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獣人総合スレ 避難所

823わんこ ◆TC02kfS2Q2:2015/02/22(日) 19:31:42 ID:MkSoj18Y0

     #


 街が動き出す時間だというのに、外は薄暗いという不精者。
 ただ、アスファルトの路面は雪化粧で明るく見える働き者。

 朝になれば雪が積もるだろう。そんな予想が当たるなんて、老ネコ侮りがたし。
 寒さで携帯のアラームが鳴る前にに、泊瀬谷は目を覚ましていた。肩をすくめながら布団から抜け出すと、本ばかりの棚に囲まれた
男子の部屋が変わらずに存在していた。

 ぎゅっと襟元を掴む。ヒカルのジャージだ。くんくんと襟首の匂いを嗅ぐ。
 一晩共にした、ゼッケン「犬上」の体操着は、泊瀬谷の体温でなま温かかった。

 「ヒカルくん、寝てるのかな」

 机の上に置いていたイヌのカバーが着せられたティッシュは泊瀬谷が部屋に入ったときと変わらない姿だった。
ゴミ箱も空っぽなのも昨晩と同じだ。くんくんと鼻を過敏に鳴らしても昨晩と同じ匂いがするだけだった。
 ほっとしたような、口にはしてはいけない安堵感が泊瀬谷を責めた。2月下旬はまだ寒い。

 「ヒカルくん、おはよう。よく眠れました」

 ヒカルは居間で本を読みながら暖房にあたっていた。栞を挟んで本を置くと、すっくと立ち上がる。
 泊瀬谷は「いいよ、いいよ」とヒカルをソファーに座らせて、深々とお礼を言った。
 
 「朝早いね」
 「はい」
 「じゃあ、先生帰るから。適当に朝はどこかで食べるし」

 いつでも会えるのに、千年の別れに匹敵する思い。いや、いつでもとは言えなくなる時期が来ることを踏まえてか。
 泊瀬谷が犬上の家をあとにしようと玄関を出たとき、家の中に向かって叫んだ。

 「せんせい!ありがとうございます!」

 ヒカルは一瞬きょとんと目を丸くしたが、自分が泊瀬谷に提案したアドバイスを思い出して膝打った。
 泊瀬谷は「先生はわたしだぞ」と頬を赤くしながら、薄っすらと色塗られた白い町をブーツで足跡を残していった。
  
    おしまい。


「にゃーにゃーみー!」
http://dl6.getuploader.com/g/sousaku_2/922/nekonohi2015.jpg


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