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獣人総合スレ 避難所
103
:
名無しさん@避難中
:2009/06/19(金) 18:48:18 ID:b9QBlaTI0
二人で元の位置に戻ると、朱美は少しニヤニヤしている。
「男と男のお付き合いはおしまい?」
「おまっ!! …うん、まあ…うん」
朱美の言葉は表情と相まって妙な意味合いにとれるが、言葉は間違ってないのだから仕方ない。
「どこまで話してたんだっけ」
話を切り上げようとしていた矢先、朱美から続きの言葉が出て、卓は慌てて止めようとする。
「いやっ!? もう十分だありがとう!」
疑わしげな眼差しで二人を見る朱美。
「お二人さんねぇ…チスイコウモリにおっかない印象もってるでしょ」
「えっいやっそんなことないって!」
そんなことない。最初に聞いたのは純粋に好奇心から。
話を打ち切ろうとしたのは予想外に朱美に近い人物の話になってしまい、その人に悪い気がするからだ。
「実際は全然そんなことないのよ。あたしたち獣人が普通の動物だったずぅっと昔からも
噛みついてチューチュー血を吸うなんてことはなかったの」
「え?そうなのかー?じゃあどうやって?」
「ちょおまっ!?」
構わず続ける朱美と、空気を読まない利里の質問に、卓は内心やれやれとため息をついた。
朱美は得意顔で講義を続ける。
「いい?チスイコウモリっていうのはね。寝ている動物に静かに近づいて、皮膚近くの血管を探して、
剃刀みたいに鋭い歯でちょこっと噛んで傷をつけるの。寝てると気付かないくらい、全然痛くないのよ」
「…ふーん」
卓も本格的に朱美の講義に耳を傾けた。元々聞きたかったことではあるのだ。
「で、傷口から出た血をなめさせてもらうってわけ。ね、恐くないでしょ?」
「はー…ちょっと傷かー……」
利里は少々ポカンとした様子でそれを聞いていた。その光景がいまひとつ想像できないのだ。
なぜか。それは彼が蜥蜴人だからである。彼ら蜥蜴人は生まれつき身体の大部分が硬い鱗で覆われており、
それ以外の部分も人間などよりはるかに丈夫だ。故に、彼らが小さな傷を受けて出血すること等はほとんどない。
転んでもへっちゃらだし、包丁で指先を切るなんてこともない。まあ、さすがに大剣で斬りかかられればただではすまないが。
ともかく、小さく噛まれて血が出るという状況は、蜥蜴人の彼にとっては完全に他人事だった。
「でもそれだとすぐ血が止まっちゃわないか?」
一方で、鱗も体毛もない人間、卓は極自然に浮かんだ質問を投げかける。
「大丈夫♪ なめるときの唾液には血を固まらなくする成分が含まれてて、傷口をなめてる限り血は止まらないの。
それに皮膚感覚を麻痺させる成分もあるから相手は気付かないで眠ったまんま♪」
「……へぇ…」
なぜか上機嫌な朱美と、対照的にトーンが下がる卓。
「朝に残るのは小さい傷だけ。少し血が減ったなんて誰も気付かないでしょ?
誰にも気付かれず迷惑もかけず、ちょこっと血を貰ってはいさよなら。明日もまた来るよー、ってね♪」
「………」
その様子を、卓はありありと想像していた。
静寂の夜。深い眠りについている自分に忍び寄る影。そいつは腕の一部に狙いをつけ、シュッと小さな傷を付ける。
傷口に生まれる真っ赤な血の球。球は少しずつ大きくなり、やがて一筋の跡を残して腕を流れる。
その傷口を舐める。舐め続ける影。いつまでも止まらない血。少しずつ、確実に失われていく、血。
「……………」
恐えええぇぇ!!
むしろ怖ええええぇぇぇぇ!!
彼の素直な感想だった。
何だよ血が止まらなくなるってええぇ!
気付かないってすげータチ悪いだろーがああぁぁ!
「でも毎日来られたら血が足りなくなるんじゃないかー?」
利里の純粋な質問に、朱美は笑って答える。
「だーいじょーぶよー。利里君の手の平に乗るくらい小さかったんだから。貰うのはホントにちょこっとよ」
「そっかー。じゃー恐くないなー」
今は人間サイズじゃねーかあああぁぁ!!
楽しげに笑う二人に、卓は内心激しく突っ込みを入れるのだった。
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