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o川*゚ー゚)oは残像のようです ―2016 Remastered―
298
:
以下、名無しに変わりまして素直キュートがお送りします
:2016/10/07(金) 21:35:29 ID:ft.zo5ug
最近に読み直したらリマスター来てて驚いた
299
:
◆LemonEhoag
:2016/10/11(火) 20:00:56 ID:aMRR4.E.
投下開始します。
300
:
◆LemonEhoag
:2016/10/11(火) 20:05:10 ID:aMRR4.E.
_
( ゚∀゚)「うぃっす」
( ・∀・)「おう」
教室に入り、ジョルジュと短い挨拶を交わして自分の席に向かう。
白と黒の縞模様のマフラーを外すと、首筋を冷たい空気が撫でた。
(;・∀・)「寒っ……暖房どうなってるんだよ」
ひとりごちて、視線を暖房が置いてある方向へと移す。
テントウムシの冬眠のように、クラスメイトが排気口の前に固まっていた。
なるほど、あれなら暖気が教室に広がらないのも仕方ない。
( -∀-)(だからといって、あそこを確保するために早く来るのもなー)
その様子を眺めながら、暖房と部屋の布団の温もりを天秤にかけてみる。
頭の中で、布団が僅差の勝利を収めた、そのとき。
入口あたりから何かが勢いよくぶつかる音が聞こえ、僕は思わずそちらを振り向いた。
o川*^ー^)o「みんなー!!! おっはよー!!!」
(;・∀・)「……え?」
開かれた前方のドアの前に立って、元気よく朝の挨拶をするキュートの姿が、そこにはあった。
301
:
◆LemonEhoag
:2016/10/11(火) 20:10:30 ID:aMRR4.E.
.
o川*゚ー゚)oは残像のようです ―2016 Remastered―
第八話 死んでも忘れない気がしてる
.
302
:
◆LemonEhoag
:2016/10/11(火) 20:16:39 ID:aMRR4.E.
「キューちゃんやー! ほんまもんのキューちゃんやー!」
「なんということでしょう、あんなに寂しかった教室がこんなに色鮮やかにいいい!!」
_
( ;∀;)「キューちゃああああああん会いたかったよそのおっぱぶべらっ」
教室中の人という人が、一斉にキュートの元へ駆け寄っていく。
頑なに暖房の前から離れようとしなかったテントウムシの集団も例外じゃない。
そうしてできあがった人の壁は、泣き叫びながら飛び込んでいったジョルジュをあっさり跳ね返すほど強大だ。
「キューちゃん待望論が湧きあがってたのは知ってるけど!
だけど落ち着こうっ!? この勢いじゃ誰か死んじゃうって!!」
余計なひと言を付け加えながら、僕の席からでは姿の見えないキュートがみんなを制する。
事態を飲み込めない頭の片隅で、どこか懐かしさを感じた。
(;・∀・)「……って、懐かしんでる場合じゃない。
待て。色々と待て、何が起きてる? もう学校来れないんじゃなかったのか?」
ひと月ほど前、公園で久しぶりに会ったあの日。キュートは確かにそう言っていた。
あのときの様子からして、実は全部嘘だった、なんてことはないだろう。
もし嘘だったら、全力でグーで殴るレベルだ。
303
:
◆LemonEhoag
:2016/10/11(火) 20:20:28 ID:aMRR4.E.
「そうだ、こんなことしてる場合じゃないんだった! ちょっ、ごめんどいてどいて!」
突如、慌てたようなキュートの声が聞こえてきた。
そして直後、もごもごと人混みが動き始める。
o川*>д<)o「うーん……だーりゃー!!!」
人混みの中からまず最初に、かき分けるように突き出された両腕が出てくる。
次にすぽん、という音でも聞こえてきそうな勢いでキュートの全身が飛び出してきた。
そして、きょろきょろとあたりを見渡して、僕と目が合った瞬間。
o川*^ー^)o「あーモララーいたー!! 会いたかったよー!!」
(;・∀・)「うおおおおおおおあああああっ!?」
花の咲いたような笑顔でキュートは僕の胸の中に飛び込んできた。
304
:
◆LemonEhoag
:2016/10/11(火) 20:26:10 ID:aMRR4.E.
(; ∀ )「おっごおおお……」
椅子ごと倒れ、受け身も取れないまま後頭部を床に打ちつけた。
視界にいくつもの星が、ちかちかと光りながら飛び交っている。
さすがにまずいと思ったのか、キュートの謝罪の声が聞こえてくる。
(; ∀ )(散々心配させた挙句、これかよ……)
ふつふつと、心の中に怒りが込み上げてくる。
そうだ、ちょうど胸元にいるんだし、ガツンと説教してやろう。
後頭部の針で刺されるような痛みに耐えながら、キュートの方へ顔を向けた。
(#・∀・)「お前な、久しぶりに会っていきな……」
o川;゚ー゚)o「ご、ごめん……だいじょぶ? 痛かったよね?」
( ・∀・)「」
吐息がかかるほど近くに、心配そうな表情のキュートの顔があった。
謝罪の言葉を紡ぐために動く唇に、自然と視線が向く。
頭は痛みも忘れ、あの瞬間を勝手に、鮮明に思い出していた。
(* ∀ )「だ、だっだっだだっだだだだ大丈夫、だ……よ……」
305
:
◆LemonEhoag
:2016/10/11(火) 20:31:38 ID:aMRR4.E.
o川;゚ー゚)o「ちゃんと喋れてないよ? 頭大丈夫?」
(* ∀ )「ぜ、じぇんじゅえんふぇいき! にゃんともない!」
まともなことを喋ろうとしても、キュートの顔が目に入るのでいろいろと思い出してしまう。
その度に頭の中が真っ白に染まって、どうしようもなくなってしまう。
(* ∀ )「え、えっと、うん、ちょ、ちょっと離れてくれない、かな……」
o川;゚ー゚)o「え、どうしたの? ねえ?」
太ももをつねることで、なんとか少しだけ冷静さを取り戻す。
かつてないくらいにどもりながら、キュートに僕の上から退くように促す。
(* ∀ )「まあ、その、ええ、なん、という、か……思い出しちゃうんで……いろいろ」
頭上にクエスチョンマークでも浮かんでそうな表情で、キュートが理由を尋ねてくる。
顔から火が吹き出そうなほど恥ずかしかったけど、仕方なく答えた。
o川;゚ー゚)o「いろいろ……? うーん……」
o川;゚ー゚)o
o川;゚д゚)oそ
o川* д )o「ぁ……ぅ……ぁ……」
306
:
◆LemonEhoag
:2016/10/11(火) 20:35:40 ID:aMRR4.E.
キュートはしばらく、表情をころころと変えて悩んでいた。
やがて、何かに感づいたように大きく目を見開くと、一瞬で耳の先まで顔を赤く染めた。
(* ∀ )「分かったんだったら……って、なんでもっとくっついてくるんだよ!!」
なぜかキュートは僕の制服を握りしめ、顔を胸に押し付けてくる。
ううー、と唸りながら一向に離れようとしない。
(* ∀ )「どうしたんだよ……」
「だってぇ……」
顔を上げないままキュートが消え入りそうな声で呟く。
胸にかかる吐息の温かさに、落ち着き始めた心臓が再び高鳴り始めた。
o川* д )o「こうしないと顔見えちゃうし、見られちゃう……」
ちらりと潤んだ瞳で僕を見上げて、そう言うとキュートはまたすぐに顔を伏せた。
制服がより強く握りしめられ、引っ張られるのを肌で感じる。
(* ∀ )(ああああああああ可愛いなちくしょおおおおおお!!!)
307
:
◆LemonEhoag
:2016/10/11(火) 20:41:41 ID:aMRR4.E.
「おいコラそこのバカップル。なーにふたりして顔赤くしてんだ」
殺気を孕んだ声が聞こえて、意識を現実に引き戻される。
あたりを見渡すと、クラスメイト一同が僕たちを取り囲むように立っていた。
みんな一様に表情は冷めきっていて、異様な不気味さを醸し出している。
「何があった、俺たちの知らないところでふたりに何があった」
「返答によっては殺す。モララーだけ殺す」
_
( ∀ )「よし、女子はキューちゃんを確保。男子はモララーを取り押さえろ。
モララーから事情を聞き出せ。何をやっても聞き出せ。聞き出したら内容次第で殺せ」
(;・∀・)「ちょっと待て、今回ばかりはみんな本気だとしか思えないんだけど!?」
いつの間にか現れたボロボロのジョルジュが、みんなに物騒すぎる指示を出す。
じわりじわりと、包囲網が狭まってくる。もっと早く逃げるべきだったかもしれない。
o川;゚ー゚)o「みんなストップストップ! ビークール!」
ようやく元に戻ったキュートが立ち上がり、みんなを制止しようとする。
体が自由になった僕も、立ち上がってふたりがかりで訴えかけようとした。
308
:
◆LemonEhoag
:2016/10/11(火) 20:48:18 ID:aMRR4.E.
_
(#゚∀゚)「悪いがいくらキューちゃんの頼みでも、今回ばかりは譲れねぇ!
全員、構え! 目標捕捉! 突撃ぃぃいいいい!」
しかし、ジョルジュはキュートの制止を振り切った。
号令と共に人の壁が迫ってくる。
(;・∀・)「のおおおおおおおおおお!!!」
o川;゚ー゚)o「いっ……みんなごめん! まだ捕まるわけにはいかないの!
モララー! 絶対離しちゃダメだよ!」
そう言ってキュートは、まだ立ちあがれていない僕の手を握った。
(;・∀・)「えっ、ちょttうおわああああああああ!!!」
僕が反射的にキュートの手を握り返すと、見える景色が一気に後ろへ流れていった。
みんなの声が遠ざかったかと思うと、あっという間に聞こえなくなる。
体が慣性のままに右へ左へ振り回され、全身が満遍なく打ちつけられる。
(; ∀ )(地獄は……ここにあったのか……)
限りなく引き伸ばされた一瞬の中で、僕に分かったのはそれだけだった。
309
:
◆LemonEhoag
:2016/10/11(火) 20:55:38 ID:aMRR4.E.
o川;゚ー゚)o「ここまで来れば大丈夫かな……ってここ、どこ?」
(; ∀ )「」
唐突にキュートが止まって、地獄が終わりを告げる。
頭上から聞こえてくる声からして、めちゃくちゃに走ってここに辿り着いたらしい。
そんなことよりも全身が猛烈に痛い。体を動かす気が削がれるほどだ。
o川;゚д゚)o「ねーモララー、ここって……うわぁ!?」
現在地を尋ねようとして僕を見たのか、キュートは驚きの声をあげた。
すぐに繋いでいた手を離して、僕の体を心配そうに揺さぶってくる。
o川;゚д゚)o「大丈夫!? ねえ!」
(; ∀ )「う、ご……かさ、ないで……痛い」
気持ちはありがたいけど、揺さぶられる度に激痛が走る。
もしかして、逃げても逃げなくてもこうなる運命だったのかもしれない。
o川; д )o「……ごめんね、また迷惑かけて」
視線だけ動かして見たその表情は、泣きそうになるのをこらえているように見えた。
310
:
◆LemonEhoag
:2016/10/11(火) 21:02:07 ID:aMRR4.E.
(;-∀・)「また、とか言うなよ。迷惑だなんて思ってない」
キュートの頭に手を置き、柔らかな髪をくしゃくしゃと撫でる。
撫でている間だけは、不思議と痛みは耐えられる程度に和らいでいた。
(;-∀・)「とりあえず、そっとしといてくれ」
o川*゚ー゚)o「……うん」
僕の手を取って頭から離すと、キュートはそっと体の脇に置いてくれた。
元気は取り戻してくれたらしく、静かに微笑むとなぜか僕の頭の横へと移動する。
o川*゚ー゚)o「よいしょ、っと」
(;-∀・)「ん……?」
キュートが僕の頭を持ち上げて手を離す。
しかし、頭は高い位置で保たれていた。
頭の下に何かが入れられているようで、後頭部にほどよい柔らかさを感じる。
o川*゚ー゚)o「初めてやったんだけど、具合はどうですかー?」
その何かが、キュートの膝だと理解するのに時間はかからなかった。
(;・∀・)「な、えええっ!?」
311
:
◆LemonEhoag
:2016/10/11(火) 21:07:17 ID:aMRR4.E.
o川*゚ー゚)o「はーい、安静にしてましょーねー」
(;・∀・)「あ、はい……」
慌てて跳ね起きそうになる僕の額を、キュートが手のひらで抑えつける。
為す術もなく体の力を抜くと、そのまま僕の頭を撫で始めた。
同じ体温のはずなのにやたら温かく、同じ手なのにやたら柔らかく感じる。
(;・∀・)「なあ、なんで学校に来れたんだ?」
やることもないので、ずっと聞く機会を失っていた疑問をぶつけてみる。
o川*゚ー゚)o「おお、なんと奇遇な。モララーに会ったら絶対言おうと思ってたの」
運命かもね、とキュートは嬉しそうに微笑む。
そう言うには些細なことすぎる気はするけど、本人はいたって幸せそうだ。
野暮なことは言わないでおこうと思い、代わりに僕も微笑み返した。
o川*゚ー゚)o「えっとね……あのあと、あたりまえだけど家に帰ったの。
そしたら、わたしのことはもちろん探してたんだけど、それとは別件で大騒ぎで」
(;・∀・)「別件?」
312
:
◆LemonEhoag
:2016/10/11(火) 21:15:48 ID:aMRR4.E.
研究員にとって、キュートの脱走と同じくらい慌てることなんてあるのだろうか。
マウスとは訳が違う、国が介入してくるほどの研究の、唯一の研究対象なのに。
o川*゚ー゚)o「わたしが帰ってきたら、研究所のお偉いさんが喧嘩してたの。
詳しく言うと、荒巻博士の支持派と反対派が」
(;・∀・)「なんでそんなことになってたんだ?」
o川*゚ー゚)o「支持派の人が、わたしが脱走したのは反対派がまた研究でわたしを縛ったからだ、って。
逆に反対派の人は、支持派がわたしを外に出さなきゃそもそもこんなことは起きなかった、って。
恥ずかしい話だけど、責任のなすりつけ合いしててさ」
恥ずかしいというか、みっともない話だと思った。
非常事態と呼べる状況で、大の大人が互いの揚げ足を取りあっているなんて。
o川*゚ー゚)o「しかし、それを知ったわたしの頭はフル回転! いいこと思いついちゃったわけ!」
自慢したくて仕方ない、と言わんばかりにキュートは目を輝かせて口角をつり上げる。
実際に見たことはなかったけど、どや顔というのはこういう顔のことを言うんだろう。
( ・∀・)「面白い、聞かせてもらおうじゃん」
313
:
◆LemonEhoag
:2016/10/11(火) 21:26:09 ID:aMRR4.E.
o川*゚ー゚)o「喧嘩してるところに颯爽と飛び込んでいったわけよ!
話は聞かせてもらった! みたいな感じで!」
o川*゚д゚)o「それでね、わたしはこう言ってやったの!
『わたし、また普通の生活がしたい! ダメなら何度でも脱走してやるんだから!』
その場にいた人たち、みんな目を丸くしちゃって……面白かったなぁ」
悲壮感に溢れていた以前の独白とは違い、実に楽しそうに僕に語りかける。
ころころ変わる表情の中に、悲しみを含んだ物はひとつもなかった。
o川*^ー^)o「これで勢いづいた支持派に、反対派はすっかり抑えこまれちゃったの。
それで、いろいろお偉いさんと話し合って一ヶ月。
ようやく話がついて今日、学校に来れたというわけなんですよー!」
キュートは頬が緩むのを隠しきれないような笑顔を浮かべる。
頭を撫でる手に少しだけ、力が込められるのを感じた。
( ・∀・)「……よかったな、本当に」
o川*^ー^)o「うん!」
キュートの笑顔の奥に、一枚の扉が見えた。
扉にはめこまれたガラスの向こうには、彼女の笑顔に似た雲ひとつない青空が広がっていた。
314
:
◆LemonEhoag
:2016/10/11(火) 21:33:59 ID:aMRR4.E.
( ・∀・)「そういえば、ここって……」
痛みが治まってきた体を起こして、周囲を見渡す。
確認した限り、ここは踊り場のようなスペースになっている。
そばにあるのは一枚の扉と下に続いている階段だけ。
o川;゚ー゚)o「あ、そうだった。ここってどこ?」
( ・∀・)「うーん……たぶんだけど、その扉の先、屋上なんじゃないか?」
o川*゚д゚)o「屋上!? 行く行く!」
キュートは屋上、と聞くなり眼をきらきらと輝かせながら立ち上がる。
いそいそと扉の前まで歩いていくと、ドアノブを握りしめた。
(;・∀・)「待て待て落ち着け! 普通こういうところには鍵がかかって」
o川*゚д゚)o「開いたー!」
(;・∀・)「なんですとおおおおおおおお!?」
ドアはあっさり開いて、キュートは青空の下へと飛び出していった。
どうやら僕が思っているより、セキュリティーというのは緩いものらしい。
315
:
◆LemonEhoag
:2016/10/11(火) 21:39:16 ID:aMRR4.E.
o川*>д<)o「うっひゃー、さっむーい!」
キュートはスカートを押さえながら、自分の体を抱いて震わせていた。
晴れているとはいえ、クリスマスまであと一ヶ月に迫っている。
加えて、屋上は風が強いから当たり前の結果と言えるだろう。
(;・∀・)「だったら早く中に戻ってこい、風邪ひくぞ」
o川*>д<)o「そんなこと言ってー、内心は
『ああ、キュートのスカートがめくれてもう少しで見えそう! 風頑張れ!』
とか思ってるんでしょー! えっちー!」
(;・∀・)「1ミリも思ってねえよ!
ていうか、さっきからテンション高いけどめっちゃ震えてるし!
いいからさっさとこっち来い、僕まで寒くなってくる」
o川;゚ー゚)o「うん……正直、自分から言いだしたからすぐ戻たかったけど戻れなかった」
きっかけを掴んだキュートはすごすごと中に戻ってくる。
多分、久しぶりの学校ではしゃいでいるんだろう。
元からこんな感じだった気がしないでもないけど。
316
:
◆LemonEhoag
:2016/10/11(火) 21:47:35 ID:aMRR4.E.
o川*゚ー゚)o「あ、そうだ。モララー放課後って空いてる?」
はーはーと息を吹きかけて、手を温めながらキュートが僕に問いかけてきた。
余程寒かったらしいけど、どうして変な意地を張っていたんだろうか。
( ・∀・)「んー、特に予定はないな」
o川*゚ー゚)o「おー! だったら、帰りどっかに寄ろうよ!
お母さんからおこづかいもらっちゃった!」
嬉々として自分のブレザーのポケットを叩いて見せる。
よく見ると少し膨らんでいる。おそらく財布だろう。
( ・∀・)「それはいいけど、行きたいところとかあるのか?」
o川*゚ー゚)o「んーとねー」
キュートは宙を見つめながら、あごに手をやって考え始める。
ぶつぶつと独り言を呟いたり、眉間にしわを寄せたり首をかしげたり。
その様子を見ているだけで何時間でも待てるほど、僕を飽きさせない表情の変わりっぷりだ。
317
:
◆LemonEhoag
:2016/10/11(火) 21:55:12 ID:aMRR4.E.
o川;^ー^)o「全然思いつかないし、モララーといっしょならどこでもいいや」
キュートは申し訳なさそうに笑うと、結局僕にすべて任せることにした。
よく考えれば、いままでろくに遊んだ経験もないはずだ。
行きたいところを思いつくことも、キュートにとっては難しいなんだろう。
(;・∀・)「まいったな……とりあえず街を歩くか。
歩いてれば何かしら楽しそうなものが見つかるだろ」
o川*^ー^)o「それでおっけー! 楽しみだねー、早く放課後にならないかなぁ」
待ちきれないのか、落ち着きなく僕の周りをくるくると歩き回る。
ステップのごとく軽やかな足取りに合わせて、スカートが生き物のように揺れた。
(;・∀・)「せっかく学校来たんだから、このままここで暇つぶしってのはなしだぞ。
みんなだってキュートに会いたいだろうし、教室に戻ろう」
正直、教室に戻れば確実に五体満足でいれない気はした。
だけど、このまま戻らないと確実に殺されるだろう。
だったらせめて、命は助かる方がいいに決まっている。
(;・∀・)(キュートに気を取られて、僕は放置してくれるとありがたいな……)
318
:
◆LemonEhoag
:2016/10/11(火) 22:01:29 ID:aMRR4.E.
僕がわずかな希望にすがっていると、チャイムが鳴り響いた。
僕たち以外に誰もいないからか、やたら大きく聞こえる。
携帯で時間を確認すると、一時間目の始業のチャイムだった。戻るタイミングとしては好都合だ。
o川*゚ー゚)o「そうだね、みんなとも会いたいし戻ろっか。
ちょうどチャイムも鳴ったし、戻ってもみんな襲ってこないよ……たぶん」
(;・∀・)「たぶんってちっちゃく呟くなよ、不安になるだろうが」
o川*゚ー゚)o「おっと、こりゃ失礼」
キュートは舌をちろっと出して誠意のこもっていない謝罪をする。
そして振り向いて、床に置かれた自分の鞄を肩にかけて立ち上がった。
o川*゚ー゚)o「わたしが先に行くね。そしたらみんな少しは気が緩むよ」
(;・∀・)「情けないけど、今回ばかりはそうしてもらいたい……」
o川*^ー^)o「あはは、りょーかーい」
軽く微笑むと、キュートは階段に向かって歩き出す。
十分くらいしたら僕も行こう、そう考えながら背中をみつめていたときだった。
319
:
◆LemonEhoag
:2016/10/11(火) 22:07:13 ID:aMRR4.E.
急に振り返ったキュートは、照れ笑いを浮かべながら言った。
o川*^ー^)o「せっかく彼氏とデートなのに、死なれたら嫌だしね……えへへ」
( ・∀・)「え?」
聞き返したときには、すでにキュートはその場からいなくなっていた。
(;・∀・)「え?」
薄らいでいく残像から目を離せないまま、僕はもう一度間抜けな声を出さずにはいられなかった。
320
:
◆LemonEhoag
:2016/10/11(火) 22:16:49 ID:aMRR4.E.
( ・∀・)「……落ち着け、落ち着くんだ僕」
そう、まずは落ち着く必要がある。
冷静になってから、ゆっくりと考える時間を取ろう。
まずは頭を冷やすべく、再び屋上へのドアを開いた。
( ・∀・)「うん、いい感じに寒いぞ。これでだいぶ落ち着いた。僕は落ち着いた」
とりあえず近くの柵に寄りかかって、街を見下ろしてみる。
住宅街のそばということもあって、人通りはそれほど多くない。
ゆったりと、静かに時間が流れているように感じた。
( ・∀・)「よーし、落ち着いたぞ。当社比で言うとさっきまでの三割まで落ち着いたぞ。
何回でも言うけど、僕はとっくに落ち着いた。うん、間違いない」
薄々分かっていたことだけど、まったく落ち着けていない。
変わったことと言えば、冷たい風に吹かれて寒くなっただけだ。
( ・∀・)「いや、待て。落ち着けていなくても考えられるはずだ。そうだ考えろ、考えるんだ僕」
ひとまず、なぜキュートがあんなことを言い出したのか考えることにした。
321
:
◆LemonEhoag
:2016/10/11(火) 22:25:44 ID:aMRR4.E.
物事には順序というものがある。彼氏彼女の関係になることも例外じゃない。
まず、相手のことを好きになる。それから、告白して気持ちを相手に伝える。
そして、相手がOKならば晴れてふたりは恋人同士になるわけだ。
( ・∀・)「僕はキュートのことが好きだ。これはゆるぎない事実だ。
そして、キュートも公園での会話からして僕のことが好き。ここまでは何も問題はない」
問題はここからだ。僕には告白した覚えもないし、された覚えもない。
しかし、キュートの中では告白があったことになっている。
となると、ひとつの可能性が考えられる。
( ・∀・)「何かしらの行動を、キュートは告白と受け取った」
放課後に呼びだして付きあって下さいと頼み、よろしくお願いしますと返答する。
これだけが告白というわけじゃない。やり方は人によって無限にあるものだ。
( ・∀・)「何か……何か告白っぽい行動……」
ようやく冷え始めた頭の中で、記憶の糸をたどっていく。
しかし、すぐに思考は終わることになった。
思い出せなかったのではなく、心当たりが見つかったからだ。
(;・∀・)「……あれしかないよな」
瞼を閉じると、いまでも鮮明に思い浮かんでくる。
――――――
322
:
◆LemonEhoag
:2016/10/11(火) 22:29:20 ID:aMRR4.E.
o川*;д;)o『モララーのこと……好きな人のこと!!! 知れてよかったに決まってるじゃん!!!』
( -∀-)『……』
o川*;д;)o『ぁ……』
( -∀-)『普通って幸せなことかもしれないけど、まだ知らないキュートだけの幸せもきっとあるさ。
もし、見つからないって言うなら、いっしょに探すから。ずっといっしょにいて探してやるから』
――――――
好きだと伝えて、そのあとに抱きしめられて、ずっといっしょにいる、と言われる。
多少は間接的な表現かも知れないけど、告白の了承と受け取ってもおかしくない。
(;・∀・)「まいったな……」
別にキュートと付き合うことはまったく問題じゃない、むしろ大歓迎だ。
しかし、あのときの僕は了承する意味で言ったのではない。
このことを知ったら、キュートはひどく傷つくだろう。
(;・∀・)「どうしよう……」
323
:
◆LemonEhoag
:2016/10/11(火) 22:33:40 ID:aMRR4.E.
僕の理想としては、まずはキュートの誤解を解きたい。
( ・∀・)(それで……きちんと僕から言おう)
こういうのは男から言うべきだと思っている。
いまの時代、そうとは限らないのかもしれないけど。
( >∀<)「へぶしっ!」
思案にふけっていると、くしゃみが出た。
よく考えたら、結構長く風に吹かれていて、すっかり体は冷え切っている。
それに、教室にも戻らないといけない。
(;・∀・)「どうやってそこまで持っていくかはあとで考えよっと……」
柵から離れて教室へと戻るべく、早足で歩き出した。
教室に戻ると、みんなが授業そっちのけで僕を追ってきて、再び逃げることになったのはまた別の話だ。
〜〜〜〜〜〜
324
:
◆LemonEhoag
:2016/10/11(火) 22:38:56 ID:aMRR4.E.
(゚、゚トソン「それでは、これでホームルームを終わります」
先生がそう告げると、途端に教室は喧騒に包まれた。
鞄に教科書を詰めながら、前の席で大きく伸びをするキュートの背中を見つめる。
すると、視線に気付いたのか、キュートはこちらを振り返った。
o川*゚ー゚)o「実に、長かった。あまりにも、長すぎた」
(;・∀・)「前にも同じようなこと言わなかったか?」
o川*゚ー゚)o「そうだっけ? たぶん、そのときもさいっ……こうに楽しみにして待ってたんだよ」
これでもかというくらい溜めに溜めてそう述べる。
そして、勢いよく立ち上がると僕に向かって右手を差し出してきた。
o川*゚ー゚)o「それよりさ、早く行こう! これ以上は一秒も待てないよ!」
イルミネーションのように綺羅綺羅と輝く瞳で、真っ直ぐに見つめてくる。
せわしなく手を開いたり閉じたりしているのは、早く手を取れという催促だろうか。
(;・∀・)「んー、ああ」
o川;゚ー゚)o「あ……」
一瞬悩んで、手を取らずに立ち上がった。
ぼそりとキュートの残念そうな声が聞こえて、胸を針で刺したような痛みが襲う。
325
:
◆LemonEhoag
:2016/10/11(火) 22:43:42 ID:aMRR4.E.
僕だってキュートが望んでいるようなことをしたいし、してやりたい。
それでも、誤解を解いた上で改めて告白すると僕は僕自身で決めた。
ならば、それまではキュートの好意に甘えるわけにはいかない。
(;・∀・)(それが……僕なりの、けじめだ)
キュートの方へと向き直り、しょんぼりとしてしまっている顔を見つめる。
ハの字に下がった眉が、僕のしたことにどれだけ心を痛めたのかを表していた。
これからもっと傷つけるかもしれないと思うと、鼻の奥にツンとした刺激が走った。
(; ∀ )「……キュート」
o川;゚ー゚)o「……なあに?」
(; ∀ )「キュートに言わなきゃいけないことがあるんだ。
街に行く途中で話すから、聞いて欲しい」
o川*゚ー゚)o「……わかった」
僕の心情を察したのか、キュートは僕を見るなり表情を和らげて頷いてくれた。
キュートの目の中で僕がどんな顔をしていたのかは分からない。
だけど、きっと気を使わせてしまうような表情だったのだろうと思うと、申し訳なかった。
〜〜〜〜〜〜
326
:
◆LemonEhoag
:2016/10/11(火) 22:49:36 ID:aMRR4.E.
o川*゚ー゚)o「そっかぁ、そうだったんだ」
(;・∀・)「ごめん……」
たくさんの店が並ぶ大通りに着いたころ、僕はうべてを話し終えた。
キュートは前方を見たまま、何度もぼそぼそと呟きながら頷く。
しかし、すれ違う騒がしい街の喧騒にかき消されて、何を言っているのかは僕の耳には届かない。
o川*゚ー゚)o「……で?」
( ・∀・)「……うん?」
唐突に僕の方を向いて、キュートが問いかけてきた。
あまりにも脈絡がなく、意図が読み取れずに思わず聞き返してしまう。
o川*゚ー゚)o「勘違いしちゃったわたしにも責任はあるし、もうこれはおしまいにしてさ。
問題はこれからわたしたちはどうするの、ってことだよ」
(;・∀・)「えーと、それは、その」
やけにあっさりとしたキュートの態度に、思わずたじろぐ。
動揺し過ぎて、すれ違ったサラリーマンとぶつかってしまった。
327
:
◆LemonEhoag
:2016/10/11(火) 22:54:38 ID:aMRR4.E.
o川*゚ー゚)o「さっきモララーが言ってたことからして、ちゃんとした告白すればいいんでしょ?」
(;・∀・)「飛躍しすぎな気もするけど、まあ……」
o川*゚ー゚)o「よし、じゃあ改めて。わたしね、モララーのことす」
(;・∀・)「わああああああ!! 待って、ちょっと待って!」
いきなり告白を始めたキュートを慌てて制止する。
道行く人が何人かこちらを振り返るのが見えたけど、それに構っている場合じゃない。
遮られた本人は不満げに頬を膨らませて、眉間にしわを寄せて僕を睨みつけてくる。
o川#゚д゚)o「なんでー!? これだったらいいんでしょー!?」
(;・∀・)「いやいいんだけど! いいんだけど駄目なの!」
o川#゚д゚)o「けちー! 説明を要求する!」
そう言うと、キュートは僕の前に仁王立ちして立ちはだかった。
説明するまで逃がさない、という意味なんだろうか。
防寒具が煩わしくなるほど体が熱くなるのを感じながら、口を開いた。
328
:
◆LemonEhoag
:2016/10/11(火) 23:00:19 ID:aMRR4.E.
(;・∀・)「えーと、ですね。
今回こんな誤解が起きたのは、僕が原因だと思うわけでして」
o川#゚д゚)o「はい!」
(;-∀-)「それで、僕なりにけじめを付けようと思ったんです」
o川#゚д゚)o「それで!?」
(;-∀-)「またキュートから言わせるのもあれなんで、僕からきちんと告白しようと思いまして……
だからさっき、キュートの告白を遮った次第でございます。はい、すいません」
o川#゚д゚)o「モララーからわたしに告白するつもりだったなら、なんで早く言わ……え?」
かりかりしていたキュートの様子が、僕の説明が終わった途端に一変する。
目を白黒させて、口をぽかんと開けたまま固まってしまう。
o川*゚д゚)o「もららーから、わたしに……こくはく」
o川;゚д゚)o「あ、え? それって、その、つまり……わたしのこと」
o川* д )o「え、え、え? モララーが? わたしのこと、すっ、すぅ、す……」
キュートの顔がどんどん赤くなっていくにつれて、落ち着きがなくなっていく。
せわしなく髪をいじったり、手で顔を仰いだり、右往左往したり。
329
:
◆LemonEhoag
:2016/10/11(火) 23:06:21 ID:aMRR4.E.
http://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_2264.png
o川* д )o「ね、ねぇっ! わたし、また勘違いしてない……よね?」
キュートは死にそうなほど潤んだ目で、僕を見つめてくる。
喜びか、悲しみか、恥ずかしさか。どういう感情で潤んでいるのかは分からない。
僕はその目を見つめ返しながら、はっきりとキュートに告げる。
( ・∀・)「そんな心配するなって。勘違いじゃないよ」
o川* д )o「……ふはぁ」
緊張の糸が切れたのか、キュートは近くにあったガードレールに倒れるように寄りかかった。
手袋を外し、胸元を摘まむと引っ張っては離してを繰り返している。
o川* ー )o「……モララー」
( ・∀・)「ん?」
ようやく落ち着いたらしいキュートが、小さな声で僕を呼んだ。
呼びかけに答えると、キュートは立ち上がって僕に向かって軽く頭を下げた。
o川*゚ー゚)o「ありがと」
( ・∀・)「……こちらこそ、ありがとう」
キュートが顔を上げるのを待って、僕も立ち上がって頭を下げた。
330
:
◆LemonEhoag
:2016/10/11(火) 23:09:23 ID:aMRR4.E.
o川*゚ー゚)o「……で?」
(;・∀・)「……うん?」
ついさっきと同じようなキュートの問いかけ。
思わず素っ頓狂な声が喉の奥から漏れた。
o川*゚ー゚)o「ほらほら、ハグハグ」
キュートは僕の正面に立つと、両腕を広げてみせる。
どうぞ来てくださいと言わんばかりの体勢だ。
(;・∀・)「ハグというのは……抱きしめるアレのことですか?」
o川*゚ー゚)o「いえーす、きゃもぉーん!」
(;・∀・)「なんで、いま、ここで?」
徐々ににじり寄ってくるキュートから、逃げるように後ずさりしながら質問する。
すると、ぽかんとした顔で質問に質問で返してきた。
o川*゚ー゚)o「え? だってそっちから言ってくれるんでしょ?
だからどうぞ来てください、ってやってるんだよ」
( ・∀・)「」
331
:
◆LemonEhoag
:2016/10/11(火) 23:14:22 ID:aMRR4.E.
(;・∀・)「あのさ、時と場所ってものを考えたりは……」
学校の下校時間とも重なって、街は多くの人が行き来している。
こんなところで告白なんて、それこそドラマや漫画の世界でしかありえないことだ。
o川*゚ー゚)o「本気だったらどこででもできると思ってたのに……」
(;・∀・)「うっ……」
キュートは両腕を下げて視線を落とし、残念そうに小さく呟いた。
その言葉が、氷柱のような冷たさを伴って胸に突き刺さる。
言い返す言葉も浮かばす、ただただ黙り込んでしまう。
o川*゚ー゚)o「そんな落ち込まないでよ、冗談だってば」
(;‐∀‐)(よかった……)
キュートはすぐに顔を上げると少し背伸びをして、僕の頭を軽くぽんぽんと叩く。
向こうは冗談のつもりで言ったらしいけど、結構本気で受け取ってしまった。
好きな人の一挙手一投足というのは、どうしても気にしてしまうものなんだと悟った。
o川*゚ー゚)o「んー、今日のところは我慢してあげるけど……」
キュートは僕の頭から頬へと手をスライドさせると、指でぐりぐりと突いてきた。
そして、悪戯を思いついたような笑みを浮かべる。
332
:
◆LemonEhoag
:2016/10/11(火) 23:19:25 ID:aMRR4.E.
o川*^ー^)o「ずっと待たされるのは、やだよ?」
(;・∀・)「待たせない!ぜっんぜん待たせない、約束する!」
o川*゚ー゚)o「それじゃ、はいっ」
キュートは右手の小指を立てて、僕の目の前に持ってきた。
すぐに意図を理解し、指を絡ませる。
o川*゚ー゚)o「ご唱和ください、せーの……」
互いの顔を見合わせ、タイミングを取る。
キュートの合図で同時に小声で歌い始めた。
o川*゚ー゚)o「「ゆーびきーりげーんまん、うーそついたらはーりせんぼんのーます」」(・∀・ )
o川*゚ー゚)o「ゆーびきっ……たっ!!」
(;・∀・)「いってえ! ひっかかった!」
o川*^ー^)o「あっははは、ごめんねー」
擦り傷につばをつける僕を見ながら、実に嬉しそうに笑うキュート。
約束を守ったら、もっと笑ってくれるんだろうか。
そう考えると、自然と僕も笑みがこぼれてきた。
333
:
◆LemonEhoag
:2016/10/11(火) 23:24:55 ID:aMRR4.E.
o川*゚ー゚)o「それではそれでは、今後のために街を散策しに行きましょう!
ムード作りがうまくできないであろうモララーのために!」
( ・∀・)「おい、後半どういうことだおい」
o川*゚ー゚)o「気にしなーい気にしなーい、行こう行こうっ」
キュートはそう言って僕の手を引き、人混みを掻き分けて歩いていく。
人が僕たちを避けているかのように、不思議と誰にもぶつかることはない。
o川*゚ー゚)o「〜〜♪」
( ・∀・)「……」
鼻歌を口ずさみながら、歩いていく後ろ姿を見つめる。
繋がれた手からは同じ体温のぬくもりが伝わってくる。
手袋をしていない手を温めるように、ほんの少し、力を込めて握った。
〜〜〜〜〜〜
334
:
◆LemonEhoag
:2016/10/11(火) 23:29:36 ID:aMRR4.E.
o川*^ー^)o「あー、楽しかったー」
日は暮れてすっかりあたりも暗くなり、淡いオレンジ色の街頭が灯る。
その灯りに照らされて、僕の横を歩くキュートの髪が綺羅綺羅と光りながら宙を舞う。
o川*゚ー゚)o「あれだけ見て回ったのに、見れてないところもあるんだよね……世間は広いね」
( ・∀・)「この街より大きい街なんてたくさんあるぞ。
これくらいで驚いてちゃ、この先驚きっぱなしだ」
o川*゚д゚)o「ほんとー!?」
いちいち反応が大げさだと思ったけど、よく考えればキュートの知ってる世間はとても狭い。
家と研究所と学校。キュートにとっていままではそれが全てだった。
だけど今日、ささやかな自由をキュートは手に入れた。
o川*゚ー゚)o「ここより大きい……何があるんだろ……どれだけあるんだろ」
これがきっかけで、だんだん自由に出来ることも増えていくかもしれない。
そして、いつかは普通の生活が送れるようになるかもしれない。
まだ小さな希望だけど、まるで自分のことのように嬉しかった。
o川*゚ー゚)o「ねぇねぇ」
( ・∀・)「ん?」
335
:
◆LemonEhoag
:2016/10/11(火) 23:35:22 ID:aMRR4.E.
ぼんやりとしていると、キュートが制服の袖を引っ張って僕を呼んだ。
キュートの方へ向くと、上目遣いで真っ直ぐに見つめてくる。
o川*゚ー゚)o「今度は行ってないところに行こうね。
それで、もう行くところが無くなっちゃったら今度は隣町とか行くの。
隣町も行っちゃったら、えっと……」
( ・∀・)「そうだな。たくさん、いろんなところに行こうな」
o川;゚ー゚)o「あっ、でもわたしの時間がないかも……」
そう言うとキュートはあごに指を添えて、うんうんと唸り始める。
なんとも余計な心配だ、と思った。
肩くらいの高さにあるキュートの頭に手を置くと、わしゃわしゃと撫でまわしてやる。
( -∀-)「時間ができるまでいつまでも付き合ってやるから。気にするなよ」
o川*>д<)o「わっぷ……もー、髪がぐちゃぐちゃー」
キュートは乱れた髪を手櫛で直しながら、ひとりごちる。
しかし、その後に小さくありがと、と呟いたのを僕は聞き逃さなかった。
336
:
◆LemonEhoag
:2016/10/11(火) 23:40:23 ID:aMRR4.E.
o川*゚ー゚)o「あ、ここまででいいよ」
( ・∀・)「ん、そう?」
不意にキュートが立ち止まってそう告げる。
内心は、もう少しこうして歩いていたかったけど仕方がない。
o川*゚ー゚)o「じゃーねー、また明日っ」
( ・∀・)「ああ、また明日な」
また明日、という別れの挨拶がいまはとても大切なものに思える。
喜びを噛みしめるように、オウム返しをして別れた。
( ・∀・)「また明日……か」
遠ざかっていくキュートを眺めながらぽつりと呟いた。
キュートは周囲の目も気にせず、姿が見えなくなるまで手を振っていた。
( ・∀・)「僕も……帰るか」
こんなに明日が楽しみなのは、いつ以来だろう。
様々な思いを巡らせながら、ざわつく人混みの中へと紛れていった。
〜〜〜〜〜〜
337
:
◆LemonEhoag
:2016/10/11(火) 23:42:01 ID:aMRR4.E.
「おい! 救急車はまだか!」
「下手に動かすんじゃない!」
「うわあああああああああああああああん!!! ああああああああん!!」
「ああ……あああ……」
「……やばいよあれ、死んでんじゃね?」
「動かないし……」
「なんだ、何があったんだ?」
「俺見てたんだけど、なんか最初は子供が道路に飛び出してさ」
「その子が車に轢かれそうになったと思ったら、急に女の子が飛び出してきたんだよ」
「うっわぁ……それであれ?」
「ああ、うん……ただ、妙なんだよな」
「妙?」
「その女の子なんだけど、飛び出してきたっていうかさ……」
「一瞬でその場に現れた、っていう感じなんだよね」
338
:
◆LemonEhoag
:2016/10/11(火) 23:42:49 ID:aMRR4.E.
.
o川*゚ー゚)oは残像のようです ―2016 Remastered―
第八話 死んでも忘れない気がしてる
おわり
.
339
:
◆LemonEhoag
:2016/10/11(火) 23:44:31 ID:aMRR4.E.
以上で今回の投下は終了です。
ブログの方で一足先に触れましたが、次回で最終回です。
10月25日20時より投下開始予定です。最後までよろしくお願いします。
メイキングは明日21時公開予定です。公開時にスレでお知らせします。
最後になりましたが、質問や感想ありましたら気軽にどうぞ。
340
:
◆LemonEhoag
:2016/10/12(水) 20:22:34 ID:YocA2EuE
帰宅が遅れたため、少しメイキングの公開遅れます。
341
:
◆LemonEhoag
:2016/10/12(水) 21:13:26 ID:YocA2EuE
http://afterimage411.blog.fc2.com/blog-entry-43.html
ちょっと遅刻しましたが、第八話のメイキング公開です。
342
:
以下、名無しに変わりまして素直キュートがお送りします
:2016/10/13(木) 22:06:46 ID:cJGv8dlo
乙
問題片付いたと思ったら、最後。最後ぉぉ!
343
:
◆LemonEhoag
:2016/10/25(火) 20:04:39 ID:P7FzPm6w
教室を包む偽物の静寂は、いまにも崩れ去りそうなほど張り詰めている。
どこからか聞こえてくる、誰かがすすり泣く声は止まない。
(゚、゚;トソン「素直さんは一命は取り留めたものの――」
何が起こったのか、先生が説明する声が聞こえる。
異国の言葉のように、 その意味を汲み取ることはできない。したくない。
_
( ∀ )
僕だけが聞き間違えている。淡い希望を抱いて、教室を見渡してみる。
蒼白く染まったジョルジュの横顔が見えた。 うなだれたまま、頭を抱えている。
その表情を読み取ることはできない。したくない。
(゚、゚;トソン「現在も意識は戻らず、VIP総合病院のICUで――」
先生が説明を続ける声が聞こえる。
先生が話す言葉の意味は、分からない。
( ∀ )
聞こえない。分からない。自分にそう言い聞かせ続けた。
344
:
◆LemonEhoag
:2016/10/25(火) 20:08:13 ID:P7FzPm6w
.
o川*゚ー゚)oは残像のようです ―2016 Remastered―
最終話 ボーイ・ミーツ・ガール
.
345
:
◆LemonEhoag
:2016/10/25(火) 20:12:20 ID:P7FzPm6w
(゚、゚;トソン「いまは面会謝絶中です。お見舞いは遠慮してください」
その言葉を最後に、先生は話を打ち切った。
そして、泣き崩れている生徒ひとりひとりをなだめながら、教室を回っていく。
声をかけられた途端、せきを切ったように泣き始める生徒もいた。
(゚、゚;トソン「あっ……」
しかし、無情にも鳴り響いたチャイムが、始業の時間を告げる。
一時間目は先生の担当教科ではない。いつまでもここにいるわけにはいかない。
( 、 ;トソン「っ……」
いまにも泣き出しそうな表情で、教室を見渡す。
そして、きっと、ためらいで重くなった足並みで、先生はドアへと向かう。
( ∀ )
_
( ∀ )
ドアの閉まる音を最後に、本物の静寂が、教室を支配した。
346
:
◆LemonEhoag
:2016/10/25(火) 20:18:50 ID:P7FzPm6w
しばらくの間、誰も、何もしようとはしなかった。
やがて、誰かが鼻をすする音がして、押し殺した泣き声が聞こえてきた。
それを皮切りに、教室がざわつき始める。
( ∀ )
自分でも驚くほど冷静で、この状況をどこか客観的に見てすらいた。
耳から入った情報はきちんと整理されていて、当然理解もしている。
それでも、僕には分からなかった。
昨日、僕と別れた後に車に轢かれた。
道路に飛び出した子供をかばったらしい。
VIP総合病院に運ばれたが、意識不明の重体で危険な状態だ。
( ∀ )(……どうし、て)
そうなるのがなぜ、キュートだったのか。
キュートでなければならなかったのか。
それが、僕には分からなかった。
347
:
◆LemonEhoag
:2016/10/25(火) 20:24:20 ID:P7FzPm6w
「なんでだよ……っ」
心の内を口に漏らしたわけでもないのに、不意に声が聞こえた。
気付くと、僕の机のすぐ横に誰かが立っていた。
「なんで……お前はっ……」
見上げて顔を確認すると、クラスメイトの男子生徒だった。
その表情は泣き出しそうにも、怒りに満ちているようにも見えた。
「俺は、知ってるんだぞ」
( ∀ )「……何を」
教室中の視線が僕たちにへ向けられたのが分かった。
「昨日、お前とキューちゃんが一緒に街を歩いているのを見た」
どういう意図で、その話を持ちだしたのか理解できなかった。
放課後に寄り道することに、特別な意味なんてないだろうに。
348
:
◆LemonEhoag
:2016/10/25(火) 20:30:17 ID:P7FzPm6w
「先生は、昨日の学校からの帰り道でキューちゃんが轢かれたって言ってたよな」
( ∀ )「ああ、それで?」
「……お前のせいだ」
いまにも僕を殺しそうな、怒りに満ちた低い声で言われる。
心臓が一回、強く脈打つのを感じた。
「お前はそんなときに何やってたんだよ!!」
僕の机を握った拳で殴りつけると、彼は声を荒げた。
まるで、押し殺していた感情を爆発させたように思えた。
( ∀ )「僕は、事故が起きたときにはそばにいなかった。
キュートが事故にあったのは、僕と別れたあとだ」
「だったらどうして送っていかなかった!!
お前がそばにいれば事故になんてあわなかったに決まってんだろ!」
僕はただ、誤解を解くために事実を彼に告げた。
しかし、それで怒りが収まることはなく、机が蹴り飛ばされた。
机は大きな音を立てて転がっていき、隣の机にぶつかる。
349
:
◆LemonEhoag
:2016/10/25(火) 20:35:38 ID:P7FzPm6w
( ∀ )「僕も、最初は送っていこうとした。だけど、キュートがそれを断った」
「だから僕は悪くありません、ってか!? ふざけんな!!!」
(; ∀ )「がっ!!」
腕を大きく振りかぶるのが見えてすぐ、頬に痛みと衝撃が走った。
体が宙を舞って、さっき蹴り飛ばされた机にぶつかって止まる。
「お前のせいだ! 全部、全部お前さえいなければ起きなかった!!」
「おい、やめろって!!」
「やめてぇっ!! お願いだからぁ!!!!」
殴った張本人は、僕を泣き叫びながら責め立ててくる。
彼を制止しようと押さえ付ける男子、悲鳴に似た声で叫ぶ女子。
教室は明らかに異様な喧騒に包まれていた。
(; ∀ )「……っ」
立ち上がろうとすると、視界がぐらりと揺れた。
よろめいて、近くの壁に激突するように寄りかかってへたり込む。
350
:
◆LemonEhoag
:2016/10/25(火) 20:41:49 ID:P7FzPm6w
「はっ、なせぇええええ!!!」
視界の隅で、制止を力まかせに振り切る男子が見えた。
そのままの勢いで僕に飛びかかってきて、制服の襟を掴まれる。
何度も揺さぶりながら、むき出しの怒りをぶつけてくる。
(; ∀ )「ぐっ……」
「なんでだよ! なんでキューちゃんがこんな目に合わないといけないんだよ!
なんでお前はきちんと守ってやらなかったんだよ! なんでお前だけのうのうとしてるんだよ!
なんで……なんでだよぉぉおおおお!!!」
(; ∀ )
なんで、なんで、なんで。さっきからそればっかり。
聞き飽きるほど言われても、まだ止めようとしない。
頭の中で、ぷつん、と何かが切れる音がした。
351
:
◆LemonEhoag
:2016/10/25(火) 20:46:15 ID:P7FzPm6w
( ∀ )「……ねえよ」
「あぁ……!?」
( ;∀;)「僕だって分からねえよ!!!
何でキュートなんだ! よりにもよって、何で!
やっと学校に来れるようになって! やっと望んでた生活を取り戻して!
全部これから始まるはずだったのに、全部!
もっと学校に行けるはずだった!!
もっといろんなところに行けるはずだった!!
もっと普通の生活が送れるはずだった!!
もっと好きなことが出来るはずだった!!
もっと楽しくて笑えるはずだった!!
もっとたくさん話が出来るはずだった!!
もっと思い出を作っていけるはずだった!!
もっといっしょにいれるはずだった!!
なのに……なのにそれが失われようとしてる!!!
あいつが15年間かけてようやく手にした希望が!!!
何一つ自由なんてない生活の末に、求めた自由が!!!
空っぽだった15年の分まで、思い出を作るための時間が!!!
生まれた初めて芽生えた他人への愛情が!!!
全部、何もかも、根こそぎ奪われなきゃいけない理由なんて分からねえ!!!
あいつがこんな目に遭わなきゃならない理由なんて分からねえよ!!!
そんなの……分かりたくもねえよおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
352
:
◆LemonEhoag
:2016/10/25(火) 20:52:51 ID:P7FzPm6w
( ;∀;)「はあっ……っぐ……」
気付けば、僕は相手の胸倉を掴み返して、押し倒していた。
ひどいやつ当たりだと、頭では分かっていた。
それでも、ぶつける先を見つけた感情を止めることは出来なかった。
「……」
教室が不気味なほどに静まり返る。
自分の呼吸と、鼓動だけがやけに大きく聞こえた。
「……おい、モララー」
( ;∀;)「っ!?」
聞き慣れた声が僕の名前を呼ぶ。
振り向いて目に入ったのは、鮮やかな金色の髪。
_
(# ∀ )「何やってんだよ……」
ジョルジュに腕を引っ張られて、無理矢理立ち上がされる。
そして、両肩を掴まれて荒々しく揺さぶられた。
353
:
◆LemonEhoag
:2016/10/25(火) 20:58:26 ID:P7FzPm6w
_
(# ∀ )「何やってんだ、つってんだよ!!」
( ;∀;)「う……ジョル……ジュ……」
いままで聞いた事もない悲壮な声で諭される。
掴まれた肩に指が強く食い込むのを感じた。
_
(# ∀ )「目が覚めてよぉ……お前がそんな顔してたら、きっと心配すんだろ……
それで、それですげぇ悲しい顔するに決まってるだろうが……
それぐらい分かれよ……お前が一番近い場所にいたくせに……」
はっとして、左の頬に手を添えると熱を持って大きく腫れていた。
一度気付いてしまうと、瞬きの際にすら痛みが走るのを感じてしまう。
いつの間にか肩から手を離したジョルジュは、みんなの方へと向いている。
_
(# ∀ )「俺たちには何も出来ないんだ。悔しいけど、悔しくてたまらないけど。
だから、せめて、いつキューちゃんが帰ってきてもいいように待っていよう。
帰ってきた時、楽しそうに笑ってもらうために、さ」
ジョルジュの言葉に、ゆっくりと全員が頷いた。
ある人は唇を固く結んで、ある人は涙をこぼしながら。
354
:
◆LemonEhoag
:2016/10/25(火) 21:04:56 ID:P7FzPm6w
「……悪かった」
乱れた机をみんなが協力して直していく。
その最中、僕を殴った生徒が深々と頭を下げてきた。
( ;∀・)「……僕こそ、ごめん」
涙をぬぐって、腰よりも低く頭を下げた。
頭上から、もういいから頭を上げてくれ、と声が聞こえる。
( ・∀・)「ん、ああ」
「あ、あの、これ……使って」
タイミングを見計らってたのか、女子がハンカチを差し出してきた。
濡らしてくれたのだろう。触れると少し湿っていて、ひんやりとしている。
ちくちくと痛む頬に当てると、いくらが痛みが和らいだ気がした。
「なぁ、保健室行こうぜ。肩貸すよ」
(;・∀・)「いや、そこまでしなくてもいいって。先に行きなよ」
「そうか……分かった。先生にもお前が来るって言っておくよ」
( ・∀・)「ありがとう、すぐ行くよ」
355
:
◆LemonEhoag
:2016/10/25(火) 21:11:28 ID:P7FzPm6w
なんとか納得してもらって、先に保健室に行ってもらう。
ドアの向こうに消える姿を見送ったあと、教室を見渡す。
いつも通り、とはいかないけれど、さっきまでとは明らかに違う雰囲気を帯びている。
( ・∀・)「なあ、ジョルジュ」
_
( ゚∀゚)「なんだ?」
( ・∀・)「……ありがとう。お前がいてくれて、よかった」
少し照れくさかったけれど、素直な気持ちを口にした。
それを聞いたジョルジュは困ったように笑って。
_
( ゚∀゚)「おいおいやめてくれよ、いくら俺でも男のおっぱいはちょっとな」
(;・∀・)「さっき空気読んだと思ったらこれか!!」
いつもの調子でそう言ってくれた。
356
:
◆LemonEhoag
:2016/10/25(火) 21:18:40 ID:P7FzPm6w
( ・∀・)「じゃあ、保健室行ってくる」
_
( ゚∀゚)「おお、先生には言っておくわ」
踵を返して、保健室へと向かう。
少しだけ戻ってきたいつもの喧騒が、背中越しに聞こえてくる。
「礼なんていらねぇよ、バカ」
それに紛れて聞こえたジョルジュの呟きを、僕は聞き逃さなかった。
〜〜〜〜〜〜
357
:
◆LemonEhoag
:2016/10/25(火) 21:24:12 ID:P7FzPm6w
季節が移ろい、街がクリスマスのイルミネーションに彩られた、冬のある朝。
キュートが目を覚ましたと、ホームルームで先生が告げた。
朝の厳しい寒さにも負けず、みんなが飛び上がって喜んだ。
(゚、゚トソン「目が覚めたとはいえ、まだ面会謝絶ですよ。
お見舞いは素直さんがもっと元気になってから来てほしい、とお母様が仰っていました」
あとから付け加えられたひと言が、残念ではなかったと言えば嘘になる。
それでも、そのうち元気な、いつものキュートに会えるようになる。
その事実だけで、この知らせはクリスマスプレゼントと呼べるものだった。
_
( ゚∀゚)「だけどよぉ」
( ・∀・)「ん?」
隣でパンをかじっていたジョルジュが呟く。
残りを一気に口に入れて食べきると、僕に話題を振ってきた。
_
( ゚∀゚)「元気になってるとはいえ、いまどんな状態なのかは気になるよな。
モララーだってそう思うだろ?」
(;・∀・)「そりゃ気になるけど……」
思えば、具体的にキュートがどんな状態なのか、僕たちは一度も聞かされていない。
僕らへの配慮だとは分かっているけど、一方で、やはり知りたいという気持ちはあった。
358
:
◆LemonEhoag
:2016/10/25(火) 21:30:11 ID:P7FzPm6w
_
( ゚∀゚)「つーわけだ……こっそり病院行ってこい」
(;・∀・)「は!?」
周囲をうかがうと、ジョルジュはいきなりとんでもないことを耳打ちしてきた。
思わず変な声が出て、要らぬ視線を集めてしまう。
_
(;゚∀゚)「ばっかやろ、声でけぇっての!」
(;・∀・)「ご、ごめん……」
再び周囲を警戒しながら、ジョルジュは顔を近づけて小声で話しかけてくる。
僕も声を聞きとるために顔を寄せるが、はたから見るとなんとも怪しい光景だろう。
_
( ゚∀゚)「何も見舞いに行けってわけじゃねえよ。面会謝絶だしな。
でもよ、何か情報があるかもしれないだろ?」
(;・∀・)「いや、うん……」
_
( ゚∀゚)「よし決まり。今日の放課後さっそく行ってこい。
何か情報手に入れたら教えてくれよな」
(;・∀・)(断れる雰囲気じゃないな……)
心のどこかで行くべきではない、とは思っている。
しかし、一方で病院に行ってみたいとも思っていた。
最終的に、ジョルジュに押し切られる形で行くことを決めた。
359
:
◆LemonEhoag
:2016/10/25(火) 21:35:35 ID:P7FzPm6w
( ・∀・)「……さて」
すでに暗くなり始めたころ、僕はVIP総合病院のロビーで立ち尽くしていた。
事故で入院している、ということは外科病棟にいる事は間違いないだろう。
しかし、何しろ面会謝絶だ。来たからといって、普通なら会えるわけがない。
(;・∀・)(看護婦さんとかに聞いたら教えて……くれないよな、絶対)
患者のプライバシーに関わることを、ぺらぺらと話してくれる看護婦。
フィクションの世界だろうが、そんな軽薄な人間を見たことはない。
結局、どうすることも出来ず、ただ行き交う人を眺めていている間に、時間は過ぎていく。
「おや? 君……」
(;・∀・)「は、はいっ!」
突然、後ろから呼びかけられて肩を叩かれた。
警備員に不審者だと思われたりしたのだろうか。
弁解を考えながら、慌てて振り返った。
360
:
◆LemonEhoag
:2016/10/25(火) 21:40:52 ID:P7FzPm6w
川 ゚ -゚)「確か……モララー君、だったな」
凛とした顔立ちの、クールという言葉がとても似合う女性が立っていた。
その人は僕の慌てぶりなど意に介さず、少し自信なさげに僕の名前を呼ぶ。
(;・∀・)「そうですけど、あ、あの、どうして僕の名前を……?」
僕にはこの人と会った記憶はない。正真正銘、いまが初対面だ。
それなのに、僕の名前どころか顔まで知っている。
川 ゚ -゚)「ああ、そういえば君とは電話で一回話したきりだったな。
すまない、改めて自己紹介させてもらおうか」
そう言うと、黒に黒を上塗りしたような、夜の海に似た黒髪を手櫛で少し整える。
川 ゚ -゚)「私は素直クール。いつも娘が世話になっているね」
(;・∀・)「……あ!」
そう言われて、テスト勉強のときに電話で聞いた声だと思い出す。
361
:
◆LemonEhoag
:2016/10/25(火) 21:46:26 ID:P7FzPm6w
川 ゚ -゚)「驚いたよ、どこかで見た顔だなと思ったら君なのだから」
(;・∀・)「あれ、でも僕と会ったこと……」
川 ゚ -゚)「体育祭のとき、キュートを撮っていたら偶然君が写っていてね。
あとでキュートが実に楽しそうに教えてくれたよ」
( ・∀・)「そうですか……」
落ち着き払った態度からは、とてもキュートがこの人の娘だとは想像出来なかった。
だけど、よく見るとなんとなく顔は似ている。
キュートも大人になったら、こんな風になるのだろうか。
(;・∀・)(本人には悪いけど、なりそうにないな)
川 ゚ -゚)「そうだ、どうしてここにいるんだい?
悪いけど、まだ面会謝絶中なんだ。会わせてやりたいのはやまやまなんだが」
表情は変わらないまま、クールさんが質問してくる。
これはまたとない好機だと思った。
( ・∀・)「あ、実はどうしてもキュートのことが気になって。
会えないのは承知で来たんですけど……」
川 ゚ -゚)「やはり、彼女は気になるものか?」
(;・∀・)「へっ!?」
362
:
◆LemonEhoag
:2016/10/25(火) 21:52:44 ID:P7FzPm6w
クールさんはしれっととんでもないことを言ってのける。
そのことは、僕とキュート以外は誰も知らないはずなのに。
(;・∀・)「なっ、なんでそれを!?」
川 ゚ -゚)「キュートが教えてくれたよ。あの子が家出をして、帰ってきたときに。
家出の理由も、まあ君だろうとは思っていたけれどね。
本人から聞いて自信が確信に変わったわけだ」
そういえば、あのときのことをキュートは告白だと勘違いしていた。
ならば、クールさんが知っていてもおかしくはない。
川 ゚ -゚)「恥ずかしいなんて言いながら、私にだけこっそり教えてくれたよ。
自分から言いに来るあたり、よほど嬉しかったらしい」
( ・∀・)「そう……ですか……」
事故が起きる前の日常が、スライドショーのように映し出されては消えていく。
心臓の中を、針で何本も突き刺される感覚を覚えた。
川 ゚ -゚)「……すまないな、昔の話は少し辛かったかもしれない」
( ・∀・)「いえ……そんなことは」
363
:
◆LemonEhoag
:2016/10/25(火) 21:58:16 ID:P7FzPm6w
これからまだまだ、普通の生活に戻るには時間がかかるだろう。
それでも、いずれキュートが元気に教室のドアを開け放つ日がやってくる。
確かな希望が胸の中に息づいている。それさえあれば、この辛さにも耐えられる。
川 ゚ -゚)「……モララー君」
( ・∀・)「はい?」
川 ゚ -゚)「君は、あの子が……キュートが好きかい?」
( ・∀・)「……はい」
静かに、だけど、はっきりと口にした。
数瞬、遠くから響くかすかな喧騒だけが、僕たちの間に流れた。
川 ゚ -゚)「……本当のことを、知りたいかい?」
ゆっくりと紡がれた言葉に、例えようのないざわつきを感じた。
背中から首筋までを得体の知れない感覚が走り、鳥肌が立つ。
(;・∀・)「それは、どういう意味、ですか……」
川 ゚ -゚)「知ってしまえば……もう君は戻れない」
364
:
◆LemonEhoag
:2016/10/25(火) 22:03:21 ID:P7FzPm6w
うまく声が出せず、余した息が情けない音を立てて漏れた。
対照的に、僕の質問に対する返事は、とてもはっきりと発せられる。
言葉に秘められた不穏な響きが、明確に分かってしまうほどに。
川 ゚ -゚)「これからも、あの子と一緒にいたいのなら……君には聞いてもらいたい。
いや、聞いてもらわなければならない」
(;・∀・)「……話して、ください」
川 ゚ -゚)「君がこれを聞いて、例えどんな行動をしても私は責めない。
こんなことを伝える私を、許してくれなくても構わない。
ただ……すまない」
君の望みは、きっと叶わない。
そう言って、クールさんはゆっくりと口を開いた。
〜〜〜〜〜〜
365
:
◆LemonEhoag
:2016/10/25(火) 22:09:40 ID:P7FzPm6w
うまく歩けていると思えない。
足は確かに地面を踏みしめていて、体は前へと進んでいる。
それでも、まるで宙に浮いているような感覚は続く。
『結論から言わせてもらうと、キュートは……死んだ』
『……え?』
音がよく聞こえない。
カラスの鳴き声も、車の走る音も確かに聞き取れている。
ただ、右耳から入った音は何も残さず、左耳から抜け出していく。
『死んだも同然、と言った方がいいか』
『……』
366
:
◆LemonEhoag
:2016/10/25(火) 22:14:48 ID:P7FzPm6w
目がよく見えない。
焦点が合わない。合わせる気が湧いてこない。
勝手に体は障害物を避けて、無意識に来た道を戻っている。
『事故の後遺症で、過去の記憶を覚えていないんだ』
『……』
体が自分のものではないように思える。
誰か別の人間に動かされているみたいだ。
いっそ思考も何もかも、その別の人間に押し付けられればいいのに。
『それに、両足の怪我がひどくてね。リハビリ次第だが、歩くことも難しいかもしれない』
『……』
367
:
◆LemonEhoag
:2016/10/25(火) 22:20:06 ID:P7FzPm6w
頭の中だけは、はっきりしている。
病院で聞かされた会話が延々と、鮮明に思い返されている。
きっと、いまの僕のような状態を『頭がいっぱい』と言うのだろう。
『全快しても、もう元気に走り回ることも出来ない』
『私のことも、君のことも、いままでの15年間の人生を何ひとつ覚えていない』
『君の知っているキュートは、もういないんだ』
ポケットの中で、携帯が震える。
きっちり三回震えると、取り出す前に振動は止んだ。
取り出してディスプレイに目をやると、メールが一通届いていた。
( ∀ )「……」
差出人はジョルジュだった。
件名の欄で顔文字がニヤリと笑っている。
368
:
◆LemonEhoag
:2016/10/25(火) 22:25:16 ID:P7FzPm6w
『君の知っているキュートは、死んだんだ』
( ∀ )「っ……」
開かないまま、削除のボタンを押す。
ほどなくして、受信ボックスの一番上からメールは消えた。
( ∀ )(言えるわけ……ないだろ……っ)
ひと月前に、久しぶりに学校へ来たのが最後でした。
みんなとの記憶も全部なくして、怪我で歩くことも出来ません。
どの面下げて、そんな夢も希望もないことが言えるんだ。
(; ∀ )「くっ……」
電源を切って、鞄の奥深くへと携帯をねじ込む。
そして、自転車のかごに思い切り投げ入れようとするけど、見当たらない。
そこでようやく、自分が自転車を病院に置いてきたことに気付いた。
369
:
◆LemonEhoag
:2016/10/25(火) 22:31:09 ID:P7FzPm6w
( ∀ )(どうでも……いいか)
明日どうやって学校に行くかとか、どれだけ歩かなければいけないんだろうとか。
普段ならそんな深刻な悩みになる出来事も、些細なことだとしか思えなかった。
( ∀ )「……あれ」
周りを見る余裕が少しだけ出来て、ようやく自分がどこにいるのかを把握する。
目に映るのは、もう飽きるほどに見てきた校門前の風景。
そして、校舎のすぐ横にある、大きな桜の木。
( ∀ )「はは……」
気付かないうちにここまで来ていたことに、思わず自嘲する。
キュートの死刑宣告を受けたあとに、彼女と初めて会った場所へと向かっていた。
自分でも笑えてくるくらい、僕はキュートのことで頭がいっぱいだった。
( ∀ )「……」
足は自然と、公園の入口へと歩を進めていた。
思い返せば、ひとりでこの道を歩くのも随分と久しぶりだった。
370
:
◆LemonEhoag
:2016/10/25(火) 22:36:08 ID:P7FzPm6w
( ∀ )「……っと」
入り口横の自販機の正面にたどり着き、小銭を入れる。
季節外れになってしまったレモンスカッシュのボタンを押す。
相変わらず乱暴に落ちてきた缶のふたを開け、一気に飲み込んだ。
( ∀ )「いつまで経っても、炭酸に優しい自販機にはなってくれないな」
入り口に向かいながら上を見上げ、もう一口。
視界に入るのは、すっかり暗くなった空と、枝と幹だけになってしまった桜の木。
青空も、満開の桜も、もう僕の記憶の中にしか見えなかった。
( ∀ )(僕、そういえば入学式と同じことしてるな……)
どうせなら、そっくりそのままなぞってやろう。
そのうち、ひょっこりとキュートも飛び出してくるかもしれない。
視線を戻して、公園の中へと進んでいった。
( ∀ )「……」
入り口から一番近いベンチに、人影を探す。
電灯に照らされたそこには、誰も座っていなかった。
371
:
◆LemonEhoag
:2016/10/25(火) 22:41:23 ID:P7FzPm6w
キュートが座っていたベンチに腰かけ、目を閉じる。
いまでも鮮明に、初めて会ったときのことを思い出せた。
( ∀ )「……ここにキュートが座ってたんだよな」
( ∀ )「それで、いきなり僕が一目惚れしたとか言ってきたんだ」
( ∀ )「本気で殴ってやろうかと思ったなあ、あのときは」
( ∀ )「あまりにウザいから、捕まえようとしたら残像で逃げられたんだった」
( ∀ )「……もう、あんなに驚くことなんて、死ぬまで、ないんだろうな」
( ∀ )「それから……僕、なんであそこまで恥ずかしいこと言ったんだろう」
( ∀ )「でも、そのおかげで仲良くなれたんだよな……」
( ∀ )「あのときは、こんな風になるなんて思わなかったよ」
372
:
◆LemonEhoag
:2016/10/25(火) 22:47:35 ID:P7FzPm6w
出会ってからの思い出が、映画館のようにまぶたの裏に映し出されていく。
振り返れば振り返るほど、自然と口角が上がっていくのを感じた。
( ∀ )「自己紹介のときは、まさかあんな簡単に受け入れられるなんて信じられなかったな」
( ∀ )「真面目に心配してた僕が馬鹿みたいだった……」
こっちの気も知らないで、帰ろうとしたら追いかけてきたのは忘れない。
何も知らないくせに、僕が心のどこかで寂しさを感じているのをあっさり見抜いたことは忘れられない。
( ∀ )「体育祭だって、リレーで負けてこっそり泣いてたくせに……元気になったら抱きついてきて」
( ∀ )「こっちは恥ずかしくて仕方なかったよ、ったく」
いつでもどこでも、自分の感情のままに動くやつだったことは忘れない。
女の子相手に抱きつかれたのが生まれて初めてだったことも忘れられない。
( ∀ )「自分からは抱きついてきたのに、部屋で偶然押し倒しちゃったときは恥ずかしがるし」
( ∀ )「……あれは僕も悪かったけどさ」
案外女の子らしい一面があったことは忘れない。
心臓が痛くなるほど脈打って、しばらく顔が熱いままだったことも忘れられない。
373
:
◆LemonEhoag
:2016/10/25(火) 22:52:59 ID:P7FzPm6w
( ∀ )「いきなり海に行きたい、って言われたのには焦ったな……」
( ∀ )「まあ、行った甲斐はあったけど」
夕日よりも輝いて見えた笑顔は忘れない。
はっきりと、自分がキュートを好きだと自覚した瞬間も忘れられない。
( ∀ )「すごく、文化祭楽しみにしてたっけ」
( ∀ )「来年は……いっしょに、参加できたのにな」
子供のようにはしゃいで、誰よりも文化祭を待ち望んでいたことは忘れない。
教室で見た、暗い影をの落とされた背中も忘れられない。
( ∀ )「急に学校に来なくなって……ここに呼びだした」
( ∀ )「……思い出の場所だったけど、また新しい思い出が増えたな」
僕だけに話してくれた、ずっと心に溜めこんでいた想いは忘れない。
何よりも温かく、柔らかかった唇の感触も忘れられない。
( ∀ )「それから、随分遠回りしたけど、恋人になれたんだよな」
( ∀ )「なって……それから……」
誤解を知らされたときの、残念そうな顔は忘れない。
告白されたときの、幸せそうな顔も忘れられない。
374
:
◆LemonEhoag
:2016/10/25(火) 22:58:27 ID:P7FzPm6w
( ∀ )「それから……」
( ;∀;)「それ……から……」
375
:
◆LemonEhoag
:2016/10/25(火) 23:01:12 ID:P7FzPm6w
頬を涙が伝って、手の甲へとこぼれ落ちる。
こらえようとしても顔は勝手にぐしゃぐしゃになり、嗚咽が漏れる。
( ;∀;)「うっ……ああ、っぐ、ううぅ……」
最後の会話は、また学校で会う約束だったのに。
最後に見た姿は、いつも通りの元気な姿だったのに。
( ;∀;)「ああぁぁ……うわあぁ……」
こんな明日が来るなんて思いもしなかった。
あの日の続きが、こんな悲しいものになるなんて考えもしなかった。
( ;∀;)「いっ……や、だぁぁああああ……っつ」
一緒に過ごした時間は、一年にも満たない。
それでも、僕にとってキュートと過ごした日々は、何よりも大切な思い出になっていて。
頭の中には、残酷なほど鮮やかに焼き付いている。
( ;∀;)「きっ……ゆ……とぉ……」
初めて出会ったこの場所で。
初めて僕に特技を見せて。
初めて向けられたキュートの笑顔が脳裏に映り。
ふと、思った。
376
:
◆LemonEhoag
:2016/10/25(火) 23:02:16 ID:P7FzPm6w
http://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_2293.png
377
:
◆LemonEhoag
:2016/10/25(火) 23:03:16 ID:P7FzPm6w
.
僕が見ていたのは、あまりにも早く一生を駆け抜けた、彼女の残像だったのかもしれない、と。
.
378
:
◆LemonEhoag
:2016/10/25(火) 23:08:09 ID:P7FzPm6w
その後、キュートの状態は学校を訪れたクールさんの口から、直接クラスのみんなに伝えられた。
教室にいた人間は先生も例に漏れず、誰もが大声で泣いた。
それでも互いに励まし合い、変わらずにキュートを待ち続けようと全員で誓い合った。
月日は流れ一年生が終わるころ、キュートの面会謝絶が解かれた。
全員で押しかけると迷惑なので、協議の結果、満場一致で僕が代表して面会に行くことになった。
そして、僕はいま、キュートの病室の前にいる。
379
:
◆LemonEhoag
:2016/10/25(火) 23:13:19 ID:P7FzPm6w
「本当に、これでよかったのかい?」
「……はい」
「君がそういうのなら、私は止めないが……」
「いいんです……これで」
「そうか……」
「それじゃあ、もう入って大丈夫ですか」
「……待ってくれ。ひとつだけ、言わせて欲しい」
「はい?」
「……ありがとう、モララー君。あの子のこと……よろしく頼むよ」
「……はい」
「キュート、お見舞いに来てくれた人がいるぞ」
「え……? あ、はい、どうぞ……」
380
:
◆LemonEhoag
:2016/10/25(火) 23:17:14 ID:P7FzPm6w
「……やあ」
「……あ、あの。えっと、その、ごめんなさい」
「何が?」
「わたし、何も覚えていないんです。だから、あなたのこともわからなくて……」
「……」
「本当にごめんなさい、気分を悪くしてしま――」
「……自己紹介」
「……へ?」
「僕たち、ある意味初対面なんだから、自己紹介するのが先だと思うんだ」
「え、ぁ……あの」
「はい……君からどうぞ」
「そ、それじゃ、はい……」
381
:
以下、名無しに変わりまして素直キュートがお送りします
:2016/10/25(火) 23:17:33 ID:WHwCqT22
名言キタ
382
:
◆LemonEhoag
:2016/10/25(火) 23:20:03 ID:P7FzPm6w
.
o川*゚ー゚)o「私……素直キュート、って言います。VIP高校の一年生、だったらしいです……」
( ・∀・)「僕はモララー。君と同じ……VIP高校の一年生だよ」
.
383
:
◆LemonEhoag
:2016/10/25(火) 23:21:09 ID:P7FzPm6w
.
o川*゚ー゚)oは残像のようです ―2016 Remastered―
最終話 ボーイ・ミーツ・ガール
おわり
.
384
:
◆LemonEhoag
:2016/10/25(火) 23:28:08 ID:P7FzPm6w
以上で投下を終了します。
いつもならあとがきなんかを書いたりしますが、今回はやめておきます。
まだ明日の21時に最終話のメイキング、明後日の21時にリマスター版のあとがきの公開が控えています。
詳しい時期は決めていませんが、近日中に作品についての裏話をまとめた記事も公開される予定です。
公開され次第順次スレでお知らせします。もう少しだけお付き合いしていただければ幸いです。。
とはいえ、ひとまずこれまで読んでいただいたみなさんには、この場で簡単にお礼を言わせてください。
約四ヶ月に渡ってこの作品を読んでいただき、本当にありがとうございました。
質問や感想などありましたら、気軽に書いていってください。
385
:
以下、名無しに変わりまして素直キュートがお送りします
:2016/10/25(火) 23:28:46 ID:WHwCqT22
乙!最高に乙!
リマスター前のも合わせて読み返す!
386
:
以下、名無しに変わりまして素直キュートがお送りします
:2016/10/25(火) 23:31:00 ID:so2uJwFQ
乙
387
:
以下、名無しに変わりまして素直キュートがお送りします
:2016/10/26(水) 09:10:00 ID:T8KSjIHk
やっぱ名作やな
今回特に絵が素晴らしすぎた
388
:
◆LemonEhoag
:2016/10/26(水) 21:01:53 ID:by.Eu1CQ
http://afterimage411.blog.fc2.com/blog-entry-44.html
最終話のメイキング公開されました。
389
:
以下、名無しに変わりまして素直キュートがお送りします
:2016/10/26(水) 21:47:00 ID:dXsPHOlk
リマスター完結乙
キュートがほんとかわいかった
ここからはじまるんだな
390
:
◆LemonEhoag
:2016/10/27(木) 21:18:34 ID:iPOPrm7Q
http://afterimage411.blog.fc2.com/blog-entry-45.html
あとがき公開されました。
392
:
以下、名無しに変わりまして素直キュートがお送りします
:2016/10/27(木) 22:22:46 ID:M2M.8C/I
>>390
乙でござんした
面白かったよ
393
:
以下、名無しに変わりまして素直キュートがお送りします
:2016/10/28(金) 00:43:22 ID:C6aUuuk6
完結乙です
お粗末ながら絵を描かせていただきました
絵のキューちゃんが素晴らし可愛かった
http://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_2297.jpg
394
:
以下、名無しに変わりまして素直キュートがお送りします
:2016/10/29(土) 02:03:52 ID:kTVRvN0k
絵が良かった
395
:
◆LemonEhoag
:2016/10/29(土) 19:20:49 ID:QR5EUiIY
>>393
ありがとうございます。
タイトルが少し薄れているの、とても素敵な演出だと思います。
396
:
◆LemonEhoag
:2016/11/13(日) 21:19:49 ID:u/a8DtAE
http://afterimage411.blog.fc2.com/blog-entry-46.html
お待たせしました。作品についての裏話公開されました。
397
:
以下、名無しに変わりまして素直キュートがお送りします
:2016/11/14(月) 00:01:11 ID:gV.qiYpw
二度目の完結乙
イラストがあると雰囲気がまた変わっていいな
作者もイラスト担当もほんとおつ
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