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獣人総合スレ 避難所

680言い訳さん ◆TC02kfS2Q2:2012/03/25(日) 19:14:26 ID:NPwG9r.Y0

 「夕方、店まで取りに行く」と淺川がぼそぼそ声でミナに断りを入れて電話を切った。リビングに戻るとで淺川を待つハルコは
自分の髪を消えたテレビに映しながら弄っていた。従者に待たされたわがまま姫はひとつあくびをした。

 「お客さんは?」

 淺川にハルコは上目遣いで絡んでくる。淺川はぶっきらぼうに「マンションの自治会。うるさくて返した」と、とぼけ返して、
再び途中やめのビールの缶洗いを始めた。水道の水がシンクを叩く音が二人を邪魔する。 

 「トランジットくん、教えてあげよっか……新しい街のこと」
 「生意気に」

 しばらくこの街を離れていた淺川は、久し振りに街と顔をあわせることにした。ビールの缶を洗い終えると、ハルコも
同時に出掛ける支度を終えていた。短いパンツからすらりと若い足が伸び、店じまい間近いダウンジャケットを羽織るハルコは、
朝の景色には何故か眩しい。一介の男子、女子のお願いはとりあえず叶えることに。

 「淺川くんのバイクで行かない?ニケツしたいな」
 「おれのバイクは今、修理に出してるし」

 外に出られる程度の身支度をして、淺川は適当な返事を返した。適当な返事の罰か、午前の光が目に厳しかった。

 ハルコはハルコでピカピカのハンドバッグ片手でブーツの踵を鳴らし、淺川は淺川で財布を擦り切れたGパンのポケットに
突っ込んだだけのお気楽スタイルでスニーカーで後を追う。ハルコのバッグは自分自身のバイト代で手に入れた、最近流行りの
ブランド物。ハルコの手には正直眩しすぎる。揃ってマンションの玄関を潜る休日の午前の光。

     #

 ばかでかいバイクをトラックの荷台に乗せる手間が省けたと、ミナはにやにやと淺川の愛車に腰掛けて缶コーヒーを飲んでいた。
 淺川のバイクはでかい。排気量だって、並の乗用車程だ。ミナにはさすがに扱えないが、こんな城のような黒馬に跨がるだけでも、
淺川と同じ気持ちを感じることができるじゃないかと気をよくしていた。
 残ったコーヒーを一気に飲み干すとミナはバイクからぴょこんと飛び降りた。たった数センチでも空を飛んだ気分。
空を飛ぶこと、バイクで道を駆け抜けることはなんだか似ている感じがミナをちょっとくすぐった。
 真新しいタイヤを履いた淺川のバイクはガレージの中で休みながら、今か今かと外を走るときを待っていた。
まるで、新しい靴を買ってもらったこどものように。

 「そういえば、学校で新しい靴を履いてきた子って、必ず誰かから靴を踏まれてたよねー」

 にやりと歯を見せたミナは、つま先が擦り切れたエンジニアブーツで、泥さえ付いてもいない前輪のタイヤをぽんと蹴った。

 ミナの家はバイク屋だ。だから店先は油の匂いがする。お年頃の女の子が飛び込むには、ちょっと不釣合いと思われるかもしれないが
それを物ともせずにすすんで油塗れになれるミナ。根っから店先に並んだ鉄の馬たちが好きなんだろう。
 この店を訪ねてきた少年は、そう思っていた。

 「どうする?お昼過ぎには終わると思うけど」 
 「それでは、お昼過ぎ頃伺います」

 修理が必要になった自転車をミナが店先で預かると、自転車の持ち主である少年は軽く会釈した。
 少年はトートバッグを肩に掛けると、重さでよろめきがかった。くすっとミナは白い歯を見せる。

 「重い?」

 ミナの問いかけに少年は頬を赤らめる。

 「本なんです。全部」
 「そりゃ、重いね」


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