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ドラゴンレポート「西方白龍録」

13パイロン:2022/03/14(月) 21:53:26 ID:bsRV45xU0
六:「君の声が聴こえる」






「……パイ……君、パイ、君……」

「……あ、アイ……し……」


突如、耳元で聴こえた想い人の声。

思わず、俺は声のしたほうを向きながらその愛する女性の名前を呼ぼうとしたが…そこには誰も居なかった。

ただ、真っ黒いな靄の中にいることがわかるだけだった。


「フッ……空耳で、気の所為、か……どんだけ惚れてるんだろうな。俺……。」


思わず苦笑いをした。これで本当に隣に彼女が居てくれたら、どれだけよかっただろう。

霊鳥の男でもなく、盾の男でもなく、俺の隣に居てくれたら。

本当にそうなるのなら、俺は命と力以外の全てを捧げるのに。

だけどそれは叶わぬ願いだった。

どれだけ想っても、ここにはいない。いるわけもない。届くわけもない。


「……来来(来て)、我一直想念你(あなたが居なくて寂しいです)、来来、我一直想念你……」

「ダメだな、俺……。愛する人がこんな所にいるわけないだろう。

むしろ、俺はこんな危険な所にあの人を連れてなんか来ない。

愛する人を護りたいんだから……

…まあ、どうしても一緒に行きたいって言うのなら…話は別だけどな。」

「パイ君……パイ君……」

「まだ聴こえるのか……ここにいるわけじゃないのに……」

「……見て、パイ君。こっちを……私のほうを。私の声の聴こえるほうを……」

「声が聴こえるほう?……後ろ、か……?」

「そう……こっちを。私の声のほうを……」


辺りを取り巻いていた靄が薄くなってきた。

そんな中、愛する人の声が聴こえた後ろのほうを見た俺は驚いた。

その方向に見えたのは……


「なっ…なんだ…こいつら…どうして……」


そこに見えたのは驚愕の光景だった。

俺は四人兄妹の一番下の妹に肩を貸して歩いている状態だった。

その背後から、後ろを歩いていた兄妹のうち、姉がこちらに向かって短刀のような刃物を振りかぶってこちら目掛けて突き刺そうとしていた瞬間だったのだ。

その目は大きく見開かれ、頭には虫のような触覚、開いた口からは虫らしき牙が覗いていた。

俺の周りにいた四人の兄妹は、皆この顔をして、俺を嘲笑っていた。


「このままだったら刺されていた…。もしかしてこいつらも、百足…?」


この姿は人間のものではない、虫なのは一目瞭然だ。

まさか、あの大百足の仲間か何かで、生存者のフリをして、助けようとした人の隙をついてこうやって命を奪おうとしていたのか?


「なんて奴らだ、人の気持ちを踏みにじるような真似を…それにしても、こいつらさっきから微動だにしない…」

今までに、感覚を研ぎ澄まして、広範囲の音を拾ったり、周りの時間がゆっくりに感じられるようになる、という能力は使ったことが何度かあった。

しかし、黒い靄がうっすらかかっている今は、まるで時間の流れが止まっているようだった。


「もしかして…時が止まっているのか…?」


しかし、流れる時間をそのまま止めるような力ではないだろう。

俺達白い龍は、龍の中では最高のスピードを誇る龍だ。

恐らく、俺が素早いスピードで動いて居るために、それに付いて来れない周りの動きが止まる、という特殊相対性理論によって時間が止まっているのだろう。


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