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第一章:硝子の平和 Breakable-Days

1Nina Ferrier:2015/12/06(日) 10:47:50
 序章、トパーズ・ガードによるカーラ・テレル救出任務から約3ヶ月
 2018年11月13日 AM10:24 フランス パリ

<<あれから3年。あの時に我々フランス国民は大いなる悲しみを背負い、
 イスラム国というテロリストが滅んでもなお、大切な人を失った苦しみは続いています。
 しかし、彼らの無念が無為にならぬよう、我々は前に進まなくてはなりません。
 わが国のエッフェル塔をはじめ、3年前に世界中がこのパリの悲しみを等しく背負ってくれました。
 2018年11月13日。あの悲劇を繰り返さぬよう、我々フランス国民は・・・・>>
 現フランス首相、アメデオ・アデンヴァーの演説に耳を傾けた聴衆は、
あの凄惨かつ何の正当性もない虐殺を批判し、国民に反イスラム感情を訴えた。
 私、ニーナ・フェリエもその聴衆の一人だ。それもそうだ。
二度もフランスの敵から家族を奪われたのだ。

 1940年5月、フランス軍人であった私の曽祖父はナチスに殺された。
それからか、私が戦争とドイツ人を憎んでいたのは。
周りの人達は「あなた自身に関係ない」と知った風な口を開く。
曽祖父は独仏休戦協定の調印された同時刻にナチスの拷問の後に銃殺された。
そういう外道集団のナチス政権を樹立させたのは他ならぬ当時のドイツ人民であり、
現在にいたってはそのナチスを真っ向から否定している。
つまり、当時のドイツ人民の国内世論も否定され、国としてその罪を背負っていない。

 そして、3年前のあのおぞましい事件。
私はあの時に母さんと父さんを失った。
 ドイツ対フランスの親善試合を観戦していた私達家族は、
21時17分と19分、そしてハーフタイムでのイスラム国が響かせた爆音に気づいた。
左SBであるエブラ選手が一瞬動きを止めたことはまだ記憶に新しい。
何があったんだ、どういうことだ、と狼狽する観客達がやっと試合終了15分前になってスタジアムから出れるようになった。
 その後だった。隠れていたテロリストの凶弾に父さんは私をかばい、母さんは弟をかばって死んでいった。
弟も、母さんが受けた銃弾を貫通したせいで今はアムリケンドパリ病院で療養中だ。

 私はニーナ・フェリエ。
我が祖国と家族に敵する人達を許さない、ただ一般的な女学生・・・だった。

2Nina Ferrier:2015/12/06(日) 11:34:40
To:
Vieri Terrell
CC:
/
Sub:
卒業研究について
Txt:
 ハイ、ヴィエリ。調子はどう?
あれから3ヶ月ね。こっちは3年だけど。
高校受験合格おめでとう。その時にカーラちゃんが居たら・・・
あ、ごめんなさい。書くべきじゃなかったわね。
ともかく、同じ科学者の卵同士、無事にいい研究所に就けることを祈ってるわ。
 そうだわ、こないだ送った高効率LEDユニットのクリスマスツリーは届いた?
暗い過去があるかもしれないけれど、明るい未来もある。
私たちはこれからなんだから。

ニーナ・フェリエ
パリ第1大学 科学部
NinaPrayforPARIS@Rafare.ne.fr


※E-MAIL欄のメールアドレスは架空です。存在してもメールを送らないでください。

3Taiki "Taron" Goto:2015/12/06(日) 12:03:13
「諸君。今回の任務はフランス共和国親衛隊と共同でのアメデオ首相の警護だ。
 我々諜報班による調査報告によると、フランスドイツ間の国境近くの街、
 ストラスブールにて中東系の人間が多数潜伏しているらしい。
 とはいえ、旧イスラム国によるテロ以来、EUにも簡易ながらも検問が設立されている。
 しかし、その残党がテロへの報復でのフランスによる空爆への更なる報復・・・
 最悪の場合、首相の暗殺も考えられる。厳戒たる警護を実施せよ。
 なお、本任務から参加する新しいメンバーを紹介しよう。
 タイキ・ゴトウ、コールサインは「タロン」だ。
 彼は陸上自衛隊に入隊し、任期満了で除隊。その後、トパーズガードに入社した。
 十分な能力を持っている。我々も

43のつづき:2015/12/06(日) 12:36:01
軍人崩れだが、あの精鋭たるレンジャー所属だった男だ。
新人イビりはできるもんじゃないな・・・・
冗談はさておき、作戦を詳細に伝える。
アルファチームは一般人に変装し中東人のマーク、
ベータチームは戦闘開始時に共和国親衛隊のカバー射撃。
タロンが所属するデルタは遠距離狙撃からの旧イスラム残党の無力化を実施せよ。
我々トパーズガードはついに先進国の要人警護の仕事を手にした。
作戦実行は20時間後の首相の追悼スピーチ式典開始10時だ。
確かな成果を期待する、以上 解散」

2018年11月13日 14:35
 後藤大樹ことタロンは自分の鋼鉄の左手の挙動チェックをしていた。
「よう、タイキ。お前の左手・・・どうしたんだ?」
 デルタチーム隊長の陽気な黒人であるホセ・アンバーランドが新人の左手に疑問を抱いた。
メキシコ生まれでシュラスコが好物、年に少なくとも3回は部下とシュラスコパーティを行う男だ。
「ああ・・・これですか。海外旅行でのトラブルです」
 親指、人差し指、中指、薬指に小指・・・・滑らかに動く。
入社祝いとして最新の義手を支給されたのだ。
「なるほどな。うちは国籍だの左手がどうとだので差別はしないさ。
 だが、しっかりしてねえ部下のケツをバチンと叩くからな?」
「ええ、お願いします」
 ホセのコブシとタイキのコブシが軽くぶつかる。
これがデルタチーム内での友情の証だとか。
「初仕事がでかいが、きっちり頼むぜ。
 この任務が完璧に成功したら俺のおごりでシュラスコパーティだ」
「シュラ・・・?」
聞いたことのない単語を聞いてタイキは首を傾げた。
「ああ、串に肉を刺して岩塩やワインビネガーとかをかけて炭火で焼く。
 お前のところでいうヤキトリ、ギュウクシだな」
「なるほど・・・」
「そんじゃ、十分に寝て任務に備えろ。
 狙撃の際に銃の不備じゃあ親衛隊に腹を抱えて笑われる」
「わかりました、おやすみなさい 隊長」
「入社して間もないかもしれんが、そうカタくなるな。
 俺のことはホセ大尉、いやホセだけでもいい。
 ケイゴってのは日本だけのことだからな」
そう言い、ホセは自室のドアを開けて「また明日」と日本語で話した。

 タイキにあてがわれた部屋で、彼は自分の銃のメンテを行っていた。
 タイキの持つモデル24対人狙撃銃は特別仕様である。
ストック及びシャーシをRA社のものに換装、レーザーサイトとサプレッサーを装着。
バイポッドは日本のミツクロ社製の高精度なものに取り替えた。
スコープはレーザー距離計にした、彼のカスタムである。
「・・・俺がPMCか。数奇な人生だな」
 海外旅行でのことを思い出す。
両親が殺され、トレンチコートの中年に引き取られて訓練を受け、
その時に暴漢を倒した際に左手が動けなくなったことを。
陸上自衛隊での生活で義手のことがあって、色々不自由だったこと。

 タイキは夜までに全てのチェックを終え、夕食と入浴を終えて眠った。

5Unknown:2015/12/06(日) 12:45:52
4の修正
11月13日→11月12日
あたしって ほんとバカ


兄さん そろそろ始まるよ
姉さん そろそろ始まるね

うふふ 兵隊さんたち、私たちを見てどうなるだろうね
ははは 兵隊さんたち、絶対に僕達を見て驚くだろうさ

それとね アメデオ首相ってやつ倒さないとね
それとさ あの人からご褒美が貰えないもんな

兄さんと私は
姉さんと僕は

ふたりでひとり・・・・

6Nina Ferrier:2015/12/06(日) 21:49:53
 その時、私は何が起こったかわからなかった。
レピュブリック広場へ向かい、区画単位で跳躍して近づく何かが聴衆を踏みつけ、
突如アメデオ首相の周りに居た親衛隊とPMCの人達がバタバタ血を吹いて倒れた。
「ッアアアアッ!!!」
「なん・・・ギャアアッ!!」
「撃て、撃つ・・・ヌワアアア!!」
「くそ、くそ!!なんだあれ・・・!!」
「まさか、トニーレポートの・・・・!?グワアアアアアア!!」
 みなが致死の痛みの中で苦しんで、死んでいった。
 トニーレポートとやらの文書に記載されていたであろう、その存在は・・・
紅い、恐らくは返り血で染まったローブと、仮面を被った子供の体格の何かであった。
 そいつが何者かが殺した、とわかったのには遅すぎた。3年というあの期間で平和ボケしていた。
「--------!?」
 誰もが驚愕と恐怖のカオスに引きずり込まれ、本能で逃げようとアメデオ首相を中心に散らばった。
 その時だった。
「アラア、アクバアアアアアアア!!!!」
「アラアアクバ、アラアアクバァル!!!」
 ニーナが愚連隊と評する集団が口にするおぞましいあの声が聞こえた。
あのおぞましいカラシニコフの方向が容赦なく市民を薙ぎ倒した。
そうして、あの時のドイツとイスラムを憎んだニーナに戻った。
「貴様らがあああ!!!」
殺されたPMCの銃を握り、あの赤いローブの殺人鬼へと銃口を向けた。
そして、引き金を引き、ブルパップのグレード2コマンドがカラシニコフに負けじとマズルフラッシュを吐いた。

7Taiki "Taron" Goto:2015/12/06(日) 22:09:35
 どういうことだ。
突如、郊外から俊敏な速度で広場へ向かい、跳躍で首相へ飛び込む紅い何か。
「・・・・!?」
 驚愕しながらも、それへのモデル24による狙撃は躊躇わなかった。
タロンや他のデルタチーム隊員の狙撃はヒットしたはずだが、止まる気配もない、おかしい。
 相手の相対速度、風向き、全てを計算して正確に人間での急所の部分・・・
おそらくだが、そこに撃ち込んだ。
なのに生きている。こいつは一体なんだ!?
 ホセ隊長のショートスコープ付きである軽オートマチック銃が7.62ミリ弾での制圧射撃を実施。
「くそ、くそ!!シュラスコが食えん!!タロン、ヤツに撃ったはずだよな!」
「はい、ですが死なないんですよ・・・!!」
<<隊長!!こちらも狙撃を命中させましたが止まりません!>>
<<こちらもです、ホセ!!>>
<<4から8、同じく!!>>
 他のデルタチームの狼狽が無線を通じて聞こえた。
そして、アルファとベータへの攻撃を許し、ついには首相への肉薄させてしまった。
ここから首相の首を絞め、気絶させたのがわかる。
「チッ・・・首相を盾にしやがった」
「・・・隊長、あれ・・・!!」
少女がブラボーチームの銃を握り、紅い死神めがけて撃っている。
「まずい・・・完全に錯乱している、デルタ1より各員、スナイプポイントを移動!
 あの少女を援護するんだ、オーバー!!」
<<デルタ2了解!>>
<<3了解!>>
<<4から8、アファーマティブ!!>>
「さあ行くぞ、タロン!」
「デルタ9、タロン了解・・・」
移動し始めてすぐ、タロンとホセが居た位置に紅いローブからの射撃が襲い掛かった。

8Topaz Guard  Delta-Team:2015/12/06(日) 22:18:19
 もはや誰も救える状況ではなかった。
市民を助けるべきか、大統領の救出をすべきか。片方を失う選択だった。
そのような決断、ホセのような男でも決め難い状況であった。
 スナイプポイントの移動中に隊長の号令でイスラム国残党兵への正確なヘッドショットをこなす。
そんな芸当ができるデルタチームの技量は非常に高水準であったが、
あの中東の兵士とあの化け物の魔の手を抑え込むには無茶がありすぎた。

「ッ、くそ、くそ!!」
 デルタ8は故郷のアメリカで結婚を待つフィアンセが居た。
この任務が完了し次第、ホセ隊長やみんなと結婚式でシュラスコを食うつもりだった。
 そのデルタ8の視界には、銃で応戦する少女とは別で、
避難の際にはぐれたのか、男の子が倒れている。
「あの少年も援護せねばならんとは、なん・・・・」
その男の子の影が巨大な手となりデルタ8を縛り、握りつぶした。
この時、愛する婚約者の名前を叫びながら死んでいった。
「あ、アメリアアアアアアアアアッ!!!」

9Nina Ferrier:2015/12/06(日) 22:31:13
 カチ、カチ。
いくらトリガーを引いても弾が出ない。
弾切れだが、それでもフランス市民を襲うよう手引きしたこいつは許せない。
「死ね、死ねェェェ!!」
小銃を思いっきり紅いローブへと投げつけたが、アメデオ首相に当たるだけだった。
「・・・・・・・。」
紅いローブから見える仮面がこちらを向いた。
その仮面の模様はシリアルキラーにふさわしい、グロテスクなものであった。
「・・・・・・!」
 その禍々しさにはニーナの顔がしおれ、萎縮せざるを得なかった。
 私がフランス陸軍でテロリストと戦う兵士になっていれば。
こんなことにならなかったのだろうか。
こんな、ことに。
その恐怖で硬直してしまった時に・・・。
「なあなあ・・・僕達の計画邪魔する気ー?」
真っ黒の男の子が影法師のごとくすばやく動き、ニーナの首を肘で締め上げる。
「ねえねえ・・・でもそのガッツすごいよー。
 VF-、この人なかなか素質あるかもだよ?」
気づけば男の子は真っ白な女の子に変貌していた。
「VF-、この女性は・・・いけるんじゃない?」
「・・・・・・・・」
 頷いて気絶させたアメデオ首相を右肩へと担ぎなおし、
ニーナの頬から地面へ殴り倒し、彼女を左肩へ担いだ。
「あが・・・ぐ・・・・」
「よかったー、VFなら殺すかと思ったからさあ」
 狙撃をしているPMCの銃弾を、女の子が光の膜で溶かして消している。
 私をどこに連れて行く気なんだろうか。
「・・・・・・・・・」
「えー、あんな人間ごときの掃除ー?しょうがないなぁ・・・」
 女の子は男の子へと変わり、PMCの狙撃兵を影で刺し殺していく。
「・・・・・・・・・」
紅いローブは浮かぶかのように跳躍し、どこかへ去っていく・・・。

10Kokuei -The Black Shadow-:2015/12/06(日) 22:53:37
 ふふ、今日のVFって機嫌いいみたいだね。
だってさ、僕と姉さんの頼み聞いてくれるというんだからさ。
 それにしても、イスラム国残党の人間はヘボいなあ・・・。
あの程度の雑兵にバタバタ殺されて、たった327人しか殺せてない。
 予定の1200人虐殺ができてないんじゃあ、僕の仕事が増えてしまう。
淡々と影の障壁で銃弾を防ぎながら兵士を握りつぶすくだらない仕事だけじゃなくなる。
「だからさあ・・・いい加減死になよ・・・・」
 狙撃タイプの敵モブはあと3人と2箇所だったっけ。
そう考えてるうちに片方の一人だけのほうも死んじゃった。
残りはあと二人の箇所。
クロンボおっさんとジャップのヌーブをぶち殺した後にフランス人をある程度血溜りに。
それで仕事が終わりだなんて、あの人もひどいなあ。
 ははは、まあゲームみたいなものだからいいや。
さーて・・・クロンボからとっ捕まえて、あのヌーブに悲鳴聞かせようか。
 僕の影がグングン伸びる。
冷たい影が、グングン、グングン・・・・。
逃げても、影を撃っても無駄なのにクロンボはしつこい。
「くそ、なんだこれは・・・・ うおっ!?」
つーかまーえた!!さっきのアメリアって叫んだ奴より痛みを感じさせながら殺しちゃえ!!
ギチギチ、ギチギチ締めてやる、影の手の内側はスパイク生やしてね。
「アイアンメイデンならぬシャドーメイデン・・・!」
このゲームもゲームバランスおかしいなあ・・・。
僕が一方的に殴れるゲームってクソゲーじゃん。
「ぐぐ・・・タロン!!撃てェ!!
 あいつの影は俺に集中している、撃つんだあァ!!」
「了解・・・!!」
とかホザいてるけど、ザコがセリフ付きって優遇されてるし、いいか。
そんなヌーブが僕に銃弾を飛ばしたから驚いちゃった。
「あ・・・」
 と僕が驚いた反動でクロンボを握りつぶしちゃったからクロンボはトマトの汁になった。
最後のヌーブが僕を不機嫌にさせてくれたせいで・・・楽しめないじゃないか。
「せめて強くなってからだよ、僕に楯突くのは」って、口に出しちゃった。
・・・・?
僕、いいこと考えた。
 あの女の人と同じく連れ帰って強く改造すればいいじゃん。
きーまり、あいつも捕まえるー!
「くそ・・・みんな死んじまった、くそォ!!」
 だってさ。ヌーブが逃げても逃げても影は追いかける。
左、右、上に下。やっぱ左、あーチョロチョロするなあ・・・。
まあヌーブはバテたし、らくらくゲットした。お持ち帰りだからねー。


時間:不明
 おっと・・・警察がやっと邪魔しに来たか、帰らなきゃ。
 影の檻にヌーブを入れ込んで、僕自身の影を伸ばし・・・、
ゴムの要領で戻って高速移動でVFのところまで追いつかなきゃ。

11Nina Ferrier:2015/12/12(土) 18:09:08
フランス某所 未明
おそらく・・・何かの研究所

「これが例の娘か、VF」
「・・・・・・・」
「僕が見込んでVFが認めてくれたんだ、それに、
 どうやら、この人やっぱり・・・だったみたい」
「・・・・・あの・・・の知り合いらしいが」
「そうだよ、・・・にはピッタシだと思わない?ねえ?」
「この娘、小僧と既に・・・だったな。
 いいだろう・・・・・として最高じゃないか。
 よくやった、思いがけない・・・・だ。
 お菓子を増やしておく、後で貰いに行って来い」
「わーい、ありがとうー!」
「さて、この日本人の処遇は」
「・・・・・・・」
「わかった。・・・生きていれば部下になれていたものを」

 混濁する意識の中で、重要なところが聞こえない。
小僧?誰の事?広場を襲ったあの子のこと?
それとも・・・。


フランス位置不明 未明からおそらく数時間後

「・・・・・・ん・・・?」
 目覚めた時には手が後ろに回り、アルミパイプの椅子に鎖で縛られていた。
 足には溶接で固めたかのような手錠が私を拘束している。
 おまけに視界は黒い布で隠され、口は何かを詰められ話せない。
 私は何をされたんだろう?
 私の首筋から、全身にわたって何かの液体が駆け巡っている。
ドロドロ・・・とゆっくり自分の体を変えている。
 それを自覚する前に、激痛が全身を駆け巡った。
「------!!」
 体中を襲う何かを追い払うよう暴れようとしたが、拘束が許さない。
3分・・・のはずだが、永遠に続くように感じた・・・ほど苦しみ、やっと痛みが引いた。
「ムグウゥ・・・・!!」
 荒い息による呼吸をしようとしたが、詰め物がそれを許さない。
 なんとかしなければ。
 聴覚からは風の音が聞こえる。ここは外なんだろうか。
「(ああ、くそ・・・あの赤い奴らに拷問を・・・?)」
 生きたい。このまま死んでたまるか。
あいつらはムジャヒディンと結託をしていたのだろう。
許せない。こんなことをしてタダで済むと思うな。
中東人め、中東人め・・・・!!

 しばらくして、鋭い何かが目をふさぐ黒い布を引き裂き、詰め物を引き抜いた。
更に手と椅子の骨格をつなぐ鎖が砕け、足周りを固定する溶接した金属を霧散させた。

 視界に情景が入る。手足が動く。喋れる。
束の間の不自由は普通の人間ではありえないほど、あっけなく解けた。
「・・・・ここは?」
 グレーのコンクリートに鉄筋が打ち込まれた四方の壁。
 天井には「Escape Now」と書かれた血文字。
 床は”Vermilion visage ne vous regarde”の文字。
「今すぐ逃げろ、バーミリオン色の顔はお前を見ていない・・・?」
 そうしたいが、どうにかこの部屋から出ねばならない。
自分を自由にした風は何だったのか、それも不明だが今は脱出が先決だ。
 赤茶けて錆びた鍵付きドアを解除したい。
その思考に風は応えてくれたのか、ドアはバターのごとく細かく刻まれた。
「開いた・・・・」

12Nina Ferrier:2015/12/12(土) 18:37:53
 今、自分の服装は下着とタンクトップのみだ。
豊満ではないが、それなりに自信がある胸部はタンクトップの薄い黒生地を透けて見える。
ここに連れ去られるまでの服は奪われたか何かをされただろう。
11月の秋風は研究所内部まで及び、薄ら寒い。

研究所 監禁室付近
「・・・・」
 自分なりにスパイ映画のごとく、壁に張り付いて誰かいるか確認し、居なければ前進していく。
「おかしい」
 警備兵が居ない。私が抜け出せば鳴るであろう警報装置の類も一切ない。
いくらムジャヒディンの隠れ家と仮定しても、ザルが過ぎる。
だが、それは今の自分にとって好都合だ。
 今までのナメクジのごとくの進み具合は加速し、廊下らしき通路へと出た。

「・・・・・・」
 ここまで人の気配は一切ないまま進んできた。
自分がいた監禁室から12分ほど進んで、再び廊下へ出た。
 すぐそばの青い扉の中では恐らく二人の男が話をしていた。
 しかし、日本語で話しているため会話の内容が不明だ。
「・・・・」
 廊下の奥から光が漏れている。出口だろう。
自らを急かす気持ちを抑え、慎重に光のほうへと進んでいく。
 その道中でロッカールームへと入った。
どれも電子ロックでしまっている中、ひとつだけ開いているものがあった。
 その中からは軍用ナイフと防弾チョッキ、茶色で4つボタンと胸ポケット付きのBDU、軍靴があった。 
それら全てを着用し、万が一に警備兵がいた際での反撃に備え、ロッカールームを出た。
 出口まで残り120mほどの廊下、そろそろ脱出できるのだろう。
 そうして、光の向こうには希望などなかったことに苛立った。
外は夕闇で輝き、日没までそう時間はなかった。
「やっぱりそう易々と・・・!!」
「あ、ようやく来たんだ おねえちゃん」
 黒い男の子と互いに入れ替えができる白い女の子が待ち伏せていた。
「私急いでるの、どいてもらえるかしら」
 お願いする口調で女の子を懐柔しようとするも、
「悪いけどおねえちゃんを倒さないとお菓子貰えないんだって、ダメダメ」
案の定拒否される。
「それに、戦わない理由もないし、おねえちゃんをおもちゃにしたいもん。
 あの人ばっかり弄繰り回してずるいー!」
「いじくり・・・!?な、何をしたの?」
 あの数時間ほどのことで、彼らは私にどういったことをやってきたのだろうか。
「新しい人間になる準備だってさー」
 そんなもののために、今生きている人達を虐殺したのだろうか。
許せない。この子はそれを知っていて加担しているんだ。
子供であろうと同罪だ、私を助ける風で切り裂いてやる。

 この時、私は風の力が自分のもの、とどこか遠くで気づいていた。

13Taiki "Taron" Goto:2015/12/12(土) 18:48:35
 俺は・・・・?
ここはどこだ・・・・?
奴らは・・・?
「ふふふ、君のご好意に感謝するよ」
 意識がハッキリしない中、頭の中に響くように声をかけられる。
「君が彼女より生きたいと望んだおかげだ」
「簡単に言えば、君が彼女を殺してもらうよう望んだ」
 どういうことだ?あの広場で赤いヤツを撃ったあの子か?
「何が起きているかわからんだろう、そうだろう。
 まあ、目を開けて現状を見てくれたまえ。特等席だ」
・・・。
 視界がハッキリし、ガラス張りの目の前の情景は恐ろしいものだった。
あの女の子は目に見えない何かで真っ白の少女を切り裂いている。
 その少女は負けじと見るからに高熱な光で女の子が居た場所を燃やしていく。
二人とも、何をしている?
「そうだ あれは処刑だ」
気づけば、今自分が聞いている言葉は日本語であった。
「お前がこの殺し合いをするよう仕向けた。
 お前の罪でもあり、お前の理想でもある。
 陸上自衛隊で殺し合いをしたかった、そうだろう!」
抑揚が明確とし、自分の心が書き換えられていくかのようなトーンだった。
「だが、それでいい まもなく世界は戦いによって世界人口を減らし、
 優れた人間が未来の綱を紡ぐ」
「彼女らと君・・・いや、私やあの赤いアレ、我々はVFと呼んでいるが・・・
 我々はそのための犠牲となってもらう」
「どうやって・・・!」
「それ以上は話せん。この戦いが終わったらじきにわかる」
「止めさせろ、人のための犠牲など・・・!」
 俺は同じ日本人である・・・のかもしれん、男に叫んだ。
「犠牲のない世界など・・・ない」
 と返しただけで、特等席とやらの部屋を出た。
それと同時に電子ロックが外側からかけられた。

14Nina Ferrier:2015/12/12(土) 18:59:20
 風と白い光が互いに僅かながらも傷を与え続けて約3分。
「まあ肩慣らしだもん、おねえちゃんもそうでなくっちゃ」
 白い女の子、白光は黒の男の子、黒影へと変化していく。
 黒影が自らの影から放たれる、極寒のエネルギーは影に触れた物質を硬直させる。
「ぐ・・・!」
 その影はニーナをも高精度で追尾した。
影に風は通用しない。どうすれば。
「ぼ、防御・・・!!」
 どうにかなれ、と思わんばかりに無茶振りを声に出したその時である。
風での防御ではなく、地面が鋭く隆起した。それが伸びる影を邪魔していく。

「うそん・・・!?」
 黒影は驚くしかなかった。
風を使うかと思えば、それだけでなく土を使うのだから。
 この時、あの人がこの”おねえちゃん”を改造したことを僅かに怨んだ。
 もっと僕を強キャラにしろよ、と。

 その土が影を包み込み、中で握りつぶされていく。
「私の故郷を踏みにじった痛み、思い知れッ!!」
土は巨大な手となり、黒影を握らんと追いかける。
「ヒッ・・・!?」
驚きのあまり、影で対抗することを忘れ、距離を詰められる。
影の手を出そうとするが、その前に土に潰されていく。
「ぐぎゃ・・・・・あが・・・・ァアア!!!」
絶叫する黒影と白光の木霊は土の中へと沈められた。

「ハァ・・・ハァ・・・・!!」
体中が焦がされ、アドレナリンで動かしていた体もふらつきが見えていく。

15Vermilion "The VF" Face:2015/12/12(土) 23:40:55
「・・・・・・」
 その赤いローブの仮面は、研究所の野外実験エリアでの戦闘をエリアの隅にてまじまじと見つめていた。
勝利したのは自分が連れ去った女だったが、もはや息が絶え絶えとなっていた。
 その女は白光により脚部を損傷し、満足に動けない。
「・・・・・・・・」
 あの男はこのまま逃がすわけにはいかないだろう。
<<データは取れた。あの女を始末しろ。お前の手でな>>
 耳朶に直接通信が入り、命令が来た。
予想していた通り、「殺せ」と。
 ・・・・。
いつものことだ。数時間前の広場の兵士や民間人の虐殺などよりは軽い。
「・・・・・・」
 女へとゆっくり歩き近づく。
やがて女が自分の存在に気づき、風を、土を放つ。
「・・・・・・・・」
 戦闘後の疲労か、恐怖か、狙いが定まらず赤いローブに当たることはない。
・・・・。
<<その女はドイツの銃かカラシニコフを憎んでいる。
 どちらかの銃で殺せ>>
 追加の注文が入ってきた。これには従わなければならない。
ローブから試作モデル8のシャープシューターが出現し・・・
 鈍い銃声が、ニーナの眉間を撃ち抜いた。
「・・・・・・・・・・」
<<よし ここはいずれ感づかれる 撤退だ。
 イスラム共にここを死守させる>>

16Taiki "Taron" Goto:2015/12/13(日) 00:00:48
 "能力者"・・・・。
そう定義される、白光/黒影やVF、ニーナは何なんだろうか。
 戦闘を見ている限り、身体能力の強化だけならず、特殊な攻撃を用いていた。
 東欧では、そういった異能を持つ集団がある噂を聞いたが眉唾と思っていた。
そんな嘘八百に近い状況が目の前で繰り広げられ続けていた。
 赤いローブが殺した黒髪ロングの女の子は事切れ、赤いローブはどこかへ去っていった。
「お前にはもう少し働いてもらう。北米へ来てもらうぞ」
 電子ロックを物理的に破壊し、入ってくる先ほどの男。
やはり日本語を話している。
「・・・・あんたは・・・何者だ・・・・俺達を実験台にして何を目指す?
 あんなことで人類を未来へ導くことができるのか?」
「だからこそ、このフランスでイスラム人を陽動に使ってまでやっている。
 お前には北米で働いてもらおう、なにしろヤツと遠い縁があるからな」
「ヤツ・・・・?」
「ジョニー・J・バウンヅ。3ヶ月前に死亡したトパーズ・ガードのNo.1オペレーター。
 ヤツはあの赤いローブが始末した。ジョン、という呼び方ならわかるだろう」
 その言葉を聴いて、憎悪が全身を奮わせた。
シリア内戦で活躍し、その実力のある人のもとで抑止力を十分に発揮すべく、
わざわざ自衛隊を抜けてまで入社した理由である憧れの人を殺した。
それが自らを怒りの炎で燃やす。
「あんたらが・・・!!」
「せめてヤツの国ってものを体感させてやろうというのだ。
 来い、いずれここがバレるからな」
男が注射を取り出し、残像が見えるほどの素早い動きで首筋に麻酔薬を打ち込んだ。
 そうしてまもなく、タイキの意識は途切れた。

17名無しさん:2015/12/13(日) 00:13:06
VFらが撤退完了した数十分後、戦闘が開始。

フランス首相を誘拐し、民間人を虐殺し兵士を殺傷したテロリスト達を殲滅すべく、

フランス陸軍、海軍、空軍の3軍により研究所を攻撃。

イスラム国残党兵約120名は8時間に及ぶ戦闘の末全員死亡。

アメデオ首相はすでに死亡、その遺体には熾烈な拷問の傷跡が残っていた。

これにより国内世論は再び報復感情に動き出す。

数日後である11月19日に旧イスラム国が存在したシリアへと侵攻。

これに乗じた米国を筆頭とする先進国は中東へ派遣。

各国にて旧イスラム国だけならず、イスラム教徒を悪とする右派が台頭し、

先進国兵士と中東諸国を巻き込んだ中東紛争が再燃し始めた。

18名無しさん:2015/12/13(日) 00:21:24
 STARRING


Nina Ferrier
Taiki "Taron" Goto
Vermilion "The VF" Face
Hakkou / Kokuei
Man Who is Unknown
ISIL solider
Garde républicaine
Topaz Guard Delta Team
Jose Amberland


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Vieri Terrell


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