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異界大戦記のようです
1
:
名無しさん
:2023/12/30(土) 11:04:39 ID:LhgvhDIg0
異界大戦記のようです
https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/21864/1680359997/
前スレです
8
:
名無しさん
:2023/12/30(土) 11:12:04 ID:LhgvhDIg0
ソーサク連邦 情報戦略室
1463年10月17日
ルナイファと人間達の戦争。
これにより引き起こされたルナイファの実質的な滅亡。
それが意味することはこの世界の序列一位がこの国、ソーサクになったことを意味していた。
勿論、人間達の国家の方がルナイファよりも強い軍事力を持っていることは明らかであり、それを支える国力を考えればこちらが一位になるであろう。
しかし未だこの世界において国としての承認がほとんどされていないこと、また魔法が使えないことによる偏見は無くなっていない。
さらに人間の国家など認めてしまえば、人間達に人権を認めることと同義であり、すなわち奴隷という労働力が失われてしまう可能性がある。
そんなことをすればこれまで奴隷ありきで成り立っていた国家は崩壊しかねない。
そのためそのような国家は人間達を認めず、それらの国で同盟を組もうとしており、そしてその同盟の盟主としてソーサクを推そうとする動きが見られていた。
つまりソーサクの下に付こうとする国が複数現れたのだ。
9
:
名無しさん
:2023/12/30(土) 11:13:30 ID:LhgvhDIg0
(; ´∀`)「......クソッ」
一見ソーサクからすればその動きはいいもののように見えるが一概にそうとは言えない。
モナーもまた、その事で頭を悩ませていた。
人間達の持つ魔法ではない力。
その力により、この世界のパワーバランスは崩れてしまった。
だが魔法こそが世界の絶対であると信じるエルフにとってそれは合ってはならない事実。
しかしルナイファですら叶わない相手に真っ正面から対抗できるわけもない。
そこで出てくるのが先ほどの同盟の件である。
表向きは世界の混乱を乗り越えるための連合であるが、本質的には大連合を組むことで力を蓄え、人間達に圧力をかけることが目的であった。
言うなれば魔法連合である。
そしてその連合の長には、魔法の長とも言える最も魔法が発達したソーサクが良いと他国から祭り上げられているのだ。
この世界の行く末を憂うエルフ達にとってソーサクは最強の魔法国家であり、人間達に対抗できる最後の希望となっていたのだ。
10
:
名無しさん
:2023/12/30(土) 11:14:56 ID:LhgvhDIg0
これまでソーサクは技術流出しないよう、鎖国に違い体制こそとってきた。
だが最大の懸念であったルナイファが実質無くなっている。
そのためソーサクからしても現在ではわざわざ鎖国を継続する理由もなく、むしろ国家の交流を増やすことのメリットの方が大きく、また周りの国家も人間達に対抗するため優れた技術を欲している。
ゆえに手を組むということは互いにとってメリットのある話であり、この同盟は願ってもないことであった。
(; ´∀`)「こんな大々的に敵対行動をしてしまえばろくに準備も出来んぞ......あの『かく』を防ぐ手段もないというのにっ!!」
だがその同盟に参加する国が全て問題ないわけではない。
中には人間への敵対心を剥き出しにし、今にも噛みつきそうなもの達までいるのだ。
まだ何も対抗できる準備もできていないというのにである。
あまりに人間達に対して敵対心を見せすぎていては、こちらの準備が整う前に滅ぼされてもおかしくない。
あれだけの力を持つのだ。
こちらのことなど、簡単に滅ぼせるだろう。
いずれ敵対すると分かっているならわざわざこちらが力をつけるまで待つ理由もないのだ。
11
:
名無しさん
:2023/12/30(土) 11:16:33 ID:LhgvhDIg0
(; ´∀`)「同盟はいずれ必要になる。だが表向きだけでも上手いことやらなくては全てが無駄になる......とはいえ、他国をまとめてる余裕なんて今はない。手に負えないぞこれは」
ゆえに同盟を組むとしても、盟主として他国が暴走しないようコントロール出来る状況でなければならないが、現時点でそれは難しい。
これまで鎖国的な体制であったために外交が弱いことも一つの理由としてあるが、一番大きいのはやはり国内がルナイファの放った疫病による混乱していることであろう。
前もっての調査によりどうにか対処するための魔法自体は確立しているが、やはりかつての大国すら葬った病、その魔法を使える者は限りなく少なく、対処が追い付いているとは言い難い。
徐々に増えつつある感染者に皆が戦々恐々としており、いつか自分も死ぬかもしれないという恐怖に震える者が増え続けているのだ。
そしてそれに比例するように疫病の抑え込みに成功しつつある人間達の助力を望む者が増え続けている。
そしてそこに追い討ちをかけるように、ルナイファへ行われた『かく』による攻撃が響いていた。
元より人間達と敵対するか、友好的に接するかで対立はしていたものの表面化するほどの大きな問題にはなっていなかった。
というのも魔法へのプライドの高さからその勢力は敵対派閥が圧倒的であり、友好的な関係を結ぼうと言うのはごく少数であったからである。
12
:
名無しさん
:2023/12/30(土) 11:19:13 ID:LhgvhDIg0
だがルナイファに撃ち込まれた『かく』の脅威によりそのバランスは一気に崩れ去った。
あの圧倒的な威力も去ることながらその攻撃の発射元が問題であった。
集めた情報から攻撃元はなんと召喚された国の本土であるという。
そこから帝都近くの要塞を目標に攻撃を届けることが出来る能力、さらにはたった一発でその攻撃を命中させることの出来る精度。
まさに規格外の性能である。
そして帝都と召喚地の本土の距離を考えれば、『かく』の攻撃範囲はソーサクの全主要都市を網羅しているのだ。
どれだけの数を保有しているか不明ではあるが、その数だけ都市が滅ぶ。
一つ滅びるだけでもとてつもない被害が出るというのにこんな状態では戦争どころの話ではない。
その事実に敵対派閥が一気に減少する形となったのだ。
勝てない相手であり、また自分達を救ってくれるかもしれない術を持つものとあり、掌を返す者が続出してしまったのだ。
それゆえ派閥のバランスが一気に崩れ、どの派閥も国をまとめられるほどの力を失っていた。
結果、国の方針がまとまらず、混乱状態が悪化するという最悪な状態となってしまっていた。
13
:
名無しさん
:2023/12/30(土) 11:20:23 ID:LhgvhDIg0
(; ´∀`)「クソッ、無理な敵対はしたくないのは分かるが、だからといって通常の外交のみではどうにもならんことも分からんのかっ!!対抗手段がなければ、国がどうなるかも分からないのかっ!!」
しかしこのまままともに交渉が出来るかと言えばそういうわけでもない。
相手に『かく』があり、対してこちらにはなにも手札がないに等しい。
つまりは交渉のテーブルにつけたとしても相手からはナイフを喉元に当てられているのにこちらは攻撃どころか指すら届かない状態なのだ。
そんな状態で対等な交渉など出来る筈がない。
さらに病の事も考えれば明らかに立場はこちら側が下である。
ーそんな状態で相手がルナイファのように暴走でもすればこの国が、いや世界がどうなるかなど、言うまでもないだろう。
相手は種族も世界も違う相手である。
簡単に人間達を信頼することなど出来るはずがない。
だが敵対はまず現時点では不可能であるし勝ち目はない。
だからといって相手を信じきり、融和的に進むことも正しいとは言い難い。
これほどの力の差があり、世界に抑止力となる国もない以上、まともな外交も出来ずに国が潰されかねない。
どう考えても、どのような対応をするにせよ人間達に対抗しうるための手が足りていない。
そんな状態で頭を捻ったところで現状を打破できるものが浮かぶはずもなかった。
14
:
名無しさん
:2023/12/30(土) 11:21:43 ID:LhgvhDIg0
(; ´∀`)「対抗手段の構想すらないというのに......いや、あるにはあるが、本当にこれを武器として使わないといけないというのか?」
そこにあるのは、一つの魔法に関するレポート。
疫病対策のために集められた情報により得られた情報がまとめられたものであった。
今、この世界を混乱させている、ルナイファが放った世界最悪の魔法に関してまとめられたそれにはその魔法の使用法、またそれを抑えるための治療魔法、そして。
(; ´∀`)「......疫病の更なる改良に向けた研究の提案......いや、ある意味改悪、か」
想像もしたくない、恐ろしい内容がまとめられていた。
だがこれならば、現在も対処出来ているとはいえある程度の被害を与えているという人間達にもこの魔法ならば、確実に被害を与えうる。
更なる『かく』と疫病による戦争。
それは今の世界の混乱を遥かに上回る恐ろしい時代を産み出しかねない。
否、時代を産み出すどころか世界が終わるかもしれない。
技術の進歩に比例して戦争の被害は大きくなるが、今度のそれは行き着くところまで行ってしまうかもしれないのだー
15
:
名無しさん
:2023/12/30(土) 11:22:34 ID:LhgvhDIg0
しかしそれだけの力がありつつも、人間達の持つ『かく』に比べればまだ、こちらの手札は弱いと言える。
何せ相手は狙ったところに攻撃出来るのに対し、こちらは狙いが定められないどころか効果も即効性がない。
また改良をしたとはいえ、相手への影響力は未知数なのだ。
ゆえに戦うにしても抑止力として使うにしてももう一つ、手札が必要である。
だが言うのは簡単だが、『かく』に並ぶ手札などそう簡単に産み出せるはずがなく、モナーは頭を抱えてしまっていた。
ー『かく』の情報が手に入りさえすればとも考えるが、それは高望みであろう。
(; ´∀`)「......いや、そもそも今考えるべきは、未来ではなく今のことか」
そうして長考の後、ポツリと呟いたその言葉が全てであった。
現状を考えれば疫病に関することで手一杯であり、対抗手段を作り上げる余裕など有りはしない。
そして疫病について解決するには人間達と敵対している暇など無いのだ。
なんにしても次のステップにたどり着くためにはまず、今を乗り越えなければならない。
16
:
名無しさん
:2023/12/30(土) 11:23:25 ID:LhgvhDIg0
( ´∀`)「まさか人間達の手を借りるしか、ないとはな......」
そしてそれを乗り越える手段も分かっている。
それが出来る国など、この世界に一つしかないこともちゃんと理解しているのだ。
小さくため息をつきつつも、これから先の事を考えればこれ以外、手段はないだろう。
まず国を安定させなければ、人間達への対抗手段の研究もままならないし、国内の派閥の意見をまとめることもできないのだ。
そしてその安定を目指すためには一時的な、仮初めの関係だろうがこの国の未来を作るためにはやはり、人間達の力が不可欠なのだ。
( ´∀`)「全てはいつか、奴らを倒すため......表向きだけでも、友好を保たないとだな」
全てはこの国の未来のため。
そのためであれば、例えどんな手段であろうとも構わない。
屈辱的な決断だろうと、その先に栄光を得られるのならば、迷わず彼はそれを選ぶ。
そう、決意したのだ。
平和を得るための、決意。
ただしそれは、次なる戦いへ挑む準備をするための仮初めの平和。
更なる力を得るために、ソーサクは平和を求め動き出した。
17
:
名無しさん
:2023/12/30(土) 11:25:18 ID:LhgvhDIg0
バラタシ国(旧ルナイファ帝国属国) 商館
ルナイファの敗北後、属国等多くの国が独立することとなったが、そのうちの一つであるバラタシ。
なお独立と言えば聞こえはいいが実際はこの国の者の多くがそれを望んではいなかった。
国の援助が無ければ生活ができない市民が多数いたためである。
だがルナイファの国力が大きく落ち込んだことにより、広大な土地とそこに住む全ての市民を維持できなくなったため、無理矢理独立させられることとなった国である。
それゆえ国とは銘打っているものの、実際は無法地帯に近い状態となっており、周りからは敬遠されていた。
だがそんな無法地帯なこの地をむしろ好ましいとして介入してくるものが意外にも少なくない。
それらの多くは犯罪者であった。
脛に疵を持つ者達が身を隠すために、この国に集まってきていたのだ。
18
:
名無しさん
:2023/12/30(土) 11:26:04 ID:LhgvhDIg0
それを国がどうしたかと言えばどうもしなかった。
その隠れてくるものたちは国に入ってくる際に様々な物を持ち込んできており、それらが国に一定の利潤を与えていたためである。
勿論、盗品であったり拐ってきた奴隷など危うい物が多いもののそれでも明日すらまともに迎えられるか分からない現状、何でも受け入れることが唯一この国の生き残れる道であったのだ。
そうして今日も多くの怪しい商品が売り買いされているこの商館。
そんな場所に、ドクオは滞在していた。
('A`)「......」
大国で暮らしてきた彼にとってその光景はとてもではないが気分の良い物ではない。
だがそれと同時にこの光景が無ければこの国の者達が生きていけないことも理解しており、そこに口を挟むことはない。
さらには彼自身もこの光景の一場面に加わったのだ。
とやかく言うことなど、ないだろう。
19
:
名無しさん
:2023/12/30(土) 11:26:56 ID:LhgvhDIg0
('A`)「ふぅ......」
一息つき、手に持っていた魔石を机に置く。
先ほどまでペアである魔石へ報告を送信していたのだ。
報告した内容は勿論。
('A`)「『かく』、か」
人間達の持つ、最強の兵器。
その情報であった。
('A`)「まさか、こんなに簡単に手に入るとはな」
そうポツリと溢すが、まさにその感想の通りであった。
何せあれほどの力を持つ兵器である。
徹底的に隠し通し、こちらに欠片も情報を与えないようにするであろうと予測していた。
('A`)「......まさか、調査のために団体を寄越しているなんてな」
だが予想外のことが発生したのだ。
ルナイファの『かく』が落ちた地点付近の調査と患者の治療のために人間達の団体が送り込まれてきたのだ。
混乱極まるそんな場所に人間が来ればどうなるか。
20
:
名無しさん
:2023/12/30(土) 11:28:00 ID:LhgvhDIg0
答えは、ドクオの目の前にあった。
('A`)「......あんたも災難だな。はぐれたばっかりに拐われて奴隷として売られるなんて」
鎖で繋がれ、複数の拘束がされている人間の男。
この世界でごく一般的な、人間の奴隷である。
違うのはその男の出身地。
そして、持つ知識であった。
『かく』の調査に来たというだけあり、非常に様々な知識を読み取ることが出来たのだ。
色々と抵抗しようとはしていたものの、エルフと異なり魔法に対抗できる術を持たないため、あっさりとドクオの知りたかったことは全て集まってしまっていた。
('A`)「まぁ、恨まんでくれよ。運が悪かったあんたが悪いんだからさ......しかし店主さんよ。これ、本当に大丈夫なのか?あの国に目をつけられないのか?」
川 ゚ 々゚)「心配性だねあんた。問題ないに決まってるよ。なんせたかが一人、それも貴族でもない一般市民よ?」
('A`)「......それもそうか」
21
:
名無しさん
:2023/12/30(土) 11:29:25 ID:LhgvhDIg0
川 ゚ 々゚)「そもそも一般市民が消えるなんてどこの国でも当たり前、それもこんな混乱した国なら尚更。そんなことで一々どうとかある方がおかしいね」
('A`)「そうだな......それに」
川 ゚ 々゚)「?」
('A`)「あぁ、いや、なんでも」
それに問題になるのは直接関わっているこの国だけであり、間接的にしか関わりのない自国は関係無いであろう。
そう心の中で付け加えながら、本当になんともあっさりと仕事が終わってしまったことに拍子抜けしていた。
だが今回のように簡単に事が進められなければ、もしかすると一生追い付けない相手かもしれないなのだ。
('A`)(......相手が相手だ。もう、止まっている暇はないんだ)
ドクオにとっても『かく』の衝撃は凄まじいものであった。
そしてそれはまさにドクオの理想とも言える力なのだ。
あまりに強大すぎるがゆえに、互いに持っていれば互いに牽制となり、使うことのできない、拮抗した抑止力となりうるであろう。
戦いを作らないための力として、是非とも手に入れたいと考えていたのだ。
22
:
名無しさん
:2023/12/30(土) 11:30:07 ID:LhgvhDIg0
('A`)(手に入りさえすれば、あとはそれでいい。使おうなどと、思うやつはいないはず......)
そして『かく』を知る前まで問題であった力を手に入れた場合に、その力を使っての戦争が起こるリスクも考えていたがそれも心配ないだろう。
なにせ『かく』の威力は凄まじすぎるのだ。
もし互いに持ちあった状態で使ってしまえば、それこそ世界の崩壊が始まると言っても過言ではない。
そんなことをする馬鹿は、いないだろう。
('A`)(......)
だがそこでふと、ある男の名前が頭をよぎる。
世界を崩壊させてでも敵を滅ぼそうとした、ルナイファの一人の男である。
普通に考えれば、世界の崩壊というリスクを取れるものはいないはずである。
ーだが、それは本当だろうか?
23
:
名無しさん
:2023/12/30(土) 11:31:55 ID:LhgvhDIg0
本当に、問題ないと言い切れるのだろうか?
この世は皆、そこまで理解しているのだろうか?
理解することが、出来るのだろうか?
ー過剰な力は、自国を戦いへの道へ、それも先の大戦を超えるような凄惨な戦いへ向かわせてしまうのではないか?
川 ゚ 々゚)「お客さん?ボーッとしてどうした?まさか......疫病にやられてるなんて言わんだろうね?」
('A`)「え?あ、あぁいや。少し考え事をね」
川 ゚ 々゚)「そうかい。もし疫病ってならこいつを売ってやろうかって思ったんだがね」
(;'A`)「ん?それは......人間の薬じゃないか!?なぜこんなところに?」
川 ゚ 々゚)「そりゃあの疫病に効く薬は需要が凄いからね。高く売れるもんはなんでも仕入れてくるさ」
(;'A`)「そりゃ高く売れるだろうが......どうやって仕入れたんだ?」
川 ゚ 々゚)「なに、人間達と関係を持ってる国の奴らから横に流してもらってるのさ。金が必要なんだろうね、奴らも必死さ」
(;'A`)「......なるほどね。しかし、買うやつがいるんだな。人間の技術ってだけで嫌がるやつが多いかと思ってたが」
川 ゚ 々゚)「はははっ!んなもん、表向きだけさ。皆、頭では分かってる。奴らの技術は便利で役立つってな。ほら、見てみろ」
そういってその商人は棚から商品を引っ張ってくる。
そのどれもが人間の作った道具であり、そして全てに売約済みの札が貼られていた。
24
:
名無しさん
:2023/12/30(土) 11:32:45 ID:LhgvhDIg0
川 ゚ 々゚)「これらを買ってるのは全部、表向きは人間達と交流を持たないって言ってる国の奴らだ。面子でそうは言うものの、皆分かってるのさ。今、世界が変わる瞬間でそれに乗り遅れるわけにはいかないってな」
('A`)「......へぇ」
川 ゚ 々゚)「それで、どうだい?あんさんも表向きはそういう方向の国だろう?お土産にでもどうだい?」
('A`)「お土産、ねぇ」
川 ゚ 々゚)「なんだ、気に入らないかい?なら、他にもおすすめがあるよ?」
('A`)「......他になにかあるのか?」
川 ゚ 々゚)「興味があるかい?なら......こいつはどうかな?非常にいいものだと思うがね」
(;'A`)「っ!?こ、れは......」
商人が奥に置かれていた物にかけられていた布をどかす。
そうしてドクオの眼前に現れたのは金属の塊。
箱に筒のようなものがついたそれは、薄汚れながらも凄まじい威圧感を放っていた。
(;'A`)「は、ははっ......」
それはクーの報告で知っていた。
『せんしゃ』。
人間達の兵器の一つ。
確かに商人が言うように非常にいいものであった。
これさえあれば人間達の兵器の研究も進み、また自国の技術発展に役立てることが出来るだろう。
だが、あまりにうまくいきすぎている。
いいことであるはずだが、どこかに落とし穴があるような、嫌な予感が拭いきれないのだ。
25
:
名無しさん
:2023/12/30(土) 11:34:40 ID:LhgvhDIg0
ー過剰な力は、自国を滅ぼすのではないか?
そうして先ほどの嫌な考えがまた、頭に甦ってくる。
抑止力には、力が必要である。
だがその力が強くなればなるほど、戦いは凄惨なものとなり、被害もそれに比例することになる。
もし次の戦いがあるとするならば。
それは一体どれほど恐ろしいものになるのだろうか。
それがもし『せんしゃ』を、そして『かく』を手に入れていたとするならばー
('A`)(......)
しかしもう、決めたのだ。
何があろうとこの道を進むのだと。
自身が信じる道を。
('A`)「......クー」
かつて同じ国のために働いていた一人の女性の名を呟く。
国を捨て、新たな道を進んだ彼女。
その道もある意味正しい道であろう。
少なくとも自身の安全はあれほどの力を持つ国だ、受け入れられさえすればある程度は守られるはずである。
だが彼女は分かっているのだろうか。
この世界にいずれくる更なる混乱をどうにかするには。
争乱から逃げているだけでは、駄目だということを。
いつかは目の前の現実と、戦わなくてはいけないということを。
26
:
名無しさん
:2023/12/30(土) 11:35:33 ID:LhgvhDIg0
('A`)(......俺は、戦うんだ。国のために)
だから彼は進む。
彼の望む未来を手に入れるために。
だが未来のことなど、分かる筈もない。
自分が行っていることが、正しいのかも分からないのだ。
しかし彼は、信じている。
自分の行いが正しいということを。
皆が力を知り、そして理解することを。
その上に成り立つ、力の均衡。
そうして得られる平穏があることを。
その平穏を皆が望み、手に入れようとすることを。
戦いを、誰も望まないことを。
ただ祈り、そして今日もまた平和を得るために。
そのために彼はまた新たな力を求める。
その祈りが届くかは誰にも、神にすら分からない。
ただ一つ言えるのは。
戦いの火種は、未だに潰えていない。
27
:
名無しさん
:2023/12/30(土) 11:37:10 ID:LhgvhDIg0
北ルナイファ帝国 首都大通り
1463年10月20日
『ルナイファ帝国万歳!ルナイファ帝国万歳!!』
その日、北ルナイファ帝国では軍事パレードが行われていた。
多数のゴーレムや隊列の行進、そしてそれを取り囲み歓声を挙げる国民達。
それらは『悪魔の軍勢の進軍を阻止した』という戦果を大々的に祝福していた。
勿論、これらは全て表向きの話である。
そもそも戦争については勿論、大敗も大敗しており軍の再建どころか維持すら困難ではないかという段階にまで来ているのだ。
だがそんなものを公にすることができる筈がない。
ニータは勿論のこと、元同じ国家である南ルナイファも人間達に下っているため敵であるし、その他ルナイファから独立した国家全てが敵と言えるような状態である。
そんな状態で弱っていると見られれば最後、滅ぼされてもおかしくない。
それゆえに少しでも自国に力が残っているのだと見せつけるため、大々的にこのパレードが行われているのだ。
またこのパレードは国外は勿論のこと国内にも向けたものであった。
どんなに言葉を飾ろうとも今回の戦争の被害は決して隠せるものではなく、戦果として掲げているものも無理があるものであり、今さらではあるが民からの不信感が強まっているのだ。
多少の反発であればこれまでのように武力で押し黙らせ、統制することも出来た。
だがその力が弱まっていると見られれば、反乱が起きかねないのである。
ゆえに民に対してもまだ戦力が十分にあることを見せつけ、またそれらを称えるように仕向けることで国内の空気をどうにかまとめようとしていたのだ。
28
:
名無しさん
:2023/12/30(土) 11:38:07 ID:LhgvhDIg0
とはいえあれだけの敗戦の後である。
一見力強く見えるそのパレードも、その実情はとんでもないハリボテであり、かなりの無茶をしたものであった。
そもそも兵の多くが失われているのだ。
それゆえ今パレードに参加しているのは兵と呼べるか怪しいような一般の民から徴兵されたばかりの者や傭兵、ゴロツキ、さらには犯罪者なども含まれている。
少しでも数を多く見せるため、もはや歩けるものであれば全てを注ぎ込もうとする勢いである。
勿論、それらの多くはろくな訓練も受けていなければ魔法の才も怪しいものばかり。
戦いになれば全く役に立たない者がほとんどだろう。
さらには現段階のパレードですら、よく見れば姿勢が悪く、また歩幅や足並みもあまり揃っていない。
それでもなんとかパレードとして体裁は整っているものの、その様子を冷静に見れるものであればこの国の限界がすぐそこまで来ていることは明白であった。
29
:
名無しさん
:2023/12/30(土) 11:39:17 ID:LhgvhDIg0
(# ^Д^)「......ちっ」
そしてそんな光景にこの男、プギャーが満足するはずがなかった。
ただ苛立ったように舌打ちをしながらもパレードの最中であり、彼もまた健在であり、余裕があることをアピールする必要がある。
それゆえ何時ものように暴れ怒り狂うことは出来ず、それが一層ストレスとなっていた。
(# ^Д^)(くそっ、くそっ、糞がっ!!いつの日か、絶対に奴らをこの手で......っ!)
ただでさえ事実上の敗戦国となったということが、耐えられないほどのストレスとなっているのだ。
これまでならば世界最強という看板があったからこそ、彼自身の高すぎるプライドを保つことができていた。
それが失われるどころか、代わりに世界の敵、そして終わった国という不名誉極まりないものに変わってしまった。
(# ^Д^)(奴らをこの滅ぼす......いや、簡単に殺すことなど生温い。生まれてきたことを後悔するほどの苦しみを与えなくては......)
それを受け入れることなど、出来る筈がなかった。
そもそもそんなものを受け入れられるほど、余裕があるのならば元から戦いを続けようなどという事を言い出す筈がないだろう。
だからこそ彼の頭に浮かぶものはありもしない妄想ばかり。
今よりも遥かに力がある頃ですら成し遂げられなかった物をどう実現できると言うのか。
冷静に考えれば分かりそうなことも、分からないのか、はたまた分からないふりをしているのか。
ただただ無駄な妄想ばかりを続けていた。
30
:
名無しさん
:2023/12/30(土) 11:40:05 ID:LhgvhDIg0
ーがたんっ。
( ^Д^)「......ん?」
そうして延々と妄想を繰り返していたその時、急にパレードの列が停止する。
その衝撃に流石の彼も現実に引き戻されていた。
( ^Д^)「おい、なんだ。何があった?なぜ急に止まる」
(*゚ー゚)「えっ、と。それがどうやら進行ルートに侵入している集団がいるようで」
( ^Д^)「とっとと追い出せ。抵抗するなら拘束しろ」
(*゚ー゚)「は、はっ!すぐに伝えます」
( ^Д^)「ちっ」
慌てて飛び出していくシィを眺めながら、プギャーは舌打ちをする。
ただでさえ苛ついているところに更なる怒りの火種。
最早プギャーの我慢は臨界点に到達する寸前まで来ていた。
それゆえに自身を苛立たせる者達の末路を見て、笑い飛ばしてやろうかとパレードの先頭の方へと目をやった。
そこにいたのは複数の黒いローブに包まれた者達であった。
魔方陣の刻まれたそれは明らかに魔法使いであることを示していた。
31
:
名無しさん
:2023/12/30(土) 11:41:02 ID:LhgvhDIg0
( ^Д^)「......何だ奴らは?」
初めはパレードで調子に乗った愚か者が列に飛び出したのかと考えていたがこれを見るにどうやら違うらしいということに気がつく。
それと同時に明らかに意思をもって複数揃って現れた集団が一体何の目的で現れたのかという疑問が頭に浮かんだ。
そして、その答はすぐに理解することとなった。
ズガアァンッ!!
(; ^Д^)「ぐおおっ!?」
『キャアアアァァアア!!』
(; ^Д^)「な、なんだっ!?ま、さかっ!?攻撃!?」
突如響きわたった轟音。
そして民衆の悲鳴。
突然の出来事に皆が戸惑い、逃げ惑う。
パレードに参加していた兵達もまた、ただのハリボテらしくあわあわとあわてふためき、見るからに役に立ちそうもない。
(; ^Д^)「くそっ!使えん奴らめっ!!......敵はどこのどいつだ!?」
そんな様子にプギャーは悪態をつきつつも、どうにか思考を巡らせる。
明らかにこちらに悪意を持っての襲撃である。
それもわざわざこのような民衆も集まるタイミングでの襲撃であり、確実に計画的なものである。
一体何者がと、先ほどの黒いローブに身を包んだもの達に視線を送る。
32
:
名無しさん
:2023/12/30(土) 11:42:11 ID:LhgvhDIg0
(# ・∀・)「ルナイファに、アリベシの怒りの鉄槌をっ!!神の裁きをっ!!」
『おおぉぉおおおっっ!!!』
そこにいたのは母国を操られ、そして滅亡に追いやられた理性を失った獣達であった。
悲鳴をかき消すほどの雄叫びを挙げるそれらは明らかに正気のそれではない。
ルナイファも狂気に支配されていると言えるが、それすらも上回る狂気。
相手がかつての大国であり自国を上回る力を持っていたことなど一切関係などない。
こんな戦いをしたところで自国が既に敗戦した事実に変わりなく、終わった国であることには変わりはないが、そんなことはどうでもいいのだ。
今、彼らの目に映るものが神の御告げをねじ曲げるという、神への冒涜ともいえるやってはならない事をした大罪人の仲間であるのだ。
それを裁かずに神の信徒を名乗れる筈がない。
ゆえに、彼らは迷わない。
(# ・∀・)「いくぞぉおおおおっ!!!」
掛け声と共に地獄が始まった。
周囲に一般市民がいようが関係無く魔法を放つ。
彼らにとってみればルナイファの者は全て罪であり、裁きの対象なのだ。
それゆえにわざわざこの日、国の上部の者も一般市民も集まるこのタイミングを狙ったのだ。
33
:
名無しさん
:2023/12/30(土) 11:43:07 ID:LhgvhDIg0
(; ^Д^)「な、な、な......」
そうして多くの者が混乱し、何があったのか理解できぬままに死んでいく。
そしてプギャーもそれをただ見ていることしかできなかった。
逃げようにも周囲は大混乱であり、身動きが取れないだろう。
周りの兵もこのパレードに合わせて準備してきたハリボテしかいない。
ーつまり、どうすることも出来ないのではないか?
そんな絶望的な考えが頭をよぎる。
(; ^Д^)「そんな......こんな、こんなところで死んでいいはずがっ!!」
そう、自分は生き残らなくてはならないのだと彼は叫ぶ。
神から与えられし使命である人間をうち滅ぼすことを果たさないうちに死ぬことなど、世界の損失と言い換えられるはずだと、彼は合ってはならない現実に身を震わせる。
その震えは怒りと、そして恐怖によるもの。
こんなところで、全てが終わってしまうのだ。
(; ^Д^)「そ、そうだっ!!シィ!!シィはどこに......」
どうにか混乱する頭を働かせ、この場で数少ない自分を救いうる存在を思い出し、必死に見渡し探す。
だが一面広がるのは赤、赤、赤。
それは周囲の者の殆どが死に絶えたことを示していた。
もう自分を守るものは誰も、いなくなっていたのだ。
34
:
名無しさん
:2023/12/30(土) 11:43:49 ID:LhgvhDIg0
(; ^Д^)「......はっ!?」
そして気付けば、自身の近くまで魔法が迫ってきていた。
避ける暇など、ありはしなかった。
再度の轟音。
集団から放たれた魔法は多くを巻き込み、命を奪っていく。
(; ^Д^)「はぁ、はぁっ!!」
だが奇跡的にもまだ、プギャーは生きていた。
いつぞやと同じく、彼が着込んだその鎧が魔壁を構築し、攻撃から身を守っていたのだ。
(; ^Д^)「は、は、はははっ!」
やはり自分は神に生きろと言われているのだー
そんな根拠のない自信が沸き上がり、自然とプギャーは笑う。
そう、これまでと同じくまた生き残り続けていけばいつか自身の思い描く理想にたどり着けるのだと、彼は夢想する。
35
:
名無しさん
:2023/12/30(土) 11:44:32 ID:LhgvhDIg0
だが、そんなものはただの妄想である。
『いたぞっ!プギャーだっ!!』
(; ^Д^)「......あ?」
確かに彼は生き残った。
それは奇跡的なことである。
だがそれが果たして幸福かどうかは別の話なのだ。
(# ・∀・)「っ!!捕らえろぉ!殺すな!!」
(; ^Д^)「なっ!?やめ、離せっ!?ふざけるなっ、貴様ら俺が誰か知って......」
『聞いたか?知ってるかだとよ。あぁ、勿論知ってるぜ』
(# ・∀・)「許さんぞ、神を冒涜したその罪......死すら生温いと思える地獄を見せてやる」
(; ^Д^)「ひっ......ぁ、あぁ......」
彼に迫る狂気の集団。
そして彼らはその狂気をぶつける相手を求めているのだ。
アリベシで捕らえたルナイファの工作員にしていた拷問など生温い。
それ以上の地獄を与えられる、彼らの宿敵を求めていた。
(; ^Д^)「こんな、こんなはずではー」
なかったのに。
そうこぼしたその声は。
多数の悲鳴と怒号、そして魔法の破壊音にかき消され、誰の耳にも届くことはなかった。
36
:
名無しさん
:2023/12/30(土) 11:45:09 ID:LhgvhDIg0
ニータ王国 王城
1463年10月28日
( ´W`)「戦争が終わったというのに......いつになったら平和になるのか」
そうため息をつきつつ、シラヒーゲは呟く。
その言葉に同調するようにフィレンクトが頷いた。
(‘_L’)「まだまだ先、でしょう。北ルナイファが暴走したまま残っていますから。ただ何も知らない民からすれば、戦争が終わり平和でしょうな。疫病についても距離があるためか今のところ我が国に直接的な被害はありませんし」
( ´W`)「ふむぅ」
フィレンクトのその言葉は真実であり、シラヒーゲは唸ることしかできなかった。
現在抱える問題は多く、そしてどれも大きい。
最大の問題と思っていた戦争が可愛く見えるほどである。
( ´W`)「折角、人間達の作戦が上手くいったというのに、なぜこんなことに」
(‘_L’)「強力無比の攻撃にて力量差を嫌でも分からせ、また甚大な被害で実質的に戦争を終わらせる......確かに戦争を終わらせるにはいい手でした。さらに暴走したルナイファ相手だけでなく周辺国家にも警告も出来るこれ以上無い妙案、ですが......やりすぎましたね」
37
:
名無しさん
:2023/12/30(土) 11:46:30 ID:LhgvhDIg0
( ´W`)「やりすぎた、とは?」
(‘_L’)「そのままの意味です。ルナイファという国が完全に力を失ってしまったがゆえに、多くが制御不能に陥っています。他国どころか自国のことすらままならない状態ですから」
( ´W`)「とはいえ、ここまでやられなければ奴らも諦めなかったであろう?」
(;‘_L’)「えぇ......ですので致し方ない訳なのですが。まあ落ち度があるとすればルナイファ、ですね」
( ´W`)「どこまでも迷惑な......」
思えば事の発端である異界の国の召喚をしたのも、戦中に疫病をばらまいたのも、国家が分裂し大陸の治安を著しく損なっているのもすべての原因がなにかと言われればルナイファなのだ。
そしてそれらの責任を取ったならまだしも、現状責任を取るどころではないしそもそも国としてそんな体力も残されていない。
確かに戦争により直接的な被害を受け、ルナイファは痛い目は見ているがやらかした事を考えればまだ足りないだろうと少なくともシラヒーゲは感じており、また現在自国に降りかかる問題の事もあるため簡単に許せる筈もない。
だがそれと同時にこちらにやり返せるような手札が無いことも事実であり、やり場の無い怒りが増すばかりであった。
38
:
名無しさん
:2023/12/30(土) 11:52:51 ID:LhgvhDIg0
( ´W`)「せめてルナイファになにかやり返せればいいんだが」
(;‘_L’)「陛下、冗談でもおやめてください。南ルナイファは実質的に召喚国の属国であり、手を出せば我々が滅ぼされます。北方についても下手につつけばこちらに飛び火するだけです」
( ´W`)「分かっておる......だが、やりきれんのだよ。せめて北ルナイファだけでもどうにかできないのか?」
(‘_L’)「お気持ちは分かります。ですが、どうしようもないのも事実です。ルナイファだけでなくあのアリベシも介入してきています。こんな状況で介入すればどうなることか......」
( ´W`)「はぁ......」
手に負えない狂った者達が自国の周囲で暴れ続けているという事実。
特にアリベシに至ってはルナイファへの襲撃を聖戦と言い張り、邪魔するもの達は全て敵として攻撃すると言い出している。
完全なテロ国家となっているが腐っても元列強、規模が大きいため簡単に潰すことも出来ない。
さらに周りも相手があのルナイファとアリベシであることから、触らぬ神に祟りなしと放置している国がほとんどなのだ。
協力してくれるものはおらず、そもそもこの混乱する世界で自国のこと以外に気を向けられるものは少ない。
結局のところ、なんだかんだと文句は言っても耐える以外に選択肢はないのだ。
39
:
名無しさん
:2023/12/30(土) 11:54:24 ID:LhgvhDIg0
(; ´W`)「まあ、仕方あるまい。治安維持に全力を注いでくれ」
(‘_L’)「かしこまりました」
(; ´W`)「全く、もう少し明るいニュースが聞きたいものだ」
(‘_L’)「明るい......かは分かりませんが」
( ´W`)「何かあるのか?」
(‘_L’)「えぇ、まだ確定ではありませんが北ルナイファをまとめていたプギャーが先日の襲撃で行方不明との情報が」
( ´W`)「なんとっ!!それは、朗報ではないかっ!!」
未確定の情報とはいえ、シラヒーゲはその情報に歓喜する。
もしこの情報が確かならば狂った主導者が北ルナイファからいなくなり、あの暴走も終わりが見えると考えたからである。
だがそんな歓喜をするシラヒーゲに対し、フィレンクトは微妙な表情を浮かべていた。
その様子に歓喜の空気も一瞬で引っ込み、また重苦しい空気が戻ってくる。
( ´W`)「......朗報ではないと?」
(‘_L’)「いえ悲報か朗報か、と言われれば朗報であると思われます」
( ´W`)「では、なぜ......」
(‘_L’)「どうやらプギャーの意思を継ぐものが国を支配している軍部に多くいるようで......これだけではあの国が根本から変わることはないかと。また今回の襲撃に対する怒りもあり、更なる暴走を引き起こす恐れがあるかもしれないとの情報があります。ただしこれはあくまでも可能性の話ですが」
(; ´W`)「......どこまで愚かなんだ、あの国は」
40
:
名無しさん
:2023/12/30(土) 11:55:31 ID:LhgvhDIg0
もうそうとしか言い様がなかった。
どれだけ傷つき、どれだけ追い込まれたとしても彼らは決してそれを認めない。
それどころか反発し、牙を剥く。
それにより自分達がどうなるかも分からないのであろう。
同じエルフであると信じたくないほどに愚かな、理性のない獣。
そんな存在がいていい筈がないと思いたいが、この国のすぐ側にそれはいるのだ。
なんと、恐ろしい話だろうか。
(; ´W`)「このまま行くと、我が国にも火の粉が降りかかるのでは?」
(‘_L’)「確かに可能性として十分にあり得るかと。普通であればわざわざ敵を増やす真似はしないでしょうが、連中を理屈で考えてはいけません。近くにいれば、目につけば噛みついてくる獣と同じと考えるべきです」
(; ´W`)「うむ。となると......軍備の見直しが必要か」
(;‘_L’)「えぇ、ですが......」
(; ´W`)「......金か」
(;‘_L’)「はい。召喚国から武器の類いの輸入を進めていますが......とんでもない赤字です。これ以上は、流石に」
(; ´W`)「問題ばかりだな」
その言葉の通り、ニータは召喚国から武器の類いを輸入し、軍事力を高める方針を取っていたが、そこで問題になったのがやはり金であった。
なにせ貿易相手は自国を遥かに上回る国力を持つ相手なのだ。
こちらから売れるものと言えば精々農産物くらいのもの。
魔道具は魔法を使わない人間には不要であるし、そもそもそれらより遥かに優れたものを持っているのだ。
精々研究用として少量買う程度である。
そんなものと兵器の金額が釣り合うはずもなく、赤字はとてつもない勢いで増していっている。
だが現在の世界の情勢を考えればここで軍事に力を入れない理由はない。
どんなに苦しくても、ここを耐えられなければそれこそ国が終わってしまうかもしれないのだ。
41
:
名無しさん
:2023/12/30(土) 11:57:24 ID:LhgvhDIg0
(; ´W`)「仕方ない。追加で資金を出そう。それで何とかしてくれ」
(;‘_L’)「出来る限りのことはしましょう」
(; ´W`)「うむ、それでよい。しかし、せめて北方ルナイファとアリベシのいざこざが終わればこんな無茶な軍拡をせずに済むというのに......このまま何もなく、さっさと終わってほしいものだ」
(‘_L’)「......畏れながら陛下。奴らの争いが無くなったとしても、軍拡は必須かと思います」
( ´W`)「......なに?なにか、懸念事項があると?」
(‘_L’)「はい。まず前提として、世界の多くの国が未だに召喚国を国として認めていません。それだけならまだしも、それらの国で連合を組む動きが見られます」
(; ´W`)「なんだと?」
(‘_L’)「表向きは疫病対策とのことですが、本質的に人間達に対抗するための勢力を集める動きだと思われます。勿論召喚国と直接的に敵対しようというわけではないとは思われますが......これらの国から見て我々のような召喚国と関係を持つ国家は敵として見られるでしょう」
そこまで聞き、シラヒーゲはようやく自国がまだ戦争の火種を抱えており、非常に不安定な立場であるということに気がつく。
フィレンクトの話が本当ならば今度の敵はルナイファどころの話ではない。
世界規模の相手をしなくてはならないかもしれないのだ。
もしそんなことになれば数では圧倒的に少数である召喚国も負けはしないものの、それでも自国やその周囲で手一杯となるであろう。
一方でニータは列強であるためある程度は対抗できる。
だがあくまである程度に留まり、いくらこの世界では上から数えた方が早い位の力を持っているとはいえ、圧倒的な物量の前では多少の国力の差など簡単に埋められてしまう。
つまり、このままでは自国すら支えきれるかは分からないということである。
42
:
名無しさん
:2023/12/30(土) 11:58:22 ID:LhgvhDIg0
(; ´W`)「......なるほど、な。確かにそれならば人間達の持つ、あの力が必要だな。圧倒的な力が」
それゆえその数の差を埋めるためには、圧倒的な技術力の差が必要となる。
ゆえに人間達の国からどんなに資金をつぎ込むことになろうとも兵器の輸入が必要なのだ。
(‘_L’)「その通りでございます、陛下。ゆえに現在、より強力な兵器を輸入出来るよう、交渉中です」
(; ´W`)「......また金がかかるというわけだな」
(‘_L’)「そう、なります」
( ´W`)「はぁ......いっそのこと、あの『かく』とやらを売ってくれれば話が早いんだがな」
(;‘_L’)「一応、交渉はしていますが......まず、不可能と思われます」
( ´W`)「まぁ、そうであろうな」
(‘_L’)「それに......あの兵器を見た後でも、その力を分かっていながらも対抗しようとする者達が現れているのです。完全な抑止力には、ならないということでしょう」
( ´W`)「......そうだな」
普通に考えれば、何とも馬鹿らしい話である。
確かに倫理観やら様々な問題があるため、簡単に使用することはないであろうが、それでも相手が自分達をいつでも簡単に滅ぼせる力を持っていると知っているはずなのだ。
それにも関わらず、戦いを挑もうとするのは何故なのか。
シラヒーゲには、理解できなかった。
43
:
名無しさん
:2023/12/30(土) 12:00:00 ID:LhgvhDIg0
( ´W`)「全く、何故わざわざ戦おうとするのか」
(‘_L’)「それはいくつか理由はあると思いますが......人間に対する恐怖や魔法へのプライド......後は儲かる者達がいる、からでしょうな」
( ´W`)「......儲かる?恐怖云々は分かるが、儲かるとは?」
(‘_L’)「戦争をするためには様々な物資が必要となりますから。それらが動く以上、金も動きます」
( ´W`)「それは分かる。だが負けてしまっては元も子もないだろう?」
(‘_L’)「そこまで考えていない可能性もありますが......例えば第三国、ならばどうでしょう?」
( ´W`)「なに?」
(‘_L’)「他国を戦争の矢面に立たせ、その国を支援するという形で物資を売りつけるのです」
( ´W`)「......代理戦争か」
(‘_L’)「えぇ。他国を煽り、戦争へと導き、自分達はあくまでも第三国を貫く......といった風に戦争により利潤が得られるものがいることも否定できません」
( ´W`)「そんな輩がいると?」
(‘_L’)「実際、北ルナイファで実施されたパレードでは多数のゴーレムが確認されています。あれほどの数となると隠し持っていたとは考えにくく、また戦後に生産する力もないと思われるため、どこかの国が支援している可能性が高いです」
事実、先の戦争でもルナイファやニータに向けた物資の取引により、利潤を得た国は存在している。
所謂、特需である。
消耗の極致とも言える戦争をするともなれば莫大な需要が産まれる。
その需要を作り出すため、戦争を望む者は確かに存在する。
44
:
名無しさん
:2023/12/30(土) 12:01:34 ID:LhgvhDIg0
ルナイファが行っていたアリベシへの支援もまさにそれである。
シラヒーゲもその事を思い出し、納得すると共に絶望する。
なぜならば、現在世界は戦争が終わったとはいえ、火種だらけなのだ。
少しでも焚き付ければ一気に燃え広がってもおかしくない状況である。
もし今も戦争を望む者達がいるのならば、これを見逃す理由がないだろう。
(; ´W`)「何と......ではまたいつか戦争になる、というわけか?」
(‘_L’)「そうなる、と断言は出来ませんが可能性はかなり高いかと。また北ルナイファを支援する理由としては人間達に戦争を続けさせて疲弊させたい、という思惑もあるでしょう。ただ未だに人間達の持つ兵器の脅威を理解していないものも多いため......ただ見下しているだけの勢力もいるでしょうが」
( ´W`)「あのルナイファを滅ぼしたというのにまだ、現実が見えていない輩も少なくないからな......」
(‘_L’)「えぇ。そしてそれは、戦争を望むものにとっては願ってもないことでしょう。焚き付けるのに、絶好の相手ですから」
( ´W`)「......そうだな」
(‘_L’)「それに......」
( ´W`)「む?なんだ?」
(‘_L’)「......いえ、何でもありません」
45
:
名無しさん
:2023/12/30(土) 12:02:18 ID:LhgvhDIg0
ー戦争を望んでいるのはエルフだけでなく、召喚国の人間達にもいる。
フィレンクトは今、そう話そうとした事を飲み込み込んだ。
そう、人間達もまた戦争を望んでいる者達がいるのだ。
なにせ戦う相手は自分たちよりも圧倒的に格下であり、また彼らからすればエルフは憎むべき相手。
そしてそれらは魔法を使うため、人間達の使う資源には手を付けず、そのまま山のように眠っているのだ。
勿論交易で手に入るならばそれで良いが、人間というだけで国交すら結べない現状、他の手段が必要となっている。
そして召喚により失われた資源の輸入先を補うため、そして更なる自国の発展のため、戦争という手段は間違いなく選択肢の一つとしてありうるだろう。
その人間達の資源の一つである『せきゆ』。
この世界では燃える黒い水として知られるそれが豊富な国を、フィレンクトは知っていた。
(‘_L’)(......ソーサクは、とんでもない火種の宝庫だな)
軽く考えただけでもこれだけのリスクを抱えている。
だが流石にすぐに戦争という手を取ろうとするほど、ソーサクも人間達も愚かではないだろう。
今は、皆が疫病に目を向けている。
どこの国も大きく動くことはないはずである。
少なくとも、表向きは混乱はあるものの国同士の争いはない、ある意味で平和な世界になるであろう。
この混乱を抜けるためには、あらゆる国が手を取り合う必要があるのだから。
46
:
名無しさん
:2023/12/30(土) 12:03:45 ID:LhgvhDIg0
だがもし、もしもこれから先、この他に。
何か大きなきっかけがあったとするならばー
(‘_L’)「......戦争は、なくなりませんな」
フィレンクトはそう、ポツリと呟いた。
改めてこの世界の不安定さを思い知らされたのだ。
ソーサクに限らず、世界のどこを見渡しても少なからずなにかしらの火種を抱えている。
確かに戦争は終わったというのに。
望む平和は、どこにもないのだ。
( ´W`)「うむ。本当に嫌になるがな。一体いつになったら平和は訪れるのか......」
(‘_L’)「......平和とは、『国際関係について、二つの戦争の期間の間に介在するだまし合いの時期を指して言う』」
( ´W`)「......それは?」
(‘_L’)「召喚国が元いた世界の、つまり異世界の名言らしいです」
( ´W`)「......何とも、嫌な言葉だな」
(‘_L’)「全くです。ですが......これが真実なのかもしれません」
( ´W`)「なに?」
(‘_L’)「考えてみれば、先の戦争が始まる前もルナイファに対抗するためにと策を巡らせ、戦後である今もこの有り様です。だまし合いという争いが続くか、本当に戦うのか......やり方が違うだけでずっと争いは続いています」
( ´W`)「......真の意味で、平和などないと?」
(‘_L’)「世界も種族も異なってもこんな言葉が生まれるほど、と考えれば......この世界どころか、異世界であったとしても我々が考えるような平和は、存在しないのかもしれません」
( ´W`)「......」
47
:
名無しさん
:2023/12/30(土) 12:05:18 ID:LhgvhDIg0
(‘_L’)「ただ、これから数年は大きな戦いはないでしょうな。疫病の影響が大きすぎるため、収まるまではどこの国も大きく動けないはずです。そして疫病の対策として人間達との国交を求め、表向きには世界が協力する流れになりつつあり......ある意味では現状が一番平和と言えるかもしれません」
( ´W`)「世界を滅ぼしかねない魔法が戦いを無くす、か......そんなものが平和とは、言いたくないものだな」
(‘_L’)「全くです。ですが、これまで今以上に世界が協力する流れになったことはなく、争いもごく一部で小規模。定義にもよるでしょうが平和、という他ないでしょう」
(; ´W`)「......本当に、嫌な平和だな」
皆が望むような平和がこれまでに訪れたことがあっただろうか。
少なくともこれまでに何度も戦争を繰り返してきたこの世界では、存在しなかったものと言えるかもしれない。
誰もが望んでいるはずの平和だというのに。
何とも、可笑しな話である。
だが現実として、戦争が終わったというのにシラヒーゲ達は次なる戦いに備え、頭を悩ませ行動しているのだ。
このような状況を真の平和と言えるはずがない。
( ´W`)「......しかしそんな平和を、認める訳にはいかんだろう。表向きにどれだけ繕おうが、そんなものはいずれ崩れ去る。先の言葉の通り、ただの騙し合いに過ぎん」
(‘_L’)「陛下......」
48
:
名無しさん
:2023/12/30(土) 12:06:01 ID:LhgvhDIg0
( ´W`)「確かにこれまで真の平和は無かったかもしれん。だが未来はまだ、誰にも分からんのだ。ならば、諦めている暇などないだろう」
(‘_L’)「......えぇ、その通りです」
( ´W`)「真の平和が訪れる未来まで生き残るためにも、やれることをやるとしよう。フィレンクトよ、力を貸してくれるな?」
(‘_L’)「はっ!」
( ´W`)「......しかし、平和を手に入れることを望みながら、生き残るために力を望む、か」
平和を望み、力も望む。
何とも矛盾した二つの望みに真の平和は程遠いなと嘆きながらも、歩みを止めることなどできる筈がない。
変化し続けるこの世界で生き残るためには力が必要であり、もし平和を勝ち取れたとしてもそこに生き残らなくてはなにも意味がないのだ。
ゆえに彼らは戦い続ける。
否、彼らだけでない。
この世界、そして異世界であったとしても。
平和を望むからこそ誰もが戦い続けている。
それ故に、未だ平和は訪れない。
その道の遥か先、そこに辿り着いた者はまだいない。
そこで得られるものは果たしてそれほどの価値があるものなのか。
それを知るのは、恐らくまだ遠い未来の話であろう。
もしかすると違う世界の話かも知れない。
今日もまた誰かが平和を求め、道を進む。
ゆえに戦いはまだ、続いていく。
生きていく限り、続くのだ。
世界の縮図は変わった。
だが変化はまだ、終わらない。
そうして今も、世界は変わり続けていた。
49
:
名無しさん
:2023/12/30(土) 12:06:45 ID:LhgvhDIg0
ムー国 海岸 戦地跡
静かな波音の中、ナイフを握りしめた一人の男が海を眺めていた。
未だに戦いの痕跡が残るその海岸。
男の目の前に広がる海には多数の同胞達が沈み、死んだ。
そして今、足で踏みしめ立っているこの地でもまた、多くの血が流れた。
目を瞑れば思い出されるあの光景。
瞼の裏に焼き付いたかのように消せないその光景は、まさに地獄である。
それを忘れられず、嫌と言うほど繰り返される幻影に苦しめられる彼の現状もまた、地獄と言えるかもしれない。
( ´ー`)「......ハイン」
だがそんな彼、シラネーヨの顔は何とも穏やかなものであった。
まるで心を許せる友に出会ったかのような雰囲気でそう呟く彼の側には、勿論、誰もいない。
彼以外この場にいるものはおらず、ただ静かな世界が広がっている。
50
:
名無しさん
:2023/12/30(土) 12:07:39 ID:LhgvhDIg0
それでも彼はまるで誰かがそこにいるかのように視線を向け、話を続ける。
( ´ー`)「戦争が、終わったんだとよ。勿論俺達の負けだ。結局、何にも出来なかった。何もかも、失っちまったんだ。ヒデェ話だよな、折角俺達が命をかけたっていうのによ」
その口調は何とも軽いものである。
本当に友達と話をしているかのように、楽しげで、気さくな雰囲気。
( ´ー`)「俺もさ、死の呪いを使ってよ。そっちに行くはずだったんだけどさ......生き残っちまったよ。はは、笑えるだろ?」
だがどこか、悲しげで諦めを含んだかのように彼は笑う。
遠くを見つめるように目を細める彼は、一体何を見つめているのか。
( ´ー`)「戦争は終わった。でも......まだ戦いは続くらしい。こっちはどこもかしこもきな臭い。はは、俺達は一体何のために命をかけて戦ったんだろうな?」
国のため、命をかけて戦った。
だがそれで得られたものはなにか。
答えは、何もない。
それどころか多くの国の民と国土を失い、さらにはまた戦いに巻き込まれるかもしれないというのだ。
まだなにか、失えと言うのかとシラネーヨはため息をつく。
51
:
名無しさん
:2023/12/30(土) 12:08:13 ID:LhgvhDIg0
( ´ー`)「俺、もう......疲れちまったよ」
これから先、起こるであろう戦争。
そこでまた戦うことなど、もう耐えられる自信がない。
今ですら死の呪いこそ発動しているが誰かを道連れにしようと思えるほど、心に余力は残っていないのだ。
そもそも無理に誰かを道連れにすれば、それこそ禍根を残すことになる。
ただでさえ戦いに嫌気が差しているのに自分がその発端になりかねないなど、出来るはずがなかった。
( ´ー`)「......なぁ、そっちはどうなんだ?そっちは、平和か?」
もう何も考えたくない。
ただひたすらに解放されたい、そんな気持ちで心が埋め尽くされている。
( ´ー`)「天国。天上の国っていうくらいだ。きっと、平和なんだろうな。ははっ、羨ましい限りだ......だからさ」
ー俺も、そっちに行ってもいいか?
52
:
名無しさん
:2023/12/30(土) 12:10:11 ID:LhgvhDIg0
彼の言葉に、答えは勿論なかった。
繰り返される波の音だけしか聞こえない。
だが、彼は笑った。
その顔はまるで自分の望む答えを貰ったかのように満足そうで。
救われたかのように、穏やかなものであった。
その目に一切の迷いは無い。
まるでそうするのが当たり前かのようにナイフを喉元まで持ち上げる。
そこに恐怖はない。
変わらずの、笑顔のままである。
彼は、この世界に別れを告げた。
新たな世界、異世界へと旅立ったのだ。
平和を求めて友の待つ、青い空の向こう側、天上の世界へと。
そうして残されたこの世界には。
まるで当たり前の光景のように。
この世界を象徴するかのように。
赤く染まった大地が広がっていた。
53
:
名無しさん
:2023/12/30(土) 12:10:47 ID:LhgvhDIg0
異界大戦記のようです
了
54
:
◆Q.5DeUcL0I
:2023/12/30(土) 12:14:26 ID:LhgvhDIg0
これにて完結です
ここまで読んでいただき本当にありがとうございました
55
:
名無しさん
:2023/12/30(土) 12:24:24 ID:0EeRLYII0
うわあああ!年内最後にリアタイ遭遇できるなんて思わなかった…!!
乙でした!めちゃくちゃ面白かった!!
56
:
名無しさん
:2023/12/30(土) 17:45:43 ID:dCul3DHI0
乙!!最近の現行で一番好きだった
次回作楽しみにしてます
57
:
名無しさん
:2023/12/30(土) 20:16:40 ID:aAKqBGp60
おつ!!
ずっと追ってました最高の作品です
このビターな終わり方もよき
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