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戦闘

19:2019/12/28(土) 12:14:57 ID:hJ7.fVEA


 比喩無く、“左腕”が消し飛んだ。
装甲は砕け散り、赤外套は弾け。白銀の篭手は粒子の粒と成り霧散した。

 喉が言葉を詰まらせ、言葉すら出て来る暇も無く呆気なく、地に膝を付ける。
朦朧した意識の中で走馬燈の様に比嘉茜の生涯が甦る。 思い返せば 実に“満足した人生”だ。──けど。これで終わりでいいのだろうかーー。

 武装も無ければ、装甲もない。
危機的状況に残ったのは、蛮勇な〝勇気〟と薄っ平な〝根性〟───いや、まだ『存在』した。 今迄『 “託された皆の想い” 』がーー。

 磨り減った精神を勇気と根性で震え立たせ、真白に染る視界の中満身創痍の状態でありながらも、彼女は此処に立つ!


 「……まだ、だ……!」
 「何度も負けてもッ! 何度も倒れてもッ! ーー立ち続ければいつか必ず勝つ!」
 「……あたしはそうやって戦ってきたんだッッ!」

 「そんなあたしが腕一本で止まる訳ッ────無ェだろがァッ!!!」


 血痕を撒き散らし獣の染みた慟哭は、右腕に“託された想い”を右腕に乗せて、覚悟を決めた表情で歩を進める。砲撃が来ようが、斬撃が飛ぼうか脚が止める事は無いだろう。ーー“畏怖”すら感じる執念であり妄念。

 武装すら無い右拳を血が滲む程に強く握れば、その瞳は唯一点を見据えれば、右腕を振り被るーー。

 
 「ーーはは、……最期まで甘いな、あたし…も。」
 「……託したぞ、」



 だが、その動きは不自然に静止する。 右拳が○の頬に触れた瞬間に、脱力した様に“するり”と拳が降ろされ、血化粧の様に○の頬に“くっきり”と血の跡が残る。
 〝ぐらり〟───その肢体は、垂れされた糸が切れた様に今度こそ地面に斃れた。


 「 (―――ああ、きっとこれで良かったんだーー。)」

 その拳は、決して人を殺める事無く。

 その身体は未来永劫動く事無く呼吸もする事無く。

人類の共通の最終到着である死が訪れた。ーーだが、心の底から無念の中でも満足げな顔で彼女は、顔は最後まで満足気に笑っていた。


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