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獣人総合スレ 避難所

864わんこ ◆TC02kfS2Q2:2016/06/05(日) 20:50:29 ID:RJgmiuHQ0
 「よく見つけたね」と、因幡リオがぼくらの背後から感心する。そんな因幡に対して芹沢は誇らしげにガッツポーズを見せつけた。
 「ってかさ。リオなら知ってると思ったけどさ」と、人が行き交う歩道で芹沢は先頭をきった。
 芹沢に引き寄せられるようにぼくは芹沢の後を追い、いつもと違う放課後に足を踏み入れる。
 すっかり誰もかも夏の装いに身を包み、芹沢ら女子たちはふんわりと大人と少女の境目の匂いを振り撒く。
 夏が訪れるのも年に一度、大人の階段登るのも年に一度のステップだし。

 しんがりを勤めるのは委員長の因幡だ。普段なら真面目のまー子の視線でぼくらを引き留めるだろうが、きょうはちょっと共同犯。
 きちんと着こなし、きちんと足元はニーソックス。きらりと日光に反射するメガネで因幡の目はよく見えなかった。

 「どうしたの、犬上」

 あんまり暑い中駆けるから。
 それでも因幡はぼくの背中を指でつつく。薄くなったシャツと因幡の細い指がくすぐったい。

 「あー。こんな暑い日はプールにでも飛び込みたいよ。ってか、犬上。今、わたしのスク水姿想像した?」
 「……いや」

 県道から路地に入り、住んでいる街なのに存在を知らないような小路にたどりつく。

 そこは無彩色のアーケード、大人がすれ違うだけで窮屈で、あろうことか段ボール箱やらビールケースやら積み重ねられた横丁。
煤けた窓には申し訳程度にビニルテープで補強されているありさま。燈は蛍光灯だけの薄暗さで、シャッターの閉まった店だらけの悲壮感。
 ぼくらが立ち入るには躊躇いを禁じ得ない空間だが、芹沢は獣道を掻き分けるが如く進む。こんな芹沢のいちいちした行動さえも
きっと後々には代わりがきかなく、金銭に代わることのないものになるのかな。

 「ここ、ここ」

 闇夜に浮かんだ月。
 たった一件燈を灯し、ぼくらを出迎えた店に到着した。
 どう見ても民家。昭和のモノクロ映画の一場面を彷彿させる土間に玄関口。低いアングルからカメラを据えて撮影すれば
人の息遣いを間近に感じることが出来る。
 芹沢はぴょこんと遠慮なしに玄関に飛び入ると、屋内に向かって明るく大きな声で誰かを呼んでいた。

 「あー、どげんした。今日(きゅ)は友達(どし)連れですかい」

 大柄のヒグマの親父がひょこりと現れた。シワだらけのシャツに短パン。さらに聞きなれない訛りでぼくらを出迎えた親父。
 この世との折り合いが上手くいかずに早々隠居を決めた……という印象だ。

 「パンダみっつね。わたしは練乳多めで」
 「なにそれ?パンダ?」
 「ま。リオ、犬上。待ってみ」


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