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獣人総合スレ 避難所
760
:
「青い画」
◆TC02kfS2Q2
:2013/06/03(月) 23:34:00 ID:VejPUCRk0
プールでイヌが溺れた。
誰も疑うことは無かった。
梅雨の一休みの中、さんさんと水無月の太陽に照らされるなんて、なんという贅沢。
苦手な水泳が大手を振ってサボれるなんて、なんという贅沢。
スク水姿の女子に囲まれるなんて、なんという贅沢。
救い出されて尻尾を丸めた果報者のイヌは恥らいも無く無様な姿を披露していた。
彼女……、そう。彼女はコンクリ打ちっぱなしのプールサイドにて仰向けに、濡れた紺色のスク水に身を包んで息も荒い。
ここが安楽なる保健室のベッドでないことは我慢してくれればよいが、生憎ここは青空の元のプールだ。多少の犠牲はやむ得ない。
小さな体からはぁはぁと命の息吹が湯気を立たせて、ぽっこりお腹が上下に揺れる。空を流れる雲たちがやけに速い。
「まったく……。お前、己を考えろよ」
「はぁ……寝不足でした。眠いのを無理して……、だ、台本書いてました」
「無理すんな」
「助監督への道は厳しいんです。これしき……」
保健医の白先生、脈を計り、彼女の容態が安定したことを確かめると、イヤミの無いお説教で彼女に愛の鞭をお見舞いしていた。
ここで白衣姿なのは眩し過ぎるのでいそいそと白先生がプールサイドから退散すると、白衣の裾を引っ張る感覚がした。
無言で引っ張る力に対して、白先生は頷くことで「安心しろ」と伝えていた。程なくして裾は自由を得た。
太陽の日差しが眩しく思ったか、コンクリと同化していた彼女が目を見開いて、きゃんと無駄吠えの声上げる。
ちょっと太めの両脚を天高く突き上げ、勢い付けてむっくり起き上がると同時に、お互い打ち合わせをしたかのように
周りのスク水女子が一歩後ずさり。起き上がったチビっこイヌは滴る雫を拭いつつ、自身の健在をアピールしていた。
山椒は小粒でも辛いんだぞと、言わんばかりに。
「良い画が見えたんだよ!凄いんだったら!ゆらゆら揺れる画なんてプールの中じゃないと見られないんだから!」
「……」
「きれいな、画だったんだよ。あたしのファインダーに映ったんだよ」
濡れた黒い毛並みがきらきらと、自信なさげな胸がおしとやかに、ちっぽけな体全身で奇跡の瞬間を伝えたくて 身振り手振りで
『全学年の生徒に見守られながらプールの底に沈む』屈辱を『神からの恩恵を授かる』名誉に仕立て上げる姿。それは彼女の癖だった。
「おねえちゃん。何言ってるニャ?」
「吸い込まれるような画だよ!青い画ってこんなに涼しくも、心惹かれるものなんて!」
「ニャ?」
彼女は未来の映画監督を夢見る少女。そんじょそこらの失敗なんぞ、未だ見ぬ銀幕への拍手に変わるのならばなんでも……と。
「はやく……続きを撮らせてください!」
「ニャ……?」
あどけない瞳とネコ耳が溺れたイヌを捕らえる。
そして、また一歩後ずさり。
「とにかく、助かってよかったニャ」
「……ありがとうございます」
「年下に頭下げるのまだはやいニャよ」
彼女は低学年のネコたちに敬語で気を使った。
悟った。
初等部……女子小学生たちに紛れて泳ぐのはもうやめようと。
ちっちゃい頃を思い出すかもと思ったけれどとんだ大誤算。
やっぱりJSは最高だぜ!だなんて、うそっぱちだ。JSの頃の記憶なんて、プールの底に沈んでしまえ。
眠気が瞼にのしかかる。うとうとと、どっと疲れが彼女を襲い、再びプールサイドのコンクリへ体を沈め目を閉じた。
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