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獣人総合スレ 避難所

620淺川のくせに ◆TC02kfS2Q2:2011/02/22(火) 19:11:21 ID:f1BDlGTk0
「ハル子、知ってるか?」
「なに!」
「おれ、写真家やってるってこと」
反射的にハル子はタン!と足で地面を踏んだ。例えるならば、自分の気持ちを伝えたいのに伝えられないもどかしさを知っているくせに、
それなのに「それじゃあ、告っちゃえよ!」と悪気を持たずに背中を叩かれたときと同じようなお節介。
それが分からないハル子はまだまだ子ども。

「写真なんか生ものだぜ。夕焼けなんか撮ってみろよ、満足のいくようなカットが見つからないからってうろうろしてたら、
ほれ見たことかすぐに真っ暗になっちまうだろ。だからさ、おれはネコの日だからとかかんけーねえの」
「……淺川のくせに!」
「ハル子のくせに。ところでなあ、おれ……どんな写真を撮ればいいか分からなくなっちまってよ。ハル子さあ、教えてくれよ」
ハル子は笑いを忘れぬ淺川の悩みごとに戸惑う。素直に答えても、淺川を困らせるだけ。
「わたしにだって、分からない」
「だろうな。ハル子だし」
「もう!!」
不毛な言い争いは空しくさせる。そんな時間あれば、写真の一枚ぐらい撮りなさい。
とにかく、うだうだ言っているうちに時間は過ぎる。いくらのんびり波が岸壁を洗おうとも、そよ風が船着場をくすぐろうとも、
淺川はそんなことはお構いなしだと愛車に跨りミラーにかけたヘルメットを持ち上げる。

「どこ行くの」
あえて返事はしない。それは行き先を決めていないから。それが普通だから。淺川に行き先を尋ねるのは愚問の極み。
まるで耳を塞ぐようにヘルメットを被り、愛車のエンジンをかけるとハル子はぽんと後ろに跳んだ。
ネコの日から逃げるように淺川のバイクはそのまま島を臨む船着場から走り去った。
ハル子は淺川が残した「ハル子のくせに」という声で、必ず再びここで出会うことを感じつつ、もう一度「淺川のくせに」と呟いた。


おしまい。


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