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獣人総合スレ 避難所
663
:
ババアとローラーブレード
◆TC02kfS2Q2
:2011/10/07(金) 23:31:46 ID:SqTnCTAA0
サイフォンから垂れ落ちるコーヒーの一滴をじっと見ていると、時の流れを早く感じる。保健室にあふれるコーヒーの香りが
何となくそれに歯向かって時間を止める。保健室独特の香りはこの部屋に限っては異なっていた。
「わたしはローラーブレードをやったことないけど、上手く滑れたら気持ちいいんだろうな」
「うん……ニャ」
「そうか。ま、がんばれ」
「白先生もやってみるニャ?」
「ふっ。わたしなんか……晴れた休日は机でコーヒーの香りに惑わされるだけでいいよ」
白先生はマグカップ片手にゆっくり首を横に振った。
その日の仕事を終えた白先生、自宅に帰るとわき目も振らずに電源を入れ、PCのキーボードをまるで腕の立つピアニストのように
激しく鳴らしていた。通販で大人用のローラーブレードを注文しようとしていた。とにかく、早く手に入れたい一心だった。
「わたしはコレッタの王子さまになるんだっ」
とあるお城にコレッタというお姫さまがいました。
お姫さまはローラーブレードが滑れなくて困っていました。
そこに現れたのは白王子、白馬に跨りマントを翻し駆けつけて来たのです。
「よしっ。わたしと一緒に練習するんだ」
お姫さまと王子は一緒にローラーブレードの練習をしました。
そして、お姫さまはついにすいすいと滑ることが出来るようになったのでした。
めでたし、めでたし。
白先生は生徒に見せてしまったら、末代までの恥になるような顔をして『即日配送』のボタンを連打していた。
コレッタはというと学校が終わるとすぐに公園へ走り、一人で上手に滑る練習をしている。
いつもの公園の遊歩道、目の前をジョギングする人々が通り過ぎる。池の向こう側には流れる雲。ほとりの親水広場では
小さな子たちがきゃっきゃと裸足になって、汚れない太ももを濡れしていた。茂る草木がまだまだ深い。
ベンチに腰掛けて普段履いているズックを恐る恐る脱いで、パステルカラーのローラーブレードに履き替える。
硬いプラスチックの靴の中、指をもぞもぞと動かしてなんとなくむず痒い。バックルを留めるとかかとで地面を叩いてみた。
ガラガラとローラーが廻る音が聞こえる。ただ、それだけでもコレッタは「上手に滑れるニャ」と皮算用をしちゃう自信があふれる。
両肘、両膝にプロテクターをマジックテープでかっちりと固めると、大層なことではないが儀式のようなものを感じる。
ローラーブレードとおそろいなピンクのプロテクターがあざやかに緑の中に映える。
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