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ξ# ゚⊿゚)ξ貫け!ツンデレブレード!のようです
1
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/29(月) 14:08:42 ID:TQ5ZF4dU0
一月一日。大晦日の厳かさとは打って変わって、町中どこか活気に満ちている。
ダウンを突き破りそうな風が体を冷やしていく。
ξ# ゚⊿゚)ξ「もう、何してんのよ! 遅刻しちゃうじゃない!」
(; ^ω^)「おーん! ごめんだおー!」
31
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/29(月) 14:27:15 ID:TQ5ZF4dU0
ブーンの笑顔が頭に浮かんだ瞬間、それの触手が伸びた。
諦めがつくほどの速さで私に迫る。せめて痛く苦しくないことを祈って目を閉じた。
ξ;-⊿゚)ξ(……?)
だけど衝撃はいつまで経っても訪れなくて。
恐る恐る目を開けたら、それと私の間に知らない影が立ち塞がっていた。
32
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/29(月) 14:27:37 ID:TQ5ZF4dU0
( )「大丈夫かお!?」
ξ ゚⊿゚)ξ「あ」
違う。私は知っている。
この影は、この人は。
( ^ω^)「もう大丈夫だお、ツン!」
ξ;⊿;)ξ「ブーン!」
33
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/29(月) 14:27:57 ID:TQ5ZF4dU0
これは現実なんだろうか? 私の都合のいい夢だとか、走馬灯でもない?
夢でも走馬灯でもなければその人は間違いなく本物のブーンだった。
見慣れないローブと、右手に掲げた日本刀を除いては。
( ^ω^)「ツン、少し離れて、僕の後ろに隠れててくれお」
ξ;⊿;)ξ「わ、わかった」
ブーンの言う通りに動いて、柱を盾にする形で隠れた。
ブーンはその間もずっとそれ――化け物を見つめていた。
34
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/29(月) 14:28:37 ID:TQ5ZF4dU0
ξ ぅ⊿゚)ξ「ブーン、あれって……」
( ^ω^)「あれは『怪異』。人間の思念……感情が凝り固まって顕在したものだお」
( ^ω^)「……ここ最近の変な事件も、あいつらの仕業だお」
ネットニュースで見る不可思議な事件、事故。
暇潰しの気持ちで読んでいた。なんだかんだ言われているけれど、結局ただの不審者の仕業だろうと思いながら。
35
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/29(月) 14:29:00 ID:TQ5ZF4dU0
( ^ω^)「でも大丈夫だお」
( ^ω^)「ブーンは『怪異』を祓う『退魔士』だから」
ブーンが日本刀を掲げる。
月も出ていないのに、その刀身が妖しく光った。
36
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/29(月) 14:29:27 ID:TQ5ZF4dU0
(# ^ω^)「行くお!!」
(# ^ω^)「――――『デレ』!!」
ブーンの言葉に応えるように、日本刀が光を放つ。
ξ ;ぅ⊿⊂)ξ(!? 眩しっ……)
思わず目を覆って、次に開けた瞬間、ブーンは人間離れした高さに舞い上がっていた。
37
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/29(月) 14:29:51 ID:TQ5ZF4dU0
(# ^ω^)「ハァァァッ!!」
化け物――ブーン曰く怪異――が触手を伸ばすも、ブーンの持つ日本刀で悉く斬り飛ばされる。
空中で踊っているように見えた。場違いな能天気すぎる感想だけれど、私にはそう見えた。
駒のように回転して触手を分断してくブーン。あっという間に私から離れて怪異に向かっていく。
38
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/29(月) 14:30:18 ID:TQ5ZF4dU0
ξ; ゚⊿゚)ξ「あ……!」
だけど、斬ったそばから怪異は次々に新たな触手を生やす。
こんなのキリがない。ブーンもそれはわかっているのだろうけど、なんとか近付こうと懸命に日本刀を振っている。
ξ; ゚⊿゚)ξ「――危ないっ!!」
私は少し離れていたからそれがはっきりと見えた。
一本の触手がブーンの背後に回り、鞭を打とうとするその瞬間を。
39
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/29(月) 14:30:52 ID:TQ5ZF4dU0
(; ω )「う”ぁっ!!」
ξ;⊿;)ξ「いやぁ!! ブーン!」
私よりもずっと背が高くて、何倍も力があるはずのブーンがいとも簡単に吹っ飛ばされた。
ブーンは石畳に投げ出されて体を丸めている。隠れろと言われたことも忘れて駆け寄った。
40
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/29(月) 14:31:24 ID:TQ5ZF4dU0
ξ;⊿;)ξ「ブーン、ブーン! しっかり!」
(; ω )「ツン……ごめ……逃げて……」
ξ;⊿;)ξ「やだ!! ブーンを置いていけない!」
ブーンはさっきまでの攻防で体力を使い果たしたのか、起き上がることもなくぐったりしている。
体に傷がないか必死でまさぐる。わかってる。ブーンが怪我をしてもしていなくても、私には何もできない。
私には何も。
41
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/29(月) 14:31:48 ID:TQ5ZF4dU0
ξ ゚⊿゚)ξ(何も……)
すぐそばに転がっていた日本刀が、弱々しく光を放っていた。
42
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/29(月) 14:32:08 ID:TQ5ZF4dU0
(; ω )「ツン!?」
重い。ブーンはさっきまでこんなものを振り回してたの?
そもそもこれ、本物の刀? 模造刀ですら触ったことなんてないのに。
(; ω )「駄目だお……逃げるんだお、ツン!!」
ξ; ⊿ )ξ「やだ!!」
43
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/29(月) 14:32:33 ID:TQ5ZF4dU0
構えるだけで精一杯。こんな体たらくで私にできることなんて、きっとない。
一撃加える前に触手に張り倒されて終わりだ。
だけど。それでも。
ξ# ゚⊿゚)ξ「女にはね……やらなきゃいけない時があんのよ!!」
剣道の試合を見たときの記憶を思い起こして、見様見真似で走った。
様子を伺っていたそれは不思議そうに、だけど今度こそ明確に殺意を伴って、私に触手を伸ばす。
どうしよう。ここからのことなんて、正直何も考えてなかった。
44
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/29(月) 14:32:59 ID:TQ5ZF4dU0
――――右に飛んで!
ξ ゚⊿゚)ξ「え?」
声が聞こえた。
そう表現するしかなかったけれど、厳密にそれは耳から聞こえたものじゃなかった。
まるで脳にそのまま語りかけてくるような。
私はなぜかその声の通り、足に力を込めて右に飛んだ。
途端さっきまで私がいた地面を触手が掠める。
45
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/29(月) 14:33:42 ID:TQ5ZF4dU0
――――左!
ξ; ゚⊿゚)ξ「くっ!」
頭が真っ白になった今、正体不明のその声に従う他なかった。
右、左、左、屈んで――指示された通りに動くと、その瞬間元いた地面を触手が抉る。「従わなかったらどうなっていたのか」が鮮明に思い浮かぶ。
46
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/29(月) 14:34:21 ID:TQ5ZF4dU0
ξ; ⊿ )ξ「はぁっ、はぁっ!」
運動部に入っていればよかった。そうしたらもう少しスタミナもついたかな。そんなふざけた考えが頭に過る。
私はみっともないほど息を切らして、汗だくで、よろけながら触手を避ける。
時折、とんでもない速度で風を切る音が耳の近くで聞こえた。「ああ、あと少しで死んでた」とぼんやり考える。
それでも私は少しずつ怪異に近付いていた。
その頃になると疲労のあまりか恐怖心は薄れて、不思議とまっすぐにそれを見つめることができた。
47
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/29(月) 14:35:03 ID:TQ5ZF4dU0
(<●>)
ξ ゚⊿゚)ξ(人間の感情から生まれたもの……)
―― ξ -⊿-)ξ人(今年もブーンとドクオと仲良くいられますように)
―― ξ* -⊿-)ξ人(今年こそ、ブーンに告白できますように)
私にとって切実なあの願いも、こんな化け物じみた呪いだったというの?
48
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/29(月) 14:35:34 ID:TQ5ZF4dU0
ξ# ゚⊿゚)ξ「違う!!」
呪いなんかじゃない。
二人とずっと友達でいたい気持ちも、ブーンに対するこの気持ちも。
ξ# ゚⊿゚)ξ「間違ってなんかない!!」
ξ# ゚⊿゚)ξ「自分で叶える! 今年こそ、自分の力で!」
49
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/29(月) 14:35:56 ID:TQ5ZF4dU0
ウジウジと祈るのはもうやめる。
こんなわけのわからない化け物なんかに負けない。
ξ# ゚⊿゚)ξ「ブーンは私が守る!!」
一瞬、怪異が怯んだように見えた。
謎の声はもう聞こえなかった。代わりに構えた日本刀が光を増した。
50
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/29(月) 14:36:28 ID:TQ5ZF4dU0
(; ω )「ツン!!」
(; ω )「なんでもいいお……言葉を叫ぶお! ツンが思う一番強い言葉を! その『言霊』が力になるお!」
言霊? 強い言葉?
そんなの急に言われてもわかんないよ。
どうしたらいいの、ブーン。どうしたら――
51
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/29(月) 14:36:53 ID:TQ5ZF4dU0
ξ ゚⊿゚)ξ(……あ)
その時ふいに浮かんだ、昔の記憶。
.
52
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/29(月) 14:37:32 ID:TQ5ZF4dU0
特撮ドラマをよく見ていた。
まぁ、実際のところテレビに釘付けになるブーンのほうをよく見ていたんだけど。
もうストーリーなんて全然覚えていないけど、唯一覚えているものがある。
主人公のヒーローが自分の名を掲げて、堂々と叫ぶ必殺の言葉。
ξ ⊿ )ξ「『ツンデレ』――――」
ξ# ゚⊿゚)ξ「――――『ブレード』ッッ!!」
53
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/29(月) 14:38:02 ID:TQ5ZF4dU0
私の体を貫こうと触手が蠢く。それよりもずっと早く、私は頭上に翳した刀を振り下ろした。
重力と勢いに任せて振り下ろしただけ。技もクソもない、女の私じゃ腕力もなく、きっと威力なんかたかが知れてる。
だけど振り下ろしたその瞬間、刀が今までのどの瞬間よりも強く光り輝いた。
視界が白い光に浚われて、そのまま意識が薄れていった。
しっかり握った刀だけは、最後まで手放さなかったと思う。
.
54
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/29(月) 14:38:24 ID:TQ5ZF4dU0
『変身!』
(* ^ω^)『へんしーん!』
ξ ゚⊿゚)ξ『ブーンってば、ほんとにヒーローが好きね』
(* ^ω^)『だってかっこいいお! ぼくもヒーローになるんだお!』
ξ ゚⊿゚)ξ『でも、ブーンってわたしよりかけっこおそいし、おすもうもわたしのほうが強いし……』
55
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/29(月) 14:38:50 ID:TQ5ZF4dU0
( ;ω;)『おーん!』
ξ; ゚⊿゚)ξそ『うわっ!』
( ;ω;)『ヒーローになるお! なるんだお!!』
ξ; ゚⊿゚)ξ『わ、わかった! わかったから泣くのやめなさいよっ!』
( ぅω;)『ぐす……ぼくだって、おとなになったら……』
ξ; ゚⊿゚)ξ『まったくもう……泣き虫のくせにあきらめがわるいんだから』
( ぅω⊂)『なきむしじゃないお……』
56
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/29(月) 14:39:20 ID:TQ5ZF4dU0
ξ ゚⊿゚)ξ『……なんでそんなにヒーローになりたいの?』
( ^ω^)『お?』
ξ ゚⊿゚)ξ『だってヒーローって、きっとすごくたいへんよ? いっぱいたたかわなくちゃいけないし、ケガするかも……』
( ^ω^)『そんなのへっちゃらだお! それにりゆうなんてかんたんだお!』
(* ^ω^)『みんなのこと、まもりたいから!』
(* ^ω^)『おとなになって、つよくなって、ぼくがみんなをまもるんだお!』
(* ^ω^)『ツンちゃんのこともまもってあげるお!』
57
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/29(月) 14:39:55 ID:TQ5ZF4dU0
ξ ゚⊿゚)ξ『……』
ξ* ゚⊿゚)ξ『……うん』
ああ、そうだった。
ブーンは昔からずっとそう。人のことばかり気にかけて、自分のことは二の次で。
だけど、そんなブーンだから、私は――――
.
58
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/29(月) 14:40:30 ID:TQ5ZF4dU0
(; ^ω^)「ツン! ツン!!」
ξ -⊿゚)ξ「ん……」
最初に見えたのは真っ黒い空と、至近距離から私を覗き込むブーンの顔だった。
ああ、私地面に倒れてるんだ。気絶していたんだ。
そうやって冷静に分析できたのは指一本動かせないくらい疲れていたから。
いつもなら悲鳴を上げて引っ叩いていたところだけど、精神的にも肉体的にもそんな余裕なかった。
59
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/29(月) 14:40:54 ID:TQ5ZF4dU0
ξ ゚⊿゚)ξ「あ……ブーン……」
(; ^ω^)「よかった……体は大丈夫かお?」
ξ ゚⊿゚)ξ「うん……大丈夫」
こんなに疲れたのは生まれて初めてかもしれない。
プールの授業よりも持久走の授業よりも疲労がひどくて、意識ははっきりしているはずなのにうまく受け答えができない。
60
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/29(月) 14:41:14 ID:TQ5ZF4dU0
私、あれからどうなったんだっけ?
刀が光って、目の前が真っ白になって、それから――
ξ; ゚⊿゚)ξ「ッ!! あの化け物はっ!?」
( ^ω^)「もう大丈夫だお。ツンが倒してくれたから」
ξ ゚⊿゚)ξ「わ、私が?」
そっか、ちゃんと倒せたんだ。よかった。
……と言っても正直ほとんど覚えてないけど。
61
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/29(月) 14:41:41 ID:TQ5ZF4dU0
( ^ω^)「……ごめんお、ツン」
ξ; ゚⊿゚)ξ「な、なんでブーンが謝るのよ」
( ^ω^)「僕が不甲斐ないばかりにツンを危ない目に遭わせたお」
( ^ω^)「僕、退魔士になった時に誓ったんだお。みんなを守るって。誰も傷つけさせないって」
( ^ω^)「だからいっぱい修行したお。部活も頑張ったお。強くなるために」
( ω )「なのに、大事な友達すら守れなかった」
( ;ω )「……何もできなかった……」
ξ ゚⊿゚)ξ「ブーン……」
62
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/29(月) 14:42:11 ID:TQ5ZF4dU0
ξ ゚⊿゚)ξ「……バカね」
( ぅω )「ツン……?」
ξ ゚⊿゚)ξ「助けに来てくれたじゃない。ブーンが来てくれなかったら死んでたわよ」
ξ ゚⊿゚)ξ「それに私、怪我もしてないわ。『傷つけさせない』もできたじゃない」
ξ ゚ー゚)ξ「何もできなかったなんてことないわよ。自信持ちなさい」
ξ ゚ー゚)ξ「ありがと。助けてくれて」
( ;ω;)「ツン……」
ξ; ゚⊿゚)ξ「ああもう、泣くんじゃないわよ」
ξ ゚ー゚)ξ「ほんと、昔から変わらないんだから」
63
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/29(月) 14:42:31 ID:TQ5ZF4dU0
( ^ω^)「もうすぐ救護班が到着するはずだお。外傷はなさそうだけど、一応診てもらったほうがいいお」
ξ ゚⊿゚)ξ「そうね。話を聞くのはその後ね」
(; ^ω^)「お?」
ξ# ゚⊿゚)ξ「『お?』じゃないわよ! 全部説明してもらうからね!」
(; ^ω^)「お……そ、それはちょっと……」
ξ# ゚⊿゚)ξ「文句あるの!?」
(; ^ω^)「ないです!!」
64
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/29(月) 14:43:08 ID:TQ5ZF4dU0
まあ、なんとなく予想はつく。
到底普通の生き物には見えないあの化け物。
そしてブーンが名乗った『退魔士』。
漫画やアニメじゃあるまいしと言いたくなるけど、実際に見てしまった後じゃ否定もできない。
ξ ゚⊿゚)ξ「そういえば、あの刀……」
( ^ω^)「デレのことかお?」
ξ ゚⊿゚)ξ「その『デレ』? っていうのは……?」
( ^ω^)「『名刀・出煉(でれん)』。僕はデレって呼んでるお」
武器に名前、ねえ。
そういえば昔ブーンが好きだった戦隊ヒロインがそんな名前だったような。
65
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/29(月) 14:43:46 ID:TQ5ZF4dU0
ξ ゚⊿゚)ξ「ねえ、もう一回刀見せてよ」
( ^ω^)「お? いいけど……」
鞘に収めたまま刀が差し出される。
思えばこの平和な国で武器を持つ機会なんてあるわけもない。
怪異と対峙した時は無我夢中でそれどころじゃなかったけど、正直興味があった。
66
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/29(月) 14:44:06 ID:TQ5ZF4dU0
ξ ゚⊿゚)ξ(それに、あの時聞こえた声……女の子の声だった)
多分私と同い年くらいの、可愛らしい声。
あの声が指示してくれなかったらきっと私は死んでた。
ξ ゚⊿゚)ξ(あなたが助けてくれたの?)
不思議な気持ちで『デレ』に手を伸ばして、指先が僅かに触れた。
67
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/29(月) 14:44:31 ID:TQ5ZF4dU0
ξ; ゚⊿゚)ξ「きゃっ!?」
(; ^ω^)「お!?」
指先が痺れた。いや、弾かれた?
真冬の静電気を何倍にも強めたような衝撃が襲って、慌てて指をひっこめた。
68
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/29(月) 14:45:02 ID:TQ5ZF4dU0
ξ; ゚⊿゚)ξ「さっきは触れたのに……」
(; ^ω^)「おかしいお。あれだけ共鳴できたなら、ツンもデレに認められているはずだお」
ξ ゚⊿゚)ξ「『認められてる』? どういうこと?」
( ^ω^)「デレには……というか僕たち退魔士が使う武器には、意思があるんだお」
ξ ゚⊿゚)ξ「意思?」
( ^ω^)「だお。武器に認められないと力を発揮できないし、怪異も祓えないお」
ξ ゚⊿゚)ξ「……」
「ツンもデレに認められている」? ありえない。
傍から見ているブーンにはわからないだろうけど、指が弾かれた瞬間、私は確かに声を聞いた。
69
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/29(月) 14:45:33 ID:TQ5ZF4dU0
――気安く触らないで。
――弱いくせに。私が導いてやらないと生き残れなかったくせに。
――ブーンちゃんに近付かないで。
ああ、そう。わかった。
そういうことね。完全に理解したわよ。
70
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/29(月) 14:47:02 ID:TQ5ZF4dU0
ξ ゚⊿゚)ξ「意思があるってことは、好き嫌いもあるのよね?」
( ^ω^)「そうだおね」
ξ ゚⊿゚)ξ「主人をえり好みするってことね?」
(; ^ω^)「おぉ……? んん……まぁ、言い方はアレだけど……そうかも?」
私が攻撃を避けられるように指示したのも、刀を使えるようにしたのも、大好きなブーンを殺されたくなかったから。
ξ# ゚∀゚)ξ「よぉぉく理解できたわ」
たかが鉄クズの分際でナメやがって。
71
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/29(月) 14:47:23 ID:TQ5ZF4dU0
ξ ゚⊿゚)ξ「決めたわ」
( ^ω^)「な、何を?」
ξ ゚⊿゚)ξ「私も退魔士になる」
( ^ω^)「はぁ……」
( ^ω^)「……」
(; ゚ω゚)「えぇっ!?」
72
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/29(月) 14:47:58 ID:TQ5ZF4dU0
こんな奴にブーンを任せられるわけないじゃない。
最近はまあ、昔と比べたらほんのちょっとだけ、逞しくなってきたけど。
ブーンってば今でもおっちょこちょいだし、寝坊も多いし、勉強もできないし、泣き虫だもの。
「内藤二級退魔士! お怪我は!?」
(; ゚ω゚)「伊藤さん! 僕は大丈夫だけどツンが……というかツン、退魔士になるって……!?」
ξ# ゚∀゚)ξ「大丈夫、ブーンは何も心配しなくていいわ」
73
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/29(月) 14:49:02 ID:TQ5ZF4dU0
デレはブーンに背負われたまま無言を貫いている。
見た目はただの刀。何の変哲もない骨董品。
だけど私には、ブーンにしがみついて私を睨みつける女にしか見えなかった。
ξ# ゚∀゚)ξ「ブーンは私が守ってあげるから」
あんたなんかに、ブーンは絶対渡さない。
74
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/29(月) 14:49:27 ID:TQ5ZF4dU0
ξ# ゚⊿゚)ξ貫け!ツンデレブレード!のようです 終
.
75
:
◆eGnLqfyqwY
:2024/04/29(月) 14:49:51 ID:TQ5ZF4dU0
オレンジデー祭り参加作品でした。
ありがとうございました!
76
:
名無しさん
:2024/04/29(月) 14:54:58 ID:.OfAO0xw0
乙かれさまです!
77
:
名無しさん
:2024/04/29(月) 21:12:57 ID:Pv.ke57I0
乙!!実によい設定。このまま連載してもいいかも、いや連載してください!!
78
:
名無しさん
:2024/04/29(月) 21:29:26 ID:CDP7G7cA0
乙
79
:
名無しさん
:2024/04/30(火) 18:46:15 ID:4uqSSVlc0
乙乙
ツンちゃん可愛くて格好良かった!
80
:
名無しさん
:2024/05/09(木) 22:57:24 ID:WAp3E46Q0
設定めちゃ好き!
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