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獣人総合スレ 避難所

608うさぎの夜 ◆TC02kfS2Q2:2010/12/31(金) 23:26:49 ID:WPm8e4Mo0
大晦日の夜なのに、ウサギの男性教師・跳月はクラシックの流れるコンビニで買い物かごを腕にぶら下げていた。
同世代の者たちは今頃きっと、可愛い嫁や子どもたちと暖かいこたつの中でミカンをむきながら年末恒例のテレビ番組を見ていたり、
翌日の初詣のことやご近所や親戚の話しでもしているのではないか、と一人身ならではの考え事が脳裏をよぎる。
暮れギリギリの買い物は、おなかがすいたときの買い物とよく似ている。買い足りないかとついつい普段は躊躇うものでも
買い物かごの中身を増やしてゆく。壁に架けられたコンビニのロゴ入り時計の短針が、徐々に頂点へと縮まってゆく。
正月飾りで彩られた窓ガラスからは、今年が消え去ることを惜しむように行き交う人々。尻尾の揺れ具合が心なしかそわそわと。

コンビニでは跳月の長い耳がそわそわと。
「買っておくか、買っておかざるべきか」
一度手に取ったロールちゃんを再び棚に戻すべきなのか。となりで幸せそうな虎の男女がプリンを同じように買うのかどうか悩んでいる。
跳月の長く垂れた耳がその声でいやでもなびかせる。三十路を過ぎた男子からすれば、ふたりはハナタレ小僧。
オトナの余裕とは、小僧の垂らす洟をそっとチリ紙で拭いてやることなのだ。と、言い訳。
結局、ロールちゃんは跳月のかごの中へと、転がってゆく。

そろそろ懐具合も心配なので、レジに向かうとイヌの青年が尻尾を振って雑用をしていた。
かごに商品を詰め込んでレジに近づく跳月に気付くと、慌てて『お隣のレジをご利用ください』の立て札を慣れた手つきで退ける。
「こちらのレジにどうぞ」と誘われて、ドンと机に跳月がかごを置くとメガネ越しに青年の名札を確認した。
(この間と、同じ青年だ)
当たり前だが「いらっしゃいませ」の声が同じ。手際よく彼は、弁当に、飲み物、そしてロールちゃんのバーコードを読み取って、
余りにも日常的な動きできょうが大晦日だということを忘れさせてくれている。
一週間前の夜。世間一般では『クリスマス・イヴ』と言われる夜も、彼が同じレジに立っていて、同じようにお会計に携わってくれたのだ。

「そういえば。この間会ったときも、きみだったね」
コンビニの制服姿の青年の目。
事務を超えた旧知のような声。
積み重なるレジの液晶画面のお会計。

「大変だね。こんな日なのに」
「この曜日はシフト通りだとウサギの者が遅番だったんですけど、来年はうさぎ年だからぼくと代わったんです」
そういえば、店内を見渡してもウサギは自分ただ一人。このコンビニだけではない。途中立ち寄った本屋も、街を走る路面電車の職員も、
ウサギだったという見覚えが一切無い。そう、来年はうさぎ。この世のうさぎたちはみな、うさぎの年を迎えようと、自由にのんびりと過ごす。
「最近はそうなんだ」
「はい、お客さま」


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