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獣人総合スレ 避難所
690
:
ネコ足靴下
◆TC02kfS2Q2
:2012/04/27(金) 23:44:50 ID:yj1R3LVs0
「目上の人に靴下贈っちゃいけないんだよね」
電車の中で向かいの席に腰掛ける女子高生の会話を小耳に挟んだ芹沢タスク、彼は肝を潰した。
揃えられた脚を包む春の日差しを浴びた紺のハイソックスが並び、中学生であるタスクのウブな視線を掴んで離さない。
はちきれそうな脚にぴったりと締め付ける紺ハイ。靴下との境目からはみ出るふくらはぎがタスクの青い妄想を掻き立てて、
一人もやもやとありもしない『優しい年上のお姉さん』を作りたてていた。現実なんか、クソ食らえ……と。短い電停までの
長く感じた時間が、タスクの座るシートにいばらが伸びて尻尾、脚、そして首筋をゆっくり包み込むように思えた。
この間、姉とすったもんだの喧嘩をした。原因は言いたくない。あまりにもくだらな過ぎるからだ。口にするのも憚るものだ。
それ以降、姉と口をきくことはなくなった。もちろんタスクとして、姉との最後の言葉を「姉ちゃんの大根脚!」になんてしたくない。
だから仲直りの印しに、姉が欲しがっていた物を買ってきた。
忘れもしない、あの日。「まじ?ヤバすぎ!」と、姉が息巻きながら、とあるサイトをまじまじと閲覧していたのを思い出した。
横からすっとのぞき見したときに、嗅ぎ慣れない新しいシャンプーの香りがしたのを思い出した、忘れもしない、あの日。
「ちょーかわいくね?これ?」
ふかふかな生地にトラ柄、そして足の裏にはネコの肉球がぷっくりとあしらえられている。
『ネコ足靴下』はイヌの二人のハートを掴んだ。姉が座っているクッションから尻尾が伸びるように生え、
まるで噴水のようにゆらゆらと揺れるさまを横目で見ながらタスクは立ち去ったことを覚えていたからだ。
意外とたやすく手に入れられたのはいいとして、渡すタイミングを案じていたときの出来事だった。
「タスク。あんた、わたしより偉くなった?生涯の下僕がなにほざいてるの?」
「知ってるよねー。そのくらい」
「まじ、なの?」
「蹴るよ」
そして、姉の名の元に執行される、愛のムチ。
弟。
それは、姉のおもちゃでもあって。初めて出会う男子でもある。
「って、言うか。アンタの贈り物」
はっきりとタスクの耳には脳内再生され、モエの氷よりも冷たい言の葉が鼓膜をえぐった。
買ったばかりのファンシーなネコ足靴下、それが入った袋をを中学生男子特有のかすれ具合よろしい通学バックにいれたまま、
タスクを知らず知らずにぐさりと突き刺した女子高生とともに人が多い電停で降りて深呼吸した。空気が美味しい。
「どうしよっかな。女の子用だし、見つかったら……めんどーくさー!」
多分「なにっ?彼女?会わせなさい!会わせないとひどいぞ」と自分の首を真綿で絞めることになるのは分かりきっている。
ふと、考え事をしながらリアル世界上の空で歩道を歩いていると赤信号に捕まった。すんの所で気が付いて歩道の端で
立ち止まっていると、向かいの歩道に一人の少女がランドセルの中を焦るようにまさぐっている姿を見た。
それだけなら気にはしない。少女の面影が、何となく姉を思い出させるのだった。目の前を通り過ぎる車でたびたび遮られて、
よく見えないのがもどかしい。落ち着かないタスクはズボンのポケットに手を入れて家の合い鍵を確認した。
イヌのキーホルダー。姉が見立ててくれたものだ。
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