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( ・∀・)「毎日好きと言うようです」
359
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:22:09 ID:yQdk9mkE0
◆◆◆
客が店を出ていく姿を見るのが好きだ。
少し重い木のドアがゆっくり開き、外から差す光の中に足を踏み出す姿が、好きなんだ。
その客が笑顔だったら、尚更に。
カランとベルが音を立ててドアが閉まり、店内は静寂につつまれる。
('A`)「⋯⋯⋯⋯お幸せに」
過去に愛した人を思う。
思えば彼女も、俺が家を出るときはニコニコと背中を見送ってくれた。
あの頃は気恥ずかしくて申し訳なかったが、今なら彼女の気持ちもわかる気がする。
送り出す側は、見守ることしか出来ず、だからこそ祈ってしまうのだろう。
('A`)「あの子たちが、幸せでありますように」
酔いのせいか、重くなった瞼を閉じ、呟く。
('A`)「俺も、好きだったよ」
360
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:23:21 ID:yQdk9mkE0
戻らない日々を思う。
愛した人の幸せを思い、あの頃言えなかったことを、今度は大きな声で言ってみる。
カランッ
('A`)「大好きだったよー!」
ζ(゚ー゚;ζ
(;'A`)
ζ(゚ー゚;ζ「あ、あの、お会計、忘れてて⋯⋯」
('A`)「奢りです」
ζ(゚ー゚;ζ「で、でも」
('A`)「奢りだから」
ζ(゚ー゚;ζ
('A`)「ひとりにしてよぉぉぉぉ!!!」
「すいませんごちそうさまでした!」ヒュンッ三ζ
カランッカランッ
361
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:24:23 ID:yQdk9mkE0
('A`)
('A`)「⋯⋯」
(ノA`)「⋯⋯⋯⋯」
人生は思い通りにならないことばかりで。
話し合うべきだった、口に出さなきゃよかった、なんて後悔ばっかりで。
それでも。
('A`)「それでも、大好きだったんだよ」
こればっかりは、どうしようもない。
店の外、光の下を歩くあなたが、どうか幸せでありますようにと願いながら。
新しい客を迎えるために、立ち上がった。
362
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:24:51 ID:yQdk9mkE0
◆◆◆
そんなこんなで。
激動の土曜日を乗り越え、悩みながらも日曜日を越え、なんともう月曜日の朝である。
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯⋯⋯ねむーい」
登校中はいつだって眠い。
いつもなら、そろそろあの子が声を掛けてくる頃だ。
(;・∀・) ζ(゚ー゚*ζ「おーい」
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯⋯⋯遠くないかな?」
(;・∀・)「い、いつもー、これくらいです、よ?」
嘘だ。
普段なら、にこにこと走って駆け寄ってきているはずが、今日は気まずそうにゆっくりとこちらへ近づいてくる。
363
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:25:27 ID:yQdk9mkE0
ζ(゚ー゚*ζ「あーあ、嫌われちゃった」
(;・∀・)「いやいやいやいや、そんなことは全然決して絶対無いですよ!?」
冗談めかして非難すると、焦って走ってきた。
わかりやすくて、とてもよろしい。
ζ(゚ー゚*ζ「はい、おはよう」
(;・∀・)「お、おはよう、ございます」
ぎこちない返事。
なんとなく目を合わせられないまま、しばらく無言で、並んで歩く。
一歩だけ、近づいてみる。
364
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:25:55 ID:yQdk9mkE0
(*・∀・)「ち、近くないですか?」
ζ(゚ー゚*ζ「駄目かな?」
(*・∀・)「駄目じゃないですけど⋯⋯」
ζ(゚ー゚*ζ「けど?」
(*・∀・)「⋯⋯⋯⋯心臓が持たないので」
ζ(゚ー゚*ζ「ふふ、なにそれ」
365
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:26:29 ID:yQdk9mkE0
一歩、離れる。
緊張が和らぎ、なんだかいつもの雰囲気だ。
ζ(゚ー゚*ζ「色々と考えたんだけどさ」
なんでもないことのように、切り出してみる。
ζ(゚ー゚*ζ「まだ答えない、という結論になりました」
モララーくんの足が止まる。
( ・∀・)「⋯⋯⋯⋯そ、うですか」
私も止まり、待つ。
366
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:26:51 ID:yQdk9mkE0
ζ(゚ー゚*ζ「期待を持たせるようなことを言って、こんな答えでごめんね」
ゆっくりとモララーくんが歩き出し、私も並んで歩く。
ζ(゚ー゚*ζ「現実的に考えるとさ、断ったほうがキミのためなんだろうなって思ったんだ」
ζ(゚ー゚*ζ「これから少しずつ会える時間は減るし、その時間でキミには他に好きな子を作る自由もあるし」
ζ(゚ー゚*ζ「それに、遠距離恋愛っていうのは破局しやすいらしいし?」
( ・∀・)「⋯⋯」
無言で俯く彼の手を握る。
ζ(゚ー゚*ζ「でも、やだ」
強く、握る。
ζ(゚ー゚*ζ「キミがいないのは、いやだ」
367
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:27:57 ID:yQdk9mkE0
ζ(゚ー゚*ζ「キミがきてくれるなら。私はこの先、恋愛とか結婚とか、そういうの全部出来くなってもいい。二年後に、必ず答えを聞きにきて」
.
368
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:28:17 ID:yQdk9mkE0
言わないでおこうと決めたことを、言ってしまった。
恥ずかしくて顔を見れない。
心臓がうるさい。
繋いだ手から、心臓の鼓動が伝わらなければいいなんて、ありきたりで馬鹿みたいなことを考える。
369
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:29:32 ID:yQdk9mkE0
強く、握り返される。
( ・∀・)「⋯⋯⋯⋯迎えに行くのが俺で、いいんですか?」
震える声に喜びが混じっているのに安堵するべきか、それともその内容に呆れるべきだろうか。
ζ(゚ー゚*ζ「キミはもう少し、自分に自信を持ちなさい」
( ・∀・)「すいません」
ζ(゚ー゚*ζ「私を幸せにしてくれるんでしょう?」
(*・∀・)「」
照れて、黙ってしまう。
こっちだって、恥ずかしいのに。
繋いだ手を離し、彼の頬を指で突いてみる。
370
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:29:53 ID:yQdk9mkE0
ζ(゚ー゚*ζ「これは受け売りだけど。人生は何をしても、思い通りにはならないんだってさ」
( ・∀・)「? そうなんですか?」
ζ(゚ー゚*ζ「だから、私は先輩として格好つけるのを少しだけ諦めました」
本当は、ずっと格好良い先輩でいたかったんだけど。
思いを口に出せば、キミは「先輩はいつでも格好良いですよ」なんて、当たり前みたいに言うんだろう。
ζ(゚ー゚*ζ「少しだけキミに頼ってみようと思うので、しっかりしてくれないと困るよ」
なんて勝手な理屈。
それでも、許してくれるという確信があった。
( ・∀・)「頑張ります。先輩のこと、支えられるように」
ほらね。
優しいんだ、この子は。
ζ(゚ー゚*ζ「ふふ、いい返事。ありがとう」
371
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:30:41 ID:yQdk9mkE0
諦めたなんて言いながらも、余裕ぶって、先輩らしくと努めてしまうのは、私の悪い癖で。
そんなことを知らずに、モララーくんは後ろを嬉しそうに着いてくる。
今までと同じ、今までと少しだけ違う関係。
この子の一歩前こそが、私の、帰る場所であればいい。
もし将来、答えを返すそのときに。
愛しすぎて嬉しすぎて死んだらどうしよう。
372
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 14:33:02 ID:yQdk9mkE0
◆◆◆
「⋯⋯あ、そういえばこの間のこと。俺も考えたんですけど」
「ん、何かな?」
「晴れてるのにどこにも行けなくて寂しいなーってやつ」
「そんな話も、したね」
「あれだけ晴れていれば、きっと景色が綺麗に見えると思うので。次は電車で海とか、気分の晴れる所に行きましょうよ」
「ふふっ。キミのそういうとこ、いいと思うよ」
ζ(゚ー゚*ζわたしの帰る場所のようです 完.
373
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/20(土) 15:02:15 ID:yQdk9mkE0
これで終わりです。
>>232
( ・∀・)いつもと違う、ようです(前回分)
>>333
ζ(゚ー゚*ζわたしの帰る場所のようです(今回分)
ちょっとだけ二人は前に進みました。
今度こそ完結のはず、です。
でも思いついたら何かしらの短編など上げます。
乙とか読んだよとか書いてあると嬉しいです。
一レス当たりの文章量に迷ってます、ちょうどいいとか、ちょっと多いな少ないな、とか思うことあったら書いていってくださいお願いします。
374
:
名無しさん
:2024/07/20(土) 23:30:16 ID:Q7QDsKHk0
おっしゃ乙やで!
375
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/21(日) 00:28:21 ID:598SG89w0
>>374
読んでくれてありがとうございます。
本編に入れようとして入んなかったエピソードを追加で投下して終わりです。
毎回毎回ごめんよ、今回はマジで入れ忘れたしエピソード挟まる隙間が無いと思ったのに、なんかスルッと収まりそうなので投下します。
376
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/21(日) 00:29:41 ID:598SG89w0
ζ(゚ー゚*ζわたしの帰る場所のようです・エピローグ
ζ(゚ー゚*ζ(⋯⋯⋯⋯とは、言ったものの)
言葉だけでは、いつかこの子を一人にした友人たちと、同じことをしているのではないか。
ζ(゚ー゚*ζ(かと言って、渡せるものがあるかと言えば、無いわけで)
どうにか安心させてあげたくて、ポケットを探る。
ハンカチと、予備のヘアゴムが一つ。
ζ(゚ー゚*ζ「⋯⋯⋯⋯」
無意識の行動だった。
隣に歩く彼の左手を取り、その薬指に、赤いヘアゴムをくるりと巻いてみる。
ζ(゚ー゚*ζ(いや、これは流石に、ねぇ)
自分より大きい指に、赤色のそれは似合ってなかった。
(*・∀・)「あ、あの、なにを⋯⋯」
ζ(゚ー゚*ζ
我に返る。
ζ(゚ー゚*ζ「返してね」
急いで取り返して、自分のポケットに戻し、走り出す。
377
:
◆xSBhltJ66c
:2024/07/21(日) 00:30:26 ID:598SG89w0
(*・∀・)「え、それ、くれるんじゃ」
そっと、離れる。
ζ(゚ー゚*ζ「あげない」
走る。
(*・∀・)「でも」
ζ(゚ー゚*ζ「だめ」
走る。走る。
(*・∀・)「先輩、ちょっと待って」
ζ(゚ー゚*ζ「待たない」
走る。走る。走る。
ζ(゚ー゚*ζ「キミがやってよ」
追いつかれないように、走る。
ζ(゚ー゚*ζ「安心させるのも、追いつくのも、プレゼントくれるのも」
追いつかれたいと思って、走る。
「全部、キミがやるんだからね!」
追いかけてくる音が近づいてくるのが嬉しくて、それでも必死に走った。
でも、先輩にも意地があるので。
今日のところは、逃げ切りたいと思う。
二年後には、もう、逃げられないだろうから。
完.
378
:
名無しさん
:2024/07/21(日) 18:45:53 ID:hC0.Ldeo0
乙だ
379
:
名無しさん
:2024/07/22(月) 23:35:34 ID:r9DqISMY0
完結乙
自分の考え方を変えるのも、約束するのも結果的に相手を縛るのも、迷うし怖いよな
前向きな回答にたどり着けてほんとに良かった
素敵な作品をありがとう
行数に特に違和感は感じなかったです
1レスのボリュームが無意味に変動しまくってると気をとられるかもしれない
投下のしやすさで決めていいと思います
380
:
名無しさん
:2024/07/27(土) 00:34:32 ID:icKv7jL60
完結乙です!最後まで面白かった!
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