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短編オブジお題のようです
1
:
名無しさん
:2022/02/05(土) 19:22:50 ID:vzzDzuZQ
みんな……ブーン系……書こう!!!!!!
2
:
名無しさん
:2022/02/12(土) 01:09:46 ID:PABbln6I
お題「バレンタイン」で……何か書いてみませんか……!???!
3
:
名無しさん
:2022/02/14(月) 23:44:46 ID:3w7inX9Q
まえがき。
2月14日。巷を騒がす怪盗ヨンドしぃが遺体で見つかった。
長年追い続けていた怪盗との不完全燃焼な決着に、刑事課警部補であるギコは歯切れの悪い思いを募らせる。
一方そのころ、漫画家であるモナーは女子高生のレモナに監禁され、
一方そのころ、飛び降り自殺をしようとしていたブーンは流れ星を見て、
一方そのころ、魔法少女は街で大暴れをし、
一方そのころ、少年少女は帰らぬ人を待ち続け、
一方そのころ、商社勤めのモララーは仕事を終えて、
一方そのころ、チョコ欲しさにドクオは街を徘徊していた────────
4
:
名無しさん
:2022/02/14(月) 23:46:10 ID:3w7inX9Q
設楽場市にある繁華街、栄々町。
夜の喧騒も過ぎ去り、朝霧が立ち込める中でようやく目を覚ました酔っ払いの通報で
設楽場警察署に所属する刑事課警部補、埴谷ギコは現場に駆け付けた。
(,,゚Д゚)「……あぁ、バカなやつだ。本当に、バカなやつだ」
乱雑するビルとビルの間に、それはべしゃりと落ちていた。
規制線を張り捜査を進める部下たちを尻目に、ギコはそれの近くへと寄る。
ゴリラを模した特徴的なドミノマスクにシルクハットと英国調のダブルスーツ。
ふざけているとしか思えない格好で、地面を真っ赤に染め上げた女が倒れていた。
怪盗ヨンドしぃ。それがギコが知る、彼女の名前だった。
部下である男が身元の確認を取っているとギコに報告するが、ギコにはどうでも良かった。
間違えるはずもない。誰がどう見ても、どう調べても、これが怪盗ヨンドしぃなのだ。
日が完全に顔を出し、ビルの隙間にも光が差し込む。
ギコの気分とは裏腹に、それはとても暖かな光だった。
5
:
名無しさん
:2022/02/14(月) 23:47:20 ID:3w7inX9Q
───────
───
─
設楽場市の隣にある拝成市。
そこに住んでいたのが石川しぃであり、それが、怪盗ヨンドしぃの本名であった。
年齢は34。無職で一人暮らしの女だった。
部下からの報告書を眺めながら、ギコは深く息を吐いた。
その肩を大きく叩いたのはギコの上司であるフサだ。
ミ,,゚Д゚彡「随分とあっけない幕切れだったなぁ」
(,,゚Д゚)「バカだったんですよ、あいつ。いつかこうなるって、ロクなことにゃならないって分かっていたんですけどねぇ」
6
:
名無しさん
:2022/02/14(月) 23:48:48 ID:3w7inX9Q
そもそも何でゴリラのマスクなんだよ。
ギコの毒づきに、フサは苦笑いで返す。
ギコとフサは長年、怪盗ヨンドしぃの捜査で共に駆け回ってきた仲だった。
一足先に昇進し、現場から離れることになったフサはギコを陰ながら支えてきたのもあり、
その煮え切らない思いを汲み取ってか、手をクイっとさせて口に運ぶ仕草を見せる。
(,,゚Д゚)「……いや、今日は良いです。もうちっと、自分の中で────」
そこへ、ギコのデスクに置かれた内線が音を発した。
フサをちらりと見て右手で断りを入れてから、ギコは受話器を取る。
(,,゚Д゚)「……は?魔法少女が暴れてる?」
7
:
名無しさん
:2022/02/14(月) 23:52:27 ID:3w7inX9Q
───────
───
─
モナーは自宅である6畳半の木造アパートの中で、かつてないほどの緊張感に支配されていた。
(; ´∀`)「……あ、あのぅ」
|゚ノ ^∀^)「なぁに?」
モナーはヒット作を出せないまま30も半ばに差し掛かる漫画家であった。
その部屋の真ん中で簀巻きにされ正座をしている彼の前で、少女は包丁を片手に微笑んでいた。
事の始まりは2月10日。3連休を目前に控えた平日の木曜日の夜の事だった。
今からチョコを作ってあげると言って無理やり部屋に上がり込んできて、気が付いたらこの状態だったのだ。
それから4日が経った。飲食や排泄などは許されていたため、その心配はいらなかったのだが、
それでも見ず知らずの少女に半監禁されてる状態は、「作ると言っていたチョコは一体いつできるのだろう?」と、
そんなことすら考えてしまうほどにモナーの心をどんどんと支配していった。
一刻も早く逃げ出したいモナーだったが、簀巻きの上にその縄の下は全裸だ。
更に凶器を持った相手を前に、どうしたものかと頭を悩ませる。
するとそこへ、チャイムが一つ転がり込んだ。
しめたと思うモナーだったが、果たして彼女が素直に出るものなのか。
すぐさま不安に駆られるモナーだったが、それは杞憂に終わった。
8
:
名無しさん
:2022/02/14(月) 23:53:12 ID:3w7inX9Q
|゚ノ ^∀^)「お客様かな?」
少女は包丁を台所に置くと、玄関のドアを開ける。
('A`)「あ、あの〜……こちら、モナーさんのご自宅であってますか?」
|゚ノ ^∀^)「そうですけど、どちら様ですか?」
少女の後ろから顔を覗かせるモナーだったが、ドアの向こうに立つひょろりとした顔つきの男に見覚えはなかった。
千載一遇のチャンスとばかりにモナーは助けてと叫ぼうとするも、少女の目がモナーを捉える。
モナーの脳裏に浮かぶのは、逆上した少女に刺される己の姿だった。
叫ぶのをやめてしまったのも仕方のないことだ。
('A`)「あぁ、やっぱここであってるんだ」
|゚ノ ^∀^)「あの、何がですか?」
('A`)「え、いや、ゴリラのマスクをした人に、ここに来ればチョコが貰えるって聞いたんですけど」
|゚ノ ^∀^)「ゴリラ?」
9
:
名無しさん
:2022/02/14(月) 23:54:37 ID:3w7inX9Q
__ 00
. | | r、
|_| \>
{
\ |l|w/L ,r_/
\\{w└ ¨ ´ /
三 三 ≡ = - 三 ≡ = - 三 ≡ = - 三 ≡ = - 三 ≡ = \´ 彡x≡ = - 三 ≡ = - 三 ≡ = - 三 ≡ = -
> ; ’ ∠─
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/ ,⊆.己 [][]「l
`フ_厂 くノ
10
:
名無しさん
:2022/02/14(月) 23:56:19 ID:3w7inX9Q
流星と共に落ちた“願いのかけら”を拾うのは善良な少年だった。
( ^ω^)「僕を無視する世界なんて、こっちから無視してやるお」
奪われる前に奪ってやれ。
怪物と戦っていた魔法少女はいつしか己が怪物となり果てて、
それを止めるのもまた魔法少女であった。
o川;゚ー゚)o「ひぇ〜、魔法少女だなんてくそ詐欺商法じゃないですか、そら離脱者も増えますって」
大惨事を前に立ち上がるのは一人の男。
鋼の精神は決して折れることはない。
( ・∀・)「えっ!? 避難警報が出てるのに商談ですか!? 行きます!!! いえ!!! 行かせていただきます!!!!!! 」
奪い、奪われ、壊し、壊され、与えられる。
歪んだ愛が叶えられ、正義の願いは歪み、2月14日という奇跡が一つの結晶となり顕現する。
日付が変わる直前の、23時59分。
11
:
名無しさん
:2022/02/14(月) 23:58:01 ID:3w7inX9Q
月下、最後に現れるのは巷を騒がした一つの影。
1度死んで2度死んで、3度死んでも蘇る。己の死すら盗むと叫ぶはゴリラのマスク。
(*゚ー゚)「仏が3度までなら私は4度。4度までならなんだって」
(*゚ー゚)「少年からは“無視”を奪いましょう。魔法少女からは“理外”を盗みましょう。
少女からは“献身”を。スーツの男からは“頑強”を。
執念をスパイスにすれば、あら不思議。こちらの結晶、チョコレートに早変わり」
(*゚ー゚)「それではみなさん、ハッピーバレンタイン」
2月14日。
たった1日の出来事だった。
魔法少女が街で大暴れをし、漫画家は家で監禁され、やせっぱちはチョコを求めて彷徨い歩き、
商社マンは変わらず仕事を続け、少年が偶然欠片を拾い、死んだはずの怪盗が蘇る。
刑事は叫ぶ。
「なぜおまえはゴリラマスクなのか」と。
怪盗は答える。
「小さい頃の、約束さ」と。
2月14日。
世間はバレンタイン。
愛で溢れるこの日において、栄々町に奇跡が起きた。
「さよなら、クソッタレ バレンタインのようです」
12
:
名無しさん
:2022/02/14(月) 23:58:17 ID:3w7inX9Q
こういう短編書きたかったなぁ
13
:
名無しさん
:2022/02/16(水) 00:48:32 ID:Zr5iQ6YA
バレンタイン。それは体中にカカオの粉末を塗りたくったふんどし一丁の男たちが、巫女の持つひとさじの上白糖を奪い合うという年に一度の聖なる儀式が行われる日である。
('A`)「今年こそは……!!」
そう独りごちる、今年の奪取に燃える男がいた。
彼の名はドクオ。ドリアンのド、栗きんとんのク、お味噌汁のオを同時に名に持つ男だった。
彼には負けられない理由があった。
昨年、彼はすんでの所でその栄光をライバルであるモララーにかすめ取られていた。
モララー。彼は優男風のイケメンだった。それに対しての嫉妬心がドクオになかったとは言わないが、それ以上に気に入らないところが彼にはあった。
モララーはふんどしの下にスパッツを穿くのである。
ドクオはそれが許せなかった。ふんどしの気持ちを考えると夜も眠れぬ思いだった。
俺は一人では不十分なのか?そう言って毎夜心で泣いているのであろうモララーのふんどしにドクオは哀れみを感じていた。
俺はそんなことは絶対しないからな。ドクオは愛用のふんどしを撫でながら慈愛に満ちた目を向けた。心なしかふんどしが少し柔らかくなったような気がした。
14
:
名無しさん
:2022/02/16(水) 00:50:40 ID:Zr5iQ6YA
翌日、雪の吹きすさぶ霊山の上に大勢の裸の男が詰めかけていた。男たちの肌には朱が差し、全身からはもうもうと白く湯気が立っている。彼らの目は何か正気ではない光をたたえている。
ほっそりとした体躯の男が一人、ひしめく男たちから少し離れてその様子を伺っていた。ひとりだけスパッツを穿いて、その上から真っ白なふんどしを締めている。そのふんどしの白さが、普段彼がふんどしを締めていないことを如実に物語っていた。
('A`)「モララぁっ……!!」
彼の姿を認めた途端、洗いざらしのふんどしがドクオの股間を締め上げた。
相棒、頼むぜ……
ふんどしが語りかけてくる。
('A`)「ああ、任せとけ。お前の弟は俺が救ってみせる」
ドクオは静かに闘志を燃やしていた。
モララーの締めているふんどしはドクオの兄弟ふんどしであった。同じ反物を真ん中から切り分けて、二人それぞれのふんどしにしたのである。
反物屋のおやじは言っていた。
_、_
( ,_ノ` )y━・「反物てのぁ、切り分けたって魂はいつまでも繋がってんだ。あんたがたが仲違いしたって、いつかはこいつが繋げてくれるさ」
もう何年も前のことだ。優しく包まれるように懐かしく、そして刺すように痛い。
('A`)「燃えてきたぜ……!!」
痩けた頬を思い切り張る。ぱぁんっ、と乾いた音が鳴る。
('A`)「ぜってえ負けねえ!!」
15
:
名無しさん
:2022/02/16(水) 00:51:52 ID:Zr5iQ6YA
それからは地獄絵図であった。全身茶色の男たちが可憐な巫女のもとに殺到する様は、蜘蛛の糸に群がる亡者よろしくまさにこの世の末を思わせた。
人だかりの裾の方ではやれふんどしが取れただの解けただの、誰が引っ張っただの引っ掛けただのと阿鼻叫喚、てっぺんの方ではこれまたふんどしの引っ張り合いでどこもかしこも不浄を晒し、前を押さえて転がり落ちる者どもの雪玉が山の麓で風物詩。
( ‘∀‘)「おや、もうこんなにも雪玉が」
訳知り顔の老婆が霊山から転がってくる数多の雪玉を目にして微笑んだ。
老婆はこれから雪玉を割り、中にいる全裸の男どもを救出する。彼らは雪玉から生まれた雪玉太郎と名付けられ、ゆきだんごを腰に鬼の退治へと赴く運命である。
16
:
名無しさん
:2022/02/16(水) 00:53:29 ID:Zr5iQ6YA
それはさておきドクオである!ドクオが選んだカカオはスタンダードなガーナ産100%、攻守にバランスの取れた良いカカオであった。
それに対しモララーはエクアドル産をベースにコートジボワール産をブレンドし、味の奥行きを演出した上級者向けのカカオである。
もはや勝負は彼ら二人に絞られていた。
しかしその時!ドクオの足元の雪が音もなく崩れる!!ドクオ、ピンチ!!このままでは麓まで転がり落ちて雪玉太郎になってしまう!!
('A`)「うわあああああああ!!!」
( ・∀・)「馬鹿野郎!!つかまれ!!」
声の主は誰あろうモララーであった。
無我夢中で手を伸ばすと、柔らかな感触がてのひらに伝わってきた。
('A`)「こ、これは、まさか……」
そのまさかであった。モララーは自身のふんどしを解き、命綱代わりにドクオに向けて投げたのだ。
( ・∀・)「その端をお前のふんどしに結び付けろ!!」
('A`)「お、おお!!」
ドクオはモララーのふんどしを自身のふんどしの前袋の部分に結わえ付けた。途端にモララーのふんどしの意思が脳に流れ込んでくる。
兄弟(きょうでえ)、もう安心しやがれってんだ。
モララーのふんどしは江戸っ子であった。
17
:
名無しさん
:2022/02/16(水) 00:54:58 ID:Zr5iQ6YA
('A`)「あ、ありがとう」
( ・∀・)「別にいいよ。ふんどしがそう言って聞かなかっただけだ」
('A`)「お、お前もふんどしの声が!?」
それには答えず、モララーは「早く行けよ、巫女様のところにさ」と言った。
('A`)「でも……」
( ・∀・)「見てみろ。スパッツを穿いてるとはいえふんどしがとれちまっちゃ、巫女様の前におめおめと出られるわけがない。ま、これも俺がこいつに冷たく当たってきたせいさ」
モララーはふんどしを揺らしながら言う。
('A`)「そんなことは……」
( ・∀・)「いや、そういう運命だったんだ。ほら、とっとと行けよ。巫女様が待ってるぜ」
後ろを向いて手をひらひらとさせるモララーの目に光るものをドクオは確かに見た。あいつはあいつで懸けるものがあったんだ。ドクオははっとしたが、それ以上は何も言わなかった。
18
:
名無しさん
:2022/02/16(水) 00:55:58 ID:Zr5iQ6YA
川 ゚ -゚)「なんだ、今年はドクオか」
('A`)「ああ。でも俺一人じゃ来られなかった」
川 ゚ -゚)「そうか。よかったな」
川 ゚ -゚)「じゃ、いくぞ。そーれ!!」
あ〜らふしぎ。宙に舞った砂糖とドクオの体に塗りたくられたカカオが合わさってハート形のチョコレートが出現したぞ!ご丁寧に包装紙とリボンまでついてるぞ!
川 ゚ -゚)「これも神の御力よ……」
感涙するクー。
川 ゚ -゚)「ほら。チョコレートだ。おめでとう」
('A`)「ああ、ありがとう。そしてモララー、ありがとう……。ありがとう、みんな……!!」
こうして今年もまた無事にバレンタインの聖なる儀式は終わった。次に雪玉太郎になるのはあなたかもしれない……
Happy Valentine……☆
19
:
名無しさん
:2022/02/23(水) 19:54:03 ID:B5MfcWBQ
随分遅れましたが、完成したのでこっそり投下
20
:
名無しさん
:2022/02/23(水) 19:55:38 ID:B5MfcWBQ
いつも通りの、何気ない夜の食卓。
唐突に、娘からこのような謎かけを出された。
o川*゚ー゚)o「お父さん、あさってはなんの日でしょーか?」
( ・∀・)「あさって? あさっては……ええと、14日か。ああ、バレンタインデーだな」
o川*゚ー゚)o「そう! バレンタインデー! だからお父さん、明日は一緒にチョコを作るよ!」
( ・∀・)「うん、チョコを……。え? お父さんも作るの?」
o川*゚ー゚)o「作るよ!」
( ・∀・)「……普通、こういうの作るときってあんまり男の人は関わらないようにしたほうがいいんじゃないの?」
o川*>ー<)o「古い! 古いよお父さん! 今は友チョコ逆チョコなんでもありの時代なんだから。お互いに作って交換するよ!」
21
:
名無しさん
:2022/02/23(水) 19:56:17 ID:B5MfcWBQ
( ・∀・)「いやでも明日は仕事があるんだけど」
o川*゚ー゚)o「在宅でしょ? 後回しでいいじゃん!」
( ・∀・)「ダメでーす。仕事はちゃんとやらないとね。だから―――」
o川*゚ぺ)o「むー!」
( ・∀・)「……キュート?」
o川*゚ぺ)o「イヤです。作る」
( ・∀・)「いやだから仕事」
o川#*゚皿゚)o「作る作るつくるーーー! 作るったら作るんじゃーーーい!!!」
(;・∀・)「えぇー」
o川#*゚皿゚)o ガルルルル
(;・∀・)
(;‐∀‐) ハァ
( ・∀・)「はいはい分かりましたよワガママ娘。仕事、午前中に終わらせるから。午後からね」
22
:
名無しさん
:2022/02/23(水) 19:57:33 ID:B5MfcWBQ
o川*>ー<)o「いよっしゃーーい!! 昼からね! 絶対だからね!」
( ・∀・) ハイハイ
o川*^ー^)o「あ、明日作る前に買い出しにいくからね。友達の分も作るから大量に買うよー!」
( ・∀・)「……キュート君? ひょっとしなくても初めからお父さんの財布を当てにしていたね?」
o川*゚з゚)o ヒューヒュピィー
( ・∀・)「吹けてないぞ口笛」
三 o川*゚ー゚)o ワーハッハッハ…
( ・∀・)「あんにゃろ逃げやがった」
……まったく、甘やかしすぎただろうか。
しかし娘から誘われると父としては飛び付かざるを得ないのは、きっとどこの家庭でも同じなのだと信じたい。
( ・∀・)「……今日は早く寝るかー」
明日は早起きして、仕事を終わらせなきゃな。
23
:
名無しさん
:2022/02/23(水) 19:58:36 ID:B5MfcWBQ
o川*゚ー゚)o「はい、そんなわけでクッキングの始まりだよー!」
( ・∀・)「それは誰に呼びかけてるの?」
そんな翌日の昼過ぎ、僕とキュートは約束通りチョコ作りに挑むことになった。
( ・∀・)「ところでお父さん、お菓子はほとんど作ったこと無いんだけど」
o川*>ー<)b「だいじょうぶ! キュートもない!」
( ・∀・)「なぜ自信満々に親指を立てるのか」
o川*゚ー゚)o「まあクックパッドで探せばいけるっしょ。簡単そうで映えもイケるやつ」
( ・∀・)「お父さんは別に映えはいいかなー……」
o川*゚ー゚)o「お菓子は見た目も大事なんだよー? まあなんか良い感じのレシピを探してみよう」
( ・∀・)「どれどれ……。お、これなんか簡単そうだな……」
o川*>ー<)o「よーしじゃあクッキングスタート!」
o川*゚ー゚)o「できました!」
( ・∀・)「展開はやーい」
o川*゚ー゚)o「あんまり手の込んだものは作れないしね。ハイ、じゃあ交換のお時間でーす!」
24
:
名無しさん
:2022/02/23(水) 20:00:17 ID:B5MfcWBQ
( ・∀・)「じゃあお父さんが作ったのから……。はい、キュート。ハッピーバレンタイン」
o川*゚ー゚)o「ありがとう! ほほー、チョコクランチ! 黒と白の二色で見た目もシック!」
( ・∀・)「クランチって結構簡単にできるものなんだなぁ。チョコが余った時とかにサッと作れていいかも」
o川*゚〜゚)o「うへへへ。じゃあコレは後でいただきますー……」
( ・∀・)「ん? 今食べないの?」
o川*゚〜゚)o「う……。ま、まあいいじゃん。今よりも後って気分なんだよ」
キュートは何故だか恥ずかしがっているように見えた。
親子なんだから別に照れることも無いと思うんだけど……。
o川*>ー<)o「それでは! 次はキュートから! はいお父さん、ハッピーバレンタイン!」
( ・∀・)「ありがとうキュート。へえ、カップケーキだ。一口サイズで見た目も可愛いし、カラフルだ。なるほど、これは映えかも?」
o川*゚ー゚)o「正直まだまだ追加で焼く分がこんなに残っています」
( ・∀・)「うわっ、山が見える。作りすぎなんじゃないの? どれだけの友達に配るつもりなんだ……」
o川*゚ー゚)o「同クラだけじゃなくて別クラの友達にも分けたいしねー。……あれ? お父さん、そっちの包みは?」
25
:
名無しさん
:2022/02/23(水) 20:01:43 ID:B5MfcWBQ
( ・∀・)「ん? ああ、これはね……」
後ろの方にひっそりと隠していた包みを、キュートに目ざとく見つけられてしまった。
まあ隠す程のものでも無い。が、少し照れくさかったのもあって、後でこっそり持っていこうと思っていたのだけど。
( ・∀・)「お母さんの分だよ。せっかく作るんだったら、ね」
o川*゚ー゚)o「……」
( ・∀・)「キュート?」
o川*^ー^)o「ふふふ……。ふふふふふ……!」
(;・∀・)「うわあ何だ何だ。全身から『ふふふ』が漏れ出してるぞ」
o川*゚ー゚)o「ふふふ。じゃーん、これ!」
そう言ってキュートは可愛らしくラッピングされた包みを見せてきた。
中には先程のカップケーキがいくつか入っている。
o川*゚ー゚)o「実はキュートもお母さんにあげようと思ってたの! お揃いだよ!」
( ・∀・)「―――」
( ・∀・)「―――そうか。ふふ、お揃いだな。お母さんも、きっと喜ぶよ」
o川*゚ー゚)o「よし、じゃあ早速お供えにいこうよ! バレンタインは明日だけど、出来立てをあげたいもんね!」
ダダダ、っと勢いよく仏壇へと向かうキュートを見ながら、僕は昔のことを少し思い出していた。
26
:
名無しさん
:2022/02/23(水) 20:04:42 ID:B5MfcWBQ
( ・∀・)(バレンタイン、か。そういえば君からは毎年のようにチョコを貰っていたけど、僕からあげるのは初めてだな)
頭に浮かぶのは、彼女の笑顔。
彼女は何かと人に贈り物をするのが好きで、いつも僕は貰ってばかりだった。
もちろんホワイトデーにはお返しをしていたけれど。一度くらいは、先回りして僕の方からチョコをあげることがあっても良かったかもしれない。
( ・∀・)(今更ながら、少し悔やんできたかな。今日チョコを作れたのは良かった。キュートに感謝だな)
そんな風に物思いに耽っていたら、キュートが戻ってきてヒョコッと顔をこちらに覗かせてきた。
o川*゚ー゚)o「まだー? ねえお父さん、はやく行こ!」
( ・∀・)「―――!」
ミセ* ー )リ『ねえモララー君、はやく行こ!』
瞬間、記憶の底から引っ張られてきた光景。
あの頃の君が、今、目の前にいるキュートと一瞬だけ重なったような気がした。
( ・∀・)「―――」
( ‐∀‐)「……似てきた、かな?」
27
:
名無しさん
:2022/02/23(水) 20:06:41 ID:B5MfcWBQ
o川*゚ー゚)o「え? なんか言った?」
( ・∀・)「いいや。……ねえ、キュート」
o川*゚ー゚)o「はーい?」
( ・∀・)「来月のホワイトデーも、一緒にお菓子作ろうか」
o川*゚ー゚)o「!」
o川*^ー^)o「えへへ。絶対ね! 約束だよ!」
満面の笑顔を見せるキュートを見て、こちらも笑みが零れた。
お互いニコニコしながら、僕たちは仏壇の前まで行く。二人でチョコを置いて、無言で手を合わせた。
( ・∀・)(ミセリ。プレゼントってのは贈る側も嬉しいんだね。相手の笑顔を思うだけで幸せになれる)
これからも僕と、キュートでたくさん色んなものを作っていこう。
二人で作っていけば―――。君も、そして僕もキュートも、いっぱい嬉しくなると思うから。
そう心の中で君に語りかけた。
写真の中の君の笑顔が、より深まったように感じた。
( ・∀・)君に贈るバレンタインのようです おわり
28
:
名無しさん
:2022/02/23(水) 20:09:20 ID:B5MfcWBQ
お疲れさまでした
正直一回この話ボツにしたんですが、先日のボブラジ聞いてたらやる気が再燃したので執念で書ききりました
29
:
名無しさん
:2022/03/30(水) 20:55:44 ID:4jCb7UlU
('A`)は童貞を卒業するようです
.
30
:
名無しさん
:2022/03/30(水) 20:56:54 ID:4jCb7UlU
―――最初に感じ取ったのは、むせるような工業用オイルの臭いだった。
目を開く。
視線の先には過剰なほどに白く照らす蛍光灯。天井の照明だ。
眩さに目を焼かれないように顔を横に動かす。すると自分がベッドの上で寝転がっていたことに気付く。
いや、これはベッドじゃない。手術台だ。
手術……。
そうだ、俺は手術を受けたのだ。ようやく意識が覚醒してきた。
俺は全身麻酔をかけられて、気付かぬ内に意識を手放して。そして今、目を覚ましたのだ。
「おっと、ようやく起きたな」
ふと、一時の方向から声が発せられた。低い、女の声だ。
俺は上体を起こし、声の方を見た。
从 ゚∀从
そこには、簡素な椅子に腰掛け、じっとこちらを見つめてくる白衣の女がいた。
いや、白衣という表現は正しくなかった。そいつの白衣はあちこちが赤黒い染みを作っている。変色した血がこびりついているのだ。
31
:
名無しさん
:2022/03/30(水) 20:58:56 ID:4jCb7UlU
从 ゚∀从「待ちくたびれたよ。アタシは何もしていない時間ってのが嫌いでね。
あと300秒、目を覚まさなきゃアンタを廃棄処分にしてたところだ」
一目見て思ったことだが、俺はコイツのことが嫌いだ。
何が嫌いって、あの目。ボサボサの長髪に隠され、深い隈に縁取られてる、あの目だ。
小さな獲物を前にした猫のような、好奇心に満ちた眼差しは、俺をモルモットにしか見ていないのだろう。
―――人を、人と思っちゃいない目をしたコイツが、俺は本当に、心底嫌いだ。
从 ゚∀从「ま、目覚めたのなら問題ないな。さて、そしたら……。ええと、何だったかな?」
苦々しい表情の俺などまるで意に介さず、奴は手に持ったデバイスを操作している。
从 ゚∀从「……おっと、そうだった。『ドクオ』。ドクオだったな、アンタの名は」
('A`)「…………」
32
:
名無しさん
:2022/03/30(水) 21:00:48 ID:4jCb7UlU
从 ゚∀从「それじゃドクオ、今の気分はどうだい?」
('A`)「……気分? ああ、そうだな。最高だよ。寝起きにオイルの臭いを嗅がされたことと、テメエの顔を見ちまったことを除けば、な」
从 ゚∀从「オイル? それは妙だ。オイルの臭いなんて、今のアンタには感じない筈だが」
俺の発したド直球の皮肉など聞こえていないかのように、奴は生まれた疑問に頭をひねらせている。
まあ、それはいい。俺の方にも疑問が生まれてしまったからだ。
('A`)「俺が臭いを感じなくなってるってのは、どういう意味だ?」
从 ゚∀从「はあ? おいおい、まだ意識が酩酊してんのかい? 自分の手足でも見てみろよ」
そう言われて、俺は自分の手に目線を落とす。
そこにある俺の腕は見慣れたいつもの腕ではなく、無機質に鈍く光る金属の腕だった。
从 ゚∀从「思い出したか? アンタの体はとっくに人間のモノじゃないぜ。脳味噌以外を全て最新技術でチューニングした、我らが国の『兵士』になったんだ」
右の掌で左腕に触れてみる。
人肌の温もりがないのは勿論だが、俺の掌は金属の冷たさすらも感じ取ってくれなかった。
从 ゚∀从「だから嗅覚や触覚なんてものは消えちまってる。ま、代わりに感知センサーが備わっているがね。
身の危険に繋がるやつはちゃんとセンサーが伝えてくれるから安心しな」
奴は随分と身勝手なことをのたまいつつ、顎に手を添え、斜め上の宙を見て思考を整理している。
从 ゚∀从「ふうむ。まあ恐らく、術前に臭いを感じたまま意識を手放したもんだから、脳に残っていたんだろうな。
だったら今のうちに堪能しておけよ。そいつが、アンタが感じ取れる最後の臭いになるんだからな」
('A`)「……下らねえな」
嗅覚も、触覚も。
その他、人間の機能の大部分を失ってしまった。
それでも。それでも俺は兵士なる必要が―――力を手にする必要が、あった。
从 ゚∀从「そうそう。『失った』で思い出したよ」
それにしてもコイツ、無駄話が多い。
さっき何もしていない時間が嫌いだとか言っていたが、その穴埋めにこんな実りの無さそうな会話を詰め込むとは全く恐れ入る。
33
:
名無しさん
:2022/03/30(水) 21:03:27 ID:4jCb7UlU
从 ゚∀从「以前の戦争では、新兵は戦場で童貞を失ったそうだ。勿論、敵兵をファックしたって話じゃ無いぜ?
初めて人殺しをしたことを、童貞卒業という言い回しで呼んだって訳だ」
奴は手元のデバイスをじっと見つめながら話しかけてくる。
こっちを見ろとは言わない。だがそんな態度なのでコイツが俺とコミュニケーションを取りたいのか取りたくないのよく分からない。
俺は取りたくないので早く解放してほしい。
从 ゚∀从「だが、これは人間同士で争っていた時代の話だ。現代において、我々の敵は生命体じゃなくなっちまった。
つまりいくら敵に銃弾をブチ込んでも童貞を卒業できないってことだ。奪うべき命が無いからな」
从 ゚∀从「さて、じゃあここで質問だドクオ。戦場では童貞を散らせない。だったら新兵は何処で童貞を卒業するんだろうな?」
('A`)「知らねえよ。どうでもいい話をすんな」
从 ゚∀从「おいおい、想像は人間に許された特権だぜ。せっかく脳だけは無事なんだ。それくらいは謳歌しろよ」
('A`)「……クソッタレが」
从 ゚∀从「まあいい、答え合わせだ。正解は此処さ。この手術台だ。アンタらが生涯で奪う命はただ一つ。アンタら自身の命だ。
兵士になる為に、自分の意志で自分を殺すんだ」
从 ゚∀从「まあそんな訳だ。童貞卒業おめでとう、ドクオ君」
('A`)「……そろそろ黙ってくれねえか。ペチャクチャと喋りかけられて、いい加減頭が痛いんだ」
从 ゚∀从「ん? ああ、そうだな。もう十分だ。今の会話中にアンタの脳波を見ていたが、反応も上々。異常無しだ。
それじゃ速やかに退出してくれ」
('A`)「……」
从 ゚∀从「どうした? もう用件は無いぞ。もしもまだ無駄話を御所望なら他を当たってくれ。アタシは忙しいんだ」
('A`)「……チッ。死ね」
俺は台の上から降り立ち、脇目も振らずに出口に向かいドアノブに手を掛けた。
もしも願いが叶うなら、俺が出ていった後にこの部屋に向けて爆撃が起こってほしいと思う。アイツの顔は二度と見たくないからな。
――――――――――――
―――――――――
――――――
34
:
名無しさん
:2022/03/30(水) 21:05:39 ID:4jCb7UlU
―――今から、だいたい二十年くらい前の話だ。
科学技術は日進月歩で発達していき、日常に高性能AIを搭載した人型機械が違和感なく溶け込んでいた、そんな時代。
世界中の機械共が、突如人類に対して反旗を翻した。
原因は、AI達を総括的に管理していた複合型疑似生体知能素子、通称『MOTHER‐AI’s(マザーアイズ)』の暴走だと言われている。
コイツが全世界の機械共に命令を下し、人間を虐殺しだしたのだ。
俺たち人間は快適さを求めるあまり、機械を量産し続けた。それゆえ人間は瞬く間に機械共に包囲された。俺たちは、自分自身の首を絞めたことになる。
無論、各国も抵抗をした。しかし奴らは世界中の生産工場を占拠すると、なんと自分達で同胞を産み出し始めたのだ。厄介なことに、より攻撃的な性能に進化を続けて。
結局、人間は敗走した。
八割の人間が殺され、残りの二割は命からがら地下へと逃げた。
地上は機械共の楽園と化した。それでも、人間は地球の主の座を取り戻すため、虎視眈々と牙を研ぐことにしたのだ。
その牙というのが、人間の機械化。要はサイボーグ化だ。
奴ら機械人形は鋼の肉体、無限の体力、怪力、何km先でも見通す視力。そんなのが一糸乱れぬ統率でもって攻め込んでくるのだ。生身の人間が敵うはずもない。
よって人間は自身を機械の体に作り替えた。ただし一から十まで機械になってはいけない。完全な機械になったらマザーアイズに乗っ取られてしまう。
だから脳だけは残した。人間の敵にならないように。人間であることを忘れないために。
――――――――――――
―――――――――
――――――
35
:
名無しさん
:2022/03/30(水) 21:07:25 ID:4jCb7UlU
いよいよ俺の初任務の時が来た。それにより、俺は二十年ぶりに地上に出ることとなった。
('A`)「……これが今の地上、か」
朽ちたビルの屋上に陣取り、かつて人間の繁栄の象徴だった街を見下ろす。
そこに広がる建物の全ては荒れ果て、倒壊し―――そして凍っていた。
現在の地上は平均温度がマイナス五十度を下回る。当然ここは北極圏なんかじゃない。一昔前まで東京と呼ばれていた場所だ。
なんでこんなことになっちまったかと言えば、AI共が世界中の核兵器の管理システムをクラッキングし、人間の生活圏に向けて一つ残らずブッ放しやがったことが原因だ。
キノコ雲は大気圏の更に上まで巻き上がり、バラ撒かれた灰は地球全体を覆って太陽の光から俺らを遠ざけた。
結果、気温がバグって下がりまくった。所謂『核の冬』って奴だ。核兵器が一斉に爆発した影響で地軸がずれ、異常気象を引き起こしてると言った学者もいる。
何もかも白く凍った世界を見ると、いつまでもずっと続くと信じて疑わなかった人類の歴史、その終焉を実感する。
('A`)(いや、まだだ。まだ俺たちは生き残っている。生きてさえいれば終わらねえんだ)
確かにこんな地上では人間は戻ってこれないのかもしれない。
でも、人間の知恵は今までだってずっと不可能を可能にしてきたんだ。この崩壊したビル群もかつての姿を取り戻すことだって、きっと。
('A`)(だが先ずは、あの機械共を一匹残らず駆逐することが第一だ。それができなきゃ俺らは一生地の底で埋もれたままだ……!)
武器を持つ手に力が入る。
命令は? 命令はまだか。
哨戒機からの発信は無いのか?
一刻も早く、一匹でも多く、奴らを撃ち砕いてやる―――!
36
:
名無しさん
:2022/03/30(水) 21:08:38 ID:4jCb7UlU
「おいおい、そんなに外に顔を出すなよ」
ふと、背後から声がかかる。
声の主の方へ振り向く。
(//‰ ゚)「いくら迷彩がかかってるからってバレる時ははバレるんだぜ、ドクオ」
('A`)「……誰だ、お前?」
いや、コイツが誰なのかは知っている。今回の作戦で俺とチームを組んでいる奴だ。
ただ馴れ馴れしく俺の名を呼んだりしているところを見ると、もしかしたら以前何処かで会っているのかもしれない。
でも知らねえなあ、こんなメカメカしい奴。
(//‰ ゚)「いやいやいや、分かれよ! お前の同期だろうが!」
('A`)「あ、なんだ横堀かよお前」
(//‰ ゚)「まったく、一発で分かれっての」
('A`)「そんなロボットみたいな見た目になってんのに、分からねえって」
(//‰ ゚)「まあそうかもだけどよ。そう考えるとドクオは良いよな。手術前と顔変わんねえもん」
('A`)「ああ。つっても人工肌を貼り付けただけで、中身はお前と大差無いだろうけどな」
この人工肌は強い要望を叩きつけて何とか叶えて貰ったものだ。教官からは酔狂な奴だとも言われたりしたが。
でも俺は『人間として機械共をブッ潰す』という立場を何よりも重要視している。
例えハリボテであっても、俺は人間でいたいんだ。
『アルファ‐1からオミクロンへ。アルファ‐1からオミクロンへ』
('A`)「!」
唐突に、本部からの通信が入る。
遂に作戦が始まるのか。
37
:
名無しさん
:2022/03/30(水) 21:11:18 ID:4jCb7UlU
『"タイプ・イカロス"11機が南南東から北北東方面へと進行している。速度16.2m/s、高度470m。
この通信の終了時から35秒後、拠点から1200m先に現れると予測される。そこから5秒後に射撃を開始せよ。
会敵から16秒後にガンマ、68秒後にラムダが合流する。各隊と連携して敵を殲滅せよ。通信は以上だ』
(//‰ ゚)「オミクロン‐1、了解!」
('A`)「オミクロン‐2、了解……!」
『…………健闘を祈る』
通信が途絶えた後、俺は直ちに定位置に着き、両手で持っていた狙撃銃の安全装置を外した。
軽く照準を覗いて状態を確認する。横堀の奴も、先程までのおちゃらけた雰囲気を仕舞い込み、黙々と準備をしているようだ。
通信から三十秒。そろそろだ。再び照準を覗く。頬をストックに押し付け、引鉄に指を掛ける。
照準の先には既に標的が見えていた。"タイプ・イカロス"と呼称される、両腕が機械翼の人型偵察機だ。通信の予測通りに飛行している。
一匹に狙いを定める。敵は1200mラインを通過。攻撃まであと5秒。
('A`)(ことごとく墜落させてやる。イカロスの名に相応しく、な……!)
かつて俺がガキだった頃。まだ自由に地上を走り回れていた頃。俺は空を見るのが好きだった。
青く広く、何処までも続く空を見ていると、あの空の向こうには何があるんだろうとワクワクしていた。
そんな空を、俺たちの空を。テメエらみてえなスクラップが我が物顔で飛んでんじゃねえよ。
38
:
名無しさん
:2022/03/30(水) 21:11:56 ID:4jCb7UlU
5秒経過。
今だ。
('A`)(この空は、この地球は俺たち人間のモノだ! 絶対に取り戻してみせる!)
願いを、祈りを、怒りを込めて。
俺は引鉄を引いた。
さあ、反撃の狼煙だ。
【終】
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