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【SS】天邪鬼いつまた帰る【二次創作】
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『春の匂いのホワイトデー』3
※独自設定を含む内容です
「そいつはおめえの知り合いけ正邪?」
「知り合いもクソもねーよ!意地汚くて性格の悪い傍迷惑野郎だ!!」
「知り合いなのけ? よくそげな邪気の強い奴と付き合ってられっなや」
悪態をつきながらも正邪は姿を見せないあの女に違和感を覚え始めた。
そもそも侵入者に対して鉈を振り上げ恐ろしい形相で追い払うのが山姥のやり方のはずだ。身を隠したまま飛び道具を使うなど普通ではない。
仮に本気で狙ったとしてもサグメならあの飛び道具を羽根手裏剣で打ち落としたはずだ。勝てる見込みがあったかどうか怪しい。
(邪気の強い奴か? あのクソババアが?…)
恐らく山姥はサグメを警戒しているのだ。それもかなり高いレベルで。
その時サグメがようやく口を開いた。
「…確かに私はある意味邪悪な存在だ。嘘も平気でつく。だが今日ここへ来たのは大事な用を果たす為だ」
「でえじな用だぁ?」
「正邪に干し柿を送ってきたのはお前であろう? 私も馳走になった。その礼を正邪に言付けるのを忘れてな。ここまで何とか付いて来たのだ」
それこそ嘘だと正邪は直感した。サグメの足で正邪に追いつけないはずがない。
「礼を言う為だけにワザワザこんなとこまで来たってのか? クソババアよ」
「もう一つ目的がある。そこの者もただお前から返礼だけをもらって帰しはしないだろう。お前をもてなす用意があるはずだ。叶うなら私も相伴(しょうばん)にあずかりたい」
流石の正邪も呆気に取られた。
会った事もない相手にそうなる宛もないままもてなされる事を期待してやって来るとは図々しいにも程がある。
だが山姥は意外な反応を見せた。
林の中に彼女の笑い声がカラカラと響き渡った。
「いい度胸してんなおめえ…気に入った! ええだよ、正邪と一緒にうちの棲みかに来(け)え」
「マジかよオイ!? 不法侵入者だぞ!? 邪気のある奴を招き入れていいのか!?」
立ち上がった正邪はザクザクと雪を踏みながら歩いて来た山姥に怒鳴った。女は年季の入った丸い網笠を被り獣の毛皮で身を固めている。
「邪気ならおめえだって人の事言えねえべ。そこの御仁ほどではねえだがな。ほれ、二人ともうちの後をちゃんと付いてくるだ。そこかしこに罠を仕掛けているだからな」
「…飛んでは行けないのか」
ようやく姿を現したサグメが爪先を雪面すれすれに浮きながら正邪たちに近付いて来た。山姥は片翼のサグメの姿を珍しそうに見る。
「ああそうだぁ。 飛んでりゃ大丈夫だろうとたかをくくっている奴こそ引っ掛かる罠だかんな」
女は犬歯が目立つ歯並びを見せつけながらニッと笑った。
サグメは雪の上に降り立ち正邪と並んで山姥に付き従った。
「…ったく、お返しだけ渡してさっさと帰るつもりだったのに余計な事しやがって…お前のせいですっかり段取り狂っちまったぜ」
「……(人付き合いとはそう軽いものではないのだ…これはお前にいてもらわなければ話にならない。諦めて最後まで付き合え)」
「何が付き合えだクソババア…」
私の自由と人権はどうなるんだと正邪は納得がいかないようにしきりに首をひねった。
(続く)
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