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戦闘
31
:
え
:2020/01/05(日) 19:46:51 ID:hJ7.fVEA
気付いたら、“左腕”が消し飛んだ。
武装も砕け、装甲も喪失。ーー危機的状況に残ったのは、蛮勇な〝勇気〟と薄っ平な〝根性〟───。
喉も爛れ、声もろくに発声出来ない。視界も真っ白だぜ…? 流石に今回ばっかりは“駄目”だなーー。
嗚呼、怖い。死ぬのは本当に怖くて寂しくて恐ろしい。死んだら『何も』残らないんだよなーー。
「(……走馬灯って本当に見えるんだな……。)」
朦朧した意識の中で、あたしは走馬燈を観測(み)た。 是れは褪せる事無い過去の記憶だ。───故郷の風景。 家族の笑顔。アイアスでの日々。戦友達の姿。そして、妹のーー。
! ……あーあ。このままだと“未練”が残る。ーーそれに、“前言撤回”だ。
「……まだ、だぜ……!」
「何度も負けてもッ! 何度も倒れてもッ! ーー立ち続ければいつ、か……必ず勝つ!」
「あたしはそうやって今迄、戦ってきたんだ…ッッ!」
「(ーー『何も』残らない……? 冗談じゃない!! 今、生きる者達に是(こ)の〝想い〟全てを託し、未来へーー!!)」
不思議な感覚だ。“誰か”隣で身体を支えてくれる様に軽い!
今のあたしは砲撃が来ようが、斬撃が飛ぼうか脚が止める気がしない。……はは、痩せ我慢だって? 確かに武装が無いからなー。───けど。見ろよ! 姉ちゃんの右拳はその武装すら凌ぐ“想い”が乗ってるんだぜ───!
あと、三歩。
あと、二、歩
あと、一……。
「ーーはは、…皆…ごめんな……。」
だが、その動きは不自然に静止する。 右拳が○の頬に触れた瞬間に、脱力した様に“するり”と拳が降ろされ、血化粧の様に○の頬に“くっきり”と血の跡が残る。
〝ぐらり〟───その肢体は、垂れされた糸が切れた様に今度こそ地面に斃れた。
「 (―――ああ、そうだな。……きっとこれで良かったんだよなーー。)」
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