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獣人総合スレ 避難所

749しろいゆき ◆TC02kfS2Q2:2013/05/10(金) 20:09:26 ID:wr8SlciI0

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 日の長くなった五月晴れの午後。
 
 白先生は市電の中で雪妃に再会した。手を伸ばせば気づく距離だが気づくことが無い雪妃を驚かせないように
声をかけながら肩を優しく叩くと、雪妃はにこりと花を咲かせた。もちろん、あの日と同じように白い杖を片手にしていた。
 初めて会ったときの冬服から制服から涼しげなワンピースに身を包んでいる雪妃の姿は白先生には新鮮だった。
雪妃の持つ白い杖にはケレーンゲームのぬいぐるみがぶら下がる。市電が加速をする度にゆらゆらと揺れるぬいぐるみを
白先生は目で追っていた。

 「先生、あれからゲーセン行ってますか?」
 「いや……全然」

 あの店に近づくのはやめた。
 なんだか自分が恥ずかしくなるからだ。法や世間が白先生を許しても、白先生が自分を許せなかったのだ。

 「それじゃ。わたしと一緒に行きましょうよ」
 「……」

 白先生が巻き込まれた店内での出来事を知らない雪妃は白先生がクレーンゲームに夢中になっている姿を想像してにやりと笑った。
 雪妃は白先生に再会の約束を交わし、途中市電を降りてかのゲームセンターへと杖に頼りながら向かった。歩きなれた道だから、
たどり着くまでがなんだか楽しい。にぎやかなサウンドが雪妃の耳にだんだんと聞こえてくるのがいやがうえにもテンションを上げる。

 店内に足を入れた雪妃は杖の動きを止めた。
 王子だ。あの王子、まだくたばり損ねていたのか。嫌でも鼓膜を響かせる王子の爽やかな声、そして折り重なるように幼い子供の声。

 「さあ。コレッタちゃんの好きなもの、取って見せようか」
 「ウチのコレッタがすいません!ほら、お礼は?コレッタちゃん」
 「ニャ」
 「もー!コレッタちゃんのご返事はいつも可愛いね。お母さん、萌えしびれちゃった」

 雪妃は膝打った。打ちまくりだった。
 イカサマ王子はコレッタではなく、コレッタの母親狙いだったことに。将を射んとせば、馬を狙え。
 年上好みの王子が取った謀にまんまと転がされる、コレッタの母はコレッタ以上に周りに花びらを散らせていた。
 王子と子供とちょっと子供っぽいオトナの声が三つ編みのように美しく輝きながら絡む。だが、美しいものにも消えるときが。

 「……おにいちゃん。右手で何してるニャ?」
 「ん?」

 たじろぎを隠す王子の手元をコレッタが覗き込むたびに、コレッタの母は首を傾げていた。

 「コレッタちゃん!な、何……ごめんなさいね!」
 「ニャ!お金入れてないのにうごきだしたニャ!!」
 「コレッタちゃん!」
 「どうしてニャ?どうしてうごかしたニャ!?」

 もはやこれまでか。王子は表情を変えずにいることに限界を感じ、脱兎の如くコレッタの元から店外へと駆け出すが、
刹那に脛に激痛を感じ地面にひれ伏した。悶絶に苦しみながら見上げる王子の視線の先には、聖剣のように白い杖を構える
雪妃の姿が逆光の中浮かんでいた。

 「わたし、勘だけはいいんです」

 白先生。また、ゲームセンターで会いましょう。
 雪も融けました。
 草木も萌え出でています。
 悪いオオカミはいなくなりました。

 ただ、美しすぎて、物足りません。雪妃は待ってます。


  おしまい。


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