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獣人総合スレ 避難所
821
:
わんこ
◆TC02kfS2Q2
:2015/02/22(日) 19:29:48 ID:MkSoj18Y0
寒さなんか溶けちゃうくらい、頬を赤らめて真冬の街を一緒に歩く。
指と指を絡ませあって、イヌの優しい毛並みに触れる。ぐいと強引に、半ば遠慮がちに自宅へと引っ張るヒカルの後ろ姿が、
なんだか照れくさく、ついつい視線を反らせてしまう。否定をしないのは肯定の意味。こましゃくれた子供のような理屈は
今夜限りでいいから通して欲しい。 ネコの泊瀬谷は、そんなイヌのぎこちない真っすぐさを独り占め出来る夜が待ち遠しくも、
恥じらいを隠せなかった。やがて、二人は住宅街へ飲み込まれヒカルの家の前で足を止めた。自転車の音も口を閉じた。
「着きました。先生」
「……ここでヒカルくん、育ったんだね」
泊瀬谷には『犬上』の表札がやけに堅苦しく見えた。ヒカルは玄関の鍵を開けると、自分の担任教師を家に誘った。
もじもじしているオトナを蔑ろにするようにヒカルはずかずかと家へ入っていったけど、オトナはオトナの殻に閉じこもったままだ。
「やっぱり、だめだよね」
敷居を跨いだ後に、泊瀬谷は足を止めてヒカルを困らせた。
「先生だからって、生徒の家に……」
「大丈夫ですよ」
「それに、誰か来たりして怪しまれたり」
「ぼくの父って、一応物書きしてるから、出版社の人がよく出入りしてるんです。特に女の人。ネコの人。
父は優し過ぎるから、若い女の人がよく担当になるんです」
「もしかして、わたしに」
「『出版社の人です』って言ってれば、周りは分かりませんよ。先生」
言葉を返すことを拒んだ泊瀬谷は、うんと頷くだけだった。
ヒカルから誘われるがままに、泊瀬谷は玄関に腰掛けて、ブーツを脱ごうと脚を組んでファスナーを下ろした。
恩師の背後に立ち、あまりにも無防備なうなじを晒す姿をヒカルはじっと見ていた。後先考えることを果敢にも捨ててしまえば、
泊瀬谷のうなじを突いたりすることだって、尻尾を掴むことだって、はたまた無抵抗な体を後ろからぎゅっと男子高校生の欲望のまま
欲しいままに支配してしまうことさえも出来るのに。そんな姿を許してしまう泊瀬谷は気にもせず、必死にブーツを脱いでいた。
ヒカルのような年下の者が見ても手を差し伸べたくなる光景。それでも泊瀬谷が脱ぎ終わるまで手を出さずにヒカルは待ち続けていた。
玄関にヒカルのスニーカーと共に泊瀬谷のブーツが並ぶ。犬上の家の玄関ではとんと見られなかった光景だった。
泊瀬谷が上がると中身を失ったブーツは気を緩めたのか、踝からヒカルのスニーカーの方へと、くたっと折れた。
「……」
「どうしたの」
「なんだか、小さいときを思い出しちゃって。すいません」
小さい頃のヒカルを知らない泊瀬谷は、玄関で待つ幼き頃のヒカルの姿を想像で補うしかなかった。
今よりも、小さく。
今よりも、幼い声。
疑うことを知らず、目に入るものを信じる。
泊瀬谷だけのヒカル像。誰かに見せるためでなく、誰かに聞いてもらうためでない、
自分勝手で融通の効かず、誰かからも咎められることのない世界。
自分の担任が、そのような妄想をこね回しているとはつゆしらず、ヒカルは泊瀬谷を自分の部屋に通すことにした。
「いいですか?」
「大丈夫!遅くなっても大丈夫なように着替え持ってるから!」
「え?」
泊瀬谷は「下着の」と付け加えようとしたが、淡い青少年の為に口を閉じ真実を隠した。
もはや会話文として崩壊していても、なりふり構わず泊瀬谷は突き通す。だって、オトナだもん。
「でも……着るもの、ないですよね、上に。すいません。そうだ。ぼくのジャージ着てください」
「ヒカルくんの?」
「中学のときのですけど、ぴったりだと思うんですが」
今年一番のプレゼントだ。泊瀬谷の胸は高まった。
ただ、服を着る。それだけなのに、ヒカルの一部を手に入れたような。一部でもいいから手に入れたのならば、
ヒカルのすべてを知った気にもなれるという勘違い。
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