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獣人総合スレ 避難所

648カエルとウサギ ◆TC02kfS2Q2:2011/07/15(金) 23:23:42 ID:tyz8ZPUI0
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 帰り道は暗かった。まだ昼だというのに。初夏の日光が眩しければ眩しい程、気持ちが暗くなってゆく。
 朝、出掛けのときのテンションはどこぞへと消えてしまった。寄り道なんかしてないで、早くベッドに飛び込みたい。
 ふかふかの布団は優しくリオを包んでくれるし、愛用の枕はいくら抱きしめても文句のひとつもこぼさない。
そうだ。誰でもいいから自分に構って欲しいんだ。今なら、例え相手が感情を忘れたハリネズミだってでも、ぎゅうっと自分を痛めながら
抱きしめることだって出来る。もしかして、氷のように閉ざされたリオの病んだ気持ちに針が突き刺って砕いてくれるかもしれない。
 ペダルを踏む度に髪が揺れて、太ももがスカートから見え隠れする。前籠に入れた紙袋が跳ねる。買ったばかりのよそ行き制服が
いまだに紙袋に入ったまま。着慣れた指定の制服に見を包んだまま。そして、河原には雨宮がたたずんだまま。
 浅瀬の雨宮は涼しげだ。朝出会ったときと変わらない表情を浮かべて、水と戯れるカエルがリオには心底羨ましい。
笑ったり、怒ったり、落ち込んだり、泣いたり。ウサギは忙しい。金属が軋む音を立ててブレーキを握る。堤の上から雨宮を見下ろす。
雨宮に声をかけたいけれど今一歩踏み出せない意気地無しのリオ。

 「あれ?委員長」
 「雨宮、まだいんの?」
 「へへっ。これから暑くなるしね」
 ただでさえすかっと突き抜けるような快晴に憎たらしいのに、カエルにまで笑われるだなんて。
 自転車を止めると雨宮の方へ駆けつけるためにリオはサドルから跳んだ。川辺に置かれた雨宮の紙袋からオレンジ色のものが見える。
風に倒された紙袋、飛び出したのはおもちゃのウォーターガン。小さな子が扱うにはかなり大きい本格的なものだった。
パステルカラーが夏の水遊びにお誂え。丸いフォルムの筒型タンクが装備され、ピンク色の銃口はむしろ厳しさすら匂わせない。

 「なにこれっ。子供?」
 「夏と言ったらこれだろ」
 「言わないし」
 けろけろと笑いながら雨宮はウォーターガンを手にすると、意外と大きなものだと改めて分かる。もしかして、自転車一台は軽く
吹き飛ばしてしまうんじゃないかというほどとは言いすぎだが、漕艇で鍛えた雨宮でも片手で持つにはしんどく見える。

 「ちょっと、待って。雨宮」
 河原のブロックに腰掛けてよく磨かれたローファーを脱いで、ニーソックスを膝から太もも、そしてくるぶしに掛けて丸める。
季節外れの白い雪がじわじわとリオの脚の上で広がってゆき、ぱあっと花咲いてゆく。くしゃくしゃになったニーソックスは
踵から離れて丸く縮まる。その間、リオはスカートの中を雨宮に見られていないか気にしていた。そのうちに、両足が裸足になる。
 腰掛けていたブロックにニーソックスを並べて掛けると、リオは雨宮のいる川の中へと駆け出した。丸い石が足の裏をくすぐる。
脛を清い川の水がくすぐる。そして、妨げのない川の上の風がリオの短い髪をくすぐる。夏はいつでもくすぐったい。
 「雨宮!そのウォーターガン、わたしに貸して」
 「ん?」
 「いいから!早く!カエル!!」
 表情を変えずに雨宮はリオにおもちゃの水鉄砲を手渡すが、思ったより重かったのかリオは水面に吸い込まれそうになった。
水の音を足元で立てながら、リオは体勢を直して両手でしっかりとウォーターガンを構えていた。

 ペンは剣よりも強しと言うが、ペンばかり持ってても力は授からない。それがおもちゃの水鉄砲だとしても、本だけで得た知識よりも
大きな力を手にしたとリオは勘違いのような錯覚に陥る。本だけの理屈ではない、見えない力。
 「使い方分かる?手動のポンプで空気を圧縮するんだ」
 「わかってるって!」
 「へへへ。よくご存知で」
 汗ばむ日差しの中でどうして必死に水鉄砲ごときにかかりきっているのか。
 それでも夢中にリオは空気を圧縮し続けた。


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