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獣人総合スレ 避難所

683言い訳さん ◆TC02kfS2Q2:2012/03/25(日) 19:16:05 ID:NPwG9r.Y0

 (確か、ここのマンションって淺川くん)

 ちょっと綺麗な玄関先で若い娘が立っているのは絵になるな……。ミナは名の知らぬ娘をじっと見ていた。

 彼女を呼び止めるようにマンションの中から飛び出してきた男の声は誰だ。バイクの女性は、思わずにんまりと頬を緩める。

 「ハルコ、待たせた!!」
 「ごちそうさまーっす。トランジット」

 シャツを着替えてジャケットを羽織った淺川は姫の待つマンションの玄関へと走った。
 無邪気に敬礼をするハルコの背後に杉本ミナを発見した淺川は、ミナの朝焼けにも似た笑顔が怖かった。

 人生に『モテ期』があるのなら、何かと引き換えにしなければならない。ただほど高いものは無いのだから。

     #

 「ちょうど、淺川くんとお話がしたかったんだよね」
 「さいですか……」
 「それに、わたしもこのお店に行ってみたかったんだよね」
 「はあ」
 「木目がきれいだよね」

 最近出来た喫茶店。
 名古屋方式のモーニングが自慢。
 安く、がっつりと朝食を頂ける喫茶店。分厚いトーストは気前良し、あっさり小倉餡は品が良し。
 古風なインテリアが客を落ち着いた空間へと惑わせる。

 ハルコもミナも行ってみたいというから、淺川はただそのお供をしただけだ。

 しかし、淺川にはここが陪審員が囲み、二人の怒れるケモノたちが牙を剥く法廷にしか思えなかった。

 「ハルコ、変なことしゃべるなよ」

 天井から吊り下げられた品のよい電灯をじっと見つめるハルコは、淺川の願い事を上の空にいるかのように聞いて片手を挙げた。
 気まずそうな顔をして、ウェイトレスが注文したモーニングを持ってくるので、淺川は「ありがとう」と彼女に小さく呟いた。
名札には『研修中』の言い訳じみた三文字が並ぶ。淺川はそんな世間を知らぬ若葉ちゃんにはめっぽう弱かったのだ。
 淺川の言動にミナは、出されたばかりのコーヒーを飲むふりをして抑えた。

 さて、お話はこれから。

 この場面をどう説明しようものか、どうやって乗り切ろうものか淺川は崖っぷち。
 
 勇者ならどうする。
 剣を振るのか。
 盾で身を固めるのか。

 血で体を汚す覚悟は出来ているのか。

 それとも……何もかもなぎ捨てて、ドラゴンにひれ伏すのか。

 果たして……淺川は勇者なのか。

 言葉。

 知恵。

 守るべきもの。


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