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ドラゴンレポート「西方白龍録」
28
:
パイロン
:2022/07/13(水) 22:56:14 ID:o6omr5WY0
「おんやー?あそこにいるのは誰かなあ?オー、オンナじゃん、ラッキーだぜえ。もしかしてえ、こんなカワイソーなオレにゴッドがプレゼントをくれたのかー?コレはラッキーじゃんかよお。」
少し離れた所に見えるその橋に、一人の人影が見えた。
人影は女性だった。黒い目と黒い長い髪、濃い紫色の着物と袴、そして頭には薄い紫色の布を被っていた。
その姿から、東の国の東洋人女性である事が見て取れた。
こんな危険な時間に女性が一人で出歩く事はまずありえない事である。
しかし、どうやらこの男にはそこまでの考えは全くなかったようで、早速ターゲットに選んだようだった。
その女性は少しだけ困ったような表情をしていて、寂しそうな目をしているように見えた。
顔立ちは整っている美しい女性だ。その物悲しい雰囲気も相まって、より男には魅力的に映っただろう。
「ヘーイ、そこのアジアンビューティー。こんばんはあ。こんな時間に一人でどうしたのー?何やら困った事が起きてるようだねーえ。」
「あっ…これは、どうも。ええ…そうなんです。私はここの隣町に住んでいる友人を訪ねて来たのですが…いくら待っても友人が迎えに来なくてこの時間まで待ちぼうけで…どうにもできずに困っていたのです。」
「オーノー、それはタイヘンだったねえ。残酷な事をいう事になるけどお、多分そのお友達はもう来ないよー。これだけ待ってるんだからねえ。でもダイジョウブ。ここで出会ったのも何かの縁ね。変わりにオレが隣町までアンナイしてあげようじゃなーいの。」
「ほ、本当ですか?案内して頂けるのですか?嬉しいです!」
物悲しげな表情をしていた女性の表情が明るくなっていくのがわかる。男にとってはうまく行ったラッキーな展開だと捉えられただろう。このままもうひと押しすれば案内する名目でお持ち帰りが出来るからだ。
「イエス、モチロンね。でも、世の中ギブアンドテイクね。そうでしょう?オレは貴女を隣町までアンナイしてあげましょう。その代わり、案内のガイド料として、貴女はオレとともにベッドへゴーして一夜を共にしてもらいマース。いいでーすか?」
「ふふ…そういうことですか。欲に忠実な方なんですね。
…いいでしょう、私は貴方の事が気に入りました。それで取引成立ということで決まりですね。…まだまだ夜は長いです。その間のうちに、私と交わりましょう……」
そう言うと女性は怪しく微笑み、頭に被っていた布をそっと取ると男性の頬を撫でた。
そして、そっと男のかけていた眼鏡を取るとそれを投げ捨てて、肩にそっと両方の手をかけて、自身の方へと引き寄せながらそっと唇を重ねようとした。
「うっひょー、話が早いねえ。コレは本当にラッキーだぜえ。このオンナ、清楚そうに見えて意外と情熱的なんだねぇー、フゥ〜!」
能天気にそんな事を考えながら流れに身を任せた男は知るよしもなかった。
次に感じる感覚はここにいる女性の唇の柔らかさなんかではない事を。
女性の唇があともう少しの距離で触れる、それくらいすぐ近くまで近づいた、その瞬間だった。
『ふははっ……引っかかったな間抜けめ。もう離さんし逃さんぞ。
お前のような色んな意味で危険な男が沢山現れるであろう、こんな夜更けに女が一人で居るわけがないだろう。
まあ恨むのなら、脳味噌と下半身が直結している自分自身の事を心底恨むんだな。』
「えっ……?どういう、こ、と…だ…?」
女の口から野太い男のような恐ろしい声が聞こえた瞬間だった。
その瞬間、女は大きく口を開いた。耳まで裂けた大きな口の中には鋭い牙が何本も生えていた。
逃げようとしても、女性のものとは思えない強い力によって男は身動きが全く取れなかった。
そして、全く動けない男の喉に女は噛み付いた。
牙が肉に食い込む音と噴き出す血の音を辺りに響かせながら、女はそのまま男の喉を食い千切った。
喉を食い千切られた男はそのまま絶命した。そして、その肉を女が喰らい咀嚼する恐ろしい音が聞こえてくる。
『命が終わる瞬間にこんないい女と交われて幸せになれてよかったではないか、小僧。……まあ、交わると言っても腹の中でだけどな、ふははははっ……』
そのまま肉を喰らった女の恐ろしい声が辺りに聞こえた。
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