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獣人総合スレ 避難所

772『タイムカプセル』 ◆TC02kfS2Q2:2013/08/27(火) 20:03:23 ID:Hcu2UIes0

 髪の長い娘がざっくざっくと公園で穴を掘っていた。
 陽射しの強い夏の真昼間、立木が落とす濃い影の元ひたすらシャベルで掘り起こす。
 シャベルのリズムに合わせて束ねた髪が揺れ、一言も喋らず一心不乱に土の中を見つめていた。

 「ルル姉、何やってんだ?」

 声をかけられたことすら気付かずに、ルルという名の娘は穴を掘る。
 ルルは人だ。ケモノたちの住むこの街では珍しい。ただでさえ目立つ存在なのに、可憐で華奢な体で重いシャベルを扱う姿は
どう転んでも目を引く。やがて、息も荒くなり一休みとシャベルを放り出すと、傍らにいた少年の足元にからんと転がった。

 「ルイカ、見てたの?」
 「ルル姉、訳わかんねぇよ」

 ルイカと呼ばれた少年はケモノだが、あまり見ぬ種族ゆえやはり目を引く。やや耳はシャベルのように尖り、やじりのように
目つきのきついカルカラというケモノだった。
 ルルとルイカを繋ぐのはたった一筋の親族であること。種族は違えど系譜が繋がると逃れられぬ関係となる。
 ルイカはルルと見えない鎖で繋がれているようなしがらみを足元に感じた。

 「見つかんない。どこにも」
 「はあ?何がさ」
 「タイムカプセル。わたしがちっちゃいときに埋めたの。覚えてるでしょ?」
 「なんだよ。ガキくせ……」
 「ガキのくせに人をガキ扱いするなんて大層な様ね」

 茶色く窪んだ土、黒くうずたかく盛られた土、そして色白の娘。どれもこれも不釣り合いで、ちぐはぐで。
 それを繋ぐタイムカプセルさえも見つからない。

 「木の箱に入れてたの。大人になったら掘り起こすんだって」
 「土に返ったんじゃね?」
 「将来、思い描いた自分になれてるかって……どうか。大人になった自分への手紙だね」

 無いものはない。求めても戻ってきやしないタイムカプセル。この星を捨てて遥かかなたへ飛び去ってしまったのか。
 ルルは手を払い、また一度地球の裏側にまで通じるのではないのかという勢いで再び穴を掘りはじめた。

 ルイカはルルの姿に一種の後悔を感じた。しかし、ルルに弱みは見せられぬ。

 (ルル姉が埋めた後、おれが掘り起こしたんだよな)

 ルイカの記憶は確かだった。
 そのタイムカプセルはルイカの自宅の机の中にある。土にまみれた木箱は眠りを邪魔されてルイカの手元にあるのだ。

 「ふう。休憩!ルイカ、穴、見てて!」
 「おれが?何でだよ」
 「危ないでしょ?掘りっ放しじゃ!わたしここにいるからアイス買ってきて!」


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