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獣人総合スレ 避難所
631
:
名無しさん@避難中
:2011/04/16(土) 20:57:12 ID:AkyvWBeo0
……水の流れる音。草の匂い。
気が付くと、川沿いの木の下に座っていた。人の影が少し長い。日が傾きかけているのだろう。
「気分は良くなった?」と、聞き覚えのある涼しげな声。谷川だった。
とっさに(事情を説明しなければ)とか(自分はどの位の時間、前後不覚になっていたのだろう)
とか(誰がここまで連れてきてくれたんだ?)とか幾つかのキーワードが頭の中を駆け巡ったが、
口から出てきたのは「……すまん」という一言だけだった。
改めて彼女の方を見てみた。乾かしたばかりのように見える頭の羽毛、さっぱりとした制服姿。
横にカバンが二つ、片方は自分のものだ。そういえば、持っていたはずの部室の鍵が無い。
「鍵なら返しておいたわよ」と言われ、また「……すまん」と一言。
どうやら意識が朦朧としていたのは30分程度らしい。
たまたま保健室の窓から様子を見ていた白先生が駆けつけてくれて、「塩素酔いが抜けるまで
しばらく空気がきれいな所で休ませておけばよろしい」との診断を下したのだそうだ。
「部活はどうした?」と尋ねたら、谷川は「今日は高飛び込みの練習は前半だけだから、
下校時間としては予定通りよ」と、涼しい顔をしていた。そのまま数分間、ぼんやりと川面を見つめていた。
まだ柔らかい草が互いに触れ合い、かすかな音をたてる。まるで時間の流れが止まったような感覚だった。
しばしの沈黙を破って、「……帰ろっか」と谷川が言った。
帰り道、谷川が唐突に「ショーちゃん、私に惚れた?」と言い出した。悪戯っぽい笑みを浮かべている。
「まさか、お前に?」と返す。いったい、いきなり何を言い出すのだ。
「でも顔、赤くなってるよ?」と谷川。どこまで本気で言っているのか分からない奴である。
―― これは変な感情なんかではない、塩素の影響に決まっている。その事は分かっているだろうに。
そう反論しようとしたが、しなかった。反論すればするほど信用されないと思ったから。
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