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獣人総合スレ 避難所

805わんこ ◆TC02kfS2Q2:2014/07/16(水) 19:44:37 ID:RBA6yh0k0
 ヒカルがリオに感付かれる前にこの場から逃げ去ろうと踵を反したと同時に、リオの愛しの『彼氏様』から軽々しい声が飛んできた。
逃げ場 、ナッシング。逆らうは辱しめの嵐。『カピバララーメン』なんかに夢中になるんじゃなかったと悔やんでみるものの、
もはや後の祭りだった。つかつかと近寄るモエは珍しいものをみるように目を丸くしていた。

 「犬上もこんなところ来るんだ」
 「いや……、本屋さん寄ろうと思って」
 「ウチら、デートだよ。放課後デート」

 愛しの『彼氏様』は女子力フルスロットルでピースサインをつきだした。同性同士だから遠慮はいらない。
女子高生同士の百合百合タイム、リオと『彼氏様』なモエのお買い物は綿菓子の味がした。

 「モエ、こんなのどうかなぁ。赤フレーム見付けたんだけど」
 「リオ!いいじゃん、これー」

 伊達メガネが欲しくって、モエはリオを連れ出した。
 メガネっ娘のリオが選ぶメガネに興味もあるし、いち早くリオに自慢出来るし。
 ごちゃごちゃした店内にディスプレイされた伊達メガネからは、知性とおしゃれ心がほんのりとにじみ出ていた。

 「そーだ。犬上もしてみたら?」
 「何を?」
 「決まってんじゃん。だーてーめ」

 思考と行動が同時のモエの手には、空色のフレームが瑞々しい伊達メガネが収まって、ヒカルが返答を濁しているいる間に
あるべく位置に掛かった。白い毛並みのヒカルの顔に一輪のすみれが花咲く。
 メガネは初めてだ。多少、視界が狭まったことだけが気にかかる。
 鏡に写った自分の姿に対して、妙によそよそしさを感じた。
 オトナになったら、こんな自分になるのかもしれない……と。

 「メガネ男子だっ。これでご飯三杯はいける」
 「は?」
 「だって、メガネは男子をドSにするんだよ?女子喜ばせなさいよー」
 「ドSが?」

 狂喜に沸くリオの言葉と自分の姿をちょっとした想い出にして、ヒカルはそっと空色の伊達メガネを外した。


     #


 梅雨も明けたと言うのに、本を枕にして不意に目覚めた朝は、しとしとと霧雨で幕開けを迎えていた。
 もはや急がなければ遅刻は必至の時間だぞと、アナログ時計が報じる。

 昨日買った本に夢中になって、ついつい夜更かししてしまい、気がついたら普段着のまま夢の中。
 とにかく、学校への支度をしなければと肝を冷やして制服に着替える。最悪の事態を思い浮かべては、無心に事を進める。

 朝ごはんも食べずに学校へと急ぎ、自転車を走らせているとまぶたに霧雨がこれでもかと吸い付いてくる。
拭っている暇はない、水と風を切りながら、校門へと続く坂道を一気にかけ上った。胸の奥からはあはあと暑い息が立ち込める。
その甲斐あってか校門には何とかセーフ。まとわりつく水滴を拭いながら、土足場で靴を脱ぐと、蒸れたにおいがぼんやりと立つ。
 廊下では「おはよう」の挨拶そこそこに誰もが皆一日の始まりに備えていた。


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