したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

八月の海に解けるようです

1名無しさん:2025/08/08(金) 22:22:11 ID:r4XkT5/w0


海に行こうと、奴が言った。




.

43名無しさん:2025/08/08(金) 22:58:13 ID:r4XkT5/w0

気付けば雨が降ってきていた。何もかもが濡れているから、もうどうでも良かった。僕がやっと口を開いたことに金城はほんの少しだけ顔を上げる。情け無い顔。どうしようもないやつ。
なんだこいつ。
僕が金城に思っていることは、初めて喋ったあの時から、何にも変わっちゃいなかった。
僕の頭の中をも侵略しておいて、金城は宇宙人ではないらしい。
どこからどう見ても僕の同級生で、ただのちっぽけで無力な人間の子どもだった。誰よりも不器用で、馬鹿で、迷子のなり方も知らないどうしようもない人間なんだ。
別にいい。金城が人間でも、金城って名前じゃなくても、どうしようもない馬鹿でも、それで良かった。それだけがほんとうで、それだけあれば十分だった。

44名無しさん:2025/08/08(金) 22:58:42 ID:r4XkT5/w0

(・ゞ・) 「お前が宇宙人じゃなくても、キンタマコンビじゃなくなっても、人んちの普通さに憧れてても別にどうだっていいよ馬鹿。僕は……僕はお前の名前だけで一緒にいるわけじゃないんだよ馬鹿、ほんとに馬鹿」

ヰ゚∀゚)

ヰ゚∀⊂)"

ヰ゚∀゚)「……ひどいわ玉木、馬鹿って、五回も言って」

(・ゞ・) 「帰ろう、金城」

水飛沫が顔にかかっても、力強く水面が揺れるのに合わせて身体が持っていかれても、僕は金城の長袖を離さなかった。

ヰ゚∀゚)「……帰れない」

(・ゞ・) 「帰れるよ」

腕を引っ張り上げて海から引き出す。こないだ見たSF映画で宇宙人を引きずり上げるシーンがあったけど、こんな泥臭い感じでは無かった。そう、僕らは泥臭いし、青臭いし、汗臭いし、良いとこなんて全く無い。だけど別にいい。金城が迷子になったら僕が探して一緒に帰ればいいだけなんだ。

45名無しさん:2025/08/08(金) 22:59:31 ID:r4XkT5/w0


(・ゞ・) 「帰ろう、金城。人間は海には溶けないし、お前が宇宙人じゃないなら帰る先はここじゃないんだよ」

ヰ゚∀゚)「はは」

ヰ゚∀゚)「あーあ、はは……」

下を向いた金城が諦めたように顔をくしゃっと歪ませた。

ヰ゚∀゚)「海水めっちゃ傷に染みるわほんと」

(・ゞ・) 「うん、僕もさっき切ったっぽい足のとこ滲みてる。金城と僕は同じ生物らしいね」

ヰ゚∀゚)「はは、じゃあキンタマコンビ改め人間コンビやね」

(・ゞ・) 「普通じゃんそれ」

ヰ゚∀゚)「うん。普通って最高やろ」

重たくなった服を引きずって陸へと上がる。
雨はいつの間にか止んで、灰色に湿った空は意地らしい熱気を纏った光が差している。波は相変わらず荒々しく、それでもさっきより水面は澄んで見えた。
八月の海に解けた風が、僕らの間を吹き抜けていく。

46名無しさん:2025/08/08(金) 23:00:14 ID:r4XkT5/w0

(・ゞ-)

(-ゞ;)

(;ゞ;)

瞬きをしたら駄目だと思ったけど間に合わなくて、一度閉じた瞼を開くと世界は蜃気楼に当てられたみたいにぼやけている。
いつからか汗でもなく雨でもなく海水でもない水が顔を流れていた。
何の水だって、なんだっていい、どれであっても結局塩辛く舌を濁らせて不味いんだ。そのしょっぱさに呆れて笑う。

ヰ;∀;)「しょっぱ」

(・ゞ; )「ふっ」

見れば金城も同じように顔中をべしょべしょに濡らしていて、あまりの酷さに思わず吹き出す。

47名無しさん:2025/08/08(金) 23:01:16 ID:r4XkT5/w0

(つゞ∩) "

(・ゞ・)


(・ゞ・) 「帰るか」

ヰ゚∀゚)「……うん」

ヰ゚∀゚)「やけど僕さっきICカード落とした」

(・ゞ・) 「本当馬鹿」


金城も僕も馬鹿みたいに笑って、土砂降りみたく笑って、ふたりで笑いながら濡れたまま歩いた。


.

48名無しさん:2025/08/08(金) 23:01:41 ID:r4XkT5/w0


終わり

49名無しさん:2025/08/08(金) 23:04:25 ID:tCLumsms0


50名無しさん:2025/08/08(金) 23:52:40 ID:uhUmSQMk0
傷に染みるのは海水だけじゃなくて玉木の優しさもだったろうな
良い話だった乙

51名無しさん:2025/08/09(土) 19:56:01 ID:KdJKW8SE0
友達だな、いいな、という気持ちになった
言葉選びや描写が良かった

52名無しさん:2025/09/02(火) 00:11:07 ID:BGPDge260
乙乙
泣いている妹に対しての玉木の感情が聖人君子だ…本当に良い人
読後感、救われた気持ちと解消し切れない辛い気持ちが混在していて波に揺られているような気分になった。
子供の頃ほど今あるもので受け入れなくちゃいけない感覚強かったなというのを思い出しました。乙。

53名無しさん:2025/09/13(土) 23:55:16 ID:qTCIIyF.0
乙!
「僕はお前の名前だけで一緒にいるわけじゃないんだよ馬鹿」ってセリフが凄く好き。色んな意味でしょっぱく感じる話だった、面白かった!


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板