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獣人総合スレ 避難所

788名無しさん@避難中:2013/11/24(日) 18:30:38 ID:fnBtgo/I0

 「もう一ヶ月か……」

 咥えた煙草の煙がやけに澄んで見える。汚れ塗れの世間よりかは煙の方が清く見える。
 私は携帯灰皿に吸いかけの煙草を押し込んで、校舎の屋上から浮かれた町並みを眺めていた。
 もうクリスマスなんか関係は無いと、とっくに切り捨てていたが、どんなに抗おうとも時の流れには逆らえないと知った二十歳の夜。
父との死闘が遥か昔のように流れ去り、私の眼帯だけが古傷を癒す。父など……、私の記憶には無い。

 「獅子宮せんせー」

 背後から叩くように聞こえる声、まさに彼女は乙女だ。
 私と同じ歳だというのに、子猫の頃を引きずる彼女は泊瀬谷と呼ぶ。
 私の勤める学園で現代文を教える泊瀬谷だが、些か少女趣味過ぎるのが難点だ。私がかい潜ってきた修羅場とは別世界に生きてきたから、
それはそれで理解は出来るが、闘いに明け暮れていた頃の獅子宮玲子と出会わなかった事を幸いだと思え。

 「あと、一ヶ月ですね!」
 「そうだな」
 「プレゼント、どうしましょうかね!」

 またも私に無縁なフレーズが現れた。
 プレゼントか……。クリスマスイヴの夜にたむろする不逞なる餓鬼共にナックルパンチならばプレゼントしたことはあるが、
リボンや包装紙で飾られた物など私にはもはや関係無い。仮にも頂ける物ならば、血の滴るような生肉でも望もうか。一人マンションで
憂き世をえぐるように食したいと。それを泊瀬谷に伝えた所……。

 「獅子宮先生、肉食系ですね!」

 きっと泊瀬谷は勘違いしているのだろう。何しろ泊瀬谷は乙女だ。
 泊瀬谷の脳内ではクリスマスの夜に寄り添う野獣のような男を描いているに違いない。
 私は携帯灰皿をズボンのポケットにしまいながら、マリアナ海溝よりも深い呼吸をしていた。

     −−−−−−了−−−−−−


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