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テスト用スレ

85名無しさん:2019/05/31(金) 21:21:36 ID:???
「はーい、それじゃあみんなで順番に爪を剥がすよ〜」

 気絶している間にテーブルをくっつけて、即席の処刑台を作り上げられていた。
 大の字で仰向けになる俺を囲うのは、リゼを除く見慣れた面々。ナイフを手にしたココアの笑顔が不気味過ぎて吐きそうだ。

「剥がし方はさっき私がやってみせた通りだよ。誰から始める?」
「はーい、私からでも良いかしら」

 おっとりとした声音で手を上げたのは、甘兎庵の制服姿の千夜だった。

「お、千夜ちゃんやる気だねぇ」

 手にしていたナイフを、躊躇うことなく渡す。

「やめ、やめてくれよ、さっきやられた親指だってものすごく痛いんだよ、血だって出てるじゃないか!」
「私はさっきやったから、残りはみんなでやって良いよ。両手で9本残ってるね」
「頼むよ、ココア、話を聞いてくれよ!」

 涙ぐみながらの必死の訴えは、無邪気な少女たちの談笑にかき消されていた。

「はい、自分の指を切らないように気を付けてね」

 バックを指先でつまんで、グリップを向けて差し出す辺り、ナイフを使いなれているようにも見える。
 いったい何の用途で使っていたのだろう。折り畳み式ではなく、固定刃のシースナイフだ。

「心配しないで、こう見えても刃物の扱いには慣れてるんだから」

 左の人差し指を、千夜の細くしなやかな手が包み込む。

「暴れないでよ、危ないなぁ。左腕は私が抑えておくから、シャロちゃんは反対の腕をお願い」
「分かったわ。こっちは私とチマメちゃんたちで剥がすわね」
「なぁシャロ、お願いだ、許してくれよ、俺、そんな悪いことしてないじゃないか! ただ元の世界に戻ろうとしただけで」
「二度とその口で私の名前を呼ばないでちょうだい。裏切り者ッ!!」
「――ひっ」

 憎しみ溢れるシャロの視線を受けて、思わず喉の奥から悲鳴を漏らす。

「やめ――やめて、た、助け…痛いッッあああああああ!!!

 そこから先の光景は、地獄絵図だった。
 俺のために作ってくれたとばかり思っていたお別れパーティー用の料理は、拷問台と化したテーブルの端に乱雑に片付けられている。
 恐怖と痛みで暴れる度に、食器が打ち鳴らされて、やがて床に落ちる。ガラスの割れる音はまるで、俺の悲鳴に共鳴しているかのようだ。

「くっ…うまくいかないや、思い切り食い込ませてえぐり出せば良いのかな」
「危ないわよ、怪我しないようにね」

 甲斐甲斐しくチマメ隊の面倒をみるシャロの優しさが俺に向けられることはなかった。両手を血まみれにして泣き叫ぶ俺の存在は眼中に入っていないらしい。
 左手の指を、千夜とココアが、右手をチマメ隊が、懸命にナイフを爪の間に差し込んで、肉を切り裂きながら爪を剥いでいる。
 テーブルの上だけでなく、懸命に作業するマヤの頬にまで血液が飛び散っていた。

「いだい…痛いよぉおお、うあああああああん!!」

 この時点でもう、今までの慣れ合いのような調教プレイとは違うことが分かっていた。だけど、必死に叫んで痛みを訴えていれば、いつもの優しいみんなに戻ってくれるんじゃないか、そんな期待を胸の内に抱いていたんだ。

 でも、事態はそんなに甘くはなかった。

「もう、しかたないなぁ。それじゃあこうしようか」

 涙でぐじゅぐじゅの泣き腫らした顔で必死に懇願する俺に、何が楽しいのか笑顔を向けて来るココアは、とんでもない提案をした。

「両手の爪を全部剥がしたら解放してあげるよ。元の世界に帰してあげる」
「ゾ…ソンナ…ダッテ、ウッ…エグッ、ダエラレナイヨォ」
「良く見て、左手は私と千夜ちゃんで剥がして残り一枚でしょう。右手も残り2枚だけだよ。もう少しじゃない、ね、がんばろう?」

 いったい何をどう頑張れというのだろう。そもそも俺が爪を剥がれる理由なんてどこにもないのに。

「私たちのもとを離れたあとに、キミの名残としてこの世界に残しておくためだよ。みんなで1枚ずつ大切に持っておくから、ね?」
「ゥウウ…デ、デモォ、イ、イタインダヨォ」

 痛みと出血に全身が震える。目が回ってまともに口が聞けない。そんな俺に、こいつらは――

「ねぇ、つぎは私がやってもいいかな―?」
「残りはメグとシャロでしていいよ、なんかもう飽きちゃった」

 両手を後ろ頭で組んだマヤは、いつもの遊び疲れた子供の身勝手さでその場を離れ、用意していたアイスココアを飲み始めていた。

「私は遠慮しておくわ。そいつの血が付いたら気持ち悪いし、ココア、あんたがやりなさいよ」
「そう? それじゃあ、私がもらうね」

 どうやら俺の意思は介在しないらしい。

 血まみれのナイフを手にしたココアとメグに挟まれる形で、俺の拷問劇は再開された。


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