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( ^ω^)ブーン系オレンジデー祭り2024 本スレ

95 ◆mzr18G4QOc:2024/04/21(日) 00:51:11 ID:n/BUvMv60

【声が出ない女の回想】
 初めてこの屋敷に来たあの子は、あまりにも哀れな姿だった。
 伸びっぱなしのベタついた長い髪、何日も変えていない汚れた服、5歳にしては小さな子供だった。
 感情を押し殺し虚ろな瞳は、まるで肉を削がれるだけの彼のようだった。

「すごく可哀想な子だろ? 助けておくれよ」

 異母兄モララーは言いたい事だけ言い、泣いているだけの女の肩を抱いて外に出た。闇金にその女の借金を返済しに行くそうだ。
 小柄な子供は兄が妻以外の女性に産ませた子供、つまり私と同じ妾腹の子だ。
 私の母は私を産んだ翌月に亡くなったので、モララーの母親が哀れんで娘のように育ててくれた。
 この子の母……先ほどの泣いている借金女は、まだしぶとく生きている。

 私は泣きも暴れもしない子供の小さな手を引いて、地下室に降りた。
 義姉のペニサスに見つかると、罵詈雑言を喚きながら最低1時間暴れるので厄介だ。夫の義妹である私をひどく嫌っているペニサスからすれば、夫と他の女との子供などおぞましい存在に違いない。

「そのこは だれだい?」

 座敷牢に繋がれた、虚ろな真っ黒い瞳の彼が訊いてくる。私は自分を指差し、「同じ」のジェスチャーをする。

「ほんさいさん、おこるね」

 困ったと呟く彼に、私も頷く。
 そろそろお昼が近い、黙ったままのこの子になにか食べさせなければいけない。

[わたしはシーン、あなたのおなまえは?]

 スケッチブックに大きく字を書き、子供の名前を問うてみる。

「アタシ、じ わからない」

 子供の声は、他人への不信感に満ちている。困っていると、彼が助け舟を出してくれた。

「シーンおねえさんは、きみのおなまえのしりたいんだ」

「……なんで、しゃべらないの?」

「シーンおねえさんは、こえがでないんだ。 ぼくも、ここからうごけない」

「………………ミセリ」

 スケッチブックに「ミセリちゃんは、カレーはすき?」と書いて、彼が読み上げてくれる。ミセリは質問にたいして、蚊の鳴くような声でわからないと呟いて下を向いた。
 彼にミセリの相手を任せ、昨日作ったカレーを、子供用の味付けにする。中辛カレーにハチミツや野菜ジュースを入れて、弱火で煮る。


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