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( ・∀・)「毎日好きと言うようです」
1
:
◆NGYeHpCrH2
:2024/04/24(水) 16:25:54 ID:zoafWSng0
【4月、月曜日】
〜登校中、校門前にて〜
(*・∀・)「おはようございます好きです先輩!」ダダッ
ζ(゚ー゚*ζ「はいはい、おはようねー」
出会ってからの半年間、見かけるたびに好きだと言い続けていた。
〜昼休み、購買にて〜
(*・∀・)「おつかれです、結婚してください!」
ζ(゚ー゚*ζ「だめです、おつかれー」ヒラヒラッ
顔を見るだけで嬉しくて、止まらなくなった。
331
:
名無しさん
:2024/07/11(木) 00:23:47 ID:/TUmgNgE0
つべでパン屋さんまとめの動画があったから見たよ。それ見てからまたこっちに読みに来たらより楽しめた。
毎日好きも楽しみにしてる!乙〜!
332
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 13:54:06 ID:yQdk9mkE0
>>328-330
乙ありがとうです。
>>331
楽しかったねーって共有がしたかったので、元動画見てくれたこと嬉しいです。
そして、待っててくれてありがとう。
投下します。
333
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 13:55:00 ID:yQdk9mkE0
愛しすぎて嬉しすぎて死んだらどうしよう。
ζ(゚ー゚*ζわたしの帰る場所のようです
走って逃げていた。
何から逃げているのかは自分でもわからない。
先を考えること、彼に応えること、自分に向き合うこと、とにかく考えうるすべてのことから、逃げていた。
とても幸せで、少し後ろめたくて、でもやっぱり幸せなのだった。
334
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 13:55:41 ID:yQdk9mkE0
ζ(゚ー゚*ζ(どうしよう)
恋人には、なるべきではないと思っていた。
近づきすぎると、あの子はいつか私のために大事なことを捨ててしまうんじゃないかと不安だったから。
挨拶のように繰り返された結婚してください、という言葉は、親愛と恋愛の区別がつかないあの子なりの、ずっと一緒にいようねという意思表示だと思っていた。
ζ(゚ー゚*ζ(本当に、私のことを好きなんだ)
嬉しい。
あの子は私が思っているよりずっと強く、ずっと思慮深く、ずっと頼りになるということが、ただ、たまらなく嬉しい。
335
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 13:56:45 ID:yQdk9mkE0
そして、それを信じられていなかった自分が、少しだけ後ろめたいのだ。
ζ(゚ー゚*ζ(でも、さぁ)
急成長し過ぎではないか。
守ってあげるべき後輩だと思っていたのに、急に、あんなに、男の子になってしまった。
いや、少しずつ成長はしていたのに、日々が楽しすぎて気付いていなかったのかもしれない。
ずっと一緒にいたのに、いつもいつも予想外のことばかりだ。
336
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 13:57:08 ID:yQdk9mkE0
そして、予想外といえば。
ζ(゚ー゚*ζ『割と、前向きに、考えているから。いい子で待っているように』
あの返事。
我ながら、もっと他に何か無かったのだろうか。
普段は好きにするよう言っておいて、いざ逃げられそうになると慌ててしまう自分が情け無い。
ζ(゚ー゚*ζ『あとね。大事なものは、一つあればいいから。どんな結果になっても、百輪の薔薇なんてなくても、未来の私を迎えに来てね』
自分勝手にも程がある。
というか、これはもう実質答えじゃないかな。
意識して、唇が熱くなる。
ζ(゚ー゚*ζ『じゃ、じゃあ、そういうことだから』
そういうことだからって何!?
卒業まであと半年以上あるんですけど。
明後日からまた毎日会うんですけど、どんな顔して学校行けばいいのかな?
337
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 13:57:58 ID:yQdk9mkE0
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯⋯⋯」
手元の薔薇に目をやる。
当然、答えはない。
私だって、ずっと、好きだった。
それなら答えなんて、決まってるようなものだけど。
ζ(゚ー゚*ζ『私、誰とも付き合わないし、結婚しないから』
あの子のためと思って言い続けた言葉。
これを今更反故にするのは、あの子からどう見えるだろうか。
ぐるぐる、ぐらぐら、思考が回る。
進んで、戻って、傍へと逸れて、どっちに進めばいいのかわからない。
学校から、あの子は逃げられでも、自分からは逃げられない。
誰にも言えないことだけど、誰か一緒に考えてくれないだろうか。
338
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 13:58:21 ID:yQdk9mkE0
◆◆◆
(;'A`)「あのね、どんな相談かは知らないけど、多分人選ミスだよ」
ζ(゚ー゚*ζ「言わないでくださーい」
迷った末に辿り着いたのは喫茶店だった。
いつも通りガラガラ、カウンター席でマスターと二人きりだ。
('A`)「お友達とかには頼めないの?」
ζ(゚ー゚*ζ「近すぎる関係性だと、かえって相談しにくいんですよ。その点このお店なら、気まずくなったら二度と来なければいいだけなので」
('A`)「わりかし酷い事を言っている自覚を持つように」
鳴物入りの新メニュー、水出しアイスコーヒーが差し出される。
ζ(゚ー゚*ζ「はーい」
ミルクとガムシロップを入れ、掻き混ぜながら答える。
339
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 13:58:54 ID:yQdk9mkE0
('A`)「まあ、相当混乱してるみたいだから、愚痴くらいは聞くけどね」
ζ(゚ー゚*ζ「あ、ありがとうございます」
('A`)「いいえー、お仕事ですから」
拗ねちゃった。
ζ(゚ー゚*ζ「えー⋯⋯こ、これは友達の話なんですが」
('A`)「飲んだら帰りなさいね」
ζ(゚ー゚;ζ「な、なぜ!?」
今、話を聞いてくれる流れでしたよね!?
('A`)「多分自分の話なんだろうけどね。本当に友達の話ならお嬢ちゃんが考えてあげるべきだし、わざわざ隠すくらいならもう少し自分で考えなさい」
ぐうの音も出ない。
340
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 13:59:43 ID:yQdk9mkE0
ζ(゚ー゚*ζ「実は私の話なんですけど」
('A`)「うん」
ζ(゚ー゚*ζ「なんです、けど」
('A`)「うん」
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯⋯⋯ちょっと覚悟を決めるので、待ってください」
(;'A`)「無理に言わなくていいんだよ」
困惑しながらも、こちらを心配するような声。
341
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:01:49 ID:yQdk9mkE0
ζ(゚ー゚*ζ「一人で考えると袋小路なので相談したいんですが、口に出すのに勇気がいるもので」
('A`)「わからなくも無いけどね」
誰か他の客が来るのでは、と不安になり、入り口のほうを見る。
マスターは仕方ないな、といった表情をして、入り口まで行き、掛札を「close」に変える。
ζ(゚ー゚*ζ「いいんですか?」
('A`)「いや、未成年の娘さんと二人きりって時点で大分マズい。流石に鍵は開けとくからね」
ζ(゚ー゚*ζ「そういうことではなく」
商売的に大丈夫なのか、という話である。
342
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:02:11 ID:yQdk9mkE0
('A`)「お嬢ちゃんもね、卒業したら大学生なんだから。ちょっと顔見知り程度の大人をあまり信用しないように」
そして渋い顔で戻ってくる。
カウンターを挟んで向き合う形に戻る。
('A`)「俺のこともね。怪しいな、と感じたらすぐ逃げなさい」
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯凄い過保護」
('A`)「学生さんの多いところで商売する以上、当然のことだよ。逆に学生だからという理由で付け込んでくるヤツも多いから」ケッ
顔を顰めて言う。
何かあったのだろうか。
343
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:02:36 ID:yQdk9mkE0
ζ(゚ー゚*ζ「私、卒業、するんですよねぇ⋯⋯」
('A`)「やっぱり悩みは進路か」
ζ(゚ー゚*ζ「進路に絡んではくるんですが」
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯えー、ちょっとした条件付きの、返さなくていい奨学金があるんですが」
('A`)「うんうん」
ζ(゚ー゚*ζ「それに手が届きそうなので、県外に進学を考えてるんですよ」
344
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:03:42 ID:yQdk9mkE0
('A`)「⋯⋯君。もしかしてだけど凄い頭いいの?」
ζ(゚ー゚*ζ「頑張れば平均より上だけど、トップクラスだと最下位争い中、くらいのレベルです」
('A`)「それは、なんというか⋯⋯」
('A`)「挑戦するか悩むね」
ζ(゚ー゚*ζ「悩むんですよ」
諦めるには近すぎて、覚悟するにはちょっと遠いレベル。
誰かの応援があれば、頑張れるかもしれない。
('A`)「あの子なら応援してくれそうだけどね」
あの子。
( ・∀・)
他の人から見ても、そう思ってしまうくらいには近い関係なのだろうか。
345
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:04:39 ID:yQdk9mkE0
ζ(゚ー゚*ζ「実はそれを期待して、モララーくんには真っ先に伝えました」
('A`)「ほう」
ζ(゚ー゚*ζ「それで、告白、されまして⋯⋯」
(*'A`)「ほほう!」
ζ(゚ー゚*ζ「どう、しよう、か、なぁ⋯⋯と」
もうこうなればヤケだ、と口には出したものの、どうにも気恥ずかしい。
目を合わせず、アイスコーヒーの水滴を見つめながら話す。
346
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:05:25 ID:yQdk9mkE0
(*'A`)「いや、いやいや、おめでとう! 本当におめでとう!」
心からの拍手。
進路に悩んでるのに合格発表みたいになってしまった。
ζ(゚ー゚*ζ「ま、まだそうなるとは決まったわけでは!」
('A`)「え? 嫌なの?」
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯そうじゃなくて! これから忙しくなりますし。県外進学ですし。会える時間も減るし、寂しくさせるし、今まで断ってたのはなんだったのって話になるし。それに」
('A`)「それに?」
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯⋯⋯もし、落ちたら、格好悪いし」
('A`)「あのね」
('A`)「進学とか就職って、大体格好つかないものでね」
ちょっと呆れるような声。
自分でも、間抜けなことを言っているのは分かっている。
347
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:08:21 ID:yQdk9mkE0
ζ(゚ー゚*ζ「分かってます」
ζ(゚ー゚*ζ「分かってるんですけど」
ζ(゚ー゚*ζ「あの子の中で『先輩』は、いつでも優しくて、格好良くて、一歩前を行く存在なんです」
('A`)「⋯⋯⋯⋯」
ζ(゚ー゚*ζ「でも、これからはどんどん忙しくなって、失敗して、少しずつ余裕が無くなっていくから」
('A`)「そうやって考えられることを、優しさっていうんだと思うよ」
348
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:09:02 ID:yQdk9mkE0
ζ(゚ー゚*ζ「私、最近自分のことばっかり考えてるんです」
ζ(゚ー゚*ζ「前は違ったのに。もっと我慢して、あの子の選択肢が増えるように行動できた」
('A`)「今は違うの?」
ζ(゚ー゚*ζ「今は⋯⋯」
ζ(゚ー゚*ζ『誰かを選ぶ前に、ちゃんと分からせておかないといけないでしょ?』
ζ(゚ー゚*ζ『キミの人生で出会う人の中で、私が一番かわいいってこと』
ζ(゚ー゚*ζ「少しずつ、自分勝手になってる。あの子が自分を選ぶように誘導してるような。そんな気がします」
349
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:09:49 ID:yQdk9mkE0
琥珀色の瓶の底を額にガン、とぶつけられた。
ζ(゚ー゚*ζ「あいたぁ!?」
('A`)「それが人を好きになるってことだよ」
ζ(゚ー゚*ζ「そうなんですかねぇ」
額をさすりながら、思う。
そんな、傲慢でいいのかな。
350
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:10:43 ID:yQdk9mkE0
('A`)「そうそう、俺も若い頃はそんなんでした」
マスターは瓶から自分のコーヒーカップに何かを注ぎ、一気に煽る。
ζ(゚ー゚*ζ「それなんです?」
('A`)「コーヒー用のブランデー。ちょっとおじさん、素面で話聞くの限界だから」
ζ(゚ー゚*ζ「真面目に相談してるのに」
('A`)「だからだよ」
('A`)「恋愛なんて真面目に考えたら失敗するんだから、ちょっと力抜きなさい」
ブランデーは流石に出せないけど、と寂しそうに笑った。
351
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:12:36 ID:yQdk9mkE0
ζ(゚ー゚*ζ「マスターも若い頃失敗しました?」
('A`)「まあ俺もまだ若いっちゃ若い歳だけども。失敗しましたとも」
ζ(゚ー゚*ζ「参考にしたいから教えてください、って言ったら怒ります?」
('A`)「大して面白くもないよ」
ζ(゚ー゚*ζ「いいです。私だけ恥かくの嫌なので」
(;'A`)「いい性格してるね、本当に」
('A`)「⋯⋯⋯⋯昔、バリバリに働いてた頃、一緒に住んでた娘(こ)がいてねー」
ζ(゚ー゚*ζ「えっ」
('A`)「はは、意外だろ。昔は金さえあれば幸せになれると思ってたし、幸せにできると思ってたのよ」
傲慢だよなぁ、と、カップを傾ける。
352
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:13:33 ID:yQdk9mkE0
◆◆◆
そこそこ忙しく、たまに二人でゆっくりして。それなりに上手くいってたんだけど、いつだったかテレビでウェディング特集をやっていてね。
まだ早いな、って思いながら隣見たら、キラキラした目でテレビ見てるからさ。
裏でこっそりドレスだの式だのの金額調べたら目玉が飛び出たわ。
ζ(゚ー゚*ζ「お金で諦めたんですか?」
いや、もっと仕事詰めたよ。
金があれば全部解決するから、働けば解決だなんて簡単に考えてた。
必死で働いてね。休みも日雇いバイトしたり、勉強会行ったり。ちょっと遊ぶ時間は無くなるけど、サプライズだと思って何も言わなかった。
でも、彼女からすりゃ急に忙しくなれば不安だわな。
川 - )「何か手伝えることはないか」
なんて心配されたけど、いつも「大丈夫」って答えてたよ。
353
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:15:06 ID:yQdk9mkE0
で、あれは⋯⋯三ヶ月目くらいか。
あの頃は忙しくて時間感覚曖昧になっててね。
ある朝家に帰ったら「大事な話がある」って言われてさ、正直「寝せてくれよ」って感じだったから、敷きっぱなしの布団に倒れて「あいあい」なんて生返事をした。
川 - )「別れて欲しい」
川 - )「一緒にいても頼って貰えないなら、一緒にいる意味ないだろう?」
なーんも言えなかったね。
居てくれるだけで幸せだったから、苦労とか心配とかかけたくなかったから、幸せにしたくて頑張ってだんだけど。
そういうの、ずっと恥ずかしくて伝えられてなくてね。
何か言わなきゃ、立ち上がらなきゃって考えてるうちに寝ちゃって、起きたらもう夜で、荷物纏めていなくなってたよ。
情けなくて、申し訳なくて、寝転がったまま泣いて、泣いて、泣き疲れて、気づいたら寝てて、起きたら朝になってた。
なんか虚しくなって、仕事も辞めたよ。
手元には金だけ残った。
354
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:17:19 ID:yQdk9mkE0
◆◆◆
からん、と、アイスコーヒーの氷が溶け、音を立てる。
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯聞いてよかったんですか?」
軽い気持ちで、聞いていい話だったんだろうか。
('A`)「んふふ、お気遣いどうも」ピン
気遣いは無用、とばかりにデコピンされた。
('A`)「まあ何にせよ、あの経験からお嬢ちゃんに言えることは一つだ」
('A`)「良いことも悪いことも、何をやっても思い通りにいかないんだから、好きにしたらいいんだよ」
ζ(゚ー゚*ζ「えっ、そっち!?」
355
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:18:23 ID:yQdk9mkE0
('A`)「ん? 他に何かあるかな?」
ζ(゚ー゚*ζ「てっきり、話し合うのが大事だよ、というような方向に進むのかと」
('A`)「それが出来ないからここにいるんだろう?」
そうでした。
('A`)「⋯⋯⋯⋯分かってても出来ないよなぁ」
呆れるように、嘆息するように、呟く。
356
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:18:56 ID:yQdk9mkE0
('A`)「大切な人には幸せでいて欲しいし、そのためならいくらでも苦労できるんだ」
('A`)「でも、相手も同じ思いだったら?」
('A`)「俺は止められちまうと思って隠して、一人で努力して、結局バレて悲しませだけど⋯⋯」
('A`)「二人で幸せになるためには、相手にも苦労させる弱さが必要なのかもね」
分かんないけどさ、と弱々しく笑う。
ζ(゚ー゚*ζ「酔ってます?」
('A`)「んふふ、だからね、恋愛相談なんか酔わなきゃやってられませんわ」
わざわざ茶化す気もないけど、と笑う。
357
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:19:20 ID:yQdk9mkE0
ζ(゚ー゚*ζ「でも、ありがとうございます」
なんとなくだけど、やらなきゃいけないことがわかった気がする。
残り少ないアイスコーヒーを飲み干し、立ち上がる。
ζ(゚ー゚*ζ「今日はお世話になりました。それと、酷いこと言ってすいませんでした」
('A`)「んー? なんか言ったっけか、悪いこと」
ζ(゚ー゚*ζ「最悪もう来なければいいとか」
('A`)「はは、流石に冗談だって分かってるよ」
ζ(゚ー゚*ζ「冗談だって分かって貰えると思ってましたけど」
ζ(゚ー゚*ζ「言いたいことは、言うべきだと思ったので」
358
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:21:14 ID:yQdk9mkE0
('A`)「⋯⋯⋯⋯あー」
('A`)「お嬢ちゃんは、やっぱり頭がいいなぁ」
ζ(゚ー゚*ζ「ふふ、励みになります」
「んじゃ、また二人でおいで」
「ええ、きっと」
.
359
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:22:09 ID:yQdk9mkE0
◆◆◆
客が店を出ていく姿を見るのが好きだ。
少し重い木のドアがゆっくり開き、外から差す光の中に足を踏み出す姿が、好きなんだ。
その客が笑顔だったら、尚更に。
カランとベルが音を立ててドアが閉まり、店内は静寂につつまれる。
('A`)「⋯⋯⋯⋯お幸せに」
過去に愛した人を思う。
思えば彼女も、俺が家を出るときはニコニコと背中を見送ってくれた。
あの頃は気恥ずかしくて申し訳なかったが、今なら彼女の気持ちもわかる気がする。
送り出す側は、見守ることしか出来ず、だからこそ祈ってしまうのだろう。
('A`)「あの子たちが、幸せでありますように」
酔いのせいか、重くなった瞼を閉じ、呟く。
('A`)「俺も、好きだったよ」
360
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:23:21 ID:yQdk9mkE0
戻らない日々を思う。
愛した人の幸せを思い、あの頃言えなかったことを、今度は大きな声で言ってみる。
カランッ
('A`)「大好きだったよー!」
ζ(゚ー゚;ζ
(;'A`)
ζ(゚ー゚;ζ「あ、あの、お会計、忘れてて⋯⋯」
('A`)「奢りです」
ζ(゚ー゚;ζ「で、でも」
('A`)「奢りだから」
ζ(゚ー゚;ζ
('A`)「ひとりにしてよぉぉぉぉ!!!」
「すいませんごちそうさまでした!」ヒュンッ三ζ
カランッカランッ
361
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:24:23 ID:yQdk9mkE0
('A`)
('A`)「⋯⋯」
(ノA`)「⋯⋯⋯⋯」
人生は思い通りにならないことばかりで。
話し合うべきだった、口に出さなきゃよかった、なんて後悔ばっかりで。
それでも。
('A`)「それでも、大好きだったんだよ」
こればっかりは、どうしようもない。
店の外、光の下を歩くあなたが、どうか幸せでありますようにと願いながら。
新しい客を迎えるために、立ち上がった。
362
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:24:51 ID:yQdk9mkE0
◆◆◆
そんなこんなで。
激動の土曜日を乗り越え、悩みながらも日曜日を越え、なんともう月曜日の朝である。
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯⋯⋯ねむーい」
登校中はいつだって眠い。
いつもなら、そろそろあの子が声を掛けてくる頃だ。
(;・∀・) ζ(゚ー゚*ζ「おーい」
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯⋯⋯遠くないかな?」
(;・∀・)「い、いつもー、これくらいです、よ?」
嘘だ。
普段なら、にこにこと走って駆け寄ってきているはずが、今日は気まずそうにゆっくりとこちらへ近づいてくる。
363
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:25:27 ID:yQdk9mkE0
ζ(゚ー゚*ζ「あーあ、嫌われちゃった」
(;・∀・)「いやいやいやいや、そんなことは全然決して絶対無いですよ!?」
冗談めかして非難すると、焦って走ってきた。
わかりやすくて、とてもよろしい。
ζ(゚ー゚*ζ「はい、おはよう」
(;・∀・)「お、おはよう、ございます」
ぎこちない返事。
なんとなく目を合わせられないまま、しばらく無言で、並んで歩く。
一歩だけ、近づいてみる。
364
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:25:55 ID:yQdk9mkE0
(*・∀・)「ち、近くないですか?」
ζ(゚ー゚*ζ「駄目かな?」
(*・∀・)「駄目じゃないですけど⋯⋯」
ζ(゚ー゚*ζ「けど?」
(*・∀・)「⋯⋯⋯⋯心臓が持たないので」
ζ(゚ー゚*ζ「ふふ、なにそれ」
365
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:26:29 ID:yQdk9mkE0
一歩、離れる。
緊張が和らぎ、なんだかいつもの雰囲気だ。
ζ(゚ー゚*ζ「色々と考えたんだけどさ」
なんでもないことのように、切り出してみる。
ζ(゚ー゚*ζ「まだ答えない、という結論になりました」
モララーくんの足が止まる。
( ・∀・)「⋯⋯⋯⋯そ、うですか」
私も止まり、待つ。
366
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:26:51 ID:yQdk9mkE0
ζ(゚ー゚*ζ「期待を持たせるようなことを言って、こんな答えでごめんね」
ゆっくりとモララーくんが歩き出し、私も並んで歩く。
ζ(゚ー゚*ζ「現実的に考えるとさ、断ったほうがキミのためなんだろうなって思ったんだ」
ζ(゚ー゚*ζ「これから少しずつ会える時間は減るし、その時間でキミには他に好きな子を作る自由もあるし」
ζ(゚ー゚*ζ「それに、遠距離恋愛っていうのは破局しやすいらしいし?」
( ・∀・)「⋯⋯」
無言で俯く彼の手を握る。
ζ(゚ー゚*ζ「でも、やだ」
強く、握る。
ζ(゚ー゚*ζ「キミがいないのは、いやだ」
367
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:27:57 ID:yQdk9mkE0
ζ(゚ー゚*ζ「キミがきてくれるなら。私はこの先、恋愛とか結婚とか、そういうの全部出来くなってもいい。二年後に、必ず答えを聞きにきて」
.
368
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:28:17 ID:yQdk9mkE0
言わないでおこうと決めたことを、言ってしまった。
恥ずかしくて顔を見れない。
心臓がうるさい。
繋いだ手から、心臓の鼓動が伝わらなければいいなんて、ありきたりで馬鹿みたいなことを考える。
369
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:29:32 ID:yQdk9mkE0
強く、握り返される。
( ・∀・)「⋯⋯⋯⋯迎えに行くのが俺で、いいんですか?」
震える声に喜びが混じっているのに安堵するべきか、それともその内容に呆れるべきだろうか。
ζ(゚ー゚*ζ「キミはもう少し、自分に自信を持ちなさい」
( ・∀・)「すいません」
ζ(゚ー゚*ζ「私を幸せにしてくれるんでしょう?」
(*・∀・)「」
照れて、黙ってしまう。
こっちだって、恥ずかしいのに。
繋いだ手を離し、彼の頬を指で突いてみる。
370
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:29:53 ID:yQdk9mkE0
ζ(゚ー゚*ζ「これは受け売りだけど。人生は何をしても、思い通りにはならないんだってさ」
( ・∀・)「? そうなんですか?」
ζ(゚ー゚*ζ「だから、私は先輩として格好つけるのを少しだけ諦めました」
本当は、ずっと格好良い先輩でいたかったんだけど。
思いを口に出せば、キミは「先輩はいつでも格好良いですよ」なんて、当たり前みたいに言うんだろう。
ζ(゚ー゚*ζ「少しだけキミに頼ってみようと思うので、しっかりしてくれないと困るよ」
なんて勝手な理屈。
それでも、許してくれるという確信があった。
( ・∀・)「頑張ります。先輩のこと、支えられるように」
ほらね。
優しいんだ、この子は。
ζ(゚ー゚*ζ「ふふ、いい返事。ありがとう」
371
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:30:41 ID:yQdk9mkE0
諦めたなんて言いながらも、余裕ぶって、先輩らしくと努めてしまうのは、私の悪い癖で。
そんなことを知らずに、モララーくんは後ろを嬉しそうに着いてくる。
今までと同じ、今までと少しだけ違う関係。
この子の一歩前こそが、私の、帰る場所であればいい。
もし将来、答えを返すそのときに。
愛しすぎて嬉しすぎて死んだらどうしよう。
372
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:33:02 ID:yQdk9mkE0
◆◆◆
「⋯⋯あ、そういえばこの間のこと。俺も考えたんですけど」
「ん、何かな?」
「晴れてるのにどこにも行けなくて寂しいなーってやつ」
「そんな話も、したね」
「あれだけ晴れていれば、きっと景色が綺麗に見えると思うので。次は電車で海とか、気分の晴れる所に行きましょうよ」
「ふふっ。キミのそういうとこ、いいと思うよ」
ζ(゚ー゚*ζわたしの帰る場所のようです 完.
373
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 15:02:15 ID:yQdk9mkE0
これで終わりです。
>>232
( ・∀・)いつもと違う、ようです(前回分)
>>333
ζ(゚ー゚*ζわたしの帰る場所のようです(今回分)
ちょっとだけ二人は前に進みました。
今度こそ完結のはず、です。
でも思いついたら何かしらの短編など上げます。
乙とか読んだよとか書いてあると嬉しいです。
一レス当たりの文章量に迷ってます、ちょうどいいとか、ちょっと多いな少ないな、とか思うことあったら書いていってくださいお願いします。
374
:
名無しさん
:2024/07/20(土) 23:30:16 ID:Q7QDsKHk0
おっしゃ乙やで!
375
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/21(日) 00:28:21 ID:598SG89w0
>>374
読んでくれてありがとうございます。
本編に入れようとして入んなかったエピソードを追加で投下して終わりです。
毎回毎回ごめんよ、今回はマジで入れ忘れたしエピソード挟まる隙間が無いと思ったのに、なんかスルッと収まりそうなので投下します。
376
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/21(日) 00:29:41 ID:598SG89w0
ζ(゚ー゚*ζわたしの帰る場所のようです・エピローグ
ζ(゚ー゚*ζ(⋯⋯⋯⋯とは、言ったものの)
言葉だけでは、いつかこの子を一人にした友人たちと、同じことをしているのではないか。
ζ(゚ー゚*ζ(かと言って、渡せるものがあるかと言えば、無いわけで)
どうにか安心させてあげたくて、ポケットを探る。
ハンカチと、予備のヘアゴムが一つ。
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯⋯⋯」
無意識の行動だった。
隣に歩く彼の左手を取り、その薬指に、赤いヘアゴムをくるりと巻いてみる。
ζ(゚ー゚*ζ(いや、これは流石に、ねぇ)
自分より大きい指に、赤色のそれは似合ってなかった。
(*・∀・)「あ、あの、なにを⋯⋯」
ζ(゚ー゚*ζ
我に返る。
ζ(゚ー゚*ζ「返してね」
急いで取り返して、自分のポケットに戻し、走り出す。
377
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/21(日) 00:30:26 ID:598SG89w0
(*・∀・)「え、それ、くれるんじゃ」
そっと、離れる。
ζ(゚ー゚*ζ「あげない」
走る。
(*・∀・)「でも」
ζ(゚ー゚*ζ「だめ」
走る。走る。
(*・∀・)「先輩、ちょっと待って」
ζ(゚ー゚*ζ「待たない」
走る。走る。走る。
ζ(゚ー゚*ζ「キミがやってよ」
追いつかれないように、走る。
ζ(゚ー゚*ζ「安心させるのも、追いつくのも、プレゼントくれるのも」
追いつかれたいと思って、走る。
「全部、キミがやるんだからね!」
追いかけてくる音が近づいてくるのが嬉しくて、それでも必死に走った。
でも、先輩にも意地があるので。
今日のところは、逃げ切りたいと思う。
二年後には、もう、逃げられないだろうから。
完.
378
:
名無しさん
:2024/07/21(日) 18:45:53 ID:hC0.Ldeo0
乙だ
379
:
名無しさん
:2024/07/22(月) 23:35:34 ID:r9DqISMY0
完結乙
自分の考え方を変えるのも、約束するのも結果的に相手を縛るのも、迷うし怖いよな
前向きな回答にたどり着けてほんとに良かった
素敵な作品をありがとう
行数に特に違和感は感じなかったです
1レスのボリュームが無意味に変動しまくってると気をとられるかもしれない
投下のしやすさで決めていいと思います
380
:
名無しさん
:2024/07/27(土) 00:34:32 ID:icKv7jL60
完結乙です!最後まで面白かった!
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