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( ^ν^)あくたのようです

1名無しさん:2025/07/07(月) 15:37:23 ID:vmhFGvks0

「夢を抱いたきっかけはなんだったのか?」成功者のインタビューでは殊更強調される。

昔から好きで好きで仕方なかったから。
何もかも飽きてしまう中、これだけは続けられたから。
生活のために仕方なく始めた。今は純粋に楽しんでいる。

薄ぼんやりとした回答を聞くたび、俺は鼻白む。
俺でさえ、あの瞬間をはっきりと覚えているというのに。

2名無しさん:2025/07/07(月) 15:37:46 ID:vmhFGvks0

『ニュッくんはすごいねえ』

誰しも経験のある、学生時代の読書感想文。
クラスメイトのほとんどが嫌がっていた。そもそも本を読む習慣のない奴も多かったし、文章を書くことが苦手だという奴はその倍いた。

俺はどちらも得意だった。なぜあいつらがそこまで嫌がるのかわからなかった。
あんなもの適当に書けばいいのに。
あらすじを簡単に書いて、教師が好みそうな感想で締めれば済むのに。

3名無しさん:2025/07/07(月) 15:38:44 ID:vmhFGvks0

その日も俺は、冷めた目でクラスメイトを見ていた。
声を掛けられたのは、出来上がった作文を提出しようと思ったときだった。

『去年は賞とってたもんね。いいなあ、すごいなあ』

俺が賞を獲ったことなんて誰も覚えていないと思っていた。
青少年読書感想文全国コンクール。大仰な正式名称を、きっとクラスメイトの誰も諳んじて言えない。

4名無しさん:2025/07/07(月) 15:39:27 ID:vmhFGvks0

( ^ν^)『……別に、こんなもん、適当に書いたってとれる』

事実、作文の出来はいまいちだった。
教師から入賞を伝えられたとき「あれが?」と思ったことを覚えている。
たまたま審査員にウケがよかったのか。自分が思っていたよりも上手く書けていたのか。

隣の席の女は、目をきらきらと輝かせて俺を見ている。
クラスメイトにこんな風に見つめられるなんて、初めてだった。

5名無しさん:2025/07/07(月) 15:40:18 ID:vmhFGvks0


『ニュッくんは大人になったら、作家さんになれるね!』

あのとき俺に植え付けた呪いを、あいつはきっと覚えていない。



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6名無しさん:2025/07/07(月) 15:41:07 ID:vmhFGvks0




( ^ν^)あくたのようです




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7名無しさん:2025/07/07(月) 15:42:27 ID:vmhFGvks0

( ^ν^)「……ァした」

「お疲れ様でした」を可能な限り省略した言葉は、あいつらには届かなかったらしい。俺のことを見向きもせず軽口を叩き合っている。
もっとも、省略せずに「お疲れ様でした」と発したところで届かなかったかもしれない。声が小さい自覚はある。

コンビニを出て家路をたどる。疲労で体が重い。
立ち仕事をしたことによる肉体疲労と、上がり間近で面倒臭い客に捕まった精神的疲労が混ざり合っている。

8名無しさん:2025/07/07(月) 15:43:09 ID:vmhFGvks0

( ^ν^)(なんだったかな、いいネタが浮かんだのに)

あのジジイのせいだ、糞ったれ。
降りて来たんだ。ピンと来た。せっかくのネタだったのに、ジジイの大声に掻き消されて跡形もなく消えてしまった。
帰ったら思い出すだろうか。帰って風呂にでも入って、飯を掻き込めば。

9名無しさん:2025/07/07(月) 15:44:16 ID:vmhFGvks0

( ^ν^)「……いま」

「お疲れ様でした」も「ただいま」も言わなくなったのはいつからだっただろう。
古い一軒家の床は、体重を掛けるたびに軋む。
母親は耳が遠くなったくせに、その音だけは敏感に感じ取る。


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