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( ・∀・)「毎日好きと言うようです」

45 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/24(水) 16:54:58 ID:zoafWSng0
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯続けて?」

袋を奪い取り、心なし不機嫌となったデレさんが言う。
もぐもぐしててかわいい。

( ・∀・)「世の中には、美味しいものとか、楽しいことが沢山あって」

( ・∀・)「ソレを探すには、出会うには、沢山の時間が必要じゃないですか」

ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯そうだねぇ」

( ・∀・)「でも俺は、そういうの何にもあげられないから」

ζ(゚ー゚*ζ「は?」

チョコレートを食べる手が、止まった。

46 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/24(水) 16:55:23 ID:zoafWSng0
( ・∀・)「困ってる時に助けてもらって、いつも優しくしてもらって、何も返せないから」

( ・∀・)「誇れる後輩になれるよう努力してみても、途中でだらけてゲーセンとか行っちゃうし⋯⋯」

( ・∀・)「なにか、楽しい話でもできないかなって、色々試してみても、なんかダメで」

ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯」

( ・∀・)「チョコレートは、デレ先輩がいなくても美味しくて」

( ・∀・)「じゃあ、デレ先輩だって、俺がいなくても、美味しいもの、楽しいことはあるはずで⋯⋯」

ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯なんにもできないなら、邪魔になりたくないってこと?」

( ・∀・)「⋯⋯⋯⋯はい」

47 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/24(水) 16:57:50 ID:zoafWSng0
ζ(゚ー゚*ζ「あんまり気に」

( ・∀・)「気にしなくていいよ、って言ってくれると思ったから、会いに行きませんでした」

ふふって、デレ先輩が笑う。

しょうがないなぁ、っていうように。

( ・∀・)「今みたいに、ちょっと困った顔で笑って。その顔が好きだったんですけど」

( ・∀・)「いや、どんな顔でも好きですけど。困らせて、自分ばっかり幸せになって⋯⋯」

ζ(゚ー゚*ζ「あー⋯⋯。対等になりたかったんだね、君は」

ζ(゚ー゚*ζ「ダメだなぁ」

48 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/24(水) 17:01:26 ID:zoafWSng0
( ・∀;)「はい、俺ダメで⋯⋯」

ζ(゚ー゚*ζ「いや、こっちの話。あのねぇ、君」

ζ(゚ー゚*ζ「私はちゃんと楽しかったよ」

( ;∀;)「⋯⋯⋯⋯え?」

ζ(゚ー゚*ζ「いや、ちゃんとっていうのも失礼か。君が会いに来るの、嫌いじゃなかったよ」

ζ(゚ー゚*ζ「君のほうから毎日来てくれるから、ちゃんと伝えられてなかったよね」

( ;∀;)「⋯⋯」

ζ(゚ー゚*ζ「先輩だからね。頼ってもらえるのが嬉しいんだよ、私は」

49 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/24(水) 17:01:56 ID:zoafWSng0
( ;∀;)「でも先輩、今年卒業じゃないですか」

ζ(゚ー゚*ζ「う、うん? 今それ関係あるかな?」

( ;∀;)「最後の年なのに、あと一年しかないのに、人のことばっかり⋯⋯」

ζ(゚ー゚*ζ「あー⋯⋯じゃあねぇ、口開けなさい」

チョコレートを押し込まれた。

ζ(゚ー゚*ζ「おいしい?」

( ;∀;)「世界一です」

50 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/24(水) 17:02:17 ID:zoafWSng0
ζ(゚ー゚*ζ「二人だと世界一おいしいんだよ。それにさ、」

ζ(゚ー゚*ζ「最後の一年に、ここまで慕ってくれる後輩と会えなくなるなんて、寂しいこと言わないでよ」

51 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/24(水) 17:02:53 ID:zoafWSng0
( ;∀;)「⋯⋯⋯⋯結婚してください」

ζ(゚ー゚*ζ「あはは、だめです」

ハンカチで、涙を拭われる。

振り払うけど、逃がしてくれなくて、諦めた。

ζ(゚ー゚*ζ「でもさぁ、結婚しなくてもできること、いっぱいあるじゃない? そういうの全部、一緒にやろうよ」

ζ(゚ー゚*ζ「今度はちゃんと、私から誘うから」

ζ(゚ー゚*ζ「私のためだと思って、ね?」

拭われた先から涙が出てきて、それでもそっと拭ってくれて、幸せで、申し訳なかった。

52 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/24(水) 17:03:45 ID:zoafWSng0
ミセ*゚ー゚)リ(めでたしめでたしじゃん!)ヒソヒソッ

(゚、゚トソン(⋯⋯ミセリの言う通り、気を使った結果ではあったわけですね) ヒソヒソッ

('、`*川(なんか無駄に振り回された気分だわ。いや、なにかしたってわけじゃないけどさ⋯⋯) ヒソヒソッ

( ´_ゝ`)(でも、やっと元通りですよ) ヒソヒソッ

53 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/24(水) 17:04:53 ID:zoafWSng0



( ゚∀゚)o彡゜「とりあえずさー、明日の合コンにモララー連れてっていいんだよな?」

54 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/24(水) 17:05:27 ID:zoafWSng0
(;´_ゝ`)「お前何聞いてたの!?」

(; ゚∀゚)o彡゜「いやお前が何聞いてたの!? 今エモい感じでフラれてたじゃん!」

('、`*川「『アタシたち⋯⋯ズッ友だかんネ⋯⋯』って、都合のいい友達宣言だったわね」

(;´_ゝ`)「今のはいい感じに恋愛に繋がる流れでした! ねぇトソン先輩!」

(゚、゚;トソン「え!? あ、そういうの、疎くて⋯⋯ミセリ、どうなんですか?」

ミセ*゚ー゚)リ「次ができるまでキープして、ダメだったらモラくんに行ける恋愛強者の一手でした。アレはプロですね」

( ゚∀゚)o彡゜「ほらみろー!」

55 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/24(水) 17:06:38 ID:zoafWSng0
( ・∀・)「⋯⋯俺、予備の彼氏みたいな感じなんですか」

ζ(゚ー゚*ζ「ち、ちがう、ちがうし」

( ・∀・)「先輩がいいなら、俺、それでも」

ζ(゚ー゚*ζ「よくないから! 自分を下げるのダメ! 外野も変なこと言わない!」

(;´_ゝ`)「そうだぞジョルジュ! なんかいい感じに纏まりかけてたんだぞ!」

( ゚∀゚)o彡゜「纏まってねーわ! 大体俺だって、ここでモララーと先輩が恋人にでもなればイイハナシダナーで終わってんだよ!」

( ゚∀゚)o彡゜「それがなんだよ、『嫌いじゃないよ』とかフワフワしてさぁ! 別にキープ扱いなら他の出会い探しても怒られる謂れはねーじゃん」

56 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/24(水) 17:08:11 ID:zoafWSng0
('、`*川「一理あるどころか真理じゃん」

ζ(゚ー゚*ζ「ぺ、ペニサス?」

('、`*川「アンタがモナ助捕まえとけばこんなことになってないし、一回くらい別の出会い探させるのもアリじゃない?」

(;・∀・)「俺、別に合コン行きたいわけじゃないんですけど」

ミセ*゚ー゚)リ「でも友達が心配して誘ってくれたんだから、一回くらい顔出しといたら?」

( ゚∀゚)o彡゜「そうそう、絶対彼女できるわけじゃないし。⋯⋯言ってて悲しくなるけど、彼女より友達増えるだけの方が多いよ」

(゚、゚トソン「それでサクッと彼女できたらちょっと面白いですけどね」

57 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/24(水) 17:08:44 ID:zoafWSng0
( ・∀・)「でも、俺にはデレ先輩が⋯⋯」

( ゚∀゚)o彡゜「フラれてたじゃん」

( ´_ゝ`)「フラれてない! ねえデレ先輩! モララーのこと好きですよね!」

58 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/24(水) 17:10:06 ID:zoafWSng0



  ζ(゚ー゚*ζ「え、あ、あの、⋯⋯⋯⋯き、嫌いじゃない、よ?」

59 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/24(水) 17:10:30 ID:zoafWSng0
( ゚∀゚)o彡゜「好きじゃないって」

ζ(゚ー゚*ζ「そんなこと言ってないでしょ!?」

('、`*川「じゃあ好きなの?」

ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯⋯⋯い、今はいいじゃん、その話は」

(゚、゚トソン「いや、むしろ今しなくていつするんですか」

( ・∀・)「あの、俺、好かれてなくても、デレ先輩が笑っててくれれば⋯⋯」

60 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/24(水) 17:10:59 ID:zoafWSng0



   ζ(゚ー゚*ζ「好きじゃないなんて一回も言ってないでしょ!」

61 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/24(水) 17:11:38 ID:zoafWSng0
ミセ*゚ー゚)リ「ほう!」

('、`*川「おお!」

(゚、゚トソン「わあ!」

( ゚∀゚)o彡゜「よっしゃあ!」

( ´_ゝ`)「でしょうね!」

( ・∀・)「?」

62 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/24(水) 17:12:15 ID:zoafWSng0
ζ(゚ー゚*ζ「あ、え、いや、いまのなし、いまのは、なし」

ζ(゚ー゚*ζ「好きって、色々あるからさ、ほら」

ζ(゚ー゚*ζ「みんなが思ってるアレとは違うから」

( ・∀・)「デレさん俺のこと好きなんですか?」

ζ(゚ー゚*ζ「違う!」

ζ(゚ー゚*ζ「いや、違わないけど、ちょっと、ちょっと待って、アレだから」

ζ(゚ー゚*ζ「恋愛的なヤツじゃないから」

ζ(゚ー゚*ζ「ただ、特別なだけ」

ζ(゚ー゚*ζ「そう。ただ、大切なだけなの」

63 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/24(水) 17:13:07 ID:zoafWSng0
(゚、゚トソン「え、じゃあモララーくんが他所で恋人作ってきてもいいんですか」

ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯⋯⋯それは、私がいいとか悪いとかいう話じゃ、ないでしょ」

( ´_ゝ`)「ただ大切なだけってなんですか、そもそも」

ζ(゚ー゚*ζ「そのままだよ」

( ゚∀゚)o彡゜「そのままが意味わからんのですわ」

64 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/24(水) 17:13:44 ID:zoafWSng0
ζ(゚ー゚*ζ「えっと⋯⋯たとえば、だけどね」

ζ(゚ー゚*ζ「友達ができたり、美味しいモノ食べたり、なにかができるようになったりして」

ζ(゚ー゚*ζ「悩みとか何もなくて、幸せそうに笑ってて」

ζ(゚ー゚*ζ「寂しくなくて」

ζ(゚ー゚*ζ「たまに、なにか辛いこともあったりして」

ζ(゚ー゚*ζ「そういう辛いときに、私の一歩後ろから、相談してくれるだけでいいの」

ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯それだけで、いいの」

65 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/24(水) 17:14:33 ID:zoafWSng0
(*・∀・)「いつも通りじゃないですか」

ζ(゚ー゚*ζ「いつも通りでいいよ」

(*・∀・)「俺は楽しいこととか、嬉しいこととか話したいのに⋯⋯」

ζ(゚ー゚*ζ「それを探して、会いに来なくなったじゃない」

(;・∀・)「それは、ほんと……ごめんなさい」

( ゚∀゚)o彡゜(『恋』を通り越して『愛』じゃん)ヒソヒソッ

( ´_ゝ`)(なんか、俺、帰りたいよ⋯⋯) ヒソヒソッ

66 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/24(水) 17:15:39 ID:zoafWSng0



(゚、゚トソン「じゃあ仮に今から私とモララーくんが恋人になったら、笑って祝福してくれます?」

67 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/24(水) 17:16:11 ID:zoafWSng0
(;´_ゝ`)「また急にぶっ込まんで下さいよ!」

ミセ*゚ー゚)リ「えっ、トソンってそうなの!?」

('、`*川「そんなわけないでしょ」

ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯別にトソンはモララーくんのこと、好きじゃないでしょ」

(゚、゚トソン「仮に、です」

ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯お祝いしますよ、それは」

(゚、゚トソン「笑って、ですよ」

ζ(゚ー゚*ζ「だから、私のことは、いいでしょ」

68 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/24(水) 17:16:36 ID:zoafWSng0
(*・∀・)「それはおかしいですよ。むしろデレ先輩の感情だけが大事です。他がどうでもいい」

(; ゚∀゚)o彡゜「オメーもゼロか百かしかできねー男だよね、ホント」

ζ(゚ー゚*ζ「だって私がどうして欲しいか言ったらそうするでしょ、君」

(*・∀・)「? はい」

(;´_ゝ`)「ちっとは悩んでくれやさっきまでみたいにさぁ!」

ζ(゚ー゚*ζ「ちゃんと、自分で考えないとダメだよ。幸せになれないよ」

ζ(゚ー゚*ζ「君は、たまたま初めに優しくしてくれた私に、懐いちゃっただけでさ。他にもたくさん、女の人っているから⋯⋯」

69 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/24(水) 17:17:35 ID:zoafWSng0
ミセ*゚ー゚)リ「え、今告白されても物足りないから色々見たうえで自分を選んで、ってことなの?」

(゚、゚トソン「他の女と付き合っても私たち友達だからずっと一緒よ、ってことですか?」

('、`*川「アンタ⋯⋯そんな強欲でよく『それだけでいい』とか言えたわね⋯⋯」

ζ(゚ー゚*ζ「ち、ちがう、ちがうし」

ζ(゚ー゚*ζ「ゆうどうじんもん、誘導尋問ですよ、これは」

('、`*川「どんな誘導したらこんな迷路みたいな答え出てくんのよ⋯⋯」

70 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/24(水) 17:18:33 ID:zoafWSng0
( ´_ゝ`)「⋯⋯あのさぁ」

( ´_ゝ`)「そもそもモララーが毎回毎回、一足飛びに『結婚してくれ』って言うから断られるだけで、普通に『付き合って』って強引に押したら行けるんじゃないか?」

( ゚∀゚)o彡゜「よし、やれ!」

(;・∀・)「そんな単純じゃないでしょ⋯⋯」

( ゚∀゚)o彡゜「もうやるだけやれ!」

71 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/24(水) 17:19:27 ID:zoafWSng0
(*・∀・)「デレ先輩、俺と付き合ってください!」

ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯⋯⋯言わされてるうちは、ダメ」

(*・∀・)「でも、俺はずっとデレ先輩が」

ζ(゚ー゚*ζ「好きだとしても、ダメ。こういうことは胸を張って、自分から言いなさい」

ζ(゚ー゚*ζ「あと、タイミングも大事だから。雑に済ませようとしないで」

( ・∀・)「すいませんでした⋯⋯」

72 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/24(水) 17:20:26 ID:zoafWSng0
( ・∀・)「やっぱり無理だったじゃん⋯⋯」

ζ(゚ー゚*ζ「ほら、いちいち落ち込まないの」

(゚、゚トソン「デレ、あなたがちょっと素直になればいいだけでは⋯⋯」

ζ(゚ー゚*ζ「す、素直、ですけど? 何を言ってるのかな?」

( ゚∀゚)o彡゜「あんまりいじめてやらんでくださいね、ソイツ先輩のこと大好きなんで」

ζ(゚ー゚*ζ「い、いじめてないよ! じゃあもう私帰るので! ちょっとこの子借りて行きますね!」

(;・∀・)「え、あ、デレさん? そんな引っ張らないで⋯⋯」グイグイッ

73 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/24(水) 17:21:00 ID:zoafWSng0
ζ(゚ー゚*ζ「うるさい! みんなにごめんなさいして、帰るよ!」ダダッ

(;・∀・)「あ、はい、先輩方、ボンクラども、お騒がせしました!」ダダッ

ガララッ ピシャン


( ´_ゝ`)「なんかドッと疲れたわ⋯⋯」

( ゚∀゚)o彡゜「俺余計なことしたかなぁ」

(゚、゚トソン「恋愛って難しいんですね」

ミセ*゚ー゚)リ「いや、あんな面倒なの中々ないから」

('、`*川「でもさぁ、なんだかんだで一番いいカタチで終わりじゃない?」

74 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/24(水) 17:21:42 ID:zoafWSng0
〜下駄箱〜

俺の手を引きながら、デレ先輩はどんどん進む。


ζ(゚ー゚*ζ


この人の後ろを歩くのが好きだった。

小さな背中が、とても神々しくて、頼り甲斐があって。

たまに振り向いて、笑ってくれるのが好きだった。


ζ(゚ー゚*ζ「あのさぁ」


デレ先輩がキョロキョロと辺りを見まわし、振り返る。

75 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/24(水) 17:22:07 ID:zoafWSng0
(*・∀・)「? なんですか?」

ζ(゚ー゚*ζ「ちょっとこっちきて」チョイチョイ

考えていたことがバレただろうか、と思いながら、近づいて行く。

ζ(゚ー゚*ζ「屈んで。耳、寄せて」

(*・∀・)「?」

吐息がかかる距離まで、近づく。

76 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/24(水) 17:22:51 ID:zoafWSng0



ζ(゚ー゚*ζ「だいすき」

77 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/24(水) 17:24:53 ID:zoafWSng0
(*・∀・)「!?!?!」

びっくりして、ひっくり返った。

それを見て、先輩はけらけらと笑っている。

ζ(゚ー゚*ζ「告白って、こうやるのよ」

耳まで真っ赤にして、してやったりって顔で笑っている。

ζ(゚ー゚*ζ「私、君に先輩って呼ばれるの、好きなの」

くるりと、俺に背を向けて、先輩は出口へ向かう。

(*・∀・)「あ、ああ、あー⋯⋯そういうやつですか、はい、わかってました」

ζ(゚ー゚*ζ「私、誰とも付き合わないし、結婚しないから」

(*・∀・)「はい、存じております」

ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯ずっと後ろにいて。いなくならないで」

78 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/24(水) 17:25:13 ID:zoafWSng0
(*・∀・)「いいんですか?」

ζ(゚ー゚*ζ「ダメなんだけどさ」

ζ(゚ー゚*ζ「本当は、いつものデレ先輩なら、君のためにならないからダメって格好つけて言うんだけどさ」

ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯⋯⋯一緒にいてよ」

小さな背中が、さらに小さく見える。

ずっと一緒にいたのに、こんなにも自信なさげな声を聞いたのは初めてで。

79 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/24(水) 17:25:38 ID:zoafWSng0
(*・∀・)「ずっと一緒にいます」

(*・∀・)「特別ななにかが無くても、俺のなにかがダメになるとしても、一緒にいますから」

(*・∀・)「だから、泣かないで下さい」

ハンカチを持って、急いで前に回り込む。

泣いていなかった。真っ赤になって俯いていただけだった。

ζ(゚ー゚*ζ「後ろにいてって言ったのに」

80 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/24(水) 17:27:31 ID:zoafWSng0
(*・∀・)「かわいい」

ζ(゚ー゚*ζ「恥ずかしいからどっかいって」

(;・∀・)「え、あ、はい! どっかいきます!」

先輩を置いて、急いで校舎内に戻ろうとする。

後ろから、服の裾を掴まれた。

ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯⋯⋯早くいなくなって」

(;・∀・)「⋯⋯⋯⋯」

初めて会ったとき、俺も同じことを言った気がする。

そのとき、先輩はーーー

81 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/24(水) 17:27:51 ID:zoafWSng0
(*・∀・)「だ、大丈夫です」

(*・∀・)「振り向きませんから。もう前に来ません、ずっと一緒ですから」

ずっと、一緒にいてくれた。

それが、とても嬉しかったんだ。

82 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/24(水) 17:28:24 ID:zoafWSng0
ζ(゚ー゚*ζ「気を使うのへた」

(;・∀・)「すいません」

ζ(゚ー゚*ζ「先輩に逆らったね」

(;・∀・)「重ねてすいません」

ζ(゚ー゚*ζ「許してあげないから」

でも、一緒にいていいんですよね。

83 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/24(水) 17:28:44 ID:zoafWSng0



(;・∀・)「許して貰えるまで、一緒にいます!」

ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯あたりまえでしょ! 帰るよ!」

84 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/24(水) 17:29:36 ID:zoafWSng0
手を引かれて、校門に出る。

あのときより少ないけど、桜が散っている。

あの西陽の中を、二人で歩いている。

ζ(゚ー゚*ζ「私がいない間に、なにか特別なことはなかったの?」

(*・∀・)「遠くから見るデレさんも、特別綺麗でした」

ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯いつも思うんだけど、他の人にもそういうこと言うの?」

(*・∀・)「他の人を綺麗と思ったことがないので、なんとも」

ζ(゚ー゚*ζ「そうなんだ」

デレさんがいつもみたいに、しょうがないなぁ、って笑っている。

85 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/24(水) 17:29:56 ID:zoafWSng0
ζ(゚ー゚*ζ「しばらく、君の先輩でいさせてね」

(*・∀・)「? ずっと先輩じゃないんですか?」

ζ(゚ー゚*ζ「それは、君次第だねぇ。どうなると思う?」

(*・∀・)「分かるまで、毎日会いに行っていいですか」

当然先輩は、好きにしなさい、と言ってくれて。

ずっとこんな日が続けばいいと思った。

完……?

86 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/24(水) 17:30:16 ID:zoafWSng0







ζ(゚ー゚*ζ「あ、さっきのは内緒にしてね」

(*・∀・)「さっきの⋯⋯ってなんです?」

ζ(゚ー゚*ζ「2人でいる間のこと、ぜんぶ」


( ・∀・)「毎日好きと言うようです」完!

87 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/24(水) 17:31:20 ID:zoafWSng0
オレンジデー祭り参加作品です。

楽しんでいただければ幸いです。

88名無しさん:2024/04/24(水) 18:06:56 ID:L9lA1zdY0

かわいい

89名無しさん:2024/04/24(水) 18:27:50 ID:vmmxdLm20

デレがツンツン気味なの珍しいな、こういうのもいい

90名無しさん:2024/04/24(水) 21:02:37 ID:i6WKWYsg0
乙乙乙

91名無しさん:2024/04/25(木) 18:49:48 ID:F12Jc5.60
乙!かわいくてずっとニヤニヤしてた

92名無しさん:2024/04/26(金) 18:18:57 ID:N3xOx9GA0
乙乙
ほんとほんと。ニヤニヤしちゃうね

93 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/28(日) 09:58:56 ID:amB2qlHU0
ここまで読んでくださった皆さん、本当にありがとうございます。
これからおまけを投下します。
あたたかく見守ってください。

94 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/28(日) 09:59:24 ID:amB2qlHU0
【おまけ】

人は幸福すぎる時間の中にいると、かえって終わりを意識するという。

頭いいヤツは何言ってんのかよくわかんねー、なんて思ってたけど、今なら分かる。

ζ(゚ー゚*ζ「はい、どうぞ」

ケーキが一欠片刺さったフォークを、デレ先輩が俺に差し出す。

ζ(゚ー゚*ζ「ほら、はやく」

いや、これさっきアナタが口付けてませんでした!?

ζ(゚ー゚*ζ「あー⋯⋯嫌いかな、こういうの」

デレ先輩が苦笑して、フォークを下げようとする。

95 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/28(日) 10:00:03 ID:amB2qlHU0
(*・∀・)「あ、い、いえ、いただきます!」

アナタにそんな顔をしてほしく無くて、反射的にケーキへ飛びついた。

(*・∀・)「⋯⋯⋯⋯うまいです」

嘘です味なんてわかんないです。

ζ(゚ー゚*ζ「そうでしょうそうでしょう」

デレ先輩はふふん、と自慢げに胸を張ると、ちら、とフォークを見て、それからゆっくり俺の口元を見て、またフォークに目を戻す。

ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯⋯⋯あ」

なぜ俺が一瞬躊躇したのか、気付いてしまって。

ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯⋯⋯⋯⋯えっち」

どうしろっていうんですか!?

96 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/28(日) 10:00:25 ID:amB2qlHU0
(*・∀・)もはや声も出ないようです

97 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/28(日) 10:00:45 ID:amB2qlHU0
〜ちょっとだけ前〜

ζ(゚ー゚*ζ「ここねぇ、来てみたかったの」

通学路から外れた路地の、ちょっとおしゃれな喫茶店。

2人きりで、『デートじゃないよ』と念押しされて、でもデレ先輩からはじめてのお誘いで、そんなんもう断れるわけなくて。

二つ返事で飛びついて、気がついたらここにいた。

カランカランッ

ζ(゚ー゚*ζ「おじゃましまーす」

(*・∀・)「お、おじゃまします」

軽快なベルを鳴らして入店した。

98 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/28(日) 10:01:06 ID:amB2qlHU0
('A`) 「いらっしゃい。⋯⋯⋯⋯2名様?」

カウンターで文庫本を読んでいた店員さんが、顔を上げ、好きな席にどうぞと店内を勧める。

ガラガラだ。

ζ(゚ー゚*ζ「2名です」

('A`) 「あいよー。ごゆっくり。注文決まったら呼んでね」

( ・∀・)「へーい」

ちょっと贅沢に空間を使い、奥の四人掛けのテーブル席に、二人で座る。

99 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/28(日) 10:01:38 ID:amB2qlHU0
ζ(゚ー゚*ζ「なににしましょうねぇ」

(*・∀・)「はは、ご機嫌ですね」

ζ(゚ー゚*ζ「うん。日常が戻ってきた感じ」

あなたの日常に、当たり前に俺が居る。

その事実だけで、ちょっと感動してしまう。

ζ(゚ー゚*ζ「それに、私から誘う、って言っちゃったしねぇ」

ひとつ、ため息をついてそんなことを言う。

⋯⋯義務感も、ちょっとあるんですね。

100 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/28(日) 10:02:07 ID:amB2qlHU0
ζ(゚ー゚*ζ「君からおでかけに誘ってくれたことなんて、今まで一度も無いのにね」

( ・∀・)「⋯⋯?」

不満げな声。

まるで、誘って欲しかったみたいな。

( ・∀・)「いやいや、思い上がりすぎでしょー⋯⋯」

101 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/28(日) 10:02:37 ID:amB2qlHU0
ζ(゚ー゚*ζ「まあねぇ。所詮はただの先輩ですから?」

ζ(゚ー゚*ζ「可愛がってた後輩に、遊びに誘って貰えるかなー⋯⋯なんて、ほんと、思い上がりだよねぇ」

( ・∀・)「!? いや、いやいやいや! 今のは自分への戒め? 的なアレでして!」

ζ(゚ー゚*ζ「ふふ、知ってる」

慌てる俺を見て、優しく微笑む先輩。

ζ(゚ー゚*ζ「きみのことなら、ぜんぶ、しってる」

(*・∀・)「」

102 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/28(日) 10:04:17 ID:amB2qlHU0
('A`) 「サービスのカップルプレートでーす。あとお兄さん、今はいいけど、お客さん増えたら声落としてね」

店員さんがクッキーの乗ったプレートを持ってくる。

(*・∀・)「あ、すいません、うるさくて」

あまりの破壊力に記憶が一瞬飛んでいた。

(*・∀・)「あと、俺たちカップルじゃなくて⋯⋯」

ζ(゚ー゚*ζ

('A`) 「そうなの? ま、いいよいいよ」

ヒラヒラ、と手を振って下がる店員さん。

103 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/28(日) 10:04:45 ID:amB2qlHU0
(*・∀・)「あざっす!」

ζ(゚ー゚*ζ「ありがとうございます。キミも、お礼はちゃんとね」

(*・∀・)「ありがとうございます!」

('A`) 「あいあい、ごゆっくりー」

優しい店員さんは読書に戻っていった。

104 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/28(日) 10:05:15 ID:amB2qlHU0
ζ(゚ー゚*ζ「ふふ、よくできました。で、キミに聞きたいんだけどね」

サービスのクッキーを摘んで、デレ先輩が言う。

ζ(゚ー゚*ζ「カップルじゃないんだ?」

( ・∀・)「⋯⋯⋯⋯え?」

ζ(゚ー゚*ζ「まあ、冗談なんだけれど」

そうですか、冗談ですか、冗談きついぜほんとにさあ。

たぶん無自覚だろうけど、今日の先輩は一言一言が俺の心を揺らしにきている。

105 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/28(日) 10:05:37 ID:amB2qlHU0
ζ(゚ー゚*ζ「で、なににするー? 私はねぇ⋯⋯カフェオレに、しようかなぁ」

メニューを広げて、先輩が呟く。

( ・∀・)「あれ、ブラックじゃないんですか」

ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯⋯⋯実はね、甘いの、好きなの」

実は知ってました。

( ・∀・)「でも、コーヒーだけはブラックだと思ってたんで、ちょっと意外です」

先輩は、メニューで顔を隠して。

ζ(゚ー゚*ζ「甘いの好き、って言ったら、可愛く見えるかなぁ、って」

(*・∀・)「」

106 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/28(日) 10:05:59 ID:amB2qlHU0
ζ(゚ー゚*ζ「だ、だいじょうぶ?」

だいじょばない、おれは、あなたが、かわいすぎてしぬ。

(*・∀・)「だいじょうぶでーす。あ、俺はブラックで」

なんて、まさか言えるわけないので。

苦いので気付けをしないと、意識が飛んでしまう。

ζ(゚ー゚*ζ「ふふ、格好つけー」

鼻先を、指でちょんと押された。

(*・∀・)「」

107 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/28(日) 10:06:35 ID:amB2qlHU0
(*・∀・)「け、けいき、けいきを頼みましょう、けいきを」

ζ(゚ー゚*ζ「なんでカタコトなの?」

(*・∀・)「ふふ、なんででしょうね」

ζ(゚ー゚*ζ「私はショートケーキかな」

(*・∀・)「俺も同じので」

ζ(゚ー゚*ζ「だめ、違うの頼んで」

(;・∀・)「注文にダメとかあります?」

ζ(゚ー゚*ζ「わけっこできないでしょ」

『わけっこ』って。

不意に出る言葉のチョイスが、もう、ねぇ?

108 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/28(日) 10:07:00 ID:amB2qlHU0
〜冒頭に戻る〜

( ・∀・)「⋯⋯⋯⋯ハッ!?」

なんだか幸せな夢の中にいた気がする。

ζ(゚ー゚*ζ「ねぇ、そっちも食べたい」

ちょっと照れながら、先輩が俺のチョコケーキをフォークで指す。

(;・∀・)「あ、はい、どーぞどーぞ!」

もう味なんて分かんないんで、好きなだけ食べちゃってほしい。

109 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/28(日) 10:07:24 ID:amB2qlHU0
ζ(゚ー゚*ζ「うむ。あーん」

( ・∀・)「アァン?」

俺がヤンキーみたいになっているのに対し、先輩は目を瞑って、小さな口を開けて待っている。

⋯⋯⋯⋯え、あーん、って、アレですか。

俺が、このお方に、ケーキを食べさせるってこと?

(;・∀・)「あ、そうですね、本当に気が利かなくて! では、フォークをお借りして」

ζ(゚ー゚*ζ「それ」

俺の手元にあるフォークを指差し。

ζ(゚ー゚*ζ「はやく」

自分の口元を指差す。

110 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/28(日) 10:07:47 ID:amB2qlHU0
でもね先輩。このフォーク、俺が使ったヤツなんですよ。

ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯ねぇ」

耳まで真っ赤にして、催促をしている。

さっきと違って、誰が使ったか分かった上での催促ってことですか?

(*・∀・)「せ、先輩さっき俺にえっちって言ったくせに」ボソッ

ζ(゚ー゚*ζ「うん?」

(*・∀・)「せ、先輩の方がー。えっちなんじゃないですかー?」

ああ、ちょっとした反撃が出来るくらいには、頭が回るようになってきた。

111 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/28(日) 10:08:12 ID:amB2qlHU0
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯⋯⋯あ、あのね」

(*・∀・)「ほら、こんなふうに言われたら、困るじゃないですか。だから」

そっと、近寄って。耳を寄せてと手招きするから、従う。

ζ(゚ー゚*ζ(⋯⋯⋯⋯えっちでな先輩で、ごめんね)コソッ

(*・∀・)「」

112 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/28(日) 10:08:35 ID:amB2qlHU0
(*・∀・)「で、で、では、失礼しまして」

(*・∀・)「あ、あ、あ、あ、アァァン!?」

ζ(゚ー゚*ζ「はい、いただきます」

差し出した一欠片を、パクリと小さな口に納める。

もぐもぐと美味しそうにしているが、口元にチョコレートが少しついている。

113 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/28(日) 10:09:12 ID:amB2qlHU0
(*・∀・)「先輩、ここ」

ちょいちょい、と俺自身の口元を指し、チョコついてますよ、と知らせてみる。

ζ(゚ー゚*ζ「うん? ⋯⋯ふふ、欲しがりさんめ」

何か勘違いしたようで、先輩はまた、自分のケーキを一欠片差し出してきた。

ζ(゚ー゚*ζ「ね、別のを頼んでよかったでしょう?」

ふふん、と胸を張るが、口元が大変可愛らしいことになっているので当然威厳がない。

(;・∀・)「あ、あの、そうではなく」

ζ(゚ー゚*ζ「遠慮しなくていいよ」

(*・∀・)「⋯⋯で、では、失礼しまして」

食べる。

さっきより、少し、味、分かる。

114 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/28(日) 10:10:47 ID:amB2qlHU0
(;・∀・)「そ、それでなんですが、先輩、口元」

ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯キミねぇ、落ち着いて食べなさいね」

(*・∀・)「?」

しょうがないなぁ、と笑って先輩が紙ナプキンを取り、俺の口元を拭く。

ζ(゚ー゚*ζ「かわいい子だねぇ、キミは」

115 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/28(日) 10:11:09 ID:amB2qlHU0
(*・∀・)「先輩もついてますよ」

ζ(゚ー゚*ζ「」

ζ(゚ー゚*ζ「い、言ってよ」

(;・∀・)「すいません、こう、付いてるよーって伝えたつもりだったんですが」

ζ(゚ー゚*ζ「き、キミはアレだね。今日は、ちょっと。そのさぁ」

ζ(゚ー゚*ζ「いじわる」

(*・∀・)「」

116 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/28(日) 10:11:36 ID:amB2qlHU0
俺が言葉を失ううちに、話は少し変わりまして。

ζ(゚ー゚*ζ「もうすぐ私ねぇ、修学旅行じゃない?」

そういえば、ウチの学校は3年の5月に修学旅行らしい。

(*・∀・)「あー、らしいですねぇ」

ζ(゚ー゚*ζ「大きなイベントだと、色恋に浮き足立つ男の多いこと多いこと」

やれやれ、とカップを手に取る先輩。

117 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/28(日) 10:12:14 ID:amB2qlHU0
(*・∀・)「先輩は恋人作らないって言ってましたもんねぇ」

ζ(゚ー゚*ζ「でもそういうの、他の人にはあんまり分かってもらえてないからね」

ζ(゚ー゚*ζ「私の都合どうこうではなく、自分の都合で恋人が欲しいだけの人から声かけられることは、増えたよ」

( ・∀・)「そうなんですか」

なんかヤダな、そういうの。

先輩がなぜ恋人を作りたがらないのかは分からないし、教えてくれるまで聞く気もないけれど、きっと熟考したうえでの選択なのだろう。

先輩が選んだことを、軽く扱うようなヤツに、先輩の側にいて欲しくないな。

118 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/28(日) 10:12:42 ID:amB2qlHU0
ζ(゚ー゚*ζ「だからしばらく毎日迎えにきてね」

( ・∀・)「!?」

ζ(゚ー゚*ζ「場合によっては、一時的に私の恋人を名乗ることを許可しましょう」

( ・∀・)「?!?!?」

ζ(゚ー゚*ζ「でも、ホントには付き合わないからね」

( ・∀・)「」

情報量が多すぎてパンクしてしまう。

119 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/28(日) 10:13:30 ID:amB2qlHU0
ζ(゚ー゚*ζ「勿論、キミに恋人が出来たら、来なくていいよ」


( ・∀・)「」

120 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/28(日) 10:13:56 ID:amB2qlHU0
ああ、この人は。

俺のことを、『かわいい後輩』としか見ていないんだ。

それが、無性に悲しくて。

ちょっとだけ、腹が立った。

121 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/28(日) 10:14:19 ID:amB2qlHU0
( ・∀・)「⋯⋯先輩はズルい」

ζ(゚ー゚*ζ「ふふ、なんで?」

さっきまで口にケーキつけてたくせに、余裕ぶって。

( ・∀・)「俺は先輩が好きだから、恋人なんて出来ませんよ」

ζ(゚ー゚*ζ「私が、いいよ、って言ってるんだよ?」

( ・∀・)「なんでも言いなりってわけじゃないです」

ζ(゚ー゚*ζ「本当はね、私は、キミが思うほど素敵な人じゃないよ?」

ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯実はね、結構頑張って演じてるの」

( ・∀・)「分かってますよ」

先輩が、ちょっと背伸びしてたことくらい。

122 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/28(日) 10:14:43 ID:amB2qlHU0
( ・∀・)「今日だって、かわいすぎると思ってました」

ζ(゚ー゚*ζ「うん」

( ・∀・)「ブラックコーヒー好きなのに、かわいこぶってカフェオレ頼んでみたり」

ζ(゚ー゚*ζ「ほ、ホントはブラックの方が苦手なんだよ?」

( ・∀・)「じゃあなんですか、今まで格好つけて半年間も苦手なコーヒー飲んでたって言うんですか、そんなかわいい人いるわけないでしょ!」

ζ(゚ー゚*ζ「」

ζ(゚ー゚*ζ「あのね」

123 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/28(日) 10:15:10 ID:amB2qlHU0
( ・∀・)「言葉選びもいちいちかわいいし! なんですか、『わけっこ』とか、17歳で言わないでしょ」

ζ(゚ー゚*ζ「え、言わない? あれ?」

( ・∀・)「口にケーキつけたまま、人の口拭いたり、もう、あざとすぎますよ!」

ζ(゚ー゚*ζ「いや、狙ってない! 狙ってないところばっかり言わないで!」

( ・∀・)「いっつも格好つけて香水とかつけてるし! 今年受験のくせに!」

ζ(゚ー゚*ζ「それに関しては全く心当たりがないよ!?」

( ・∀・)「じゃあなんでいっつもいい匂いするんですか! 今日は距離近いからなおさら感じましたよ!」

124 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/28(日) 10:15:39 ID:amB2qlHU0


ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯⋯⋯⋯⋯えっち」

125 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/28(日) 10:16:06 ID:amB2qlHU0
空気が、凍った。

ζ(゚ー゚*ζ「あのね」

ζ(゚ー゚*ζ「香水は、してないです」

(;・∀・)「え、でも甘い匂いしますよ」

ζ(゚ー゚*ζ「えっち」

(;・∀・)「」

126 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/28(日) 10:16:32 ID:amB2qlHU0
しょうがないなぁ、と先輩はため息を吐く。

ζ(゚ー゚*ζ「キミはホント、私が思ってもいないことばっかり」

(;・∀・)「すいません」

ζ(゚ー゚*ζ「自分だってブラック飲めないくせに格好つけて頼んだでしょ」

(;・∀・)「はい」

ζ(゚ー゚*ζ「今日だって、急に誘ったのに、当たり前みたいについてくるし」

(;・∀・)「嬉しかったので」

127 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/28(日) 10:16:59 ID:amB2qlHU0
ζ(゚ー゚*ζ「カップルと間違われたら、すぐに否定するし」

(;・∀・)「先輩誰とも付き合いたくないって」

ζ(゚ー゚*ζ「付き合わないって言ったの! 付き合いたくないわけじゃないの!」

どう違うのかわからないけど、たぶん大事なんですね、それが。

128 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/28(日) 10:17:39 ID:amB2qlHU0
ζ(゚ー゚*ζ「こ、こほん。話を、戻しますが。私もねぇ、いじわるを言った自覚はありますよ」

( ・∀・)「はい⋯⋯」

ζ(゚ー゚*ζ「でもねぇ、キミも悪いんだよ?」

( ・∀・)「俺、なにかしましたっけ⋯⋯?」

ζ(゚ー゚*ζ「急に姿見せなくなったよね」

(;・∀・)「その節は本当に! 本当にご迷惑をおかけしました!」

純度100%の落ち度を指摘されてしまうと、なにも言えなくなってしまう。

ζ(゚ー゚*ζ「私がいなくても、人生楽しくやれそうな感じだったし」

(;・∀・)「いや、いやいやいや」

ζ(゚ー゚*ζ「いっそあれかな? 年下の子のほうが、キミはしっかり守ってあげられるのかな?」

(;・∀・)「俺が好きなのは、ずっとあなただけです!」

129 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/28(日) 10:18:17 ID:amB2qlHU0
('A`)「そろそろお客さん来るから、声、落としてね」

ζ(゚ー゚*ζ「ごめんなさい」

(;・∀・)「あ、ご、ごめんなさい」

('A`)「おう、がんばれ、青春少年」

130 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/28(日) 10:19:09 ID:amB2qlHU0
ζ(゚ー゚*ζ「は、恥ずかしかった⋯⋯」

ζ(゚ー゚*ζ「まあ、ちょっといじめすぎました。とにかく、ね」

ζ(゚ー゚*ζ「キミが私のことを考えてしたことは、とても寂しくて、ほんの少しだけ、嬉しかったよ」

( ・∀・)「⋯⋯ごめんなさい」

131 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/28(日) 10:20:01 ID:amB2qlHU0
ζ(゚ー゚*ζ「私がモララーくんを傷つけた言葉。本心だけど、キミがやったことと同じだよね」

優しく、諭すような声。

( ・∀・)「⋯⋯⋯⋯はい」

ζ(゚ー゚*ζ「私たちは、少し似たところがあるからね。同じ間違いをしないように、話し合わないといけないと思って、今日は誘いました」

照れくさそうに、少し目を逸らして言う。

こういうことを自然に言えるの、すごいと思う。

( ・∀・)「ありがとう、ございます」

ζ(゚ー゚*ζ「はい、ご静聴ありがとうございます」

ふふふ、とおどけて見せる。

ζ(゚ー゚*ζ「それを踏まえたうえでね」

ζ(゚ー゚*ζ「あらためて、伝えておきたかったの」

132 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/28(日) 10:20:33 ID:amB2qlHU0


ζ(゚ー゚*ζ「キミが、この先誰を選んでも、自由だからね」

133 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/28(日) 10:21:17 ID:amB2qlHU0
( ・∀・)「だから、俺は先輩がーーー」

⋯⋯⋯⋯誰を選んでも自由?

俺はいつも、選ぶまでもないと思っていたけれど。

先輩を選んだことは、あったのだろうか。

ζ(゚ー゚*ζ「ちゃんと、考えてね」

134 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/28(日) 10:22:00 ID:amB2qlHU0
( ・∀・)「先輩、は」

ζ(゚ー゚*ζ「はい」

誰とも恋人にならない、と選択した人。

ずっと後ろを歩いていいと、言ってくれた人。

俺をだいすきと、言ってくれた人。

いつか、先輩じゃない何かになるかもしれない人。

つまり。

つまり?

135 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/28(日) 10:23:10 ID:amB2qlHU0
( ・∀・)「⋯⋯俺がほかに恋人を作らないで、ずっと先輩といてもいいと思ってくれてます?」

ζ(゚ー゚*ζ「ちゃんと、考えたうえでのことならね」

ふふふ、と笑って。

ζ(゚ー゚*ζ「この話をするためにねぇ。今日は距離が近く感じてもらえるよう、ちょっとだけ頑張りました」

(;・∀・)「な、なんでですか? いつもどおり、」

ζ(゚ー゚*ζ「誰かを選ぶ前に、ちゃんと分からせておかないといけないでしょ?」

136 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/28(日) 10:24:17 ID:amB2qlHU0



ζ(゚ー゚*ζ「キミの人生で出会う人の中で、私が一番かわいいってこと」


(*・∀・)「」

137 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/28(日) 10:25:07 ID:amB2qlHU0
今まで見た中でいちばんの、輝かしい笑顔。

今日は特別かわいいと思ってたけど、やっぱり狙ってやってたんだ。

この人、ズルい。

選ばせる気なんて、最初からないんじゃないか?

気持ちが高ぶりすぎて。

もはや、好きという言葉も出ない。

138 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/28(日) 10:25:45 ID:amB2qlHU0
【おまけの、蛇足】

( ・∀・)「⋯⋯⋯⋯あれ? 先輩が俺と同じくらい傷ついたなら、俺のこと好きじゃないとおかしくないです?」

ζ(゚ー゚*ζ

( ・∀・)「この間『だいすき』って」

ζ(゚ー゚*ζ「言ってない」

( ・∀・)「え?」

ζ(゚ー゚*ζ「言ってないです、ノーカン、忘れてね」

(*・∀・)「でも」

ζ(゚ー゚*ζ「じゃあ一人でチョコレートでも食べてたらいいじゃない!」

( ・∀・)「」

それはズルいでしょ!?

じゃあ、って全然話繋がってないし!



('A`)(俺の店で……青春がほとばしっている……)ドキドキ

('A`)(あの子ら、毎週来ないかな……)ドキドキ

139 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/28(日) 10:26:14 ID:amB2qlHU0
【おまけの、蛇足の、そのまた蛇足】

ζ(゚ー゚*ζ「ちなみになんだけど、修学旅行までの間、迎えに来てくれる?」

(*・∀・)「え、あ、はい、もちろん」

ζ(゚ー゚*ζ「ふふ、しばらく離れる分、一緒にいる時間を作らないと、寂しくなっちゃうだろうしね」

(;・∀・)「別に数日くらいなら、俺は」

ζ(゚ー゚*ζ「……そっか」

ζ(゚ー゚*ζ「私だけかぁ」

(*・∀・)「」




('A`)(いけ! 押せばいけるぞ、少年!)ドキドキ



140 ◆NGYeHpCrH2:2024/04/28(日) 10:28:14 ID:amB2qlHU0
以上です。

オレンジデー祭りも後半戦、皆さん楽しんでください。

141名無しさん:2024/04/28(日) 13:47:59 ID:hzbmscVY0
おつです

142名無しさん:2024/04/28(日) 18:31:04 ID:syhLkZKQ0
乙!おまけ嬉しい!!
この2人本当可愛い

143名無しさん:2024/05/07(火) 21:41:48 ID:X5owII2U0
乙乙
>>132-133 ここ大事なことだと思った

144♯もらでれ:2024/05/12(日) 23:29:58 ID:Wx5TSJ7s0
自分が逃げないようにこっそり書いておくんだけど、今週中にあとがきとおまけ投下します。

お祭りの余韻を楽しみたいので、それまでトリップは貸してね。


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