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从 ゚∀从激重感情のようです
1
:
◆KD5oTB3lZY
:2024/04/29(月) 21:13:43 ID:7hsDycEw0
オレンジデー祭り2024参加作品
2
:
◆KD5oTB3lZY
:2024/04/29(月) 21:14:10 ID:7hsDycEw0
从 ゚∀从「幽霊と結婚することにしたよ」
( ФωФ)
ゴールデンウィーク明け早々、友人にそんな報告をされたので。
杉浦ロマネスクは、時たま「猫っぽい」と揶揄されがちな口をぐにっとひん曲げた。
.
3
:
◆KD5oTB3lZY
:2024/04/29(月) 21:17:47 ID:7hsDycEw0
( ФωФ)「……幽霊とは」
これまた猫っぽい目でぐるりと店内を見渡す。
ごく普通の喫茶店。
普通すぎて目立った売りもないうえに立地も良くないため、今はこのテーブル以外に客がついていない。
ロマネスクと、対面の友人と、
( ^ν^)
隣に座る小学生──こちらもまた友人である。
そして最後に。
( ФωФ)「その、お前の隣に座っている子か?」
o川*゚ -゚)o
斜向かいの席で頬杖をついている少女を指差すと、友人は「うん」と頷いた。
馬鹿か。
4
:
◆KD5oTB3lZY
:2024/04/29(月) 21:18:09 ID:7hsDycEw0
从 ゚∀从激重感情のようです
.
5
:
◆KD5oTB3lZY
:2024/04/29(月) 21:18:45 ID:7hsDycEw0
( ^ν^)「そこに誰かいるんですか?」
少年、ニュッがクリームソーダを啜りながら首を傾げた。
その反応にロマネスクは再び口をひん曲げる。
从 ゚∀从「やはり少年には見えないんだね。でもロマさんには見えている。
うん、まごうことなき幽霊だ」
友人こと高岡ハインリッヒ──ハイン、とロマネスクは呼んでいる──が嬉しそうに手を打った。
いつもと違って、品のいい黄色のワンピースやアクセサリーを身に着けて妙にかしこまっているなとは思ったが。
結婚報告。幽霊との。
いや私の幻覚だったらどうしようかと思ってね、とハインが続ける。
从 ゚∀从「良かった、彼女は実在しているわけだ。
なら結婚できるね。ありがとう、その確認がしたかったんだ。
では今日は解散ということで」
(;ФωФ)「待て」
いそいそと立ち上がろうとした彼女は、ロマネスクの制止におとなしく従った。
しばらくぶりに顔を見せたかと思えば。
話があると人を呼び出して、遅刻して、前置きもそこそこに言い放ったのが冒頭のあれで、そのまま解散する気だったらしい。
いかれている。
6
:
◆KD5oTB3lZY
:2024/04/29(月) 21:19:32 ID:7hsDycEw0
从 ゚∀从「悪いが手短に頼むね。
最近、少し体調が芳しくなくて」
( ^ν^)「祟られてません?」
o川*゚ -゚)o「そんなことしてないし!」
从 ゚∀从「濡れ衣らしいよ」
( ^ν^)「はあ」
(;+ω+)「……」
卓上のベルを鳴らしたハインが、やって来た店員にホットコーヒーとヨーグルトケーキを注文する。
店員は先ほど入店したばかりのハインの前には水を置いていったが、そのときも今も、ついぞ彼女の隣に座る少女には何も出さなかった。
从 ゚∀从「それで、何かなロマさん」
(;ФωФ)「……何、というか……何からというか……」
7
:
◆KD5oTB3lZY
:2024/04/29(月) 21:20:27 ID:7hsDycEw0
ロマネスクが頭を抱えて唸っていると、ニュッがハインの横を指差した。
( ^ν^)「あのう。本当に幽霊がいるんですか?」
从 ゚∀从「いるよ。いるものなんだね。
ロマさんに霊感があるって話を疑ったことはないけれど、私は初めて見たから驚いたよ」
( ^ν^)「へええ。僕だって見たことないし杉浦さんは嘘ついてるのかと思ってましたけど。
でも高岡さんは嘘つくような人じゃないですもんね。
じゃあ本当にいるんだ幽霊。へええ」
(;ФωФ)「二人とも、ちょっと静かにしてくれ……」
ハインはもちろんニュッもロマネスクの制止をおとなしく聞いてくれる。
こういう温度感が心地よい二人ではあるが、今はその善良さが状況とちぐはぐで、理不尽に苛立った。
そして幽霊の方は静かにしてくれなかった。
ずいと身を乗り出し、溌溂とした声で言う。
8
:
◆KD5oTB3lZY
:2024/04/29(月) 21:21:38 ID:7hsDycEw0
o川*゚ー゚)o「おじさんはまともそうだね」
(;ФωФ)「おじ」
o川*゚ー゚)o「おじさんさあ、この女と仲いいの?」
(;ФωФ)「……友人ではある。それと吾輩は30歳だ」
o川*゚ー゚)o「え、わがはいって。てか30? 顔めっちゃ老けてんね。
でも何で急に年齢言ったの」
(;ФωФ)「……まだ30だから、おじさんと呼ばないでほしいのである」
o川*゚ー゚)o「おじさんではあるじゃん」
从 ゚∀从「そうは思わないけど……まあ、お前くらいの年頃の子にとってはそうなのかな」
o川*゚ー゚)o「ふうん。どうでもいいけど。じゃあロマさん? でいい?
この女、なんとかしてよ。
いきなり結婚とか言ってきて困ってんだよね」
せめて。
せめて、相手の同意を得てから結婚だの何だのほざけ。
ロマネスクはやけっぱちになってベルを押すと、家で夕飯の支度をしているであろう恋人のことを思いつつもプリンアラモードを注文した。
.
9
:
◆KD5oTB3lZY
:2024/04/29(月) 21:22:51 ID:7hsDycEw0
▼ ▽ △ ▲
( ФωФ)「まず、ハイン。その子をどこで拾ってきたのである」
プリンの周りに添えられたクリームを掬いながら問う。
対してハインはヨーグルトケーキをつつきながら答えた。
从 ゚∀从「少し前、職場の飲み会があってね。
つい飲みすぎて、帰るときにふらふら適当に歩いたんだ。
そしたらいつの間にか小学校の前にいて……」
( ^ν^)「危ないですよ。どうせ時間帯も遅かったんでしょう」
横槍を入れるニュッは、ちょうどクリームソーダを飲みきったところだった。
小さいグラスだったので元から大した量もない。
それを物足りなく思う様子もなく、むしろ満足げに空のグラスを眺めている。
彼はソーダとアイスをバランス良く口に運び、最後にきっかり一口ずつ飲み終えるのを好んでいる。
たぶんあくまで、そういうゲームとしてクリームソーダが好きなのだろう。
もちろんアイスが溶けきる前に食べ終えないと成功とはならないので、ペースが早い。腹を冷やさないか毎度心配になる。
10
:
◆KD5oTB3lZY
:2024/04/29(月) 21:23:32 ID:7hsDycEw0
从 ゚∀从「まあね。でも少年が通う学校だったから知ってる場所ではあったんだよ。
だから迷子にはなっていないさ」
( ^ν^)「女性が一人で、夜中に、人気のない場所に行くものじゃないって話です」
从 ゚∀从「なるほど。自分がそういう対象になると思っていないからその視点はなかった。ご心配ありがとう。
でも考えてみると、年齢や性別や犯罪の種類に関係なく用心はすべきだね。
少年も気を付けるんだよ」
( ^ν^)「はあい」
( ФωФ)「本題」
从 ゚∀从「ああすまない。
それで、まあ酔っていたものだから踊っていたら、たぶんこう、ぐるぐる回ったのが良くなかったんだと思うんだが。
気持ち悪くなって、その場で吐いてしまったんだ」
( ^ν^)「すごい馬鹿みたいですね」
从 ゚∀从「校門前の街路灯がスポットライトみたいだったからつい踊ってしまった。
少年も気を付けるんだよ」
( ^ν^)「はあい」
o川*゚ー゚)o「いつもこんななの? 疲れない?」
( ФωФ)「普段はこれが好きなのであるがな……」
やや振り回される感覚が楽しいのだが、なんだか今日は疲労感が倍ほどある。
聞こえよがしに溜め息をついてやると、ハインが自ら軌道を戻してくれた。
11
:
◆KD5oTB3lZY
:2024/04/29(月) 21:24:18 ID:7hsDycEw0
从 ゚∀从「でね。片付けなければと慌てていたら、傍にこの子が立っていることに気付いた」
( ФωФ)「そこへ優しい言葉でもかけられたのであるか?」
从 ゚∀从「いや『きたなっ』と言われた」
その光景を想像するに、実際、途方もなく汚いものではあっただろう。
从 -∀从「それで惚れてしまったんだ……」
( ФωФ)
ノーコメントとする。気持ち悪いから。
从 ゚∀从「思わずその場で求婚してしまったよ」
o川*゚ー゚)o「怖かった。こっちは幽霊だっつってんのに超食い下がるし」
( ФωФ)「どっちが怪異か分からんなそれは……」
ぱたぱたと足を揺らしながら(こういうところが子供らしくはある)、ニュッがロマネスクを見上げた。
( ^ν^)「幽霊さん、どんな人なんですか」
( ФωФ)「ううむ……なんというか……可愛らしい顔をしているであるな……」
从 ゚∀从「ロマさんもそう思うかい。声も可愛いだろう」
( ^ν^)「何歳ぐらい?」
( ФωФ)「……何歳である?」
一応訊ねてみたが、ものすごく不安だった。
だって、いかにも学校指定と言わんばかりのブレザーを着ている。
12
:
◆KD5oTB3lZY
:2024/04/29(月) 21:25:19 ID:7hsDycEw0
从 ゚∀从「17歳で死んだと聞いた」
(;ФωФ)「子供ではないか」
从 ゚∀从「女は16から結婚できるんだからいいだろう」
(;ФωФ)「男女ともに18歳に引き上げられたであろうが、とっくに」
从 ゚∀从「そういえばそうだ。縁のない話だと思っていたから忘れていたよ。
では結婚できないのかな」
( ^ν^)「死んでるのも性別も気にしてないのに、年齢だけ気にする必要ありますかね」
ハインが口を閉じて、窓を見る。
数秒考えてから視線を戻した。
从 ゚∀从「ないかもしれない」
o川*゚ー゚)o「こっちは全部気にしてほしいんだけど」
13
:
◆KD5oTB3lZY
:2024/04/29(月) 21:25:55 ID:7hsDycEw0
( ^ν^)「そういえば幽霊さんの方も結婚する気満々なんです?」
( ФωФ)「いや、それは……あー……君」
o川*゚ー゚)o「なあに」
( ФωФ)「いちいち間を取り持つのも面倒である。
ニュッ君にも姿が見えるようにしてやってくれんか」
o川*゚ー゚)o「見えるようにって?」
( ФωФ)「吾輩もよくは分からんが、そうだな……
ラジオのチャンネルを合わせるような感覚で念じるというか」
o川*゚ー゚)o「ラジオ触ったことない」
( ФωФ)「お、おお。じゃあとりあえず何か念じてみてほしいのである」
o川*゚ -゚)o「そんなこと言われても分かんないよ」
从 ゚∀从「私にそういうことをしたから私にも見えてるんじゃないのかい?」
14
:
◆KD5oTB3lZY
:2024/04/29(月) 21:26:20 ID:7hsDycEw0
( ФωФ)「お前の場合は泥酔して吐いていたせいかもしれん。
弱っていた……つまり、死に若干近い状態にあったから勝手にチャンネルが合ってしまったのであろう」
从 ゚∀从「なるほど。つまり運命だったと」
o川*゚ー゚)o「踊ってた奴が急に倒れたからって近寄らなきゃ良かった」
从 ゚∀从「心配してくれたんだね。ありがとう」
o川*゚^゚)o
突然礼を言われた幽霊は、口を尖らせてそっぽを向いた。
それをにこにこ見つめてからハインが人差し指を立てる。
从 ゚∀从「そうだ。
ロマさんの理論なら、今ここで少年を瀕死にさせればお前のことが見えるんじゃないか?」
( ^ν^)「倫理観」
从 ゚∀从「もちろん冗談だよ」
基本的に声のトーンが一定なので、本音も冗談も分かりづらい。
──結婚云々の話も冗談なのではないかと疑いたいくらいだ。
ふうと息をついた幽霊が、ニュッの方へと向き直った。
15
:
◆KD5oTB3lZY
:2024/04/29(月) 21:27:05 ID:7hsDycEw0
o川*゚ー゚)o「もう。とりあえずやってみるけどさ……」
( ФωФ)「頼むである。ニュッ君もちょっと頑張ってみてくれるか。
君の真正面に幽霊が座っているから」
( ^ν^)「はあい」
o川*> -<)o「うむむむむ……」
从 ゚∀从「可愛い」
o川*゚ー゚)o「集中切れるからやめて」
从 ゚∀从「分かった、ごめん」
o川*> -<)o「むむむむむ……」
从 ゚∀从「いやでもやっぱり可愛いな」
o川*> -<)o「むむー!」
( ФωФ)(ハインがにやけているのも珍しいな……)
彼女が他人に対してこのように距離を詰めるのを、初めて見た。
ロマネスクもハインもわりかし人見知りする方だ。
結婚したいというのは本気なのかもしれない。
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