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川 ゚ -゚)オーライオーライのようです

5名無しさん:2025/08/24(日) 18:12:31 ID:FTVLCsf20

ミルナから、手紙が届いた。粗末なクラフト紙の封筒に入った手紙。
A4のコピー用紙が一枚、隅から隅まで余すことなく細かい文字で書き尽くされた手紙が、彼が収監されてから四半期毎に必ず送られてくる。
わざと乱暴に封を破り、それを読んだ。
春が来て、厳しい寒さも大分和らいできた。季節の変わり目だからか風邪を引き、咳が止まらない。
年を経る毎に身体が弱っていく実感がある。もう少し暖かくなったら運動を頑張る。
人でなしの、どうでも良い話。律儀に読めば読むだけ、我ながら面白いくらいに憎悪が湧く。
封筒は捨て、手紙だけ自室の机の引き出しに入れる。それが、もう何十枚になるか。まったく同じスタイルで、A4用紙が、何十枚も。

刑が確定し、ミルナが収監されるにあたって、手紙を書けと求めたのは私だった。
禊を立てたい気があるならば、四半期に一回、必ず私に手紙を書け。内容はどうでも良い。
反省の言葉を連ねるなり、塀の中の暮らしを書くなり、別にお前なんてどうしようもないヤリマンの癖に、でも良い。
どうせ何を書かれようが同じだ。私はお前から手紙が来る、お前が字を書いている、お前が生きている
それを思い出すことで、お前に受けた辱めを決して忘れたくないだけなのだから。



椅子に座り、視線の先、本棚に自著が何冊か並んでいる。
最奥に鎮座する、深い群青色の革が張られた上製本。
先論社では発行部数が一〇万部を超えると、ベストセラーの資料としての保管、ないしは単純にヒットを祝う目的で、革張りの愛蔵版が製本される。
社内保管用として二冊、作家にもう二冊。うち一冊は当時の担当編集だったビコーズに譲ったから、この家には一冊だけ。もう一〇年前に書いた、私のデビュー作である。


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