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獣人総合スレ 避難所
747
:
しろいゆき
◆TC02kfS2Q2
:2013/05/10(金) 20:08:47 ID:wr8SlciI0
「気配で分かるんです。わたし、勘だけはいいんです」
「ほう……。しかし、それだけで」
白先生が話し終える前、少女はまた一つぬいぐるみをゲット。彼女の視線に動きはなかった。
「モーターの音やぬいぐるみを挟む音を頼りにしてるだけですよ。わたし、耳だけはいいんです」
と、話しているうちにまたひとつゲット。
白先生には聞こえなかった取り出し口にぬいぐるみが転がる音を聞いた少女はガッツポーズをする。
ふと、白先生のブーツのつま先を叩く感覚があった。足元には白い杖が転がり、少女は少し焦った顔をしてしゃがみ込み、
手探りで杖を探していた。冷たい少女の手が白先生の太ももを掴んだ。
「す、すいません!」
少女の白い杖を拾い上げた白先生は優しく声をかけた。
純白の杖の先は赤く塗られ、使い込まれて出来た傷が少女との信頼関係として刻まれている。杖には彼女の名前と思われる
『YUKI』との文字が記されていた。
「気をつけてな。『ゆき』。ほら、手を握るぞ」
初めて会ったのに自分の名前を呼ばれた不意打ちに『ゆき』の手が止まった。
白先生は「ああ、すまん。仕事柄、相手を名前で呼ぶ方が信頼を築けるから」と言う。
「はい。先生」
「……」
「『雪妃』も名前で呼んでくれて嬉しいです」
しっかりと両手で握らせた白先生は目を丸くした。
初めて会ったのに自分が保健室の住人だと分かるとは。
「オキシドールの匂いがしたんです。医者か学校の保健室の先生か。どちらも先生だなって」
「……」
「わたし、鼻だけはいいんです」
「……」
「ほんのお返しですよ」
#
別の日、同じゲーセンにてクレーンゲームの興じていた白先生はオオカミの青年から「お姉さん」と呼び止められた。
彼は先日会った雪妃よりも年上の印象を受ける物腰柔らかい青年だった。淀みのない目はおよそオオカミのものとは即座に
考えがたいぐらい、ガラス球のような光が周りの筺体から発する明かりで輝いて見えた。
「お姉さん。ぬいぐるみ、取りたいんですよね」
「……今、必死にやってるところだけどな」
「ぼく、取って見せますよ。ノーミスで取りますから、じっとアームから目を離さないでくださいね」
煙に巻かれたような気持ちで青年の言葉に乗せられた白先生は自分の顔が反射するガラスケースの中のアームに焦点をあわせていた。
それよりも、三十路を超えた自分を「お姉さん」と他人から、しかも見知らぬ他人から呼ばれたことに少々動揺していた。
で、技のほうだ。
アームが動く、掴む、あがる、投入口までぬいぐるみを運ぶ。そして、青年の元にぬいぐるみが……。鮮やかとしか言いようがない。
『天才という名は彼のためにあると言っても過言ではない』という言葉さえも陳腐に聞こえるボタン捌きであった。
「お姉さん。差し上げますよ」
「い、いいや。いいよ。自分で掴んでこそ、ゲームだ」
青年は少し悔しそうな顔をしてぬいぐるみをお手玉のように軽く空中に上げながら、白先生との再会を誓う言葉を残して
ゲームセンターの出入り口へと去っていった。すれ違いに現れたのは白い杖の少女だった。先日のような笑顔はなく、寧ろ
青年に対して軽蔑の眼差しを向けていることに等しい態度を雪妃が取っていることに白先生は気づいていた。相手の心情に
気付くことは職業の性だと白先生は(自分ひとりで)言う。
白い杖をかつかつと地面に当てながら雪妃は真っ直ぐとゲームセンターに入ってゆき、杖の先が白先生のブーツに当たると
ぜんまいの切れたロボットのようにぴたっと足を止めた。
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