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【SS】天邪鬼いつまた帰る【二次創作】
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『帰らざる河』15
※独自設定を含む内容です
「……(何をボーッとしている?)」
「!」
サグメに呼び掛けられて正邪は我に返った。一体どれくらいの時間が経ったのか。
「…何でもねえよ…」
「……(本当にそうか? )」
サグメは正邪の両肩を掴み自分の方へ向き直らせた。
「な、何だよ…」
「……(その目は何だ。こうして向き合っていてもお前の目は私でない誰かを見ている…そいつは何者だ…)」
何者だと言われても困ると正邪は思った。よくよく考えれば正邪は山姥という事以外、名前も含めてあの女の事をよく知らない。
そして今となってはどうでもいい存在のはずなのに時折あの女の事を思い出し、その度に心に強い引っ掛かりを覚える。
あんな風に飛び出してはきたが本当は他に何か言っておくべきではなかったのか。
感謝の言葉は天邪鬼には似合わない。だが何か言い様はあったかも知れない。
そしてあの女が別れ際に送ってくれた言葉“後どうするかは自分で考えれ”。
下克上を諦めた訳ではない。だが正邪の中でそれに対するモチベーションが著しく下がっている事は否めない。
外から来た連中は相変わらず好き勝手に振る舞っている。やれロープウェイだのオートバイだの「幻想郷を人間の手に取り戻す!」というプロパガンダ演説だの。
連中はここにいる月の女の仕掛けによる“本当の危機”に気付きもしなかった。
山の神は風祝の女から伝えられて知っていたようだが、直接動かなかったところを見るとたかをくくっていたのだろう。
そんな連中が幻想郷に何をしてやれるというのか。それに幻想郷は妖怪のものだと正邪は思う。
だからこそ守護者、救済者を気取る連中に冷や水を浴びせねばならないと思う反面、あの山姥が言うように下克上で本当に連中にダメージを与えられるのか、それまでの体制を変えられるのかという疑問も湧いてきた。
そもそも自分は弱者の救済などという殊勝な事を本気で考えていたのかどうか。
正邪はついポツリと漏らした。
「…クソババアよ…私は何をしたかったんだろうな…下克上だなんて…」
「…突然何を言い出すかと思えば!…私がそんな事知るか!」
サグメにしては珍しく怒ったような口調で、しかも口に出して正邪の問いに答えた。
「な、何ヘソ曲げてンだよ…」
「……(それはこっちの台詞だ。私は今お前の胸の内を占めている何者かについて尋ねているのだ。それなのにお前は関係無い事を…)」
「もしかしてお前、妬いているのか?」
「……(そういう問題ではない…それに天邪鬼の祖としてお前に嫌われているのが私の密かな楽しみだった…なのにお前は今、何のためらいもなく私に尋ね事をした…それはお前が私を信頼している事の裏返しだ。そんな事があってはならない…)」
「何訳の分かんない事言ってんだよ!! お前少し屈折し過ぎだぞ!! ほら、いつまでも荒れた川をのぞき込んでると流れに呑み込まれるぞ! 姫が飯の用意して待ってんだ! とっとと帰るぞ!」
正邪は慌てて肩を掴んだサグメの手を振りほどき飛び立った。ある程度高度を取ったところで下を見おろすとサグメが渋々飛び立つのが見えた。
(…何だ? 何であいつが付いてくるのを見てホッとしてんだよ私は…)
再び速度を上げながら天邪鬼らしからぬ自分の気持ちに戸惑う正邪。
記憶は失われているが一時期自分はあの山姥に養われた。あの女のしつけが今の自分に影響を与えているのだろうか。真実は分からない。
少なくとも今の自分があの頃…〈逆様異変〉の時の自分と違う事は認めざるを得ない。
小槌の力はもう当てには出来ないが針妙丸は裏切った自分を許してくれた。
そして下等な存在と見下しながらもサグメは地上に於いて自分を頼ってくれている。
嫌われ者で誰とも相容れず孤独とされている天邪鬼だが、今の正邪が独りにになる事に不安を抱くようになったのも事実なのだ。 そして。
(分かっている…下克上は諦めない。でもそれは今じゃない…)
『帰らざる河』 完
※正邪視点の話の都合上あえて名前は伏せていましたが、正邪を助けた山姥はもちろん坂田ネムノさんです。
“裏の賢者”という独自設定は早い段階で思い付きましたが、まさかゲームの新作に本物の幻想郷の賢者が出てくるとは夢にも思いませんでした。
長々とお付き合いいただいてありがとうございました。
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