら出来ないこともない。俺も暇つぶしに乗るかもしれないけど、
藍子も乗りたくなったら俺んとこ来ればいい。とりあえず税金と車検出すぐらいの余裕ならある」
「……うん。維持費のことは置いといてそうしてもらうのがベストかな。さすがに誰もいない
家に置きっぱなしにするわけにいかないし……」
さりげなく酷いことを言われた気がするが聞かなかったことにする。
憧れであり、象徴だった。
大きな黒いバイクにまたがる父は大人でカッコよかった。せがんでは父の後ろに乗ってはしゃいだ。
ノーヘル二人乗りで近場を走り回ったこともある。そして後で二人揃って母にこっぴどく怒られた。
昔から親子揃ってバカだったなと心の中で苦笑する。
ずっと大切にされていた黒いバイク。
母に代わり今度は父の弟が乗り継いでいく。何の不満もない。
「藍子ちゃん。泉の車、オートマじゃなくてマニュアルでしょ?」
「え……? あ、うん。……マニュアルだけど」
感慨にふけっているところで伯母に話しかけられる。
「じゃあ、遺産いらないって言っときながらあれだけど、車はあたし貰ってもいい?」
「えっ、いいの? バイクと違って中古で買った普通の軽だから価値なんかないけど」
意外な申し出が伯母からなされた。母の車。極端に古くはないが、営業車で使われるような地味な
銀色の、小さく質素な軽自動車だった。
「いいわよ。あたし乗ってる車とうの昔に十年超えてだいぶ疲れちゃってるからね。軽にしたら
いくらかでもガソリン節約なるでしょ。それに維持費も安いし。ただ、形見分けとかじゃなくて
純粋に普段の足として使うからそれに抵抗あるなら遠慮するけど」
願ったり叶ったりでどこにも反対する理由は無い。
体のいい処分だが、実の姉に乗ってもらうなら母も納得するだろう。
「ううん、大丈夫。親父のバイクはあれだけど、中古車だけど車は定期的に買い替えてたから
そんな気になんないし」
「そう。じゃあ、落ち着いたら付き合ってる車屋さんに連絡して名義変更とかの手続きしてもらうわ」
「うわっ、伯母さん助かる。あとで税金納めてるか確認しておくわ。つーか今車検所もって来る!」
「そんなに焦らなくていいわよ。……でも任意保険の解約とかもあるから、今すぐとは言わないけど
明日にでも確認はしたほうがいいわね」
「うん。……やっぱ、やらないといけないこと色々出てくるよね」
「ええ。別に死者に鞭打つつもりはないけど、葬式やお墓のことも含めて人が死ぬとういのは
何かと大変なことなのよ。……でも日曜日だし今日はゆっくりしてればいいじゃない。疲れたでしょ?
関谷のお義母さんも気を利かせて沙織ちゃんと翔太くん連れて帰ったことだし」
話してみるもんだなと思う。
バイク、車。思いのほかとんとん拍子に話が決まり、ほっと一息つく。
話が済んだところで朝食の後片付けとなる。そしてそのままの流れで三人で居間や座敷を掃除する。
約束の時間よりずいぶん早く喜久雄おじさんの奥さんが車で迎えに来た。
半端なタイミングだったので奥さんも掃除に参加させ、切りのいいところで終わりとする。
最後にもう一本と喜久雄おじさんが冷蔵庫から缶ビールを出す。そして奥さんに叱られる。
しばらく談笑したあと、まだ結構な量が残っている缶ビールや袋菓子をみんなに分けて持たせる。
「じゃあ藍子ちゃん、また明日ね」
「俺もなんかあったらすぐ来るからそん時は連絡くれよな」
別れ際に言葉を残し車に乗り伯母達が帰っていく。またお願いしますと声を掛け、手を振って見送る。
午前九時。
見上げれば、昨日と同じ爽やかな五月晴れだった――――――――
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「電子の瞳」 30/39
:2012/08/11(土) 00:32:58 ID:4w.gkcV.0
「何からやろうか?」
祭りは終わった。
言葉どおり誰もが去ってしまった家は、祭りのあとに似た寂しさを存分に醸しだしていた。
口に出したところで実際は何もやる気がなく、テレビのリモコンをいじっては溜息をついた。
もはやアルコール中毒かと苦笑いしながら、冷蔵庫から缶ビールを取る。ラップに包まれた
かまぼこをとんでもない厚さで切り、チューブの生姜をしぼり醤油をたらす。居間に戻り、
肴をみみっちくかじりながらビールを飲み始める。
「何か久しぶりだな」
一人きりの時間。
テレビはついているものの、それ以外、音のする気配はない。
嫁ぎ先の家は広く、誰にも邪魔されることのない自分専用の部屋と呼べる場所があった。
しかし子供が生まれ、特に二人目ができた頃にはそこも安住の地ではなくなっていた。
お義母さんありがとう。と、半ば力技で孫二人を連れ帰った義母に心の中で礼を言う。
新聞を広げ何か変わったことはないかと記事を追う。ゆっくりと新聞を見るのも久しぶりだ。
「…………新聞も止めなきゃ」
まったくやる気はないのだが、さっきの伯母とのやりとりが脳裏に残っているのかすぐ
現実に引き戻される。
めんどくさいなと、つい思ってしまう。
嫁になって親にもなった。ただ、一人暮らしの経験はなく、当然世帯主にもなったことがない。
嫁ぎ先でもダンナの給料の一部を家に入れているだけで、実際に月々の生活費がどのくらい
かかっているのかまったく理解していない。そういうことはすべて義母の仕事だ。
ちょっと甘えすぎてたなと軽く反省する。
めんどくさいと言っても新聞屋に連絡して解約を連絡すればいいだけだ。電話帳で調べて電話する
だけでいい。電話番号を調べるのすら億劫なら、あとで江藤さんに連絡して聞けばいい。
ほっとけばたぶん三千円前後の請求が毎月来る。日曜日なので明日午前中に連絡して片付けようと
頭に刻み込む。
些細なことだが、ひとつ事を進めたことで俄然やる気が出てきた。
ビールを飲みながら考える。車、バイクの税金の支払い確認。任意保険の解約、所有者の名義変更。
貯金借金、金融口座の確認。父、母の生命保険はどうなっているか。家はとりあえずこのままで
固定資産税の支払い確認。電気ガス水道はどうするか、灯油でボイラーを炊いているのでその
支払いはどうなっているのか。固定電話、携帯電話もどうするか。そして、一番重要な遺産相続の
手続きはどうやるのか。
「あはははは。…………やることだらけだな」
思いついたことを挙げただけでも軽く眩暈を覚えるほどだった。
それでも程々の酔いからくる高揚感で、根拠もなく何とかなりそうな予感はする。
とりあえず、遺産相続の流れみたいな手順書がほしいと思う。
家に行けばパソコンで検索できるんだけど。携帯じゃ面倒だし。と少し嫁ぎ先が恋しくなる。
「パソコ……ン?」
418
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「電子の瞳」 31/39
:2012/08/11(土) 00:35:35 ID:4w.gkcV.0
胸がざわめく。
母の寝室に行けばパソコンはある。
しかしインターネットに接続できるかどうかは定かでない。
「 …………。」
でも本当はそんなことどうでもいい。
胸が騒ぐ理由は判っている。忘れていた、押入れに閉じ込めたロボット犬のことだ。
「 …………。」
高額なペットロボット。
葬儀の邪魔になる。と、押入れに閉じ込めた。
確かに最初はそう思った。でも、それもひとつの理由というだけで本当はそれだけじゃない。
母のイメージを壊されたくなかった。母との思い出を汚されたくなかった。
そして何よりも、一人暮らしの母が寂しいおもいをしていると他人に思われたくなかった。
残された状況から、母もロボット犬を隠していたはずだ。
しかし、ロボット犬を一番隠したかったのは、間違いなく私自身だ。
「……まいったな」
自分に言い聞かせるようにつぶやき、溜息をひとつ。
気を落ち着かせようと缶ビールを煽る。しかし、爽快なはずの喉越しもどこか鈍い。
「いや、たかがこれきしのことで落ち込んでどうするよ? 下手すりゃもっと怪しいのとか
いかがわしいやつ出てくるかもよ?」
はっきりと声に出し、気持ちを切り替える。
半分ほどになったの分厚いかまぼこを一口で食べきり、残った缶ビールを一気に飲み干す。
ぺこりと缶を押しつぶし、かまぼこが乗っていた小皿と一緒に流し台に置く。
テレビを消し、広げた新聞やチラシをたたむ。
少しだけ躊躇したあと、ぴしゃぴしゃと両手で頬をはたき、気合を入れなおす。そして死にに
行くわけでもあるまいしと心の中で無理矢理笑いながら立ち上がる。
「もしネットに繋がるようなら遺産相続で検索。ついでに固定資産税も」
母の寝室に入る前に目的を明確にする。
ずけずけと他人の部屋に入るのは気が引ける。同じく無断でずけずけと他人の部屋に入り込む
ような人とは付き合いたくない。最低限の常識やエチケットだと思ってる。
そういや、無断で車とかバイク借りましたね。いまさらながらごめんなさい。
過去の汚点を心の中で両親に詫びる。自分に甘いなと苦笑する。そして、もう一度やることを
確かめ、ドアに手を掛ける。
踏み込んだ部屋の中、あらゆる物が新鮮に写る。
葬儀期間中、二人の伯母が着替えで使用しただけで、母の寝室に入った者も部屋を見せろと
言う者もいなかった。私も軽く片付けたりちらりと覗いただけで、長々と居座るのは小さい頃の
記憶と母が死んだ日を除けばほぼ初めてだった。
419
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「電子の瞳」 32/39
:2012/08/11(土) 00:37:33 ID:4w.gkcV.0
深呼吸。そして早速パソコンの乗っている小さなテーブルの前に膝を折って座る。
当然の如くソニー製のノートパソコンである。最新型とは言い難い、程々に厚さのあるタイプだ。
電源とマウスのケーブルのほかに青いケーブルが刺さっている。
ケーブルを辿り絨毯を這いつくばる。下手すれば気づかない、部屋の片隅にあるランプが光っている
装置に向かっている。ルーターやアダプターといったネット接続用の装置で間違いないはずだ。
詳しくはないがそれぐらいは私でも判断できる。
居間にある固定電話は前々からあるもので変わりはない。
母が自分でやったのかは不明だが、ネット接続用の装置も寝室の目立たない場所に接地されている。
うがった見方かもしれないが、ロボット犬と同時にパソコンとネット接続環境も間違いなく隠して
いたと確信めいてくる。
もう一度パソコンの前に座り直す。
ネット接続は可能。遺産相続、税金関係。大雑把に把握するくらいなら検索すれば充分だ。
ゆっくりと慎重に両手で画面を開く。電源ボタンを探す。すぐに見つかる。
どこか居心地の悪さを感じ深呼吸を繰り返す。大袈裟に考えるなと眼を瞑る。そして電源ボタンを押す。
画面に色が入る。OSが立ち上がる。
特徴的なロゴマークにXPの文字。なんだうちのと同じかと安心する。間を置いてブラックアウト。
「なっ!!!」
画面がロゴマークから壁紙に切り替わる。
縁側でまどろむ猫のように、玄関の下駄箱の上に座るロボット犬。
「…………マジかよ」
家族やペットの画像が壁紙や待ち受け画面に使われるのはよくあることだ。
母の携帯も、母が自分で孫たちの写真を撮り、自分で待ち受け画像に設定していた。
もしかすればデジタルカメラも隠しているかもしれないが、携帯で写真を撮り、メモリーカードで
パソコンに取り込んだのだろう。それくらいのことは母なら楽勝と思われる。
でも、それはどうでもいい。
問題は母がそこまでもロボット犬を可愛がっていたのかということだった。
私の了見が狭いのだろうか。それともロボット犬に嫉妬しているのだろうか。
自分の気持ちがこんがらがる。でも確実に言えるのは、最後の日、母はロボット犬とともに
過ごし、そして、そこに私はいなかった。
早くも目的を見失っている。
しかし、もうそれもどうでもよくなった。いたたまれなくなり、天井を見上げ大きく息を吐く。
「はいはい、わかりました。すみませんでした。今、持ってきますよ」
ふて腐れた中学生のような声を出し、がさつに立ち上がる。
ベッド脇の布をたくし上げ、ロボット犬の充電器と思われる装置を引き出す。
二階の自分の部屋に行き押入れを開ける。そして、恐る恐る衣装ケースの蓋を開けた。
「……死んじゃったか? ……いやいや。携帯と同じで単なるバッテリー切れでしょ?」
衣装ケースの中でロボット犬は伏せのポーズで固まっていた。
指で突付いてみる。二本指で強く押してみる。動き出す気配がないことを確認し両手で持ち上げる。
微動だにしないロボット犬を抱え、慎重に階段を下りる。
また母の寝室に戻りロボット犬を床に置く。そして充電器を手元に引き寄せた。
420
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「電子の瞳」 33/39
:2012/08/11(土) 00:39:47 ID:4w.gkcV.0
携帯の充電と同じだろと自分に言い聞かせロボット犬を持ち上げる。
お腹の部分に接点のような金属部がある。これだなと、今度は充電器のほうを確認する。
向きを考えて、充電器の上にロボット犬を乗せる。がさがさしてるうちに首に近い背中のランプが
オレンジ色に点灯する。
よしっ。と心の中でつぶやく。
別に動かしたいわけでもない。もし、いま突然誰かが訪ねてきたら間違いなくまた隠すだろう。
ただ、押入れに閉じ込めていたという罪悪感からは解放された。
充電が終われば、また動き出すのだろうか。でも、初めて見たときのように大きくうろたえる
ことはないだろう。
なんとなく喉が渇き、また冷蔵庫から缶ビールを取り出す。
小皿の漬物と一緒に、母の部屋に戻り一口二口と喉に流し込む。漬物をつまみまた一口。
げふっとおくびをひとつ。そしてまたパソコンの画面に注目する。
「 …………。」
当初の目的はブラウザのアイコン。
すぐにそれは見つかった。しかし、それ以上に気になるものがある。
AIBO ERS−7M3購入日。
そのテキストファイルには、そうファイル名がつけられていた。
「 …………。」
ことりと缶ビールをテーブルに置く。
他人の日記を盗み見るような背徳感に、鼓動が早まる。
見る必要があるのかと己に問う。そんなことよりブラウザ立ち上げろとも思う。
しかし囚われた瞳を動かすことができず、誘われるようにカーソルを重ねる。
「マジでっ!?」
最初に飛び込んできたのは値段だった。
思わず桁を確認した。しかし何度見ても間違いはない。
三十万。
3の後に0が五つ。白地に黒いフォントで、間違いなくそう記されている。
眩暈がした。
ある程度の額だろうと思っていたし認識もあった。しかし私の予想は悪いほうへ裏切られた。
その金額は、ダンナの手取りの給料を楽勝で超え、半年の一度のボーナスに迫る金額であった。
価値観の違い。
何度も繰り返し胸の中で唱える。そして充電中のロボット犬に目を向ける。
「おまえ、三十万かよ……」
なかば呆れ顔でぼんやりとつぶやく。
だがロボット犬は充電中。ぴくりとも動かない。
気を取り直しテキストファイルをもう一度確認する。
購入日は今年の一月下旬。購入先は有名なオークションサイトのショップ。
記憶を辿る。
二月中旬の土曜日、子供二人と私で実家に泊まっている。そして三月末の墓参り。
母がロボット犬を買ってから家に二回来ていたことになる。しかし、ロボット犬もパソコンも、
そのとき間違いなく家の中に姿は無かった。
421
:
「電子の瞳」 34/39
:2012/08/11(土) 00:41:34 ID:4w.gkcV.0
「三十万だもんな。もったいなくて人前に出せないか……」
趣味のものとしても高価すぎるが、それだけが理由とは当然思っていない。
むしろ、気恥ずかしくて人前に出せなかったと思うほうが自然だろう。
溜息が何度も漏れた。
父が死んだとき、母には保険金なんていらないと突っぱねた。あって困るものじゃないのは
判っている。しかし私は受け取りを頑なに拒んだ。もう嫁ぎ先で、義父義母の協力があってだが
生活の基盤はできていて人並み以上に暮らせていた。それに私が保険の積み立て金を出していた
わけじゃない。
そして一人っ子なのに結婚してすぐ家を出てしまったことと、父が死んで母が一人暮らしに
なると判っていても、かと言って、母に合わせた生活にすることは簡単には出来ないことに
負い目を感じていたからだ。何のこともない。母の寂しさをお金で解決しようとしたのだ。
だから母のお金であり、別に生活に支障がないのならどう使おうが文句を言うつもりはない。
しかし、それでも、どんなに贔屓目に見ても、ロボット犬を受け入れるこは出来なかった。
「……まいったな。……どうしようか?」
さっきからずっと同じことをつぶやき、溜息を繰り返している。
母が死んだ日、江藤さんと内田さんの前で犬と口走ってしまったが、二人ともロボット犬には
何も触れてこなかった。そして葬式期間中の落ち着いた時間でさえ、ロボット犬はおろかパソコンの
パの字すら出てこなかった。江藤さんたちにもロボット犬のことは隠していたと思って違いないだろう。
はたして母の遺品として日の目に当てていいものか。それとも私が墓場まで持っていこうか。
私が悪いのは判っているが頭が痛くなってくる。最初に隠さなければこんなに悩むこともなかったはずだ。
「あーっ、もう!」
重い空気に堪えきれず、立ち上がりドアを開けた。
少しだけ空気が流れる。勢いのままにどたばたと歩き回り、家中のドアを全開にする。
わずかに澱みは薄れた。でも何も変わらない。
とぼとぼと、またそのままパソコンの前に戻り、テキストファイルを閉じる。
「 …………。」
壁紙のロボット犬。
あたり前だが、どう見てもロボットである。充電中のロボット犬を見る。やはりどう見繕っても
電気で動くロボット以外の何者でもない。
ペットが欲しかったのなら何故、本物の犬を買わなかったのだろうか。
詳しく判らないが、三十万という予算なら血統書付きのそれこそお犬様と呼ばれそうな犬が
買えたのではないか。それに母の性格や暮らしぶりなら、朝夕の散歩や食事の世話もそれほど苦に
ならないのではないか。
「……だめだ」
無造作にパソコンの電源ボタンを押し、画面を閉じた。
電源が落ちるのを見届けもせず、階段を上がり自分の部屋に駆け込んだ。そしてベッドに倒れ込む。
母はどうしたかったのだろうか。
私はどうしたらいいのだろうか。
天井をぼんやりと眺め答えを探す。
父のバイクは母の手によって大切に保管され、時には母により火が入れられていた。
あのロボット犬もそうするべきなのか。
それとも娘や孫にさえも見せなかったその意志を貫き、また押入れの衣装ケースの中で、
ひっそりと眠り続けてもらうのがいいのだろうか――――――――
422
:
「電子の瞳」 35/39
:2012/08/11(土) 00:42:58 ID:4w.gkcV.0
「この際、恵子伯母さんに決めてもらうか?」
ベッドの上、仰向けで棒のようになりながら天井を睨んでいたらひらめいた。
「……それでよくね? 私にとっちゃ一大事だけど伯母さんにしたら些細なことだろうし」
世紀の大発見でもしたかのように、むっくりとベッドから起き上がる。
「お母さんの部屋開けたらロボット犬いて、葬式のとき暴れたらヤバイと思って自分の
部屋にしまってたらころっと忘れてた。って伯母さんにほぼ正直に話せばいいじゃん」
ひとすじの光を手がかりに、思考が明るい場所を目指し始めた。
「つーか、そんな深刻になる必要なかったんじゃね? 三十万もするけど早い話がオモチャだし」
だんだん悩んでいた自分が馬鹿みたいに思えてきた。
伯母なら笑い飛ばすだろうか。それとも値段を聞いて卒倒するだろうか、怒りまくるだろうか。
「あはは、こりゃ明日の午後見ものだな」
伯母の驚く顔が眼に浮かぶ。
くくく、と含み笑いをしたところで、ぐうっ。と大きく腹が鳴った。そういえばお腹が空いたなと
カラーボックスの上の目覚まし時計を見る。
「…………マジすか?」
時計の針はすでに十一時を大きく廻っていた。
そんな馬鹿なとポケットから携帯電話を取り出し開いたが、目覚まし時計と大差はない。
「まいったな。そんな悩んでたんだ……」
時間の感覚のずれに少し怖くなる。
九時に伯母達を見送り、少し間を置いてから母の寝室に入った。九時半頃パソコンを開いたとしても
なんだかんだで二時間近く、ロボット犬のことで悩んでいたことになる。
一人でくよくよしたり思いつめたりすんなよ。
喜久雄おじさんの言葉が蘇る。
これが思いつめるということなのかと胸の中でつぶやく。
江藤さんや中学の友達。そして喜久雄おじさんと伯母の声。
もしかしたら私だけ何も見えてなかったかもしれないと悔やみ、みんなに心の中で礼を言う。
そしてここで止まったらまた同じことをくり返しそうなので、大きく深呼吸をして両手で
頬を叩き気分を入れ直す。
「お腹空いたしコンビニ弁当でも買いにいくか!」
ここ三日の食事を思い出しながら階段を下りる。
バリエーションが無いわけではないが、ほとんど同じものを食べている。
なんかジャンクっぽいもの食べたいよなと、頭の中で思いを巡らす。
「久々に自転車で行ってみっかな」
歩けない距離でもないが少し遠いので自転車を使うことにする。
あれ買ってこれ買ってビールはあるからアイスとなんかくだらない雑誌でも買って、と候補を挙げる。
423
:
「電子の瞳」 36/39
:2012/08/11(土) 00:44:14 ID:4w.gkcV.0
「テレビ見ながらまたダラダラでいいや。たぶん今日誰も来ないだろうし」
トイレに行き、軽く身だしなみを整える。
天気はいい。五月晴れもいいところだ。全力でペダルを漕いで汗でもかけば、お昼ご飯もビールも
さぞかし美味しいだろう。いい気分転換にもなる。
いつもどおり、下駄箱の上の鍵掛けフックに自転車の鍵がかかっている。
裏口の錠を掛け、ポケットの携帯電話や財布、家の鍵を確認する。
「帰ってきたらビール飲んでご飯食べて眠くなったら寝よう。明日から本気出す!」
伯母と喜久雄おじさんの顔が思い浮かぶ。
改めて支えられて生きているんだなと痛感する。
今後やるべきことは腐るほどある。
だけど無理はせず、最初から伯母や喜久雄おじさんを頼ろうと自分につぶやく。
ばしりと強めに頬を叩き気持ちをリセットする。
「チキンとフランクフルトもいいよな。オーブンで油飛ばせばさらに美味いし」
今日は昼酒で英気を養う。明日から気合入れてやる、……たぶん。
天国の母には怒られるかもしれないが、自堕落ぶりが次第に楽しくなってくる。
気分のままに、自転車の鍵をくるくるさせながら土間にあるサンダルを履く。
自転車だしスニーカーのほうがいいかと履いてきた靴を探す。ああ、下駄箱の中かと戸を開ける。
「――――!?」
母の寝室からかすかに電子音が響いた。
「 …………。」
充電が終わっただけと、自分に言い聞かせる。
廊下に腰をかけスニーカーを取り出し土間に置く。下駄箱の戸を閉めてサンダルから履き替える。
「 …………。」
モーター音と、カタカタカシャカシャという動作音が続いている。
スニーカーの紐を縛り終え、気のないふりをして立ち上がる。
「 …………。」
音は確実に近づいてくる。でも、特に気にすることはない。そこに何が居るかは判っている。
だが、胸に手をあてれば、やはり無視する訳にはいかなかった。
長い息を吐き、ゆっくりと振り返る。
「 …………。」
カタカタ動いていたロボット犬が、下駄箱の前で立ち止まった。
そして、耳やしっぽを振りながら、顔から訳の解らない光を放ち始めた。
「………タ・キ・テ・ネ」
「えっ……?」
424
:
「電子の瞳」 37/39
:2012/08/11(土) 00:45:35 ID:4w.gkcV.0
何が起こったのか解らなかった。
喋るはずのないロボット犬が、何かつぶやいた気がした。
画面がロゴマークから壁紙に切り替わる。
縁側でまどろむ猫のように、玄関の下駄箱の上に座るロボット犬――――
「まさかっ!?」
力任せに下駄箱の戸を開け、思い切り閉めた。
玄関中に酷い音が響き渡る。ロボット犬は下駄箱を向いている。そして、またしっぽを振りながら
光を放ち始めた。
「 マ・タ・キ・テ・ネ」
「――――!?」
ロボット犬が喋った。
聞き間違いじゃない。
生まれたばかりのコンピューターのようなたどたどしい発音で、また来てねと確かに言った。
小さい頃から幾度と見た、母の無邪気な笑顔が次々と蘇る。
「…………やられた」
やがて、思い出は風となり、立ち尽くす私を追い越していく。
そして、すがろうと手を伸ばすことさえ叶わずに、宙に紛れ消えていった。
己のあさはかさを恨んだ。己のあさましさを呪った。
「……ふざけんな、クソババァ。 ……こんなの、……こんなの反則だろう……が」
胸を締めつける想いが、置き去りにされた感情とひとつになる。
クソババァ、クソババァ、お母さん、お母さん。
何度も何度もその名を呼んだ。何度も何度も姿を探した。
でも、あの時から判っていた。
私に答えてくれるのは古い写真に似た、もう戻れない色褪せた静寂だけだと。
見慣れた景色が歪んだ。
尽きることのない泉のように、とめどなく涙があふれた――――――――
425
:
「電子の瞳」 38/39
:2012/08/11(土) 00:47:04 ID:4w.gkcV.0
全てはプログラムで制御された挙動。
どれだけの時間が過ぎたか分からない。
うなだれ立ち尽くしたまま、ただひたすらにむせび泣いた。
ロボット犬はそんな私など目もくれず、廊下の上をカタカタと音を立て動き続けていた。
そして思い出したように立ち止まり、下駄箱を向いてはまた来てねと、機械的な発音で繰り返した。
こみ上げる涙を拭いながらも思う。
母はロボット犬を隠したかったのではなく、きちんと芸が出来るまで人前に出したくなかったのだと。
また来てねの一言にほだされ号泣しているが、冷静になってロボット犬を見ればこっちを向かないで
下駄箱に向かって言うわ、その発音も大概だわ、袋小路の無限ループに陥って延々とまた来てねを
いい続ける状態だわで母に無礼を承知で言えば、実はちょっと馬鹿っぽい。
自分の趣味も兼ねているが、孫を喜ばせようとこっそりとそれこそ目玉が飛び出そうになるほどの
高額なロボット犬を買い求め、たぶんパソコンを使い芸を仕込もうとした母。
そして、あまりにも突然のことではあるが、それでも世間体や体裁だけは気にし、ロボット犬を
隠してしまった私。
親の心子知らず、子の心親知らず。
ロボット犬に負けず劣らず、まったく親子揃って馬鹿だなと思う。
「 マ・タ・キ・テ・ネ」
相も変わらず、ロボット犬は下駄箱に向かってまた来てねとつぶやいていた。
なんとかの一つ覚えとはよく言ったもので、その様子はおバカさんを通り越して、微笑ましい
なんてぶっちぎり、可哀想も追い抜いて、もはや呆れてしまうほどだった。
「……そんなに追い返したいか、馬鹿犬。……でも残念だな。ここは私の家だ」
全てはプログラムで制御された挙動。当然意思の疎通など出来るわけもない。
また来てねとしか言わないロボット犬を相手に、涙ながらに強がったところで意味は無い。
こんな馬鹿な娘を持ち、母は幸せだったのだろうか。
胸の中で想う。
またひときわ熱く、涙がこぼれる。
幸せを計るのは惨めなことだろうか。答えを求めるのは愚かなことだろうか。
何度も何度も涙を拭う。止まらないのは判っている。それでも、何度も何度も涙を拭う。
母は幸せだったのだろうか。そして、父は幸せだったのだろうか。
わからない。
でも、ひとつだけはっきりしていることがある。
父と過ごした、そして母と過ごした日々。間違いなく私は幸せだった。
「……つーか、コンビニに行くだけだっちゅーに」
全てはプログラムで制御された挙動。
ましてや母の魂など宿るわけもなく、やはりロボット犬は私の声など知らぬ存ぜぬでカタカタと
動くだけだった。
「バカ親父のバイクのほうがよっぽどカワイイっての。……ったく、訳わかんねー奴残しやがって」
まだ間に合うだろうか。
母のように、私はこのロボット犬を愛でることができるだろうか。
426
:
「電子の瞳」 39/39
:2012/08/11(土) 00:48:18 ID:4w.gkcV.0
「……ん? ……あれ?」
ずっと甘えっぱなしだった。小さな頃からずっとずっと甘えっぱなしだった。
残念ながらすっかり忘れていた。母は母である。しかし、おばあちゃんでもある。
「……沙織と翔太呼べばあいつら単純だから喜ぶんじゃね? つーかそれが当初の目的じゃん」
何故一番最初に気がつかなかったのだろうかと悔やむ。
一向に止む気配のない涙をごしごしと擦り、携帯を開き時間を確認する。
十二時五分過ぎ。
また軽く眩暈を覚える。なんだかんだで二十分前後一人で悶々としていた勘定だ。
「お昼食べ終わったぐらいか……。昨日の今日であれだけど、じいちゃんもばあちゃんもダンナも
緊急収集かければいいじゃん。たぶん午後からも草刈りだと思うけど、この際草のことは
忘れてしまえ。ちょっとぐらい伸びたって別にいいじゃん。
ついでに恵子伯母さんもキクおじも呼ぶか。それで江藤さんと内田さんも呼んで、それであれだ。
みんなで馬鹿犬中心にして内田さんに記念写真撮ってもらおう!」
馬鹿馬鹿馬鹿と自分を罵った矢先、今度は思い出したように、ぐぅっ、と腹が鳴った。
「あー、もうっ! ダンナ連絡してとりあえず昼メシ買いに行ってくる。おいコラ馬鹿犬。
お前は留守番しとけ。あんま期待はしてないから心配すんな」
当然私の命令など聞くわけもなく、ロボット犬は知らぬ存ぜぬでカタカタと動き回っていた。
そして小憎たらしいことに、懲りずにまた来てねと言い放った。
ごめんなさい。暗い場所に閉じ込めて。
ありがとう。母の思いを伝えてくれて。そして、母と一緒に暮らしてくれて。
「また来てねじゃなくて、いってらっしゃいだボケがっ!まったく世話かかるったらありゃしねえ!」
動き続けるロボット犬を無理矢理抱き上げ抱きしめる。
触られるのを嫌う小動物のようにじたばたしていたが、やがて静かになる。少しだけカワイイと思う。
きっとまた悩み、同じ過ちをくり返し、ことあるごとに涙を落とすだろう。
でもそれで構わない。たぶんそれが残された私の仕事だ。幸せなんて後からちゃんとついてくる。
どうか天国から、私たちのことをずっと見守っててください。
娘が捧げた言葉を胸の中で唱え、空に向かい祈る。
ロボット犬をそっと廊下に戻し涙を拭う。そしてコンビニに行く前に言いそびれたことを笑顔で伝える。
「おいコラ馬鹿犬。今日からお前も家族の一員だ。ひとつよろしくな。私もまだまだ未熟者だけど」
物言わぬ電子の瞳が私を見上げた。
そして耳やしっぽを振りながら、幾何学模様の白い光をいつまでもいつまでも放ち続けた。
まるで、いつか見た父のように。
いつか見た、母のように――――――――
「電子の瞳」
おわり
427
:
名無しさん@避難中
:2012/08/11(土) 00:53:11 ID:4w.gkcV.0
以上。投下終了
428
:
名無しさん@避難中
:2012/08/11(土) 12:39:12 ID:n8auydWk0
乙乙!もの言わぬ瞳がものいうっていうのが良いなぁ…
大作乙でした
429
:
ヘ ノ
: ヘ ノ
ヘ ノ
430
:
ヘ ノ
: ヘ ノ
ヘ ノ
431
:
名無しさん@避難中
:2012/11/11(日) 21:04:04 ID:PkKI55YEO
age
432
:
名無しさん@避難中
:2013/01/04(金) 23:13:28 ID:j6cRMRog0
あけまして規制よ解けろ
明日の昼位から、こっそり「モブ少女」でお借りします
433
:
名無しさん@避難中
:2013/01/04(金) 23:32:51 ID:NWMt5qbw0
ガタッ
434
:
名無しさん@避難中
:2013/01/05(土) 13:26:57 ID:MoGjiiek0
モブ少女14時からちまちま行きます
435
:
名無しさん@避難中
:2013/01/05(土) 14:05:28 ID:MoGjiiek0
間があいてるのであらすじから
・修学旅行に来たよ!
・少女が迷子になったよ!
・なんか変な現象が起きて消されそうになるよ!怖い!
・少年に助けてもらったよ!ぱねぇ!
・旅館に帰ってきたよ!←いまここ
436
:
名無しさん@避難中
:2013/01/05(土) 14:10:11 ID:MoGjiiek0
友人「ひ〜ん、少女ぉ、よかったよぉ・・・」スリスリ
少女「あ、あうぅぅ!」ジタバタ
男B「案の定だな」
女A「ま、しばらくそっとしときましょ」
社会「って、わけにもいかねぇんだな」スタスタ
男A「あ、お、おい!」
社会「ほら、どいたどいた、担任そいつ抑えてろ」ペイッ
担任「はいはい・・・」
友人「あー!ちょ、ちょっとぉ!」ジタバタ
社会「よぅ」
少女「あ、しゃ、社会先生・・・」
社会「どっか怪我とかしてないか?」
少女「は、はい、大丈夫です」
社会「何か変なやつに捕まったとか、財布盗られたとか」
少女「い、いえ、そういうのではなく、あの、単純に迷子と言うか・・・」
社会「そうか、じゃあ遠慮はいらんな」
少女「へ?」
パコーン!
少女「あつっ!」ヒリヒリ
男A「!」
女A「ちょ!」
男B「おいおい!」
保健「しゃ、社会先生っ!?」
友人「な、な・・・」ワナワナ
友人「なにさらしとんねんわれぇ〜!!」ジタバタ
担任「うぉおい暴れるなぁ、どうどう・・・」
437
:
名無しさん@避難中
:2013/01/05(土) 14:20:18 ID:MoGjiiek0
社会「事情は聞いた、保健から許可を貰って合流しにいったそうだな」
少女「は、はい・・・」ヒリヒリ
社会「その時に連れ添っていかなかった俺らにも責任はある・・・が、問題はそこじゃない」
社会「わざとじゃないとはいえ、お前の考え不足な行動のせいで集団に迷惑をかけた、それは分かるな」
少女「・・・はい」
社会「その歳になれば自己管理位できて当然だ、唯一の連絡手段を忘れてうろうろしていたのは頂けない」
社会「俺らがどれだけ心配してたか、分からないお前じゃないだろう」
少女「・・・」
社会「あー、まぁ・・・」ポリポリ
少女「・・・?」
社会「無事で何よりだ、一人で心細かったろうに」ポンポン
少女「!」
社会「おかえり」ナデナデ
少女「・・・」
社会「・・・」ナデナデ
少女「・・・っ、うぅ、す、すみ・・・」グスッ
社会「・・・」ナデナデ
少女「す、すみま、せんっ・・・」グスッ
社会「・・・ん」ナデナデ
少女「うっ、うぅ・・・」ダキッ
社会「うぉっと・・・」ヨロッ
少女「あ、ありがとう、ございます・・・」ヒック
社会「お、おう・・・」
少女「・・・」ヒック
社会「・・・」
-5分後-
少女「・・・」ヒック
社会「・・・」ナデナデ
社会「な、なぁ、そろそろ、これ、どうにかならんか・・・?」オロオロ
男A「自分でまいた種だろ」
女A「よかったわね」
友人「てめぇこら何少女泣かせとんじゃこりゃぶっとばしてやる!」バタバタ
男B「おー、どうどう、お前は落ち着け、な?」
438
:
名無しさん@避難中
:2013/01/05(土) 14:30:00 ID:MoGjiiek0
-さらに5分後-
少女「す、すみません、つい・・・///」
社会「い、いやぁ、俺もついな、すまん」
少女「そんなっ、私がいけないんですから、当然です」
社会「き、嫌わない?」オドオド
少女「はい」
社会「ほ、ホントに?痛くなかった?」オドオド
少女「大丈夫ですよ・・・それに実はちょっと、良かったって思ってるんです」
社会「え?」
少女「ここに来る間、どうやって謝ろうって、ずっと考えてたんですけど」
少女「沢山迷惑かけたし、どうしよう、上手く言えるかなって、自信無くって・・・」
少女「だけど、社会先生が殴ってくれたので、すっきりと言えました」
少女「あの、改めて、大変ご迷惑をおかけして、申し訳ありませんでした」ペコリ
社会「あ、あぁ、いや、分かってくれたなら、それで、うん」
少女「はい、有り難う御座います」
保健「少女ちゃん」
少女「あっ!」
少女(そ、そうだ、保健先生!)
少女(あんな事になってたけど、だ、大丈夫だったのかな・・・?)
保健「私もね、謝らなきゃと思って」
少女「え?」
保健「本当なら、一人で行かせるようなつもりは、なかったんだけど・・・」
保健「どうかしてたみたい、なんだかボーッとしてて、結局こんなことに・・・」
少女「そ、そんな、保健先生は何も」
保健「ううん、それでも謝らせて、本当、ごめんなさい」ペコリ
少女「そ、そんな、えっと・・・もう大丈夫なんですか?」
保健「え?なにが?」
少女「あ、いえ・・・なんでもありません」
保健「?」
少女(やっぱり、覚えてないのかな)
少女(いや、きっと自覚が無いだけで覚えてはいるんだ)
少女(・・・ともかく、いつも通りの保健先生で良かった)
社会「さて、と、詳しく話を聞きたい所だが・・・」
社会「もう夜も遅い、それはまた時間がある時にでも聞かせてもらおう」
社会「風呂でも入って、ゆっくり疲れでも取ってくれ」
少女「は、はい、分かりました」
社会「んじゃ、俺らは戻るか、あとよろしくな女A」
女A「はい」
友人「あたしらも、お風呂行こ」
男A「俺らは部屋に戻るか」
男B「だな」
少年「・・・」タスタス
少女「あ、あのっ、少年君っ!」
少年「・・・」ムッ
少女「今日は、本当にありがとう」
少年「・・・あぁ」タスタス
友人「あいっかわらず無愛想だねー」
女A「そういうあんたは、すっかり調子乗ってるわね」
友人「な、なにがさ」ギクッ
女A「さっきまであーんなに、『ど、どうしよう!どうしよう!』って」
友人「わ、わぁー!さぁ暖かいお風呂が待ってるぞー!!」ワタワタ
少女「・・・ふふっ」クスリ
439
:
名無しさん@避難中
:2013/01/05(土) 14:36:04 ID:MoGjiiek0
-202号室- PM9:49
友人「ふわぁ〜・・・さすがに疲れたなぁ」
女A「そりゃ、一日中歩き回ったんだからそうでしょうよ」
少女「ご、ごめんね・・・」
友人「いやいや、さっきもお風呂で言ったじゃん、気にする必要ないって」
少女「う、うん」
女A「まぁでも、今日はもう寝ましょ、明日も早いんだし」
友人「そうだねー、電気消すよ?」
少女「うん、おやすみ」
女A「おやすみ」
友人「はいはーい、明日も頑張ろー!」カチッ
少女(はぁ・・・今日は本当に色々あったな)
少女(神様が来て、保健先生がおかしくなって)
少女(迷子になって、変な石碑があって)
少女(分けも分からず消えそうになって、少年君が来てくれて・・・)
少女(・・・)
少女(あの時の少年君、かっこよかった、な)
少女(・・・)
少女(・・・?)
少女(あれ、なんだろう、この・・・)
少女(凄く、安心すると言うか、ドキドキすると言うか・・・)
少女(・・・)
少女(まぁいいや、今日はもう寝ちゃおう)
少女(明日こそは、何も起こりませんように・・・)
440
:
名無しさん@避難中
:2013/01/05(土) 14:41:21 ID:MoGjiiek0
翌朝 -食堂- AM 7:02
友人「さぁ、メシだメシだ!」
女A「朝っぱらから元気なやつね」
少女「女Aちゃんは眠そうだね」
女A「自慢じゃないけど、朝は弱いのよ・・・」
友人「低血圧そうだもんねー」
女A「別にそう言うわけじゃないけれど、なんかテンションが上がらないと言うか」
友人「あ〜、わかる」
女A「疑わしいわね」
友人「なにおぅ!これでも私だって朝は弱い方なんだぜ!」
女A「ごめん、全然説得力無いわ」
友人「そんなっ!ひどいっ!こんなか弱い乙女を捕まえて!」ウルウル
女A「はい少女、トレーとお皿」
少女「わ、ありがとう」
友人「無視すんなー!つか私の分は?」
女A「ごめんなさい、私の腕は2つまでしかないのよ」
友人「ちぇ、いいさいいさ自分でとりにいくさ」ブツブツ
女A「これで少しはテンション下がったかしら」
少女「ど、どうだろう・・・」
男A「おぅ、おはよう」
女A「おはよう」
少女「あ、おはよう」
友人「おりょ〜?あとの二人は?」
男A「男Bはまだ寝てる、少年は朝でかけたまま戻ってきてないよ」
女A「また走ってるのかしら」
男A「多分そうだろうな」
少女「・・・」
友人「ん?どした少女?」
少女「へ?な、なに?」ビクッ
友人「いや、なんか俯いてたから」
少女「い、いや、別に、なんとも・・・」ドキドキ
友人「・・・そう?」
少女「う、うん・・・」ドキドキ
友人「・・・」
少女「・・・」ドキドキ
友人「あ!少年君!」
少女「!」ビクゥッ
友人「じゃなかったわー」
少女「・・・」ホッ
友人「あんた、やっぱり昨日何かあったわね」
少女「う、うぇっ!?そ、そ、そんなこと」
女A「怪しいわね」
男A「怪しいな」
少女「な、なにもないって!」
友人「今更そんな言い訳は通用しないねぇ!さぁ今のうちに全部吐いちまいな!」
少女「う、うぅ・・・」
社会「お、いたいた、少女ちゃ〜ん」
少女「あ、はいっ!」
社会「食事中すまんな、昨日の事でちょっと話があるから、食い終わったら俺らの部屋まで気てくれ」
少女「も、もう食べ終わってるので、今行きます!」
社会「そうか?まだ時間あるし、急がなくても」
少女「い、いいえ!いきましょう!」ガタッ
友人「まてぇ!逃げるな!」
少女「よ、呼び出しならしょうがないよね〜」テッテッテッ
友人「く、くそぅ!後でじっくり話してもらうからなー!!」
社会「なんか、取り込み中だったか?」
少女「いえ、助かりました・・・!」
社会「そ、そうか、何か良く分からんが、役に立てたなら何よりだ!」
441
:
名無しさん@避難中
:2013/01/05(土) 14:48:12 ID:MoGjiiek0
社会「んじゃ、俺らの部屋で話すか、保健と担任もいるから」
少女「はい」
社会「あー、言っとくが、叱る為じゃねぇぞ」
少女「え?」
社会「んなもんは昨日のアレで十分だろ、それよりもお前の体調に付いて保健がな」
少女「そ、そうですか、わかりました」
女D「ん?」
女B「お、どうしたの?」
女D「・・・いや、なんでも」
女D(今の、確かに少女と社会だったわね)
女D(昨日、あいつが迷子になったとか言う話を聞いたけど・・・)
女D(私のせいに、なるのかしら)
女D(・・・めんどくさ)
女B「そういえば、女D?」
女D「あ?」
女B「結局さぁ、少年君の事はどうするの?」
女D「いや、昨日も言ったじゃん、もう止めだって」
女C「ほらね、言わんこっちゃない」
女D「なによ」
女C「修学旅行だからって、変に意地張らなくても良いって話し」
女D「別にそんなんじゃないわよ」
女C「どうだか」
女D「なに、やけにつっかかるわね」
女C「私はさぁ、あんたにはいい所あると思ってるから、ツルんでるけどさ・・・」
女C「もうちょっと、その衝動的な部分を直した方が良いと思うよ」
女D「・・・余計なお世話よ」
女C「はいはい」
女D「・・・」
442
:
名無しさん@避難中
:2013/01/05(土) 15:00:46 ID:MoGjiiek0
-PM 9:00 旅館ロビー-
社会「ほい、それじゃあ今日から奈良に移動しての観光になるぞー」
社会「午前中は奈良公園に行って、午後から東大寺と正倉院を回るからな」
社会「明日一日は自由行動だし、まぁ今日位は大人しく付いてこい、以上!」
ハーイ
社会「うし、じゃあ旅館の方に挨拶して、バスに乗り込め〜」
友人「で、社会達とは何を話してたの?」
少女「大した事ではないよ、体調には気をつけてって話しだけ」
友人「ほんとに?」
少女「うん、初日から崩してたから、無理はしないようにって、釘さされちゃった」
女A「そうね、辛かったらすぐに言うのよ、昨日先生から何種類か薬貰ってきてるから」
少女「あ、うん、ありがとう」
男B「おぉ、さすが優等生、抜かり無いぜ」
男A「じゃあうちの班は体調崩したら女Aに報告するってことで!」
女A「はいはい、なんでもいいから、とっととバスに乗りなさい」
男B「ちぇー、乗りワリィなぁ・・・」
女A「朝っぱらから元気なあんた達の方がおかしいのよ」
友人「ところで少年君は?」
男A「あー、なんか従業員の人から話しがあるって」
友人「へ?なんでまた?」
男A「さぁ?」
少年「・・・またせた」スタスタ
男B「おー、何の話しだったんだ?」
少年「大した事ではない」
友人「なんだいなんだい、少女も少年ももったいぶっちゃって!」
少年「・・・」チラッ
少女「・・・!」ピクッ
少年「・・・」ムッ
少女「あ、え、えーっと、皆揃ったし、乗ろう!」アセアセ
友人「お、おー?」
少女(う、なんだか、少年君と目を合わせられない!)
少女(昨日助けてもらったんだし、失礼なのは分かってるんだけど・・・)
少女「・・・」チラッ
少年「・・・」ムッ
少女「っ・・・///」パタパタ
少女(な、なんか、今日の私、変だ!)
443
:
名無しさん@避難中
:2013/01/05(土) 15:01:19 ID:MoGjiiek0
一度ここまでで区切りです、近いうちにまたお借りするかも
444
:
名無しさん@避難中
:2013/02/20(水) 15:15:20 ID:ooCa7jMc0
ちとお借り
445
:
名無しさん@避難中
:2013/02/20(水) 15:38:45 ID:ooCa7jMc0
――人には、己を綴じる糸がある。人と人には、互いを繋ぐ糸がある。
――だから、私はね、それを結ぶんだ。
――解(ほつ)れた糸を、結び直すんだ。
――それが私の存在理由。
――私たちの存在理由。
――お前にも、いつかそれがわかる日が――
ガタン
「……ん……あ」
車体の揺れか、あるいは無意識の拒否か。
そのどちらかを理由として俺は微睡みから目覚め、胸糞の悪い夢は打ち切り終演と相成った。
「……ったく」
例え舞台が終わろうとも、それ見ていた観客の記憶までが消えるわけではない。終演を迎えても、観客の心に感動は残る。
当たり前の話だ。
問題は、感動という言葉が、実際には必ずしも良い情動だけを指して言う言葉ではない、という事だ。
このけったくその悪い、吐き気すらする気色の悪さも、広義では感動という言葉の内に含まれてしまう、という事だ。
……ようはアレだ、悪い夢を見た、という事。ただそれだけの事。
どうもいかんな。こういう芝居がかった言い回しを、別に誰かに聞かせるわけでもなく、自分の脳内で繰り広げてしまう
というのは、俺の悪癖だ。まるで誰かに脳内を読まれる準備でもしてるみてえじゃねえか。あるいは、今こうして考えている
事、思っている事、やっている事、それらを全て本にでもしようとしてるかのような――
「……なわけにいくかよ」
――そんなわけにはいかなかった。今俺が考えている事、思っている事、やっている事は、世間に公表できるような類の
事じゃない。……いや、何も別に法律に反しているからだとか、非道徳的だからとか、そういった理由で公表ができないわけ
じゃないんだが――
ガタン
「おっと……」
今度こそ、車体の揺れが俺の意識を現実へと引き戻す。目的の駅への到着だ。ブレーキ音が響き、小さな無人駅へと
俺の乗った電車は停止した。
「……へぇ、ここが、ねぇ」
降り立った俺を確認し、車掌は電車を発進させる。
残された俺は周囲をぐるりと見渡した。時刻は夕刻。いわゆってしまえば、一つの逢魔が時という時間でも、ある。
446
:
名無しさん@避難中
:2013/02/20(水) 15:39:00 ID:ooCa7jMc0
一旦お返し
447
:
名無しさん@避難中
:2014/03/03(月) 08:26:11 ID:aIPs/uPQO
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
448
:
名無しさん@避難中
:2014/03/03(月) 08:27:11 ID:aIPs/uPQO
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい
449
:
名無しさん@避難中
:2014/03/03(月) 08:28:13 ID:aIPs/uPQO
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい
450
:
名無しさん@避難中
:2014/03/03(月) 08:28:45 ID:aIPs/uPQO
いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ
451
:
名無しさん@避難中
:2014/03/03(月) 08:29:12 ID:aIPs/uPQO
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
452
:
名無しさん@避難中
:2014/03/03(月) 08:30:15 ID:aIPs/uPQO
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
453
:
名無しさん@避難中
:2014/04/10(木) 01:27:44 ID:1wbjJb3g0
ksks
454
:
名無しさん@避難中
:2014/05/07(水) 21:30:47 ID:7eVe13kc0
ぬるぽ
455
:
名無しさん@避難中
:2014/06/06(金) 01:55:04 ID:G6MKJPDQ0
ぬこぽ
456
:
名無しさん@避難中
:2014/06/06(金) 06:54:29 ID:lHHHRMOM0
がにゃ
457
:
名無しさん@避難中
:2014/06/20(金) 07:33:22 ID:sKGOxfmY0
祈るよ
458
:
名無しさん@避難中
:2014/06/29(日) 20:05:50 ID:/rU7jAqI0
俺がげろぶちょな感想を書くスレっていうのを建てようと思ったけれど
絶対1000行く前に飽きる気がする
459
:
名無しさん@避難中
:2014/06/29(日) 20:29:46 ID:617vPKMY0
表板には批評スレがあるから辛口コメントはそこでいいんじゃないか?w
460
:
名無しさん@避難中
:2014/06/29(日) 20:50:23 ID:b8chRxj20
>>458
何なら俺が手伝ってやんぜ?
461
:
名無しさん@避難中
:2014/06/29(日) 20:55:01 ID:/rU7jAqI0
>>459
批評がしたいんじゃなくて個人的嗜好に基づいて創発作品に好き勝手な感想を書きたいんだ
そして感想の感想もOKなカオスで腐敗したスレにしたい(願望)
>>460
じゃあげろぶちょな感想を書くからなんか創発作品紹介してくれ
462
:
名無しさん@避難中
:2014/06/29(日) 20:57:31 ID:617vPKMY0
ならば誤爆スレで話題になってる仁科学園を見てくるのだ。しかし今、まとめがちょっと不安定になってるから気を付けてw
463
:
名無しさん@避難中
:2014/06/29(日) 21:14:58 ID:b8chRxj20
げろぶちょってどういう意味だ?w
464
:
名無しさん@避難中
:2014/06/29(日) 21:43:35 ID:/rU7jAqI0
>>463
道ばたに吐かれたゲロと同程度っていう意味の造語、今日生まれたばかりです
>>462
作品の指定が無かったからウィキの表紙一点買い下の三本読んできた
カップルウォッチャーととろ
カップルウォッチャーととろvs.幸せ撲滅計画(1)
カップルウォッチャーととろvs.幸せ撲滅計画(2)
とろろで検索して見つからなかったからどうしようかと思ったけど
とろろじゃなくてととろなのね
シェアワールドって時点で読む気しなかったんだけどコミカルですげー読みやすい
不良三人組や先輩後輩と卓上同好会がすごく魅力的だった、卓上同好会入りたい
あとキャラクター知らなくてもすらすら読める形に仕上がってるのをすごく褒め称えたい
ただ登場人物が多くてととろちゃんがどちらかというとメインより引き立て役なのが残念
コスプレしてまで荒事に乱入する根性を持った女の子がどうしてそこまでするのか
そこまでする性格にいたったのかがこの三本読んだだけじゃ分からない
かといって続きを探して読みたいかというとこの三本で綺麗にまとまってるから
たぶんそこまではしないだろうなってぐらいだった
あともしかして後輩ってラブコメスレの沼ガールかな
465
:
名無しさん@避難中
:2014/06/29(日) 21:47:23 ID:/rU7jAqI0
そういえば仁科学園で思い出したけど雑談スレでおすすめされてたワンオラクルって
もう削除されてるのかな、白紙しかひっかからぬ
寝る前にあと一本ぐらいならげろぶちょな感想が書けそうなんで
シェアワールド以外の短編おすすめしておくれ、リミットは十時ぐらい
466
:
名無しさん@避難中
:2014/06/29(日) 22:36:55 ID:Fp05bZpA0
>>465
「先輩後輩シリーズ」
「演劇部シリーズ」もよろしく。
どちらもコメディタッチです。
467
:
名無しさん@避難中
:2014/06/29(日) 22:39:13 ID:b8chRxj20
乙
感想も創作の一種なんやなと思わせてくれる
でも読む気しなかったとか思ってても言うなよう・・・悲しいじゃないか
仁科のは単にまとめ作業が間に合ってない、
タイミングの問題じゃねえのかな?
468
:
名無しさん@避難中
:2014/06/29(日) 22:40:50 ID:YJrcdkxw0
読む気おきない言う割にちゃんと読んでるから嫌いじゃないぜw
469
:
名無しさん@避難中
:2014/06/30(月) 20:13:28 ID:cBj2A2do0
>>466
シェアワールド以外って言ったじゃない!まぁ読んできたけどな
ただ演劇部シリーズは演劇部でウィキ検索しても
タイトルに演劇部って入ってる作品が見つからなかったしどれかわからんしパス
とりあえず先輩後輩でウィキ検索してタイトルに先輩って入ってたの読んできた
先輩、先輩の秋です!
俺が読んでないところで進展してやがるこいつら!
個人的に後輩ちゃんは妖怪めいた存在なのかと思ってたけど、もしかして普通の女の子なのか!
それを後輩ちゃんの姿からじゃなくて先輩の心の声から描写するのがうめぇ
後輩ちゃんって実は青春にありがちなちょっと問題を抱えただけの普通の女の子だったんだなぁ
けどそれをほんの少し先に生まれただけの先輩が全部背負うのは重すぎる
先輩が「早く気の置けない友人や素敵な彼氏を見つけて俺離れして欲しい」って思うのは当然なんだけど
そういう判断をこの年齢でやっちゃうから先輩は格好いいんだと思う
普通は若さゆえのあれこれに振り回されたりしそうなもんなのに
>>467
乙あり。シェアワールド読む気しないのは誤爆スレやらなんやらで
内紛を外に持ち出して暴れ回る住人だか荒らしだか抱えてた頃をチラ見したから、
シェアワールド自体に良いイメージないのよ、あと個人的な感覚だとシェアワールドって
連続してそれぞれの書き手同士で影響し合う性質上
追いかけてないこちらからだと絶対原作が手に入らない
二次創作作品みたいな受け取り方になるから
原作知らない二次創作読んでもなーって感情に近い物がどうしてもつきまとうんだよね
>>468
読まないで感想を書くのは相当なテクニックを要求されるからなw
470
:
名無しさん@避難中
:2014/06/30(月) 20:22:02 ID:cBj2A2do0
あ、普通に褒めてしまった
これなら該当ウィキに感想つけたほうが良かったか
現代物が続いたんで次はファンタジー系読みたいな
おすすめ作品紹介してクレクレ
471
:
名無しさん@避難中
:2014/06/30(月) 20:48:26 ID:QlZrJbZs0
それならもうファンタジーっぽいスレを見るのが一番早いが中身を把握してないから勧めようがないぜw
まとめあるから適当に見てきてはどうか
472
:
466
:2014/07/01(火) 20:25:10 ID:k2n/WYYY0
>>469
細かな感想、ありがとうございます!いち住人としてやっぱ嬉しい。
ただ、「演劇部」シリーズはwiki内検索して頂いたにもかかわらず、たどり着けなかったのは、なんか申し訳ないなぁ…。
今動いているシリーズのひとつとして名前を出してみたけど、見て頂く側からのサービスが足りんかったかあ 。
もし、wikiを編集する事あったら参考にさせて頂くぜ。
またきてね。
473
:
名無しさん@避難中
:2014/07/01(火) 21:04:08 ID:MvJcemeE0
>>471
読んでもないスレを薦めるとは相当なテクニシャンだな
ファンタジーっぽい作品を創作するスレの
『勇者「俺達四人そろえば怖いものなし」』読んできた
頭ハッピーセットは名言
セクロストークからの戦士さん格好いい抱いて!からの展開が急転直下
そして間に挟まる勇者くんと賢者ちゃんのラブコメがかわいい
お前らそんなことしてる場合か!っていう状況がドラマを生み出すんですね
中盤にかなり重たい要素を盛り込んでいただけにラストは希望がきちんと描かれていいい
ただラストに向けた戦士さんのごにょごにょからの流れの
魔王?の不安要素?の提示があった割には明るく終わってて謎が残る
四天王最後の一人が示唆した不幸は現実に昔にあったことで
おそらく似たような状況になるであろう勇者くん達が
それにぶち当たらないってどういうこと?
示唆された不幸は勇者くんたち個人がどうこうっていう問題じゃなく
人間のおぞましさが原因なだけにそれがあっさり解消されるとも思えなかったんだけど
まぁ最終決戦後の勇者くんたちが超絶頑張ったか人間がちったぁマシになったと
思えばいいのかな
474
:
名無しさん@避難中
:2014/07/01(火) 21:47:05 ID:MvJcemeE0
次は何を読もうかね
げろぶちょな感想でよければ自薦他薦問わんよー
>>472
げろぶちょ感想によく常駐スレの作品を薦めようと思ったなw
もし編集するなら有名シリーズは専用タグつけてシリーズと分かるようにまとまってると
ふらっとやってきた自分のような外野にも見やすいかもしれない
サイドバーの更新履歴を確認する限り2012年末で編集止まってるみたいだから
今は新規が読めない名作が過去スレにいっぱい埋まってるんじゃないかなぁ
そのままだと新しい書き手さんも過去作確認できなくて入りづらいだろうし
編集に慣れて無くて大変だと思うなら既存テンプレートのままでいいから
未収録作追加するだけでも結構違うと思うよー
475
:
名無しさん@避難中
:2014/07/01(火) 21:57:30 ID:has25eYI0
シェアワは創発内にあるシェアワを更に合体させようとしていたスレが地味に好きでした
>>474
では、和風な創作スレの彩華シリーズを推薦
476
:
名無しさん@避難中
:2014/07/01(火) 21:58:18 ID:7D0EmWZc0
あ ん た が 神 だ
みんな感想に飢えてるだろうからな。どれで書いても喜ばれると思うぞ。
特にもう感想の望めないような昔のやつはな。
477
:
名無しさん@避難中
:2014/07/01(火) 22:02:08 ID:c6Y1X/HE0
キャラスレとかロボスレとかあるけど中の人がけっこう本気出したのがまとめられていないから困る。
478
:
名無しさん@避難中
:2014/07/01(火) 22:32:11 ID:7D0EmWZc0
まとめwikiでタグ付けてシリーズ分けってのはいいかもしれんね
まあ仁科とかだと最終的には作者別にそれぞれ別名が付くみたいな感じになりそうだけどなw
479
:
名無しさん@避難中
:2014/07/02(水) 01:00:50 ID:zfJ0R2G.0
俺も他人の小説に感想書くこと自体は好きなんだけど
どうしても切り口が文章校正みたいな方向に行って煙たがられるので
それが許される場以外では自重している(´_ゝ`)
480
:
名無しさん@避難中
:2014/07/02(水) 21:42:59 ID:ly5s2K360
>>475
ぎゃあー、和風な創作スレって創発ウィキに作品まとめないじゃんよ
とりあえず創発ウィキにhtmlあったからそこで彩華で検索かけたんだけど出てこなかった
htmlも2スレ目にはなかったから見つけられなかった、すまぬ
改めて作品のあるURLを教えて貰えれば読みに行くよ
あと
>>475
が言ってるクロス企画ってこれじゃないかな?
現行スレも生きてるみたいだよ
創発シェアワスレクロス企画(仮)
http://www26.atwiki.jp/sousaku-mite/pages/1235.html
481
:
名無しさん@避難中
:2014/07/02(水) 21:43:33 ID:ly5s2K360
とりあえず今日は魔女っ子&変身ヒロイン&魔法少女創作スレのウィキから
ディーナ・シー 魔法少女地獄
タイトル通りの地獄っていうか、魔法少女っていう力を流し込まれた街の話
この話の何が好きかっていうと魔法少女や魔女っ子っていう言葉から得られるイメージを
ボキッとへし折ってくれるところ
みんな魔法や魔力があるんだろうけど力の使い方が魔法少女の使い方じゃない
魔法少女の名を冠しただけの無法街というかヤンキー?極道?の抗争が前提にあって
そこに魔法の力っていうファンタジーが加わって殺傷力が上がってる感じ
文体がその街に雰囲気にあってて読んでておおーってなるのが好き
前にも読んだことあるけど数年開けて読んでも楽しめた
個人的にエンマちゃんがすごく好き
続きも読みたいんだけどウィキにも収録されてないから
そもそも存在してないって思った方が良さそうで残念
482
:
名無しさん@避難中
:2014/07/02(水) 21:48:29 ID:ly5s2K360
>>476
シェアワールドは読む気しないと明言してる人間が神であってたまるか!w
>>477
ロボスレウィキやら仁科ウィキやら創発ウィキやらなら左上の@メニューから
新規ページ作成選んでタイトル入力してワープロモード選んで本文コピペするだけでいいんだけどね
今はスマホ使いの人も多いだろうから編集したくても出来ないひとが多そう
>>479
文章校正を活用して良い点のみをあげるのに徹するのならその感想読んでみたい
どうしても文章校正で悪い点を並べると感想と言うより批評よりになるからなぁ
483
:
名無しさん@避難中
:2014/07/02(水) 21:58:15 ID:ly5s2K360
今日はもう寝るけどまた何かおすすめがあったら紹介しておくれ
URL貼ってくれてもいいのよ
484
:
名無しさん@避難中
:2014/07/02(水) 22:11:56 ID:Tq7heKBg0
>>482
まとめようにもログが残って無かったりwww
数少ないのがこれくらいか
http://www26.atwiki.jp/sousaku-mite/pages/1200.html
485
:
名無しさん@避難中
:2014/07/02(水) 23:48:59 ID:mEhqEdGs0
でも読んでるじゃん!!>シェア
何だかんだで文章表現って日本語的に正しけりゃそれでOKってだけでもないからな
変なところだらけでも面白いのは面白いし、正しかろうがつまらんのはつまらん
まあどうすれば伝わるか、演出できるか、よく悩みながら書くのは当たり前だけど
486
:
479
:2014/07/03(木) 01:13:25 ID:UJLZ2T9I0
>>482
むかし文芸部的な場所で部誌の編集やってたときの癖が抜けなくてな……
俺としては、批評という行為の本懐は粗探しでなく「作品の価値を引き出す」
ことだと思ってるので、面白いと思ったら言葉を尽くしてクソ褒めるわけだが
日本語がおかしくて躓くようなことが多いと、だいたい感想そっちのけで添削祭りになって
終いには作者から「国語の先生かてめーは!」と怒られる。
487
:
名無しさん@避難中
:2014/07/03(木) 19:28:23 ID:cZhUvBfg0
「文章はちょっと好みじゃないけど」とか「主人公が合わないけど」とか
ついつい付け加えたくなる気持ちは分かるw
488
:
名無しさん@避難中
:2014/07/03(木) 21:06:55 ID:yl2FYEdU0
>>484
軽快なテンポでさくさく読める良作です
彼方ちゃんと直りんちゃんの掛け合いもかわいらしいです
以下はネタバレ感想なので未読の方は作品読了後にご覧ください
無限彼方大人編〜Archenemy〜
http://www26.atwiki.jp/sousaku-mite/pages/1200.html
クロゴキブリのおさらいを読んでしまった、読んでしまったorz
っていうかゴキブリいやああああああああ
ネタバレになるとかそういうのどうでもいいぐらいゴキブリいやあああああああ!
最後の鼻に飛んでくるところとか鳥肌立った!!
お前らも何も知らずに読んで鳥肌立てばいいのに!!
489
:
名無しさん@避難中
:2014/07/03(木) 21:15:21 ID:x/sBn.FQ0
>>488
ありがとう
490
:
名無しさん@避難中
:2014/07/03(木) 21:18:58 ID:yl2FYEdU0
そろそろ週末で時間が出来るからちょっと多めにおすすめしてくれても大丈夫
ウィキ収録済み作品だと探しやすいので助かります
>>485
出された物は何でも食べるよ!でもなんとかファイトだけは勘弁な!
あれ長いし投下も早いし追いつける気がしない
491
:
名無しさん@避難中
:2014/07/03(木) 21:35:05 ID:x/sBn.FQ0
真剣に書いたとなるともう秘密のスレのしかない……
492
:
名無しさん@避難中
:2014/07/05(土) 14:30:10 ID:yyk0otVY0
リクエストは限界があると思うんだよね
創発板の住人ってあんまり自分の薦めないだろ
だからって他人様の薦めようって気にも・・・なるかな?
493
:
名無しさん@避難中
:2014/07/05(土) 21:33:44 ID:Sq.1tGaE0
専ブラの調子悪くていつもみたいに書き込めない
>>492
限界かぁ、だったらもうげろぶちょ感想は今回で一旦やめとく
>>491
エロは感想つけるの難しいなー
494
:
名無しさん@避難中
:2014/07/05(土) 21:36:41 ID:Sq.1tGaE0
今日は雑談スレで紹介されてた作品読んできた、収録してくれた人ありがとう
私立仁科学園まとめ@ ウィキからワンオラクル
http://www15.atwiki.jp/nisina/pages/207.html
これおすすめされてた理由が分かる気がする、読んでると心の細かい傷をえぐるえぐる
こっちはもういい年なのにこんな思春期物にえぐられるってどういうことよ
でも個人的に主人公もその周辺も全部いけ好かない
こう思わせてくれるってことはすごくよく書けてるってことだし書き手の意図通りなんだろうなー
なんか負かされたようですんごい悔しい
また十年後ぐらいに読んでみたいなこれ、なんか読む時期によって印象が変わりそうな気がする
495
:
名無しさん@避難中
:2014/07/05(土) 21:44:21 ID:Sq.1tGaE0
なんか限界とか言われて悔しいのでおすすめ作品のURL置いておく
長い話が読みたいなら連載中のモブ少女、さくっと読みたいなら唇の皮をおすすめ
モブ少女
http://www26.atwiki.jp/sousaku-mite/pages/865.html
新ジャンル「今にも剥がれそうで剥がれない唇の皮」
http://www26.atwiki.jp/sousaku-mite/pages/159.html
496
:
名無しさん@避難中
:2014/07/06(日) 00:21:25 ID:ijbErmVw0
>>494
すげーわかるわw
青臭さにイライラするっていうか、ストレス溜まるよなw
それがすごい
497
:
名無しさん@避難中
:2014/07/06(日) 18:21:30 ID:bjlwWDRU0
◆aPSupcKIa.スレで何かお願いします!
498
:
◆aPSupcKIa.
:2014/07/06(日) 19:04:50 ID:LEfd2HdA0
!?
499
:
名無しさん@避難中
:2014/07/07(月) 20:21:23 ID:EGkEmBl.0
>>498
しっしっ、自分のスレから出てこない。ハウス!
500
:
名無しさん@避難中
:2014/07/07(月) 20:22:07 ID:EGkEmBl.0
>>497
まとまってもない、あらすじもない中から選んで感想ってまた面倒くさい指定を
とりあえず何かって指定だったんでタイトルから選んで読んできたよ
海の男と箱入り娘
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/3274/1388211656/51-55
リッケちゃん可愛い、とても可愛い
よく考えたら見た目コンテナなのに可愛いってすごい
視点の健哉さんがいい人でわりとリッケちゃんに好感持ってるのがいいんだろうね
あと健哉さんは気にしてなかった分だけこっちはリッケちゃんの見た目が超気になって
想像力をかき立てられる。病気が病気だし美少女なんて都合の良いことはないんだろうけど
どんな見た目だったとしてもきっと好感の持てる女の子だろうなって思う
終わりがかなり近くて切ないことになりそうなのは分かってるんだけど
この先の二人もちょっと見てみたい
501
:
名無しさん@避難中
:2014/07/07(月) 20:26:19 ID:EGkEmBl.0
にしても三題噺スレ懐かしいなー
創発ウィキに収録されてる作品増えないかな
502
:
名無しさん@避難中
:2014/07/07(月) 21:31:51 ID:p2ynJsgc0
ごめん。
でも感想ついてない作品見ると「チャンスだ!俺が俺俺俺がレスしてやんよ!」って思うだろ?
503
:
名無しさん@避難中
:2014/07/08(火) 10:01:28 ID:kchJqFxA0
つまり投下してここに晒せば感想を書くと把握
504
:
名無しさん@避難中
:2014/07/08(火) 18:01:50 ID:oNfOis6Q0
そうはさせるか!
505
:
名無しさん@避難中
:2014/07/08(火) 19:51:40 ID:q3KnGSKg0
>>502
チャンスだとかそんなこと考えたこともなかったので共感できぬ、すまぬ
>>503
こいやー、げろぶちょな感想をぶちまけてやるぜー
>>504
じゃあ代わりに創発作品紹介しておくれ
女装か男装してるキャラが出てくると嬉しい、DSはチェック済み
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