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獣人総合スレ 避難所

59レッツゴー三匹:2009/04/26(日) 13:27:13 ID:Y2CQlQvg0

病室の前にたどり着き、かかった名札を確認する。

飛澤朱美 御堂卓

あとは空欄になっていた。8人入りの病室に2人きり。完璧ではないか。
音を立てないように少しだけ引き戸を開き、モエは上、サン先生は下と並んで中を覗き込んだ。
いた。奥から二番目のベッドに眠る卓と、ベッド脇のイスに座る朱美。
視界は良好だ。覗く2人は小さくガッツポーズをした。

しかし、問題もあった。

「あれっ朱美なんかしゃべった!?」
「あっちくしょー聞こえなかった!」

卓君…と、朱美の呟く声はなんとか聞こえた。続けて何かをしゃべったように見えたのだが、少々距離が遠い。
耳に意識を集中して、サン先生は耳をくいと持ち上げて聞いているのだが、2人の犬耳ではその小さな声を聞き取ることができなかった。
声が小さいと聞こえないのだ。これでは下手をすると重要な部分を聞き逃してしまうではないか。

せめてもう少し耳がよければ。もしくは耳のいいメンバーがここにいてくれたら。
そうだ、りんごだ。ウサギのりんごがここに来てくれたら…

「ちょっとあなたたち、何してるのよ!」

背後から突然響いた声に、2人はビクッと振り向いた。
天に伸びる長い耳。腰に当てた手。きらりと光る眼鏡。

「りっ、リオっ!?」

まずいリオはまずい。リオは真面目のまー子だ。覗きなんて認めないに決まっている。

「サン先生まで! 病室の前で何をs」
「リオー! 待ってたんだよリオ!」

最後まで言わせず、サン先生が嬉々としてリオに向かっていった。両手を取ってぐっと握りしめる。
天然…? いや、態度とは裏腹に尻尾がこわばっている。サン先生は必死だ。

「君の才能が必要なんだ!ずっと待ってたんだよ!来てくれると信じてた!!」
「え、あの…」

仮にも教師にそこまで言われて嬉しくない人はいないだろう。戸惑いながらもリオはまんざらでもない様子だ。
だったら私はリオの女の子の部分にかける。話せばリオもきっとわかってくれる…はずだ。

「リオ!今すごく大切な所なの! 朱美にとって正念場なのよ!」
「で、でも」
「ねえわかるでしょ、今邪魔しちゃいけない所なの!」
「そうなんだよ!今は静かに見守らなきゃいけないところなんだ」
「ねっ、ちょっとだけだから!後でかわいいアクセのお店に連れてくから!」

「わ…わかったわよ」

2人の猛烈な説得に圧されて、風紀委員リオはついに折れたのだった。

リオはたまたま用事で近くにいて、話を聞いていち早く駆け付けたとのことだった。何の用事かは聞けなかったが。
リオに簡単に状況を説明し、引き戸の隙間に3人の目が並んだ。上からリオ、モエ、サン先生だ。

「モエもうちょっと頭下げて、よく見えない」

共犯になったリオは割とノリノリだった。


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